JP2000202610A - 金属射出成形機の射出方法及びその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属射出成形機において、金型内に充填され
た溶融材料に、設定した保圧圧力よりも過大な圧力が加
わることがない射出方法及びその装置を提供する。 【解決手段】 第１ヘッド側油室２、第２ヘッド側油室
４及びロッド側油室６からなる２段式の射出シリンダ２
０に対して、射出工程中は第１ヘッド側油室２に圧油を
供給し、第２ヘッド側油室４とロッド側油室６をタンク
１７と接続することにより高速かつ低圧で射出を行い、
射出工程終期に金型に充填した溶融材料の負荷により第
１ヘッド側油室２に接続された流路７の圧力が設定圧力
に上昇すると第１ヘッド側油室２と第２ヘッド側油室４
に圧油を供給し、ロッド側油室６をタンク１７と接続す
ることにより射出速度を減速し、低速かつ高圧の状態で
保圧工程に切り換える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、マグネシウム合金
やアルミニウム合金等の金属材料を射出成形する金属射
出成形機の射出方法及びその装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の金属射出成形機の射出方法は、溶
融材料が金型内に充填されると瞬時に凝固するため、高
速で射出する射出工程と、充填後の収縮によるヒケやミ
クロシュリンケージ、エアーやガスの巻込みによるボイ
ド等を防止するために射出工程よりも高い圧力で保持す
る保圧工程とからなる。この方法に使用される射出装置
は、図４に示すようにへッド側油室１０２とロッド側油
室１０６から構成される射出シリンダ１２０を有し、射
出工程中に主方向切換弁１０８を介してへッド側油室１
０２に油圧ポンプ１０１からの圧油を注入し、ロッド側
油室１０６をタンク１１７と接続することによりピスト
ンロッド１２８及びピストンロッド１２８に連結したス
クリュ１３８を高速で前進させ射出する。射出工程から
保圧工程ヘの切り換えは、ピストンロッド１２８に取り
付けられた図示しない位置検出器でスクリュ１３８の位
置を検出し、スクリュ１３８の位置が予め設定された射
出保圧切換位置に到達すると、位置検出器と接続してい
る金属射出成形機のコントローラから図示しない圧力制
御弁に指令が出されて保圧工程に切り換わる。

【０００３】図５は、金属射出成形機における一般的な
射出工程及び保圧工程におけるスクリュ位置に対する射
出圧力、保圧圧力及び射出速度を示しており、射出開始
位置から計量された溶融材料が金型内に殆ど充填される
までの間は溶融材料の粘度が小さいため、流動抵抗が小
さく射出圧力は保圧行程中の保圧圧力と比較すると非常
に小さい。また、射出行程中の射出速度は、溶融材料が
金型内に充填されると瞬時に凝固するため高速であるこ
とが必要である。射出保圧切換位置を通過した後の保圧
工程では充填後の収縮によるヒケやミクロシュリンケー
ジ、エアーやガスの巻込みによるボイド等を防止するた
めに射出工程中の射出圧力より高い圧力で保持される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
金属射出成形機の射出方法は、予め設定された射出保圧
切換位置において射出工程から保圧工程に切り換えて
も、高速で前進しているピストンロッドの慣性により前
進速度が急激に減速せず、金型内に充填された溶融材料
の負荷によりスクリュが減速され、スクリュに連結され
たピストンロッドが減速されて保圧工程に切り換わる。
従って、予め設定された射出保圧切換位置を通過した
後、金型に充填された溶融材料に慣性により高速で前進
するピストンロッド及びスクリュによる圧力が加わるた
め、図５に示すように、設定した保圧圧力よりも過大な
圧力になり、成形品にバリが発生するという問題があっ
た。

【０００５】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであって、金属射出成形機において、金型内
に充填された溶融材料に、設定した保圧圧力よりも過大
な圧力が加わることがない射出方法及びその装置を提供
することを課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】小径の第１ヘッド側油
室、大径の第２ヘッド側油室及びロッド側油室からなる
２段式の射出シリンダを用いて、射出工程中に第１ヘッ
ド側油室に主方向切換弁を介して圧油供給源からの油圧
を供給し、第２ヘッド側油室とロッド側油室を第１方向
切換弁及び主方向切換弁を介してタンクに接続すること
により高速かつ低圧でピストンロッド及びスクリュを前
進させ、射出工程終期に金型に充填した溶融材料の負荷
により第１ヘッド側油室に接続された流路の圧力が予め
設定された圧力に上昇すると圧力制御弁及び第３方向切
換弁により第１方向切換弁の位置を切り換え、第１ヘッ
ド側油室と第２ヘッド側油室を第１方向切換弁を介して
接続し、第１ヘッド側油室と第２ヘッド側油室に第１方
向切換弁及び主方向切換弁を介して圧油を供給し、ロッ
ド側油室を第１方向切換弁及び主方向切換弁を介してタ
ンクに接続することによりピストンロッド及びスクリュ
の前進速度を減速し、低速かつ高圧の状態で保圧工程に
切り換える。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基
づき図面を参照して説明する。図１は、本発明による金
属射出成形機の射出装置の一例を示す構成図であり、図
２は、射出装置の２段式射出シリンダの部分断面図であ
る。

【０００８】本発明による金属射出成形機の射出装置
は、図１及び図２に示すように２段式射出シリンダ２０
と、この射出シリンダ２０を作動する油圧回路とから構
成されている。

【０００９】２段式射出シリンダ２０は、図２に示すよ
うに、へッドカバー２２とピストンロッド２８端面に設
けられた小径の第１ピストン３２及びシリンダハウジン
グ２６とで形成される第１ヘッド側油室２、第１ピスト
ン３２とピストンロッド２８の中問部に設けられた大径
の第２ピストン３０及びシリンダハウジング２６とで形
成される第２ヘッド側油室４、第２ピストン３０、ピス
トンロッド２８、ロッドカバー２４、ブッシユ３６及び
シリンダハウジング２６とで形成されるロッド側油室６
から構成され、第１ピストン３２及び第２ピストン３０
の外周面はシリンダハウジング２６の内周面に摺動自在
に内接されており、ピストンロッド２８はスクリュ３８
（図１参照）に連結されている。

【００１０】油圧回路は、図１に示すように、２段式射
出シリンダ２０の第２ヘッド側油室４とロッド側油室６
に接続するポートを有する第１方向切換弁１０と、この
第１方向切換弁１０と第１ヘッド側油室２に接続するポ
ートを有する主方向切換弁８と、この主方向切換弁８に
接続される油圧ポンプ１及びタンク１７と、第１ヘッド
側油室２と主方向切換弁８間の流路７に接続される圧力
制御弁１６と、第１方向切換弁１０の位置を切り換える
パイロット圧回路とからなり、このパイロット圧回路
は、油圧ポンプ１に接続されて射出工程初期に切り換わ
る第２方向切換弁１２と、この第２方向切換弁１２に接
続されて射出工程終期に前記圧力制御弁１６のパイロッ
ト圧によって切り換わる第３方向切換弁１４とを有す
る。

【００１１】次に、射出装置の作用について説明する。
まず、射出工程初期に第２方向切換弁１２をＧ位置とし
第２方向切換弁１２に油圧ポンプ１からの圧油を供給す
ることにより第１方向切換弁１０がＦ位置となり第２ヘ
ッド側油室４とロッド側油室６を接続する。ここで主方
向切換弁８をＤ位置とし第１ヘッド側油室２に油圧ポン
プ１からの圧油を供給し、第２ヘッド側油室４とロッド
側油室６を第１方向切換弁１０及び主方向切換弁８を介
してタンク１７に接続することにより、ピストンロッド
２８及びピストンロッド２８に連結されたスクリュ３８
が前進する。射出工程終期に金型キャビテイに充填され
た溶融材料の圧力によつて第１ヘッド側油室２の圧力が
上昇し、予め設定された圧力に到達すると圧力制御弁１
６が通位置になって第３方向切換弁１４がＩ位置となり
第２方向切換弁１２に供給される圧油が第３方向切換弁
１４を介して第１方向切換弁１０に作用して第１方向切
換弁１０がＥ位置となり、第１ヘッド側油室２と第２ヘ
ッド側油室４を第１方向切換弁１０を介して接続し、主
方向切換弁８を介して圧油を供給し、ロッド側油室６を
第１方向切換弁１０及び主方向切換弁８を介してタンク
１７に接続して保圧工程に切り換わる。

【００１２】射出工程中に主方向切換弁８を介して射出
シリンダ２０に供給する圧油の流量及び圧力を一定とす
ると射出工程中に第１ヘッド側油室２に圧油を供給した
ときの射出速度Ｖｌ及び射出力Ｆｌと、保圧工程に切り
換わる際に第１ヘッド側油室２及び第２ヘッド側油室４
に圧油を供給したときの射出速度Ｖ２及び射出力Ｆ２と
の関係は、下記数式１で示される。

【００１３】

【数１】Ｖ２＝｛Ａｌ／（Ａｌ十Ａ２）｝×Ｖｌ Ｆ２＝｛（Ａｌ＋Ａ２）／Ａｌ｝×Ｆｌ 上記数式１において、Ａｌは第１ヘッド側油室２の受圧
面積、 Ａ２は第２ヘッド側油室４の有効受圧面積であ
る。

【００１４】このように、保圧工程に切り換わる際には
射出工程中と比較してピストンロッド２８及びピストン
ロッド２８に連結したスクリュ３８の前進速度を減速
し、低速かつ高圧の状態で計量した溶融材料を金型キャ
ビテイに充填することができるため、図３に示すよう
に、金型内に充填された溶融材料には慣性により前進す
るピストンロッド２８及びスクリュ３８の圧力が加わる
ことなく保圧工程に切り換えることができる。

【００１５】なお、上記の説明においては、射出及び保
圧工程における圧油供給源を油圧ポンプとしたが、代わ
りにアキュムレータを用いたり、あるいは油圧ポンプと
アキュムレータを併用しても良い。

【００１６】また、射出工程における圧油の流量及び圧
力を一定としたが、別の油圧回路を追加して、圧油の流
量及び圧力を変化させればより適切な制御が可能とな
る。

【００１７】

【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載するような効果を奏する。すな
わち、射出工程から保圧工程に切り換わる際にスクリュ
の前進速度を減速し、低速かつ高圧の状態で溶融材料を
金型キャビテイに充填させることができるため、バリの
発生しない良好な成形品を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による金属射出成形機の射出装置の一例
を示す構成図である。

【図２】射出装置の２段式射出シリンダの部分断面図で
ある。

【図３】本発明の金属射出成形機のスクリュ位置に対す
る射出圧力、保圧圧力及び射出速度を示した図である。

【図４】従来の金属射出成形機の射出装置の構成図であ
る。

【図５】従来の金属射出成形機のスクリュ位置に対する
射出圧力、保圧圧力及び射出速度を示した図である。

【符号の説明】

１ 油圧ポンプ（圧油供給源） ２ 第１ヘッド側油室 ４ 第２ヘッド側油室 ６ ロッド側油室 ７ 流路 ８ 主方向切換弁 １０ 第１方向切換弁 １２ 第２方向切換弁 １４ 第３方向切換弁 １６ 圧力制御弁 １７ タンク ２０ ２段式射出シリンダ ２２ ヘッドカバー ２４ ロッドカバー ２６ シリンハウジング ２８ ピストンロッド ３０ 第２ピストン ３２ 第１ピストン ３６ ブッシュ ３８ スクリュ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 第１ヘッド側油室（２）、第２ヘッド側
   油室（４）及びロッド側油室（６）からなる２段式の射
   出シリンダ（２０）に対して、射出工程中は第１ヘッド
   側油室（２）に圧油を供給し、第２ヘッド側油室（４）
   とロッド側油室（６）をタンク（１７）と接続すること
   により高速かつ低圧で射出を行い、射出工程終期に金型
   に充填した溶融材料の負荷により第１ヘッド側油室
   （２）に接続された流路（７）の圧力が設定圧力に上昇
   すると第１ヘッド側油室（２）と第２ヘッド側油室
   （４）に圧油を供給し、ロッド側油室（６）をタンクと
   接続することにより射出速度を減速し、低速かつ高圧の
   状態で保圧工程に切り換えることを特徴とする金属射出
   成形機の射出方法。
2. 【請求項２】 小径の第１ヘッド側油室（２）、大径の
   第２ヘッド側油室（４）及びロッド側油室（６）からな
   る２段式の射出シリンダ（２０）と、第２ヘッド側油室
   （４）とロッド側油室（６）に接続するポートを有する
   第１方向切換弁（１０）と該第１方向切換弁（１０）と
   第１ヘッド側油室（２）に接続するポートを有する主方
   向切換弁（８）と該主方向切換弁（８）に接続される圧
   油供給源（１）とを有し射出工程中は第１ヘッド側油室
   （２）に圧油を供給し、第２ヘッド側油室（４）とロッ
   ド側油室（６）を第１方向切換弁（１０）を介してタン
   ク（１７）と接続し、射出工程終期に第１ヘッド側油室
   （２）に接続された流路（７）の圧力が設定圧力まで上
   昇し圧力制御弁（１６）により第１方向切換弁（１０）
   の位置が切り換わると、第１ヘッド側油室（２）と第２
   ヘッド側油室（４）を第１方向切換弁（１０）を介して
   接続し、第１ヘッド側油室（２）と第２ヘッド側油室
   （４）に圧油を供給しロッド側油室（６）を第１方向切
   換弁（１０）を介してタンク（１７）と接続する油圧回
   路とで構成されていることを特徴とする金属射出成形機
   の射出装置。
3. 【請求項３】 前記第１方向切換弁（１０）の位置を切
   り換えるパイロット圧回路は、圧油供給源（１）に接続
   されて射出工程初期に切り換わる第２方向切換弁（１
   ２）と、該第２方向切換弁（１２）に接続されて射出工
   程終期に前記圧力制御弁（１６）のパイロット圧によっ
   て切り換わる第３方向切換弁（１４）とを有することを
   特徴とする金属射出成形機の射出装置。