JP2000201689A - センダイウイルス発現系を用いたサイトカインの製造方法 - Google Patents
センダイウイルス発現系を用いたサイトカインの製造方法Info
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Abstract
を大量に安価に生産する。 【解決手段】 サイトカイン遺伝子を含有する組み換え
センダイウイルスを鶏卵に感染させ、発現させたサイト
カインを回収する。センダイウイルスベクター発現系を
用いて鶏卵において発現させることにより、哺乳類のサ
イトカインに近い糖鎖がついたサイトカインを大量に効
率よく生産することができ、精製も容易である。
Description
伝子組み換え技術による製造方法に関する。より詳しく
は、本発明は、センダイウイルスベクターを用い、鶏卵
においてサイトカインを発現させることにより、医薬と
して有用なサイトカインを大量に安価に製造する方法に
関する。
キン、コロニー刺激因子 (CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)等
のサイトカインは、各種の血球細胞の増殖と分化を制御
するタンパク質性の生理活性物質であり、細胞複製、分
化、生存維持および細胞死、機能発現などの細胞応答を
制御し、免疫系の制御や炎症反応、細胞や組織のホメオ
スタシスの維持に働く。単一のサイトカインが多数の活
性をもつこと、複数のサイトカインが重複した活性をも
つこと、単一の細胞において多数のサイトカインが相互
作用することなどによりサイトカインネットワークが形
成される。インターフェロンには主としてインターフェ
ロンα、β、γが知られており、これらは抗ウイルス作
用、細胞増殖抑制作用、免疫調節作用等を有する。
球、マクロファージなどの免疫担当細胞の産生する一群
のタンパク質性の生物活性物質を称し、現在インターロ
イキン1〜18までが解明されている。コロニー刺激因子
には、好中球コロニーをつくる活性をもつ顆粒球コロニ
ー刺激因子 (G-CSF)、マクロファージコロニーをつくる
活性をもつマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF)、
顆粒球/マクロファージ混合コロニーをつくる活性をも
つ顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)
などがある。その他のサイトカインには、腫瘍壊死因子
(TNF)に加え、トランスフォーミング増殖因子 (TGF-
β) を代表とするTGF-βスーパーファミリー、上皮増殖
因子 (EGF)や血小板由来増殖因子 (PDGF) などの増殖因
子群、およびエリスロポエチンやトロンボポエチンなど
の造血因子も含まれる。上述のサイトカインには、各種
感染症や腫瘍の治療薬、また血小板減少症、好中球減少
症、再生不良性貧血などの治療薬として有用であるた
め、遺伝子組み換え技術を利用して製造あるいは開発中
のものがある。
なる医薬品を臓器や血液から調製する場合、原料の不足
やコスト高、さらに感染のリスク等の問題があり、それ
を解決する手段として、医療用のタンパク質もしくはペ
プチドを遺伝子工学を利用して生産する方法が発展して
きた。現在までに用いられている、医薬としてのタンパ
ク質の大量発現系としては、大腸菌のような原核生物を
宿主とする系、真核細胞であるが単細胞の酵母を宿主と
する系、バキュロウイルス発現系を用い昆虫細胞を宿主
とする系、チャイニーズハムスター卵母細胞 (CHO 細
胞) などの哺乳動物細胞を宿主とする系などがある。ま
た、最近、外来遺伝子を組み込んだ動物個体であるトラ
ンスジェニック動物を作製することができるようにな
り、これを利用して有用タンパク質を製造する方法が開
発されている。例えばウシ、ヒツジ、ヤギなどの乳腺細
胞で特異的に形質を発現させ、有用タンパク質を乳汁中
に分泌させて、目的とするタンパク質を回収する方法が
有用タンパク質大量発現系として期待されている。現
在、ヒト血清アルブミンなどの血液製剤を安価に作る方
法として開発が進められ、また血栓溶解剤のt-PAをヤギ
の乳汁中に分泌させる試みがなされている。
に関しては、インターフェロンα、インターフェロン
β、インターフェロンγ、インターロイキン-2などを大
腸菌の系で、G-CSF 、インターロイキン-11 を CHO細胞
の系で、GM-CSFを酵母の系で生産することが実施あるい
は提案されている。
発現系にはいずれも何らかの問題点があり、特に、目的
のタンパク質が糖鎖を有している場合には、糖鎖の有無
がそのタンパク質の生理活性や安定性に影響するので、
発現系の宿主において発現したタンパク質に糖鎖を結合
させることができるかどうかが問題となる。大腸菌の系
では大量培養が容易であり、増殖速度も速いが、発現し
たタンパク質に糖鎖は付加されない。また、大腸菌では
生産されるタンパク質は細胞内に蓄積されることが多
く、培養液からの菌体の分離なども含め分離精製にコス
トがかかる。昆虫細胞で発現させるバキュロウイルス発
現では糖鎖は付くものの、哺乳類とは異なる形で糖鎖が
付加される。
は、収量が極めて低いことや CHO細胞などの場合には高
価なウシ胎児血清を必要とするのでコストが高くなるこ
と、さらに細胞内のレトロウイルスなどが混入する危険
があり実用的でない。
法では、最初にトランスジェニック動物を作製するのに
手間とコストの投資が必要となるのに加え、発現量もま
だ不十分である。
よって有用タンパク質を生産する際の実用化の段階で
は、生産されたタンパク質が目的とする天然型のものか
どうか、生産されたタンパク質の医薬としての効果およ
び副作用はどうか、またタンパク質を大量に効率よく発
現させられるかということに加え、回収、分離精製の容
易さやそのコスト、精製工程におけるタンパク質の活性
の保持、および製剤化の容易さも重要となる。
ではサイトカインを、哺乳動物と同様の糖鎖が付加した
天然型のタンパク質の形で大量に安価に製造することは
難しい。
インを大量に安価に生産する方法を提供することであ
る。
現系の問題点を解決すべく検討した結果、本発明者等
は、センダイウイルスベクターを用い、鶏卵においてタ
ンパク質を発現させることにより、哺乳類のものと近い
形の糖鎖が付加されたタンパク質を大量に効率よく低コ
ストで生産することができること、しかも、本発明で用
いる系においてはタンパク質が鶏卵の漿尿液中に大量に
放出されるので、分離精製が容易であることを見い出
し、サイトカインの大量生産系を確立したものである。
ドする遺伝子を含有する組み換え体センダイウイルスを
鶏卵に感染させ、発現したサイトカインを回収する工程
を含む、サイトカインの製造方法を要旨とする。
ルスは、サイトカインをコードする遺伝子を挿入したセ
ンダイウイルスゲノムから再構成されたものである。
イウイルスベクターにインターフェロン、インターロイ
キン等のサイトカインをコードする遺伝子を挿入し、こ
れをトランスフェクション等の手段により初期転写複製
酵素群を発現する適宜培養細胞に導入してセンダイウイ
ルスを再構成し、組み換え体センダイウイルスを形成さ
せ、このウイルスを鶏卵に感染させて鶏卵を宿主として
サイトカインを発現させる方法がある。生産されたサイ
トカインは漿尿液中に放出されるのでこれを回収すれば
よい。
るセンダイウイルス (Sendai virus)は、パラミクソウ
イルス科 (Paramyxoviridae)、パラミクソウイルス属
(Paramyxovirus)、パラインフルエンザウイルス1型に
分類され、HVJ(Hemagglutinating virus of Japan)と命
名されたが、SeV という通称で呼ばれることも多い。
イウイルスは、RNA ウイルスの、(-) 鎖RNA ウイルス
の、(-) 1本鎖RNA ウイルスグループに属する。RNA を
ゲノムとしてもつRNA ウイルスのうち、(+) 鎖RNA ウイ
ルスのゲノムはそれ自身感染性をもつが、(-) 鎖RNA ウ
イルスのゲノムは感染性を示さない。すなわち、細胞に
(+) 鎖RNA ゲノムを導入するとmRNAとしても機能するた
め、複製や粒子形成に必要なタンパク質を宿主細胞の翻
訳機能に依存して生産することができ、子ウイルス粒子
が形成される。しかし、センダイウイルスの属する(-)
鎖RNA ウイルスのゲノムは、mRNAとしては機能しないた
め、細胞に(-) 鎖RNA ゲノムを導入しても遺伝情報が発
現されない。(-) 鎖RNA ウイルスは、粒子内にRNA 依存
性RNA ポリメラーゼを保有し、感染直後、(-) 鎖RNA ウ
イルスのゲノムRNA が(+) 鎖RNA 、すなわちmRNAに転写
される。また、試験管内で人工的に転写されたセンダイ
ウイルスは(+) 鎖、(-) 鎖ともに、単独で細胞内に導入
した場合ウイルス粒子を形成しない。
は、遺伝子操作によって外来遺伝子をみ込んだウイルス
ゲノムからウイルス粒子が再構成される必要がある。セ
ンダイウイルスの再構成方法については、国際出願公開
WO97-16539 号公報に詳細に記載されている。このセン
ダイウイルス再構成技術の確立により、外来遺伝子を挿
入したセンダイウイルスゲノムから組み換え体ウイルス
を再構成し、センダイウイルスを発現ベクターとして使
用することができるようになった。
は、具体的には以下のような方法が例示される。 (1) 遺伝子工学的に製造した組み換え体センダイウイル
スベクターゲノムをコードする組み換えcDNAを試験管内
で転写し、組み換え体センダイウイルスゲノムRNA を製
造し、このRNA をセンダイウイルスのNPタンパク質、P/
C タンパク質およびL タンパク質 (各タンパク質は同等
の活性を有するタンパク質でもよい) を同時に発現する
宿主に導入することによって、組み換えセンダイウイル
スベクターを得る。 (2)遺伝子工学的に製造した組み換え体センダイウイ
ルスベクターゲノムをコードする組み換えcDNA、この
DNA を鋳型として細胞内でRNA を転写しうるユニット
を、センダイウイルスのNPタンパク質、P/C タンパク質
および Lタンパク質(各タンパク質は同等の活性を有す
るタンパク質でもよい) を同時に発現する宿主に導入す
ることによって、組み換えセンダイウイルスベクターを
得る (この場合、例えばは特定のプロモーター下流に
接続されており、はこの特定のプロモーターに作用す
るDNA 依存性RNA ポリメラーゼを発現するDNA ) 。
ンパク質および Lタンパク質を同時に発現する宿主とし
ては、初期転写複製酵素群をすべて発現する細胞、例え
ば「J.Virology, 68, 8413-8417 (1994)」に記載され
た、センダイウイルス遺伝子のうち、NP、P/C および L
を染色体上に有している293 細胞由来の細胞であり、N
P、P/C および Lのタンパク質を発現している細胞を用
いることができる。あるいは、組み換え体センダイウイ
ルスゲノムRNA もしくはcDNAを細胞に導入する際に、N
P、P/C および Lを発現するプラスミドをコトランスフ
ェクションしてもよい。
入するためのセンダイウイルスとしては、パラインフル
エンザ1型に分類される株であればよく、例えば、Z株
(Sendai virus Z strain)、フシミ株(Sendai virus F
ushimi strain)等が挙げられる。また、DI粒子等の不完
全粒子や、合成したオリコヌクレオチド等も、材料の一
部として使用することができる。
ーに挿入するサイトカイン遺伝子には、各種インターフ
ェロン (インターフェロンα、β、γ) 、各種インター
ロイキン (インターロイキン1〜18) 、コロニー刺激因
子 (G-CSF 、M-CSF 、GM-CSF等) 、腫瘍壊死因子 (TNF-
α等) 、造血因子 (エリスロポエチン、トロンボポエチ
ン等) 、TGF-βスーパーファミリー (TGF-β、ベータグ
リカン、アクチビン、インヒビン、BMP ファミリー、フ
ォリスタチン等) 、増殖因子 (EGF 、TGF-α、HB-EGF、
アンフィレグリン、PDGF、FGF 、IGF 、HGF 、VEGF、NG
F 等) 、その他TNF/LT、Fas 等をコードする遺伝子が例
示される。
例えば、その遺伝子を発現する組織や細胞のRNA から作
製したcDNAライブラリーから、遺伝子断片や特異的な抗
体・蛋白質との結合を指標として選択する等の方法によ
り行うことができる。好ましくは、目的の遺伝子の既知
配列から設計したプライマーを用いてPCR (polymerase
chain reaction) 法により行うことができる。
ン遺伝子の挿入は常法によればよく、挿入位置は、NP遺
伝子に近いほど、挿入された遺伝子の発現量が多いこと
が知られている。
イルスベクターは、前記したようにして適宜培養細胞に
おいてセンダイウイルスの再構成を行わせ、組み換え体
センダイウイルスを得る。
るための宿主として鶏卵を使用する。上記で得た、サイ
トカイン遺伝子を含有する組み換え体センダイウイルス
を鶏卵に感染させ、発現したサイトカインを漿尿液から
回収する。サイトカインの回収は、遠心によりセンダイ
ウイルスを除去後、分子量にあわせた限外濾過法による
濃縮を行えばよく、さらに、目的のサイトカインに対す
る抗体があればアフィニティカラム法によって最も簡便
に精製できる。またアフィニティカラム法が利用できな
い場合はイオン交換体、ゲル濾過、逆相等の各種クロマ
トグラフィーにより精製を行うことができる。
従来の大腸菌を宿主とする系やバキュロウイルスをベク
ターとし昆虫細胞を宿主とする系で得られたものとは異
なり、哺乳類のサイトカインに極めて近い形の糖鎖が付
加されているため、その生物活性や安定性は高く、副作
用についてもほとんどないと考えられる。さらに、セン
ダイウイルスは発現サイトカインの精製時に除けるが、
ウイルスそのものもマウス以外の動物やヒトにはほとん
ど病原性がなく、安全である。
ダイウイルスは、鶏卵において非常に良く増殖し、発現
したサイトカインを漿尿液中に大量に放出するので、サ
イトカインを大量に効率よく製造できる。しかも、鶏卵
は安価な入手が容易な畜産食品であり、また、サイトカ
インの回収および精製の手間も少なく、容易である。従
って、本発明は、サイトカインの大量生産の実用化にと
って極めて有用である。
細に説明するが、本発明はこれによって制限されるもの
ではない。
を用いたイヌインターフェロンγ(IFN-γ)の製造を説
明する。
もつと同時に、サイトカインネットワークのメディエー
ターとして重要な役割を果たす。IFN-γはTH1 型の免疫
応答を促進し、主な作用としては、主要組織適合遺伝子
複合体 (major hitocompatibility complex, MHC) のク
ラスIおよびクラスIIの誘導や、細胞間接着分子1(IC
AM-1) の誘導、2',5'-オリゴアデニル酸シンテターゼ -
RNアーゼL 経路(2',5'-oligoadenylate synthetase-RNa
se L pathway) の活性化、Fas 、Fas リガンドの誘導に
よるアポトーシスの誘導などが挙げられ、各種感染症や
腫瘍の治療への応用がなされている。また、その免疫系
への作用から、ワクチネーションを施す際のサイトカイ
ンアジュバントとしての有用性も期待されている。しか
し、ヒトでは宿主での実験に制約があり、実際にどのよ
うな有益な効果が、またどのような望ましくない効果が
得られるかといった実験が行われにくい。そこでヒトと
同様に寿命が延び、また実際に臨床治療やワクチン接種
が行われているイヌをそのモデルにするべく、イヌのIF
N-γを大量発現系であるセンダイウイルス発現系を用い
て発現させた。 (1) イヌIFN-γ遺伝子を含有するセンダイウイルスベク
ターの作製 イヌIFN-γをコードする読み枠 (open reading frame)
を、下記プライマー1〜4を用いて PCR法により増幅す
ることにより、イヌIFN-γ遺伝子のクローニングを行っ
た。イヌIFN-γ遺伝子の塩基配列は、K.Devos et al.,
Journal of Interferon Research vol.12, p.95-102 (1
992)およびK.Zucker et al., Journal of Interferon R
esearch vol.12, p.191-194 (1992)に記載されている。 プライマー1:AAGCGGCCGCTTCACCACCATGAATTATACAAGCT ( 配列番号1) NotI site プライマー2:CTCGATTTCTTTAAAAAACATGGCC (配列番号2) プライマー3:ATCGAGAACCTAAAGGAATATTTTAATG(配列番号3) プライマー4:TTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTACTACCATTATTTCGATGCTC NotI site 転写開始シク゛ナル 転写終結シク゛ナル (配列番号4) クローニングされたイヌIFN-γのcDNAクローンをセンダ
イウイルスベクターに挿入するために、5'端に NotI si
teを含むプライマー( プライマー1)および、5'端にNotI
site を含み、かつセンダイウイルスの中で転写が行わ
れるのに必要な転写開始シグナル及び転写終結シグナル
を導入したプライマー(プライマー4)を設計した。イ
ヌIFN-γの塩基配列中にはセンダイウイルスの転写終結
シグナルに類似した配列が存在するので、そのままセン
ダイウイルスに組み込んでしまうと、そこで転写が終結
し目的であるイヌIFN-γが発現しない危険性が考えられ
るので、その配列をアミノ酸レベルで変化させないよう
に改変した。
イマー3とプライマー4の組み合わせでPCR を行い、そ
れぞれの増幅断片を電気泳動したゲルから抽出し、それ
ぞれの増幅断片を混ぜ合わせたものをテンプレートとし
てプライマー1およびプライマー4でPCR を行いTAクロ
ーニングを行った。ジデオキシ法によりシークエンスを
確認した。
のように変化した。 塩基配列 ATAGAA→ATCGAG アミノ酸 Ile/Glu →Ile/Glu この配列を改変したイヌIFN-γ遺伝子断片を持つプラス
ミドから、プライマー中に切断部位を設けておいた制限
酵素NotIによりイヌIFN-γ遺伝子を切り出し、センダイ
ウイルスベクターのNotI切断部位に導入した(図1) 。
このプラスミドを塩化セシウム密度勾配超遠心により精
製し、これをトランスフェクションに用いた。 (2) 組み換えセンダイウイルスの再構成と鶏卵からの回
収 上記方法で得られたイヌIFN-γ遺伝子断片を持つプラス
ミドは、下記に示したセンダイウイルスの3つの構成タ
ンパク質を発現するプラスミドとともに、ワクシニアウ
イルスの感染したLLCMK2細胞にトランスフェクションし
て組み換えセンダイウイルス粒子を得た。 pGEM-N:ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子 pGEM-P:リン酸化タンパク質遺伝子 pGEM-L:ラージRNA ポリメラーゼ遺伝子 なお、ワクシニアウイルス (vTF7-3) は、上記3つのプ
ラスミドを細胞内で発現させるためのT7 RNAポリメラー
ゼ遺伝子を遺伝子組み換えによって持っている。
イウイルスの回収は、具体的には下記のように行った。
6cmシャーレにLLCMK2細胞を2.0 ×106 個準備してお
き、ワクチニアウイルス(vTF7-3)をmoi 2 plaque formi
ng unit (PFU) で1時間吸着させ、PBS で2回洗った。
そこに、イヌIFN-γ遺伝子断片を持つプラスミド (pIFN
- γ-SeV) を10μg、pGEM-Nを4μg、pGEM-Pを2μ
g、pGEM-Lを4μg含むDOTAP (Boelinger Manheim社)
溶液を滴下し、シトシンアラビノシド (citocine arabi
noside) 40μg/ml、リファンシピン (rifampicin) 10
0 μg/mlの存在下で40時間培養した。その後、細胞を
回収し、3回凍結融解を行った後、上清を回収した。
作製されて、このウイルスがこの上清中に含まれている
と考えられるので、この上清を約1000倍に希釈したもの
を10日齢の発育鶏卵の漿尿腔に接種し、3日後漿尿液を
回収した。HA試験 (hemaglutinin assay)によりウイル
スが1024〜2048 HAU(hemaglutinin unit) 存在すること
を確認した。さらに、また少量ながら混在しているワク
シニアウイルスを除去するために、ワクシニアウイルス
が増殖しない鶏卵での継代培養を行った。得られた組み
換えセンダイウイルスを0.1 〜1HAU に希釈して、再び
10日齢の発育鶏卵の漿尿腔に接種し、同様に回収を行っ
た。
遺伝子を含む組み換えセンダイウイルスであることは、
RT-PCR法によって確認された。すなわち、感染させた発
育鶏卵の漿尿液から市販のRNA 抽出キットを用いて全RN
A を抽出し、以下のプライマーを用いてRT-PCRを行い、
組み換えセンダイウイルスの出現を確認した。
イオアッセイを行った。使用したサンプルは、上記で得
られた漿尿液から、超遠心と限外濾過によりセンダイウ
イルスを除去したものである。 (3) 鶏卵におけるイヌIFN-γの発現の確認 イヌIFN-γ蛋白が漿尿液中に発現していることは、大腸
菌発現のイヌIFN-γをウサギに免疫したときの坑血清を
用いたウエスタンブロット解析により確認した。
イルスを感染させた漿尿液、野生型センダイウイルスを
感染させた漿尿液、完全陰性対照として非感染発育鶏卵
の漿尿液をそれぞれエタノール沈殿し、サンプルバッフ
ァーに溶解させた。また、イヌIFN-γの陽性対照として
組み換えバキュロウイルス発現イヌIFN-γもサンプルバ
ッファーに溶解させた。全てのサンプルを12%SDS ポリ
アクリルアミドゲルで泳動し、セミドライブロッティン
グ装置でニトロセルロースメンブレンに転写し、5%脱
脂粉乳を含むPBSTでブロッキングを行った。3%脱脂粉
乳を含むPBSTで10倍希釈したイヌIFN-γウサギ血清で1
次抗体反応を行い、同じく1000倍希釈したホースラディ
ッシュ・パーオキシダーゼ標識抗ウサギIgG 抗体によっ
て2次抗体反応を行った後、ジアミノベンチジン溶液に
よりイヌIFN-γ特異的バンドを可視化した。これによっ
て、イヌIFN-γ蛋白が、イヌIFN-γ組み換えセンダイウ
イルスを感染させた漿尿液中に発現していることを確認
した (図2)。 (4) バイオアッセイ バイオアッセイは次のように行った。96穴プレートにA7
2 細胞を3×104 個/well の濃度で前日播いておき、翌
日上清を除去した後に、2倍段階希釈したサンプルを10
0 μl/mlずつ滴下した。24時間後100TCID50 の水泡性口
内炎ウイルス(VSV; Vesicular Somatitis virus)を感染
させた。翌日、細胞をホルマリン固定し、クリスタルバ
イオレットによる染色を行い、水洗後、エチレングリコ
ールにより、染色液の溶出を行い、その吸光度を測定し
た。VSV による細胞変成効果を50%抑制する濃度を1la
boratory unit(1LU)とした。結果を以下に示す。 VSV のA72細胞における増殖の抑制による力価測定 c IFN-γ組み換えセンダイウイルス感染漿尿液 160 LU/ ml 野生型センダイウイルス感染漿尿液 <10LU/ ml 対照漿尿液 <10LU/ ml このバイオアッセイは、インターフェロンが抗ウイルス
作用を持っていることを利用して、その活性を測定する
ものである。すなわち、ウイルス力価の測定法としてよ
く用いられる方法に、ウイルスが細胞に感染した際に起
こす細胞変性効果(CPE)の量によって測定する方法があ
る。インターフェロンはウイルスの増殖を抑制する作用
を持つので、予めインターフェロンで処理しておくと、
ウイルス増殖が阻害されるため、CPE 量もインターフェ
ロン活性に応じて減少する。この減少を利用して、試料
希釈液で処理しておいた細胞に100 %CPE を起こす量の
ウイルスをかけて、CPE が50%阻止された希釈液のIFN
力価を1LUと定義する。 (5) イヌIFN-γの精製 上記(2) のようにして得られたイヌIFN-γを含む漿尿液
を、遠心にかけた後、限外濾過フィルターにかけて漿尿
液よりセンダイウイルスを除去した。
で行うことができる。得られた漿尿液に、10mg/mlのCo
ntrolled pore glass (PG350-20,Shigma, USA)を加え
て、4℃で20時間回転させ、イヌIFN-γを吸着させる。
遠心後上清を捨て、PBS で4回洗浄する。これに50%
エチレングリコール、1.4M NaCl を含むPBS をControll
ed pore glass 10g当たり25ml加えて、更に4℃で20時
間回転し、イヌIFN-γを遊離させ、上清を遠心後、回収
する。上清は緩衝液1(20mM Tris.Cl, 1mM DTT,5%エ
チレングリコール, 15%グリセロール) で透析し、その
溶液で平衡化してあるMonoQHR イオン交換クロマトグラ
フィーに添加する。溶出は緩衝液2(緩衝液1に0.5M
NaClを添加したもの) を直線的に濃度勾配をかけて行
う。得られた精製イヌIFN-γは、更にHiload 16/60 Sup
erdex 75ゲル濾過クロマトグラフィーで精製し、適当な
溶液に溶解する。各段階におけるイヌIFN-γの有無はウ
エスタンブロットまたはバイオアッセイで確認する。 (6) イヌIFN-γによるMHC クラスII分子の発現誘導 イヌ腎臓由来株化細胞であるMDCK細胞の培養液中に、セ
ンダイウイルスによって漿尿液中に発現させた組み換え
イヌIFN-γを加え、17時間インキュベートした。その
後、細胞をソーターバッファー (sorter buffer)で洗浄
し、抗イヌ MHCクラスIIモノクローナル抗体と30分間イ
ンキュベートした後、再びソーターバッファーで洗浄
し、FITC標識抗マウスIgG 抗体と30分間インキュベート
した。再度ソーターバッファーで洗浄した細胞をFAC Sc
anにより解析した。その結果、センダイウイルスによっ
て発現したイヌIFN-γは、バキュロウイルスで発現させ
たものと同様に、細胞においてMHC クラスII分子の発現
を誘導することが明らかになった(図3)。
安全性の確認されているセンダイウイルスベクター発現
系を用いて、鶏卵においてサイトカインを大量に効率よ
く発現することができ、精製も容易である。この方法で
得られるサイトカインは、従来の発現系とは異なり、哺
乳類に極めて近い形で糖鎖がついているので、医薬とし
ての有用性が期待できる。従って、有用な医薬品として
のサイトカインを大量に安価に生産する系の実用化に大
きく貢献しうる。
8
イウイルスベクターの構成を示す図である。
を用いたウエスタンブロット解析によるイヌIFN-γの発
現の確認を示す図である。
を示す図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 サイトカインをコードする遺伝子を含有
する組み換え体センダイウイルスを鶏卵に感染させ、発
現したサイトカインを回収する工程を含む、サイトカイ
ンの製造方法 - 【請求項2】 組み換え体センダイウイルスが、サイト
カインをコードする遺伝子を挿入したセンダイウイルス
ゲノムから再構成したものである請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 サイトカインがインターフェロンである
請求項1または2記載の方法。 - 【請求項4】 発現したサイトカインを鶏卵の漿尿液か
ら回収する請求項1〜3のいずれかの項記載の方法。 - 【請求項5】 回収を遠心分離および限外濾過により行
う請求項4記載の方法。 - 【請求項6】 発現したサイトカインに糖鎖が付加され
ている、請求項1〜5のいずれかの項記載の方法。 - 【請求項7】 サイトカインをコードする遺伝子を含有
する組み換え体センダイウイルスを感染させた鶏卵から
得られる、発現したサイトカインを含有する漿尿液。 - 【請求項8】 サイトカインがインターフェロンである
請求項7記載の漿尿液。 - 【請求項9】 発現したサイトカインに糖鎖が付加され
ている、請求項7または8記載の漿尿液。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11318550A JP2000201689A (ja) | 1998-11-09 | 1999-11-09 | センダイウイルス発現系を用いたサイトカインの製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP10-317321 | 1998-11-09 | ||
JP31732198 | 1998-11-09 | ||
JP11318550A JP2000201689A (ja) | 1998-11-09 | 1999-11-09 | センダイウイルス発現系を用いたサイトカインの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2000201689A true JP2000201689A (ja) | 2000-07-25 |
Family
ID=26568991
Family Applications (1)
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JP11318550A Ceased JP2000201689A (ja) | 1998-11-09 | 1999-11-09 | センダイウイルス発現系を用いたサイトカインの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2000201689A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002142770A (ja) * | 2000-11-08 | 2002-05-21 | Dnavec Research Inc | 循環系への遺伝子送達用パラミクソウイルスベクター |
-
1999
- 1999-11-09 JP JP11318550A patent/JP2000201689A/ja not_active Ceased
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002142770A (ja) * | 2000-11-08 | 2002-05-21 | Dnavec Research Inc | 循環系への遺伝子送達用パラミクソウイルスベクター |
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