JP5324096B2 - 延伸ゲルスパンポリエチレンヤーン及び延伸のための方法 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン及びそれから構築された物品に関する。本発明は、更にゲルスパンポリエチレンマルチフィラメントヤーンを延伸するための方法及びこれによって製造された延伸ヤーンにも関する。延伸ヤーンは、身体外装、ヘルメット、胸当て、ヘリコプター座席、スポールシールド、及び他の適用のための衝撃吸収並びに防弾;カヤック、カヌー、自転車及びボートのような複合運動用品;並びに釣り糸、帆、ロープ、縫糸及び織物において有用である。
2.関連技術の説明
本発明を客観的にとらえるために、ポリエチレンが、1979年の最初のゲル紡糸加工に先立つ約40年間商品であったことを想起しなければならない。この時以前、ポリエチレンは、低い強度の低い靭性の物質であると見做されていた。本質的に高い炭素−炭素結合強度のために、直鎖のポリエチレン分子が非常に強いものである潜在性を有することが理論的に認識されていた。然しながら、ポリエチレン繊維を紡糸するためのその時点において既知の方法は、荷重を繊維を通して非効率的に伝達し、そして弱い繊維とする“折畳み鎖”分子構造(ラメラ)を与えていた。
“ゲルスパン”ポリエチレン繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の溶液を紡糸し、溶液フィラメントをゲル状態に冷却し、次いで紡糸用溶媒を除去することによって製造される。一つ又はそれより多い溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び溶媒を含まないフィラメントは、高度に方向づけされた状態に延伸される。ゲル紡糸法は、折畳み鎖のラメラの形成を防止し、そして引張荷重を更に効率的に伝達する“延伸鎖”構造の形成を促進する。
ゲル状態のUHMWPEフィラメントの調製及び延伸の最初の記載は、P.Smith,P.J.Lemstra,B.Kalb and A.J.Pennings,Poly.Bull.,1,731(1979)によるものであった。単一のフィラメントを、デカリン中の2重量%の溶液から引抜き、ゲル状態に冷却し、そして次いで100ないし140℃の熱空気オーブン中でデカリンを蒸発しながら延伸した。
更に最近の方法(例えば、米国特許第4,551,296号、4,663,101号、及び6,448,659号参照)は、溶液フィラメント、ゲルフィラメント及び溶液を含まないフィラメントの三つの全てを延伸することを記載している。高分子量ポリエチレン繊維を延伸するための方法は、米国特許第5,741,451号中に記載されている。更に米国特許出願US−A−2005/0093200も参照されたい。これらの特許の開示は、本明細書と不適合ではない範囲で、本明細書中に参考文献として援用される。
ゲルスパンポリエチレンフィラメント及びヤーンを延伸するために、いくつかの動機付けが存在することが可能である。最終使用の適用には、低いデニールのフィラメント又は低いデニールのヤーンを必要とする可能性がある。低いデニールのフィラメントは、ゲル紡糸法で製造するのは困難である。UHMWPEの溶液は、高粘度であり、そして小さい紡糸口金開口部を通して押出すために過剰な圧力を必要とする可能性がある。従って、大きい開口部を持つ紡糸口金の使用及びその後の延伸が、細いデニールのフィラメントを製造するための好ましい方法であることができる。延伸のもう一つの動機付けは、高い引張特性の必要性である可能性がある。ゲルスパンポリエチレンフィラメントの引張特性は、一般的に、適当に行われた場合、延伸比の増加に伴い改良される。延伸に対するなおもう一つの動機付けは、特定の特性、例えば防弾性のために特に好ましいものである可能性がある、フィラメントの特殊な微細構造を製造するためである可能性がある。
マルチフィラメント“ゲルスパン”超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ヤーンは、今日、Honeywell International Inc.,DSM N.V.、Toyobo Co.,Ltd.、Ningbo Dacheng and Tongyzhong Specialty Fibre Technology and Development Co.,Ltd.を含む多くの会社によって製造されている。
ゲル紡糸法は、折畳み鎖表面を持つラメラを含まない繊維を製造する傾向があるが、然しながら、ゲルスパンUHMWPE繊維の分子は、赤外及びラマン分光分析法によって証明することができるようにゴーシュ配列を含まないものではない。ゴーシュ配列は、斜方結晶構造に転位を起こすジグザグなポリエチレン分子中の捻れである。全trans−(CH−配列を持つ理想的な延伸鎖ポリエチレン繊維の強度が、現在達成されているよりはるかに高いことがいろいろ計算されている。繊維の強度及びマルチフィラメントヤーンの強度は、多様な因子に依存するが、全trans配列のより長い直鎖の連続を有する分子からなる、更に完全なポリエチレン繊維構造が、防弾物質のような多くの適用において優れた性能を示すことが予想される。
従って、増加した分子構造の完全性を有するゲルスパンマルチフィラメントUHMWPEヤーンに対する必要性が存在する。このような完全性の一つの基準は、ラマン分光法によって決定することができるような、全trans−(CH−配列の直鎖のより長い連続である。もう一つの基準は、示差走査熱量測定法(DSC)によって決定することができるようなより大きい“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター(Parameter of Intrachain Cooperativity of the Melting Process)”である。なおもう一つの基準は、x−線回折によって決定することができるような二つの斜方晶系結晶性成分の存在である。なおもう一つの基準は、更に規則性の微細構造を反映した、独特の動的機械分析(DMA)の特徴である。
動的機械分析(DMA)は、動的応力又は歪みを試料に適用し、そして反応を分析して、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)及びダンピング又はtanデルタ(δ)のような機械的特性を、温度及び/又は周波数の関数として得る技術である。ポリマーに対して適用した場合のDMAの紹介的説明は、K.P.Menardによって“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”,Volume 9,P.563−589,John Wiley & Sons,Hoboken,NJ,2004中で与えられている。Menardは、DMAが、ポリマー鎖の分子運動に対して非常に敏感であり、そしてこのような運動の転移を測定するための強力な道具であることを示している。分子運動中の転移が起こる温度領域は、基線の傾向からのE’、E’’又はtan δの離脱によって特徴づけられ、そして研究者によって“緩和(relaxations)”及び“分散(dispersions)”と多様に命名されている。多くのポリマーのDMAの研究は、分散に伴う、アルファ(α)、ベータ(β)及びガンマ(γ)と命名された三つの温度領域を同定している。
Khanna等、Macromolecules18,1302−1309(1985)は、一定の範囲の密度(直線性)を有するポリエチレンの研究において、α−分散を、結晶質ラメラの境界領域の鎖の折畳み、ループ、及び結合分子の分子運動に起因するとした。α−分散の強度は、ラメラの厚さの増加に伴って増加した。β−分散は、非晶質ラメラ内領域の分子運動に起因するとされた。γ−分散の起源は、明確ではないが、しかし殆んど非晶質領域に関係することが示唆された。Khanna等は、K.M.Sinnott,J.Appl Phys.37,3385(1966)が、γ−分散が結晶質相の欠陥によるものであることを提案していることを注記している。同じ研究において、Khanna等は、α−分散を約5℃より上の分子運動における転移と、β−分散を約−70℃ないし5℃間の転移と、そしてγ−分散を−70℃ないし−120℃間の転移と関連させた。
R.H.Boyd,Polymer26,323(1985)は、結晶性が増加すると、γ−分散が広がる傾向があることを見出した。Roy et al.,Macromolecules21(6)1741(1988)は、非常に希釈された溶液(0.4重量/容量%)からのUHMWPHフィルムのゲルキャスト(gel-cast)の研究において、試料を150:1を超えた領域で固体状態で熱間引抜きした場合、γ−分散が消失することを見出した。K.P.Menard(上記で引用)は、靭性及びβ−分散間の補正を注記した。
米国特許第5,443,904号は、γ−分散中のtan δの高い値が、高速度衝撃に対する優れた耐性の表示であることができ、そしてα−分散中の損失弾性率の高いピーク温度が、室温における優れた物理的特性の表示であることを示唆した。
非常に高度に規則性の分子の微細構造を有するヤーンを製造するための延伸方法、このようにして製造されたヤーン、及びこれらのヤーンから製造された、優れた弾道特性を有する物品を含む物品を提供することは、本発明の目的の一つである。
発明の概要
本発明は:
a)135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるゲルスパンポリエチレンマルチフィラメント原料ヤーンを形成し;
b)前記原料ヤーンを、約130℃ないし160℃の領域温度を有する一つ又はそれより多い領域がヤーン通路に沿って存在する、Lメートルのヤーン通路長さを有する強制対流空気オーブン中をVメートル/分の速度で通過させ;
c)前記原料ヤーンを、前記オーブンを連続的に通して、そして前記オーブンから以下の式:
0.25≦L/V≦20,分 式1
3≦V/V≦20 式2
1.7≦(V−V)/L≦60,分−1 式3
0.20≦2L/(V+V)≦10,分 式4
が満足されるVメートル/分の出口速度で通過させること;
の工程を含んでなる、ゲルスパンマルチフィラメントヤーンを延伸するための方法を含んでなる。
本発明は、更に135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる、新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。そのマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいてヤーンのフィラメントは、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから、少なくとも35ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて23℃で決定されたとおりの規則的序列長さ分布関数(the ordered-sequence length distribution function)、F(L)のピーク値を有する。
第3の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり、前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントは、少なくとも535の“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、の値を有する。
第4の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり、前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて無負荷下で室温で測定された前記ヤーンの一つのフィラメントの(002)x−線反射の強度は、二つの明確なピークを示す。
第5の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有する。
第6の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、50℃ないし125℃の温度範囲、そして10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない。
第7の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。
第8の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有し;そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。
第9の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の周波数で測定された場合、少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。
第10の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の周波数で測定された場合、225MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有し、そして少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。
第11の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有する。
第12の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有し、そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。
本発明は、更に本発明のヤーンを含んでなる物品を含む。
発明の詳細な説明
一つの態様において、本発明は:
a)135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるゲルスパンポリエチレンマルチフィラメント原料ヤーンを形成し;
b)前記原料ヤーンを、約130℃ないし160℃の領域温度を有する一つ又はそれより多い領域がヤーン通路に沿って存在する、Lメートルのヤーン通路長さを有する強制対流空気オーブン中をVメートル/分の速度で通過させ;
c)前記原料ヤーンを、前記オーブンを連続的に通して、そして前記オーブンから以下の式:
0.25≦L/V≦20,分 式1
3≦V/V≦20 式2
1.7≦(V−V)/L≦60,分−1 式3
0.20≦2L/(V+V)≦10,分 式4
が満足されるVメートル/分の出口速度で通過させること;
の工程を含んでなる、ゲルスパンマルチフィラメントヤーンを延伸するための方法を含んでなる。
本発明の目的のために、繊維は、その長さ寸法が、幅及び厚さの横方向寸法よりはるかに大きい細長い物体である。従って、“繊維”は、本明細書中で使用される場合、連続又は不連続の長さの規則的な若しくは不規則な断面を有する、一つ又は、複数のフィラメント、リボン、条片、等を含む。ヤーンは、連続又は不連続な繊維の集合である。
好ましくは、特に上記の方法で、延伸されるマルチフィラメント原料ヤーンは、約8ないし30dl/g、更に好ましくは約10ないし25dl/g、そして最も好ましくは約12ないし2−dl/gのデカリン中の固有粘度を有するポリエチレンを含んでなる。好ましくは、延伸されるマルチフィラメントヤーンは、1000個の炭素原子当り約1個より少ないメチル基、更に好ましくは1000個の炭素原子当り約0.5個より少ないメチル基、及び約1重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる。
本発明の方法で延伸されるゲルスパンポリエチレンマルチフィラメントヤーンは、事前に延伸されていることができ、又はこれは、本質的に延伸されていない状態であることができる。ゲルスパンポリエチレン原料ヤーンを形成するための方法は、米国特許第4,551,296号、4,663,101号、5,741,451号及び6,448,659号によって記載されている方法の一つであることができる。
原料ヤーンのテナシティは、10インチ(25.4cm)のゲージ長さ及び100%/分の伸長速度で、ASTM D2256−02によって測定されるように、デニール当り、2ないし76、好ましくは約5ないし66、更に好ましくは約7ないし51グラム(g/d)の範囲であることができる。
ゲルスパンポリエチレンヤーンを、オーブン中、高温管中、加熱されたロール間、又は加熱された表面上で延伸することができることは知られている。WO02/34980A1は、特別な延伸オーブンを記載している。本発明者らは、ゲルスパンUHMWPEマルチフィラメントヤーンの延伸を、狭い範囲で定義された条件下の強制対流空気オーブン中で遂行する場合、最も効果的で、そして生産的であることを見出した。オーブン中に、ヤーン通路に沿って、それぞれの領域が約130℃ないし160℃の温度を有する、一つ又はそれより多い温度制御された領域が存在することが必要である。好ましくは、領域内の温度は、±2℃より小さく(合計4℃より小さく)、更に好ましくは±1℃より小さく(合計2℃より小さく)変化するように制御される。
ヤーンは、一般的にオーブンの温度より低い温度で延伸オーブンに入るものである。他方、ヤーンの延伸は、熱を発生する散逸性の方法である。従って、ヤーンを延伸温度まで迅速に加熱し、そしてヤーンを制御された温度に維持するために、ヤーン及びオーブンの空気間に有効な熱伝達を有することが必要である。好ましくは、オーブン内の空気の循環は、乱流状態である。ヤーンの近辺の時間で平均された空気の速度は、好ましくは約1ないし200メートル/分、更に好ましくは約2ないし100メートル/分、最も好ましくは約5ないし100メートル/分である。
オーブン内のヤーン通路は、入口から出口まで直線であることができる。別の方法として、ヤーン通路は、遊びロール又は中間駆動ロールの廻りの往復(“ジグザグ”)通路に、オーブンを上下、及び/又は前後に通って従うことができる。好ましくは、オーブン内のヤーン通路は入口から出口まで直線である。
オーブン内のヤーンの張力の状態は、遊びロールの抵抗を制御するか、中間駆動ロールの速度を調節するか、又はオーブン温度の状態を調節することによって調節される。ヤーンの張力は、遊びロールの抵抗を増加するか、連続した駆動ロール間の速度の差を増加させるか又はオーブン温度を減少することによって増加することができる。オーブン内のヤーンの張力は、交互の上昇及び下降分布に従うことができるか、又は入口から出口にまで着実に増加することができるか、或いはこれは一定であることができる。好ましくは、オーブン内の至るところで、ヤーンの張力は、空気の抵抗の影響を無視して一定であるか、又はこれはオーブンを通して増加する。最も好ましくは、オーブン内の至るところで、ヤーンの張力は空気抵抗の影響を無視して一定である。
本発明の延伸法は、多数のヤーン素糸(yarn ends)を同時に延伸することを提供する。典型的には、延伸されるゲルスパンポリエチレンヤーンの多数の束は、クリール上に置かれる。多数のヤーン素糸は、クリールから、延伸オーブンへの供給速度を設定する最初のロールの組を経由して平行して供給され、そして次いでオーブン経て、そしてヤーンの出口速度を設定し、そして更に張力下のヤーンを室温に冷却する最後のロールの組を通って出る。冷却中のヤーンの張力は、熱的収縮を無視して、ヤーンをその延伸された長さに保つために十分に維持される。
延伸法の生産性は、ヤーン素糸当り、単位時間当りに製造することができる延伸されたヤーンの重量によって測定することができる。好ましくは、この方法の生産性は、ヤーン素糸当り約2グラム/分より多く、更に好ましくはヤーン素糸当り約4グラム/分より多い。
第2の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる、新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンである。このマルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいてヤーンのフィラメントが、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから、少なくとも35ナノメートル、そして好ましくは少なくとも40ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて23℃で決定されたとおりの規則的序列長さ分布関数、F(L)のピーク値を有する。
第3の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり、前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントは、少なくとも535の“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、の値を有する。
第4の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり、前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて無負荷下で室温で測定された前記ヤーンの一つのフィラメントの(002)x−線反射の強度は、二つの明確なピークを示す。
好ましくは、本発明の、そして特に本発明の第1ないし第4の態様のポリエチレンヤーンは、135℃におけるデカリン中の約7dl/gないし30dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約1個より少ないメチル基、及び約1重量%より少ない他の成分、及び少なくとも22g/dのテナシティを有する。
本発明は、更に、独特の微細構造及び優れた弾道的特性を反映した独特のDMAの特徴を有する延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンを含んでなる。このようなヤーンは、本明細書中に本発明の第5ないし第12の態様に対する特別な言及として記載される。
第5の態様において、従来の技術のゲルスパンマルチフィラメントヤーンとの比較において、本発明のヤーンは、ガンマ−分散において、あったとしても非常に低い振幅のピークを有する。更に正確には、この態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、γ−分散の損失弾性率のピーク値は、γ−分散のピークの両翼を経由して引かれた基線の上に100MPaより小さい。
第6の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、50℃ないし125℃の温度範囲、そして10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない。
第7の態様において、本発明のマルチフィラメントヤーンは、独特に高い損失弾性率のβ−分散の積分強度を有する。β−分散の積分強度は、図5に例示したように、DMA損失弾性率のプロット及び全体のβ−分散の両翼を通して引かれた基線間の面積として定義される。
この態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、損失弾性率のβ−分散は、二つの成分を有する。好ましくは、更に、50℃ないし125℃の温度範囲の損失弾性率において、少なくとも10℃の半幅値を有するピークが見られない。
第8の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有し;そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、その分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、γ−分散の損失弾性率のピーク値は、γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の上に100MPaより小さい。好ましくは、損失弾性率のβ−分散は、先に記載したように二つの成分を有する。
第9の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solid Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の周波数で測定された場合、少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、損失弾性率のβ−分散は、二つの成分を有する。
第10の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の周波数で測定された場合、225MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散ピークの両翼を通して引かれた基線より上に有し、そして少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、損失弾性率のβ−分散は、二つの成分を有する。
第11の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有する。好ましくは、50℃ないし125℃の温度範囲の損失弾性率において、少なくとも10℃の半幅値を有するピークが見られない。
第12の態様において、本発明は、135℃におけるデカリン中の約5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約2個より少ないメチル基、及び約2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる新規なポリエチレンマルチフィラメントヤーンであり;前記マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し;そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有し、そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する。好ましくは、損失弾性率のβ−分散は、二つの成分を有する。
本発明は、更に本発明のヤーンを含んでなる物品を含む。本発明の物品は、好ましくは本発明のヤーンの網状構造から構成される。網状構造によって、各種の配置に配列されたヤーンの繊維を意味する。例えば、ヤーンの繊維は、平行配列に配置された、層状に形成された、又は各種の慣用的な技術のいずれかによって布地に形成されたフェルト、編まれた又は織られた布地、不織布地(ランダム又は規則的配向)であることができる。
好ましくは、本発明の物品は、本発明のヤーンの少なくとも一つの網状構造から構成される。更に好ましくは、本発明の物品は、本発明のヤーンの複数の網状構造から構成され、網状構造は、一方向性の層に配列され、一つの層の繊維の方向は、隣接する層の方向とある角度をなす。
本発明の延伸ゲルスパンマルチフィラメントヤーン及び物品は、優れた防弾特性を保有する。
測定方法
1.ラマン分光測定法
ラマン分光測定法は、分子によって散乱された光の波長の変化を測定する。単色光のビームが半透明の物質を横切る場合、光の小部分が入射ビームの方向と異なった方向に散乱される。この散乱された光のほとんどは、変化しない周波数のものである。然しながら、小部分は、周波数が入射ビームのそれからシフトする。ラマン周波数シフトに対応するエネルギーは、散乱分子の回転及び振動の量子転移のエネルギーであることが見出されている。全transの配列を含有する半結晶質ポリマーにおいて、縦方向音響振動は、これらの全transセグメントに沿って、これらが弾性の桿体に沿うものであるために伝播する。この種類の鎖の振動は、縦方向音響モード(LAM)と呼ばれ、そしてこれらのモードは、低周波数ラマンスペクトルに特異なバンドを生じる。ゴーシュ配列は、音響振動の伝播を区切るポリエチレン鎖の捻れを生じる。実際の物質において、全transセグメントの長さの統計学的分布が存在することは理解されるものである。更に完全に規則性の物質は、より少なく規則性の物質とは異なった全transセグメントの分布を有するものである。“Determination of the Distribution of Straight−Chain Segment Lengths in Crystalline Polyethylene from the Raman LAM−1 Band”,by R.G.Snyder et al,J.Poly.Sci.,Poly.Phys.Ed.,16,1593−1609(1978)の表題の文献は、ラマンLAM−1スペクトルからの規則的配列長さ分布関数、F(L)の決定の理論的基礎を記載している。
F(L)は、次のようにして決定される:マルチフィラメントヤーンから5又は6本のフィラメントを抜取り、そしてレーザーからの光が、この繊維の列に沿ってそしてこれを通して、その長さ寸法に垂直に向けることができるように、お互いに隣接した平行な配列で枠上に置く。レーザー光は、繊維を通って連続的に通過することにより実質的に減衰される筈である。光の偏光のベクトルは、繊維の軸と同一線上にある(XX光偏光)。
スペクトルは、励起光の数個の波数(約4cm−1より少ない)内のラマンスペクトルを検出することが可能な分光計で23℃で測定される。このような分光計の例は、He−Neレーザーを使用するモノクロメーター分光計、SPEX Industries,Inc,Metuchen,New Jersey,のModel RAMALOG(登録商標)5である。ラマンスペクトルは、90°の形状で記録される、即ち、散乱光は、入射光の方向に対して90度の角度で測定され、そして記録される。レイリー散乱の寄与を除外するために、中心線近辺のLAMスペクトルのバックグラウンドは、実験のスペクトルから差引かなければならない。バックグラウンド散乱は、ラマン散乱データの初期の部分、及び実質的に試料からのラマン散乱は無いが、しかしバックグラウンド散乱のみがある30−60cm−1の領域のデータを使用して、以下の式5:
Figure 0005324096
[式中:xは、ピーク位置である
Hは、ピーク高さである
wは、半幅値である]
によって与えられる形式のローレンツ関数に当てはめられる。
約4cm−1ないし約6cm−1の領域の中心線近辺のラマン散乱が強い場合、この周波数範囲のラマン強度を対数目盛で記録し、そして6cm−1の周波数で記録された強度を線形目盛で測定されたものに整合することが必要である。ローレンツ関数を、それぞれの別個の記録から差引き、そしてそれぞれの部分から導き出されたLAMスペクトルをいっしょにつなぎ合わせる。
図1は、以下に記載される繊維材料に対して測定されたラマンスペクトル、並びにバックグラウンドの差引き及びLAMスペクトルを導き出す方法を示す。
LAM−1周波数は、以下の式6:
Figure 0005324096
[式中:cは、光の速度、3×1010cm/秒である
ωは、LAM−1周波数、cm−1である
Eは、ポリエチレン分子の弾性率、g(f)/cmである
ρは、ポリエチレンの結晶の密度、g(m)/cmである
は、重力定数、980(g(m)−cm)/(g(f)−秒)である]
によって表現されるように、直鎖の長さLに逆比例する。
本発明の目的のために、弾性率Eは、Mizushima et al.によってJ.Amer.Chem.,Soc.,71,1320(1949)中で報告されているように、340GPaを採用した。量(gE/ρ)1/2は、全transポリエチレン結晶中の音速である。340GPaの弾性率、及び1.000g/cmの結晶密度に基づけば、音速は1.844×10cm/秒である。式6を置換することによって、本明細書中で使用されるような直鎖長さ及びLAM−1周波数間の関係は、以下の式7:
Figure 0005324096
によって表示される。
“規則的配列長さ分布関数”、F(L)、は、測定されたラマンLAM−1スペクトルから、以下の式8:
Figure 0005324096
[式中:hは、プランク定数、6.6238×10−27erg−cmである
kは、ボルツマン定数、1.380×10−16erg/°Kである
ωは、周波数ωにおけるラマンスペクトルの強度で、任意の単位である
Tは、絶対温度、°Kである
そして他の用語は、先に定義したとおりである]
によって計算される。
以下に記載される三つのポリエチレン試料に対するラマンLAM−1スペクトルから誘導された規則的配列長さ分布関数、F(L)のプロットを、図2(a)、2(b)及び2(c)に示す。
好ましくは、本発明のポリエチレンヤーンは、F(L)のピーク値が、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから23℃において決定されるような、少なくとも45ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて起こるフィラメントから構成される。F(L)のピーク値は、好ましくは少なくとも50ナノメートル、更に好ましくは少なくとも55ナノメートル、そして最も好ましくは50−150ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて起こる。
2.示差走査熱量測定法(DSC)
UHMWPEのDSC測定が、熱的遅れ及び不十分な熱の伝達によって系統的な誤差を受けやすいことは周知である。このような問題の潜在的影響を克服するために、本発明の目的のために、DSC測定は、次の方法で行われる。約0.03mgの質量のフィラメントのセグメントを、約5mmの長さの小片に切断する。切断した小片を、平行の配列に配置し、そして薄いウッドメタル箔中に包み、そして開放試料皿中に置く。このような試料のDSC測定を、2°K/分又はそれより低い三つの異なった加熱速度で行い、そして得られた最初のポリエチレンの溶融吸熱のピーク温度の測定値を、0°K/分の加熱速度に外挿する。
ギリシャ文字νによって表される“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”は、V.A.Bershtein及びV.M.Egorovによって“Differential Scanning Calorimetry of Polymers:Physics,Chemistry,Analysis,Technology”,P.141−143,Tavistoc/Ellis Horwod,1993中で定義されている。このパラメーターは、ここで(−CH−CH−)として考慮される、溶融過程において共同的に関与する繰返し単位の数の測定値であり、そして微結晶の大きさの測定値である。
より高いνの値は、より長い結晶の配列を、そして従って高い程度の規則性を示す。“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”は、本明細書中で、以下の式9:
Figure 0005324096
[式中:Rは、ガス定数、8.31J/°K−モルである
m1は、0°K/分に外挿された加熱速度における、最初のポリエチレンの溶融吸熱のピーク温度、°Kである
ΔTm1は、最初のポリエチレン溶融吸熱の幅、°Kである
ΔHは、8200J/モルとして採用された−CH−CH−の溶融エンタルピーである]
によって定義される。
本発明のマルチフィラメントヤーンは、少なくとも535、好ましくは少なくとも545、更に好ましくは少なくとも555、そして最も好ましくは545ないし1100の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有するフィラメントから構成される。
3.X−線回折
高強度x−線照射源として、シンクロトロンを使用する。シンクロトロンのx−線照射は、単色化され、そして平行にされる。単一の繊維を試験されるヤーンから抜出し、そして単色化され、そして平行にされたx−線のビーム中に置く。フィラメントによって散乱されたx−線照射を、室温(約23℃)及び無外部負荷下のフィラメントで電子的又は写真的手段によって検出する。斜方晶系のポリエチレンの結晶の(002)反射の位置及び強度を記録する。(002)反射の走査において、散乱角度対散乱強度の傾斜が、正から負に2回変わった場合、即ち、(002)反射に二つのピークが見られる場合、繊維内に二つの斜方晶系の結晶相が存在する。
4.動的機械分析
動的機械分析(DMA)は、動的応力又は歪みを試料に適用し、そして反応を分析して、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)及びダンピング又はtanデルタ(δ)のような機械的特性を、温度及び/又は周波数の関数として得る技術である。
DMA計器は、異なった形式のものであり、そして得られる結果に影響することができる異なった操作のモードを有することができる。DMA計器は、試料に強制的に周波数を課することができ、又は計器は自由共鳴型(free resonance)のものであることができる。強制周波数型計器は、異なったモード(応力制御又は歪み制御)で操作することができる。ほとんどのポリマーの動的機械分析が、試料の静荷重(static force)が、試料の収縮、熱膨張、又はクリープの結果として変化することができる温度の範囲にわたって行われるために、温度が変化した場合、試料の張力を調節するための何らかの機構を有する必要がある。DMA計器は、試験中に観察される最大の動荷重(dynamic force)より大きい値に試験の最初に設定された、一定の静的力で行うことができる。このモードにおいて、試料は、これが加熱によって軟化するに従って伸長する傾向があり、形態の可能な変化となる。別の方法として、DMA計器は、静荷重を、動荷重より何パーセントか大きく自動的に制御及び調節することができる。このモードにおいて、試験中の試料の伸長及び形態の変化は最小化され、そして測定されるDMA特性は、加熱される前の本来の試料をよりよく代表するものである。
本発明のヤーン及びいくつかの従来の技術のヤーンを、比例荷重モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重の張力、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、並びに10及び100ラジアン/秒の周波数で、DMAによって特徴付けした。使用したDMA計器は、Rheometrics Scientific(現在TA Instruments,New Castle Delaware)から入手のモデルRSA IIであった。このDMA計器は、歪み制御型のものであった。
本発明の目的のために、損失弾性率、E’’、が基線の傾向から離脱する温度領域を、“分散”と呼ぶ。α−分散は、5℃より上の温度領域で起こるものとして定義され、β−分散は、−70℃ないし5℃の温度領域で起こるものであり、そしてγ−分散は、−70℃ないし−120℃の温度領域で起こるものである。β−分散は、二つの成分を有することができる。β−分散の成分は、一つの肩及び一つの明確なピークであることができ、又は成分は、二つの明確なピークであることができる。β−分散の積分強度は、図5に例示するように、GPa−℃の単位で測定されるDMA損失弾性率のプロット及び全β−分散の両翼を通って引かれた基線間の面積として定義される。
以下の実施例は、本発明の更に完全な理解を提供するために与えられる。本発明の原理を例示するために記述された具体的な技術、条件、材料、特性及び報告されたデータは、例示であり、そして本発明の範囲を制約すると解釈されるべきではない。
実施例
比較実施例1
SPECTRA(登録商標)900と命名されたUHMWPEゲルスパンヤーンは、米国特許第4,551,296号によって、Honeywell International Inc.によって製造された。60本のフィラメントからなる650デニールのヤーンは、135℃におけるデカリン中の約15dl/gの固有粘度を有していた。ヤーンのテナシティは、ASTM D2256−02によって測定されたように約30g/dであり、そしてヤーンは、約1重量%より少ない他の成分を含有していた。ヤーンを、溶液状態、ゲル状態及び紡糸溶媒の除去後に延伸した。延伸の条件は、本発明の式1ないし4の範囲内には入らなかった。
このヤーンのフィラメントを、SPEX Industries,Inc.,Metuchen,NJによって製造されたモデルRAMALOG(登録商標)5、モノクロメーター分光計を使用して、He−Neレーザー及び本明細書中で先に記載した方法を使用して、ラマン分光測定法によって特徴づけした。測定されたラマンスペクトル、1、及びこの材料に対して導き出されたLAM−1スペクトル、3、レイリーバックグラウンド分散に当てはめられたローレンツの差引き後、2、を図1(a)に示す。LAM−1スペクトル並びに式7及び8から決定されたこの材料の規則的配列長さ分布関数、F(L)、を、図2(a)に示す。規則的配列長さ分布関数、F(L)、のピーク値は、概略12ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて起こった(表I)。
このヤーンのフィラメントも、更に本明細書中で先に記載した方法を使用してDSCによって特徴づけした。0°K/分に外挿した加熱速度における最初のポリエチレンの溶融吸熱のピーク温度は、415.4°Kであった。最初のポリエチレンの溶融吸熱の幅は、0.9°Kであった。式9から決定された“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、は、389であった(表I)。
このヤーンから採取した単一のフィラメントを、本明細書中で先に記載した方法を使用して、x−線回折によって試験した。ただ一つのピークが(002)反射中に見られた(表I)。
比較実施例2
SPECTRA(登録商標)1000と命名されたUHMWPEゲルスパンヤーンが、米国特許第4,551,296号及び5,741,451号によって、Honeywell International Inc.によって製造された。240本のフィラメントからなる1300デニールのヤーンは、135℃におけるデカリン中の約14dl/gの固有粘度を有していた。ヤーンのテナシティは、ASTM D2256−02によって測定されたように約35g/dであり、そしてヤーンは約1重量%より少ない他の成分を含有していた。ヤーンを、溶液状態、ゲル状態及び紡糸溶媒の除去後に延伸した。延伸の条件は、本発明の式1ないし4の範囲内には入らなかった。
このヤーンのフィラメントを、SPEX Industries,Inc.,Metuchen,NJによって製造されたモデルRAMALOG(登録商標)5、モノクロメーター分光計を使用して、He−Neレーザー及び本明細書中で先に記載した方法を使用して、ラマン分光測定法によって特徴づけした。LAM−1スペクトル並びに式7及び8から決定されたこの材料の規則的配列長さ分布関数、F(L)、を、図2(b)に示す。規則的配列長さ分布関数、F(L)、のピーク値は、概略33ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて起こった(表I)。
このヤーンのフィラメントも、更に本明細書中で先に記載した方法を使用してDSCによって特徴づけした。0°K/分に外挿した加熱速度における最初のポリエチレンの溶融吸熱のピーク温度は、415.2°Kであった。最初のポリエチレンの溶融吸熱の幅は、1.3°Kであった。式9から決定された“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、は、466であった(表I)。
このヤーンから採取した単一のフィラメントを、本明細書中で先に記載した方法を使用して、x−線回折によって試験した。ただ一つのピークが(002)反射中に見られた(表I)。
比較実施例3−7
Honeywell International Inc.によって製造され、そしてSPECTRA(登録商標)900又はSPECTRA(登録商標)1000のいずれかとして命名された異なったロットからのUHMWPEゲルスパンヤーンを、本明細書中に先に記載した方法を使用して、ラマン分光測定法、DSC、及びx−線回折によって特徴づけした。ヤーンの説明並びにF(L)及びνの値、並びに(002)x−線反射中に見られたピークの数は、表Iに収載されている。
実施例1
UHMWPEゲルスパンヤーンを、米国特許第4,551,296号によって、Honeywell International Inc.によって製造した。120本のフィラメントからなる2060デニールのヤーンは、135℃におけるデカリン中の約12dl/gの固有粘度を有していた。ヤーンのテナシティは、ASTM D2256−02によって測定されたように約20g/dであり、そしてヤーンは、約1重量%より少ない他の成分を含有していた。ヤーンを、溶液状態で3.5ないし8対1間で、ゲル状態で2.4ないし4対1間で、そして、紡糸溶媒の除去後1.05ないし1.3対1間で、延伸した。
ヤーンを、クリールから約25メートル/分の速度(V)の拘束ロールの組を通して、内部温度が155±1℃である強制対流空気オーブンに供給した。オーブン内の空気の循環は、ヤーンの近辺で約34メートル/分の時間平均速度を持つ乱流状態であった。
原料ヤーンは、入口から出口まで直線で、14.63メートルの通路長さ(L)にわたるオーブン内を通って、そしてその後98.8メートル/分の速度(V)で操作される第2の組のロールを通過した。ヤーンを第2の組のロールで、熱収縮を無視して一定の長さで冷却した。これによってヤーンを、空気抵抗の影響を無視して一定の張力でオーブン中で延伸した。式1−4に関連した上記の延伸条件は、以下のとおりであった。
0.25≦[L/V=0.59]≦20,分 式1
3≦[V/V=3.95]≦20 式2
1.7≦[(V−V)/L=5.04]≦60,分−1 式3
0.20≦[2L/(V+V)=0.24]≦10,分 式4
従って、式1−4のそれぞれは満足された。
フィラメント当りのデニール(dpf)は、原料ヤーンの17.2dpfから延伸ヤーンの4.34dpfに減少した。テナシティは、原料ヤーンの20g/dから延伸ヤーンの約40g/dに増加した。延伸ヤーンの質量処理量は、ヤーンの素糸当り5.72グラム/分であった。
本発明の方法によって製造されたこのヤーンのフィラメントを、SPEX Industries,Inc.,Metuchen,NJによって製造されたモデルRAMALOG(登録商標)5、モノクロメーター分光計を使用して、He−Neレーザー及び本明細書中で先に記載した方法を使用して、ラマン分光測定法によって特徴づけした。LAM−1スペクトル並びに式7及び8から決定されたこの材料の規則的配列長さ分布関数、F(L)、を、図2(c)に示す。規則的配列長さ分布関数、F(L)、のピーク値は、概略67ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて起こった(表I)。
このヤーンのフィラメントも、更に本明細書中で先に記載した方法を使用してDSCによって特徴づけした。0.31°K/分、0.62°K/分、及び1.25°K/分の加熱速度におけるDSC走査を、図3に示す。0°K/分に外挿した加熱速度における最初のポリエチレンの溶融吸熱のピーク温度は、416.1°Kであった。最初のポリエチレンの溶融吸熱の幅は、0.6°Kであった。式9から決定された“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、は、585であった(表I)。
このヤーンから採取した単一のフィラメントを、本明細書中で先に記載した方法を使用して、x−線回折によって試験した。このフィラメントのx−線ピンホール写真を、図4に示す。二つのピークが(002)反射中に見られた(表I)。
本発明のヤーンのフィラメントが、従来の技術のヤーンより大きい直鎖セグメント長さ、L、で、規則的配列長さ分布関数、F(L)、のピーク値を有していたことがわかる。本発明のヤーンのフィラメントが、従来の技術のヤーンより大きい“溶融過程の鎖内共同性のパラメーター”、ν、を有していたことも更にわかる。更に、これが、室温の無負荷下のポリエチレンフィラメント中の、二つの(002)x−線ピークの最初の観察であるように見受けられる。
Figure 0005324096
比較実施例8
第1の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの引張特性を、ASTM D2256−02によって測定し、そして以下の表IIに示す。
ヤーンを、Rheometrics Scientifics(現在TA Instruments,Inc.,New Castle,DE)から入手のRheometric Solids Analyzer RSA IIを使用する、引張中の動的機械分析にかけた。分析者は、計器に周波数水準(10及び100ラジアン/秒)、歪み水準、静荷重及び動荷重間の比率(110%)、測定間の温度間隔(2℃)を入力し、そしてヤーン試料の断面積をそのデニールから決定した(表II)。DMA試料は、全体のヤーンの長さの束からなっていた。ヤーンからのフィラメントの取出し及び個々のフィラメント又は全体のヤーンの束の部分の試験が、もつれたフィラメントを損傷又は伸長し、これによってその特性が変化することを防止するために回避しなければならない。束中に不均質なフィラメントを持つヤーンの試料採取の問題も、更にこれによって回避される。
試料及び計器を出発温度に冷却し、そして計器は測定を始めた。これは、最初10ラジアン/秒の周波数で数秒間、ヤーンの特性を測定し、測定値を平均した。次いで、同じ温度で、これは、100ラジアン/秒の周波数で数秒間、ヤーンの特性を測定し、測定値を平均し、そして記録した。次いで計器の温度を2℃上げ、その温度を約10秒間保ち、そして次いで10及び100ラジアン/秒の周波数で、再び測定を開始した。この過程を最後の温度に達するまで繰返した。測定中の加熱の平均加熱速度及び標準偏差は、2.7±0.8℃/分であった。計器の追従性のために、試料にかけられた実際の歪み水準は、設定値とは異なっていた。試料の歪みは、温度の変化に従って実験中幾分変化した。平均の歪み及び標準偏差は、0.025±0.005%であった。
この従来の技術のヤーンの温度対損失弾性率、E’’、のプロットを、図5に示す。ピークは、γ−分散において−125℃の温度で10ラジアン/秒の周波数で、そして100ラジアン/秒の周波数で−119℃で見られた。ピークの両翼を通して引かれた基線より上の損失弾性率のγ−分散の高さの測定値は、γ−分散の大きさが、10ラジアン/秒で252MPa、そして100ラジアン/秒で432MPaであることを示した。100ラジアン/秒におけるγ−分散の基線10を、図5に例示する。γ−分散の損失弾性率のピーク値の、ピークと同じ温度における基線の損失弾性率に対する比は、10ラジアン/秒において1.234:1であり、そして100ラジアン/秒において1.241:1であった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒の両方における−50℃における低温の肩、並びに10及び100ラジアン/秒における、それぞれ−17℃及び−14℃における明確なピークである、二つの成分を示した。β−分散の低温成分は、本明細書中で以下β(1)と表示し、そして高温成分を、β(2)と表示する。
E’’のプロット及びβ−分散の両翼を通して引かれた基線20(図5に100ラジアン/秒に対して例示)間の面積を、数学的積分によって決定した。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒に対して、それぞれ84.9GPa−℃及び105.3GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ73℃及び81℃においてピークを示した。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
比較実施例9
第2の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの引張特性を、ASTM D2256−02によって測定し、そして以下の表IIに示す。
ヤーンを、比較実施例8に記載したように、引張中の動的機械分析にかけた。この従来の技術のヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図6に示す。ピークは、γ−分散において10ラジアン/秒の周波数において−123℃の温度において、そして100ラジアン/秒の周波数において−122℃において見られた。ピークの両翼を通して引かれた基線より上の損失弾性率のγ−分散の高さの測定値は、γ−分散の大きさのピークが、10ラジアン/秒において252MPa、そして100ラジアン/秒において432MPaであることを示した。γ−分散の損失弾性率のピーク値の、ピークと同じ温度における損失弾性率の基線に対する比は、10ラジアン/秒において1.190:1であり、そして100ラジアン/秒において1.200:1であった。β−分散は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ−55℃及び−52℃におけるβ(1)ピーク、並びに10及び100ラジアン/秒において、それぞれ−21℃及び−17℃におけるβ(2)ピークを示した。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒に対して、それぞれ63.0GPa−℃及び79.6GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ79℃及び93℃においてピークを示した。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
比較実施例10
第3の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの引張特性を、ASTM D2256−02によって測定し、そして以下の表IIに示す。
ヤーンを、比較実施例8に記載したように、引張中の動的機械分析にかけた。この従来の技術のヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図7に示す。ピークは、γ−分散において10ラジアン/秒、及び100ラジアン/秒の両方において−118℃の温度において見られた。ピークの両翼を通して引かれた基線より上の損失弾性率のγ−分散の高さの測定値は、γ−分散の大きさのピークが、10ラジアン/秒において182MPa、そして100ラジアン/秒において328MPaであることを示した。γ−分散の損失弾性率のピーク値の、ピークと同じ温度における損失弾性率の基線に対する比は、10ラジアン/秒において1.097:1であり、そして100ラジアン/秒において1.137:1であった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ−38℃及び−37℃におけるピークを持つ一つの成分のみを有していた。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ53.9GPa−℃及び60.5GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ112℃及び109℃においてピークを示した。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
比較実施例11
第4の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの引張特性を、ASTM D2256−02によって測定し、そして以下の表IIに示す。
ヤーンを、比較実施例8に記載したように、引張中の動的機械分析にかけた。この従来の技術のヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図8に示す。ピークは、γ−分散において10ラジアン/秒及び100ラジアン/秒において、それぞれ−106℃及び−118℃の温度において見られた。ピークの両翼を通して引かれた基線より上のγ−分散の高さの測定値は、γ−分散の大きさのピークが、10ラジアン/秒において218MPa、そして100ラジアン/秒において254MPaであることを示した。γ−分散の損失弾性率のピーク値の、ピークと同じ温度における損失弾性率の基線に対する比は、10ラジアン/秒において1.089:1であり、そして100ラジアン/秒において1.088:1であった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒に対して、それぞれ−43℃及び−36℃においてピークを持つ一つのみの成分を有していた。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ85.3GPa−℃及び99.2GPa−℃であった。α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ78℃及び84℃においてピークを示した。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
比較実施例12
第5の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの引張特性を、ASTM D2256−02によって測定し、そして以下の表IIに示す。
ヤーンを比較実施例8に記載したように、引張中の動的機械分析にかけた。この従来の技術のヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図9に示す。ピークは、γ−分散において10ラジアン/秒及び100ラジアン/秒において、それぞれ−120℃及び−116℃の温度で見られた。ピークの両翼を通して引かれた基線より上のγ−分散の高さの測定値は、γ−分散のピークの大きさが、10ラジアン/秒において252MPa、そして100ラジアン/秒において288MPaであることを示した。γ−分散の損失弾性率のピーク値の、ピークと同じ温度における損失弾性率の基線に対する比は、10ラジアン/秒において1.059:1であり、そして100ラジアン/秒において1.055:1であった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ−58℃及び−50℃においてピークを持つ一つのみの成分を有していた。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ54.4GPa−℃及び61.1GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ67℃及び83℃におけるピークを示した。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
実施例2
マルチフィラメントポリエチレン前駆体ヤーンを、米国特許第4,551,296号に記載されているように、10重量%溶液からゲルスパンした。この前駆体ヤーンを、溶液状態、ゲル状態及び固体状態で延伸した。固体状態の延伸比は、2.54:1であった。181本のフィラメントのヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような約15g/dのテナシティを有していた。
この前駆体を、クリールから、11.1メートル/分の速度(V)で拘束ロールの組を通して、内部温度が150±1℃である強制対流空気オーブン中に供給した。オーブン内の空気の循環は、ヤーンの近辺で約34メートル/分の時間平均速度を持つ乱流状態であった。
ヤーンは、入口から出口まで直線で、21.95メートルの通路長さ(L)にわたるオーブンを通って、そしてその後50メートル/分の速度(V)で操作される第2の組のロールを通過した。これによって前駆体ヤーンを、空気抵抗の影響を無視して一定の張力でオーブン中で延伸した。ヤーンを第2の組のロールで、熱収縮を無視して一定の長さで冷却して、本発明のヤーンを製造した。
式1−4に関連した上記の引抜き条件は、以下のとおりであった。
0.25≦[L/V=1.98]≦20,分 式1
3≦[V/V=4.50]≦20 式2
1.7≦[(V−V)/L=1.77]≦60,分−1 式3
0.20≦[2L/(V+V)=0.72]≦10,分 式4
従って、式1−4のそれぞれは満足された。
フィラメント当りのデニール(dpf)は、原料ヤーンの17.7dpfから延伸ヤーンの3.82dpfに減少した。テナシティは、原料ヤーンの約15g/dから延伸ヤーンの約41.2g/dに増加した。延伸ヤーンの質量処理量は、ヤーンの素糸当り3.84グラム/分であった。このヤーンの引張特性を表IIに示す。ヤーンは、135℃におけるデカリン中の11.5dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約0.5個より少ないメチル基を有し、そして2重量%より少ない他の成分を含有するポリエチレンから構成されていた。
本発明のヤーンを比較実施例8に記載したように、引張中で動的機械分析にかけた。このヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図10に示す。基線より上の少なくとも100MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、10ラジアン/秒において存在しなかった。基線より上の少なくとも130MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、100ラジアン/秒において存在しなかった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒の両方に対して、それぞれ−50℃におけるβ(1)の肩を、そして10及び100ラジアン/秒に対して、それぞれ−21℃及び−17℃でβ(2)のピークを示した。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ92.5GPa−℃及び107GPa−℃であった。
α−分散は、10ラジアン/秒の周波数では存在せず、そして100ラジアン/秒では123℃におけるピークを有していた。
このヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
実施例3
マルチフィラメントポリエチレン前駆体ヤーンを、米国特許第4,551,296号に記載されているように、10重量%溶液からゲルスパンした。この前駆体ヤーンを、溶液状態、ゲル状態及び固体状態で延伸した。固体状態の延伸比は、1.55:1であった。181本のフィラメントのヤーンは、15g/dのテナシティを有していた。この前駆体ヤーンを、クリールから、拘束ロールの組を通し、そして強制対流空気オーブン中で実施例2のものと同様な条件で延伸した。
これによって製造された本発明の延伸マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような39.7g/dのテナシティを有していた。このヤーンの引張特性を、表IIに示す。ヤーンは、135℃におけるデカリン中の12dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約0.5個より少ないメチル基を有し、そして2重量%より少ない他の成分を含有するポリエチレンから構成されていた。
本発明のヤーンを、比較実施例8に記載したように、引張中で動的機械分析にかけた。このヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図11に示す。基線より上の少なくとも100MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、10ラジアン/秒において存在しなかった。基線より上の少なくとも130MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、100ラジアン/秒において存在しなかった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒の両方において−50℃でβ(1)の肩を、そして10及び100ラジアン/秒に対して、それぞれ−34℃及び−25℃においてβ(2)のピークを示した。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ149GPa−℃及び152GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ74℃及び84℃におけるピークを示した。
この本発明のヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIIに要約する。
実施例4
この実施例は、前駆体ヤーンの調製から始まる実施例3の完全な繰返しであった。本発明の延伸マルチフィラメントヤーンは、ASTM D2256−02によって測定されるような38.9g/dのテナシティを有していた。このヤーンの引張特性を、表IIに示す。ヤーンは、135℃におけるデカリン中の12dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り約0.5個より少ないメチル基を有し、そして2重量%より少ない他の成分を含有するポリエチレンから構成されていた。
本発明のヤーンを、比較実施例8に記載したように、引張中の動的機械分析にかけた。このヤーンの損失弾性率、E’’、のプロットを、図12に示す。基線より上の少なくとも100MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、10ラジアン/秒において存在しなかった。基線より上の少なくとも130MPaの大きさを有するγ−分散のピークは、100ラジアン/秒において存在しなかった。
β−分散は、10及び100ラジアン/秒に対する、それぞれ−50℃及び−48℃におけるβ(1)のピークを、そして10及び100ラジアン/秒に対する、それぞれ−25℃及び−22℃におけるβ(2)のピークを示した。β−分散の積分強度は、10及び100ラジアン/秒において、それぞれ111GPa−℃及び135GPa−℃であった。
α−分散は、10及び100ラジアン/秒の周波数に対して、それぞれ81℃及び95℃におけるピークを示した。
本発明のヤーンに対するDMA測定値を、以下の表IIに要約する。
本発明の延伸マルチフィラメントゲルスパンポリエチレンヤーンのDMAの特徴が、従来の技術のゲルスパンポリエチレンヤーンのものと、個別に、或いはいくつかの組合せで選択される一つ又はそれより多い以下の点で異なっていることが理解される。
・損失弾性率のγ−分散のピークが、もしあれば、非常に低い大きさのものである。
・損失弾性率のβ−分散は、高い積分強度のものである。
・α−分散中のピークは、10ラジアン/秒の周波数では存在しない。
本発明のヤーンは、更に損失弾性率のβ−分散において、二つの成分を示す。
特別の理論に拘束されるものではないが、本発明のヤーンの損失弾性率中のγ−分散のピークが本質的に存在しないことが、結晶質相中の低い欠陥密度、即ち長い連続の直鎖の全trans−−(CH−配列の反映であると考えられる。これは、上記に報告したDCSの証拠と一致する。β−分散の起源が、結晶間領域の分子運動であることを受入れれば、β−分散中の二つの成分の存在は、結晶間領域における異なったモードの結合性を持つ二つの斜方晶系結晶相の存在の反映であると考えられる。これは、上記に報告したx−線の証拠と一致する。損失弾性率のβ−分散の異常に高い積分強度は、結晶間領域の高い程度の分子の整列を示唆している。全体として、DMAデータは、本発明のヤーン中の高い程度の分子の整列及び結晶の完全さを示唆し、そしてそれに一致する。
Figure 0005324096
Figure 0005324096
実施例5
上記の実施例3に記載した本発明のヤーンを、クロスプライ繊維補強積層物を含んでなる本発明の物品を構築するために使用した。いくつかのロールの実施例3の本発明のヤーンを、クリールから供給し、そしてコーミングステーション(combing station)を通して、一方向性網状構造を形成した。繊維の網状構造を、固定バーの上及び下を通して通過させて、ヤーンを薄い層に広げた。次いで繊維の網状構造を、KRATON(登録商標)D1107スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー基質のシクロヘキサン溶液中の浴に浸漬されたロール下に運んで、それぞれのフィラメントを完全に被覆した。
被覆された繊維の網状構造を、浴の出口の絞りロールを通過させて、過剰のシーリング剤の分散物を除去した。被覆された繊維の網状構造を、0.35ミル(0.00089cm)のポリエチレンフィルム保持ウェブ上に置き、そして加熱されたオーブンを通して通過させて、シクロヘキサンを蒸発させ、そして20重量%のKRATON(登録商標)基質を含有する密着した繊維のシートを形成した。次いで保持ウェブ及び一方向性繊維シートを、積層物の構築のための準備としてローラーに巻いた。
二つの異なった積層物を、上記で作製したロールから構築した。タイプPCRと命名した本発明の2層の積層物を、上記に記載したシート材料の二つのロールを、米国特許第5,173,138号に記載されているクロスプライ機械上に置くことによって形成した。保持ウェブを剥ぎ取り、そして二つの一方向性繊維シートを0°/90°でクロスプライし、そして115℃の温度で、500psi(3.5MPa)の圧力下で圧密化して、積層物を作成した。
外部表面にポリエチレンフィルムを伴う2枚のクロスプライ繊維シートからなる、タイプLCRと命名した本発明の4層積層物を、同様に作製した。ポリエチレンフィルム保持ウェブを含む上記に記載したシート材料の二つのロールを、クロスプライ機械上に置き、外部にポリエチレン保持ウェブを伴う繊維と繊維を0°/90°でクロスプライし、そして次いで115℃の温度で500psi(3.5MPa)の圧力下で密圧化して、積層物を作成した。
弾道試験のための複合標的を、上記の積層物から構築した。硬質標的をPCR積層物のいくつかの層を重ね、そしてクロスプライすることによって所望する面密度に構築し、そして次いで115℃の温度で500psi(3.5MPa)の圧力下で再成形した。軟質標的を、LCR積層物のいくつかの層をクロスプライし、そして緩やかに積み重ねることによって所望する面密度に構築した。
本発明のヤーンで構築された積層物の弾道試験を、SPECTRA(登録商標)1000ヤーンから作製した同じPCR及びLCRタイプの商業的に入手可能なSPECTRASHIELD(登録商標)積層物との比較で行った。弾道試験は、MIL−STD 662Eに従って行った。
結果を表IVに示す。
V50速度は、発射体が貫通するものである可能性が50%である速度である。SEACは、与えられた発射体に特有の、複合物の単位面密度当りの特有なエネルギー吸収能力である。これの単位はジュール/g/mであり、J−m/gと略記される。
本発明のヤーンで構築された本発明の物品が、発射体のある範囲にわたって、従来の技術のSPECTRA(登録商標)1000ヤーンで作製した標的より、高いV50及び高いSEACを保有することがわかるものである。
このように本発明を、十分に詳細に説明してきたが、このような詳細が、厳密に固執される必要はないが、しかし更なる変更及び改変が、それら自体が全て特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲に入ることを当業者に示唆することは理解されることである。
Figure 0005324096
図1は、商業的に入手可能なゲルスパンマルチフィラメントUHMWPEヤーン(SPECTRA(登録商標)900ヤーン)のフィラメントの低周波数ラマンスペクトル及び導き出されたLAM−1スペクトルである。 図2aは、図1のLAM−1スペクトルから決定された規則的配列長さ分布関数F(L)のプロットである。
図2bは、商業的に入手可能なゲルスパンマルチフィラメントUHMWPEヤーン(SPECTRA(登録商標)1000ヤーン)のLAM−1スペクトルから決定された規則的配列長さ分布関数F(L)のプロットである。
図2cは、本発明のフィラメントのLAM−1スペクトルから決定された規則的配列長さ分布関数F(L)のプロットである。
図3は、5mmの長さに切断され、そしてウッドメタル箔中に平行な配列で包装され、そして開放試料皿に置かれた本発明のマルチフィラメントヤーンから採取された0.03mgのフィラメント切片の0.31、0.62及び1.25°K/分の加熱速度における示差走査熱量測定法(DSC)の走査を示す。 図4は、本発明のマルチフィラメントヤーンから採取された単一フィラメントのx−線ピンホール写真を示す。 図5は、第1の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図6は、第2の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図7は、第3の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図8は、第4の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図9は、第5の従来の技術の延伸UHMWPEヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図10は、本発明の延伸UHMWPEマルチフィラメントヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図11は、本発明の延伸UHMWPEマルチフィラメントヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。 図12は、本発明の延伸UHMWPEマルチフィラメントヤーンの10及び100ラジアン/秒のDMA周波数における損失弾性率のプロットを示す。

Claims (44)

  1. 以下の工程:
    a)135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるゲルスパンポリエチレンマルチフィラメント原料ヤーンを形成し;
    b)前記原料ヤーンを、130℃ないし160℃の領域温度を有する一つ又はそれより多い領域がヤーン通路に沿って存在する、Lメートルのヤーン通路長さを有する強制対流空気オーブン中をVメートル/分の速度で通過させ;
    c)前記原料ヤーンを、前記オーブンを連続的に通して、そして前記オーブンから以下の式:
    0.25≦L/V≦20,分
    3≦V/V≦20
    1.7≦(V−V)/L≦60,分−1
    0.20≦2L/(V+V)≦10,分
    を満足するVメートル/分の出口速度で排出すること;
    を含んでなる、ゲルスパンマルチフィラメントヤーンを延伸するための方法。
  2. 更に、前記オーブンを通過するヤーンの質量処理量が、ヤーン素糸当り少なくとも2グラム/分である条件を満足する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ヤーンが、オーブンを通して、空気抵抗を無視した一定の張力で延伸される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記オーブン中のヤーン通路が、入口から出口まで直線である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記原料ヤーンが、135℃におけるデカリン中の8dl/gないし30dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り1個より少ないメチル基、及び1重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなり、前記原料ヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような、2ないし76g/dのテナシティを有する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記原料ヤーンが、5ないし66g/dのテナシティを有する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記原料ヤーンが、135℃におけるデカリン中の10dl/gないし20dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り0.5個より少ないメチル基を有するポリエチレンを含んでなり、前記原料ヤーンが、7ないし51g/dのテナシティを有する、請求項5に記載の方法。
  8. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、少なくとも17g/dのASTM D2256−02によって測定されるようなテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントが、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから23℃で決定されるとおりの規則的序列長さ分布関数、F(L)のピーク値を、少なくとも40ナノメートルの直鎖セグメント長さL、において有する、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  9. 前記フィラメントが、少なくとも45ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいてピーク値を有する、請求項8に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  10. 前記フィラメントが、少なくとも50ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいてピーク値を有する、請求項8に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  11. 前記フィラメントが、少なくとも55ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいてピーク値を有する、請求項8に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  12. 前記フィラメントが、50ないし150ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいてピーク値を有する、請求項8に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  13. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて2°K/分より小さい加熱速度における少なくとも3回の溶融走査から0°K/分に外挿された加熱速度における最初のポリエチレン溶融吸熱の示差走査熱量測定法(DSC)によって決定されるように、前記DSC熱量測定法が、5mmの長さの小片に切断され、ウッドメタル箔中に平行な配列で包まれ、そして開放試料皿に置かれた、0.03mgの質量のフィラメントのセグメントで行われ、前記ヤーンのフィラメントが、少なくとも535の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有する、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  14. 前記ヤーンのフィラメントが、少なくとも545の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有する、請求項13に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  15. 前記ヤーンのフィラメントが、少なくとも555の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有する、請求項13に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  16. 前記ヤーンのフィラメントが、545ないし1100の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有する、請求項13に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  17. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて室温の無外部負荷下で測定された前記ヤーンの前記フィラメントの一つの(002)x−線反射の強度が、二つの明確なピークを示す、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  18. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントが、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから23℃で決定されるような、少なくとも40ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて規則的序列長さ分布関数、F(L)のピーク値を有し、そして2°K/分より小さい加熱速度における少なくとも3回の溶融走査から0°K/分に外挿された加熱速度における最初のポリエチレン溶融吸熱の示差走査熱量測定法(DSC)によって決定されるような少なくとも535の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有し、前記DSC熱量測定法が、5mmの長さの小片に切断され、ウッドメタル箔中に平行な配列で包まれ、そして開放試料皿に置かれた、0.03mgの質量のフィラメントのセグメントで行われる、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  19. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントが、縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから23℃で決定されるような、少なくとも40ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおいて規則的序列長さ分布関数、F(L)のピーク値を有し、そして前記ヤーンの前記フィラメントの少なくとも一つの(002)x−線反射の強度が、室温の無外部負荷下で測定された二つの明確なピークを示す、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  20. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるとおりの少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントが、2°K/分より小さい加熱速度における少なくとも3回の溶融走査から0°K/分に外挿された加熱速度における最初のポリエチレン溶融吸熱の示差走査熱量測定法(DSC)によって決定されるような少なくとも535の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν、を有し、前記DSC熱量測定法が、5mmの長さの小片に切断され、ウッドメタル箔中に平行な配列で包まれ、そして開放試料皿に置かれた、0.03mgの質量のフィラメントのセグメントで行われ、そして前記ヤーンの前記フィラメントの少なくとも一つの(002)x−線反射の強度が、室温の無外部負荷下で測定された二つの明確なピークを示す、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  21. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし35dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって、前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも17g/dのテナシティを有し、ここにおいて前記ヤーンのフィラメントが:
    a)縦方向音響モード(LAM−1)と関連付けられる低周波数ラマンバンドから23℃で決定されるような、少なくとも40ナノメートルの直鎖セグメント長さLにおける規則的序列長さ分布関数F(L)のピーク値;
    b)室温の無外部負荷下で測定された(002)x−線反射の強度における二つの明確なピーク;及び
    c)2°K/分より小さい加熱速度における少なくとも3回の溶融走査から0°K/分に外挿された加熱速度における最初のポリエチレン溶融吸熱の示差走査熱量測定法(DSC)によって決定されるような少なくとも535の溶融過程の鎖内共同性のパラメーター、ν(前記DSC熱量測定法は、5mmの長さの小片に切断され、ウッドメタル箔中に平行な配列で包まれ、そして開放試料皿に置かれた、0.03mgの質量のフィラメントのセグメントで行われる);
    を示す、前記ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  22. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  23. 前記損失弾性率のγ−分散のピーク値が、130MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、請求項22に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  24. ASTM D2256−02によって測定されるようなテナシティが、少なくとも39g/dである、請求項22に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  25. 50℃ないし125℃の温度範囲及び10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない、請求項22に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  26. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、50℃ないし125℃の温度範囲及び10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  27. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  28. 50℃ないし125℃の温度範囲及び10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない、請求項27に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  29. 前記損失弾性率のβ−分散が、二つの成分を有する、請求項27に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  30. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、175MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有し、そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  31. 前記損失弾性率のγ−分散のピーク値が、130MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、請求項30に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  32. 前記損失弾性率のβ−分散が、二つの成分を有する、請求項30に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  33. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  34. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、225MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線より上に有し、そして少なくとも107GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  35. 前記損失弾性率のγ−分散のピーク値が、130MPaより少ないγ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線より上に有する、請求項34に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  36. 前記損失弾性率のβ−分散が、二つの成分を有する、請求項34に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  37. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ないし100ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  38. 50℃ないし125℃の温度範囲及び10ラジアン/秒の周波数において、少なくとも10℃の半幅値を有する損失弾性率のピークを有しない、請求項37に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  39. 135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなる延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンであって;前記マルチフィラメントヤーンが、ASTM D2256−02によって測定されるような少なくとも33g/dのテナシティを有し、そしてRheometrics Solids Analyzer RSA IIによる動的機械分析によって、張力の荷重比例モードで、動荷重の110%に保たれた静荷重、0.025±0.005%の動的歪み、2.7±0.8℃/分の加熱速度、及び10ラジアン/秒の範囲の周波数で測定された場合、1.05:1より小さい、γ−分散の損失弾性率のピーク値を、前記ピーク値と同じ温度で前記γ−分散のピークの両翼を通して引かれた基線の損失弾性率に比例して有し、そして少なくとも90GPa−℃の損失弾性率のβ−分散の積分強度を、前記β−分散の両翼を通して引かれた基線より上に有する、前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  40. 損失弾性率のβ−分散が、二つの成分を有する、請求項39に記載のポリエチレンマルチフィラメントヤーン。
  41. 請求項8〜40のいずれか1項に記載の延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンを含んでなる物品。
  42. 少なくとも一つの前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンの網状構造を含んでなる、請求項41に記載の物品。
  43. 前記延伸ポリエチレンマルチフィラメントヤーンの複数の網状構造を含んでなり、前記網状構造が、単一方向の層に配列され、一つの層の繊維の方向が、隣接する層の繊維の方向と角度をなす、請求項42に記載の物品。
  44. a)135℃におけるデカリン中の5dl/gないし45dl/gの固有粘度、1000個の炭素原子当り2個より少ないメチル基、及び2重量%より少ない他の成分を有するポリエチレンを含んでなるゲルスパンポリエチレンマルチフィラメント原料ヤーンを形成し;
    b)前記原料ヤーンを、130℃ないし160℃の領域温度を有する一つ又はそれより多い領域がヤーン通路に沿って存在する、Lメートルのヤーン通路長さを有する強制対流空気オーブン中をVメートル/分の速度で通過させ;
    c)前記原料ヤーンを、前記オーブンを連続的に通して、そして前記オーブンから以下の式:
    0.25≦L/V≦20,分
    3≦V/V≦20
    1.7≦(V−V)/L≦60,分−1
    0.20≦2L/(V+V)≦10,分
    を満足するVメートル/分の出口速度で通過させること;
    の工程を含んでなるゲルスパンマルチフィラメントヤーンを延伸するための方法。
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