JP2000153130A - 排ガス浄化方法およびその装置 - Google Patents

排ガス浄化方法およびその装置

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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 塩化水素とフッ化水素を含む燃焼排ガス
から、乾式法で塩化水素とフッ化水素を除去する。該燃
焼排ガスを前段除去装置3 に通してアルカリ土類金属の
酸化物、水酸化物および/または炭酸塩からなる吸収剤
で処理し、主としてフッ化水素を吸収除去する。次いで
同排ガスを後段除去装置8 に通してアルカリ土類金属の
酸化物、水酸化物および/または炭酸塩からなる吸収剤
で処理し、主として塩化水素を除去する。前段除去装置
および後段除去装置の吸収剤はいずれも消石灰または炭
酸カルシウムであることが好ましい。 【効果】塩化水素の除去効率の低下を防ぐことができ
る。また、前段除去装置でフッ化水素と同時に重金属、
ダイオキシンも除去でき、かつ、従来法に比べて消石灰
の吹き込み量が少ない分だけ飛灰の容積が少ないので、
ダイオキシン加熱分解装置や重金属固定化装置の規模を
小さくすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩化水素とフッ化
水素を含む燃焼排ガスから、乾式法で塩化水素とフッ化
水素を除去する排ガス浄化方法、およびこの方法に直接
用いられる排ガス浄化装置に関する。
【0002】オゾン層破壊問題から、すでに1995年
に特定フロンの製造は中止されたが、それ以前に製造さ
れ冷蔵庫、空調機などに充填されていたフロンは現在で
も多量に存在しており、冷蔵庫、空調機などが廃棄され
る段階で、フロンの一部が回収されている。この回収フ
ロンの処理方法として国連環境計画でも推奨されている
方法の一つに焼却処理法がある。
【0003】この処理方法については、国内でも何例か
の処理テストが実施されており、問題のないことが報告
されているが、このような焼却処理によって発生する焼
却炉排ガス中にはフロンの燃焼分解物である高濃度の塩
化水素とフッ化水素が存在する。
【0004】本発明は、この塩化水素とフッ化水素を含
む燃焼排ガスから、乾式法で塩化水素とフッ化水素を除
去する排ガス浄化方法、およびこの方法に直接用いられ
る排ガス浄化装置に関するものである。
【0005】
【従来の技術】最近、ごみ焼却炉や、産業廃棄物焼却炉
の排ガス処理系ではダイオキシン対策から図2に示すよ
うな設備が設置されている。すなわち、焼却炉(1) から
発生した排ガスは、ダイオキシンの発生を抑制するため
に、ガス冷却器(2) で水吹き込みによって数百度以上の
温度から200℃以下に急冷され、通常は150〜17
0℃の温度でバグフィルター室(13)に入る。通常の都市
ごみ焼却炉の排ガス中には、500〜1000ppmの
塩化水素と数ppm以下のフッ化水素が含まれているの
で、この除去のために、バグフィルター室(13)の入口側
で排ガスに消石灰が吹き込まれる。そして、バグフィル
ター(4) 上に堆積した消石灰とこれらのガスが下式(I)
(II)のように反応して、排ガスから塩化水素とフッ化水
素が除去される。除去後の排ガスは、必要に応じて、下
流の窒素酸化物除去装置(5) や誘引送風機などの処理系
を通り、最終的に煙突から排出される。バグフィルター
(4)上の消石灰は、塩化水素との反応が進まなくなる前
に適宜バグフィルター(4) から払い落とされ、ロータリ
ーバルブ(6) などの排出装置によってバグフィルター室
(13)から飛灰貯留槽(7) へ排出されてここに貯められ、
これに含まれるダイオキシンをダイオキシン熱分解装置
で分解した後、重金属溶出防止のための中間処理に回さ
れる。
【0006】塩化水素、フッ化水素と消石灰の反応 Ca(OH)2 +2HCl=CaCl2 +2H2 O ……(I) Ca(OH)2 +2HF =CaF2 +2H2 O ……(II)
【0007】通常の焼却炉排ガスの場合、消石灰の吹き
込み量は塩化水素に対して当量比2〜3と過剰であり、
フッ化水素濃度は数ppmと低いために特別な問題は起
きず、十分な塩化水素除去率が得られる。なお、当量比
とは塩化水素、フッ化水素それぞれ1モルに対して反応
に必要な消石灰の理論モル数(=0.5モル)に対する
消石灰吹き込み量の割合を示すものである。通常、当量
比1〜3で運転される理由は、消石灰粒子表面に反応生
成物の殻が生成し、殻相内を排ガスが拡散して粒子内部
まで反応するには非常に長時間を要するため、実用上は
当量比を増すことによって短時間に高除去率を得ようと
するためである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】冷蔵庫、空調機等に使
われていた特定フロンであるフロン11とフロン12は
下式(III)(IV) のような反応によって熱分解し、いずれ
も塩化水素とフッ化水素を発生する。
【0009】フロン11の熱分解 CCl3 F+2H2 O=CO2 +3HCl+HF ……(III) フロン12の熱分解 CCl2 2 +2H2 O=CO2 +2HCl+2HF ……(IV)
【0010】都市ごみ焼却炉あるいは産業廃棄物焼却炉
内でこれらのフロンを燃焼させた場合、分解によって発
生した塩化水素はほとんど排ガス中に移行し、フッ化水
素は数10%排ガス中に移行することになる。
【0011】今、焼却炉へ投入する廃棄物の0.5重量
%のフロンを処理する場合、排ガス中の塩化水素とフッ
化水素の概略の濃度増加はそれぞれ次のようになる。
【0012】 すなわち、フロンを焼却しない場合の塩化水素濃度を5
00ppm、フッ化水素濃度を3ppmと仮定すると、
フロン焼却により塩化水素が約1.6〜1.8倍、フッ
化水素が30〜60倍も増加することになる。特にこの
場合のようにフッ化水素が高濃度で含まれる時、フッ化
水素を通常の排ガス処理系で処理しようとすると、下記
排ガス処理実験に示すように、フッ化水素の除去率は経
時変化を示さず高除去率を維持しているが、塩化水素の
除去率は時間の経過とともに低下する現象が生じる。
【0013】排ガス処理実験 通常の排ガス処理系で、表1の左欄に示す条件で排ガス
処理実験を行い、右欄に示すような実験結果を得た。図
3にこの実験結果を示す。この実験結果から明らかなよ
うに、フッ化水素の除去率は経時変化を示さず高除去率
を維持したが、塩化水素の除去率は時間の経過とともに
低下する。
【0014】
【表1】 この現象を検討すると、以下のことが判る。
【0015】排ガス中の塩化水素とフッ化水素は、上
記式(I) (II)の反応によって、煙道内およびバグフィル
ター(4) 上で消石灰と反応し、排ガスから除去される。
【0016】上記式(I) (II)の反応生成物である塩化
カルシウムおよびフッ化カルシウムと、共存ガスである
塩化水素およびフッ化水素との間の次のような平衡反応
を考える。
【0017】 CaCl2 +2HF=CaF2 +2HCl ……(V) この反応の平衡定数Kを計算すると、バグフィルターの
操作温度である170℃では K=4.853×107 ……(VI) となる。平衡定数Kはその定義から K=k1/k2 ……(VII) k1;右方へ進む反応の反応速度定数 k2;左方へ進む反応の反応速度定数 であるので、K>1の温度領域では反応は右方へ進む。
【0018】170℃でK=4.853×107 >1
なので、式(V) の反応は右方へ進む。
【0019】以上の検討結果から、バグフィルター(4)
上に生成した塩化カルシウムはガス中に含まれるフッ化
水素と反応して塩化水素を放出する可能性があり、ま
た、生成したフッ化カルシウムは塩化水素とは反応しな
いことが判る。
【0020】この検討結果は、先の実験結果を説明する
ものといえ、フッ化水素は共存する塩化水素に比べ消石
灰と優先的に反応し、すでに生成した塩化カルシウムか
ら塩化水素を追い出したり、フッ化カルシウム生成物殻
相が塩化水素と粒子内部の未反応消石灰との反応を阻害
したために、フッ化水素の除去率は高い状態で維持され
ているのに対し、塩化水素除去率の低下が見られたもの
と考えられる。従って、従来の排ガス処理系では塩化水
素と高濃度のフッ化水素が共存する場合には、塩化水素
の除去率が低下する。
【0021】本発明は、この問題を解決することを目的
とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明による排ガス浄化
方法は、塩化水素とフッ化水素を含む燃焼排ガスから、
乾式法で塩化水素とフッ化水素を除去するに当たり、該
燃焼排ガスを前段除去装置に通してアルカリ土類金属の
酸化物、水酸化物および/または炭酸塩からなる吸収剤
で処理し、主としてフッ化水素を吸収除去し、次いで同
排ガスを後段除去装置に通してアルカリ土類金属の酸化
物、水酸化物および/または炭酸塩からなる吸収剤で処
理し、主として塩化水素を除去することを特徴とする方
法である。
【0023】前段除去装置および後段除去装置の吸収剤
はいずれも消石灰または炭酸カルシウムであることが好
ましい。
【0024】本発明による排ガス浄化装置は、塩化水素
とフッ化水素を含む燃焼排ガスから、乾式法で塩化水素
とフッ化水素を除去するのに用いられる装置であって、
該燃焼排ガスを吸収剤で処理してフッ化水素を吸収除去
する前段除去装置と、前段除去装置の下流に設けられ、
かつ同排ガスを吸収剤で処理して主として塩化水素を除
去する後段除去装置とを備えることを特徴とするもので
ある。
【0025】前段除去装置は、吸収剤と排ガスとの接触
時間が制御できる消石灰粉末の移動層型もしくは流動層
型の集塵装置またはバグフィルターであることが好まし
く、後段除去装置は塩化水素除去を目的としているため
バグフィルターであることが好ましい。後段除去装置は
消石灰ペレットの移動層集塵装置等であってもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を実施例に基いて
具体的に説明する。
【0027】実施例図1は本発明の排ガス処理系を示す
フローシートである。
【0028】焼却炉(1) から発生した排ガスは、ダイオ
キシンの発生を抑制するために、ガス冷却器(2) で水吹
き込みによって数百度以上の温度から200℃以下に急
冷され、通常は150〜170℃の温度で前段バグフィ
ルター室(3) に入る。
【0029】焼却炉でフロン11やフロン12を通常の
都市ごみや産業廃棄物と共に焼却処理した場合、焼却炉
の排ガス中には、500〜1000ppmの塩化水素と
100ppm前後のフッ化水素が含まれているので、主
にフッ化水素の除去のために、前段バグフィルター室
(3) の入口側で排ガスに、フッ化水素に対する当量比2
〜3で消石灰が吹き込まれる。そして、フッ化水素は、
前段バグフィルター室(3) のバグフィルター(4) 上に堆
積した消石灰と反応して、排ガスから除去される。消石
灰は塩化水素よりもフッ化水素と優先的に反応するた
め、塩化水素は反応しないか、一時的に反応しても、反
応生成物である塩化カルシウムが(V) 式によってフッ化
カルシウムに転換する。
【0030】前段バグフィルター室(3) ではフッ化水素
と共に、焼却炉排ガス中に含まれるNaClやKCl、
重金属等を含む飛灰が同時に除去される。また、排ガス
中のダイオキシン類のほとんどが粒子状ダイオキシンと
呼ばれるものであり、飛灰と共に前段バグフィルター室
(3) で除去される。この飛灰は前段バグフィルター室
(3) のロータリーバルブ(6) を経て飛灰貯留槽(7)に貯
められる。図2に示す従来の排ガス処理系では、塩化水
素除去用に投入される消石灰の量が多いため、飛灰の量
が多くなるが、この実施例では消石灰の吹き込み量はフ
ッ化水素除去に要する量のみであるため飛灰の量が少な
い。従って、ダイオキシン熱分解装置の容量も小さくて
済み、重金属固定に回す飛灰の容積も小さくて済む。
【0031】前段バグフィルター室(3) で塩化水素以外
の有害物が除かれた排ガスは、ついで、後段バグフィル
ター室(8) に入る。後段バグフィルター室(8) の入口の
煙道で、排ガス中の塩化水素に対して当量比2〜3の消
石灰が排ガスに吹き込まれ、後段バグフィルター室(8)
で塩化水素が除去される。前段バグフィルター室(3)で
フッ化水素が完全に除去されているので、塩化水素は通
常の除去率で除去され、除去率の経時変化も無い。
【0032】塩化水素除去後の排ガスは、必要に応じ
て、下流の窒素酸化物除去装置(10)や誘引送風機などの
処理系を通り、最終的に煙突から排出される。
【0033】後段バグフィルター室(8) のバグフィルタ
ー(9) 上の消石灰は、塩化水素との反応が進まなくなる
前に適宜バグフィルター(9) から払い落とされ、ロータ
リーバルブ(11)などの排出装置によって後段バグフィル
ター室(8) からカルシウム灰貯留槽(12)へ排出されてこ
こに貯められる。このカルシウム灰は、重金属やダイオ
キシン類を含まず、未反応消石灰と塩化カルシウム、微
量の亜硫酸カルシウムを含む程度で、無害であり、溶出
防止のために薬剤処理する必要はない。例えば、これを
適当量の水に溶解した場合、消石灰表面の塩化カルシウ
ムは水溶性なので水に溶解し、未反応消石灰のみが不溶
性固体として残るので、この固体を乾燥すれば、再び塩
化水素除去用に使用でき、消石灰の有効利用が可能にな
る。また、水に溶解した塩化カルシウムは無害なのでそ
のままpH調整後下水、河川に放流可能である。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、まず、フッ化水素除去
を目的とする前段除去装置で排ガスを処理し、ついで塩
化水素除去を目的とする後段除去装置で排ガスを処理す
るので、塩化水素の除去効率の低下を防ぐことができ
る。
【0035】また、前段除去装置でフッ化水素と同時に
重金属、ダイオキシンも除去でき、かつ、従来法に比べ
て消石灰の吹き込み量が少ない分だけ飛灰の容積が少な
いので、ダイオキシン加熱分解装置や重金属固定化装置
の規模を小さくすることができる。
【0036】加えて、後段除去装置から排出されるカル
シウム灰中には重金属、ダイオキシンが含まれず、ほと
んどが塩化カルシウムと未反応消石灰であるので、これ
を水洗して、未反応消石灰は乾燥後、再使用に回し、洗
浄水はpH調整後そのまま放流することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の排ガス処理法を示すフローシー
トである。
【図2】従来の排ガス処理法を示すフローシートであ
る。
【図3】排ガス処理実験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1:焼却炉 2:ガス冷却器 3:前段バグフィルター室(前段除去装置) 4,9:バグフィルター 8:後段バグフィルター室(後段除去装置) 7:飛灰貯留槽 12:カルシウム灰貯留槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坪井 智之 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 (72)発明者 中村 和範 大阪市住之江区南港北1丁目7番89号 日 立造船株式会社内 Fターム(参考) 4D002 AA19 AA23 BA03 BA14 CA08 CA09 CA13 CA20 DA04 DA05 DA11 DA12 DA16 EA02 GA03 GB20

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化水素とフッ化水素を含む燃焼排ガス
    から、乾式法で塩化水素とフッ化水素を除去するに当た
    り、該燃焼排ガスを前段除去装置に通してアルカリ土類
    金属の酸化物、水酸化物および/または炭酸塩からなる
    吸収剤で処理し、主としてフッ化水素を吸収除去し、次
    いで同排ガスを後段除去装置に通してアルカリ土類金属
    の酸化物、水酸化物および/または炭酸塩からなる吸収
    剤で処理し、主として塩化水素を除去することを特徴と
    する排ガス浄化方法。
  2. 【請求項2】 前段除去装置および後段除去装置の吸収
    剤がいずれも消石灰または炭酸カルシウムである請求項
    1記載の排ガス浄化方法。
  3. 【請求項3】 塩化水素とフッ化水素を含む燃焼排ガス
    から、乾式法で塩化水素とフッ化水素を除去するのに用
    いられる装置であって、該燃焼排ガスを吸収剤で処理し
    てフッ化水素を吸収除去する前段除去装置と、前段除去
    装置の下流に設けられ、かつ同排ガスを吸収剤で処理し
    て主として塩化水素を除去する後段除去装置とを備える
    ことを特徴とする排ガス浄化装置。
  4. 【請求項4】 前段除去装置が、吸収剤と排ガスとの接
    触時間が制御できる移動層型もしくは流動層型の集塵装
    置またはバグフィルターであり、後段除去装置がバグフ
    ィルターである請求項4記載の排ガス浄化装置。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008229416A (ja) * 2007-03-16 2008-10-02 Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd 排ガス中の酸性ガス除去装置及び方法
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