JP2000221081A - 熱型変位素子及びこれを用いた放射検出装置 - Google Patents

熱型変位素子及びこれを用いた放射検出装置

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JP2000221081A
JP2000221081A JP11026037A JP2603799A JP2000221081A JP 2000221081 A JP2000221081 A JP 2000221081A JP 11026037 A JP11026037 A JP 11026037A JP 2603799 A JP2603799 A JP 2603799A JP 2000221081 A JP2000221081 A JP 2000221081A
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individual displacement
individual
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films
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Toru Ishizuya
徹 石津谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 脚部の基体に対する占有面積を抑えつつ、脚
部の強度を高めて感度を向上させる。 【解決手段】 脚部2は、基板1から立ち上がる。膨張
係数の異なる2つの膜4,5からなる変位部3は、脚部
2を介して基板1に支持される。変位部3は赤外線吸収
部を兼ね、変位部3の膜5は反射板を兼ねる。変位部3
が赤外線iを受けると熱を発生して撓み、読み出し光j
の反射方向が変化する。脚部2は互いに重なった3つの
膜4,5,6で構成され、その両側の膜4,6は同種の
物質からなるとともに膜厚が等しい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱型赤外線検出装
置等の熱型放射検出装置などにおいて用いられる熱型変
位素子、及びこれを用いた放射検出装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来から、例えば静電容量型の熱型赤外
線検出装置や光読み出し型の熱型赤外線検出装置におい
ては、基体と、該基体から立ち上がった脚部と、該脚部
を介して前記基体に支持され熱に応じて前記基体に対し
て変位する変位部とを備えた熱型変位素子が用いられて
いる(特開平8−193888号公報、米国特許第3,
896,309号公報、特開平10−253447号公
報、特開平10−260080号公報等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような熱型変位素
子において、熱に対する変位量を大きくして感度を上げ
るためには、変位部を大きく(長く)構成する必要があ
り、したがって、脚部の強度を高める必要がある。
【0004】しかしながら、脚部を単層膜で構成する
と、十分な強度を得るためには、脚部の幅を大きくしな
ければならず、脚部の占有面積が大きくなってしまう。
すなわち、変位部の占める面積が減少することになるた
め、感度を高めることが困難であった。
【0005】本発明者は、後述する実験により、脚部の
幅や厚みが同一であっても、脚部を複数層の膜で構成す
ると、脚部を単層膜で構成する場合に比べて脚部の強度
が高まることを見出した。
【0006】しかしながら、脚部を2層膜で構成する
と、2つの膜の膨張係数やヤング率等が異なるので、製
造条件によって脚部に撓みや反りが生じてしまい所望の
状態に変位部を支持することができず、また、製造直後
にはこのような撓みや反りが生じなくても、熱によって
脚部に撓みや反りが生じてしまい所望の状態に変位部を
支持することができない。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、脚部の占有面積を抑えつつ脚部の強度を高め
て感度を向上させることができる熱型変位素子及びこれ
を用いた放射検出装置を提供することを目的とする。
【0008】また、本発明は、脚部の占有面積を抑えつ
つ脚部の強度を高めることができ、しかも、製造直後に
おいてもその後に熱を受けても変位部を所望の状態に支
持することができる熱型変位素子及びこれを用いた放射
検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明の第1の態様による熱型変位素子は、基体
と、該基体から立ち上がった脚部と、該脚部を介して前
記基体に支持され熱に応じて前記基体に対して変位する
変位部とを備えた熱型変位素子において、前記脚部が互
いに重なった3つの膜で構成されたものである。
【0010】本発明の第2の態様による熱型変位素子
は、前記第1の態様による熱型変位素子において、前記
3つの膜のうちの両側の2つの膜は同種の物質からな
り、前記両側の2つの膜の膜厚が略等しいものである。
【0011】前記第1及び第2の態様によれば、脚部が
3層膜で構成されているので、脚部の幅を狭くしつつ、
脚部の強度を高めることができる。このため、脚部の占
有面積を小さくして、変位部の占める面積を大きくする
ことができ、これにより当該熱型変位素子の感度を高め
ることができる。
【0012】そして、前記第1の態様によれば、脚部が
2層膜ではなく3層膜で構成されているので、3つの膜
の物質や厚みを適宜選択すれば、製造条件や熱による脚
部の撓みや反りを小さくすることができ、変位部を所望
の状態に近い状態で支持することができる。
【0013】特に、前記第2の態様のように、両側の2
つの膜を同種の物質で構成してそれらの膜厚を略等しく
しておくと、中間の膜の物質にかかわらず、製造条件や
熱による脚部の撓みや反りがほとんどなくなり、変位部
を所望の状態で支持することができる。
【0014】本発明の第3の態様による熱型変位素子
は、前記第1又は第2の態様による熱型変位素子におい
て、前記変位部は複数の個別変位部を有するものであ
る。そして、前記複数の個別変位部の各々は、直線状に
延びるとともに、異なる膨張係数を有する異なる物質の
互いに重なった少なくとも2つの層を有する。前記複数
の個別変位部が互いに平行に配置される。前記複数の個
別変位部が全体として機械的に接続された1つの接続体
をなすように、前記複数の個別変位部の各端部がそれぞ
れ、前記基体に対して固定されるかあるいは他の個別変
位部の一端部に接続部を介して機械的に接続される。前
記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位
部の一端部が前記基体に対して固定される。前記複数の
個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変位部の両端
部のいずれもが前記基体に対しては固定されない。
【0015】この第3の態様によれば、前記第1及び第
2の態様と同じ利点が得られるのみならず、次の利点も
得られる。
【0016】前記第3の態様によれば、変位部が接続部
を介して機械的に接続された複数の個別変位部で構成さ
れているので、例えば、各個別変位部の長さの合計の長
さを持った単一の個別変位部で変位部を構成した場合と
略同じ変位量を得ることができる。このように大きな変
位量を得ることができるにも関わらず、前述した従来の
熱型変位素子のように変位部がいわば単一の個別変位部
で構成されるのではなく、変位部が接続部を介して接続
された複数の個別変位部で構成されているので、各個別
変位部の配置の自由度が高まる。このため、複数の変位
部を基体上に配置する場合であっても、その配置を、例
えば当該複数の変位部の分布密度を高めることができる
などの理想的な配置に近づけることができる。
【0017】このように、前記第3の態様によれば、複
数の変位部を基体上に配置する場合であっても、大きな
変位量を得ることができるとともに、その配置を理想的
な配置に近づけることができる。
【0018】本発明の第4の態様による熱型変位素子
は、前記第3の態様による熱型変位素子において、前記
複数の個別変位部のうちのある個別変位部から前記基体
に対して機械的に連続するルートのうち、当該ルートに
含まれる個別変位部の数が最も少なくなるルートにおい
て、当該個別変位部が前記基体の側から数えてN番目の
個別変位部である場合に、当該個別変位部を第N段の個
別変位部であると定義し、第N段の個別変位部を第N+
1段の個別変位部に対する前段の個別変位部、第N+1
段の個別変位部を第N段の個別変位部に対する次段の個
別変位部であると定義したとき、(1)前記各接続部に
おいて、同じ接続部を介して互いに接続された前段の個
別変位部の端部及び次段の個別変位部の端部は、それぞ
れ当該前段及び次段の個別変位部の互いに同じ側の端部
であり、(2)前記各段の個別変位部の前記少なくとも
2つの層の物質の膨張係数の大小関係と、その次段の個
別変位部の前記少なくとも2つの層の物質の膨張係数の
大小関係とが、互いに逆であるものである。なお、前段
及び次段の個別変位部の互いに同じ側の端部とは、前段
及び次段の個別変位部が直線状に延びている方向が例え
ば左右方向であるとすれば、前段の個別変位部の右側端
部と次段の個別変位部の右側端部、及び、前段の個別変
位部の左側端部と次段の個別変位部の左側端部、のうち
のいずれかであることを意味するものである。
【0019】この第4の態様では、互いに平行に配置さ
れた前段の個別変位部と次段の個別変位部とが、当該前
段及び次段の個別変位部の互いに同じ側の端部で接続部
を介して機械的に接続されているので、前段の個別変位
部と次段の個別変位部とが接続部において互いに折り返
されたように機械的に連続することとなる。したがっ
て、変位部の長さ(個別変位部が直線状に延びている方
向の長さ)は、第1段から最終段の各個別変位部の長さ
の合計よりかなり短くすることができる。したがって、
複数の変位部を基体上に配置する場合であっても、その
配置を、例えば当該複数の変位部の分布密度を高めるこ
とができるなどの理想的な配置に一層近づけることがで
きる。そして、前記第4の態様では、各段の個別変位部
の前記少なくとも2つの層の物質の膨張係数の大小関係
と、その次段の個別変位部の前記少なくとも2つの層の
物質の膨張係数の大小関係とが、互いに逆となっている
ので、各個別変位部に生ずる個々の変位量の合計の変位
量が最終段の個別変位部に生ずることとなる。このた
め、第1段から最終段までの各個別変位部の長さの合計
の長さを持った単一の個別変位部で変位部を構成した場
合と略同じ変位量を得ることができる。
【0020】このように、前記第4の態様によれば、複
数の変位部を基体上に配置する場合であっても、大きな
変位量を得ることができるとともに、その配置を一層理
想的な配置に近づけることができる。
【0021】本発明の第5の態様による熱型変位素子
は、前記第3又は第4の態様による熱型変位素子におい
て、前記接続部が互いに重なった3つの膜で構成された
ものである。
【0022】本発明の第6の態様による熱型変位素子
は、前記第5の態様による熱型変位素子において、前記
接続部を構成する前記3つの膜のうちの両側の2つの膜
はそれぞれ同種の物質からなり、前記接続部を構成する
前記両側の2つの膜の膜厚が略等しいものである。
【0023】前記第5及び第6の態様では、脚部の強度
のみならず、各個別変位部間を接続する接続部の強度も
十分に高める必要がある。この点、前記第5及び第6の
態様によれば、脚部と同様に、接続部が3層膜で構成さ
れているので、接続部の全体の幅を狭くして軽量化を図
りつつ、接続部の強度を高めることができる。このよう
に接続部を軽量化できることから、脚部の強度をさほど
高める必要がなくなり、好ましい。
【0024】そして、前記第5の態様によれば、接続部
が2層膜ではなく3層膜で構成されているので、3つの
膜の物質や厚みを適宜選択すれば、製造条件や熱による
接続部の撓みや反りを小さくすることができ、各個別変
位部を所望の状態に近い状態で支持することができる。
【0025】特に、前記第6の態様のように、接続部の
両側の2つの膜を同種の物質で構成してそれらの膜厚を
略等しくしておくと、当該接続部の中間の膜の物質にか
かわらず、製造条件や熱による脚部の撓みや反りがほと
んどなくなり、各個別変位部を所望の状態で支持するこ
とができる。
【0026】本発明の第7の態様による熱型変位素子
は、前記第3乃至第6のいずれかの態様による熱型変位
素子において、(1)前記複数の個別変位部の各々は、
所定の順序で互いに重なった第1物質からなる膜及び第
2物質からなる膜で構成されるか、あるいは、逆の順序
で互いに重なった前記第1物質からなる膜及び前記第2
物質からなる膜で構成され、(2)前記脚部及び前記接
続部の全ては、前記第1物質からなる両側の膜と前記第
2物質からなる中間の膜とでそれぞれ構成されたもので
ある。
【0027】この第7の態様によれば、各個別変位部を
作製するのと同時に脚部及び接続部も作製することがで
き、製造が容易となって安価に提供することができる。
今、説明の便宜上、下側から順に重なった第1物質から
なる膜及び第2物質からなる膜で構成された個別変位部
を第1種類の個別変位部といい、下側から順に重なった
第2物質からなる膜及び第1物質からなる膜で構成され
た個別変位部を第2種類の個別変位部というものとす
る。製造に際して、(1)脚部及び接続部の下側の膜並
びに第1種類の個別変位部の下側の膜を、第1物質にて
同時に形成し、次に、(2)脚部及び接続部の中間の
膜、第1種類の個別変位部の上側の膜並びに第2種類の
個別変位部の下側の膜を、第2物質にて同時に形成し、
その後、(3)脚部及び接続部の上側の膜並びに第2種
類の個別変位部の上側の膜を、第1物質にて同時に形成
する。前記第7の態様のような構造を有していれば、こ
のようにして、各個別変位部を作製するのと同時に脚部
及び接続部も作製することができるのである。
【0028】本発明の第8の態様による放射検出装置
は、前記第1乃至第7のいずれかの態様による熱型変位
素子と、前記変位部の所定箇所に対して固定された変位
読み出し部材であって、前記変位部の所定箇所に生じた
変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変位読
み出し部材とを備え、入射した放射により発生する熱に
応じて前記変位部が変位するものである。なお、前記放
射は、赤外線のみならず、X線、紫外線等の不可視光や
他の種々の放射であってもよい。
【0029】この第8の態様によれば、前記第1乃至第
7の態様による熱型変位素子が用いられているので、複
数の画素を配置する場合であっても、脚部が破損して画
素欠陥を招くようなおそれがなくなるとともに、放射の
検出感度を高めることができる。
【0030】なお、前記第1乃至第7の態様による熱型
変位素子は、必ずしも放射検出装置において用いる必要
はなく、例えば、用途によっては単なる温度センサ又は
温度分布像を検出するセンサ等としても用いることがで
きる。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の説明に先立
って、本発明者が行った実験の結果について、図14を
参照して説明する。
【0032】図14はその実験の説明図であり、図14
(a)はその実験で作製した構造体204の作製途中の
状態を示す概略断面図、図14(b)は図14(a)を
上から見た概略平面図、図14(c)は作製後の構造体
204を示す概略断面図、図14(d)は作製後の他の
構造体205を示す概略断面図である。
【0033】本発明者は、Si基板201上に犠牲層と
なるレジスト202を塗布し、レジスト202に開口2
02aを形成した後、全面にP−CVD法にてSiN膜
203を形成した。その後、該SiN膜203をパター
ニングすることによって、その形状を、基板201表面
から立ち上がり更にレジスト202の表面上に延びる形
状とした(図14(a)(b))。このパターニングさ
れたSiN膜203からなる構造体204の寸法は、そ
の膜厚を4000オングストローム、そのレジスト20
2上に延びる長さLを50ミクロン、幅を10ミクロン
とした。次に、レジスト202をアッシング法により除
去して、構造体204を完成させた。その後、構造体2
04を上方から光学顕微鏡にて観察すると、干渉縞が見
えた。その干渉縞の様子から、図14(c)に示すよう
に、構造体204の先端側に延びた部分が、基板201
から浮いて延びるはずであるにもかかわらず、基板20
1から立ち上がった部分の上部付近Aにおいて下方に曲
がってしまい、基板201に接触してしまうことが確認
された。また、SiN膜203の膜厚のみを1000オ
ングストローム及び2000オングストロームにそれぞ
れ変えたものも作製したが、いずれも、図14(c)に
示すような状態となることが確認された。
【0034】一方、本発明者は、同様の作製方法にて、
図14(d)に示す構造体205を作製した。構造体2
05は、層構造及び厚さ以外については、前記構造体2
04と同一とした。構造体205は、厚さ1000オン
グストロームのSiN膜(P−CVD法にて形成)20
6と、SiN膜206上に形成された厚さ500オング
ストロームのAl膜(蒸着にて形成)207と、Al膜
207上に形成された厚さ1000オングストロームの
SiN膜(P−CVD法にて形成)208とからなり、
3層構造を有している。犠牲層であるレジストを除去し
て構造体205を完成させた後に、構造体205を上方
から光学顕微鏡にて観察しても干渉縞は見えず、図14
(d)に示すように、構造体205の先端側に延びた部
分が、基板201から立ち上がった部分の上部付近Bに
おいて下方に曲がってしまうようなことがなく、基板2
01から浮いて保たれていることが確認された。
【0035】以上の実験結果から、前述したような形状
を有する構造体では、当該構造体の厚みが同一であって
も、3層膜で構成すると、単層膜で構成する場合に比べ
て、基板201からの立ち上がり部分の上部付近の強度
が高まることが、判明した。すなわち、脚部の厚みが同
一であっても、脚部を3層膜で構成すると、脚部を単層
膜で構成する場合に比べて脚部の強度が高まることが判
明した。
【0036】以下の説明では、放射を赤外線とし読み出
し光を可視光とした例について説明するが、本発明で
は、放射を赤外線以外のX線や紫外線やその他の種々の
放射としてもよいし、また、読み出し光を可視光以外の
他の光としてもよい。
【0037】[第1の実施の形態]
【0038】図1は、本発明の第1の実施の形態による
光読み出し型の放射検出装置100の単位画素(単位素
子)を示す概略断面図である。
【0039】この放射検出装置100は、基体としての
赤外線iを透過させるSi基板等の基板1と、基板1か
ら立ち上がった脚部2と、脚部2を介して基板1に支持
され熱に応じて基板1に対して変位する変位部3とを備
えている。
【0040】変位部3は、互いに重なった2つの膜4,
5を有している。変位部3は、その一端が脚部2を介し
て支持されることにより、カンチレバーを構成してお
り、基板1上に間隔をあけて浮いた状態に支持されてい
る。膜4及び膜5は、互いに異なる膨張係数を有する異
なる物質で構成されており、いわゆる熱バイモルフ構造
を構成している。したがって、変位部3は、受けた熱に
応じて、下側の膜4の膨張係数が上側の膜5の膨張係数
より大きい場合には上方に、逆の場合には下方に湾曲し
て傾斜する。
【0041】脚部2は、互いに重なった3つの膜で構成
されている。本実施の形態では、変位部3を構成する膜
4,5がそのまま左側に延びた部分と、その上に形成さ
れた膜6とで構成されている。もっとも、脚部2を構成
する3つの膜は、変位部3を構成する膜と別個に形成し
てもよい。また、本実施の形態では、脚部2を構成して
いる両側の2つの膜4,6は、同種の物質からなるとと
もに、膜厚が略等しくされている。例えば、膜4,6と
して、それぞれ厚さ1000オングストロームのSiN
膜を用いることができる。もっとも、本発明では、必ず
しも、膜4,6を同種の物質で構成したりそれらの膜厚
を略等しくする必要はない。
【0042】本実施の形態では、変位部3が赤外線iを
吸収する赤外線吸収部を兼用している。したがって、変
位部3は、赤外線iを受けると、自身が熱を発生し、こ
の熱に応じて変位することとなる。もっとも、必ずしも
変位部3が赤外線吸収部を兼用する必要はなく、例え
ば、膜4の下面に金黒等の赤外線吸収膜を形成しておい
てもよい。
【0043】また、本実施の形態では、膜5としてAl
膜等が用いられ、この膜5は、変位部3に生じた変位に
応じた所定の変化を得るために用いられる変位読み出し
部材としての、受光した読み出し光jを反射する反射部
を兼用している。このため、反射部としての膜5は、読
み出し光jを受光し、受光した読み出し光を変位部3の
変位に応じた反射方向に反射させる。なお、本実施の形
態では、赤外線iを受けていない状態において、膜5は
基板1の面と平行になっている。もっとも、赤外線iを
受けていない状態において、膜4,5を予め傾斜させて
おいてもよい。
【0044】また、図面には示していないが、変位部3
及び脚部2を単位素子(画素)として、この画素が基板
1上に1次元状又は2次元状に配置されている。なお、
膜5を反射部として兼用せずに、例えば、後述する第2
の実施の形態における反射板55と同様の反射板を変位
部3の先端部に固定してもよい。
【0045】以上の説明からわかるように、基板1、変
位部3及び脚部2が熱に応じて変位を発生する熱型変位
素子を構成しており、各単位画素においてこの熱型変位
素子の変位部3が1つずつ用いられている。
【0046】なお、本実施の形態による放射検出装置1
00は、膜の形成及びパターニング、犠牲層の形成及び
除去などの半導体製造技術を利用して、製造することが
できる。
【0047】本実施の形態によれば、脚部2が3層膜
4,5,6で構成されているので、前述した実験結果か
らわかるように、脚部2の全体の幅を狭くしても、脚部
2の強度を高めることができる。このため、基板1表面
における脚部2の占有面積を小さくして、変位部3の占
める面積を大きくすることができ、これにより当該熱型
変位素子の感度を高めることができる。
【0048】そして、本実施の形態によれば、脚部2の
両側の2つの膜4,6が同種の物質で構成されるととも
にそれらの膜厚が略等しくされているので、中間の膜5
の物質にかかわらず、製造条件や熱による脚部2の撓み
や反りがほとんどなくなり、変位部3を所望の状態で支
持することができる。
【0049】ここで、本実施の形態による放射検出装置
100を用いた映像化装置の一例について、図2を参照
して説明する。図2は、この映像化装置を示す概略構成
図である。
【0050】この映像化装置は、前述した放射検出装置
100の他に、読み出し光学系と、撮像手段としての2
次元CCD20と、観察対象としての熱源31からの赤
外線iを集光して放射検出装置100の赤外線吸収部と
しての変位部3が分布している面上に熱源31の赤外線
画像を結像させる赤外線用の結像レンズ30とから構成
されている。
【0051】この映像化装置では、前記読み出し光学系
は、読み出し光を供給するための読み出し光供給手段と
してのLD(レーザーダイオード)10と、LD10か
らの読み出し光を放射検出装置100の全ての画素の反
射部としての膜5へ導く第1レンズ系11と、第1レン
ズ系11を通過した後に全ての画素の反射部としての膜
5にて反射された読み出し光の光線束のうち所望の光線
束のみを選択的に通過させる光線束制限部12と、第1
レンズ系11と協働して各画素の反射部としての膜5と
共役な位置を形成し且つ該共役な位置に光線束制限部1
2を通過した光線束を導く第2レンズ系13とから構成
されている。前記共役な位置にはCCD20の受光面が
配置されており、レンズ系11,13によって全ての画
素の反射部としての膜5とCCD20の複数の受光素子
とが光学的に共役な関係となっている。
【0052】LD10は、第1レンズ系11の光軸Oに
関して一方の側(図2中の右側)に配置されており、当
該一方の側の領域を読み出し光が通過するように読み出
し光を供給する。本例では、LD10が第1レンズ系1
1の第2レンズ系13側の焦点面付近に配置されて、第
1レンズ系11を通過した読み出し光が略平行光束とな
って全ての画素の反射部としての膜5を照射するように
なっている。CCD20上の光学像のコントラストを高
めるため、LD10の前部に読み出し光絞りを設けても
よい。本例では、放射検出装置100は、その基板1の
面(本例では、赤外線が入射しない場合の反射部として
の膜5の面と平行)が光軸Oと直交するように配置され
ている。もっとも、このような配置に限定されるもので
はない。
【0053】光線束制限部12は、前記所望の光線束の
みを選択的に通過させる部位が第1レンズ系11の光軸
Oに関して他方の側(図2中の左側)の領域に配置され
るように構成されている。本例では、光線束制限部12
は、開口12aを有する遮光板からなり、開口絞りとし
て構成されている。本例では、いずれの画素の赤外線吸
収膜4にも赤外線が入射していなくて全ての画素の反射
部としての膜5の面が基板1の面と平行である場合に、
全ての画素の膜5で反射した光線束(各反射部としての
膜5で反射した個別光線束の束)が第1レンズ系11に
よって集光する集光点の位置と開口12aの位置とがほ
ぼ一致するように、光線束制限部12が配置されてい
る。また、開口12aの大きさは、この光線束の前記集
光点での断面の大きさとほぼ一致するように定められて
いる。もっとも、このような配置や大きさに限定される
ものではない。
【0054】図2に示す映像化装置によれば、LD10
から出射した読み出し光の光線束41は、第1レンズ系
11に入射し、略平行化された光線束42となる。次に
この略平行化された光線束42は、放射検出装置100
の全ての画素の反射部としての膜5に、基板1の法線に
対してある角度をもって入射する。
【0055】一方、結像レンズ30によって、熱源31
からの赤外線が集光され、放射検出装置100の変位部
3が分布している面上に、熱源31の赤外線画像が結像
される。これにより、放射検出装置100の各画素の変
位部3に赤外線が入射する。この入射赤外線は、変位部
3により吸収されて熱に変換される。この熱に応じてカ
ンチレバーを構成している変位部3が下方に湾曲して傾
斜する。このため、各反射部としての膜5は、対応する
変位部3に入射した赤外線の量に応じた量だけ基板1の
面に対して傾くこととなる。
【0056】今、全ての画素の変位部3には赤外線が入
射しておらず、全ての画素の反射部としての膜5が基板
1と平行であるものとする。全ての画素の膜5に入射し
た光線束42はこれらの膜5にて反射されて光線束43
となり、再び第1レンズ系11に今度はLD10の側と
は反対の側から入射して集光光束44となり、この集光
光束44の集光点の位置に配置された光線束制限部12
の開口12aの部位に集光する。その結果、集光光束4
4は開口12aを透過して発散光束45となって第2レ
ンズ系13に入射する。第2レンズ系13に入射した発
散光束45は、第2レンズ系13により例えば略平行光
束46となってCCD20の受光面に入射する。ここ
で、各画素の反射部としての膜5とCCD20の受光面
とはレンズ系11,13によって共役な関係にあるの
で、CCD20の受光面上の対応する各部位にそれぞれ
各膜5の像が形成され、全体として、全ての画素の反射
部としての膜5の分布像である光学像が形成される。
【0057】今、ある画素の変位部3にある量の赤外線
が入射して、その入射量に応じた量だけ当該画素の反射
部としての膜5が基板1の面に対して傾いたものとす
る。光線束42のうち当該膜5に入射する個別光線束
は、当該膜5によってその傾き量だけ異なる方向に反射
されるので、第1レンズ系11を通過した後、その傾き
量に応じた量だけ前記集光点(すなわち、開口12a)
の位置からずれた位置に集光し、その傾き量に応じた量
だけ光線束制限部12により遮られることになる。した
がって、CCD20上に形成された全体としての光学像
のうち当該反射部としての膜5の像の光量は、当該膜5
の傾き量に応じた量だけ低下することになる。
【0058】したがって、CCD20の受光面上に形成
された読み出し光による光学像は、放射検出装置100
に入射した赤外線像を反映したものとなる。この光学像
は、CCD20により撮像される。なお、CCD20を
用いずに、接眼レンズ等を用いて前記光学像を肉眼で観
察してもよい。
【0059】なお、読み出し光学系の構成が前述した構
成に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0060】以上は映像化装置の例であったが、図2に
おいて、放射検出装置100として、単一の画素(素
子)のみを有する放射検出装置を用い、2次元CCD2
0に代えて、単一の受光部のみを有する光検出器を用い
れば、赤外線のいわゆるポイントセンサとしての検出装
置を構成することができる。この点は、後述する第2の
実施の形態についても同様である。
【0061】[第2の実施の形態]
【0062】図3は、本発明の第2の実施の形態による
光読み出し型の放射検出装置の単位画素(単位素子)を
示す概略平面図である。図4は図3中のX1−X2線に
沿った概略断面図、図5は図3中のX3−X4線に沿っ
た概略断面図、図6は図3中のX5−X6線に沿った概
略断面図、図7は図3中のX9−X10線に沿った概略
断面図、図8は図3中のY1−Y2線に沿った概略断面
図、図9は図3中のY3−Y4線に沿った概略断面図で
ある。図面には示していないが、図3中のX7−X8線
に沿った概略断面図は、図5と同様となる。なお、以下
の説明において、左右は図3中の左右をいうものとす
る。
【0063】この放射検出装置は、基体としてのSi基
板51と、基板51から立ち上がった2つの脚部52,
53と、脚部52,53を介して基板51に支持され熱
に応じて基板51に対して変位する変位部54と、変位
部54に生じた変位に応じた所定の変化を得るために用
いられる変位読み出し部材としての、受光した読み出し
光jを反射する反射板55とを備えている。
【0064】脚部52は、互いに重なった厚さ1000
オングストロームの下側のSiO膜61、厚さ1000
オングストロームの中間のAl膜62及び厚さ1000
オングストロームの上側のSiO膜63で構成されてい
る。同様に、脚部53は、互いに重なった厚さ1000
オングストロームの下側のSiO膜64、厚さ1000
オングストロームの中間のAl膜65及び厚さ1000
オングストロームの上側のSiO膜66で構成されてい
る。なお、図3中、52a及び53aは、脚部52,5
3における基板51とのコンタクト部をそれぞれ示して
いる。
【0065】変位部54は、5つの個別変位部71〜7
5と、これらの所定の端部間を機械的に接続する3つの
接続部76〜78とから構成されている。変位部54
は、個別変位部71の左側端部が脚部52を介して、個
別変位部75の左側端部が脚部53を介して基板51に
対してそれぞれ固定されることにより、基板51から空
間を隔てて浮いている。個別変位部71の右側端部と個
別変位部72の右側端部とが接続部76により、個別変
位部72の左側端部と個別変位部73の左側端部と個別
変位部74の左側端部とが接続部77により、個別変位
部74の右側端部と個別変位部75の右側端部とが接続
部78により、それぞれ機械的に接続されている。
【0066】各個別変位部71〜75は、左右方向に直
線状に延びており、互いに平行に配置されている。各個
別変位部71,73,75は、Al膜と、その下に積層
されたSiO膜とから構成されている。各個別変位部7
2,74は、逆に、SiO膜と、その下に積層されたA
l膜とから構成されている。図3乃至図7中、81〜8
5はそれぞれ個別変位部71〜75を構成するAl膜を
示し、91〜95はそれぞれ個別変位部71〜75を構
成するSiO膜を示す。Alの膨張係数はSiOの膨張
係数より大きく、各個別変位部71,73,75の各2
つの膜の膨張係数の大小関係と、各個別変位部72,7
4の各2つの膜の膨張係数の大小関係とは、互いに逆と
なっている。
【0067】各接続部76〜78は、脚部52,53と
同様に、互いに重なった厚さ1000オングストローム
の下側のSiO膜、厚さ1000オングストロームの中
間のAl膜及び厚さ1000オングストロームの上側の
SiO膜で構成されている。図3乃至図9中、101〜
103はそれぞれ接続部76〜78を構成する下側のS
iO膜を示し、111〜113はそれぞれ接続部76〜
78を構成する中間のAl膜を示し、121〜123は
それぞれ接続部76〜78を構成する上側のSiO膜を
示す。
【0068】本実施の形態では、脚部52の下側のSi
O膜61、個別変位部71の下側のSiO膜91及び接
続部76の下側のSiO膜101が、連続した1つのS
iO膜となっている。脚部53の下側のSiO膜64、
個別変位部75の下側のSiO膜95及び接続部78の
下側のSiO膜103が、連続した1つのSiO膜とな
っている。個別変位部73の下側のSiO膜93及び接
続部77の下側のSiO膜102が、連続した1つのS
iO膜となっている。接続部76の上側のSiO膜12
1、個別変位部72の上側のSiO膜92、接続部77
の上側のSiO膜122、個別変位部74の上側のSi
O膜94及び接続部78の上側のSiO膜123が、連
続した1つのSiO膜となっている。
【0069】個別変位部71〜75は、赤外線を吸収す
る赤外線吸収部を兼用している。必ずしも、各個別変位
部71〜75を構成している2つの膜が赤外線吸収部を
兼用する必要はなく、例えば、下側の膜の下面に金黒等
の赤外線吸収膜を形成しておいてもよい。
【0070】以上の説明からわかるように、本実施の形
態では、5つの個別変位部71〜75が全体として機械
的に接続された1つの接続体をなすように、個別変位部
71〜75の各端部がそれぞれ、基板51に対して固定
されるかあるいは他の個別変位部の一端部に接続部76
〜78を介して機械的に接続されている。そして、個別
変位部71,75の左側端部が基板51に対してそれぞ
れ固定され、個別変位部72〜74の両端部のいずれも
が基板51に対しては固定されていない。
【0071】ここで、複数の個別変位部のうちのある個
別変位部から基板51に対して機械的に連続するルート
のうち、当該ルートに含まれる個別変位部の数が最も少
なくなるルートにおいて、当該個別変位部が前記基板5
1の側から数えてN番目の個別変位部である場合に、当
該個別変位部を第N段の個別変位部であると定義し、第
N段の個別変位部を第N+1段の個別変位部に対する前
段の個別変位部、第N+1段の個別変位部を第N段の個
別変位部に対する次段の個別変位部であると定義する。
また、Nが最大値をとる個別変位部を最終段の個別変位
部であると定義する。
【0072】前述した定義に従うと、個別変位部71は
第1段、個別変位部72は第2段、個別変位部73は第
3段、個別変位部74は第2段、個別変位部75は第1
段の個別変位部であり、個別変位部73が最終段の個別
変位部である。第1段の個別変位部71,75の数が2
つであり、最終段の個別変位部73の数が1つである。
一方の第1段の個別変位部71から最終段の個別変位部
73にかけての構造と、他方の第1段の個別変位部75
から最終段の個別変位部73にかけての構造とが対称的
になっている。なお、本発明では、例えば、最終段の個
別変位部の数は2つでもよいし、第1段の個別変位部の
数は1つでもよい。
【0073】前述した説明からわかるように、本実施の
形態では、各接続部76〜78において、同じ接続部を
介して互いに接続された前段の個別変位部の端部及び次
段の個別変位部の端部は、それぞれ当該前段及び次段の
個別変位部の互いに同じ側の端部となっている。例え
ば、同じ接続部76を介して互いに接続された第1段
(前段)の個別変位部71の端部及び第2段(次段)の
個別変位部72は、それぞれ当該個別変位部71,72
の互いに同じ側の端部である右側端部となっている。こ
れにより、個別変位部71,72は接続部76において
折り返されたような形態をなすことになる。もっとも、
本発明では、このような折り返し形態に限定されるもの
ではなく、例えば、ある接続部において、前段の個別変
位部の右側端部と次段の個別変位部の左側端部とが機械
的に接続されてもよい。
【0074】反射板55は、その中央が反射板取り付け
用脚部56を介して変位部54の最終段の個別変位部7
3の先端部に対して固定されることにより、変位部54
の上方に空間を隔てて配置され、単位画素領域のほぼ全
体をカバーするように配置されている。図6に示すよう
に、個別変位部73の一部を構成しているSiO膜10
2が個別変位部73の先端から更に右方向に若干延びて
おり、この延びた部分93aに反射板取り付け用脚部5
6の下部が固定されている。反射板取り付け用脚部56
は、反射板55を構成するAl膜がそのまま延びて構成
されている。反射板取り付け用脚部55と前記部分93
aとが、個別変位部73の先端部と反射板55の中央と
を機械的に接続する接続部を構成している。
【0075】なお、このような反射板55を設けずに、
個別変位部73の上側のAl膜83を、変位部54に生
じた変位に応じた所定の変化を得るために用いられる変
位読み出し部材としての、受光した読み出し光jを反射
する反射板として、兼用してもよい。この場合、変位部
54の上方にマスクを設け、このマスクによって個別変
位部73のAl膜83のみに読み出し光jが照射される
ようにすればよい。
【0076】図面には示していないが、変位部54及び
脚部52,53及び反射板55を単位素子(画素)とし
て、この画素が基板51上に1次元状又は2次元状に配
置されている。
【0077】以上の説明からわかるように、基板51、
変位部54及び脚部52,53が熱に応じて変位を発生
する熱型変位素子を構成している。
【0078】本実施の形態による放射検出装置によれ
ば、下方から赤外線iが入射すると、個別変位部71〜
75が赤外線iを吸収して熱を発生する。この熱によ
り、(1)個別変位部71の右側端部が図4に示すよう
にその左側端部に対して相対的に下方に変位するよう
に、個別変位部71が撓み、(2)個別変位部72の左
側端部が図5に示すようにその右側端部に対して相対的
に上方に変位するように、個別変位部72が撓み、
(3)個別変位部73の右側端部が図6に示すようにそ
の左側端部に対して相対的に下方に変位するように、個
別変位部73が撓み、(4)個別変位部75が図7に示
すように個別変位部71と同様に撓み、(5)個別変位
部74が個別変位部72と同様に撓む。この時、個別変
位部73の右側端部が初期状態に対して変位した角度変
化量(角度に関する変位量)は、ちょうど、個別変位部
71,75の長さL1(図4、図7)と個別変位部7
2,74の長さL2(図5)と個別変位部73の長さL
3(図6)の合計の長さ(L1+L2+L3)を持った
単一の個別変位部で変位部54を構成した場合に得られ
る角度変化量に等しくなる。
【0079】このように大きな変位量を得ることがで
き、ひいては検出感度を高めることができるにも関わら
ず、前段の個別変位部と次段の個別変位部とが接続部に
おいて互いに折り返されたように機械的に連続している
ので、変位部54の左右方向の長さがL1+L2+L3
の長さに比べてかなり短くなる。したがって、複数の変
位部54を基板51上に配置する場合であっても、複数
の変位部54の左右方向の分布密度を高めることがで
き、左右方向の空間分解能が向上し、得られる画像の画
質が劣化してしまうようなことがない。また、変位部5
4の左右方向の長さが短くなるので、変位部54の重心
位置は、単一の個別変位部で変位部54を構成した場合
と比べて、脚部52,53間の中点に近い位置にあるこ
とから、バランスが良く、安定している。このため、脚
部52,53に加わる応力が低下し、機械的に強度の高
い構造が実現される。
【0080】また、本実施の形態によれば、脚部52,
53がそれぞれ3層膜61〜63及び3層膜64〜66
で構成されているので、各脚部52,53の幅を狭くし
つつ、各脚部52,53の強度を高めることができる。
このため、基板51表面における脚部52,53の占有
面積を小さくして、変位部54の占める面積を大きくす
ることができ、これにより当該熱型変位素子の感度を高
めることができる。
【0081】そして、本実施の形態によれば、脚部52
の両側の2つの膜61,63及び脚部53の両側の2つ
の膜64,66がそれぞれ同種の物質で構成されるとと
もにそれらの膜厚が等しくされているので、中間の膜6
2,65の物質にかかわらず、製造条件や熱による脚部
52,53の撓みや反りがほとんどなくなり、変位部5
4を所望の状態で支持することができる。
【0082】ところで、本実施の形態では、脚部52,
53の強度のみならず、各個別変位部71〜75間を接
続する接続部76〜78の強度も十分に高める必要があ
る。この点、本実施の形態によれば、脚部52,53と
同様に、接続部76〜78がそれぞれ3層膜101,1
11,121、3層膜102,112,122及び3層
膜103,113,123で構成されているので、各接
続部76〜78の全体の幅を狭くして軽量化を図りつ
つ、接続部76〜78の強度を高めることができる。こ
のように接続部76〜78を軽量化できることから、脚
部52,53の強度をさほど高める必要がなくなり、好
ましい。
【0083】そして、本実施の形態によれば、各接続部
76〜78の両側の2つの膜も同種の物質で構成される
とともにそれらの膜厚が等しくされているので、その中
間の膜の物質にかかわらず、製造条件や熱による脚部の
撓みや反りがほとんどなくなり、各個別変位部71〜7
5を所望の状態で支持することができる。
【0084】なお、本実施の形態による放射検出装置
が、図2に示す映像化装置において放射検出装置100
の代わりに用いることができることは、言うまでもな
い。
【0085】次に、本実施の形態による放射検出装置の
製造方法の一例について、図10乃至図13を参照して
説明する。図10乃至図13は、この製造工程を模式的
に示す概略平面図である。これらの図では、1画素分の
領域300のみを示している。
【0086】まず、図10に示すように、Si基板51
上の全面に犠牲層となるレジスト(図示せず)を塗布
し、脚部52,53のコンタクト部52a,53aに応
じた開口150をフォトリソグラフィーにより形成す
る。
【0087】次に、脚部52,53の下側膜61,6
4、個別変位部71,73,75の下側膜91,93,
95及び接続部76〜78の下側膜101〜103とな
るべきSiO膜を、厚さ1000オングストロームだけ
P−CVD法によりデポした後、フォトエッチ法により
パターニングし、膜61,64,91,93,95,1
01〜103の形状とする(図11)。
【0088】次に、脚部52,53の中間膜62,6
5、個別変位部71,73,75の上側膜81,83,
85、個別変位部72,74の下側膜82,84及び接
続部76〜78の中間膜111〜113となるべきAl
膜を、厚さ1000オングストロームだけ蒸着法により
デポした後、フォトエッチ法によりパターニングし、膜
62,65,81〜85,111〜113の形状とする
(図12)。
【0089】次に、脚部52,53の上側膜63,6
6、個別変位部72,74の上側膜92,94及び接続
部76〜78の上側膜121〜123となるべきSiO
膜を、厚さ1000オングストロームだけP−CVD法
によりデポした後、フォトエッチ法によりパターニング
し、膜63,66,92,94,121〜123の形状
とする(図13)。
【0090】その後、図面には示していないが、図13
に示す状態の基板の上面全体に犠牲層となるレジストを
更に塗布し、反射板55の脚部56に応じた開口をフォ
トリソグラフィーにより形成する。次いで、反射板55
となるべきAl膜を蒸着法にデポした後、フォトエッチ
法によりパターニングし、反射板55の形状とする。
【0091】最後に、この状態の基板を、ダイシングな
どによりチップ毎に分割し、犠牲層である前記2回塗布
したレジストをアッシング法などにより除去する。これ
により、図3乃至図9に示す放射検出装置が完成する。
【0092】このように、本例では、個別変位部71〜
75を作製するのと同時に脚部52,53及び接続部7
6〜78を作製することができ、しかも、これらの作製
を3回の成膜・フォトエッチ工程のみで行うことがで
き、製造工程が簡略化され、好ましい。このような製造
方法が可能であるのは、本実施の形態による放射検出装
置において、個別変位部71,73,75が下から順に
SiO膜及びAl膜で構成され、個別変位部72,74
が上から順にSiO膜及びAl膜で構成され、脚部5
2,53及び接続部76〜78の全てが、SiO膜の両
側膜とAl膜の中間膜とで構成されていることによるも
のである。
【0093】以上、本発明の各実施の形態について説明
したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるもの
ではない。例えば、膜の材料や寸法等は前述したものに
限定されない。
【0094】また、前述した各実施の形態は、光読み出
し型の放射検出装置及びそれに用いられる熱型変位素子
の例であったが、本発明は、例えば、静電容量型の放射
検出装置及びそれに用いられる熱型変位素子や、その他
の種々の熱型変位素子にも適用することができる。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
脚部の占有面積を抑えつつ脚部の強度を高めて感度を向
上させることができる熱型変位素子及びこれを用いた放
射検出装置を提供することができる。
【0096】また、本発明によれば、脚部の占有面積を
抑えつつ脚部の強度を高めることができ、しかも、製造
直後においてもその後に熱を受けても変位部を所望の状
態に支持することができる熱型変位素子及びこれを用い
た放射検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による放射検出装置
の単位画素を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す放射検出装置を用いた映像化装置の
一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による放射検出装置
の単位画素を示す概略平面図である。
【図4】図3中のX1−X2線に沿った概略断面図であ
る。
【図5】図3中のX3−X4線に沿った概略断面図であ
る。
【図6】図3中のX5−X6線に沿った概略断面図であ
る。
【図7】図3中のX9−X10線に沿った概略断面図で
ある。
【図8】図3中のY1−Y2線に沿った概略断面図であ
る。
【図9】図3中のY3−Y4線に沿った概略断面図であ
る。
【図10】図3乃至図9に示す放射検出装置の一例の製
造方法の製造工程を示す概略平面図である。
【図11】図10に引き続く工程を示す概略平面図であ
る。
【図12】図11に引き続く工程を示す概略平面図であ
る。
【図13】図12に引き続く工程を示す概略平面図であ
る。
【図14】本発明者が行った実験の説明図である。
【符号の説明】
1,51 基板 2,52,53 脚部 3,54 変位部 55 反射板 71〜75 個別変位部 76〜78 接続部

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体と、該基体から立ち上がった脚部
    と、該脚部を介して前記基体に支持され熱に応じて前記
    基体に対して変位する変位部とを備えた熱型変位素子に
    おいて、前記脚部が互いに重なった3つの膜で構成され
    たことを特徴とする熱型変位素子。
  2. 【請求項2】 前記3つの膜のうちの両側の2つの膜は
    同種の物質からなり、前記両側の2つの膜の膜厚が略等
    しいことを特徴とする請求項1記載の熱型変位素子。
  3. 【請求項3】 前記変位部は複数の個別変位部を有し、 前記複数の個別変位部の各々は、直線状に延びるととも
    に、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なっ
    た少なくとも2つの層を有し、 前記複数の個別変位部が互いに平行に配置され、 前記複数の個別変位部が全体として機械的に接続された
    1つの接続体をなすように、前記複数の個別変位部の各
    端部がそれぞれ、前記基体に対して固定されるかあるい
    は他の個別変位部の一端部に接続部を介して機械的に接
    続され、 前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変
    位部の一端部が前記基体に対して固定され、 前記複数の個別変位部のうちの少なくとも1つの個別変
    位部の両端部のいずれもが前記基体に対しては固定され
    ないことを特徴とする請求項1又は2記載の熱型変位素
    子。
  4. 【請求項4】 前記複数の個別変位部のうちのある個別
    変位部から前記基体に対して機械的に連続するルートの
    うち、当該ルートに含まれる個別変位部の数が最も少な
    くなるルートにおいて、当該個別変位部が前記基体の側
    から数えてN番目の個別変位部である場合に、当該個別
    変位部を第N段の個別変位部であると定義し、第N段の
    個別変位部を第N+1段の個別変位部に対する前段の個
    別変位部、第N+1段の個別変位部を第N段の個別変位
    部に対する次段の個別変位部であると定義したとき、 前記各接続部において、同じ接続部を介して互いに接続
    された前段の個別変位部の端部及び次段の個別変位部の
    端部は、それぞれ当該前段及び次段の個別変位部の互い
    に同じ側の端部であり、 前記各段の個別変位部の前記少なくとも2つの層の物質
    の膨張係数の大小関係と、その次段の個別変位部の前記
    少なくとも2つの層の物質の膨張係数の大小関係とが、
    互いに逆であることを特徴とする請求項3記載の熱型変
    位素子。
  5. 【請求項5】 前記接続部が互いに重なった3つの膜で
    構成されたことを特徴とする請求項3又は4記載の熱型
    変位素子。
  6. 【請求項6】 前記接続部を構成する前記3つの膜のう
    ちの両側の2つの膜はそれぞれ同種の物質からなり、前
    記接続部を構成する前記両側の2つの膜の膜厚が略等し
    いことを特徴とする請求項5記載の熱型変位素子。
  7. 【請求項7】 前記複数の個別変位部の各々は、所定の
    順序で互いに重なった第1物質からなる膜及び第2物質
    からなる膜で構成されるか、あるいは、逆の順序で互い
    に重なった前記第1物質からなる膜及び前記第2物質か
    らなる膜で構成され、 前記脚部及び前記接続部の全ては、前記第1物質からな
    る両側の膜と前記第2物質からなる中間の膜とでそれぞ
    れ構成されたことを特徴とする請求項3乃至6のいずれ
    かに記載の熱型変位素子。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれかに記載の熱型
    変位素子を備え、入射した放射により発生する熱に応じ
    て前記変位部が変位し、前記変位部の変位に応じた所定
    の変化を得ることを特徴とする放射検出装置。
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