JP2004205047A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内輪、外輪、および転動体の少なくとも一つを、C:0.1〜1.0重量%、Si:0.1〜1.5重量%、Mn:0.1〜1.5重量%、Cr:0.5〜3.0重量%、Mo:3.0重量%以下、V:2.0重量%以下、Ni:2.0重量%以下、を含有し残部Feおよび不可避不純物元素からなる合金鋼で形成され、完成品表面層の炭素量および窒素量をC:0.8〜1.5重量%、N:0.3〜0.7重量%とする。
【選択図】 なし
Description
SUJ2は合金組成中にCとCrが多く含有されていて、製鋼時に巨大炭化物や偏析を生じやすい。これをなくすためにソーキング処理などが行われる結果、SCR420に比べて材料費は高くなる。
以上の比較から、材料費と加工費を考慮した軸受の総合コストとしては、SUJ2の方がSCR420より低くなる。
こうした問題の対策として、本出願人は先に出願の特許文献1において、材料コストが低く、熱処理生産性が良好で且つ長寿命の転がり軸受を提案した。このものは、軸受の転がり疲れ寿命に有害な初析炭化物を生じ易いCr量を0.35%未満とし、Cr量低下による焼入れ性低下を避けるために、1.2〜1.7重量%のMnを添加するとともに基地カーボン量の多い(C量:0.4〜0.7重量%)中炭素マンガン鋼を用いることにより初析炭化物の発生を抑制し、軸受表面層におけるγR を25〜45体積%の範囲として必要な硬化層深さを得ることにより、異物混入潤滑下での転がり軸受の長寿命化を達成しようとするものである。
しかしながら、この場合、Mn量による加工性の低下、浸炭窒化したときの研削加工性の低下等の問題があり、また本来転動体と内外輪とでは要求される機能や加工条件が異なることからも、なお改良の余地がある。
このような加工方法の差異に鑑み、転動体においては素材SUJ2の巨大炭窒化物を消失させ、ソーキングを不要とし、冷間鍛造性(金型寿命)の向上を図る必要性があり、また内外輪においては切削加工性(工具寿命)、研削加工性(ドレッシング間隔)の向上を図る必要性があるなど、それぞれに独自の課題を有していた。換言すると、異物混入潤滑下での長寿命を達成しつつ、なお且つ、できる限り低コストな転がり軸受を得るためには、なお改良の余地があった。
これに対し、特許文献3に開示されているように、高クロム鋼に浸炭又は浸炭窒化を施し、軸受表層に微細炭化物を析出させ、かつ残留オーステナイト量γR を適正化することにより、異物混入潤滑下での長寿命化を図る従来例が知られているが、潤滑不良による磨耗に対する考慮が不十分であった。
また、特に高速、低荷重の条件下で使用される乗用車のトランスミッション用等の転がり軸受の場合は、耐磨耗性と共に低コスト化が強く望まれており、軸受製造コストに影響の大きい材料の被削性や研削性等の加工性の良否にも配慮が必要になる。
本発明は、以上に鑑み、異物混入潤滑下での転がり寿命を向上するとともに、必要に応じ、できるだけ低コストな、あるいは異物混入潤滑下で軸受の種類や使用条件の違いに応じて耐磨耗性に優れた長寿命の転がり軸受を選択的に提供することを目的としている。
C :0.1〜1.0重量%
Si:0.1〜1.5重量%
Mn:0.1〜1.5重量%
Cr:0.5〜3.0重量%
Mo:3.0重量%以下
V :2.0重量%以下
Ni:2.0重量%以下
を含有し残部Feおよび不可避不純物元素からなる合金鋼で形成され、完成品表面層の炭素量および窒素量が
C :0.8〜1.5重量%
N :0.3〜0.7重量%
であることを特徴とする。
[C含有量]
Cは、基地をマルテンサイト化することにより、焼入れ・焼戻し後の硬さを向上するために必要な元素である。その含有量を0.1重量%以上としたのは、軸受として必要な強度を確保するためである。上限を1.0重量%以下としたのは、これ以上含有すると心部の靭性を低下させるからである。
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、また焼戻し軟化抵抗を高め、転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であるため0.1重量%以上含有させるが、浸炭窒化時に炭素や窒素が表面から侵入するのを阻害し、熱処理生産性を低下させるので上限を1.5重量%とした。
[Mn含有量]
Mnは、製鋼時の脱酸剤および脱硫剤として必要な元素であり、また焼入れ性を向上させるのに有効な元素であるため0.1重量%以上含有させるが、多量に添加すると被削性を低下させるため上限を1.5重量%とした。
Crは、焼入れ性を向上させ、基地を固溶強化する他、浸炭窒化により軸受表面層に炭化物、窒化物および炭窒化物を析出させ、転動疲労寿命および耐磨耗性を向上するのに役に立つ。Crの含有量の好ましい下限値として0.5重量%としたのは、これ以下ではその添加効果が少ないためである。また、多量に添加すると表面にCr酸化物が形成され、浸炭窒化時に炭素や窒素が表面から侵入するのを阻害し、熱処理生産性を低下させるため上限を3.0重量%とした。
Moは、焼戻し軟化抵抗を増大し、また、Crと同様に浸炭窒化により軸受表面層に炭化物、窒化物および炭窒化物を析出させ、転動疲労寿命および耐磨耗性を向上するのに有効な元素である。上限を3.0重量%としたのは、あまり多量に添加すると塑性加工性が悪くなることおよび高価になるためである。
Vは、Moと同様に焼戻し軟化抵抗を増大し、また浸炭窒化により非常に微細で高硬度なVC炭化物や窒化物および炭窒化物を生成し、その分散強化により耐磨耗性および転動疲労寿命特性の向上に有効な元素である。上限を2.0重量%としたのは、あまり多量に添加すると被削性が悪くなることおよび高価になるためである。
[Ni含有量]
Niは、マトリクスに固溶して靭性を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、あまり多量に添加すると表面層のγR が増加しすぎて硬さが低下するため上限を2.0重量%とした。
先にも述べた通り、従来から、耐磨耗性を向上させるために、Cr,Mo,V等の炭化物形成元素を多量に添加して軸受表面層に炭化物を析出させる方法が知られているが、合金元素を多量に含有し又熱処理コストも高くなるため非常に高価になってしまう。
そこで、特に異物混入潤滑下で転がり寿命が長寿命で且つ耐磨耗性にも優れた転がり軸受を得る、という本発明の第1の目的を達成すべく、本願発明者らは軸受表面層の炭素濃度および窒素濃度に着目し、寿命および耐磨耗性との関係について研究を行った結果、軸受表面層の窒素濃度を適正化することにより耐磨耗性を著しく向上できることを見いだした。
この時、マトリクスに十分な強度を与えて長寿命化を図るためには、表面層の炭素濃度は好ましくは0.8重量%以上必要である。一方、表面層の炭素濃度が1.5重量%を越えると、以下に述べる条件との組み合わせにより結晶粒界に網目状の粗大炭化物が析出し、そこへ応力集中が生じて転動疲労寿命が低下する。
なお、本願の請求項1に係る転がり軸受において、内輪、外輪のうちの固定輪のみに先に述べた成分組成の合金鋼を用いれば、耐磨耗軸受を一層安価に供給することが可能である。また、連鋳機用軸受等のように、割れについても問題となる場合には、母材の炭素濃度を0.5重量%以下とすることが望ましい。
このように、本願の請求項1に係る転がり軸受は、異物混入潤滑の条件のうち、特に製鉄用など(比較的低速で)高荷重の条件まで耐磨耗性を得ることができるものである。
C :0.3〜0.9重量%
Si:0.1〜0.7重量%
Mn:0.5〜1.5重量%
Cr:0.1〜0.8重量%
を含有し残部Feおよび不可避不純物元素からなる合金鋼で形成され、完成品表面層の炭素量および窒素量が
C :0.6〜1.2重量%
N :0.2〜0.9重量%
であり、更に、Crと窒素の総含有量(素材中のCr含有率と表面層におけるN含有率との合計量:「Cr+N」)が0.4〜1.0重量%
であることを特徴とする。
一般に、転がり軸受材料として使用されているSUJ2などの軸受鋼やSCR420相当の肌焼鋼を浸炭窒化処理した場合、窒素濃度が増加されると耐磨耗性は大きく向上するが、反面、研削性は著しく低下する傾向にあり、加工費の面で大きなコストアップとなる。
そこで、本発明者らは、材料成分と窒素濃度、研削性及び耐磨耗性等の相関について研究を重ねた結果、Cr含有量と窒素添加量を適正化することにより、異物混入下における長寿命と耐磨耗性に優れ、且つ研削性を含めた加工性も良好な軸受を低コストで提供できることを見い出した。
Cは、軸受として必要な心部強度を得るためには必要な元素である。しかし、素材の炭素量が0.9重量%を越えると、製鋼時に巨大炭化物や偏析をなくすためのソーキングが必要となり、材料費のコストアップとなる。また、炭素量が増すと変形抵抗が増加する傾向にあり、冷間加工性や切削性が悪くなるので、上限は好ましい値として0.9重量%とした。
一方、素材の炭素量が0.3重量%未満になると浸炭(又は浸炭窒化)処理が長くなり熱処理生産性が低下するため、下限を好ましい値として0.3重量%とした。ただし、内外輪に使用する場合、寸法安定性や心部靭性が問題となるときには素材の炭素量を0.6重量%以下とすることが望ましい。
Siは製鋼時に脱酸剤として必要な元素であり、焼入性を向上させるとともに基地マルテンサイトを強化し、さらに焼戻し軟化抵抗性を高めるのに有効な元素であるため0.1重量%以上の添加は必要である。しかし、その含有量が多すぎると冷間加工性や切削性を低下させ、さらに浸炭窒化の際の炭素及び窒素の浸透深さが減少し、熱処理費のコストアップにつながるので上限を好ましい値として0.7重量%とした。
Mnは、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。さらに本発明では浸炭窒化処理を行うことで、軸受完成品表面に微細な窒化物を形成し耐磨耗性を向上させるが、Mnを添加すると浸炭窒化しても研削性が低下しにくくなることを発見した。この効果を発揮させるため好ましくは0.5重量%以上は必要である。しかし、多量に添加されると素材の冷間加工性や切削性が低下するので上限を1.5重量%とした。
Crは焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性を向上させるのに有効な元素であるため、0.1重量%以上は必要であり、浸炭窒化処理を行うことで軸受完成品表面に窒化物を形成し耐磨耗性を向上させるが、Cr量と窒素含有量の関係が一定量を越えると研削性が悪くなる。また、過剰な添加は材料のコストアップとなるだけでなく、浸炭窒化時の炭素および窒素の浸透深さが減少し、熱処理費のコストアップにつながるので上限を好ましい値として0.8重量%とした。
通常、浸炭窒化処理後の完成品表面の炭素濃度は軸受として必要な硬さを得るために0.8以上必要とされているが、本発明では長寿命と耐磨耗性とを同時に得るために窒素含有量の上限値を増やしているので、最低必要な表面炭素量は0.6重量%となる。しかしながら、その含有量が1.2重量%を越えると窒素含有量と合わせて固溶量が過剰となり、処理条件によっては必要以上のγR が発生して表面硬さが逆に低下したり、初析が生じたりして転動寿命を低下させる場合がある。そのため上限を好ましい値として1.2重量%とした。
完成品表面の窒素量が0.2重量%未満の場合、窒素の固溶不足により寿命と耐磨耗性を同時に得ることが困難となってくる。従って、下限として好ましくは0.2重量%とする。一方、窒素量を増加していくと、窒化物が析出し耐磨耗性が向上する。しかし、Crの添加量によっては、耐磨耗性向上と共に研削加工性が悪化する傾向にあり、0.9重量%を越えるとCrの添加量を減らしても研削性が改善されない。
Crは窒素添加によって窒化物あるいは炭窒化物を形成して耐磨耗性を向上させる作用がある反面、研削性は低下する。本発明者らは、素材中のCrの含有率と表面層におけるN含有率の和が適正な範囲内であれば研削性及び耐磨耗性が共に良好となることを実験的に見いだした(実験内容については後述の実施例で詳しく述べる)。
結論として、表面層のN含有量が0.2重量%以上との条件で、上記Cr+N量が1.0重量%を越えると研削性が急激に悪化し、一方、0.4重量%未満になると耐磨耗性が著しく低下することが判明した。そこで、研削性と耐磨耗性とを同時に満足させ得るCr+N量の適正な範囲を0.4〜1.0重量%と規定した。Cr+N量がこの範囲内にあっても、表面層N含有量が0.2重量%以上で無い場合には十分な耐磨耗性が得られない。
また、本願の請求項2に係る発明によれば、特に高速、低荷重の条件下で耐磨耗性に優れ、かつ低コストであるとともに長寿命の転がり軸受を提供することができるという効果が得られる。
[第1の実施形態]
先ず、本願の請求項1に係る発明の実施例を説明する。この発明の実施例の合金組成を表1に示す。
面圧;4900MPa
回転数;1000cpm
潤滑油;#68タービン油
異物混入;SUS420J2鋼粉(硬さHRC52、粉径80〜160μm)
異物混入量;300ppm
磨耗試験は図2に示すような二円筒式磨耗試験機を用いて行い、上下に対向させた一対の円筒10にそれぞれ供試片Sを装着して、上から荷重Pを負荷しながら互いに接触状態で逆方向に低速で回転させて、両供試片Sの磨耗率(g/m)の平均値を求めるものである。特に、潤滑不良状態での磨耗特性を試験するべく、回転中は油膜が切れ易い低粘度の潤滑油を注ぐようにした。
荷重;100kgf
回転数;10rpm
滑り率;30%
潤滑油;S10
油温;60℃
供試片T1〜T9は本発明例であり、耐磨耗性および寿命ともに従来と比較して著しく向上している。供試片T10はCr添加量が下限未満の場合で、寿命の向上効果が不十分である。供試片T11、T14およびT15は、表面層窒素濃度が低すぎる場合の比較例であり、寿命、耐磨耗性ともに向上効果が不十分である。供試片T12は、表面炭素濃度が上限を越えた場合の比較例であり、結晶粒界に粗大な網目状の炭化物が析出したため短寿命となっている。供試片T13は表面炭素濃度が下限未満の場合の比較例であり、寿命の向上効果が不十分である。
次に、本願の請求項2に係る発明(すなわち、高速、低荷重の条件下で異物混入潤滑下での転がり寿命に加えて耐磨耗性と低コストとを両立させる場合)の実施例について説明する。
(1)軸受の合金鋼の材料成分と切削加工における工具寿命及び冷間型鍛造(据え込み加工)における型寿命との関係
実施例と比較例の各鋼種について、工具寿命と型寿命を比較した。
切削機械:高速旋盤
工具:P10(JIS B 4053)
切り込み速度:180〜220m/sec
送り量:0.2〜0.3mm/rev
切り込み深さ:0.6〜1.0mm
「JIS B 4011」のバイト切削試験法に従って上記条件で各試料を切削し、バイトの逃げ面磨耗量が0.2mmに達するまでを工具寿命とした。
金型:V30(JIS B 4053)
据え込み率:15〜20%
加工性:毎分300〜400個
潤滑:燐酸亜鉛皮膜+潤滑油
各鋼種を上記条件で加工し、金型にクラックが発生したり破損したりして加工後のワークに傷や変形が出るまでを金型寿命とし、それ迄に加工されたワークの数で金型寿命を示した。
それぞれの結果を表3に示す。
表3における実施例と比較例の各合金鋼(ただし、N8、N10は除外)について、次のF、G、Hの各熱処理を施し、熱処理品質を評価した。
〔熱処理F〕
温度840〜900℃で、1〜4時間、吸熱形ガス雰囲気中にエンリッチガス及びアンモニアガスを加えて、残留アンモニアが少なくとも0.1体積%以上含まれる条件で浸炭窒化を行い、そのままダイレクトに焼入れを行うか、または一旦ダイレクトに焼入れた後830〜860℃で30分間保持した後、二次焼入れを行い、引き続いて160〜180℃で2時間の焼戻しを行う。
温度870〜930℃で、1〜4時間、吸熱形ガス雰囲気中にエンリッチガス及びアンモニアガスを加えて、残留アンモニアが0.1体積%未満の条件で浸炭窒化を行い、そのままダイレクトに焼入れを行うか、または一旦ダイレクトに焼入れた後830〜860℃で30分間保持した後、二次焼入れを行い、引き続いて160〜180℃で2時間の焼戻しを行う。
温度930〜960℃で、5〜7時間、通常の浸炭処理を行った後、室温まで放冷し、次いで830〜860℃で30分間保持した後、焼入れを行い、引き続いて160〜180℃で2時間の焼戻しを行う。
本実施例の合金鋼に行う熱処理は〔熱処理F〕であり、1〜4時間の短時間処理で十分な浸炭、浸窒深さが得られる。ほとんどの場合、ダイレクトに焼入れを行うのでコスト的に通常焼入れとほぼ同等となる。しかし、薄肉の軸受等においては焼入れ時の変形が非常に問題となるため、二次焼入れ又はプレスクエンチを施した方が変形が抑えられて不良率が減少し、研削コストも下がるのでコスト的にも有利になる場合もある。
寿命試験の条件:
面圧:4900MPa
回転数:1000rpm
潤滑油:#68タービン油
混入異物:
組成;Fe3 C系粉
硬さ;HR C52
粒径;74〜147μm
混入量;潤滑油中に300ppm
砥石:WA100
研削液:ソリュブルタイプ
研削周速:2800〜3000m/min
研削試験には呼び番号6206の内輪を用い、上記条件でその内輪軌道面を砥石で研削し、砥石のドレスを行うまでに研削した内輪個数を調査した。
試験機:二円筒式磨耗試験機(図2に示したもの)
荷重:50kgf
回転数:100rpm
滑り率:30%
潤滑油:S10
油温:60℃
磨耗試験には同一鋼種の二個の円筒試験片を用いて上記の条件で行い、それぞれの重量減小量(磨耗量)を測定し、その平均値を用いて磨耗率で示した。
また、No. 16AはMnやCrの含有量が最低必要とされる量に満たないために耐磨耗性及び寿命が改善されていない。No. 17Aは素材のC重量%が低いため短時間処理では十分な炭素が与えられず、γR が不足したために短寿命となった。No. 18A及びNo. 19Aは通常の浸炭例であるが、Nが含有されていないために耐磨耗性と寿命が改善されない。
No. 25Aは研削個数及び耐磨耗性に関しては比較例中では比較的良い結果が得られたものの、表面層の炭素量が多すぎることにより若干の初析(炭化物)が生じため転がり寿命が低下した。
No. 26Aは表面層の窒素量が多すぎるため研削加工性が低下した。
No. 27AはCr及び表面層の窒素量は個々には条件を満たしているものの、Cr+Nが下限値に満たないため耐磨耗性が改善されない。
Cr+Nと研削性及び耐磨耗性との関係については、図3に示すように、Nを0.2重量%以上含有する場合、Crとの総含有量Cr+Nが1.0重量%を越えると研削性が急激に悪化する。一方、Cr+Nが0.4重量%未満になると、図4に示すように、耐磨耗性が著しく低下する。また、Cr+Nが0.4〜1.0重量%の範囲内であっても、Nが0.2重量%以上含有されていない場合には、十分な耐磨耗性が得られない。
Cr含有量、表面層のNの含有量、またはこれらの和Cr+Nの少なくともいずれかが本発明の範囲外である比較例では、耐磨耗性が向上することによって研削性が低下する傾向にあるが、本発明例では研削性、耐磨耗性共に良好な結果が得られた。比較例No. 17Aおよび25Aは、比較的本発明品に近い耐磨耗性及び研削性を示しているが、表面層の炭素量が本発明の範囲外のため前記のように転がり寿命が低下している。
なお、上記の全ての本発明は、各種転がり軸受(玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、球面ころ軸受等。ラジアル型、スラスト型は問わない)に適用することができる。
Claims (2)
- 内輪、外輪、および転動体の少なくとも一つが、
C :0.1〜1.0重量%
Si:0.1〜1.5重量%
Mn:0.1〜1.5重量%
Cr:0.5〜3.0重量%
Mo:3.0重量%以下
V :2.0重量%以下
Ni:2.0重量%以下
を含有し残部Feおよび不可避不純物元素からなる合金鋼で形成され、完成品表面層の炭素量および窒素量が
C :0.8〜1.5重量%
N :0.3〜0.7重量%
であることを特徴とする転がり軸受。 - 内輪、外輪、および転動体の少なくとも一つが、
C :0.3〜0.9重量%
Si:0.1〜0.7重量%
Mn:0.5〜1.5重量%
Cr:0.1〜0.8重量%
を含有し残部Feおよび不可避不純物元素からなる合金鋼で形成され、完成品表面層の炭素量および窒素量が
C :0.6〜1.2重量%
N :0.2〜0.9重量%
であり、更に、Crと窒素の総含有量(Cr+N)が0.4〜1.0重量%
であることを特徴とする転がり軸受。
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