JP2000164818A - 酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法及び酸化物強誘電体薄膜被覆基板 - Google Patents

酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法及び酸化物強誘電体薄膜被覆基板

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JP2000164818A
JP2000164818A JP11265635A JP26563599A JP2000164818A JP 2000164818 A JP2000164818 A JP 2000164818A JP 11265635 A JP11265635 A JP 11265635A JP 26563599 A JP26563599 A JP 26563599A JP 2000164818 A JP2000164818 A JP 2000164818A
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ferroelectric thin
oxide ferroelectric
electrode
temperature
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Takeshi Kijima
健 木島
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸化物強誘電体薄膜の結晶性及び配向性や配
向方向を制御可能にすることによって、所望の自発分極
や抗電界と分極反転耐性とを併せ持つ酸化物強誘電体薄
膜と、その酸化物強誘電体薄膜を得ることを容易にする
製造方法とを提供することを目的にしている。 【解決手段】 電極で被覆された基板をプリベーキング
し、得られた電極上に酸化物強誘電体薄膜を形成するこ
とからなる酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物強誘電体薄
膜被覆基板の製造方法及び酸化物強誘電体薄膜被覆基板
に関する。より詳細には、メモリ素子、焦電素子、圧電
素子、光デバイス等の用途に好適に使用することができ
る酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法及び酸化物強
誘電体薄膜被覆基板に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの酸化物材料の中には、Pb(Zr
1-XTiX)O3(以下、PZTという)、BaTiO3
Bi4Ti312、LiNbO3をはじめとして、強誘電
性、高誘電性、圧電性、焦電性、電気光学効果等の様々
な機能を持つものがあり、一般に酸化物強誘電体材料と
総称されている。それらの酸化物強誘電体材料の優れた
機能を利用して、コンデンサ、圧力センサ、赤外線セン
サ、発振器、周波数フィルタ、光スイッチ等の多くのデ
バイス開発が行われてきた。
【0003】特に最近、薄膜形成技術の進展に伴って、
酸化物強誘電体材料の高誘電率特性をDRAM等の半導
体デバイスのキャパシタに適用することにより、デバイ
スの小型化、プロセスの簡略化が図られ、また、強誘電
性特性をDRAM等の半導体デバイスのメモリ部に適用
することにより、高密度で高速に動作する不揮発性メモ
リ(強誘電体不揮発性メモリ)等の新規機能デバイスの
開発が行われている。強誘電体不揮発性メモリは、強誘
電体の強誘電性特性(ヒステリシス効果)を利用してバ
ックアップ電源の不要なメモリを実現するものであり、
このようなデバイス開発には、残留分極が大きく、か
つ、抗電界が小さい材料が必要である。
【0004】現在、1T1C型と呼ばれる破壊読み出し
方式の強誘電体メモリでは、10〜20μC/cm2
度の残留分極値を持つ強誘電体薄膜を用いて、256k
bit以下の小容量品が商品化される状況にある。しか
し、Mbit以上の容量をもつ強誘電体メモリを開発す
るためには、20μC/cm2以上の残留分極値をもつ
強誘電体薄膜の開発が不可欠である。
【0005】さらに、良好な電気特性を得るためには、
低リーク電流であり、分極反転の繰り返し耐性が大きい
等の特性をもつ材料が必要である。そのためには、成膜
後の表面モフォロジーの制御も重要な課題である。ま
た、動作電圧の低減と半導体微細加工プロセスへの適合
のために、膜厚が数百nm以下の薄膜で上記の特性を実
現することが望まれる。
【0006】上述の酸化物強誘電体材料のうち、PZT
は、最も集中的に研究されているものであり、スパッタ
リング法やゾルゲル法による薄膜作製が行われている。
PZTは、PbZrO3とPbTiO3の固溶体で、Zr
/Ti比は1〜1.5である。PbTiO3は、正方晶
系に属するペロブスカイト構造を持つ強誘電体であり、
c軸方向に自発分極をもっている。PbZrO3は、斜
方晶系に属するペロブスカイト構造をもつ反強誘電体で
あるが、PbTiO3と固溶してTi量が増加するとと
もに強誘電体に移行する。
【0007】酸化物強誘電体Bi4Ti312は、斜方晶
系に属するペロブスカイト構造をもつ強誘電体である。
自発分極は、a軸及びc軸の2方向に成分をもつ。特
に、c軸方向の抗電界が小さいため、低電圧駆動が可能
な強誘電体不揮発性メモリへの応用が期待されている。
【0008】上記酸化物強誘電体材料をこれらのデバイ
スとして実用化するためには、上述したように、薄膜化
技術が重要となり、これまでゾルゲル法、スパッタリン
グ法、MOCVD法、レーザーアブレーション法等が行
われている。これらの成膜方法を用いて上記の酸化物強
誘電体材料を形成する基板としては、通常、Pt(11
1)、Ir(111)又は酸化物超電導材料等からなる
電極を具備した基板が用いられる。
【0009】PZTの場合には、その強誘電特性が組成
xに大きく依存するにもかかわらず、蒸気圧の高いPb
を含むため、成膜時や熱処理時等での膜組成変化が起こ
りやすく、配向性やモフォロジーを支配する因子の解明
が難しい状況である。そのため、ピンホールの発生、下
地電極PtとPbとの反応による低誘電率層の発生等の
結果、膜厚の低減に伴い、リーク電流や分極反転耐性の
劣化が起こるという問題点を有している。
【0010】一方、Bi4Ti312の場合には、従来の
ゾルゲル法での成膜では、良好な強誘電特性を得るため
に650℃以上での熱処理が必要であるため、得られる
面方位は限られており、配向性の制御は困難であった。
また、MOCVD法での成膜においては、パイロクロア
相(Bi2Ti27)が発生しやすくなると報告されて
いる(Jan. J. Appl. Phys., 32, 1993, p.4086、及
び、J. Ceramic. Soc. Japan, 102, 1994, p.512)。
【0011】いずれの成膜法においても、得られる表面
モフォロジーは、0.5μm以上の粗大結晶粒子からな
るのが一般的であり、微細加工を必要とする高集積半導
体装置には適用できないばかりではなく、数百nm以下
の薄い膜厚ではピンホールが発生し、リーク電流を抑制
するのが困難な状況であった。また、配向方向を制御し
て、所望の残留分極や抗電界を得ることも容易ではなか
った。
【0012】特開平8−222711ならびに特開平1
0−50960には、ゾルゲル法にてPZT薄膜を作製
する際、Pt又はIrよりなる下部電極とPZT薄膜と
の界面及び積層PZT薄膜の界面にTiOx薄層を挿入
してPZT薄膜の核付けを行なうことによって、リーク
電流や分極反転の繰り返し耐性が大幅に改善されること
を示されている。しかし、その強誘電特性は残留分極値
が20μC/cm2以下と、従来得られている範囲を越
えるものではなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、上記従
来技術では、ソルゲル法やスパッタ法又はMOCVD法
等の成膜技術を用いて、Pt、Ir等の金属電極上にP
ZTやBi4Ti312等の酸化物強誘電体薄膜を形成す
る場合、成膜時や熱処理時に長い時間に渡って高温にさ
らす必要があり、その配向性や配向方向又はモフォロジ
ーを制御することが困難であった。そのため、得られる
酸化物強誘電体薄膜に発生するリーク電流や分極反転耐
性の劣化を抑制することが困難な状況にあり、また、所
望の残留分極や抗電界を得ることも容易ではなかった。
【0014】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、酸化物強誘電体薄膜の配向性、配向方向
又はモフォロジーを制御可能とし、Mbit以上の容量
をもつ不揮発性メモリを実現するために必要な残留分極
値や抗電界値と、分極反転耐性とを併せもつ酸化物強誘
電体薄膜被覆基板の製造方法及び酸化物強誘電体薄膜被
覆基板を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、電極で
被覆された基板をプリベーキングし、得られた電極上に
酸化物強誘電体薄膜を形成する酸化物強誘電体薄膜被覆
基板の製造方法が提供される。また、本発明によれば、
上記方法により形成されてなる酸化物強誘電体薄膜被覆
基板が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の酸化物強誘電体薄膜被覆
基板の製造方法は、主として、基板上に電極を形成し、
電極で被覆された基板をプリベーキングし、得られた電
極上に酸化物強誘電体薄膜を形成することからなる。
【0017】本発明の方法において、使用することがで
きる基板としては、シリコン、ゲルマニウム等の元素半
導体基板、GaAs、ZnSe等の化合物半導体基板、
Pt等の金属基板、サファイア基板、MgO基板、Sr
TiO3、BaTiO3等の絶縁性基板等種々の基板を使
用することができる。なかでも、シリコン基板、特に、
シリコン単結晶基板が好ましい。
【0018】基板上に形成される電極は、その応力が、
その上に形成される酸化物強誘電体薄膜の結晶性や配向
性を決定することから、温度によって線膨張係数が変化
する少なくとも1種の導電性材料であることが好まし
い。特に、複数の温度範囲で明確に異なる膨張特性を有
する導電性材料で形成することが好ましい。また、製造
工程における熱処理温度の低温度化を考慮すると、室温
から700℃程度の温度範囲において、上記線膨張特性
を有する導電性材料で形成することがより好ましい。こ
のような導電性材料としては、例えば、Pt、Au、A
l、Ru等の金属、IrO2、RuO2等の酸化物導電体
の単層又は積層構造が挙げられる。なかでも、Ptが好
ましい。この導電性材料の膜厚は特に限定されるもので
はなく、例えば、100〜200nm程度が挙げられ
る。この導電性材料は、基板上に、スパッタ法、真空蒸
着法等の公知の方法で形成することができる。
【0019】また、電極としては、上記特性を有する導
電性材料の上に、電極上に形成される酸化物強誘電体薄
膜に常誘電体パイロクロア相を生じさせない導電性材料
が、積層されていることが好ましい。このような導電性
材料としては、例えば、Ir等が挙げられる。このよう
な導電性材料の膜厚は、特に限定されるものではなく、
例えば、100〜200nm程度が挙げられる。この導
電性材料は、上記と同様の方法により形成することがで
きる。
【0020】なお、基板と電極との間には、基板と電極
との絶縁を確保するために絶縁層等を設けてもよいし、
電極の基板(絶縁層)との接着強度を確保するために接
着層等を設けてもよい。絶縁層としては、例えば、Si
2、SiN等が挙げられる。絶縁層は、熱酸化法、ス
パッタ法、真空蒸着法又はMOCVD法等の種々の公知
の方法で、任意の膜厚で形成することができる。また、
接着層としては、例えば、Ta、Ti等が挙げられる。
接着層は、スパッタ法、真空蒸着法等の種々の公知の方
法により形成することができる。電極で被覆された基板
をプリベーキングする際の温度は、電極を構成する導電
性材料の温度による熱膨張係数の変化に応じて設定する
ことが必要である。これにより、後述するように、電極
上に形成される酸化物強誘電体薄膜の結晶性及び/又は
配向性を制御することができる。
【0021】例えば、Ptの場合には、図2に示すよう
に、温度の変化に応じて4種の異なる膨張特性を示すの
で、このうち正の熱膨張係数を示す温度範囲で、あるい
は負の熱膨張係数を示す温度範囲で、その上に形成され
る酸化物強誘電体薄膜が任意の結晶性及び/又は配向性
を得ることができるようにプレベーキングすることが好
ましい。具体的には、室温以上、700℃以下でのプリ
ベーキングが適当である。特に、電極がPtの場合に
は、200℃以上、700℃未満、より好ましくは25
0℃以上、660℃未満でのプリベーキングが適当であ
る。なお、電極が積層構造の場合には、正の熱膨張係数
を示す温度範囲とは、そのすべての導電性材料が正の熱
膨張係数を示す温度範囲であることが好ましい。一方、
負の熱膨張係数を示す温度範囲とは、その導電性材料の
うち少なくとも1種が負の熱膨張係数を示す温度範囲で
あることが好ましい。プリベーキングの時間は、上記の
温度範囲においては、1〜30分間程度が適当である。
【0022】得られた電極上に酸化物強誘電体薄膜を形
成する。酸化物強誘電体薄膜の種類は特に限定されるも
のではない。即ち、PZT、BaTiO3、LiNbO3
等のRMO3(R、Mは金属元素)で表される酸化物強
誘電体材料は、ペロブスカイト構造をとることから、後
述する結晶性や配向性の制御のメカニズムを考慮して、
本発明の方法において有効である。また、Bi4Ti3
12等の酸化物強誘電体材料でも、その結晶相が斜方晶系
をとるため、三方晶系のPZT等と、a、b、c結晶軸
間の角度が異なるという違いはあるが、PZT等と同様
のペロブスカイト構造をとるため、化学式RMO3を持
つ酸化物強誘電体材料と同様に、本発明の方法において
有効である。
【0023】酸化物強誘電体薄膜は、公知の方法、例え
ば、ゾルゲル法、MOCVD法、スパッタリング法等の
種々の方法で形成することができるが、なかでも、ゾル
ゲル法が好ましい。なお、酸化物強誘電体薄膜を成膜し
た後、さらに得られた薄膜を結晶化することが好まし
い。結晶化の条件は、酸化物強誘電体薄膜の結晶性及び
/又は配向性に影響を与えない温度及び時間での熱処理
にて行うことが好ましい。具体的には、形成する酸化物
強誘電体薄膜の種類、膜厚等により適宜調整することが
できるが、例えば、500〜850℃程度の温度範囲
で、1〜60分間程度熱処理することが挙げられる。な
お、結晶化の温度は、プリベーキングの温度よりも低い
温度であることが好ましいが、酸化物強誘電体薄膜の結
晶性及び/又は配向性に影響を与えない限り、プレベー
キングの温度よりも高い温度であってもよい。
【0024】上記方法により、結晶配向が実質的に(1
11)単一配向の酸化物強誘電体薄膜が被覆された基板
を得ることができる。また、残留分極値が20μC/c
2から30μC/cm2の範囲の酸化物強誘電体薄膜が
被覆された基板を得ることができる。さらに、抗電界値
が40kV/cmから60kV/cmの範囲の酸化物強誘
電体薄膜が被覆された基板を得ることができる。
【0025】以下、本発明の酸化物強誘電体薄膜被覆基
板の製造方法及び酸化物強誘電体薄膜被覆基板の実施の
形態について、図面を参照して説明する。
【0026】実験例:Ptバルク材料(99.99999%)の
線膨張係数の測定結果 Ptバルク材料(99.99999%)を図1に示したように円
柱状に加工して、その線膨張の温度依存曲線を測定し
た。その結果を図2に示す。なお、半導体プロセスへの
整合性を考えれば、強誘電体薄膜作製の各工程における
上限温度は700℃程度である。本実験例1では、その
温度範囲を含む900℃以下にて実験を行なった。
【0027】図2から明確に判読されるように、Ptの
線膨張の温度依存曲線は単調な曲線ではなく、複雑に変
化している。Ptの線膨張係数は、図2の線膨張の温度
依存曲線の傾きで与えられ、したがって、次の4つの温
度範囲に区分できる。 I:温度250℃以下。線膨張の温度依存曲線は直線で
はなく、下に凸の曲線である。線膨張係数は一定ではな
く、温度上昇とともに増大する。 II:温度250〜540℃。線膨張の温度依存曲線はほ
ぼ直線状である。線膨張係数はほぼ一定で、1.7×1
-5cm/℃となる。 III:温度540〜660℃。線膨張の温度依存曲線は
負の傾きである。線膨張係数は負の値をもつ。 IV:温度660℃以上。線膨張の温度依存曲線の傾きは
非常に緩やかである。線膨張係数は、かろうじて正であ
る。
【0028】実施例1:下部電極の作製方法と熱処理条
件 まず、図3に示したように、シリコン(Si)単結晶基
板10の表面を熱酸化して膜厚200nm程度の二酸化
シリコン(SiO2)層11を形成し、この二酸化シリ
コン層11上に接着層となるタンタル(Ta)層12を
膜厚30nm程度で形成し、さらにタンタル層12上に
実験例で形成したのと同じ白金(Pt)バルク材料(9
9.99999%)をスパッタ法で室温にて200nm
程度の膜厚で堆積してPt電極13を形成した。次い
で、このようにして得られたPt電極13付きシリコン
基板(以下「Pt被覆基板」と記す)10を、Ptバル
ク材料の線膨張係数が異なる振る舞いを示す図2の4つ
の温度範囲から選択した7種の温度条件において、N2
雰囲気中で30分間プレベーキングした。7種の温度条
件を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】さらに、7種類のベーキング温度において
プリベーキングを行ったPt被覆基板10の上に、図4
に示すように、それぞれPZTからなる膜厚200nm
程度の強誘電体薄膜14を以下の成膜条件でゾルゲル法
にて成膜した。ゾルゲル原料溶液として、PZTが10
wt%(Pb:Zr:Ti=110:52:48)とな
るように原料金属アルコキシドを調製した。内容成分と
しては、PbOとして7.1wt%、ZrO2として
1.8wt%、TiO2として1.1wt%である。溶
媒には2−メトキシエタノールを用い、総量の50%以
上となるようにした。
【0031】このゾルゲル溶液をスピンコーティング法
(スピンコーティング条件:500rpmにて3秒間回
転後、3000rpmにて15秒間回転)にてPt被覆
基板10上に塗布した後、大気中において150℃にて
1分間の乾燥を行い、次いで大気中のまま400℃に昇
温して10分間の仮焼成を行って1回の成膜を終了し
た。この過程を5回繰り返した後、最後に酸素雰囲気中
において700℃にて5分間のRTA処理による焼成
(結晶化、1回)を行った。PZT薄膜全体の膜厚は、
250nm程度であった。
【0032】これら7種類の試料のうち、Ptバルク材
料の線膨張係数が異なる振る舞いを示す図2の4つの温
度範囲におけるPt被覆基板10へのプリベーキングに
よる前処理に伴う特性の差を表す代表的な試料として、
試料A(as−grown)、試料B(300℃)、試
料C(600℃)及び試料D(700℃)を選び出し、
それらのPZT表面モフォロジー及びPt電極13の断
面写真の観察を行った。表2に、それぞれの試料におけ
るPt電極13の構造とPZT薄膜の構造を示す。な
お、200℃でプリベーキングを行った試料は、試料A
と、400℃、500℃でプリベーキングを行った試料
は試料Bと、それぞれ同様の特性が得られた。
【0033】
【表2】
【0034】表2から、試料A、B、C、Dのいずれに
おいても、700℃、5分間という同条件のRTAによ
る焼成工程を経ているにもかかわらず、PZT薄膜の構
造に対応して、それぞれのPt電極13の構造が異なっ
ていた。このことから、プリベーキング処理のみによっ
てその構造が変化することがわかった。
【0035】つまり、Ptバルク材料の線膨張係数の異
なる4つの振る舞いに対応して、Pt電極13は、I
の温度範囲で基板のプリベーキングを行った場合(試料
A)では、一枚板状であり、IIの温度範囲で基板のプ
リベーキングを行った場合(試料B)では、若干の柱状
構造をもち始めた一枚板状であり、IIIの温度範囲で
基板のプリベーキングを行った場合(試料C)では、柱
状構造となっており、IVの温度範囲で基板のプリベー
キングを行った場合(試料D)では、粒状構造となって
いる。
【0036】PZT薄膜においても、試料A、B、C及
びDのいずれにおいても緻密平滑な表面を有している
が、Pt電極13と同様に、Ptバルク材料の線膨張係
数の異なる4つの振る舞いに応じて、それぞれ異なる構
造を示す。つまり、PZT薄膜は、Iの温度範囲で基
板のプリベーキングを行った場合(試料A)では、巨大
グレインの集合体となり、IIの温度範囲で基板のプリ
ベーキングを行った場合(試料B)では、1つ1つのグ
レインがはっきりした巨大グレインの集合体となり、
IIIの温度範囲で基板のプリベーキングを行った場合
(試料C)では、非常に緻密平滑で大きなグレインは存
在せず、IVの温度範囲で基板のプリベーキングを行っ
た場合(試料D)では、所々に凹凸の存在する緻密平滑
な表面を形成した。
【0037】以上の観察より、熱膨張係数の振る舞いと
Pt電極の構造とは密接に関係しており、その結果、そ
の上に形成したPZT薄膜の構造、モフォロジーにも強
い影響を与えることが判明した。さらに、7種類の試料
に対してX線回折を測定した。そのXRDパターンを図
5に示す。
【0038】図5から、Pt電極のプリベーキング温度
によって、PZT薄膜の配向性が大きく異なることが分
かる。より分かりやすくするために、図6に、XRDピ
ーク強度をプロットした。図6から、PZT薄膜の配向
性は、プレベーキング温度、つまり、Pt電極の構造に
よって大きく変化することが分かる。いいかえると、P
tバルク材料の線膨張係数の異なる4つの振る舞いに対
応して、PZT薄膜の配向性は、Iの温度範囲(20
0℃以下)で基板のプリベーキングを行った場合(Pt
下部電極が一枚板状の領域)において、as−grow
nのサンプル(試料A)で、(111)を含む(10
0)優先配向になっている。プリベーキング温度が20
0℃のサンプルでは、as−grownのサンプル(試
料A)と比較して(111)が強くなり、同時に(10
0)が弱くなっているが、IIの温度範囲に近くなるため
に、以下で説明するように(111)成分が強くなった
ためと考えられる。
【0039】IIの温度範囲(250〜540℃)で基
板のプリベーキングを行った場合(Pt下部電極が若干
の柱状構造を持ち始めた一枚板状の領域)において、プ
リベーキング温度が300℃(試料B)、400℃、5
00℃のサンプル全てで、ほとんど(111)単一配向
であった。 IIIの温度範囲(540〜660℃)で基板のプリベ
ーキングを行った場合(Pt下部電極が柱状構造の領
域)における試料C(プレベーキング温度が600℃)
で、(110)優先配向である。 IVの温度範囲(660℃以上)で基板のプリベーキン
グを行った場合(Pt下部電極が所々に凹凸を持つ粒状
構造の領域)における試料D(プレベーキング温度が7
00℃)で、(110)優先配向を保っているが、7種
のサンプルの中で最も低い結晶性を示した。
【0040】実施例2:キャパシタの作製 図7に示したように、実施例1における7種のPt電極
13を下部電極とし、この下部電極上に強誘電体薄膜1
4が形成された(7種の)シリコン基板10上に、膜厚
100nm程度のPt上部電極15をそれぞれ形成し、
強誘電体薄膜14がPt電極13とPt電極15との間
に挟まれたキャパシタを作製した。これらキャパシタの
強誘電特性を評価した。
【0041】7種のキャパシタの強誘電性ヒステリシス
特性を図8〜図14に示す。図8〜図14では、最大印
加電圧1、2、3、4、5V印加時のヒステリシス曲線
を重ねて示した。それぞれ、配向性(プリベーキング温
度範囲)によって異なった特性を示している。この中か
ら、それぞれの配向(プリベーキング温度範囲)のうち
代表的なサンプルとして試料A、B、C、Dを選んで、
それぞれの最大印加電圧に対して、抗電圧Ecと残留分
極Prとを測定した。その結果を図15(a)及び図1
5(b)に示す。
【0042】図15(a)及び図15(b)から明らか
なように、残留分極Prが最も小さな電圧で飽和するの
は試料A(as−grown)であり、2Vの最大印加
電圧で飽和している。残留分極値Prが最も大きいのは
試料B(300℃プリベーキング)であり、30μC/
cm2以上の値をもち、飽和特性も比較的良好で、最大
印加電圧3V以上でほぼ飽和している。試料C(600
℃プリベーキング)においては、残留分極Pr、抗電界
Ec共に、飽和傾向は見られず、最大印加電圧の上昇と
ともに増加する。ただし、その抗電界Ecは最も小さ
く、残留自発分極Prは比較的大きく、ほぼ20μC/
cm2の値をもっている。試料D(700℃プリベーキ
ング)は、結晶性の低さを反映して、小さな残留分極P
rと大きな抗電界Ecをもっている。
【0043】試料A、B、Cに対して最大印加電圧5V
を印加したときの強誘電性ヒステリシスを重ね合わせた
ものを図16(a)に示す。試料Bが最も大きな残留自
発分極Prを有しており、かつ、ヒステリシス曲線の角
型性も最も良好である。試料Aと試料Bとのヒステリシ
ス曲線は重なり合っているように見えるが、両者の飽和
特性は大きく異なっており、これはたまたま最大印加電
圧5V印加時のヒステリシス曲線が非常に似通ったもの
になったというだけのことである。試料CとDとに最大
印加電圧5Vを印加したときの強誘電性ヒステリシス曲
線を図16(b)に示す。試料Dのヒステリシス曲線
は、明らかに結晶性の低さを反映している。
【0044】以上から分かるように、下部電極材料の熱
膨張係数の異なる振る舞いと、それに伴う電極材料の構
造変化と、その上に形成された強誘電体薄膜の配向性の
変化とには、それぞれ相関がある。したがって、強誘電
体薄膜を成膜する前に、下部電極となる材料の線膨張係
数の振る舞いを測定し、それに応じてプレベーキングを
行うことによって、強誘電体薄膜の配向性ならびに強誘
電特性を制御することが可能である。この配向制御のメ
カニズムには、強誘電体薄膜に働く応力が大きくかかわ
っているものと推察される。
【0045】実験例で説明したように、下部電極の線膨
張係数は、Iの温度範囲(250℃以下)においては
正の値を取り、温度上昇とともに増大し、IIの温度範
囲(250〜540℃)においては正の一定値をとり、
全温度範囲中で最も大きな値となり、IIIの温度範囲
(540〜660℃)においては、負の値をもち、IV
の温度範囲(660℃以上)においては、正の小さな値
をもつ。それぞれの温度範囲でプレベーキング処理を行
った下部電極は、そのプレベーキング温度における結晶
構造を保有するようになるため、その後の焼成過程にお
ける線膨張係数は、バージン状態の値ではなく、プレベ
ーキング温度における値に近い値になるものと推察され
る。
【0046】実施例1の強誘電体薄膜の焼成過程の際に
は、PZT薄膜は結晶化して、体積の収縮が起こる。そ
れに対して、上述の、、、のそれぞれのプリベ
ーキング処理を施された下部電極のうち、線膨張係数が
正の値をもつ、、の処理を行った試料の下部電極
は焼成過程において伸長する働きをするため、PZT薄
膜に引っ張り応力を発生させる。線膨張係数が負の値を
もつの処理を行った試料の下部電極は焼成過程におい
て収縮する働きをするため、PZT薄膜の収縮を助長す
るか、引っ張り応力を発生させるとしても弱い引っ張り
応力しか発生させない。
【0047】より詳細に説明すると、Iの温度範囲で
プリベーキングを行った試料においては、熱膨張係数が
正であり、プリベーキング温度上昇とともに大きな値と
なるため、プリベーキング温度上昇とともに大きくなる
引っ張り応力がPZT薄膜に働く。IIの温度範囲でプ
リベーキングを行った試料においては、熱膨張係数が正
の一定値で、最も大きな値をとるため、プリベーキング
温度によらず、最も大きな一定の引っ張り応力がPZT
薄膜に働く。IVの温度範囲でプリベーキングを行った
試料においては、熱膨張係数が小さな正の値であるた
め、小さな引っ張り応力しかPZT薄膜に働かない。7
00℃においてプリベーキング処理を行った試料Dにお
いては、焼成温度700℃では下部電極からPZT薄膜
に与える影響が全くないと考えられる。この結果、試料
Dにおいては、結晶性、配向性、強誘電特性が劣ったも
のになったと思われる。 IIIの温度範囲でプリベーキングを行った試料におい
ては、熱膨張係数が負の値であるため、PZT薄膜に引
っ張り応力が働いたとしても、弱い引っ張り応力しか働
かない。以上の考察は、プリベーク温度とXRDピーク
強度との関係、特に、(111)強度との関係を良く説
明することができる。
【0048】下部電極の熱膨張係数が正の値をとる場合
(I、II、IV)には、PZT薄膜に引っ張り応力が働
き、(111)配向成分が発生し、その大きさは、熱膨
張係数の大きさに比例する。つまり、Iの温度範囲で
プリベーキングを行った試料においては、プリベーキン
グ温度上昇とともに大きくなる引っ張り応力がPZT薄
膜に働くため、プリベーキング温度の上昇とともに、
(111)配向成分が大きくなる。IIの温度範囲でプ
リベーキングを行った試料においては、プリベーキング
温度によらず、最も大きな一定の引っ張り応力がPZT
薄膜に働くため、ほぼ一定の最大(111)配向成分が
発生する。IVの温度範囲でプリベーキングを行った試
料においては、小さな引っ張り応力しかPZT薄膜に働
かないため、(111)配向成分は極めて小さい。
【0049】また、IIIの温度範囲でプリベーキング
を行った試料においては、熱膨張係数が負の値をとり、
この場合には(110)配向成分が発生する傾向があ
る。さらに、熱膨張係数の値が正負にかかわらず、プリ
ベーキング温度によって変化する温度範囲(I、III)
においては、(100)配向成分が発生する。
【0050】実施例3:電極Irの電極Ptとの比較 この実施例においては、PtとともにPZTの下部電極
としてよく用いられているIr電極を用いた場合のPZ
T薄膜の配向性を調べるために、Pt被覆基板を使用し
た場合と同様の技術を用いて、Ir被覆基板上へPZT
薄膜を成膜した。Ir被覆基板の構造は、電極がIrで
あるという点を除けば、図3と同様である。このIr被
覆基板を、Pt被覆基板の場合と同様に、プリベークな
し(as−grown)で、又は300℃及び600℃
にて30分間、N2雰囲気中でプリベークを行った。
【0051】次いで、実施例1と同一のPZT原料溶
液、同一の成膜条件にて、PZT薄膜を成膜した。得ら
れたPZT薄膜の膜厚は、ほぼ250nmであった。I
r被覆基板上のPZT薄膜において、プリベークなしの
基板を用いた場合のXRDパターンを図17に示す。プ
リベーク温度300℃、600℃の基板を用いた場合に
おいても、同様の結果が得られた。つまり、Ir被覆基
板上PZT薄膜の場合、プリベーク条件にかかわらず、
(100)及び(111)成分が混在する(110)優
先配向膜が得られた。
【0052】実施例1に示したように、Pt電極は、プ
リベーク温度によって異なった構造を有し、その上部に
形成したPZT薄膜に、それぞれ異なった応力を与える
ことで、上部のPZT薄膜の配向性を変化させる働きを
もつ。一方、Ir電極は、Pt電極と異なり、プリベー
ク温度にかかわらず、常に柱状構造をとることが確認さ
れた。
【0053】つまり、Ir電極の場合には、プリベーク
温度にかかわらず、常に、600℃でプリベークを行っ
た柱状Pt電極上のPZT薄膜と同様の(110)に優
先配向したランダム配向PZT薄膜が得られると考えら
れる。さらに、図5のPt電極上のPZT薄膜のXRD
パターンと、図17のIr電極上のPZT薄膜のXRD
パターンとを比較すると、Ir電極上のPZT薄膜の方
が、非常に結晶性が弱いことが分かる。Ir電極は、P
t電極と比較してPZT薄膜に与える引っ張り応力が弱
いためと考えられる。
【0054】Irは極めて脆い金属で棒状に加工するこ
とが困難であった。そのため、実験例と同様の線膨張の
温度依存性を測定することはできなかった。代わりに、
塊状のIrを加熱容器内に設置して加熱し、その寸法の
温度依存を非接触変位計で観測した。観測された寸法の
変化は、Ptの線膨張係数に比較して小さく、また、実
験例で観察されたPtのような複数の温度範囲で明確に
区分された異なる膨張特性は観察されなかった。これ
は、Irが酸化されやすい物質であるということに関係
するかもしれない。いずれにしろ、Ir電極はPZT薄
膜に与える応力が小さく、一定であるため、弱い(11
0)配向PZT薄膜が得られたものと考えられる。
【0055】実施例4:積層電極構造 図5のPt電極上のPZT薄膜のXRDパターンから
は、Pt電極上のPZT薄膜は、常に、常誘電体パイロ
クロア相を含んでいることが分かる。この結果は、PZ
T薄膜表面からPb成分が揮発してしまったり、Ptは
触媒として用いられるほど活性な金属であるため、PZ
T薄膜とPt電極との界面部分においてPt電極の強い
触媒作用が起こり、Pb-Pt等の合金化等によりPZ
T薄膜中からPb成分が減少してしまったことが原因と
考えられる。これに対して、Ir電極上のPZT薄膜
は、図17から分かるように、PZT薄膜のピーク強度
が全体的に弱いものの、常誘電体パイロクロア相をほと
んど含んでいない。すなわち、Ir電極上のPZT薄膜
はPbの組成ずれが小さいものと推察される。そこで両
者の特徴を併せもった積層電極構造を検討し、その上に
PZT薄膜の成膜を行った。
【0056】まず、膜厚200nmのPt被覆基板に
プリベークなし(as−grown)か、300℃及び
600℃で30分間、N2雰囲気中でプリベークした
後、室温にて、膜厚20nmのIr電極をスパッタ法に
より形成したものを積層電極被覆基板とし、その上にP
ZT薄膜の形成を行った。
【0057】すなわち、Pt電極からの応力によりPZ
T薄膜の配向性を制御するとともに、良好な結晶性を確
保し、さらに、PZTの組成変化に由来する常誘電体パ
イロクロア相の生成を抑制し、かつ、Ir電極によるP
ZT疲労耐性向上を図ることを目的とした。各プリベー
キング処理を行なった積層電極被覆基板上にPZT薄膜
の形成を行ったところ、プリベークなしでは(100)
優先配向、300℃でのプリベークでは(111)単一
配向、600℃でのプリベークでは(110)優先配向
のPZT薄膜が得られ、それぞれ良好な結晶性を示して
いることが分かった。同時に、いずれの基板を用いた場
合も、ほとんど常誘電体パイロクロア相を含んでいない
ことが分かった。
【0058】図18に、300℃にてプリベーキング処
理を行なった積層電極被覆基板上に形成したPZT薄膜
のXRDパターンを示す。図17に示したIr電極の場
合のとは全く異なり、図5に示したPt電極を300℃
でプリベーキング処理を行なった場合と、類似の(11
1)単一配向のパターンの得られていることがよくわか
る。しかも、ほとんど常誘電体パイロクロア相を含んで
いなかった。また、これらの試料で得られた強誘電ヒシ
テリシス特性も、Pt電極の場合と同様の印加電圧依存
性を示した。
【0059】例えば、最大印加電圧5Vにおいて、プリ
ベーキングなし又は300℃にてプリベーキング処理を
行なった積層電極被覆基板上に形成したPZT薄膜にお
いて、それぞれ、約20μC/cm2及び約30μC/
cm2の残留分極値が得られた。
【0060】Pt被覆基板上に形成したPZT薄膜と、
Ir/Pt積層電極被覆基板上に形成したPZT薄膜と
の疲労耐性を、図19に示す。図19では、初期値でノ
ルマライズした反転電荷を表す。1012回の繰り返しに
よって、反転電荷が、Pt被覆基板上に形成したPZT
薄膜ではほとんど消滅するのに対し、Ir/Pt積層電
極被覆基板上に形成したPZT薄膜では、数%以内の減
少にとどまることがわかる。このように、積層電極構造
を用いることで常誘電体パイロクロア相をまったく含ま
ずに、かつ良好な結晶性を有したPZT薄膜を、任意に
配向性を制御して得ることが可能となり、また、疲労耐
性を大幅に改善することができた。
【0061】これまでに酸化物電極上のPt電極構造は
知られているが、この場合、常誘電体パイロクロア相が
発生しやすいため、PZTゾルゲル溶液の組成制御が難
しく、たとえパイロクロア相が存在しなかったとして
も、やはりPt電極被覆基板とPZT薄膜との界面の膜
組成と、界面以外の膜組成とが異なってしまうため、強
誘電体メモリ動作においては、空間電荷を生じ易く、こ
の結果、反電界によってピンニングを生じ、強誘電特性
が劣化し易いという欠点をもつ。しかし、積層電極構造
を用いることで、このような欠点を解決することが可能
となる。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、電極で被覆された基板
をプリベーキングすることにより、電極上に形成される
強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性を制御すること
が可能となる。特に、プレベーキング温度を、電極材料
の温度による熱膨張係数の変化に応じて設定することに
より、その上に形成される酸化物強誘電体薄膜の結晶性
及び/又は配向性を制御することができる。また、酸化
物強誘電体薄膜をゾルゲル法により成膜し、結晶化する
場合には、半導体プロセスと整合した温度範囲で酸化物
強誘電体薄膜の形成が可能になる。
【0063】特に、酸化物強誘電体薄膜の結晶化を、酸
化物強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性に影響を与
えない温度及び時間での熱処理にて行うことにより、下
部電極の熱膨張特性の違いを利用して、その上に形成さ
れた強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性が結晶化に
よって損なわれることがない。さらに、結晶化の温度
が、プリベーキングの温度よりも低い温度である場合に
は、下部電極の熱膨張特性の違いを利用して、その上に
形成された強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性が結
晶化によって損なわないことを確実にする。また、プリ
ベーキングを、正の熱膨張係数を有する温度範囲で行う
ことにより、(111)単一配向の強誘電体薄膜を形成
することができる。さらに、プリベーキングを、負の熱
膨張係数を有する温度範囲で行うことにより、緻密で平
滑な強誘電性薄膜を形成することができる。
【0064】また、電極を、その上に形成する酸化物強
誘電体薄膜に常誘電体パイロクロア相を生じさせないで
導電性材料で形成することにより、良好な結晶性を有
し、任意に配向性が制御され、かつ、分極反転疲労耐性
に優れた酸化物強誘電体薄膜の製造が可能になる。さら
に、電極を、室温から700℃までにおいて、複数の温
度範囲で明確に区分されるそれぞれ異なる膨張特性をも
つ導電性材料で形成する場合には、電極の熱膨張特性の
違いを利用して、その上に形成される強誘電体薄膜の結
晶性及び/又は配向性を制御することができる。
【0065】また、本発明によれば、電極が、少なくと
もPt及びIrを含む場合には、電極の上に形成される
強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性が制御されると
ともに、分極反転疲労耐性に優れた酸化物強誘電体薄膜
の形成が可能になる。さらに、強誘電体薄膜がPZTで
ある場合には、20μC/cm2から30μC/cm2とい
う大きな残留分極値を持つ強誘電体メモリが実現可能に
なり、1Mbit以上の容量をもつ強誘電体メモリの実
現が可能になる。また、抗電界値が30kV/cmから
60kV/cmの範囲にある場合には、バルク並みの抗
電界が得られるために、強誘電体メモリの書き換えが低
電圧において容易に行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】線膨張係数の測定に使用したPt円柱棒の模式
図である。
【図2】図1のPt円柱棒の線膨張の温度依存曲線図で
ある。
【図3】Pt電極被覆基板の構造を示す概略断面図であ
る。
【図4】本発明の酸化物強誘電体薄膜被覆基板の構造を
示す概略断面図である。
【図5】図4における酸化物強誘電体薄膜のXRDパタ
ーン図である。
【図6】プリベーキング温度と酸化物強誘電体薄膜のX
RDピーク強度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の酸化物強誘電体薄膜被覆基板を用いて
作製したキャパシタの構造を示す断面図である。
【図8】電極をプリベークすることなく作製したキャパ
シタの強誘電ヒステリシス特性図である。
【図9】電極を200℃でプリベークして作製したキャ
パシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図10】電極を300℃でプリベークして作製したキ
ャパシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図11】電極を400℃でプリベークして作製したキ
ャパシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図12】電極を500℃でプリベークして作製したキ
ャパシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図13】電極を600℃でプリベークして作製したキ
ャパシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図14】電極を700℃でプリベークして作製したキ
ャパシタの強誘電ヒシテリシス特性図である。
【図15】強誘電ヒステリシス特性に基づくキャパシタ
の(a)抗電界及び(b)残留自発分極と最大印加電圧
との関係図である。
【図16】強誘電ヒステリシス特性に基づくキャパシタ
の強誘電ヒステリシス特性図である。
【図17】Ir電極上に作製された酸化物強誘電体薄膜
のXRDパターン図である。
【図18】Ir/Pt電極上に作製された酸化物強誘電
体薄膜のXRDパターン図である。
【図19】Ir/Pt電極を用いて作製したキャパシタ
の疲労特性図である。
【符号の説明】
10 シリコン単結晶基板 11 SiO2膜 12 タンタル膜 13 Pt電極 14 酸化物強誘電薄膜 15 Pt電極

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極で被覆された基板をプリベーキング
    し、得られた電極上に酸化物強誘電体薄膜を形成するこ
    とを特徴とする酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 電極を、温度によって線膨張係数が変化
    する少なくとも1種の導電性材料で形成し、かつプリベ
    ーキング温度を、前記導電性材料の温度による熱膨張係
    数の変化に応じて設定することにより、その上に形成さ
    れる酸化物強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性を制
    御する請求項1に記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 電極を構成する導電性材料が、室温から
    700℃程度の温度範囲において、複数の温度範囲で明
    確に異なる膨張特性を有する請求項2に記載の酸化物強
    誘電体薄膜被覆基板の製造方法。
  4. 【請求項4】 酸化物強誘電体薄膜をゾルゲル法により
    成膜した後、結晶化する請求項1〜3のいずれか1つに
    記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 酸化物強誘電体薄膜の結晶化を、酸化物
    強誘電体薄膜の結晶性及び/又は配向性に影響を与えな
    い温度及び時間での熱処理にて行う請求項4に記載の酸
    化物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 結晶化の温度が、プリベーキングの温度
    よりも低い温度である請求項5に記載の酸化物強誘電体
    薄膜被覆基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 プリベーキングを、電極を構成する導電
    性材料が正の熱膨張係数を有する温度範囲で行なう請求
    項1〜6のいずれか1つに記載の酸化物強誘電体薄膜被
    覆基板の製造方法。
  8. 【請求項8】 プリベーキングを、電極を構成する少な
    くとも1種の導電性材料が負の熱膨張係数を有する温度
    範囲で行なう請求項1〜6のいずれか1つに記載の酸化
    物強誘電体薄膜被覆基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 電極を、その上に形成される酸化物強誘
    電体薄膜に常誘電体パイロクロア相を生じさせない導電
    性材料を、温度によって線膨張係数が変化する少なくと
    も1種の導電性材料の上に積層して形成する請求項1〜
    8のいずれか1つに記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1つに記載の
    方法により形成されてなる酸化物強誘電体薄膜被覆基
    板。
  11. 【請求項11】 電極が、少なくともPt及びIrを含
    んで構成される請求項10に記載の酸化物強誘電体薄膜
    被覆基板。
  12. 【請求項12】 酸化物強誘電体薄膜が、PZTである
    請求項10又は11に記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基
    板。
  13. 【請求項13】 酸化物強誘電体薄膜の結晶配向が、実
    質的に(111)単一配向である請求項10〜12のい
    ずれか1つに記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板。
  14. 【請求項14】 酸化物強誘電体薄膜の残留分極値が、
    20μC/cm2から30μC/cm2の範囲にある請求項
    10〜13に記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板。
  15. 【請求項15】 酸化物強誘電体薄膜の抗電界値が、4
    0kV/cmから60kV/cmの範囲にある請求項10
    〜14に記載の酸化物強誘電体薄膜被覆基板。
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