JP2000179559A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JP2000179559A JP35944498A JP35944498A JP2000179559A JP 2000179559 A JP2000179559 A JP 2000179559A JP 35944498 A JP35944498 A JP 35944498A JP 35944498 A JP35944498 A JP 35944498A JP 2000179559 A JP2000179559 A JP 2000179559A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】転がり軸受の長寿命化を図る。 【解決手段】内輪に浸炭窒化等の表面処理を施すことに
より、内輪及び転動体間の摩擦係数が外輪及び転動体間
の摩擦係数に対して相対的に小さくなり、ころ軸受では
スキュー、玉軸受ではスピン等の軸受の不規則な挙動を
抑え、粗さを粗くしないことで油膜パラメータを大きく
して寿命低下を防ぎ、内輪に圧縮残留応力を与えて内輪
割れ強度を向上し、最大接触面圧が大きい内輪に浸炭窒
化等の表面処理を施すことにより表面硬さを大きくして
転がり疲労寿命を長寿命化する。また、外輪の基地の炭
素含有量を少なくすれば、粒界酸化や炭素偏析による水
素脆性の影響が小さくなるので、水混入下での短寿命、
即ち固定輪フレーキングの発生を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製紙機械、変速機
等の機械部品、モータ等の電機部品、圧延機や連鋳用等
の鉄鋼用部品、自動車用部品等に用いられる転がり軸受
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】製紙機械のドライヤーロール、圧延機や
連鋳用等の鉄鋼用設備等に用いられる転がり軸受は、温
度条件が厳しく且つごみや水等の異物が侵入する条件下
で使用されており、ここには、円筒ころ軸受、円すいこ
ろ軸受、自動調心ころ軸受等のころ軸受が使われてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これらの軸
受には、スキュー、スキッディング等の軸受挙動による
損傷及び不具合があり、この対策として摩擦係数を大き
くすべく粗さを粗くする方法がとられているが、油膜パ
ラメータの減少でピーリングやフレーキングが発生し易
くなるなどの個別の問題が生じる。
【0004】このことは、実際の操業で使用された軸受
の疲労解析に最もよく表れている。一般に軸受の疲労形
態は、 (a):軌道面表面が最も疲労度が高い表面疲労 (b):表面と共に内部も疲労している表面+内部疲労 (c):荷重の最大剪断応力位置が最も疲労度が高い内
部疲労 である。軸受寿命はどの疲労形態が表れるかによって大
きく異なり、発生頻度は(a),(b),(c)の順に
なっている。自動調心ころ軸受について行われた約10
0件の調査結果では(a)の表面疲労の事例が95%を
占める。即ち、実際の使用条件下では、転がり疲労の説
明に用いられるLundberg&Palmgrenによる(c)の内部
応力説より、表面で応力が高くなる(a)の要因が存在
すると考えられる。その理由は種々考えられるが、一つ
には「転がり軸受工学」(第1版、養賢堂、昭和50
年)171 〜 172頁記載のように、滑りにより最大剪断応
力位置が浅くなるということで、スキューやスピン滑り
が挙げられる。また、異物混入による表面応力の増加や
油膜の減少による突起間の干渉が考えられる。表面起点
型の軸受寿命は内部起点型のそれの数分の1に短縮する
ため、(a)の疲労形態が(b)に、更に(b)の表面
部の疲労が小さくなった内部疲労の形態を示すほど、軸
受は長寿命となる。このためには、スキューやスピン滑
りを小さくすること、油膜の減少による突起間干渉を防
ぐため、粗さをできるだけ小さくすることが有効であ
る。以下に、その問題について、代表例を示す。
【0005】自動調心ころ軸受の場合は、特公昭57−
61933号公報に見られるように、スキューは発熱の
防止や軸受長寿命化に大きく影響し、この対策として内
輪及び転動体間の摩擦係数や外輪及び転動体間の摩擦係
数を制御するために、軸受の接触面積や軌道面の粗さを
調整することが実施されている。例えば、前記特許に基
づいて設計された軸受では、内輪の粗さが0.1μmR
a以下であるのに対し、外輪は0.2μmRa以上にな
っており、0.3μmRaのものも少なくない。この場
合は、スキュー制御には効果があるが、軌道面と転動体
間の油膜形成を示す油膜パラメータΛの値が小さくな
り、ピーリングやフレーキングが発生し易くなる。ちな
みに、粗さが0.1μmRaで油膜パラメータΛが約
1.5であるときに、粗さが0.3μmRaになると油
膜パラメータΛは約0.5となる。
【0006】転がり軸受の寿命と粗さについては、潤滑
第27巻第2号高田(1982年)やASME Paper71-DE
-3(1971年)Harrisの解説記事に見られるように、通常
の軸受使用条件では油膜パラメータΛは0.8〜3.0
の領域が多く、0.8〜1.5では滑りが大きいと表面
損傷が起こり、0.8以下では滑りの大小に関係なく表
面損傷が起こる範囲であることから、粗さが大きくなる
ことは表面損傷が起こる領域に入ることを意味し、軸受
寿命は短くなる。
【0007】また、円筒ころ軸受やニードル軸受につい
ても同様にスキューの問題があり、特開平4−3941
2号公報では、前記自動調心ころ軸受と同様に、内輪軌
道面の粗さと外輪軌道面の粗さを規定することにより、
スキューを制御して軸受性能が向上することが明らかに
なっているが、粗さが大きい場合には前記油膜パラメー
タΛの減少による軸受短寿命が考えられる。
【0008】また、円すいころ軸受や円筒ころ軸受では
スキューの問題と共に転動体の運動が滑りを誘発してス
ミアリング、スキッディングやきしり音となって表れ
る。また、使用温度条件が厳しく、シャフトと軸受内輪
内径部との嵌め合いを締り嵌めであるとすると、軸受内
輪に円周方向の引張りのフープ応力が発生し、内輪割れ
が発生し易くなるという問題もある。このような内輪割
れ対策として、例えば熱処理にオーステンパーを採用
し、ベイナイト組織とすることにより、内輪に圧縮残留
応力を付加することが行われている。但し、この熱処理
は圧縮残留応力にばらつきがあり、必ずしも要求通りの
値が得られないこともある。また、ベイナイトは硬さが
向上しないため、転がり疲労によるフレーキングに対し
ては通常より短寿命となってしまう。
【0009】本発明は、これらの諸問題に鑑みて開発さ
れたものであり、例えば内輪軌道面に摩擦係数が小さく
なる浸炭窒化処理等の表面処理を施すこと等により、内
外輪の軌道面の粗さを小さくしながら内外輪の摩擦係数
に差をもたせてスキュー対策を行うと共に、転動体の滑
りを制御して、付随する諸問題を解決することができる
転がり軸受を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明に係る転がり軸受は、内輪と外輪との間に
転動体を配置し、潤滑剤で潤滑されて使用される転がり
軸受において、外輪及び転動体間の摩擦係数に対する内
輪及び転動体間の摩擦係数の比が0.8より大きく且つ
1.0未満であり、下記1式で表す内輪及び転動体間の
油膜パラメータが0.8より大きく、外輪及び転動体間
の油膜パラメータが4.0未満であることを特徴とする
ものである。
【0011】 油膜パラメータ:Λ=hmin /(R1rms 2 +R2rms 2 1/2 ……… (1) hmin :Dowson-Higginson,Hamrock-Dowsonの式で計算
した最小油膜厚さ R1rms:軌道輪の軌道面自乗平均粗さ R2rms:転動体の転動面自乗平均粗さ 本発明の転がり軸受では、例えば表面処理により内輪及
び転動体間の摩擦係数μi が外輪及び転動体間の摩擦係
数μo より小さくなり(μi /μo <1)、ころ軸受で
はスキュー、玉軸気ではスピン等の軸受の不規則な挙動
を小さく抑えることができる。
【0012】また、表面処理等により内輪及び転動体間
の摩擦係数μi と外輪及び転動体間の摩擦係数μo とに
差を生じさせるので、粗さを大きくする必要がなく、油
膜パラメータΛを大きいままに保つことができる(Λ>
0.8)。また、最大接触面圧が大きい内輪に、例えば
摩擦係数を小さくするために浸炭窒化等の表面処理を施
すことにより、表面硬さが大きくなり、異物混入により
軌道輪や転動体に生じる圧痕を小さく且つ浅く抑えるこ
とができ、また表面損傷形の疲労に対しても磨耗が小さ
いので、どちらの疲労に対しても長寿命になる。
【0013】また、例えば前記摩擦係数を小さくするた
めに浸炭窒化処理してSiを添加することにより、高温
での軟化抵抗性が大きくなるので、高温下でも硬さの低
下を抑制することができ、長寿命を維持できる。また、
内輪,即ち回転輪に圧縮応力が残留するため、軸受の回
転輪とシャフト,即ち回転体との嵌め合いで発生する引
張りのフープ応力に対し、回転輪の割れ抵抗性を増す。
これは、例えば前記摩擦係数を小さくするために内輪に
浸炭窒化処理を施す場合には、確実に10kgf/mm
2 より大きい残留圧縮応力を得ることができ、品質安定
性も高い。
【0014】また、基地の炭素含有量を少なくすること
により、軌道面の水素との結合し易さが緩和されるの
で、水混入下での固定輪のフレーキングの発生を抑制す
ることができ、水素脆性や遅れ破壊による短寿命を防止
できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
等を参照して説明する。まず、本実施形態では、特に内
輪の基地の組成を以下のように設定した。 ・0.2wt%<C<1.2wt%(好ましくは0.9
wt%) Cが0.2wt%以下であると、摩擦係数を制御するた
めの後述する浸炭窒化処理時間が長くなり過ぎて経済効
果に劣る。上限は一般の軸受鋼SUJ2を含むが、Cが
0.9wt%未満であると巨大炭化物の生成やC偏析を
防止することができるので、水素脆性等の遅れ破壊対策
として有効である。
【0016】・0.2wt%<Si<1.5wt% Siは焼戻し軟化抵抗性を示す元素であり、0.2wt
%以上が必要であるが、多過ぎると機械的強度の低下を
招いたり、浸炭を阻害したりするため、上限を1.5w
t%とした。 ・0.5wt%<Mn<1.1wt% Mnは焼入性の向上に寄与し、硬さが向上するので、
0.5wt%以上が必要であるが、多過ぎると鍛造性及
び被削性等の機械加工性が悪くなるので1.1wt%を
上限とする。
【0017】・0.4wt%<Cr<1.7wt% Crは焼入性、軟化抵抗性、耐磨耗性の向上に有効であ
り、その効果を得るためには0.4wt%以上の含有が
必要である。但し、炭化物生成元素でもあるため、多過
ぎると過大炭化物を生じるため1.7wt%を上限とす
る。例えば特開平6ー307457のデータNo.34
にもあるように、Cr1.5wt%のものは、3.5w
t%のものに比して、C%が多くても、大きな残留応力
が得られる。これは過大炭化物生成の影響であり、本実
施形態の上限はこれを満足する。本実施形態では、Cr
の上限を1.7wt%未満とすることで、Cの含有量が
0.7wt%以上でも10kgf/mm2 より大きな圧
縮残留応力を得ることを目的とする。
【0018】次に、表1に本実施形態の実施例1〜4及
び従来例の比較例5,6の組成、熱処理、圧縮残留応
力、硬さ、転がり疲労寿命比、軸受温度を示す。なお、
表中の圧縮残留応力≒0の定義は、特開平6−3074
57の図7を引用して4%未満の場合とする。また、転
がり疲労寿命比は、ロットの10%が破損する転がり寿
命L10の計算寿命Lcal に対する比である。
【0019】
【表1】
【0020】比較例5は一般的な軸受鋼SUJ2のずぶ
焼き品であり、比較例6は前述のSUJ2のオーステン
パによるベイナイト品である。これに対して、実施例1
は内外輪ともC0.7〜0.9%の同一諸元の炭素鋼を
用い、内輪に浸炭窒化等の表面処理を施し、外輪はずぶ
焼きのままとしたものである。このようにすることで、
同一の棒材から内輪と外輪とを所謂親子取りで製作する
ことができ、生産性を向上させてコストの低廉化が可能
となる。また、実施例2の外輪は実施例1とほぼ同じ組
成の材料を用い、内輪を低炭素鋼及び中炭素鋼としたも
のである。また、実施例3は実施例1とほぼ同じ組成の
材料で、内輪と外輪の諸元が異なるものである。また、
実施例4は内輪に低炭素鋼、外輪に前記SUJ2を用い
たものである。
【0021】ここで、本実施形態の実施例1〜4では、
浸炭窒化条件として(C+N)を(0.9〜1.7)w
t%、N%を(0.05〜0.5)wt%の範囲に設定
して行ったもので、実施例1は表面C%1.2wt%、
表面N%0.1wt%であり、実施例2は表面C%1.
0wt%、表面N%0.15wt%であり、実施例3は
表面C%1.1wt%、表面N%0.08wt%であ
り、実施例4は表面C%0.9wt%、表面N%0.2
5wt%である。(C+N)含有量は少ないと炭窒化物
の分散が十分に行われず、強度が不足するために0.9
wt%以上必要であり、多過ぎると巨大炭化物を生じる
ので1.7wt%以下とする必要がある。Nは少ないと
窒素の固溶不足により微細炭窒化物が得られず、摩擦低
減効果が得られないので0.05wt%以上必要であ
り、Nが多過ぎると残留オーステナイトの増加等の問題
が生じ、逆に摩擦係数が大きくなるので0.5%以下と
する必要がある。
【0022】次に、前記表1の各実施例及び比較例を、
前記内外輪の摩擦係数比μi /μO及び油膜パラメータ
Λのグラフにプロットしたのが図1である。また、前記
実施例1〜4及び比較例6の内輪軌道面粗さ、外輪軌道
面粗さ、転動体粗さ、内輪油膜パラメータ(Λ)、外輪
油膜パラメータ(Λ)の計測及び計算結果を表2に示
す。
【0023】
【表2】
【0024】図1において、本実施形態で限定する内外
輪の摩擦係数比μi /μO は1未満、油膜パラメータΛ
は0.8より大きい領域となる。また、内径φ55mm
の自動調心ころ軸受について転動体及び外輪の粗さをR
a=0.1μmとした計算例では、現状の加工技術レベ
ルで加工した各軸受は、各実施例が図の\\\で示す計
算範囲、各比較例が図の×××で示す計算範囲に夫々入
っている。なお、実施例1〜4及び比較例6は前記表2
に示す内輪油膜パラメータ及び外輪油膜パラメータのう
ちの小さい方の値を、比較例5は寿命試験でフレーキン
グによって短寿命が表れた3個の平均値を、夫々用いて
いる。
【0025】前記表1及び図1から明らかなように、前
記各実施例1〜4の全てが計算寿命Lcal の2倍以上で
あるのに対し、各比較例5,6は計算寿命Lcal より短
寿命に終わった。即ち、比較例5では油膜厚さを確保し
ようとすると内輪と外輪の摩擦係数の差が小さく、結果
的に内外輪の摩擦係数比μi /μO が1より大きくな
り、スキューが表れて短寿命となった。また、比較例6
では、外輪の摩擦係数を大きくするために粗さを大きく
しようとすると、油膜厚さが小さくなり、油膜パラメー
タΛが0.8より小さくなって短寿命になる。このた
め、十分な軸受性能を満足するためには、内輪と転動体
との間及び外輪と転動体との間に、双方の軌道面とも短
寿命が表れない程度の油膜が形成されている必要があ
り、それを規定すると、夫々の油膜パラメータΛが0.
8より大きく、内外輪の摩擦係数比μi/μO が1未満
である必要があるのである。
【0026】なお、図1では、現行の量産加工能力で加
工した粗さの大きな場合、即ち、ころ軸受で内外輪軌道
面及び転動体の粗さが0.1μmRa、玉軸受で内外輪
軌道面の粗さが0.05μmRa及び転動体の粗さが
0.01μmRaとし、特許第2629339号で転が
り疲労寿命の延長を図ることが最も優先されている範囲
として、油膜パラメータΛが2未満の領域しか表示して
いないが、現行の加工能力で粗さを最も小さくした場
合、即ちころ軸受で軌道面及び転動体の粗さを0.03
μmRa、玉軸受で軌道面の粗さを0.05μmRa、
転動体の粗さを0.007μmRaとしたときには、こ
ろ軸受で油膜パラメータΛは3、玉軸受で油膜パラメー
タΛは4となるので、油膜パラメータΛの上限は4とす
る。なお、油膜パラメータΛは前記(1)式で計算する
が、その計算途中に用いられる潤滑油粘度は油膜温度と
して前記表1中に示す軸受外輪温度を用いて換算する。
また、使用条件の回転速度、荷重等は、軸受選定時の設
計仕様又は最も通常的な稼動時の条件とし、自動車等の
ように回転速度と荷重とが変動する使用条件下ではマイ
ナー則(累積損傷則)に基づく等価条件を用いる。ま
た、油膜パラメータΛの詳細な計算は、例えば前記「転
がり軸受工学」177〜179頁記載の計算式に沿って
計算するが、本実施形態が目的とするスキューや表面損
傷形の寿命が問題となる軸受については、ころ軸受で内
外輪軌道面及び転動体の粗さが0.1μmRa、玉軸受
で内外輪軌道面の粗さが0.05μmRa及び転動体の
粗さが0.01μmRa以下であるので、回転速度が1
000rpm以上で潤滑油粘度30cSt以上、300
0rpmで10cSt以上を確保すれば、殆どの場合に
油膜パラメータΛを1より大きな値に確保することがで
きる。
【0027】また、表面処理により摩擦係数を小さくす
る方法には、例えば燐酸塩皮膜、MoS2・PTFE
膜、クロムメッキ等があるが、本実施形態では重荷重・
高温・高周速下で用いられる軸受を対象としているた
め、表面に皮膜を形成するとかメッキするという方法で
は、使用期間中に十数回の起動停止でそれが剥がれてし
まい、機能をなさなくなるので、浸炭窒化とかニダック
スメッキのように、その処理により元素が固溶するとか
反応するとかした表面処理法を用い、通常の軸受の使用
条件では剥がれないものでなければならない。更に、自
動調心ころ軸受の場合には、後述のように内輪割れ強度
の向上を要求されるので、この表面処理により10kg
f/mm2 より大きい(表1では負値表示であるため、
絶対値では大きいが、数直線上では小さい)圧縮残留応
力が発生する必要があり、高温での使用で軟化抵抗性が
要求される。このような表面処理として該当するのは浸
炭窒化に代表されるが、表面処理前と比べて摩擦係数の
減少は2割程度であり、前記内外輪の摩擦係数比μi
μO のとり得る範囲は0.8以上となる。また、外輪と
内輪の摩擦係数を必要以上に大きくすることは、内輪の
滑りを大きくすることからも避ける必要があり、更にス
キューが負の場合でも絶対値で1°より小さくなればよ
いことは分かっているので、内外輪の摩擦係数比μi
μO を0.8より小さくするのは望ましくない。
【0028】なお、特開昭63ー308219号公報に
も記されているように、残留オーステナイト量を変える
ことにより転がり摩擦力が変わることが明らかになって
おり、浸炭窒化処理等の表面処理だけでなく、この特性
を利用して、熱処理時に内輪の残留オーステナイト量を
外輪の残留オーステナイト量より少なくすることにより
スキュー制御を行うことも可能である。この場合の残留
オーステナイト量と摩擦係数の差を調べた結果、残留オ
ーステナイト量の差が15%変化すると摩擦係数が約2
割変化する。寸法安定性や軟化抵抗性の規制から内輪と
外輪の残留オーステナイト量に必要以上の差をもたせる
のは性能低下につながり、実用的な内外輪の残留オース
テナイト量の差は15%程度であり、前記内外輪の摩擦
係数比μ i /μO のとり得る範囲は同様に0.8以上1
未満となる。なお、この残留オーステナイト量を変える
方法を利用した場合は、浸炭窒化だけでなく、滲炭した
軸受でも摩擦係数の差及び内輪の圧縮残留応力の付与が
可能である。
【0029】本実施形態は、浸炭窒化等の表面硬化処理
により圧縮残留応力、硬さ向上等の優れた特徴を示すも
のであるが、その一つが内輪に浸炭窒化処理を施すこと
により窒素添加による摩擦・磨耗低減効果が表れ、自動
調心ころ軸受、ニードル軸受をはじめとするころ軸受の
スキュー制御に有利に働くことである。図2は実施例の
表面処理を施した内輪と転動体に相当する熱処理仕様
と、ずぶ焼きの外輪と転動体に相当する熱処理仕様との
夫々で円筒試験片を作成し、軌道面側の粗さを変えて2
円筒試験機を用いて摩擦係数の測定を行った結果であ
る。なお、円筒の転動体に相当する材質の熱処理はずぶ
焼きとし、粗さはRa=0.1μmである。摩擦係数は
粗さが大きくなると共に増加するが、粗さの値と共に漸
増する傾向が見られる。このため、例えば内輪軌道面及
び転動体が粗さRa=0.1μmの場合に、外輪及び転
動体間の摩擦係数に5%差をもたせるためには、外輪軌
道面粗さを0.25μmRa以上とする必要があり、軸
受軌道面の粗さをこのように大きくすると油膜パラメー
タΛが半分以下となり、実用的な潤滑油を用いた場合に
は油膜パラメータΛが0.8より小さくなる。これを避
ける方法としては潤滑油粘度を高くする方法があるが、
粘度が高くなると軸受トルクが大きくなり、発熱が大き
くなって実用的でない。これに対して、浸炭窒化処理で
は、粗さを同等に維持しながら摩擦係数を5%小さくす
ることができ、油膜パラメータΛを0.8より大きな値
に維持しながら内輪と外輪の摩擦係数に差を生じさせる
ことができる。即ち、前記実施例1〜4は、何れも比較
例6と同様に内輪及び転動体間の摩擦係数を外輪及び転
動体間の摩擦係数より小さくすることができ、比較例6
は油膜パラメータΛが小さくなってしまうのに対して、
各実施例は油膜パラメータΛを0.8以上に確保するこ
とができる。
【0030】また、自動調心ころ軸受のスキューについ
ては、前記特公昭57−61933号公報に記載される
ように、内輪の摩擦係数を外輪の摩擦係数より小さくす
ることにより、スキューモーメントを小さくして軸受性
能を向上することが明らかになっている。しかしなが
ら、この公報では、摩擦係数の差を生じさせる手段の一
つとして加工時に内輪と外輪の粗さをコントロールする
ことを利用しているため、加工法は非効率であり、寿命
が短寿命になるという新たな問題が生じる。即ち、前
者,即ち加工法については、研削砥石、超仕上げ法や加
工時間等の加工法を内輪と外輪とで変える必要があり、
現在の加工法では、その加工機械の有する最適能力で加
工するのが最も効率がよく、粗さについても加工能力よ
り粗いものを量産するのは非効率である。後者,即ち寿
命については、粗さが大きくなることにより油膜形成が
悪くなり、軸受寿命が短くなる。これについては前述と
同様に、油膜形成がよいほど転がり軸受の寿命を長寿命
とすることが知られており、その判断基準として用いら
れる油膜パラメータΛをできるだけ大きくすることが望
ましい。前記表2からも明らかなように、比較例6では
粗さが大きくなると油膜パラメータΛが小さくなり、寿
命に対して不利であるにも関わらず、スキューコントロ
ールを優先して粗さを大きくしていたという経過があ
る。これに対して、各実施例では粗さを小さくして油膜
パラメータΛが大きな状態で、表面処理により内輪の摩
擦係数を外輪のそれより小さくすることができ、油膜形
成による寿命向上とスキューモーメントの減少による性
能向上の両方が可能となる。この表2の実施例の測定値
は、現状の加工レベルで最も粗さが小さく且つ量産性が
よい状態での加工品の測定結果であり、個々の値は、実
施例1〜4のばらつき範囲内で表している。ばらつき
は、何れかの実施例が大きいというものではなく、何れ
も同様にばらついており、加工能力は0.04μmRa
〜0.15μmRaに入る。このときの油膜厚さは、概
ね油膜パラメータΛを1より大きな値に維持するもので
あり、前記文献でも滑りが小さければ短寿命が回避でき
る領域である。これに対して、比較例6の外輪は0.2
〜0.3μmRaとなっており、必要以上に大きな粗さ
になっている。
【0031】また、前記表1に示す転がり疲労寿命比L
10/Lcal の結果は前述の通りであるが、今回の試験で
は転動体は同一の材質を用い、熱処理は外輪と同じずぶ
焼きとして浸炭窒化は行わず、焼戻し温度を低くするこ
とにより硬さをHv710〜Hv730まで上げて外輪
より硬くしてある。即ち、ずぶ焼き同士の摩擦係数の方
が、ずぶ焼きと浸炭窒化の組合せより摩擦係数が大きい
ので、転動体を外輪と同じずぶ焼きとすることにより、
摩擦力は外輪と転動体の方が内輪と転動体より大きくな
る。転動体の硬さを外輪より大きくするのは、前記文献
に見られるように、長寿命が得られるためであり、硬さ
を大きくする方法は今回の試験で行った焼戻し温度の変
更だけでなく、冷却速度の変更や材料成分中のC,C
r,Si,Mo等を変えることによっても可能である。
焼戻し温度を下げる以外の方法で転動体の硬さを上げる
実用的な方法は実施例1より炭素量を多く含んだ軸受鋼
SUJ2を用いること及び炭素量を上げるために浸炭及
び浸炭窒化すること等の方法がある。
【0032】次に、行った寿命試験の条件を列記する。 回転速度:1000rpm 荷重:動定格荷重の65%(P/C=0.65) (ラジアル荷重Fr=44.1kN、アキシャル荷重F
a=11.0kN) 潤滑油:鉱油VG68 周囲温度:室温(約28℃) 軸受温度:外輪外径で45〜54℃ フレーキングについては、実施例1〜4の長寿命側のも
のは殆ど面圧が高い内輪軌道面中央部に表れるのに対
し、比較例5の短寿命のものはスキューの影響により軌
道面の端に寄っており、比較例6の短寿命のものは軌道
面粗さの大きい外輪に発生した。このため、実施例1〜
4は比較例5,6のような短寿命が表れておらず、比較
例5,6に対して寿命比で約2.5倍以上長寿命になっ
た。即ち、この長寿命は比較例5の大きな負のスキュー
が表れるのを防ぎ、スキューを負の場合でも絶対値で1
°より小さくすることと、比較例6の小さい油膜パラメ
ータΛを大きくする効果によって得られたものである。
一般に、寿命試験に用いた自動調心ころ軸受をも含め、
多くの軸受は内輪の方が外輪より最大接触面圧が大きい
か軌道面表面温度が高いので、内輪と外輪の材料・熱処
理が同じ場合は殆ど内輪フレーキングとなる。このた
め、本実施形態は面圧又は温度が高くなり易い内輪に浸
炭窒化を施すことにより長寿命化を狙っており、実際の
試験でも比較例5,6の短寿命以外の正常な内輪フレー
キングでも、各実施例1〜4の方が長寿命となってい
る。また、前記特許2518608号で正のスキューが
大きいとスキュー制御によって生じる内輪の滑り等で内
輪側の寿命が短くなることが懸念されているが、この点
からも内輪を外輪より長寿命となる材質・熱処理とする
ことは理にかなっており、内輪だけ長寿命材を用いても
内外輪とも長寿命仕様とした場合と同程度の寿命が得ら
れ、生産性の向上やコストの低廉化が期待できる。
【0033】また、試験を行った6回の軸受温度の平均
値は、実施例1〜4及び比較例6が47〜49℃であっ
たのに対して、比較例5の場合は51℃と高かった。こ
の軸受温度の差は軸受の発熱による差で、実施例1〜4
及び比較例6の内部設計仕様は、比較例6の外輪粗さ以
外が同じなので、実施例1〜4と比較例5は材料及び熱
処理、比較例5と比較例6は外輪軌道面粗さの差によっ
て生じたものである。自動調心ころ軸受の発熱の差は、
ころのスキューによるものが主要因である。このこと
は、ころのスキューが比較例6と実施例1〜4とでほぼ
同等であるのに対して、比較例5は大きく、比較例5で
フレーキングが軌道面の端に寄って発生した短寿命の場
合には、軸受温度が52〜54℃と更に高くなったこと
にも表れている。実施例1〜4に、この影響が表れなく
なったのは、内輪に浸炭窒化処理を施した窒化処理によ
る摩擦低減で、外輪のずぶ焼きと摩擦係数の差を生じさ
せることにより、比較例5よりスキューを抑制できるよ
うなったためである。
【0034】また、比較例5では、スキュー制御に関し
ては、前述と同様に、実施例1〜4と同等以上である
が、前記表1の寿命試験データから明らかなように、油
膜パラメータΛの値が小さいことによる外輪フレーキン
グの短寿命が生じている。即ち、比較例6は短寿命が表
れるので、粗さを大きくすることは危険性を伴う。更
に、比較例6は油膜パラメータΛの差が摩擦係数にも影
響しており、必要以上に摩擦係数の差を大きくしたこと
による内輪の滑りによる内輪軌道面の温度上昇の影響も
あり、内輪フレーキングの場合でも実施例1〜4よりは
幾分短寿命の傾向が見られた。なお、油膜厚さが小さい
ことによる短寿命が表れないための油膜パラメータΛの
値としては、今回の試験では1.17以上で短寿命が表
れないことを確認しており、望ましくは1.2以上とな
るが、前記文献にもあるように、内外輪の摩擦係数比μ
i /μO が1より小さいことによりスキューのような滑
りの問題が解決されているので、油膜パラメータΛが
0.8より大きな領域では短寿命が表れないと判断され
る。
【0035】また、本実施形態は、前述と同様に、面圧
が高い内輪に浸炭窒化処理を施すことにより、内輪の疲
労寿命を向上させ、面圧が低い外輪と同程度の寿命とす
ることも一つの特徴となっている。以下に、その実験的
裏付けを説明する。図3は、前記実施例1,2及び比較
例5,6の内輪と同一仕様の材料・熱処理のフラットワ
ッシャテストピースを用いて転がり疲労寿命試験を行っ
た結果の一例である。実施例1,2の内輪に相当する材
料・熱処理の寿命値は、何れも比較例5,6より長寿命
特性を示している。これは、浸炭窒化等の表面硬化処理
を施すことにより表面硬さが高くなり、異物混入により
軌道輪や転動体に生じる圧痕を小さく且つ浅く抑えるこ
とができるためである。なお、実施例3は実施例1と、
実施例4は実施例2と同程度の寿命特性となる。これ
は、浸炭窒化により微細な炭化物及び窒化物を析出させ
た効果によるものである。また、自動調心ころ軸受は、
内輪と外輪とではその幾何学的形状から、内輪の方が最
大接触面圧が高くなり、通常の使用条件では内輪にフレ
ーキングが発生する比率が高い。このため、内輪に浸炭
窒化等の表面効果処理を施すことにより長寿命とするこ
とが可能となるのである。
【0036】また、前記表1に示すように、実施例1〜
4の内輪には浸炭窒化処理により10kgf/mm2
り絶対値の大きな(負値表示では数値は小さい)圧縮残
留応力が発生する。これに対して、比較例5では圧縮残
留応力が殆ど0であり、比較例6では圧縮残留応力の絶
対値が2〜15kgf/mm2 の範囲にばらついてい
る。このうち、実施例1,2及び比較例5,6の軸受を
シャフトに取付けたときの嵌め合い応力と内輪割れによ
る破壊までの繰り返し回数との関係を図4に示す。同図
から明らかなように、嵌め合い応力に対する内輪割れま
での繰り返し回数は、実施例2>実施例1>比較例6>
比較例5の順で、圧縮残留応力が大きいほど内輪割れ強
度が向上していることが分かる。
【0037】また、自動調心ころ軸受で残留オーステナ
イト量を殆ど0にする熱処理を行う理由は、高温条件下
で残留オーステナイトが分解して寸法変化を引き起こす
ためであり、かなりの高温で使用される前提のもとで、
軟化抵抗性及び寸法安定性が要求される。更に、図5
は、前記実施例2の内輪のSi添加量を0.2%と1%
に変えた材料を用いて、Si添加による高温での焼戻し
抵抗性を調べた結果である。まず、この図から本実施形
態において内輪の熱処理を浸炭窒化処理等により表面硬
化したものは、ともに比較例5より優れた特性を示し、
窒化処理は軟化抵抗性を増加する効果があるので、浸炭
窒化したものの方が焼戻し軟化抵抗性に優れている。次
に、Si添加量を増やすことにより焼戻し軟化抵抗性が
大きくなり、硬さの低下が小さい。転がり疲労寿命をよ
くするには硬さが低下しないことが必須条件であり、硬
さ係数として硬さ低下に伴う寿命低下の割合も規定され
ている。即ち、Si添加に伴い硬さ低下が小さくなるこ
とにより、寿命特性が向上する。図5はSi0.2%と
1%添加の場合を示しているが、Si添加量と焼戻し軟
化抵抗性の関係はほぼ比例関係にあり、使用保証温度範
囲が通常200℃という高温まで要求される場合は、S
i添加量を0.4%以上とするのが望ましい。同様に、
Si添加は焼戻し軟化抵抗性に加えて、寸法安定性の向
上にも寄与する。
【0038】また、通常の使用環境下では、前記表2の
ように硬さを上げることが長寿命につながるが、自動調
心ころ軸受や円すいころ軸受は、抄紙機や圧延機のよう
に水や蒸気が混入する条件下でも使用される。水や蒸気
が入ることにより、通常の使用条件の1/5以下という
短寿命で固定輪にフレーキングが発生し易くなる。この
寿命低下は、水混入により水分中の水素が材料と反応し
て水素脆性として材料強度が低下するためであり、フレ
ーキングが固定輪に発生し易くなるのは従来の応力絶対
値依存性より応力繰返し数依存性が高くなるためであ
る。この対策としては、固定輪に対して、このような水
素脆性や遅れ破壊に強い材料・熱処理とすることが必要
である。また、水素脆性が発生し易くなる粒界酸化の防
止や炭素の偏析を少なくすることが有効であり、マトリ
ックスに固溶する分だけ炭素を含有するように、その量
を減らす必要がある。目安としては、炭素の含有量0.
9wt%が実験的に確認されており、これ以下に抑える
ことにより、水混入下でも長寿命化が図れる。即ち、本
実施形態では、前記実施例1〜3は炭素を0.9wt%
以下とすることにより、このような使用条件下でも長寿
命を示す。
【0039】以上より、本実施形態では、スキューコン
トロールによる回転性能の向上、圧縮残留応力の付加に
よる耐内輪割れ特性の向上、転がり疲労寿命特性の向上
を達成すると共に、付随的に水や水蒸気が混入する条件
下での外輪の耐転がり疲労特性の向上という効果があ
る。なお、前記実施形態では、自動調心ころ軸受や円す
いころ軸受等のころ軸受の例を述べたが、ジェットエン
ジン等の高速回転用玉軸受では同様に玉のスピンによる
滑り及び玉の遠心力による面圧の増大が問題となってお
り、スピン滑りが最も小さくなるように表面処理を施す
ことにより、内輪と転動体及び転動体と外輪の摩擦係数
を調整して軸受性能が向上する例もある。例えば本出願
人による先の特願平9−21642号では、スラスト転
がり軸受の外輪軌道面の中心線平均粗さを内輪の夫より
大きくして、玉のスピンを外輪コントロールとするもの
であるが、それにも本発明を適用して、内輪を浸炭窒化
等の表面処理、外輪を浸炭又はずぶ焼きとすることによ
り、同様の効果を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】上記の説明から明らかなように、本発明
の転がり軸受によれば、例えば内輪に浸炭窒化等の表面
処理を施すことにより、内輪及び転動体間の摩擦係数が
外輪及び転動体間の摩擦係数に対して相対的に小さくな
り、ころ軸受ではスキュー、玉軸受ではスピン等の軸受
の不規則な挙動を小さく抑えることができると共に、粗
さを粗くする必要がないので油膜パラメータを大きくし
て寿命低下を防ぎ、また内輪に圧縮残留応力があるので
内輪と回転体との嵌め合い部に引張のフープ応力が発生
しても内輪割れ強度が向上し、更に最大接触面圧が大き
い内輪に浸炭窒化等の表面処理を施すことにより表面硬
さが大きくなって転がり疲労寿命も長寿命化する。ま
た、外輪の基地の炭素含有量を少なくすれば、粒界酸化
や炭素偏析による水素脆性の影響が小さくなるので、水
混入下での短寿命、即ち固定輪フレーキングの発生を防
止して長寿命化を図り、窒化処理及びSi添加による軟
化抵抗性の増大と寸法安定性の向上、クリープの防止、
高温下での寿命低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の実施例と比較例との内外
輪摩擦係数比及び油膜パラメータの特性説明図である。
【図2】本発明の転がり軸受の実施例と比較例との粗さ
に対する摩擦係数特性の説明図である。
【図3】本発明の転がり軸受の実施例と比較例との転が
り疲労寿命特性の説明図である。
【図4】本発明の転がり軸受の実施例と比較例との嵌め
合い応力に応じた内輪割れ特性の説明図である。
【図5】本発明の転がり軸受の実施例においてSi添加
量を変化させた場合と比較例との焼戻し温度別の表面硬
さ特性の説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 五位野 良 神奈川県藤沢市桐原町12番地 日本精工株 式会社内 (72)発明者 佐藤 誠二 神奈川県藤沢市桐原町12番地 日本精工株 式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA12 AA15 BA53 BA54 BA70 DA02 EA02 EA03 FA02 FA15 FA31 FA60 GA11 GA34 GA35 GA60

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内輪と外輪との間に転動体を配置し、潤
    滑剤で潤滑されて使用される転がり軸受において、外輪
    及び転動体間の摩擦係数に対する内輪及び転動体間の摩
    擦係数の比が0.8より大きく且つ1.0未満であり、
    下記で表す内輪及び転動体間の油膜パラメータが0.8
    より大きく、外輪及び転動体間の油膜パラメータが4.
    0未満であることを特徴とする転がり軸受。 油膜パラメータ:Λ=hmin /(R1rms 2 +R2rms 2
    1/2min :Dowson-Higginson,Hamrock-Dowsonの式で計算
    した最小油膜厚さ R1rms:軌道輪の軌道面自乗平均粗さ R2rms:転動体の転動面自乗平均粗さ
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