JP2000154478A - 立毛調シート状物およびその製法 - Google Patents

立毛調シート状物およびその製法

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JP2000154478A
JP2000154478A JP33078498A JP33078498A JP2000154478A JP 2000154478 A JP2000154478 A JP 2000154478A JP 33078498 A JP33078498 A JP 33078498A JP 33078498 A JP33078498 A JP 33078498A JP 2000154478 A JP2000154478 A JP 2000154478A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、強度と柔軟性のみならずストレッチ
性をも併せ持つ立毛調シート状物およびその製法を提供
せんとするものである。 【解決手段】本発明の立毛調シート状物は、コイルバネ
状形態によりストレッチ性を付与せしめたヤーンからな
るスクリムと、0.6dtex以下の極細繊維からなる不織
布とが一体化し、かつ、少なくとも該極細繊維の立毛を
片面に有し、かつ、経もしくは緯方向の少なくとも一方
向において、9%以上70%以下のストレッチ性を有す
るものであることを特徴とするものであり、また、その
製法は、少なくとも溶解性を異にする2種以上のヤーン
を撚り合わせたヤーンを用いて構成されたスクリムと不
織布とを重ねた後、ニードルパンチもしくはウォータジ
ェットパンチなどの物理的手段を用いて、両者を一体化
した後、スクリム中のヤーンの一部を溶解してコイルバ
ネ状となさしめることを特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強力である上に
ストレッチ性を有する立毛調シート状物およびその製法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の極細繊維不織布からなる本格的な
立毛調皮革用シート状物は、その機能性、外観品位など
で天然スエードと遜色無い高い評価を得ていたが、欠点
としては、強度や耐疲労性に劣ることであった。特に衣
料用の場合、薄さと柔軟性および強度が要求されるが、
技術的には、薄さ、柔軟性と強度との関係はトレードオ
フの関係にあり、これらの特性をバランスさせることは
極めて困難であった。このため、スカートやパンツなど
の過大な張力や擦過や剪断力が懸かるボトム用途の過酷
な使用に耐えられるものはなかった。このため、不織布
からなるシート状物の特徴である外観、質感を損なわず
に、これら特性のバランス化を計る技術として特公平4
−1113号公報のごとく、スクリムと不織布とを一体
化する技術が開発され大きな効果を上げている。しか
し、この場合、強撚されたヤーンからなるスクリムを用
いているため、スクリム自体硬く、伸度も少なくなり、
このスクリムを用いた製品は、ストレッチ性および十分
な柔軟性に欠けることとなり、衣料用に用いた場合、用
途によっては着用性にやや欠けたものとならざるを得な
い。
【0003】この解決手段として、当初からストレッチ
性のあるスクリムを用いることも当然考えられるが、不
織布とスクリムとをニードリパンチにより一体化するに
は、ニードルパンチによるスクリムの損傷を回避するた
めに、単に強撚されたヤーンからなるスクリムを用いざ
るを得ず、このため結果的には、硬く伸度の小さいスク
リムとなってしまい十分な効果をあげ得ないでいるのが
実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、不織布とス
クリムとの一体化構造のシート状物において、強度と柔
軟性のみならずストレッチ性をも併せ持つ立毛調シート
状物およびその製法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用する。すなわ
ち、本発明の立毛調シート状物は、コイルバネ状形態に
よりストレッチ性を付与せしめたヤーンからなるスクリ
ムと、0.6dtex以下の極細繊維からなる不織布とが一
体化し、かつ、少なくとも該極細繊維の立毛を片面に有
し、かつ、経もしくは緯方向の少なくとも一方向におい
て、9%以上70%以下のストレッチ性を有するもので
あることを特徴とするものであり、また、その製法は、
少なくとも溶解性を異にする2種以上のヤーンを撚り合
わせたヤーンを用いて構成されたスクリムと不織布とを
重ねた後、ニードルパンチもしくはウォータジェットパ
ンチなどの物理的手段を用いて、両者を一体化した後、
スクリム中のヤーンの一部を溶解してコイルバネ状とな
さしめることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で言うコイルバネ状態によ
りストレッチ性を付与せしめたヤーンとは、ヤーンを一
方向に撚ったヤーンであり、ヤーン中の撚りピッチ間に
間隙を有することにより、ストレッチ性を付与せしめた
ものか、中央部(芯部)に空隙を形成させて、ストレッ
チ性を持たせたものを意味する。
【0007】かかるヤーンを形成する手段としては、例
えば、まず2種の溶解性の異なるヤーンを引き揃えつ
つ、600t/m以上3000t/m以下の範囲で共撚
りして一本のヤーンとし、このヤーンを用いスクリムを
形成する。このスクリムを用いて、例えば特公平4−1
113号公報の方法により、0.6dtex以下の極細繊維
もしくは極細化可能な複合繊維から成る不織布と一体化
するここでいう極細化可能複合繊維とは、物理的もしく
は化学的処理により極細化可能な公知の複合繊維を指
し、多島型、海島型、剥離型、多層型もしくはそれに類
したものを使用することができる。かかる繊維を用いる
場合は、スクリムと不織布とを一体化した後、該複合繊
維を極細化するのが好ましいが、場合によっては、極細
化しておいた後、ウォータージェットなどで一体化する
ことも可能である。
【0008】不織布とヤーンとを一体化した時点のヤー
ンは、強撚により繊維がコンパクトに充填した空隙のな
い状態となっており、ストレッチ性は有していない。ス
トレッチ性を付与するためには、この不織布と一体化し
たスクリム中の片方のヤーンを溶解する。この溶解はバ
インダー付与前及び付与後いずれでもよいが、ストレッ
チ性効果を高めるには付与後が好ましい。この溶解によ
りスクリム中の残るヤーンの撚りピッチ間に空隙が形成
される。この空隙のためヤーンの撚りピッチ間で繊維の
ずれが可能となり、ヤーン即ちスクリムのストレッチ性
が付与され、ひいては最終製品のストレッチ性が付与さ
れることとなる。
【0009】このストレッチ性の支配因子としては、用
いるヤーンの太さの組み合わせ、撚り数、撚り合わせ時
のヤーンのオーバーフィード率がある。ストレッチ性を
上げるためには、溶解用のヤーンを太くする、撚り数を
大きくすることにより、ピッチ間空隙が大きくなり、ス
トレッチ性を上げられる。通常は溶解性、非溶解性ヤー
ンは引き揃えて撚り合わせるだけでもよいが、場合によ
りオバーフィード率を適度に組み合わせることにより、
ストレッチ性のコントロールも可能である。特に、かか
る場合は、非溶解性ヤーンのオーバフィード率を高め、
溶解性ヤーンをコアーとし、非溶解性ヤーンをカバーと
したヤーンを用い、しかる後にコアーのヤーンを溶解す
ることにより、中央部に空隙を形成させ、ストレッチ性
を極度に高めることも可能である。この場合のオーバー
フィード率、組み合わせるヤーン相互の太さ、撚り数な
ど目的に応じ適宜変更することができる。
【0010】溶解性および非溶解性のヤーンの組み合わ
せ例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレート、ポリピロピレンテレフタレートな
どに代表されるポリエステル類およびそれらの共重合
体、ナイロン6,ナイロン610、ナイロン66に代表
されるポリアミド類およびそれらの共重合体、ポリエチ
レン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンおよ
びその共重合体、ポリアクリロニトリルおよびその共重
合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ
ビニルアルコールおよびそれらの共重合体等であり、溶
解性を考慮してこれらを適宜組み合わせればよい。
【0011】この内、特に好ましい組み合わせ例として
は、非溶解性ヤーンとしては、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6もしく
は66であり、溶解性ヤーンとしては、アルカリにて容
易に溶解もしくは分解可能な共重合ポリエステル、ポリ
アミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール
であり、場合によっては、ウールなどの天然繊維も使用
可能である。溶解性および非溶解性ヤーンは共撚りされ
る。
【0012】この場合、それぞれのヤーンの太さは、ス
トレッチ性を考慮して適宜組み合わせることができる
が、この場合の一つの目安は、非溶解性ヤーンの強度で
ある。最終的には、このヤーンがスクリム強度ひいては
最終製品強度を支配するため、ヤーン太さ(Tex )は3
Tex 以上が望ましい。また、かかるヤーンからなるスク
リムと0.6dtex以下の極細繊維もしくは極細化可能な
複合繊維からなる不織布との一体化に際し、ニードルパ
ンチされるが、この際ニードルでの切断を回避するため
には、引き揃えヤーンの太さは、16Tex 以下が望まし
い。従って、かかる制約条件を基に組み合わせる溶解性
および非溶解性ヤーンの太さを判断すればよい。
【0013】ストレッチ性の点から、溶解性ヤーンの非
溶解性ヤーンに対する割合は1/4から3/2程度が好
ましい。また、ストレッチ性の設計に当たっては、撚り
数も重要であり、かかる撚り数としては、600t/m
以上3000t/m以下が望ましい。撚り数が600t
/m未満だと、溶解性ヤーンを溶解することによって得
られる非溶解性ヤーンのコイル状態が不十分となり、ス
トレッチ性が上げがたい。また、撚り数が3000t/
mを越えると、スクリムが硬く、不織布との一体化に際
し、構造的な斑が生じやすくなる。本発明の特徴は、ヤ
ーンの一部を溶解するため、最終的ヤーンは細くなり、
製品も薄くなり、かつ、柔軟なものになし得ることであ
る。
【0014】ヤーンの溶解に用いる溶剤は、特に限定す
べきものでなく、他に与える損傷を極力小さく、かつ、
ヤーンの溶解を速やかに行えるものであれば何でもよ
い。
【0015】本発明は、かかるコイルバネ状化可能なヤ
ーンを用いたスクリムと不織布をニードルパンチやウォ
ータージェットパンチなどの既に公知の物理的手段を用
いて一体化させるものである。かかる一体化後の適当な
時点で、スクリム中のヤーンを化学処理し、コイルバネ
状となすことにより達成される。
【0016】本発明の更に好ましい態様は、かかるシー
ト状物が高分子バインダーを含むものである。かかる場
合は、高分子バインダーとコイルバネ状ヤーンとの特性
が補完し合い、モモケ難いストレッチ性の高い良好な製
品を提供することができる。ここで言う高分子バインダ
ーとは、人工皮革や一般織物の処理で利用されるものを
意味するものであり、ポリウレタン系、アクリル系バイ
ンダーなどを適宜利用することができる。
【0017】本発明においては、ストレッチ性は経もし
くは緯方向の少なくとも一方向に有している必要があ
る。このためには、コイルバネ状ヤーンを経糸、緯糸い
ずれかもしくは両方に用いることにより、一方向もしく
は両方向など方向性のコントロールをすることができ
る。
【0018】また、本発明でストレッチ性をさらに上げ
たい場合は、不織布とスクリムとを一体化した後に、ス
クリム中のヤーンをコイルバネ状となる如く化学処理
し、しかる後シート全体を収縮させる方法を採用するの
が有効である。この収縮は、乾式の高温雰囲気下あるい
は熱水中もしくはスチーム下での押し込み加工や揉み加
工などにより達成可能である。さらに必要に応じ、共重
合ポリマーを不織布もしくはヤーン形成繊維に用い、コ
イルバネ化処理後に、残留歪みを残しておき、この残留
歪みを利用して、シート全体を収縮することも有効な手
段である。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明は、これのみに限定されるものでな
い。
【0020】なお、本発明では、ストレッチ性を次の如
く定義する。
【0021】すなわち、長さ20cm、幅3cmのサン
プルを、20cm/分の速度で引っ張り試験機を用い適
度の長さ引き伸ばした後に元に戻す。その時の残留歪を
測定し引き延ばした値に対する比率を残留留歪率(%)
とする。引き伸ばし率を順次増やしてこの残留歪率を測
定する。この値が10%となった時の引き伸ばし率をス
トレッチ性と定義する。
【0022】実施例1 非溶解性ヤーンとして、5.5Tex −40fのポリエチ
レンテレフタレート繊維を用い、溶解性ヤーンとして、
5.5Tex −24fのイソフタル酸スルホン酸ナトリウ
ムを7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート
共重合体繊維とを準備し、これ等を引き揃えつつ200
0t/mの強撚糸を作製した。この強撚糸は、溶解性と
非溶解性とのヤーンが交互に撚り合わさったものであ
り、溶解成分を除去することによりコイルバネ状とな
り、容易に伸びるものに変形可能であった。
【0023】この強撚糸を用い平織り組織の目付70g
/m2 スクリムを作製した。これとは別に、太さ4dte
x、島数36,島成分をポリエチレンテレフタレート5
5部、海成分をポリスチレン45部とした海島型複合繊
維を用い不織布ウエッブを形成し、上記スクリムと重ね
た後、ニードルパンチして一体化したフェルトを得た。
このフェルトを熱水で収縮し、乾燥した後、トリクロル
エチレンに漬け、乾燥後、さらにポリビニルアルコール
を軽く付与した後、ポリウレタンのヂメチルフォルムア
ルデヒド溶液を含浸し、水中にて凝固した。これを2枚
に半裁し、バフィングし、立毛を形成した後、熱水カセ
イソーダ液でスクリムの溶解性ヤーンを溶解除去し、引
き続き染色仕上げをおこなった。
【0024】得られた製品につき、強度、柔軟性および
ストレッチ性の評価をおこなった。柔軟性は、2cm幅
サンプルのカンチレバー法によった。強度は、3.5k
g/3cm、カンチレバー値は19mm、ストレッチ性
は36%であった。
【0025】比較実施例1 ヤーンとして、非溶解性成分からなるポリエチレンテレ
フタレートを2000t/m強撚したものを用いた他
は、全く実施例1と同様にして実施した。
【0026】得られた製品の強度は4.6kg/3cm
と高かったが、カンチレバー値は25mm、ストレッチ
性は5%であった。
【0027】実施例2 芯糸として、ポリビニルアルコール繊維を用い、鞘糸と
して、ポリエチレンテレフタレート繊維を用い、オーバ
ーフィード率75%とし、1500t/mの加撚を行
い、14.7Tex のコアーヤーンを作製した。このコア
ーヤーンを用い、経て密度72本/インチ、緯密度69
本/インチの平織りスクリムを準備した。一方、実施例
1と同一の海島型繊維からなる目付360g/m2 の不
織布ウエッブを作成し、このウエッブを上記平織りスク
リムに重ねて、軽くニードルパンチし、次いでウォータ
ージェットパンチした。これを140℃の加熱スチーム
雰囲気を通した後、エステル系のポリウレタン溶液を含
浸させ、次いで水中で凝固させ、さらに熱水中に浸漬し
た。乾燥後これをトリクロルエチレン中に漬け、スクリ
ムと反対面をバフィングした。これを実施例1と同様に
染色し、仕上げ処理をおこなった。
【0028】得られた製品は、強度5.1kg/3c
m、カンチレバー値14mm、ストレッチ性28%であ
った。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、従来では極めて難しか
った強度と柔軟性およびストレッチ性をバランス良く併
せ持つ高機能な立毛調シートを提供することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コイルバネ状形態によりストレッチ性を付
    与せしめたヤーンからなるスクリムと、0.6dtex以下
    の極細繊維からなる不織布とが一体化し、かつ、少なく
    とも該極細繊維の立毛を片面に有し、かつ、経もしくは
    緯方向の少なくとも一方向において、9%以上70%以
    下のストレッチ性を有するものであることを特徴とする
    立毛調シート状物。
  2. 【請求項2】該シート状物が、スクリムと、0.6dtex
    以下の極細繊維からなる不織布とが、ニードルパンチに
    て一体化されているものであることを特徴とする請求項
    1記載の立毛調シート状物。
  3. 【請求項3】少なくとも溶解性を異にする2種以上のヤ
    ーンを撚り合わせたヤーンを用いて構成されたスクリム
    と不織布とを重ねた後、ニードルパンチもしくはウォー
    タジェットパンチなどの物理的手段を用いて、両者を一
    体化した後、スクリム中のヤーンの一部を溶解してコイ
    ルバネ状となさしめることを特徴とする立毛調シート状
    物の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003221790A (ja) * 2002-01-30 2003-08-08 Toray Ind Inc 有毛人工皮革とその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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