JP4565324B2 - 高強度ポリエチレンマルチフィラメント - Google Patents
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るが、若干のモノクリニック回折由来のピークが確認できる。今回検討の結果、モノクリニック回折由来の結晶サイズをある一定以下に抑えることが重要であることを見出した。この理由については正確には明らかではないが、大略以下のとおりであると理解している。すなわち、溶媒の抜けたキセロゲルの状態から延伸したとき、モノクリニック結晶の成長を阻害する溶媒分子が少ないためか、モノクリニック由来結晶のサイズが比較的大きく成長することを見出した。このような、モノクリニック結晶がある限度以上のサイズまで成長した状態になると、繊維が変形を受けたときモノクリニック由来の結晶とオルソロンビック由来の結晶の間に応力集中が生じ破壊の起点となり得る。結果的に結節強度の観点からも不利となり好ましくない。
い新規なポリエチレン繊維を得ることに成功し本発明に到達した。
2.直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したオルソロンビック結晶(110)面由来の配向角が0.9°以上4.0°以下であることを特徴とする前記1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
3.シングルフィラメントの動径方向について直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したとき、結晶サイズのCV%が10%以下であることを特徴とする前記1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
4.シングルフィラメントの動径方向について直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したとき、結晶配向のCV%が10%以下であることを特徴とする前記1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
5.単糸繊度が10dTex以下であることを特徴とする前記1記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
6.繊維の融点が145℃以上であることを特徴とする前記1記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
本発明に係る繊維を得る手法に関しては、新規な手法が必要であり、例えば以下のような方法が推奨されるが、それに限定されるものでは無い。すなわち本繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子量のポリエチレンの極限粘度[η]は5以上であることが必要であり、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であることが必要である。極限粘度が5未満であると、所望とする強度20cN/dtexを超えるような高強度繊維が得られない。
ある程度含有させることは本繊維を製造する上で、特に紡糸・延伸においての製糸上の安定を与えることとなり、より好ましい。しかしながらエチレン以外の含有量が増えすぎると反って延伸の阻害要因となるため、高強度・高弾性率繊維を得るという観点からはモノマー単位で0.2mol%以下、好ましくは0.1mol%以下であることが望ましい。もちろんエチレン単独のホモポリマーであっても良い。
累積速度差=∫(糸状の速度−糸状引き取り方向の冷却媒体の速度)
急激にかつ均一に冷却することにより繊維断面方向が均一な未延伸糸を製造することが可能となる。吐出糸状の冷却速度が遅くなると繊維の内部構造に不均一な状態が発生する。また、多フィラメントの場合、各フィラメントの冷却状態が異なるとフィラメント間での不均一性が増加する。また、引き取り糸状と冷却媒体の速度差が大きいと、引き取り糸状と冷却媒体の間で摩擦力が働く事により十分な紡糸速度で引き取ることが困難となる。
このような冷却速度を得るためには、冷却媒体として熱伝達係数の大きい液体を用いることが推奨される。なかでも、使用する溶媒と非相溶である液体が好ましい。例えば、簡便さから水が推奨される。
ル糸を冷却した場合と比較し、累積速度差を小さくすることが可能となる。
用いて測定したとき、結晶配向のCV%が10%以下であることが望ましく、さらに望ましくは8.5%以下である。CV値が10%を超える場合、結晶のばらつきが大きいことは構造不均一があることを意味し、応力集中を招くため、望ましくない。
本発明における強度,弾性率は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、試料長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分の条件で歪−応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定し、破断点での応力と伸びから強度(cN/dTex)、伸度(%)、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から弾性率(cN/dTex)を計算して求めた。なお、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
フィラメント(単繊維)の強度、弾性率は、測定対象の1本のマルチフィラメントから無作為に10本の単糸(フィラメント)を抜き取りサンプルとした。フィラメントの構成本数が、10本に満たない場合は、すべての単糸(フィラメント)を測定対象とした。
測定は、単繊維約2mを各々取り出し、該繊維1mを使用し重さを測定し10000mに換算して繊度(dTex)とした。この単糸繊維1mの長さの測定時、単糸繊度の約1/10の荷重を掛けて定長のサンプルを作成した。残りの部分を使用して、繊維の強度と同じ方法で強度を測定した。CV%は以下の計算式で計算される。
CV%=単糸強度の標準偏差/単糸強度の平均値 × 100
フィラメント(単繊維)の強度、弾性率は、測定対象の1本のマルチフィラメントから無作為に10本の単糸(フィラメント)を抜き取りサンプルとした。フィラメントの構成本数が、10本に満たない場合は、すべての単糸(フィラメント)を測定対象とした。
測定は、単繊維約2mを各々取り出し、該繊維1mを使用し重さを測定し10000mに換算して繊度(dTex)とした。この単糸繊維1mの長さの測定時、単糸繊度の約1/10の荷重を掛けて定長のサンプルを作成した。さらに該繊維の残りの部分を使用して、単繊維の真ん中に結び目を作成した後、繊維の強度と同じ方法で引っ張り試験を実施した。この時、結び目の作り方は、JIS L1013に記載されている図3に準じて行った。尚結び目の方向は常に同じとし、図3のbとした。
結節強度保持率=単糸結節強度の平均値/単糸強度の平均値 × 100
135度のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管により、種々の希薄溶液の比粘度を測定し、その粘度の濃度にたいするプロットの最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。測定に際し、サンプルを約5mm長の長さにサンプルを分割ま
たは切断し、ポリマーに対して1wt%の酸化防止剤(商標名「ヨシノックスBHT」吉富製薬製)を添加し、135度で4時間攪拌溶解して測定溶液を調整した。
示差走査熱量計測定はパーキンエルマー社製「DSC7型」を用いた、予め5mm以下に裁断したサンプルをアルミパンに約5mg充填封入し、同様の空のアルミパンをリファレンスにして10度/分の昇温速度で室温から200度まで上昇させ、その吸熱ピークを求めた。得られた曲線の最も低温側に現れる融解ピークのピークトップの温度を融点とした。
ラマン散乱スペクトルは、下記の方法で測定を行った。ラマン測定装置(分光器)はレニショー社のシステム1000を用いて測定した。光源はヘリウムーネオンレーザー(波長633nm)を用い、偏光方向に繊維軸が平行になるように繊維を設置して測定した。ヤーンから単繊維(モノフィラメント)を分繊し、矩形(縦50mm横10mm)の穴が空いたボール紙の穴の中心線上に、長軸が繊維軸と一致するように貼り、両端をエポキシ系接着剤(アラルダイト)で止めて2日間以上放置した。その後マイクロメーターで長さが調節できる治具に該繊維を取り付け、単繊維を保持するボール紙を注意深く切り取った後所定の荷重を繊維に印加し、該ラマン散乱装置の顕微鏡ステージにのせ、ラマンスペクトルを測定した。このとき、繊維に働く応力と歪を同時に測定した。ラマンの測定はStatic Modeにて測定範囲850cm-1から1350cm-1について1ピクセルあたりの分解能を1cm-1以下にしてデータを収集した。解析に用いたピークはC−C骨格結合の対称伸縮モードに帰属される1128cm-1のバンドを採用した。バンド重心位置と線幅(バンド重心を中心としたプロファイルの標準偏差、2次モーメントの平方根)を正確に求めるために、該プロファイルを2つのガウス関数の合成として近似することで、うまくカーブフィットできることが分かった。歪みをかけると2つのガウス関数のピーク位置が一致せずそれらの距離が遠ざかることが判明した。この様なとき本発明に於いてはバンド位置をピークプロファイルの頂点とは考えず、2つのガウスピークの重心位置でもってバンドピーク位置と定義した。定義を式1(重心位置,<x>)にしめす。バンド重心位置< x >と繊維にかかる応力をプロットしたグラフを作成する。得られたプロットの最小二乗法を用いた原点を通る近似曲線の勾配を応力ラマンシフトファクターと定義した。
f(x) = f1(x−a) + f2(x−b)
ここで fi はガウス関数を表す。
結晶サイズおよび配向評価はX線回折法を用いて測定した。X線ソースとしては大型放射光施設SPring8をX線原とし、BL24XUハッチを使用した。使用するX線のエネルギーは10keV(λ=1.2398Å)である。アンジュレーターを通して取り出したX線はモノクロメーター(シリコン結晶の(111)面)を通して単色化したのち、位相ゾーンプレートを用いてサンプル位置で収束するようにセットした。焦点の大きさは、縦横とも径が3μm以下になるように調整する。サンプル繊維はXYZステージに繊維軸が水平になるようにのせる。別に取り付けたトムソン散乱検出器を用いて検出しながらステージを微動せしめトムソン散乱強度を測定し、強度が最大になった点を繊維の中心と判定した。X線強度は非常に強いため、サンプルの露光時間が長すぎるとサンプルにダメージが入る。そこでX線回折測定時の露光時間は2分以内とした。この測定条件にて、繊維のスキン部から中心部にかけて実質的に等間隔な5点以上の部位にビームを当て、それぞれの場所についてのX線回折図形を測定した。X線回折図形はフジ製イメージングプレートを用いて記録した。データの読み出しはフジ製ミクロルミノグラフィーを用いて実施した。記録された画像データはパソコンに転送して、赤道方向および方位角方向のデータを切り出した後線幅を評価した。赤道方向の回折プロファイルの半値幅βから結晶サイズ(ACS)は次式に示すシェラーの式[式1]を用いて算出した。尚、回折ピークの同定はBunnら(Trans Faraday Soc., 35, 482 (1939)) に従った。結晶サイズおよび配向の測定評価は、繊維一本の内、動径方向へランダムに動かして10ヶ所について測定し、標準偏差,平均値を求め、CV%=(標準偏差/平均値)×100の式に基づき計算した。
結晶サイズはX線回折法を用いて測定した。測定に供した装置はリガク製リント2500である。X線源として銅対陰極を選択した。運転出力は40kV200mAであった。コリメーターは0.5mmとし繊維を繊維試料台に取り付けて赤道方向および子午線方向にカウンターを走査してX線回折強度分布を測定した。この時受光スリットは縦制限横制限とも1/2°を選択した。回折プロファイルの半値幅βから結晶サイズ(ACS)は次式に示すシェラーの式[式2]を用いて算出した。
ここでλは使用したX線の波長、2θは回折角、βsは標準サンプルを用いて測定したX線ビームそのものの半値幅である。
0)回折面由来の結晶サイズを(020)回折面由来の結晶サイズで除して求めた。
極限粘度20.5dl/gの超高分子量ポリエチレンとデカヒドロナフタレンを重量比9:91で混合しスラリー状液体を形成させた。該物質を混合及び搬送部を備えた2軸スクリュー押出し機で溶解し、得られた透明な均一物質を円状に配列したホール数30個、直径0.8mmのオリフィスから1.8g/min押出した。該押出し溶解物質を10mmのエアギャップを介して、定常流の水で満たされた円筒状の流管を通過させることにより均一に冷却し、溶媒を除去することなしに紡糸速度60m/minでゲル糸状を引き取った。この時、繊維の冷却速度は、9667度/sで累積速度差は5m/minであった。ついで、該ゲル繊維を巻き取る事無く窒素加熱オーブン中、3倍の延伸比で延伸し延伸糸を巻き取った。ついで、該繊維を149度で最大6.5倍の延伸倍率で延伸を行い種々の延伸倍率の延伸糸を得た。得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示した。
極限粘度が20.1の超高分子量ポリエチレンポリマーを10wt%およびデカヒドロナ
フタレン90wt%のスラリー状の混合物を分散しながら230度の温度に設定したスクリュー型の混練り機で溶解し、180度に設定した直径0.6mmを400ホール有する口金に軽量ポンプにて単孔吐出量1.2g/分供給した。各々のノズル直下に独立に設置したカラー状のクエンチ設備にて、0.1m/sの窒素ガスを整流に気をつけ、できるだけ吐出される糸条に各々に均等に当たるようにして繊維の表面のデカリンを極微量蒸発させ、さらに窒素雰囲気のエアギャップを通したこと意外は実施例1と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。尚、2段目の延伸倍率は、4.5及び6.0倍とした。この時、クエンチに用いた窒素温度は、178度に制御した。また、エアギャップに関しては、温度制御を行わなかった。得られた繊維の物性値を表1に示す。非常に均一性に優れ、高い強度を有していることが判明した。
極限粘度が19.6の超高分子量ポリエチレンを10wt%およびデカヒドロナフタレン90wt%のスラリー状の混合物を分散しながら230度の温度に設定したスクリュー型の混練り機で溶解し、175度に設定した直径0.6mmを400ホール有する口金に軽量ポンプにて単孔吐出量1.6g/分供給した。ノズル直下に設置したスリット状の気体供給オリフィスにて1.2m/sの高速度で100度に調整した窒素ガスを整流に気をつけ、できるだけ糸条に均等に当たるようにして繊維の表面のデカリンを積極的に蒸発させ、さらに115度に設定された窒素流にて繊維に残るデカリンを蒸発させ、ノズル下流に設置されたネルソン状のローラーにて80m/分の速度で引き取らせた。この時、クエンチ区間の長さは1.0mであり、繊維の冷却速度は、100度/s、累積速度差は80m/minであった。引き続き、得られた繊維を125度の加熱オーブン下で4.0倍に延伸した、引き続きこの繊維を149度に設置した加熱オーブン中にて4.1倍で延伸した。途中破断することなく均一な繊維が得る事ができた。得られた繊維の物性値を表1に示した。
オリフィス直下から10mmの位置から50度、0.5m/sの窒素風を整流に注意しながら出来るだけ糸状に均一にあててゲル糸を得た以外を実施例と同様にして、延伸糸を得た。この時の繊維の冷却速度は、208度/s、累積速度差は80m/minであった。
極限粘度が10.6の超高分子量ポリマーの主成分ポリマー(C)を15wt%およびパラフィンワックス85wt%のスラリー状の混合物を分散しながら230度の温度に設定したスクリュー型の混練り機で溶解し、190度に設定した直径1.0mmを400ホール有する口金に軽量ポンプにて単孔吐出量2.0g/分供給した。エアギャップを30mmとして15度のn−ヘキサンを満たした紡糸浴に浸析した。浸析した繊維をネルソン状のローラーで50m/分の速度で引き取った。この時の繊維の冷却速度は、4861度/s、累積速度差は50m/minであった。引き続き、得られた繊維を125度の加熱オーブン下で3.0倍に延伸した、さらにこの繊維を149度に設置した加熱オーブン中にて3で延伸した後、もう一度1.5倍で延伸した。途中破断することなく均一な繊維が得る事ができた。得られた繊維の物性値を表1に示す。
比較例1と同じ条件で作成、巻き取った延伸前の繊維を3日間エタノール中に浸漬して糸中に残留したデカリンを取り除いた後、2日間風乾してキセロゲル繊維を作成した。さらに、該キセロゲル繊維を125℃の加熱オーブン中で4.0倍に延伸した。引き続きこの繊維を155℃に設定した加熱オーブン中にて4.3倍で延伸した。途中破断することなく均一な繊維を得ることができた。
などの各種ロープ製品、釣り糸、ブラインドケーブルなどの各種組み紐製品、漁網・防球ネットなどの網製品さらには化学フィルター・電池セパレーターなどの補強材あるいは各種不織布、またテントなどの幕材、又はヘルメットやスキー板などのスポーツ用やスピーカーコーン用やプリプレグ、コンクリート補強などのコンポジット用の補強繊維など、産業上広範囲に応用可能である。
Claims (6)
- 紡糸口金から吐出した吐出ゲル糸状を1000度/s以上の冷却速度で冷却することにより、平均強度が38cN/dTex以上で、かつ直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したオルソロンビック結晶(110)面の結晶サイズが18nm以上32nm以下であり、マルチフィラメントを構成するフィラメントの結節強度の保持率が40%以上、破断伸度が3.5%以上6.0%以下であり、かつ、高強度ポリエチレンマルチフィラメントを構成するフィラメントの単糸強度のばらつきを示すCVが25%以下であることを特徴とする高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
- 直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したオルソロンビック結晶(110)面由来の配向角が0.9°以上4.0°以下であることを特徴とする請求項1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
- シングルフィラメントの動径方向について直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したとき、結晶サイズのCV%が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
- シングルフィラメントの動径方向について直径3μm以下に成形したX線ビームを用いて測定したとき、結晶配向のCV%が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
- 単糸繊度が10dTex以下であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
- 繊維の融点が145℃以上であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポリエチレンマルチフィラメント。
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