JP2000182576A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部とがレーザーによって溶着された電池において、前記溶着部の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることを特徴とする電池。
【請求項2】 前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、レーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足することを特徴とする請求項1記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、電池ケース本体に電池蓋を嵌合させて接合部をパルスレーザ溶接により溶着させることによりアルミニウム合金等からなる電池ケースを構成要素とした電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車等の大容量の用途で使用される、例えば大型の非水電解質二次電池は、ステンレス製の電池ケースを用いていた。しかし、最近では、軽量化のために、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケースを用いることが多くなって来ている。このようなアルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池は、図13に示すようなアルミニウム又はアルミニウム合金製の有底長円筒形状の電池ケース本体1の内部に発電要素(図示せず)やこの発電要素の電極に接続される正負の端子3,4等を収納した後、この電池ケース本体1の上端開口部に、同じくアルミニウム又はアルミニウム合金製の長円形板状の電池蓋2を嵌合させて、図14に示すように、周囲を溶接により密閉固定する。この際、電池蓋2は、図15に示すように、長円形板状の周囲の縁部を上方に立ち上げて接合部2aとし、電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aに沿うように嵌合させる。そして、図16に示すように、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aをパルスレーザー溶接により溶着させることによって電池ケースを形成する。 なお、電池蓋2には、図13に示したように、予め正負の端子3,4を突出させるための端子孔2b,2cと電池ケースの内部に電解液を注入するための注液口2dが開口されている。そして、図14に示したように、端子孔2b,2cは、電池蓋2の溶接後に、これらから突出した正負の端子3,4に封止材を介してナットを螺着させることにより封口し、注液口2dは、電解液の注入後に止めねじ等によって封口する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、電池ケース本体1や電池蓋2に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金材は、溶融前にはレーザ光をほとんど反射してしまい吸収率が低くなるのに対して、溶融後は急激にこのレーザ光の吸収率が上昇する。このため、弱いレーザパワーではアルミニウム又はアルミニウム合金材を容易に溶融させることができない。加えて、パルスレーザーではレーザー出力が低いと、溶解深度が浅く、表面に近いところでの溶着となるため、電池が外部短絡等によって電池内部圧力が上昇するという万一の異常時に溶接部分が破損してしまうおそれがある。それゆえに、このパルスレーザーのレーザーパワーあげて溶接することが一般的である。しかしながら、レーザーパワーを上げると、溶融後に急激に過熱されて溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金材が飛散し、接合部1a,2aにピンホールやクラック等が発生するため、逆に溶着強度が低下してしまう。
【0004】
従って、従来は、アルミニウム合金製等の電池ケースをパルスレーザー溶接する際のレーザーパワーの調整が難しく、このパワーが強すぎると電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aにピンホールやクラック等が発生するおそれがあるという問題が生じていた。逆にパワーが弱すぎると、万一の電池の異常時に電池の内圧上昇による破損を招くおそれがあった。本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、溶接部の溶接強度が高く、たとえ電池容量が大容量のものであっても溶接箇所での破損がなく、安全弁を確実に作動させることのできる、より安全性に優れた電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体並びに電池蓋が接合部を有しており、レーザーによって形成された溶着部の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることを特徴とする、換言すると外側に膨らんだ曲線状又は略曲線状であることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明にかかる請求項2の発明は、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、レーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足することを特徴とする。さらに好ましくは溶着後において、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、0.8<a/b<1.0の関係を満足することである。また前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状であることが好ましい。さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体並びに電池蓋が接合部を有しており、連続的に出力されるレーザーを照射する加工機によって前記接合部が溶着された電池ケースの封口方法において、 前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、750<t<2000であることが好ましい。
【0007】
アルミニウムやアルミニウム合金材は熱伝導率が極めて高いので、電池ケース本体と電池蓋の接合部の肉厚が厚いと、照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収しても、すぐに熱が周囲に拡散してしまい、照射部にこの熱を集中させることが困難になる。しかし、請求項1の発明によれば、連続レーザーの照射によって、接合部のアルミニウムやアルミニウム合金材が溶融前にレーザ光のエネルギーを十分に吸収しなくても、このレーザ光によって発生した熱を有効に利用して確実に溶融させることができるようになる。しかも、前記溶着部の断面視縁形状を曲線状、例えば丸みを帯びた形状とすることにより、溶接強度をも充分に高めることができる。さらに、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の厚みをbとすると、a<bの関係、好ましくは溶着後における前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、0.8<a/b<1.0の関係を満足し、かつ前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状とする場合、より溶接強度を高めることができる。加えて、10Ah以上の容量を有する大容量の電池にあっては極めて有効に安全性を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明の第1実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋との接合部を示す部分拡大縦断面図である。図2は本発明の第1実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋との溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図13〜図16に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0010】
本実施形態は、図13〜図14に示したものと同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池は、アルミニウム合金製の有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部に、同じくアルミニウム合金製の長円形板状の電池蓋2を嵌合させて、周囲を連続レーザ溶接(以下、CWレーザー溶接という。)により密閉封口することにより電池ケースを形成する。有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11は他の部分の板厚d12と同じに形成されている。また、長円形板状の電池蓋2は、周囲の縁部を上方に立ち上げて接合部2aとし、この接合部2aの板厚d21は電池蓋2の他の部分の板厚d22と同じ厚さに形成されている。よって、有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21とは同じ厚みに形成されている。上記電池蓋2は、電池ケース本体1の上端開口部に嵌合させて、上方に立ち上げた接合部2aを電池ケース本体1の接合部1aに嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザー光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてCWレーザー溶接を行う。この際、図2記載のごとく、溶着部10の断面視縁形状を上に凸な曲線状又は略曲線状、ここでは半円弧状とすることに溶接強度を高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。
【0011】
なお、上記実施形態では、電池ケース本体1の接合部1aと電池蓋2の接合部2aとの厚みが同じである場合を説明したが、電池特性に影響を与えない範囲での厚みの変更は可能であり、適宜当業者が為し得る設計事項である。
【0012】
図3は本発明の第2実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。図4は本発明の第2実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図3〜図4に示した第1実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記して説明を省略する。本実施形態も、図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池の有底長円筒形状の電池ケース本体1と長円形板状の電池蓋2は第1実施形態に示すように、従来例と同様の構造である。第1実施形態と同様に、上記電池蓋2と電池ケース本体1とを嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザ光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてCWレーザー溶接を行う。この際、図4記載のごとく、溶着前の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21との合計厚み(d11+d21)をaとし、溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足し、かつ溶着部10の断面視縁形状を曲線状、ここでは略円状とすることにより溶接強度をより高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。なお、溶着後の溶着部は、溶着前の接合部の断面視両側に膨らみ、b>aの関係を満足している。図5は本発明の第3実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。図6は本発明の第3実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図5〜図6に示した第1実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記して説明を省略する。 本実施形態も、図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池の有底長円筒形状の電池ケース本体1と長円形板状の電池蓋2は第1実施形態に示すように、従来例と同様の構造である。第1実施形態と同様に、上記電池蓋2と電池ケース本体1とを嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザ光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてレーザ溶接を行う。この際、図6記載のごとく、溶着前の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21との合計厚み(d11+d21)をaとし、溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足し、かつ溶着部10の断面視縁形状を曲線状又は略曲線状とすることにより溶接強度を高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。なお、溶着後の溶着部は、溶着前の接合部の断面視片側(電池内面側)にコブ状に膨らみ、b>aの関係を満足している。 さらに、上記実施形態では、電池蓋2の接合部2aを上方に立ち上げて電池ケース本体1の接合部1aに沿わせる場合について説明したが、これらの接合部1a,2aの形状は任意であり、本発明になる溶着後の形状を形成できうるものであれば足りる。加えて、上記第1,2,3の実施形態では、電池ケース本体1や電池蓋2にアルミニウム合金材を用いたが、純アルミニウムを用いることも可能である。さらに、上記実施形態では、長円筒形の大型の非水電解質二次電池について説明したが、電池の種類や形状については限定しない。
【実施例】
以下、本発明を一実施例に基づいて詳述する。なお、本実施例についても図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。図7は、本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略分解説明図である。同図において、1は正極集電体、5は正極、4は未塗布部、6は負極、2は負極集電体、7はセパレータ、8は巻芯である。図8は、本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略説明図である。同図において9は巻止めテープである。
[正極]正極活物質としてのLiCoO291重量部と導電剤としてのグラファイト6重量部と結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量部とを混合し正極合剤とした。この正極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを溶剤として適宜添加し、混合分散してペースト状にした。集電体1として厚さ20μmの帯状アルミニウム箔を用い、この集電体1の両面に正極合剤ペーストを均一に塗布し、乾燥させた。その後にロールプレス機を用いて厚さを調整して帯状の正極5を作製した。この電極の長手方向の一方の端縁部には、10mmの幅の未塗布部15を設けた。
[負極]負極6には、リチウム(イオン)のドープ・脱ドープが可能な炭素材料(グラファイト)粉末を用いた。グラファイト粉末90重量部、結着剤としてのPVdF10重量部とを混合して負極合剤とした。この負極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを溶剤として適宜添加し、混合分散してペースト状にした。集電体2として厚さ20μmの帯状銅箔を用い、この集電体2に負極合剤ペーストを両面に均一に塗布し、乾燥させた。その後にロールプレス機を用いて厚さを調整して帯状の負極6を作製した。この電極の長手方向の端縁部にも正極5と同様に、10mmの幅の未塗布部14を設けた。
【0013】
上記のようにして作製した正極5と負極6とをポリエチレン製の微多孔膜よりなるセパレータ7を介し断面長円形状のポリイミド製のパイプからなる巻芯8を中心として渦巻き状に巻回し、発電素子の外周部をテープ9で固定して長円形の断面を有する図8に示すような発電素子を得た。このとき図7に示すように極板の端縁部(未塗布部14)を他方の極板の端縁部より突出させるようにして巻回した。この発電素子の上下端縁部に正極及び負極集電リードをそれぞれレーザー溶接により取付けた。(集電リードは図示せず)
次に、この発電素子を長円形の電池ケース本体1(縦50mm×横130mm×高さ210mm)に挿入し、電池蓋2を嵌め込んで封口した。このとき、正極集電リード及び負極集電リードを電池蓋2に設けられた正極端子及び負極端子にそれぞれ接続した。また、封口は、連続的にレーザー出力が可能なレーザー溶接(以下、CWレーザー溶接という。)により電池ケース1と電池蓋2との接合部同士を溶接した。溶接には、固体レーザー加工機(三菱製:型名ML806T3−1005SP)を用い、溶接時の条件は、出力850W、ワーク(加工台)の移動速度(送り加工速度)を750mm/minとした。なお、電池ケース本体1の材質はアルミニウム合金製(JIS3003)であり、電池蓋2の材質はアルミニウム合金製(JIS3003)である。電池ケース本体1の接合部1aの厚さは12mmである。また、電池蓋2の接合部2aの厚さは10mmである。次に、この電池ケース内に、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートの1:1(体積比)の混合溶液に1mol/l(リットル)の六フッ化燐酸リチウム(LiPF6)を溶解した有機電解液を減圧注入した。そして、電解液注液孔2dを封口した。この電池の設計容量は100Ahであった。この電池を電池Aとする。この電池Aを各10個作製した。上記と同様の構成、手順にて同様の電池B、Cを各10個作製した。ただし、電池Bでは、電池ケース本体1と電池蓋2との溶接時の溶接条件を850W、ワークの移動速度を1000mm/minとした点で異なる。電池Cでは、電池ケース本体と電池蓋との溶接時の溶接条件を850W、ワークの移動速度を1500mm/minとした点で異なる。また、上記と同様の構成、手順にて同様の電池Dを10個作製した。ただし、溶接には従来のパルスレーザーを用いて電池ケース本体と電池蓋との溶接を行った点が異なる。よって、電池Dは従来の電池に相当する。電池Dにおいて、溶接には、YAGレーザー加工機(FANMC製:型名KYL-500BSP-3NF1W)を用い、溶接時の条件は、ファイバー径を1000μm、波形を山型とした。加えて、発電素子等の電池構成部品を組込まないで、上記電池ケース本体1に電池蓋2を嵌め込み、レーザー溶接により接合部1a、2a同士を溶着し、溶着部10を形成して電池ケースを各条件で2個ずつ、計8個を作製した。このときの溶接手段及び溶接条件は電池A〜Dのものと同様にした。この電池ケースを電池ケースA、B、C、Dとする。
[外部短絡試験]上記電池A〜D、各10個を用いて0.2Cの電流で8時間、4.1Vまで定電流・定電圧充電により満充電状態とした。そして、電池の長側面に長さ70mm、直径4mmの釘を垂直に突き刺して貫通させるという外部短絡試験を行った。その結果、パルスレーザーで溶接したものは溶接部分での異常が認められたが、CW溶接を行った電池A〜Cについては溶接部分の異常は認められず、しかも安全弁が良好に作動した。
[引張強度試験]上記電池ケースA、B、C、Dを用いて引張強度試験を行った。引張強度試験は、電池ケース本体1と電池蓋2との溶接部分をL字状に切取り(3個)、その両端に荷重をかけて引張ることにより行った。このL字状に切取ったものの概略説明図を図9に示す。また、この試験結果を表1に示す。表中のW(単位はmm)は、各ケースにおいて切取ったL字状片(3個)の切取り幅の平均値である。FはL字状片の幅Wあたりの荷重である。なお、破断位置の概略説明図を図9に合わせて示す。
【0014】
【表1】
【0015】
この引張強度試験の結果、表1より、パルスレーザーにて溶接したものは破断位置が溶接した部分(b1)であり、一方CWレーザー溶接のものは破断位置が溶接部分と非溶接部分との境界部分(a1)であることがわかった。すなわち、CWレーザー溶接はパルスレーザー溶接に比べて、溶接部分の強度が高いということが示された。それゆえに、前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、750<t<2000であれば従来よりも優れた溶接が可能となり、より安全性に優れた電池を提供することができる。また、CWレーザー溶接同士のものを比べると、加工送り速度が1000mm/minの電池ケースBが最も強度が高いことが明らかとなった。それゆえに、前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、800以上1500以下であれば、より好ましい溶接が可能となり、より安全性に優れた電池を提供することができる。さらに、図10、11,12にケースA、B、Cの溶接部分の拡大断面図を示す。これらの図より、CW溶接を行ったいずれのケースにおいても溶着部10の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることが示された。このように、溶着部10の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることにより、応力が均等にかかるため溶着強度が高いものと考えられる。また、それぞれの形状を観察すると、前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状であることがわかる。それゆえに、断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状とすることにより、上記同様に溶着強度が高いものが得られる。加えて、これらの図より、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、CWレーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。また、溶着後において、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、表2にa/b値を示す。
【0016】
【表2】
【0017】
この表より、a/bが0.8<a/b<1.0の関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。より好ましくはa/bが0.9≦a/b<1.0関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、溶接部の溶接強度が高く、たとえ電池容量が大容量のものであっても溶接部分での破損がなく、安全弁を確実に作動させることができる。それゆえに、より安全性に優れた電池を提供することができる。また、溶融後の過熱によって接合部にピンホールやクラックが発生するおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である
【図7】本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略分解説明図である。
【図8】本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略説明図である。
【図9】本発明の実施例にかかる引張強度試験に用いるL字状片を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例にかかるケースAの溶接部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の実施例にかかるケースBの溶接部分の拡大断面図である。
【図12】本発明の実施例にかかるケースCの溶接部分の拡大断面図である。
【図13】非水電解質二次電池の電池ケース本体に電池蓋を嵌合する際の斜視図である。
【図14】非水電解質二次電池を示す斜視図である。
【図15】電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図16】従来例を示すものであって、電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部をレーザ溶接した後の部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 電池ケース本体
1a 接合部
2 電池蓋
2a 接合部
【発明の名称】 電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部とがレーザーによって溶着された電池において、前記溶着部の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることを特徴とする電池。
【請求項2】 前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、レーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足することを特徴とする請求項1記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、電池ケース本体に電池蓋を嵌合させて接合部をパルスレーザ溶接により溶着させることによりアルミニウム合金等からなる電池ケースを構成要素とした電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車等の大容量の用途で使用される、例えば大型の非水電解質二次電池は、ステンレス製の電池ケースを用いていた。しかし、最近では、軽量化のために、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケースを用いることが多くなって来ている。このようなアルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池は、図13に示すようなアルミニウム又はアルミニウム合金製の有底長円筒形状の電池ケース本体1の内部に発電要素(図示せず)やこの発電要素の電極に接続される正負の端子3,4等を収納した後、この電池ケース本体1の上端開口部に、同じくアルミニウム又はアルミニウム合金製の長円形板状の電池蓋2を嵌合させて、図14に示すように、周囲を溶接により密閉固定する。この際、電池蓋2は、図15に示すように、長円形板状の周囲の縁部を上方に立ち上げて接合部2aとし、電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aに沿うように嵌合させる。そして、図16に示すように、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aをパルスレーザー溶接により溶着させることによって電池ケースを形成する。 なお、電池蓋2には、図13に示したように、予め正負の端子3,4を突出させるための端子孔2b,2cと電池ケースの内部に電解液を注入するための注液口2dが開口されている。そして、図14に示したように、端子孔2b,2cは、電池蓋2の溶接後に、これらから突出した正負の端子3,4に封止材を介してナットを螺着させることにより封口し、注液口2dは、電解液の注入後に止めねじ等によって封口する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、電池ケース本体1や電池蓋2に用いられるアルミニウム又はアルミニウム合金材は、溶融前にはレーザ光をほとんど反射してしまい吸収率が低くなるのに対して、溶融後は急激にこのレーザ光の吸収率が上昇する。このため、弱いレーザパワーではアルミニウム又はアルミニウム合金材を容易に溶融させることができない。加えて、パルスレーザーではレーザー出力が低いと、溶解深度が浅く、表面に近いところでの溶着となるため、電池が外部短絡等によって電池内部圧力が上昇するという万一の異常時に溶接部分が破損してしまうおそれがある。それゆえに、このパルスレーザーのレーザーパワーあげて溶接することが一般的である。しかしながら、レーザーパワーを上げると、溶融後に急激に過熱されて溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金材が飛散し、接合部1a,2aにピンホールやクラック等が発生するため、逆に溶着強度が低下してしまう。
【0004】
従って、従来は、アルミニウム合金製等の電池ケースをパルスレーザー溶接する際のレーザーパワーの調整が難しく、このパワーが強すぎると電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aにピンホールやクラック等が発生するおそれがあるという問題が生じていた。逆にパワーが弱すぎると、万一の電池の異常時に電池の内圧上昇による破損を招くおそれがあった。本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、溶接部の溶接強度が高く、たとえ電池容量が大容量のものであっても溶接箇所での破損がなく、安全弁を確実に作動させることのできる、より安全性に優れた電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体並びに電池蓋が接合部を有しており、レーザーによって形成された溶着部の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることを特徴とする、換言すると外側に膨らんだ曲線状又は略曲線状であることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明にかかる請求項2の発明は、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、レーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足することを特徴とする。さらに好ましくは溶着後において、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、0.8<a/b<1.0の関係を満足することである。また前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状であることが好ましい。さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池ケース本体と、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電池蓋とを備え、前記電池ケース本体並びに電池蓋が接合部を有しており、連続的に出力されるレーザーを照射する加工機によって前記接合部が溶着された電池ケースの封口方法において、 前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、750<t<2000であることが好ましい。
【0007】
アルミニウムやアルミニウム合金材は熱伝導率が極めて高いので、電池ケース本体と電池蓋の接合部の肉厚が厚いと、照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収しても、すぐに熱が周囲に拡散してしまい、照射部にこの熱を集中させることが困難になる。しかし、請求項1の発明によれば、連続レーザーの照射によって、接合部のアルミニウムやアルミニウム合金材が溶融前にレーザ光のエネルギーを十分に吸収しなくても、このレーザ光によって発生した熱を有効に利用して確実に溶融させることができるようになる。しかも、前記溶着部の断面視縁形状を曲線状、例えば丸みを帯びた形状とすることにより、溶接強度をも充分に高めることができる。さらに、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の厚みをbとすると、a<bの関係、好ましくは溶着後における前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、0.8<a/b<1.0の関係を満足し、かつ前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状とする場合、より溶接強度を高めることができる。加えて、10Ah以上の容量を有する大容量の電池にあっては極めて有効に安全性を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明の第1実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋との接合部を示す部分拡大縦断面図である。図2は本発明の第1実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋との溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図13〜図16に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0010】
本実施形態は、図13〜図14に示したものと同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池は、アルミニウム合金製の有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部に、同じくアルミニウム合金製の長円形板状の電池蓋2を嵌合させて、周囲を連続レーザ溶接(以下、CWレーザー溶接という。)により密閉封口することにより電池ケースを形成する。有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11は他の部分の板厚d12と同じに形成されている。また、長円形板状の電池蓋2は、周囲の縁部を上方に立ち上げて接合部2aとし、この接合部2aの板厚d21は電池蓋2の他の部分の板厚d22と同じ厚さに形成されている。よって、有底長円筒形状の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21とは同じ厚みに形成されている。上記電池蓋2は、電池ケース本体1の上端開口部に嵌合させて、上方に立ち上げた接合部2aを電池ケース本体1の接合部1aに嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザー光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてCWレーザー溶接を行う。この際、図2記載のごとく、溶着部10の断面視縁形状を上に凸な曲線状又は略曲線状、ここでは半円弧状とすることに溶接強度を高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。
【0011】
なお、上記実施形態では、電池ケース本体1の接合部1aと電池蓋2の接合部2aとの厚みが同じである場合を説明したが、電池特性に影響を与えない範囲での厚みの変更は可能であり、適宜当業者が為し得る設計事項である。
【0012】
図3は本発明の第2実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。図4は本発明の第2実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図3〜図4に示した第1実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記して説明を省略する。本実施形態も、図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池の有底長円筒形状の電池ケース本体1と長円形板状の電池蓋2は第1実施形態に示すように、従来例と同様の構造である。第1実施形態と同様に、上記電池蓋2と電池ケース本体1とを嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザ光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてCWレーザー溶接を行う。この際、図4記載のごとく、溶着前の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21との合計厚み(d11+d21)をaとし、溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足し、かつ溶着部10の断面視縁形状を曲線状、ここでは略円状とすることにより溶接強度をより高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。なお、溶着後の溶着部は、溶着前の接合部の断面視両側に膨らみ、b>aの関係を満足している。図5は本発明の第3実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。図6は本発明の第3実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。なお、図5〜図6に示した第1実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記して説明を省略する。 本実施形態も、図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池の有底長円筒形状の電池ケース本体1と長円形板状の電池蓋2は第1実施形態に示すように、従来例と同様の構造である。第1実施形態と同様に、上記電池蓋2と電池ケース本体1とを嵌め込み沿わせる。そして、これら電池ケース本体1と電池蓋2の接合部1a,2aの上端面に連続レーザ光を照射することにより照射部のアルミニウム合金を溶融させてレーザ溶接を行う。この際、図6記載のごとく、溶着前の電池ケース本体1の上端開口部の接合部1aの板厚d11と電池蓋2の板厚d21との合計厚み(d11+d21)をaとし、溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足し、かつ溶着部10の断面視縁形状を曲線状又は略曲線状とすることにより溶接強度を高めることができるとともに緻密な溶接接合ができる。この結果、接合部にピンホールやクラックが発生するおそれを防止することができる。なお、溶着後の溶着部は、溶着前の接合部の断面視片側(電池内面側)にコブ状に膨らみ、b>aの関係を満足している。 さらに、上記実施形態では、電池蓋2の接合部2aを上方に立ち上げて電池ケース本体1の接合部1aに沿わせる場合について説明したが、これらの接合部1a,2aの形状は任意であり、本発明になる溶着後の形状を形成できうるものであれば足りる。加えて、上記第1,2,3の実施形態では、電池ケース本体1や電池蓋2にアルミニウム合金材を用いたが、純アルミニウムを用いることも可能である。さらに、上記実施形態では、長円筒形の大型の非水電解質二次電池について説明したが、電池の種類や形状については限定しない。
【実施例】
以下、本発明を一実施例に基づいて詳述する。なお、本実施例についても図13〜図14に示した従来例と同様の大型の非水電解質二次電池について説明する。図7は、本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略分解説明図である。同図において、1は正極集電体、5は正極、4は未塗布部、6は負極、2は負極集電体、7はセパレータ、8は巻芯である。図8は、本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略説明図である。同図において9は巻止めテープである。
[正極]正極活物質としてのLiCoO291重量部と導電剤としてのグラファイト6重量部と結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量部とを混合し正極合剤とした。この正極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを溶剤として適宜添加し、混合分散してペースト状にした。集電体1として厚さ20μmの帯状アルミニウム箔を用い、この集電体1の両面に正極合剤ペーストを均一に塗布し、乾燥させた。その後にロールプレス機を用いて厚さを調整して帯状の正極5を作製した。この電極の長手方向の一方の端縁部には、10mmの幅の未塗布部15を設けた。
[負極]負極6には、リチウム(イオン)のドープ・脱ドープが可能な炭素材料(グラファイト)粉末を用いた。グラファイト粉末90重量部、結着剤としてのPVdF10重量部とを混合して負極合剤とした。この負極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを溶剤として適宜添加し、混合分散してペースト状にした。集電体2として厚さ20μmの帯状銅箔を用い、この集電体2に負極合剤ペーストを両面に均一に塗布し、乾燥させた。その後にロールプレス機を用いて厚さを調整して帯状の負極6を作製した。この電極の長手方向の端縁部にも正極5と同様に、10mmの幅の未塗布部14を設けた。
【0013】
上記のようにして作製した正極5と負極6とをポリエチレン製の微多孔膜よりなるセパレータ7を介し断面長円形状のポリイミド製のパイプからなる巻芯8を中心として渦巻き状に巻回し、発電素子の外周部をテープ9で固定して長円形の断面を有する図8に示すような発電素子を得た。このとき図7に示すように極板の端縁部(未塗布部14)を他方の極板の端縁部より突出させるようにして巻回した。この発電素子の上下端縁部に正極及び負極集電リードをそれぞれレーザー溶接により取付けた。(集電リードは図示せず)
次に、この発電素子を長円形の電池ケース本体1(縦50mm×横130mm×高さ210mm)に挿入し、電池蓋2を嵌め込んで封口した。このとき、正極集電リード及び負極集電リードを電池蓋2に設けられた正極端子及び負極端子にそれぞれ接続した。また、封口は、連続的にレーザー出力が可能なレーザー溶接(以下、CWレーザー溶接という。)により電池ケース1と電池蓋2との接合部同士を溶接した。溶接には、固体レーザー加工機(三菱製:型名ML806T3−1005SP)を用い、溶接時の条件は、出力850W、ワーク(加工台)の移動速度(送り加工速度)を750mm/minとした。なお、電池ケース本体1の材質はアルミニウム合金製(JIS3003)であり、電池蓋2の材質はアルミニウム合金製(JIS3003)である。電池ケース本体1の接合部1aの厚さは12mmである。また、電池蓋2の接合部2aの厚さは10mmである。次に、この電池ケース内に、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートの1:1(体積比)の混合溶液に1mol/l(リットル)の六フッ化燐酸リチウム(LiPF6)を溶解した有機電解液を減圧注入した。そして、電解液注液孔2dを封口した。この電池の設計容量は100Ahであった。この電池を電池Aとする。この電池Aを各10個作製した。上記と同様の構成、手順にて同様の電池B、Cを各10個作製した。ただし、電池Bでは、電池ケース本体1と電池蓋2との溶接時の溶接条件を850W、ワークの移動速度を1000mm/minとした点で異なる。電池Cでは、電池ケース本体と電池蓋との溶接時の溶接条件を850W、ワークの移動速度を1500mm/minとした点で異なる。また、上記と同様の構成、手順にて同様の電池Dを10個作製した。ただし、溶接には従来のパルスレーザーを用いて電池ケース本体と電池蓋との溶接を行った点が異なる。よって、電池Dは従来の電池に相当する。電池Dにおいて、溶接には、YAGレーザー加工機(FANMC製:型名KYL-500BSP-3NF1W)を用い、溶接時の条件は、ファイバー径を1000μm、波形を山型とした。加えて、発電素子等の電池構成部品を組込まないで、上記電池ケース本体1に電池蓋2を嵌め込み、レーザー溶接により接合部1a、2a同士を溶着し、溶着部10を形成して電池ケースを各条件で2個ずつ、計8個を作製した。このときの溶接手段及び溶接条件は電池A〜Dのものと同様にした。この電池ケースを電池ケースA、B、C、Dとする。
[外部短絡試験]上記電池A〜D、各10個を用いて0.2Cの電流で8時間、4.1Vまで定電流・定電圧充電により満充電状態とした。そして、電池の長側面に長さ70mm、直径4mmの釘を垂直に突き刺して貫通させるという外部短絡試験を行った。その結果、パルスレーザーで溶接したものは溶接部分での異常が認められたが、CW溶接を行った電池A〜Cについては溶接部分の異常は認められず、しかも安全弁が良好に作動した。
[引張強度試験]上記電池ケースA、B、C、Dを用いて引張強度試験を行った。引張強度試験は、電池ケース本体1と電池蓋2との溶接部分をL字状に切取り(3個)、その両端に荷重をかけて引張ることにより行った。このL字状に切取ったものの概略説明図を図9に示す。また、この試験結果を表1に示す。表中のW(単位はmm)は、各ケースにおいて切取ったL字状片(3個)の切取り幅の平均値である。FはL字状片の幅Wあたりの荷重である。なお、破断位置の概略説明図を図9に合わせて示す。
【0014】
【表1】
【0015】
この引張強度試験の結果、表1より、パルスレーザーにて溶接したものは破断位置が溶接した部分(b1)であり、一方CWレーザー溶接のものは破断位置が溶接部分と非溶接部分との境界部分(a1)であることがわかった。すなわち、CWレーザー溶接はパルスレーザー溶接に比べて、溶接部分の強度が高いということが示された。それゆえに、前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、750<t<2000であれば従来よりも優れた溶接が可能となり、より安全性に優れた電池を提供することができる。また、CWレーザー溶接同士のものを比べると、加工送り速度が1000mm/minの電池ケースBが最も強度が高いことが明らかとなった。それゆえに、前記レーザー加工機のワーク移動速度(t[mm/min])が、800以上1500以下であれば、より好ましい溶接が可能となり、より安全性に優れた電池を提供することができる。さらに、図10、11,12にケースA、B、Cの溶接部分の拡大断面図を示す。これらの図より、CW溶接を行ったいずれのケースにおいても溶着部10の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることが示された。このように、溶着部10の断面視縁形状が溶着部先端方向に凸な曲線状又は略曲線状であることにより、応力が均等にかかるため溶着強度が高いものと考えられる。また、それぞれの形状を観察すると、前記溶着部の断面視縁形状が円弧若しくは円弧状であることがわかる。それゆえに、断面視縁形状が円弧若しくは円弧状又は楕円弧若しくは楕円弧状とすることにより、上記同様に溶着強度が高いものが得られる。加えて、これらの図より、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、CWレーザー溶着後の溶着部の最大厚みをbとすると、b>aの関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。また、溶着後において、前記電池ケース本体の接合部と電池蓋の接合部との合計厚みをaとし、溶着部の最大厚みをbとすると、表2にa/b値を示す。
【0016】
【表2】
【0017】
この表より、a/bが0.8<a/b<1.0の関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。より好ましくはa/bが0.9≦a/b<1.0関係を満足すれば上記同様に溶着強度が高いものが得られる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、溶接部の溶接強度が高く、たとえ電池容量が大容量のものであっても溶接部分での破損がなく、安全弁を確実に作動させることができる。それゆえに、より安全性に優れた電池を提供することができる。また、溶融後の過熱によって接合部にピンホールやクラックが発生するおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるものであって、溶接前の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態であって、溶接後の電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の溶着部を示す部分拡大縦断面図である
【図7】本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略分解説明図である。
【図8】本発明の実施例にかかる長円形状の発電素子の概略説明図である。
【図9】本発明の実施例にかかる引張強度試験に用いるL字状片を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例にかかるケースAの溶接部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の実施例にかかるケースBの溶接部分の拡大断面図である。
【図12】本発明の実施例にかかるケースCの溶接部分の拡大断面図である。
【図13】非水電解質二次電池の電池ケース本体に電池蓋を嵌合する際の斜視図である。
【図14】非水電解質二次電池を示す斜視図である。
【図15】電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部を示す部分拡大縦断面図である。
【図16】従来例を示すものであって、電池ケースの電池ケース本体と電池蓋の接合部をレーザ溶接した後の部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 電池ケース本体
1a 接合部
2 電池蓋
2a 接合部
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