JP2000176931A - 砥粒固定ワイヤおよびこれを用いたワーク加工装置 - Google Patents

砥粒固定ワイヤおよびこれを用いたワーク加工装置

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JP2000176931A
JP2000176931A JP10355807A JP35580798A JP2000176931A JP 2000176931 A JP2000176931 A JP 2000176931A JP 10355807 A JP10355807 A JP 10355807A JP 35580798 A JP35580798 A JP 35580798A JP 2000176931 A JP2000176931 A JP 2000176931A
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resin
abrasive
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JP10355807A
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Inventor
Yukinari Okuyama
幸成 奥山
Yukihiro Nomura
幸弘 野村
Koji Fukuda
紘二 福田
Tetsuo Okuyama
哲雄 奥山
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Nippei Toyama Corp
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Nippei Toyama Corp
Toyobo Co Ltd
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  • Processing Of Stones Or Stones Resemblance Materials (AREA)
  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ポリベンザゾール繊維および樹脂からな
る芯成分と、樹脂および砥粒からなる鞘成分との芯/鞘
構造を有し、表面にダイアモンド砥粒が固定されたワイ
ヤの提供。このワイヤ1を加工用ローラ2,3,4間に
巻回し走行させて、ワークWに接触させるワーク加工装
置の提供。 【効果】 加工速度および加工精度を向上させることが
できる。加工精度を一定に維持できる。従来にないレベ
ルのワイヤソーの細径化およびカーフロスの低減が可能
となる。遊離砥粒を含むスラリの供給が不要であるの
で、劣悪な作業環境や廃液処理、加工後の洗浄、さらに
低加工効率といった問題が改善される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、シリコンウエハ
のインゴットを切断するなどのワークの加工に用いられ
る砥粒固定ワイヤおよびこれを用いたワークを加工する
装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、ワークとしての硬脆材料、例えば半
導体材料、磁性材料、セラミック、シリコンウエハなど
に切断や研磨などの加工を施す加工装置においては、鉄
系金属の線材よりなるワイヤが切断などの加工に使用さ
れていた。そして、このワイヤ表面に遊離砥粒を含むス
ラリを供給しながら、所定の張力を付与した状態でワイ
ヤを走行させ、ワークに接触させて、その接触部分を線
状に削り取り加工することが行われていた。ところが、
鉄系金属の線材に高粘度の研磨剤スラリを供給しながら
削り取り加工を行う場合、劣悪な作業環境や廃液処理、
加工後の洗浄、さらに低加工効率といった問題があっ
た。
【0003】遊離砥粒を用いた場合の上記問題を解消す
べく、ワイヤの表面に砥粒を固定した砥粒固定ワイヤの
検討がなされている。砥粒固定ワイヤとしては、金属を
結合材とした電着ワイヤなどの砥粒固定ワイヤが製作さ
れているが、製造コストが高く、ねじり強度が低く、ま
た砥粒含有量の少ない低集中度工具の製造が困難である
という問題点があった。これに対し、樹脂を結合材とし
たレジンワイヤが開発されているが、砥粒の保持強度が
低い、耐熱性が低いなどの問題点がある。また、鉄系金
属の線材よりなるワイヤでは、加工運転に伴いワイヤが
摩耗して細くなるとともに、酸化や腐食が生じることも
あって、加工精度を一定に維持することができないとい
う問題もあった。
【0004】そこで、金属以外の線材よりなるワイヤ表
面に砥粒を固定した固定砥粒ワイヤが検討され、非金属
モノフィラメントもしくはマルチフィラメントにダイヤ
モンド砥粒を固着してなるワイヤソー(特開平9−15
5631号公報)が開発されている。しかし、炭素繊維
などの無機繊維を線材とすると、繊維が非常に脆いの
で、切断走行中にプーリなどで屈曲疲労を受け易く、そ
の強度の割にワイヤソーの寿命が短いという問題があ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このよう
な従来の技術に存在する問題点に着目してなされたもの
である。その目的とするところは、加工速度および加工
精度を向上させることができるとともに、加工精度を一
定に維持し、かつ従来にないレベルのワイヤソーの細径
化およびカーフロスの低減が可能となる砥粒固定ワイヤ
を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の砥粒固定ワイ
ヤは、引張強度が5GPa以上、結晶配向パラメータが
0.05以下の有機繊維および樹脂からなる芯成分と、
樹脂および砥粒からなる鞘成分との芯/鞘構造を有する
ことを特徴とする。特に、有機繊維がポリベンザゾール
繊維であり、また砥粒固定ワイヤの線径が0.07mm
〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.35mmの
範囲内に設定されていることを特徴とする。また、この
発明のワーク加工装置は、この発明の砥粒固定ワイヤを
複数の加工用ローラ間に巻回し走行させて、ワークに接
触させることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】この発明の砥粒固定ワイヤは、有機繊維の表面
に砥粒が樹脂で固定されているので、ワイヤの送り速度
の高速化が可能であり、ワークを短時間に精度良く加工
することができ、かつ劣悪な作業環境や廃液処理、加工
後の洗浄、さらに低加工効率といった問題が解消され
る。この発明の砥粒固定ワイヤは、引張強度が5GPa
以上、結晶配向パラメータが0.05以下の有機繊維お
よび樹脂からなる芯成分と、樹脂および砥粒からなる鞘
成分との芯/鞘構造を有する。したがって、鉄系金属の
線材よりなるワイヤに比較してテンション変動による断
線が少なく、また無機繊維の線材よりなるワイヤに比較
してその寿命が長い。また、シリコン単結晶の大口径化
に伴う線材の強度向上の要求に充分応えることができ
る。
【0008】この発明の砥粒固定ワイヤによれば、従来
の有機繊維の線材よりなるワイヤに比較して、ワイヤソ
ーの細径化およびカーフロスの低減が可能となる。ワー
クとしての硬脆材料の加工においては、ワイヤソーの細
径化およびカーフロスの低減が課題となる。しかし、こ
の発明で規定する引張強度および結晶配向パラメータの
条件を満たさない有機繊維を線材とした場合、例えばア
ラミド繊維を線材とした場合には、シリコンウエハ切断
時の走行張力が20N設定であるとすると、線径は0.
1mmが限界となる。また、一時的に、あるいはメイン
ローラの一部では、30N以上の張力がかかることを考
慮すると、線径は0.13mmが限界であり、被削材の
カーフロスの低減に限界があった。この発明の砥粒固定
ワイヤは、走行張力を20Nとすると、線径の限界が
0.07mmであり、走行張力を30Nとしても線径の
限界は0.09mmとなる。このように、従来実現不可
能であったレベルの細径化およびカーフロスの低減が可
能となる。
【0009】この発明のワーク加工装置は、この発明の
砥粒固定ワイヤ、すなわちテンション変動による断線が
少なく、またその寿命が長い砥粒固定ワイヤを複数の加
工用ローラ間に巻回し走行させて、ワークに接触させる
ので、装置としての安定性が増し、ワークの切断や研磨
などの加工を安定して行うことができる。また、ワイヤ
に対し遊離砥粒を含むスラリを供給する必要がないの
で、かつ劣悪な作業環境や廃液処理、加工後の洗浄、さ
らに低加工効率といった問題が改善される。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の砥粒固定ワイヤは、有
機繊維および樹脂を主要構成物とする芯成分と、樹脂お
よび砥粒を主要構成物とする鞘成分とから成る芯/鞘構
造を有するワイヤである。芯成分には砥粒が含まれてお
らず、芯成分を被覆する鞘成分に砥粒が含まれている芯
/鞘構造を採ることにより、ワイヤ表面に繊維が剥き出
しになることがないので、切断時の有機繊維の毛羽立ち
が著しく低減され、加工精度を一定に保つことが可能と
なる。芯成分と鞘成分に用いる樹脂は、同種類であって
も良いし、異なっていても良い。一般的に樹脂は接着剤
としての機能を有しているので、芯成分の樹脂と鞘成分
における樹脂とが接着剤同士の接着となり、鉄系金属の
線材で問題となる樹脂固定砥粒の有機繊維線材表面から
の脱落が解消される。
【0011】〔有機繊維の説明〕この発明における有機
繊維は、引張強度が5GPa以上、好ましくは5.5G
Pa以上の強度を有し、結晶配向パラメータが0.05
以下である。結晶配向パラメータは0に近づく程好まし
く、実用面で好ましくは0.04〜0.0005、より
好ましくは0.02〜0.001である。これらの条件
を満たさない場合、ワイヤソーの細径化およびカーフロ
スの低減が望めず、また弾性率が低く、応力伝達が不十
分となり、切断時の切断効率が悪くなる。
【0012】引張強度はASTM D2101に準拠し
て測定したものである。また、結晶配向パラメータ<s
in2 φ>は、以下の方法により算出したものである。
【0013】X線の発生源として(株)リガク製回転対
陰極型X線発生装置RU−200を用い、出力は管電圧
40kV、管電流100mAとした。対陰極には銅を使
用し、(株)リガク製三スリット系小角X線散乱装置、
ニッケルフィルタを用いて、単色化したCuKα線を取
り出した。そのとき、第一スリットのピンホール直径は
0.2mm、第二スリットのピンホール直径は0.15
mmであった。取り出したX線を繊維糸条に照射し、繊
維から80mm後方(X線発生源とは逆方向)に置いた
富士フィルム(株)製イメージングプレート(FDL
UR−V)にて試料繊維からの回折X線を測定した。十
分な回折強度を得るために必要な測定時間は20分〜1
20分であった。イメージングプレートで測定した回折
強度は、富士フィルム(株)製デジタルミクログラフィ
(FDL5000)を用いた日本電子(株)製PIXs
ysTEM20にて解析した。結晶配向パラメータは、
(200)回折面のデバイ環に沿った方位角方向の回折
強度分布からバックグラウンド散乱の補正を施した後、
下記式に従って算出した。
【0014】
【数1】
【0015】上記の引張強度および結晶配向パラメータ
の条件を満足する有機繊維としては、ポリベンザゾール
繊維が挙げられる。ポリベンザゾール繊維とは、ポリベ
ンザゾールポリマーよりなる繊維をいう。ポリベンザゾ
ール(PBZ)ポリマーとは、ポリベンゾオキサゾール
(PBO)ホモポリマー、ポリベンゾチアゾール(PB
T)ホモポリマーおよびそれらPBO、PBTのランダ
ム、シーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマーな
どをいう。ここでPBO、PBTおよびそれらのランダ
ム、シーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマー
は、例えばWolfe等の「Liquid Cryst
alline Polymer Compositio
ns,Process and Products」米
国特許第4703103号(1987年10月27
日)、「Liquid Crystalline Po
lymer Compositions,Proces
s and Products」米国特許第45336
92号(1985年8月6日)、「Liquid Cr
ystalline Poly(2,6−Benzot
hiazole)Compositions,Proc
ess and Products」米国特許第453
3724号(1985年8月6日)、「Liquid
Crystalline Polymer Compo
sitions,Process and Produ
cts」米国特許第4533693号(1985年8月
6日)、Eversの「Thermooxidativ
ely Stable Articulated p‐
Benzobisoxazole and − Ben
zobisthiazole Polymers」米国
特許第4539567号(1982年11月16日)、
Tsai等の「Methodfor making H
eterocyclic Block Copolym
er」米国特許第4578432号(1986年3月2
5日)などに記載されている。
【0016】PBZポリマーに含まれる構造単位として
は、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択
される。モノマー単位は下記の構造式(a)〜(h)に
記載されているモノマー単位からなり、さらに好ましく
は、本質的に構造式(a)〜(d)から選択されたモノ
マー単位からなる。
【0017】
【化1】
【0018】PBZポリマーのドープを形成するための
好適な溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解
しうる非酸化性の酸が含まれる。好適な酸溶媒の例とし
ては、ポリリン酸、メタンスルホン酸および高濃度の硫
酸あるいはそれらの混合物が挙げられる。さらに適する
溶媒はポリリン酸およびメタンスルホン酸である。また
最も適する溶媒は、ポリリン酸である。
【0019】溶媒中のポリマー濃度は、好ましくは少な
くとも約7重量%であり、さらに好ましくは少なくとも
10重量%、最も好ましくは少なくとも14重量%であ
る。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度
といった実際上の取り扱い性により限定される。それら
の限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20重量
%を越えることはない。
【0020】好適なポリマーやコポリマーあるいはドー
プは公知の手法により合成される。例えばWolfe等
の米国特許第4533693号(1985年8月6
日)、Sybert等の米国特許第4772678号
(1988年9月20日)、Harrisの米国特許第
4847350号(1989年7月1日)に記載される
方法で合成される。PBZポリマーは、Gregory
等の米国特許第5089591号(1992年2月8
日)によると、脱水性の酸溶媒中での比較的高温、高剪
断条件下において高反応速度での高分子量化が可能であ
る。
【0021】このようにして重合されるドープから公知
の手段により高強度・高弾性率のポリベンザゾール繊維
が製造される。例えば米国特許第5294390号(1
994年5月15日)などに記載された乾湿式紡糸方法
が好適である。
【0022】ポリベンザゾール繊維の中でもポリベンゾ
オキサゾール繊維(PBO繊維)、特にポリパラフェニ
レンベンゾビスオキサゾール繊維は、高強度および高弾
性率を有するとともに、耐熱性および難燃性に優れてい
る。
【0023】有機繊維よりなる線材は、モノフィラメン
トまたはマルチフィラメントであり、マルチフィラメン
トは無撚または撚糸構造を採る。または、複数本の繊維
であってそれらが合撚された構造、ステープルファイバ
を使った紡績糸であってそれらが合撚された構造であっ
てもよい。さらに、それらの編み糸であってもよい。
【0024】〔芯/鞘構造の説明〕この発明における芯
/鞘構造は、有機繊維および樹脂からなる芯成分と、樹
脂および砥粒からなる鞘成分からなる。この芯/鞘構造
は、砥粒を含まない樹脂層が有機繊維の表面を被覆して
芯成分を形成し、さらに芯成分の樹脂やその他の接着剤
としての機能を有する樹脂によって砥粒を固着させるこ
とにより形成される。有機繊維に樹脂を付与するには、
例えば、水またはアルコールなどの有機溶媒に樹脂成分
を分散または溶解し、適当な粘度にした処理液、または
さらに砥粒を混合した処理液に有機繊維を浸漬した後に
ノズルまたはエアーで余分な樹脂を落とす方法、または
ロール塗布、スプレー噴霧などの一般的な方法が適用可
能である。
【0025】処理液にマルチフィラメントを浸漬した場
合、モノフィラメント間にも処理液が浸透し、マルチフ
ィラメントが拡張するので、有機繊維の表面に樹脂の層
が形成されずに、ワイヤ表面に有機繊維が剥き出しの状
態となるおそれがある。これを避けるためには、ノズル
またはエアーを用いてモノフィラメントに付着した余分
な処理液を落とす必要がある。例えば、樹脂を含む処理
液に有機繊維を含浸させた後に、通常使われる径のノズ
ルよりも径の小さなノズルに通すなどして、モノフィラ
メントに付着した余分な処理液を落とし、一旦乾燥させ
て、線材となる芯成分を形成する。そして、再び樹脂お
よび砥粒を含む処理液に芯成分(線材)を含浸させた
後、最初に用いたノズルよりも径の大きいノズルに通す
などして、芯成分の表面に樹脂および砥粒を含む層を形
成し、乾燥・熱処理を行うことにより鞘成分を形成す
る。また、芯成分(線材)の表面に砥粒を吹き付けて、
乾燥・熱処理を行うことによっても、樹脂および砥粒か
らなる鞘成分を形成することができる。最初にマルチフ
ィラメントを含浸させる処理液には、砥粒を含んでいて
もよいが、モノフィラメントに付着した余分な処理液を
容易に落とすには、砥粒を含んでいない方が好ましい。
【0026】線材にモノフィラメントを用いた場合に
は、例えばモノフィラメントを処理液に浸漬した後、モ
ノフィラメントの径よりも僅かに大きい径のノズルに通
すなどして、モノフィラメントに付着した余分な処理液
を落とし、一旦乾燥させて、モノフィラメントの表面を
樹脂層で被覆して芯成分を形成し、マルチフィラメント
の場合と同様にして鞘成分を形成する方法を採用するこ
とができる。
【0027】芯/鞘構造の形成において乾燥は60℃〜
120℃で0.5分間〜30分間、熱処理は150℃〜
250℃で0.5分間〜30分間行う。
【0028】樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ
樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、レ
ゾルシノール樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ポ
リウレタン樹脂、アクリル樹脂などの市販品を用いるこ
とができ、これらを単独または混合して用いることがで
きる。
【0029】砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、ニッケ
ル、銅などの金属で被覆されたダイヤモンド砥粒、立方
晶窒化ホウ素砥粒、ニッケル、銅などの金属で被覆され
た立方晶窒化ホウ素砥粒などが挙げられ、粒径10μm
〜60μm、好ましくは30μm〜40μmのものが通
常用いられる。樹脂中の砥粒含有量は、10重量%〜5
0重量%、好ましくは20重量%〜40重量%である。
砥粒含有量が10%未満では、切断能力が低下し、ワイ
ヤの寿命が短くなり、砥粒含有量が50重量%を越える
と、砥粒の脱落が多く、加工精度が低くなるおそれがあ
る。
【0030】樹脂被膜の補強および砥粒保持力の向上を
目的として、銅粉、炭素粉、硫黄粉、SiO2 、Al2
3 等の酸化物粉末などを樹脂に適宜混ぜることができ
る。これらをマトリックス樹脂100重量部に対し、3
0〜80重量部、好ましくは40〜70重量部混ぜるこ
とが望ましい。
【0031】この発明の砥粒固定ワイヤにおける繊維含
有量(Vf)は、20重量%〜60重量%、好ましくは
30重量%〜50重量%である。Vfが20重量%未満
では、線径が太くなり、カーフロスが多くなってしま
う。また、ワイヤが硬くなり、曲げ癖がつき易くなる。
Vfが60重量%を越えると、切断時に繊維の毛羽立ち
が起こり易くなり、さらに砥粒の保持が不十分で加工精
度が低くなる。
【0032】この発明の砥粒固定ワイヤは、その線径が
0.07mmから0.5mmまでの範囲内で、好ましく
は0.1mm〜0.35mmの範囲内で任意の寸法に設
定され得る。線径が0.07mm未満になると強度不足
となり、加工中に有機繊維にかかる張力に耐えられな
い。また線径が0.5mmを超えると切断加工によるカ
ーフロスが多くなり好ましくない。
【0033】〔ワーク加工装置の説明〕図1は、この発
明の砥粒固定ワイヤ1を用いて、インゴット等のワーク
Wを切断加工するためのワーク加工装置の一実施形態を
示す図である。この装置は、外周に複数のワイヤ案内溝
を形成した三本の加工用ローラ2,3,4と、複数のガ
イドローラ5と、ワイヤ1の張力を保持するためのダン
サローラ6,7と、ワイヤ1の両端を巻回した一対のリ
ールボビン8,9を備えている。
【0034】ワイヤ1は、一方のリールボビン8からガ
イドローラ5、ダンサローラ6,7および加工用ローラ
2,3,4を介して、他方のリールボビン9に巻き取ら
れ、三本の加工用ローラ2,3,4間を所定の間隔で複
数回巻き掛けられている。加工用ローラ2,3,4およ
びリールボビン8,9は、それぞれのモータMにより駆
動され、ワイヤ1を一定張力で一方向または双方向に走
行させる。ワークWは、図示しないフィードユニットに
より昇降移動され、下方の加工用ローラ2,3間を走行
するワイヤ1に接触し、押し付けられることによって、
所定の厚さを有する複数枚のウエハに切断加工される。
ワイヤ1は有機繊維の表面に砥粒が樹脂で固定されてい
るので、遊離砥粒を含むスラリの供給を必要としない。
【0035】
【実施例】次に実施例および比較例を示して、この発明
の効果をより明確なものとする。もちろんこの発明はこ
れら実施例に限定されるものではない。
【0036】以下の実施例および比較例においては、比
較例1および4を除いて、引張強度が5.0GPa、結
晶配向パラメータが0.01のPBO繊維〔東洋紡績
(株)製ザイロンHM〕を用いた。PBO繊維は、トー
タルデニールが250d、単繊度が1.5dである。
【0037】〔実施例1〕PBO繊維をフェノール樹脂
(昭和高分子社製、ショウノールBRL−219、以下
同じ)に含浸した後、径0.25mmのノズルに通し、
70℃で30分間乾燥した。この後、さらにフェノール
樹脂100重量部に対してダイヤモンド砥粒30重量部
を混合した処理液に含浸し、径0.30mmのノズルに
通した。70℃で30分間乾燥した後、150℃で1時
間熱処理して、砥粒固定ワイヤを得た。ワイヤの断面は
芯/鞘構造になっていた。
【0038】〔実施例2〕PBO繊維を実施例1と同様
にフェノール樹脂に含浸した後、径0.25mmのノズ
ルに通し、70℃で30分間乾燥した。この後、さらに
フェノール樹脂100重量部に対してダイヤモンド砥粒
30重量部、銅粉60重量部を混合した処理液に含浸
し、径0.30mmのノズルに通した。70℃で30分
間乾燥した後、150℃で1時間熱処理して、砥粒固定
ワイヤを得た。ワイヤの断面は芯/鞘構造になってい
た。
【0039】〔実施例3〕PBO繊維を実施例1と同様
にフェノール樹脂に含浸し、径0.25mmのノズルに
通した後、ダイヤモンド砥粒を吹き付けた。これを70
℃で30分間乾燥した後、さらに150℃で1時間熱処
理して、砥粒固定ワイヤを得た。ワイヤの断面は芯/鞘
構造になっていた。
【0040】〔実施例4〕線径0.15mmのPBOモ
ノフィラメントをフェノール樹脂に浸漬し、径0.25
mmのノズルを通して余分な樹脂を落とした後、70℃
で30分間乾燥した。この後、さらにフェノール樹脂1
00重量部に対してダイヤモンド砥粒30重量部を混合
した処理液に浸漬し、径0.30mmのノズルで余分な
樹脂を落とした後、70℃で30分間乾燥し、150℃
で1時間熱処理して、砥粒固定ワイヤを得た。ワイヤの
断面は芯/鞘構造になっていた。
【0041】〔比較例1〕線径0.18mmの長尺のピ
アノ線(鉄系線材)を、フェノール樹脂100重量部に
対してダイヤモンド砥粒30重量部を混合した処理液に
浸漬し、径0.30mmのノズルで余分な樹脂を落とし
た後、70℃で30分間乾燥し、150℃で1時間熱処
理して、砥粒固定ワイヤを得た。
【0042】〔比較例2〕PBO繊維を二本合糸して5
00dとしたものを、フェノール樹脂100重量部に対
してダイヤモンド砥粒30重量部を混合した処理液に含
浸し、径0.50mmのノズルで余分な樹脂を落とした
後、70℃で30分間乾燥し、150℃で1時間熱処理
して、砥粒固定ワイヤを得た。ワイヤの表面には剥き出
し状態の繊維が存在し、またワイヤの断面には繊維と樹
脂と砥粒とが存在して芯/鞘構造になっていなかった。
【0043】〔比較例3〕PBO繊維をフェノール樹脂
100重量部に対してダイヤモンド砥粒30重量部を混
合した処理液に含浸し、径0.30mmのノズルで余分
な樹脂を落とした後、70℃で30分間乾燥し、150
℃で1時間熱処理して、砥粒固定ワイヤを得た。ワイヤ
の断面には繊維と樹脂と砥粒とが存在して芯/鞘構造に
なっていなかった。
【0044】〔比較例4〕アラミド繊維〔デュポン社
製、商品名ケブラー49、引張強度2.8GPa、結晶
配向パラメータ0.013〕をフェノール樹脂100重
量部に対してダイヤモンド砥粒30重量部を混合した処
理液に含浸し、径0.30mmのノズルで余分な樹脂を
落とした後、70℃で30分間乾燥し、150℃で1時
間熱処理して、砥粒固定ワイヤを得た。アラミド繊維
は、単繊度が1.5d、トータルデニールが380dで
ある。
【0045】〔切削評価〕実施例および比較例の砥粒固
定ワイヤについて、1kgの荷重をかけた状態で、直径
4mmのガラス棒に擦り角が167°となるように接触
させる。この状態でガラス棒を周期1Hz、振幅2.5
cmで500回擦ったときの切削幅およびワイヤの表面
状態を評価した。評価結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】〔評価結果〕比較例1のピアノ線では樹脂
層の脱落が観察されたが、PBO繊維のワイヤにおいて
は樹脂層の脱落が見られなかった。また比較例2および
3の芯/鞘構造でない場合には、切削開始時からワイヤ
表面に毛羽立ちが発生したが、芯/鞘構造では、ほとん
ど毛羽立ちがおこらなかった。表面の毛羽立ちが抑えら
れたことによって、切削幅の増大が抑制されていること
が分かる。しかし、芯/鞘構造であっても、比較例4の
アラミド繊維の場合、繊維強度や弾性率が低いので応力
が不充分となり、切断効率が悪くなり、切削幅が増大し
た。
【0048】実施例3のように、樹脂を含む処理液に含
浸させた後、余分な処理液をノズルで落とした繊維にダ
イヤモンド砥粒を付着させて芯/鞘構造にすることによ
っても、実施例1および2と同様の効果が得られること
が分かる。
【0049】〔実施例5〕図1に示すワーク加工装置に
おける砥粒固定ワイヤ1として、実施例1〜4の各砥粒
固定ワイヤを用いて、シリコンインゴットの切断加工を
試みた。いずれの砥粒固定ワイヤを用いた場合でも、シ
リコンインゴットを短時間に精度良く切断加工すること
ができた。また、カーフロスも少なく、加工後の洗浄も
容易であった。
【0050】
【発明の効果】この発明の砥粒固定ワイヤは、鉄系金属
の線材よりなるワイヤに比較してテンション変動による
断線が少ない。炭素繊維などの無機繊維では、その脆さ
がゆえに、切断走行中にプーリなどで屈曲疲労を受け易
く、強度の割にワイヤソーの寿命が短いという問題が有
るが、本発明の砥粒固定ワイヤは無機繊維に比べても十
分な寿命を示す。アラミド繊維などの従来の有機繊維に
ないレベルで、ワイヤソーの細径化およびカーフロスの
低減が可能となる。
【0051】芯/鞘構造を採ることにより、ワイヤ表面
に繊維が剥き出しになることがないので、切断時の有機
繊維の毛羽立ちが著しく低減され、加工精度を一定に保
つことが可能である。また、芯成分と鞘成分に接着剤と
しての機能を有する樹脂を用いることによって、鉄系金
属の線材で問題となる樹脂固定砥粒の脱落が解消され得
る。
【0052】この発明のワーク加工装置は、ワイヤに対
し遊離砥粒を含むスラリの供給が不要であるので、劣悪
な作業環境や廃液処理、加工後の洗浄、さらに低加工効
率といった問題が改善される。また、この発明の砥粒固
定ワイヤを用いたことによる加工精度の向上は顕著であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のワーク加工装置の一実施形態を示す
図である。
【符号の説明】
1 砥粒固定ワイヤ W ワーク 2,3,4 加工用ローラ 5 ガイドローラ 6,7 ダンサローラ 8,9 リールボビン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C08K 3/00 C08K 3/00 (72)発明者 野村 幸弘 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 福田 紘二 神奈川県横須賀市神明町1番地 株式会社 日平トヤマ技術センター内 (72)発明者 奥山 哲雄 神奈川県横須賀市神明町1番地 株式会社 日平トヤマ技術センター内 Fターム(参考) 3C058 AA05 AA09 CA01 CA04 CA05 CB03 CB07 CB10 DA03 3C069 AA01 BA06 BB01 BB02 CA04 DA01 EA01 EA02 4J002 AA00X BE06X BG00X CC03X CC06X CC15X CC18X CD00X CF00X CK00X CM01W CN06W DA016 DA076 DA086 FD206

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 引張強度が5GPa以上、結晶配向パラ
    メータが0.05以下の有機繊維および樹脂からなる芯
    成分と、樹脂および砥粒からなる鞘成分との芯/鞘構造
    を有する砥粒固定ワイヤ。
  2. 【請求項2】 有機繊維がポリベンザゾール繊維である
    請求項1記載の砥粒固定ワイヤ。
  3. 【請求項3】 線径が0.07mm〜0.5mmの範囲
    内、または0.1mm〜0.35mmの範囲内に設定さ
    れている請求項1または2記載の砥粒固定ワイヤ。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の砥粒固
    定ワイヤを複数の加工用ローラ間に巻回し走行させて、
    ワークに接触させるワーク加工装置。
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