JP2000141873A

JP2000141873A - 金属体表面に形成されるインク記録層用コーティング液

Info

Publication number: JP2000141873A
Application number: JP10318585A
Authority: JP
Inventors: Kazuhiko Kanewa; 一彦金輪; Kenji Fukuda; 憲二福田; Kanji Sakata; 勘治坂田
Original assignee: Tokuyama Corp
Current assignee: Tokuyama Corp
Priority date: 1998-11-10
Filing date: 1998-11-10
Publication date: 2000-05-23

Abstract

(57)【要約】【課題】金属体表面への密着性及び塗膜耐水性に優れ
た、金属体表面に形成されるインク記録層用のコーティ
ング液を提供すること。【解決手段】ａ）ポリビニルアルコール等の水溶性高分
子１００重量部、ｂ）少なくとも０．０１重量部がリン
酸エステル基を有する重合性単量体である重合性単量体
成分０．０１〜５０重量部、ｃ）重合開始剤１×１０^-5
〜５重量部よりなる組成物の水溶液からなる、金属体表
面に形成されるインク記録層用コーティング液。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属体表面に形成
されるインク記録層用コーティング液及び、金属体を基
材とするインク記録用材料に関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェット記録方式は、騒音が低い
こと、高速印字、カラー化が容易等の理由から、近年急
速に普及してきている。画質もディジタル・スチル・カ
メラ等のディジタル映像機器の登場によって、写真画質
を目標とするようになった。インクジェット記録方式
は、この目標を確実に現実のものとしつつある。

【０００３】インクジェット記録方式の進歩により、イ
ンクジェット記録用のインク記録用材料に対してもより
高度な特性が要求されてきている。例えば、紙以外のイ
ンク吸収能を有しない材質、即ち、アルミ蒸着フィルム
やステンレス等の金属体を基材とする要求が高まってい
る。これら金属体は、非多孔質かつ疎水性でインクジェ
ットプリンター用水性インクを全く吸収しないので、こ
の上に直接記録されたインクは容易に乾燥せず実用にな
らない。そこで、金属体表面にインクを吸収して安定化
する機能を有するインク記録層を形成させることが試み
られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、紙が基材で
ある場合に用いられている、インクジェット記録方式用
のインク記録層は、従来、水溶性高分子を主成分として
いるものが多い。即ち、これらのインク記録層は、水溶
性高分子水溶液からなるコーティング液を基材である紙
に塗布し、乾燥させることにより製造されている。

【０００５】ところが、こうした水溶性高分子からなる
インク記録層を金属体表面に形成させた場合、造膜過程
に発生する内部歪みや、水溶性高分子の金属表面に対す
る低い親和性等により、紙やプラスチックフィルム表面
に該層を形成させた場合に比較して、インク記録層の基
材表面への密着性が大幅に低下する問題があった。従っ
て、インク記録層が剥がれ易く、特に、得られるインク
記録用材料が、雨水や手に付着した汗等との接触により
水に晒された時には、該インク記録層に亀裂が発生した
り、剥離がより生じ易くなり、実用性が大きく低下して
いた。

【０００６】こうした背景から、金属体表面への密着性
及び塗膜耐水性に優れた、金属体表面に形成されるイン
ク記録層用のコーティング液を提供することが大きな課
題であり、本発明者等は、これを解決するものとして、
ａ）水溶性高分子１００重量部、ｂ）リン酸またはリン
酸エステル０．１〜３０重量部よりなる組成物の水溶液
からなる、金属体表面に形成されるインク記録層用コー
ティング液を先に提案した（特願平１０−２３５９３８
号）。このインク記録層用コーティング液は、密着性及
び塗膜耐水性に優れたインク記録層を金属体表面に形成
させることができ極めて有用なものであるが、金属体が
ステンレス鋼等の水溶性高分子との親和性に特に劣るも
のであるときには、さらにその密着性について改良の余
地があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
について鋭意検討した結果、インク記録層用コーティン
グ液の成分に、リン酸エステル基を有する重合性単量体
を含有させ、これを重合させてインク記録層中に、リン
酸エステル基を有する重合体を含有させるようにすれ
ば、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完
成するに至った。

【０００８】即ち、本発明は、ａ）水溶性高分子１００
重量部、ｂ）少なくとも０．０１重量部がリン酸エステ
ル基を有する重合性単量体である重合性単量体成分０．
０１〜５０重量部、ｃ）重合開始剤１×１０^-5〜５重量
部よりなる組成物の水溶液からなる、金属体表面に形成
されるインク記録層用コーティング液である。

【０００９】本発明のインク記録層用コーティング液が
適用される基材は、金属材料である。上記金属材料とし
ては、強度が大きく機械的加工を施すことができるもの
であれば特に制限なく採用できる。具体的には、銅、
鉄、錫、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属やス
テンレス鋼、炭素鋼等の鋼材からなるものが挙げられ
る。その形状も、板状、直方体状、錐体状、シート状等
の如何なるものであっても良いが、通常は、板状、シー
ト状であるのが好ましい。本発明では、アルミニウム、
ステンレス鋼、特にステンレス鋼が基材の材質である時
に、特に、インク記録層の密着性が強固になる効果が顕
著である。

【００１０】また、基材は、プラスチック等の支持体の
表面に、アルミニウム、ニツケル、クロム等が金属箔層
として蒸着されたものであっても良い。この場合、上記
金属箔層の厚みは、０．５〜３μｍであるのが一般的で
ある。プラスチック製支持体の材質は、具体的にはポリ
エチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リプロピレン、ポリビニルクロライド等が挙げられる。
また、その形状は、シート状、フィルム状であるのが一
般的である。

【００１１】インク記録層は、これらの基材の如何なる
面に存在させても良い。基材の金属体が板状やシート状
である場合、片面及び両面のいずれに設けても良い。

【００１２】本発明のインク記録層用コーティング液に
おいて、水溶性高分子は、公知のものが特に制限なく使
用される。具体的には、澱粉、アルブミン、ゼラチン、
カゼイン、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、エチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等
の天然ポリマー又はその誘導体；ポリビニルアルコー
ル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタ
クリル酸、アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリ
ウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリ
エチレングリコール、低分子量のポリプロピレングリコ
ール、無水マレイン酸とビニルエーテルやスチレン等と
の共重合体、ポリウレタン、エポキシポリマー等の合成
の水溶性ポリマー等が挙げられ、これらは単独で使用し
ても良く２種以上を併用しても良い。

【００１３】この中でも特にポリビニルアルコールが好
ましい。ポリビニルアルコールは、ケン化度が６０モル
％以上のものが好ましく、印刷面の画像の鮮明性と均一
性及びインク吸収性を勘案するとケン化度７５〜９０モ
ル％のポリビニルアルコールを用いるのがより好適であ
る。また、数平均分子量が５万〜２０万のものが好適で
ある。これらのポリビニルアルコールは、カチオン基、
カルボキシル基、スルホン酸基等により変性されたもの
であっても良い。

【００１４】本発明のインク記録層用コーティング液に
は、リン酸エステル基を有する重合性単量体を含む重合
性単量体成分が含有される。それにより、インク記録層
には、上記重合性単量体成分を重合させることにより、
リン酸エステル基を有する重合体を含有させることがで
きる。そうして、このようにリン酸エステルを有する重
合体が含有されることによりインク記録層は、金属体へ
の密着性が著しく向上し、該金属体がステンレス鋼のよ
うな水溶性高分子との親和性が低いものに対しても、極
めて良好に密着する。

【００１５】ここで、リン酸エステル基を有する重合性
単量体としては、該リン酸エステル基及びエチレン性不
飽和基を有する公知の化合物を何等制限なく使用するこ
とができる。好適には、一般式

【００１６】

【化１】

【００１７】（式中、Ｒは水素またはメチル基、Ａは炭
素数２〜４のアルキレン基、Ｒ’は水素または炭素数１
〜８、好適には１〜５のアルキル基またはアリール基を
表し、ｎは１〜３の整数である）で表されるアクリロイ
ル基またはメタアクリロイル基を有するリン酸モノエス
テル、ジエステルあるいはトリエステルが挙げられる。

【００１８】例えば、モノ（（メタ）アクリロイルオキ
シエチル）アシッドホスフェート（（メタ）アクリロイ
ルはアクリロイル及びメタアクリロイルを意味する。以
下、同様の表現を用いる）、モノ（（メタ）アクリロイ
ルオキシプロピル）アシッドホスフェート、モノ（（メ
タ）アクリロイルオキシブチル）アシッドホスフェー
ト、モノ（（メタ）アクリロイルオキシ−１−メチルエ
チル）アシッドホスフェート、ジフェニル−（メタ）ア
クリロイルオキシエチルホスフェート、ジエチル−（メ
タ）アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル
−（メタ）アクリロイルオキシエチルホスフェート等の
一分子中に１個のエチレン性不飽和基を有する重合性単
量体；ジ（（メタ）アクリロイルオキシエチル）アシッ
ドホスフェート、ジ（（メタ）アクリロイルオキシプロ
ピル）アシッドホスフェート、ジ（（メタ）アクリロイ
ルオキシブチル）アシッドホスフェート、ジ（（メタ）
アクリロイルオキシ−１−メチルエチル）アシッドホス
フェート、フェニル−ジ（メタ）アクリロイルオキシエ
チルホスフェート、エチル−ジ（メタ）アクリロイルオ
キシエチルホスフェート、ブチル−ジ（メタ）アクリロ
イルオキシエチルホスフェート等の一分子中に２個のエ
チレン性不飽和基を有する架橋性重合性単量体；トリス
（メタ）アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ
ス（メタ）アクリロイルオキシプロピルホスフェート、
トリス（メタ）アクリロイルオキシブチルホスフェー
ト、トリス（メタ）アクリロイルオキシ−１−メチルエ
チルホスフェート等の一分子中に３個のエチレン性不飽
和基を有する架橋性重合性単量体等が挙げられる。これ
ら各種リン酸エステル基を有する重合性単量体は２種以
上を併用しても良い。その中でも特に、一分子中に２個
のエチレン性不飽和基を有するリン酸エステルが効果的
である。

【００１９】また、重合性単量体成分は、上記リン酸エ
ステル基を有する重合性単量体と共に、これ以外の重合
性単量体を併用しても良い。こうした他の重合性単量体
としては、エチレン性不飽和基を有する公知のものを何
等制限なく使用することができる。具体的には、一分子
中に１個のエチレン性不飽和基を有する重合性単量体と
して、（メタ）アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、
フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその塩；（メタ）
アクリル酸メチル、（メタ）アクリル酸エチル、（メ
タ）アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸のアルキル
エステル；２−ヒドロキシエチル（メタ）アクリレー
ト、２−ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート等の
不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル；ポリ
エチレングリコール（メタ）アクリレート、メトキシポ
リエチレングリコール（メタ）アクリレート、ポリプロ
ピレングリコール（メタ）アクリレート等の不飽和カル
ボン酸のポリアルキレングリコールエステル；（メタ）
アクリル酸ジメチルアミノエチル、（メタ）アクリル酸
ジエチルアミノエチル等のジアルキルアミノエチルエス
テル等が使用できる。

【００２０】さらに、重合性単量体の少なくとも一部と
して、架橋性重合性単量体を用いるのが好ましい。これ
らの単量体は、一般に一分子中に２個以上のエチレン性
不飽和基を有する。こうした架橋性重合生単量体とし
て、エチレングリコールジ（メタ）アクリレート、ブチ
レングリコールジ（メタ）アクリレート、ペンタンジオ
ールジ（メタ）アクリレート、ネオペンチルグリコール
ジ（メタ）アクリレート、ヘキサンジオールジ（メタ）
アクリレート、ジエチレングリコールジ（メタ）アクリ
レート、トリエチレングリコールジ（メタ）アクリレー
ト、テトラエチレングリコールジ（メタ）アクリレー
ト、ポリエチレングリコールジ（メタ）アクリレート、
ポリプロピレングリコールジ（メタ）アクリレート、ト
リメチロールプロパンジ（メタ）アクリレート、２−ヒ
ドロキシ−３−アクリロイルオキシプロピル（メタ）ア
クリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アク
リレート、ペンタエリスリトールトリ（メタ）アクリレ
ート、ペンタエリスリトールテトラ（メタ）アクリレー
ト、テトラメチロールメタンテトラ（メタ）アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールペンタ（メタ）アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールヘキサ（メタ）アクリレー
ト等のポリオールとエチレン性不飽和カルボン酸とのポ
リエステル；ジアリルフタレート、トリアリルトリメリ
テート等の多塩基酸とエチレン性不飽和アルコールとの
ポリエステル；グリセリンジ（メタ）アクリレートイソ
ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタエリスリトー
ルトリ（メタ）アクリレートヘキサメチレンジイソシア
ネート等のウレタン（メタ）アクリレート等が使用でき
る。

【００２１】本発明において、重合性単量体成分は、該
成分中における少なくとも３重量％、好適には少なくと
も１０重量％が、架橋性重合生単量体であるのが、イン
ク記録層の塗膜耐水性をより向上させる上で好ましい。
この場合、架橋性重合性単量体は、リン酸エステル基を
有する重合性単量体であっても良いし、その他の重合性
単量体であっても良い。

【００２２】本発明におて、重合性単量体成分の配合量
は、水溶性高分子１００重量部に対して０．０１〜５０
重量部、好適には０．１〜３０重量部の範囲から選択さ
れる。重合性単量体成分の配合量が０．０１重量部より
小さいとインク記録層の耐水性が十分でなくなり、他
方、この配合量が５０重量部を越えると印刷した際、印
字の色濃度が低下するようになり好ましくない。

【００２３】また、リン酸エステル基を有する重合性単
量体は、上記水溶性高分子１００重量部に対して、少な
くとも０．０１重量部、好適には少なくとも０．１重量
部含有されていることが必要である。該リン酸エステル
基を有する重合性単量体の含有量が０．０１重量部より
小さいとインク記録層の密着性が十分でなくなる。

【００２４】なお、重合性単量体成分の総量に対するリ
ン酸エステル基の含有量は、通常、４×１０^-7〜５×１
０^-3モル／ｇ、好適には８×１０^-6〜４×１０^-3モル／
ｇであるのが好ましい。

【００２５】本発明において、重合開始剤は、重合処理
の方式によって公知のものから適宜選択して使用すれば
よい。例えば、熱重合方式による場合は、アセチルアセ
トンペルオキシド、ジ−ｔ−ブチルペルオキシド、ジサ
クシニックアシドペルオキシド、３，５，５−トリメチ
ルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシ
ド、ｔ−ブチルペルオキシ２−エチルヘキサノエート、
ジ−２−エチルヘキシルペルオキシジカルボナート等の
有機過酸化物や、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウム
等の過硫酸塩が重合開始剤として好適である。但し、有
機過酸化物系の重合開始剤の場合、水溶性組成物の保存
安定性を考慮すると、常温では殆ど分解しないで安定な
高温分解型の重合開始剤を使用するのが好ましい。

【００２６】一方、紫外線等の光重合方式による場合に
は、重合開始剤として光増感性を有する化合物が使用さ
れる。例えば、４−フェノキシジクロロアセトフェノ
ン、４−ｔ−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエト
キシアセトフェノン、２−ヒドロキシ−２−メチル−１
−フェニルプロパン−１−オン、１−ヒドロキシシクロ
ヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類；ベンゾ
イン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエ
ーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン類；
ベンゾフェノン、４−フェニルベンゾフェノン、ヒドロ
キシベンゾフェノン、４−ベンゾイル−４´−メチルジ
フェニルサルファイド等のベンゾフェノン類；チオキサ
ンソン、２−メチルチオキサンソン、２，４−ジエチル
チオキサンソン、２−クロルチオキサンソン等のチオキ
サンソン類等が挙げられる。

【００２７】本発明において重合開始剤の使用量は、水
溶性高分子１００重量部に対して１×１０^-5〜５重量
部、好適には１×１０^-4〜３重量部の範囲から採択され
る。

【００２８】本発明において、上記水溶性高分子、重合
性単量体成分及び重合開始剤とからなる組成物は、水溶
性高分子が溶解する水溶液として使用される。ここで、
水溶液中の該組成部の含有量は、特に制限されるもので
はないが、水溶液のコーティング液としての操作性を勘
案すれば、上記組成物中における水溶性高分子１００重
量部に対して水が３００〜２０００重量部であるのが好
適である。

【００２９】なお、重合性単量体成分は必ずしも水に溶
解させて使用する必要はなく、水に難溶性のものは、上
記水溶液中に分散させて使用しても良い。また、このよ
うに水難溶性の重合性単量体を使用するときには、これ
らの溶解性や分散性を向上させるために、水の他に、水
溶性の有機溶媒を溶媒として併用しても良い。水溶性の
有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルア
ルコール、プロピルアルコール等の低級のアルキルアル
コール類；アセトン、メチルエチルケトン等のケトン
類；テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等
が挙げられる。これらの有機溶媒の使用量は、使用する
水の１０重量％以内とするのが好ましい。また、水溶性
重合体や重合性単量体成分の水への溶解性や分散性を高
めるために、界面活性剤を配合させても良い。

【００３０】さらに、本発明のインク記録層用コーティ
ング液には、上記の各成分の他に、必要に応じて造膜助
剤、消泡剤、防カビ剤、防腐剤、増粘剤、ｐＨ調整剤等
を添加しても良い。また、インク記録層表面のベタツキ
やブロッキング性を防止したり、インクの滲みを調整す
る目的で、各種の無機系充填剤、例えば、シリカ、アル
ミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、粘土、タルク、炭
酸カルシウム、酸化亜鉛等の粉体、或いはこれら粉体を
コロイド状に分散させたシリカゾル等のゾルを添加する
こともできる。

【００３１】次に、本発明において、上記各成分からな
るインク記録層用コーティング液の調合は、上記各成分
を一括して水に加え、撹拌装置等を用いて溶解や分散処
理を施して行っても良いし、各成分を任意の順序で水に
加えて溶解や分散処理を施して行っても良い。さらに
は、各成分を予め水に溶解や分散させておき、これらの
液を混合して調合しても良い。このようにして調合され
たコーティング液は、金属表面への塗布に先立って、イ
ンク記録層において外観不良の原因となる異物を取り除
くため、メンブレンフィルターやカートリッジフィルタ
ーを用いて濾過をすることが好ましい。

【００３２】このようにして得られた本発明のインク記
録層用コーティング液は、金属体表面に塗布され乾燥さ
せた後、重合処理が施されてインク記録層とされる。塗
布は、如何なる方法により行っても良いが、ロールコー
ティング、バーコーティング、グラビアコーティング、
エアナイフコーティング等の公知の方法が用いられる。
コーティング液の金属体表面への塗布量は、インクの吸
収性や経済性、或いは形成される膜の均一性等を勘案す
ると、乾燥後のインク記録層の固形分として金属体表面
当たり、通常、１〜２０ｇ／ｍ²、好ましくは３〜１０
ｇ／ｍ²が好適である。

【００３３】インク記録層用コーティング液を金属体表
面に塗布した後の乾燥は、８０℃〜１３０℃、好ましく
は９０℃〜１１０℃の熱風にて乾燥を行えばよい。ま
た、乾燥にひき続いて施される重合処理は、紫外線等の
照射による光重合方式が、熱重合方式に対して重合処理
時間が短いこと等において好適である。光重合における
光源としては、主に紫外線を発する水銀ランプやキセノ
ンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。一方
熱重合方式による場合は、添加した重合開始剤の分解温
度を考慮して、熱処理を施せばよい。

【００３４】

【発明の効果】本発明のインク記録層用コーティング液
を用いて金属体表面に形成させたインク記録層は、該金
属体表面との密着性に特に優れ、金属体がステンレス鋼
等のインク記録層の密着性に乏しいものであっても、優
れた密着性を有するインク記録層が形成できる。また、
塗膜耐水性及びインクの乾燥速度やインクの吸収安定性
にも優れている。従って、上記インク記録層を表面に存
在させた金属体は、インクジェット記録方式により記録
されるインク記録用材料として好適に使用できる。

【００３５】

【実施例】以下に、本発明を具体的に説明する為の実施
例を掲げるが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではない。なお、以下の実施例及び比較例において、金
属体表面に形成されたインク記録層の性状は以下の方法
により測定した。

【００３６】（１）印刷性インク記録層の画像品質を評価する一つの指標として、
印字面の画像の鮮明性と均一性及びインクの滲みの有無
を評価した。カラー印刷可能なインクジェット記録方式
のプリンター（セイコーエプソン（株）製、ＰＭ−７５
０Ｃ）を用いて、記録用シートにモノクロ、イエロー、
マゼンタ、シアンの各インクで矩形ベタを印刷後、印字
面を拡大鏡で肉眼観察により評価した。ドットが均一で
鮮明であり、ドットの滲みが何ら認められない時は○、
やや劣る時は△、ドットが不均一、不鮮明で滲みがある
時は×で示した。

【００３７】（２）インク乾燥速度インク記録層のインクの吸収安定性を評価する一つの指
標としてインクの乾燥速度を測定した。カラー印刷可能
なインクジェット記録方式のプリンター（セイコーエプ
ソン（株）製、ＰＭ−７５０Ｃ）を用いて、インクのシ
アン・マゼンタ混合色の矩形ベタを印刷後、プリンター
から記録シートが排出された時点から一定時間毎に印字
部分を指触して、インクが乾燥して指に付着しなくなる
時間を測定した。なお、本試験は、室温度２５℃、相対
湿度５０％に設定した室内で実施した。

【００３８】（３）密着性ＪＩＳ−Ｋ５４００に準じ、金属体表面に形成されたイ
ンク記録層に、鋭利なカッターナイフでＸ状のクロスカ
ットを入れた後、市販のセロハン粘着テープを貼り付
け、テープを付着させてから１〜２分後に、テープの一
方の端を持ってインク記録層面に直角に保ち、瞬間的に
引き剥がした。テープを剥がした時のＸカット部の剥が
れの状態を目視によって観察し、下記に示す評価点数で
示した。

【００３９】評価点数（点）１０：剥がれが全くない。

【００４０】８：交点には剥がれがなく、Ｘカット部に
わずかに剥がれがある。

【００４１】６：Ｘカット部の交点からいずれかの方向
に、１．５ｍｍ以内の剥がれがある。

【００４２】４：Ｘカット部の交点からいずれかの方向
に、３．０ｍｍ以内の剥がれがある。

【００４３】２：テープを貼ったＸカット部の大部分
に、剥がれがある。

【００４４】０：Ｘカット部よりも大きく剥がれる。

【００４５】（４）塗膜耐水性金属体表面に形成されたインク記録層に直接流水（水道
水）を３０秒間当てた後、インク記録層を指で２０回擦
って該記録層の剥離の程度と外観を評価した。全くイン
ク記録層に剥離が生じず、テスト前と何ら外観に変化が
ない場合は◎、指で擦った部分に僅かに剥離が生じてい
るものの、良好な外観が保たれている場合は○、指で擦
った部分に剥離または亀裂等が生じ外観不良が発生して
いる場合は△、流水中から取り上げた時点で剥離や亀裂
が生じており、外観不良が発生している場合は×で示し
た。

【００４６】実施例１ポリビニルアルコール（日本合成化学（株）製、ゴーセ
ノールＧＨ−１７（ケン化度；８８モル％、分子量；８
万）１００重量部を水９００重量部に溶解し、これにジ
（メタクリロイルオキシエチル）アシッドホスフェート
の２重量部と光重合開始剤としてダロキュア−１１７３
（日本チバガイギー（株）製）を０．１重量部添加し、
混合撹拌をしてコーティング液を得た。

【００４７】これを、アルミニウム蒸着シート（基材シ
ート；３０μｍの厚みのポリエチレンシート、アルミニ
ウムの蒸着；シートの片面、アルミニウム蒸着箔の厚
み；１μｍ）のアルミニウム蒸着面、または３０μｍの
厚みのステンレス鋼（ＳＵＳ３０４Ｈ）シートに、乾燥
後のインク記録塗膜層が８ｇ／ｍ²の存在量になるよう
にバーコーターにて塗布して１００℃で温風乾燥後、紫
外線照射装置（東芝ライテック（株）製、高圧水銀灯：
８０Ｗ／ｃｍ×２灯、コンベアー速度：３ｍ／ｍｉｎ）
を用い紫外線を照射して重合させインク記録用材料を得
た。

【００４８】得られたインク記録用材料に前記インクジ
ェットプリンターにて印字して、インク記録層の性状等
を評価し、表１にその結果を示した。

【００４９】実施例２〜４、比較例１〜３実施例１において、ジ（メタクリロイルオキシエチル）
アシッドホスフェート及び重合開始剤の配合量を表１に
示す各量に変えた以外は実施例１と同様にしてコーティ
ング液を調合し、これを用いてインク記録用材料を得た
（実施例２〜４）。

【００５０】また、比較のために、実施例１においてジ
（メタクリロイルオキシエチル）アシッドホスフェート
を配合しないで調合したコーティング液（比較例１）、
或いはジ（メタクリロイルオキシエチル）アシッドホス
フェート及び重合開始剤が表１に示す量配合されたコー
ティング液（比較例２、３）を調合し、これを用いてイ
ンク記録用材料を得た。各インク記録層の評価結果を表
１に示した。

【００５１】実施例５〜６実施例１のジ（メタクリロイルオキシエチル）アシッド
ホスフェートを、表１に示したリン酸エステル基を有す
る重合性単量体に変えた以外は、実施例１と同様にして
コーティング液を調合し、これを用いてインク記録用材
料を得た（実施例５、６）。各インク記録層の評価結果
を表１に示した。

【００５２】

【表１】

【００５３】実施例７実施例１と同様にポリビニルアルコールとジ（メタクリ
ロイルオキシエチル）アシッドホスフェートを水に溶解
させ、更にポリビニルアルコール１００重量部に対して
ジエチレングリコールジメタクリレートを１０重量部と
光重合開始剤としてダロキュア−１１７３（日本チバガ
イギー（株）製）を０．６重量部添加し、混合撹拌して
コーティング液を得た。

【００５４】これを、実施例１と同様の方法で、アルミ
ニウム蒸着シート及びステンレス鋼シートに塗布し乾燥
後、紫外線を照射して重合させインク記録用材料を得
た。得られたインク記録層の評価結果を表２に示した。

【００５５】実施例８〜１１、比較例４実施例７においてジ（メタクリロイルオキシエチル）ア
シッドホスフェートとジエチレングリコールジメタクリ
レートの各配合量及び重合開始剤の配合量を表２に示す
各量に変えた以外は、実施例７と同様にしてコーティン
グ液を調合し、これを用いてインク記録用材料を得た。
得られたインク記録層の評価結果を表２に示した。（実
施例８〜１１）また、比較のために、実施例７においてジ（メタクリロ
イルオキシエチル）アシッドホスフェートを配合しない
で調合したコーティング液（比較例４）を調合し、これ
を用いてインク記録用材料を得た。各インク記録層の評
価結果を表３に示した。

【００５６】実施例１２〜１３実施例７のジ（メタクリロイルオキシエチル）アシッド
ホスフェートを、表２に示したリン酸エステル基を有す
る重合性単量体に変えた以外は、実施例７と同様にして
コーティング液を調合し、これを用いてインク記録用材
料を得た（実施例１２、１３）。使用したリン酸エステ
ルの種類及び配合量と、得られた各インク記録層の評価
結果を表２に示した。

【００５７】実施例１４〜１６実施例７において、ジエチレングリコールジメタクリレ
ートを、表２に示した重合性単量体に変えた以外は、実
施例７と同様にしてコーティング液を調合し、これを用
いてインク記録用材料を得た（実施例１４、１５）。各
インク記録層の評価結果を表２に示した。

【００５８】実施例１７〜１８実施例７のポリビニルアルコールを、ポリビニルピロリ
ドン（ＢＡＳＦ社製、Ｋ−８０分子量；２５万）また
はヒドロキシプロピルメチルセルロース（信越化学工業
（株）製、メトローズ６５ＳＨ５０分子量；１０万）
に変えた以外は、実施例７と同様にしてコーティング液
を調合し、これを用いてインク記録用材料を得た（実施
例１７、１８）。使用した水溶性高分子の種類及び配合
量と、得られた各インク記録層の評価結果を表２に示し
た。

【００５９】

【表２】

【００６０】

【表３】

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 2H086 BA02 BA18 BA31 BA35 4J038 BA021 BA121 BA171 BA191 CE021 CE051 CG031 CG171 CK031 DB001 DF021 DG001 FA122 FA212 FA282 KA03 MA08 MA09 NA01 NA12 PA17 PA19 PB11 PC02

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ａ）水溶性高分子１００重量部、ｂ）少な
くとも０．０１重量部がリン酸エステル基を有する重合
性単量体である重合性単量体成分０．０１〜５０重量
部、ｃ）重合開始剤１×１０^-5〜５重量部よりなる組成
物の水溶液からなる、金属体表面に形成されるインク記
録層用コーティング液。
【請求項２】ｂ）重合性単量体成分のうちの少なくとも
３重量％が、架橋性重合性単量体である請求項１記載の
金属体表面に形成されるインク記録層用コーティング
液。
【請求項３】ａ）水溶性高分子１００重量部、ｄ）リン
酸エステル基を有する重合体０．０１〜５０重量部より
なるインク記録層が、金属体表面に１〜２０ｇ／ｍ²の
量で存在してなるインク記録用材料。
【請求項４】請求項１記載のインク記録層用コーティン
グ液を金属体表面に層状に塗布した後、重合処理を施す
ことを特徴とするインク記録用材料の製造方法。