JP2000159877A - ポリブチレンナフタレートの製造方法 - Google Patents

ポリブチレンナフタレートの製造方法

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JP2000159877A
JP2000159877A JP10340174A JP34017498A JP2000159877A JP 2000159877 A JP2000159877 A JP 2000159877A JP 10340174 A JP10340174 A JP 10340174A JP 34017498 A JP34017498 A JP 34017498A JP 2000159877 A JP2000159877 A JP 2000159877A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生成ポリマーの熱安定性、耐加水分解性、色
調が良好で、かつ溶融重合並びに固相重合速度が高いポ
リブチレンナフタレートの製造方法を提供する。 【解決手段】1,4−ブタンジオールを主成分とするグ
リコール成分と、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主
成分とする二官能性カルボン酸又は2,6−ナフタレン
ジカルボン酸ジメチルを主成分とする二官能性カルボン
酸の低級アルキルエステル成分とを反応させポリブチレ
ンナフタレートを製造するに際し、重合触媒として、
[A]チタン化合物及び[B]該チタン化合物のチタン
に対しマグネシウムとして0.5〜3モル倍のマグネシ
ウム化合物を存在させ、かつ温度260℃未満で溶融重
合を行うことを特徴とするポリブチレンナフタレートの
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱安定性等の物性
に優れたポリブチレンナフタレートの製造方法に関する
ものである。詳しくは、特定の重合触媒の組合せでかつ
比較的低い温度条件で溶融重合を行うことよりなる熱安
定性等に優れたポリブチレンナフタレートの製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリブチレンナフタレート(以下、PB
Nと称することもある)は結晶化速度が高く、成形性に
優れているため、エンジニアリングプラスチックとして
有用で大きな市場を形成している。
【0003】しかしながら、PBNはその分子構造上、
熱安定性が必ずしも十分でなく、特に重合触媒のチタン
化合物が存在すると、分解反応が促進され、末端COO
H基の濃度が増大し、耐加水分解性が悪化し、また、着
色等の色調も悪くなるという問題があった。更に、PB
Nは熱安定性に劣るため、溶融成形時の熱に基因して成
形後の製品の末端COOH基の増加が大きく、そのた
め、製品の耐加水分解性が一層劣るようになるという問
題があり、加えて成形後の分子量の低下も激しいので力
学特性が更に悪化するという問題もあった。
【0004】ポリブチレンテレフタレート(PBT)に
ついては、耐加水分解性や熱安定性、更には色調を改良
するために、次亜燐酸塩等を用いる方法が提案されてい
る(特公昭57−85818号公報、特開平5−230
201号公報)。これらの方法によると、耐加水分解
性、熱安定性、色調をある程度改良できるとしても、溶
融重合における反応速度の低下を招き、生産性をダウン
させるという問題があった。又、特公昭56−3934
0号公報においては、重合温度260℃で、チタン化合
物に0.1〜5倍のマグネシウムの弱酸塩化合物を併用
して重合する方法が記載されているが、重合温度が26
0℃と高いために末端COOH基が増大して製品の耐加
水分解性が悪化したり、末端ビニル基が増大することに
よって、固相重合性が低下し、そのため高分子量の重合
体が製造できない難点があった。特公昭57−1475
16号公報においては、重合温度270℃においてチタ
ン化合物にアルカリ性金属化合物を一緒に用いて重合す
る方法が記載されているが、得られるポリマーの耐加水
分解性、熱安定性、色調等の点で必ずしも十分満足でき
るものではなかった。
【0005】先に、本発明者等は、PBTについて、重
合触媒としてTi化合物とMg化合物の組合せの触媒系
を提案し(特開平8−20638号公報)、またポリヘ
キサメチレンテレフタレート(PHT)に関してもTi
化合物とMg化合物の組合せの触媒系を提案している
(特開平7−216066号公報)。他方、特公昭53
−25695号公報、特公昭53−25696号公報で
は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に関し、M
g化合物とTi化合物の組合せからなる触媒が示されて
いるものの、その具体的実施例では、Mn化合物、Mg
化合物及びTi化合物の3元系の触媒が使用されている
に過ぎない。これらの特許は、いずれもPBT、PH
T、PETに関するものであり、これらとは重合反応性
が異なるPBNについては何等言及されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、溶融
重合における反応速度が高く、生成したPBNはその末
端ビニル基の濃度が低く、そのため得られたPBNの固
相重合性も高く、かつ末端COOH基の濃度が低く、耐
加水分解性や熱安定性が良好で、優れた色調のPBNを
製造する方法を提供することにあり、特に成形に際して
溶融状態においた時に、熱安定性が良いために、成形後
の末端COOH基の増大が小さく、また分子量の低下度
も小さいPBNを製造するための方法を提供しようとす
るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の問題を解
決するためになされたものであり、そのの要旨は、1,
4−ブタンジオールを主成分とするグリコール成分と、
2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とする二官能
性カルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメ
チルを主成分とする二官能性カルボン酸の低級アルキル
エステル成分とを反応させポリブチレンナフタレートを
製造するに際し、重合触媒として、[A]チタン化合物
及び[B]該チタン化合物のチタンに対しマグネシウム
として0.5〜3モル倍のマグネシウム化合物を存在さ
せ、かつ温度260℃未満で溶融重合を行うことを特徴
とするポリブチレンナフタレートの製造方法に存する。
【0008】本発明方法の好ましい態様は、上記方法に
おいて該チタン化合物がテトラアルキルチタネートであ
ること、及び該マグネシウム化合物が酢酸マグネシウ
ム、水酸化マグネシウム又はマグネシウムアルコキサイ
ドの少なくとも一種であることに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるグリコール成分としては、
1,4−ブタンジオールを主たる対象とするが、エチレ
ングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペ
ンチルグリコール、へキサメチレングリコール、デカメ
チレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエ
チレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オ
キシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコ
ール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコー
ルの1種、または2種以上を混合してもよく、目的によ
り任意に選ぶことができる。さらに少量のグリセリンの
ような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量の
エポキシ化合物を用いてもよい。
【0010】本発明において用いられる二官能性カルボ
ン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸を
主成分とするが、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェ
ニルジカルボン酸等の芳香族のジカルボン酸、アジピン
酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカル
ボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカル
ボン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混
合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。二
官能性カルボン酸の低級アルキルエステルとしては、
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主成分とす
るが、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカル
ボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステ
ル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン
酸の低級アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、
コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級アル
キルエステル等が挙げられ、これらの1種または2種以
上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができ
る。又、少量のトリメリツト酸のような三官能性以上の
カルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリツト酸の
ような酸無水物を少量使用してもよい。また、乳酸、グ
リコール酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアル
キルエステル等を少量使用しても良い。
【0011】低級アルキルエステル成分としては、メチ
ルエステルを主成分とするが、エチルエステル、プロピ
ルエステル、ブチルエステル等の1種、または2種以上
を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができ
る。本発明のPBNは、通常75モル%以上の1,4−
ブチレンナフタレート結合を有しているものであり、好
ましくは85モル%以上の1,4−ブチレンナフタレー
ト結合を有しているものであり、より好ましくは、90
モル%以上の1,4−ブチレンナフタレート結合を有し
ているものである。
【0012】本発明において重合触媒成分として用いら
れるチタン化合物は、テトラアルキルチタネートが好ま
しく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、
テトライソプロピルチタネート、テトラーn−ブチルチ
タネート、テトラ−t一ブチルチタネート、テトラフェ
ニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テ
トラベンジルチタネート、あるいはこれらの混合チタネ
ートである。これらのうち特にテトラ−n−プロピルチ
タネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n
−ブチルチタネートが好ましく、テトラ−n−ブチルチ
タネートが最も好ましい。又、これらのチタン化合物の
2種以上を併用して用いてもよい。チタン化合物の添加
量はチタン量として生成PBNに対して10−200p
pm、好ましくは15−150ppm、より好ましくは
20〜130ppmである。
【0013】本発明の重合触媒において用いられるマグ
ネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム、水酸化マ
グネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マ
グネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のマ
グネシウムアルコキサイド(アルコキシマグネシウ
ム)、燐酸水素マグネシウム等が挙げられ、好ましくは
酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム又はマグネシウ
ムアルコキサイドであり、特に重合速度や1,4−ブタ
ンジオールヘの溶解性(異物生成)等の点で酢酸マグネ
シウムが最も好ましい。
【0014】チタン化合物に添加するマグネシウムの量
は、金属の原子比、即ち、Mg/Tiの比で表して0.
5〜3.0である。Mg/Ti<0.5の場合には、重
合速度の向上が十分でなく、生成PBNの末端COOH
基の濃度が高く、かつ色調が悪化するので好ましくな
い。Mg/Ti>3.0の場合には、重合速度が同一金
属量見合いで低下すると共に、生成PBNの耐加水分解
性や色調も悪化するので好ましくない。Mg/Ti比は
より好ましくは0.7〜2.5、最も好ましくは0.8
5〜2.0である。この場合、色調はTiのみの場合よ
りも向上する。
【0015】本発明においては、1,4−ブタンジオー
ル成分を主成分とするアルキレングリコール(アルカン
ジオール)成分と2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメ
チル成分を主成分とする二官能性カルボン酸の低級アル
キルエステル成分とのエステル交換反応工程、または、
1,4−ブタンジオール成分を主成分とするアルキレン
グリコール成分と2,6−ナフタレンジカルボン酸成分
を主成分とする二官能性カルボン酸とのエステル化反応
工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由してPBN
の製造を行うが、これらの反応条件は重合触媒及び溶融
重合時の温度を除いて、特に限定されるものでなく、公
知の反応条件がそのまま適用される。
【0016】例えば、エステル交換反応時のアルキレン
グリコール成分/二官能性カルボン酸の低級アルキルエ
ステル成分のモル比は2.0以下、好ましくはl.0〜
1.6とし、エステル交換反応として180〜260
℃、好ましくは190〜255℃で、2〜4時間行われ
る。また、直接エステル化の場合は、アルキレングリコ
ール成分/二官能性カルボン酸成分のモル比は2.5以
下、好ましくはl.6〜2.2とし、エステル化応とし
て180〜260℃、好ましくは190〜255℃で、
2〜4時間行われる。次いで重縮合反応を行うが、その
条件は通常、3Torr以下の減圧下、260℃未満温
度、好ましくは220〜260℃未満、更に好ましくは
230〜260℃未満の温度である。また、重合時間は
2〜6時間である。重合度が増大する重合後期において
は、攪拌によるシェア発熱が伴うこともあるので設定温
度に注意して内温を260℃未満に制御することが好ま
しい。
【0017】チタン化合物の添加時期はエステル交換の
開始時、エステル交換中、エステル交換後、重縮合時等
ありうるが、エステル交換開始時と重縮合反応前に分割
して添加するのが好ましい。マグネシウム化合物の添加
時期もエステル交換の開始時、エステル交換中、エステ
ル交換後、重縮合時等ありうるが、エステル交換終了
時、重合開始前に添加するのが重合活性及ぴ色調等の点
で好ましい。
【0018】例えば、アルキレングリコールと2,6−
ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主成分とする二官能
性カルボン酸の低級アルキルエステル成分とのエステル
交換反応の場合においては、エステル交換触媒としてチ
タン化合物を使用することが好ましい。即ち、エステル
交換法の場合は、エステル交換触媒として、チタン化合
物を使用し、エステル交換後、重合反応以前にマグネシ
ウム化合物添加と更にチタン化合物を追加添加するのが
好ましい。2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分と
する二官能性カルボン酸とアルキレングリコールとのエ
ステル化反応の場合には、重縮合反応時にチタン化合物
とマグネシウム化合物を添加するのがよい。この場合、
エステル化時、又は重合時にスズ化合物や亜鉛化合物等
を添加してもよい。
【0019】本発明においては、溶融重合における反応
温度(内温)は260℃未満で行うことが必要で、特に
溶融重合終了時(末期)の内温を260℃未満で行うこ
とが重要である。260℃以上になると生成ポリマーの
末端ビニル基が大幅に上昇し、溶融重合後に、更に重合
度を高めたり、低ガス化や、低オリゴマー化のために固
相重合を行う場合、固相重合速度が低く、生産性が低下
してしまう。また、末端COOH基も増大し、却って重
合速度が低下したり、耐加水分解性が悪化する。重合温
度は257℃以下がより好ましく、更に好ましくは25
5℃以下である。この場合、溶融重合速度が高いために
増し仕込みを行うことが可能となり、生産性の向上にも
寄与することができる。
【0020】上述したように、本発明はPBNの製造に
おいて、重合触媒としてチタン化合物とマグネシウム化
合物とを用い、チタン化合物におけるチタンの量に対す
るマグネシウム化合物におけるマグネシウムの量を特定
の割合にして、チタン化合物の使用量を低減し、同時に
溶融重合における反応温度を比較的低く、即ち260℃
未満にすることにより、重合速度を低下させることなし
に得られるポリマーの末端カルボキシル基やビニル基の
増大化を防ぎ、耐加水分解性、耐熱性および色調に優れ
たポリエステルが得られることを見出したことに基づく
ものである。
【0021】本発明方法によれば、重合活性が高く、固
有粘度や固相重合性が改善された高分子のPBNを製造
することができる。その理由としては、マグネシウム化
合物の添加によりマグネシウム化合物とチタン化合物と
の相互作用が生じ、チタン触媒の配位・結合構造が変化
し、反応中、反応原料の分子がTi原子と相互作用でき
るような主反応の特定活性サイトを生じやすくする特定
の構造が形成され、また、同相互作用によりチタン触媒
の酸塩基性が変化することが考えられる。このことは、
X線吸収端微細構造解析(XAFS:X-ray Absorptio
n fine structure)のX線近吸収端構造(XANES:
X-ray Absorption Near-Edge Structure)の測定結果か
ら推定される。
【0022】PBNのXANESスペクトルにおいて、
Tiの1sから3d軌道への遷移過程に帰属されるプリエ
ッジピーク(4.965〜4.972keV付近の主ピーク)の強度
は、Ti単独の触媒系よりも、Ti化合物にマグネシウ
ム化合物を添加した触媒からのものの方が大きい。これ
は、Ti元素近傍の配位・結合原子の点対称なオクタヘ
ドラル構造が歪んでいる証拠であり、Tiへの配位数の
減少が推定され、反応原料の分子がTi原子と相互作用
できるような活性サイトが出来ていると推定されるので
ある。チタンの酸塩基性についてもXANESの結果よ
り推定されている。
【0023】さらにまた、本発明においては不要な副生
物の生成を抑えることができる。不要な副生物及び副反
応としては、末端ヒドロキシブチル基の種々の分解反応
によるテトラヒドロフランなどの発生やそれに伴うPB
Nの末端COOH基の生成や末端ビニル基の生成、およ
びエステル基の分解反応によるカルボキシル基の生成や
分子量の低下等がある。チタン触媒系へのマグネシウム
化合物の添加によりマグネシウム化合物とチタン化合物
との相互作用により、チタン触媒の特定サイトの酸性質
が抑制され、不要な副反応及びそれに伴う副生物が抑制
された良好な重合活性を有し、その結果として生成した
ポリマーは固相重合性、耐加水分解性、熱安定性、色調
等が良好であり、しかも溶融成形後の製品においても耐
加水分解性及び熱安定性に優れているのである。本発明
によるPBNの色調は、L値は85以上が好ましく、8
5未満であれば、色調が暗く好ましくない。b≦1.0
が好ましく、更に好ましくはb≦0.0である。
【0024】本発明方法で生成されるPBNでは、固有
粘度IVは機械的強度の点から通常IV≧0.5であ
り、成形性も考慮すると0.6≦IV≦2.0が好まし
く、より好ましくは0.7≦IV≦l.6である。本発
明のPBNにおいては、末端COOH基数は平均して4
5eq/トン以下、好ましくは、40eq/トン以下、
更に好ましくは、35eq/トン以下、最も好ましく
は、30eq/トン以下である。末端COOH基数が少
なくなると共に、耐加水分解性、熱安定性が向上する
し、また固相重合性も向上する。
【0025】生成PBNの末端ビニル基は、通常10e
q/トン未満である。未端ビニル基が10eq/トン未
満であれば、熱安定性にすぐれ、耐加水分解性、及ぴ固
相重合性に優れる。好ましくは、末端ビニル基は8eq
/トン以下、さらに好ましくは、末端ビニル基は6eq
/トン以下、最も好ましくは4eq/トン以下である。
末端ビニル基が10eq/トン以上であれば、熱安定性
に劣り、耐加水分解性に劣り、固相重合性が低い。
【0026】更に、本発明PBNは熱安定性に優れてい
るために、溶融成形時にも熱による分子量の低下や末端
COOH基の増大度合いが低く、その結果、製品の力学
特性や耐加水分解性の低下を招く度合が少ない。例え
ば、本発明PBNを270℃で1時間溶融処理した場
合、溶融処理後のIVを処理前のIVに対する割合で表
すIV保持率は70%以上である。また、処理後の末端
COOH基の増大は70eq/トン以下であり、好まし
くは60eq/トン以下、更に好ましくは50eq/ト
ン以下である。IV保持率が70%未満であれば、製品
の力学特性が低下し、末端COOH基の増加が70eq
/トンを超えると耐加水分解性が低下していずれも好ま
しくない。耐加水分解性に係わるプレッシャークッカー
テスト後のIV保持率は、80%以上が好ましく、83
%以上がより好ましく、84%以上が最も好ましい。8
0%未満であれば、耐加水分解性が悪く好ましくない。
【0027】本発明方法によると重合速度が従来法に比
べて大幅に向上するので、仕込量を増量したりして更に
生産性を向上することができる。一方仕込量を下げるこ
とも可能となり、その結果、更にPBNの末端COOH
基の濃度を下げることも可能になり、加えて色調もよく
なる。また、この末端ビニル基の少ないPBNを更に固
相重合する場合には、その固相重合速度が速く、良好な
固相重合を行うことができる。
【0028】その他、PBNの特性が損なわれない範囲
において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、
結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、紫外線吸収剤
等を添加してもよい。上記の重縮合で得たPBNを引き
続き常法に従って固相重合することもできる。固相重合
の条件は、通常、減圧下180〜240℃の温度で3〜
25時間程度である。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例
に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」と
あるものは、「重量部」を表す。本発明のPBNにおけ
る末端ビニル基、固有粘度lV、末端カルボキシル基、
色調、耐加水分解性、溶融重合性、固相重合性及び熱安
定性は以下の方法に基づき実施した。
【0030】(1) 末端ビニル基は、PBNをへキサ
フルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム=3
/7(vo1比)に溶解し、40OMHz H−NMR
で測定した値であり、1×106g(トン)当たりのビ
ニル基当量である。 (2) 固有粘度IVは、PBNをフェノール/テトラ
クロロエタン(1:1重量比)中、30℃で測定した溶
液粘度から求めたものである。
【0031】(3) 末端カルボキシル基[COOH]
は、PBNをベンジルアルコールに溶解し0.1N N
aOHにて滴定した値であり、1×106g当たりのカ
ルボキシル基当量である。 (4) 耐加水分解性は、平山製作所製プレッシャーク
ッカーテスト機を用いて120℃、加湿下(ゲージ圧:
1.1kg/cm2)でペレットを96時間処理(PC
T処理)し、処理前後のIVを測定し、IV保持率
[(処理後のIV)/(処理前のIV)×100]にて評
価を行った。
【0032】(5)色調は円柱状ペレットサンプルを用
いて日本電色工業(株)製測色色差計でL値、a値、b
値を測定した。 (6) 溶融重合性は、溶融重合後のIVを溶融重合時
間(Hr)で割った値IV/Hrで示した。
【0033】(7) 固相重合性は、230℃、減圧下
(1Torr以下)、4時間の固相重合後のIVを測定し、
[(固相重合後のIV)−(溶融重合後のIV)]を固
相重合時間(4時間)で割った固相重合速度として△I
V/Hrで示した。
【0034】(8) 熱安定性の評価は、枝付き試験管
にPBNを入れ、N2下270℃で1時間処理(溶融熱
安定性試験)後のIV及び末端COOH基を測定し、処
理前PBNのIV及び末端COOH基と対比した。即
ち、IVの保持率[(処理後のIV)/(処理前のI
V)×100]と末端COOH基数の差ΔCOOH[(処
理前の末端COOH基数)−(処理後の末端COOH
基)]により評価した。
【0035】実施例1 2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルl9
8.8部、1,4−ブタンジオール88.0部にテトラ
ブチルチタネート0.0156部(10ppmTi/ホ゜リマー)を
加え、190℃から255℃まで2時間30分かけて昇
温し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応終
了時に、酢酸マグネシウム・四水塩0.0968部(50
ppmMg/ホ゜リマー;モル比(Mg/Ti)=1.0)を1,4−ブ
タンジオールに溶解して添加し、引き続きテトラブチル
チタネート0.1405部(90ppmTi/ホ゜リマー)を添加
し、重縮合反応を開始した。
【0036】重縮合反応は常圧から1Torrまで85
分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度255℃
まで昇温し、以降所定重合温度、1Torrで継続し、
所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了しPBN
を取り出した。その際の重合時間、得られたPBNの固
有粘度,色調,溶融重合性、末端基(カルボキシル基、
ビニル基)、耐加水分解性及び溶融熱安定性を測定し、
その結果を表−1に示した。また、得られたPBNを2
30℃、1Torr以下で4時間固相重合を行い、得られた
ポリマーのIVを測定し、固相重合性の評価を行いその
結果を表ー1に示した。
【0037】実施例2 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を
0.0678部(35ppmMg/ホ゜リマー)に変更(Mg/Ti
=0.7 モル比)した以外は実施例1と同様にして反
応を行いPBNを得た。 実施例3 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を
0.242部(125ppmMg/ホ゜リマー)に変更(Mg/Ti
=2.5 モル比)した以外は実施例1と同様にして反
応を行いPBNを得た。
【0038】実施例4 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の代わりに
水酸化マグネシウムを0.0264部(50ppmMg/ホ゜リマ
ー)(Mg/Ti=1.0 モル比)添加した以外は実
施例1と同様にして反応を行いPBNを得た。
【0039】比較例1 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩を添加しな
い以外は実施例lと同様の反応を行ないPBNポリマー
を得た。
【0040】比較例2 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を
0.4840部(250ppmMg/ホ゜リマー)に変更(Mg/T
i=5.0 モル比)した以外は実施例1と同様にして
反応を行いPBNを得た。
【0041】比較例3 実施例1において酢酸マグネシウム・四水塩の添加を
0.0194部(10ppmMg/ホ゜リマー)に変更(Mg/Ti
=0.2 モル比)した以外は実施例1と同様にして反
応を行いPBNを得た。 比較例4 実施例1において重合温度(内温)を260℃に上げて
重合した以外は実施例1と同様にして反応を行いPBN
を得た。実施例2〜4及び比較例1〜4で得られたPB
Nポリマーにつき実施例1におけるのと同様にして各物
性の測定を行い、それぞれの結果を表−1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】本発明の方法によれば、重合速度が大き
い、即ち溶融重合性及び固相重合性のいずれも高いた
め、重合時間の短縮や増し仕込みが可能となり、生産性
を著しく向上することができる。又、本発明方法で得ら
れるPBNは末端COOH基や末端ビニル基が少ないた
めに、熱安定性、耐加水分解性及び色調に優れるという
特徴を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 倉田 保 三重県四目市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 (72)発明者 岸下 稔 三重県四目市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 Fターム(参考) 4J029 AA03 AB04 AB05 AC02 AD01 AE01 BA02 BA03 BA05 BA08 BA10 BF25 CA06 CB05A CB06A CB10A CC06A JA091 JA121 JA261 JB131 JB171 JC751 JE182 JF131 JF321 KB05 KB25 KD01 KD07 KE03 KE05 KE12 KF07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,4−ブタンジオールを主成分とする
    グリコール成分と、2,6−ナフタレンジカルボン酸を
    主成分とする二官能性カルボン酸又は2,6−ナフタレ
    ンジカルボン酸ジメチルを主成分とする二官能性カルボ
    ン酸の低級アルキルエステル成分とを反応させポリブチ
    レンナフタレートを製造するに際し、重合触媒として、
    [A]チタン化合物及び[B]該チタン化合物のチタン
    に対しマグネシウムとして0.5〜3モル倍のマグネシ
    ウム化合物を存在させ、かつ温度260℃未満で溶融重
    合を行うことを特徴とするポリブチレンナフタレートの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 該チタン化合物がテトラアルキルチタネ
    ートであることを特徴とする請求項1記載のポリブチレ
    ンナフタレートの製造方法。
  3. 【請求項3】 該マグネシウム化合物が酢酸マグネシウ
    ム、水酸化マグネシウム又はマグネシウムアルコキサイ
    ドの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又
    は2記載のポリブチレンナフタレートの製造方法。
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