JP2000133464A - 有機電界発光素子 - Google Patents

有機電界発光素子

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JP2000133464A
JP2000133464A JP10304906A JP30490698A JP2000133464A JP 2000133464 A JP2000133464 A JP 2000133464A JP 10304906 A JP10304906 A JP 10304906A JP 30490698 A JP30490698 A JP 30490698A JP 2000133464 A JP2000133464 A JP 2000133464A
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Japan
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organic
layer
cathode
anode
semiconductor material
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Application number
JP10304906A
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English (en)
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Motofumi Suzuki
基史 鈴木
Takahiro Ozawa
隆弘 小澤
Hisayoshi Fujikawa
久喜 藤川
Atsushi Miura
篤志 三浦
Yasunori Taga
康訓 多賀
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K2102/00Constructional details relating to the organic devices covered by this subclass
    • H10K2102/301Details of OLEDs
    • H10K2102/302Details of OLEDs of OLED structures
    • H10K2102/3023Direction of light emission
    • H10K2102/3031Two-side emission, e.g. transparent OLEDs [TOLED]

Abstract

(57)【要約】 【課題】 有機EL素子の発光特性が高く、かつ耐久性
の良い実用性に優れた素子の提供。 【解決手段】 陽極30および陰極22と、これらに挟
まれた1層または複数層の有機層24を有する有機EL
素子において、陽極30として、例えばITO,Au
等、仕事関数の大きい透明電極又は金属電極を用い、陰
極22として、バンドギャップが大きく可視光領域で透
明で、仕事関数の小さいn型の半導体材料を用いる。陰
極22として用いられる半導体材料が、バンドギャップ
が3.0eV以上であれば、可視光領域でほぼ透明であ
り、透明電極として用いることが可能となる。また、隣
接する有機層24の電子親和力と同程度の電子親和力と
することで、該陰極22の有機層24との界面における
エネルギのスパイクを小さくできる。隣接する有機層2
4の仕事関数よりも半導体材料の仕事関数が小さけれ
ば、有機層24と陰極22との間にエネルギ障壁が形成
されてしまうことが防止できる。このようなn型半導体
材料は、例えばGaN系化合物半導体が好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、有機化合物を利
用した有機電界発光素子(以下有機EL素子という)に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、情報化社会の進歩に伴い、従来の
CRTよりも低消費電力でかつ薄型のディスプレイへの
ニーズが高まっている。この様なディスプレイとしては
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイがあり、すで
に実用化されている。しかし、時代のニーズはさらに高
度化し、さらに低消費電力化、鮮明なフルカラー化が望
まれている。
【0003】最近、それらのニーズを背景に、有機化合
物を利用した有機EL素子への期待が高まっている。こ
れまでに報告されている素子の構造としては、陽極およ
び陰極の間に1層または複数層の有機化合物層が挟まれ
た構造となっており、有機化合物層としては2層構造あ
るいは3層構造がある。
【0004】2層構造の例としては、陽極と陰極との間
に正孔輸送層と発光層が形成された構造(特開昭59−
194393号公報、Appl.Phys.Lett.51,913(1987))
又は陽極と陰極との間に発光層と電子輸送層とが形成さ
れた構造(USP No.5,085947、特開平2−250952
号公報、Appl.Phys.Lett.55.P1489(1989))がある。ま
た、3層構造の例としては、陽極と陰極との間に正孔輸
送層と発光層と電子輸送層とが形成された構造(Appl.P
hys.Lett.57,531(1990))がある。また、単一層に全て
の役割を持たせた単層構造(Nature,347,539(1990)、Ap
pl.Phys.Lett.61,761(1992))も高分子や混合系で報告
されている。
【0005】図8は、一般的に知られた有機EL素子の
構成を示している。図示するように、この素子は、ガラ
スなどの透明基板10上に設けられた陽極12と陰極1
8との間に、有機化合物層である発光層16と正孔輸送
層14とが形成された2層構造を備えている。この場合
の発光層16は、電子輸送層の機能も果している。
【0006】これら有機EL素子における発光メカニズ
ムは、陽極12から注入された正孔と陰極18から注入
された電子とが、正孔輸送層14あるいは電子輸送層を
介して発光層16に到達し、そこで再結合することによ
って発光層16を構成する有機化合物の励起状態を作り
出し、その励起状態が基底状態に戻るときに有機化合物
の蛍光と同じ波長の光を放出するというものである。
【0007】発光層用材料として用いられる有機化合物
は強い蛍光性を示す材料である。上記正孔輸送層14、
発光層16、電子輸送層に使用可能な材料としては、こ
れまで様々な有機化合物が報告されている。
【0008】たとえば、正孔輸送層の材料としては、芳
香族3級アミンが報告されている。発光層16の材料と
しては、以下の化学式で表されるアルミニウムトリスオ
キシン(特開昭59−194393号公報、特開昭63
−295695号公報)や、スチリルアミン誘導体、ス
チリルベンゼン誘導体(特開平2−209988号公
報)が報告されている。また、電子輸送層の材料として
は、オキサジアゾール誘導体等(Appl.Phys.Lett.63,20
32(1993))が報告されている。
【0009】更に、これら低分子量の化合物ばかりでは
なく、高分子量の化合物でも多くの報告例があり、特に
ポリ(P−フェニレンビニレン)系誘導体(Nature,34
7,539(1990))は、単層構造の素子でも良好な特性が得
られている。
【0010】一方、これら有機物に効率良く電子、正孔
を注入するための電極としては、陰極18には仕事関数
の小さいMg,Ca等の金属、あるいはそれらを主成分
とする合金が用いられ、陽極12には透明電極として一
般的なITO(Indium Tin Oxide)が用いられている。
【0011】そして、これらの材料を使用した有機EL
素子は、その発光色や明るさから見て、発光素子として
の性能は十分に実用レベルにある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの有機
EL素子は未だ実用に至っていない。その最大の原因は
素子の耐久性が乏しいことにある。
【0013】これまで、様々な素子構造および有機化合
物を採用することにより、初期的には数1000cd/
2 の高輝度が直流電圧10V程度で構成されている
が、連続駆動あるいは長期保存によって輝度の低下と駆
動電圧の上昇といった特性の劣化が起り、これが有機E
L素子の実用化を妨げている。
【0014】素子の寿命を決定する重要な要因の一つ
に、電極界面における電子、正孔の注入効率の問題があ
げられる。電極界面において、電子、正孔の注入効率が
悪いと、素子を駆動する電力が上昇し、ひいては素子の
劣化を引き起す。さらに、消費電力の観点からも、電極
界面における電子、正孔の注入効率の向上が望まれる。
【0015】図9に有機EL素子を構成する典型的な材
料のエネルギー準位を示した。これらの材料を積層した
場合、図10に示すような電子状態をとると考えられ
る。この場合、陰極Mgと発光層(アルミキノリノール
錯体Alq3)の界面で、電子に対するエネルギーの障
壁が存在する。同様に、陽極と正孔輸送層の界面にも正
孔に対するエネルギー障壁が存在する。このような障壁
の存在は、電子や正孔の注入効率を低下させるため好ま
しくない。
【0016】一般的に、前記の有機材料に効率良く電
子、正孔を注入するために、界面でのエネルギー障壁を
無くす必要があり、そのためには陰極に仕事関数の小さ
な材料を用い、陽極には仕事関数の大きな材料を用いる
とよいとされている。
【0017】ここで、有機EL素子では、陰極、陽極の
少なくともどちらか一方を透明電極にする必要がある
が、従来用いられている透明電極ITOの仕事関数は大
きく、陽極に使うことが好ましい。必然的に陰極には仕
事関数の小さな金属を用いる必要がある。仕事関数の小
さな金属にはLi,Na,Mg,Ca等のアルカリ金
属、アルカリ土類金属があるが、これらは非常に活性な
金属であるため、素子の耐久性を低下させる原因になっ
ている。また、陰極材料として考えた場合に、その仕事
関数も必ずしも十分小さいとはいえない。一方、陽極材
料に用いるITOの仕事関数も、正孔輸送材料との界面
で障壁を作らない程十分に大きいとはいえない。したが
って、素子の効率、耐久性の向上のためには新たな電極
材料の開発が重要である。
【0018】陰極材料(電子注入層)として、ダイアモ
ンドを用いることがUSP NO.5349209に開示されている。
しかし、ダイアモンドは良好なn型半導体にすることが
困難であり、陰極材料などに用いるには、電気抵抗が大
きすぎるという問題がある。また、ダイアモンドの電子
親和力が非常に小さいために、有機層との界面に大きな
エネルギースパイクが生じ、電子を効率よく注入するこ
とができない。
【0019】また、特開平1−312874号公報、特
開平2−196475号公報に、少なくとも一方が透
明、又は透光性の電極層間に、無機半導体層のキャリア
注入層を挿入した例が開示されている。しかし、これら
の例では、用いる半導体の透光性が十分高くないため、
発光が半導体層で吸収されてしまい、効率を低下させ
る。さらに、有機層と半導体層界面における電子状態が
考慮されておらず、界面でのキャリアに対するエネルギ
ー障壁や、ノッチの存在によって、キャリアの注入効率
が必ずしも向上しないという問題がある。
【0020】また、これら有機EL素子を用いた画像の
表示を考えた場合、高度に進歩した液晶表示素子に対抗
できるだけの性能を持たせるためには、薄膜トランジス
タ(TFT)を用いた能動的な駆動法と多色化が必須で
ある。しかし、発光層等に用いられる有機物が、水分、
プラズマ、熱等に弱いため、従来の半導体微細加工技術
の応用にはかなりの制限が課せられることも問題になっ
ている。
【0021】本発明は、これらの有機EL素子における
問題を解決し、また、この有機EL素子を用いた表示装
置などの製造を実現可能とする技術を提供することを目
的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
にこの発明は、以下のような特徴を有する。
【0023】まず、この発明は、陽極および陰極と、こ
れらに挟まれた1層または複数層の有機化合物層より構
成される有機電界発光素子であり、陽極として、仕事関
数の大きい金属又は透明電極が用いられている。一方、
陰極としては、バンドギャップが大きく可視光領域で透
明で、仕事関数の小さいn型の半導体材料を用いること
を特徴とする。
【0024】可視光領域で透明なn型半導体は、透明電
極として用いることができ、更に従来陰極として用いら
れていたアルカリ金属やアルカリ土類金属等に比べて化
学的に安定であるため、電極の腐食や、酸化等による素
子の特性劣化を抑制でき、素子寿命を向上させることが
可能となる。
【0025】また、陰極に上記のような半導体を用いた
場合、陽極を必ずしも透明とする必要がなくなるため、
より仕事関数の大きな金属を用いることができる。従来
の素子で陽極に用いられているITOよりも仕事関数の
大きな金属は、例えばNi,Pd,Ir,Pt,Au等
であり、化学的に安定な物質が多く、材料選択の幅が広
がる。したがって、陰極にアルカリ土類金属、陽極にI
TOを用いた従来の素子に比べ、本発明の有機電界発光
素子では、陽極、陰極のいずれの電極も化学的に安定で
あるため、耐久性の極めて高い素子を提供することがで
きる。
【0026】更に、本発明の有機電界発光素子におい
て、上記陰極として用いる半導体材料にはn型にドープ
されていることにより仕事関数が十分小さくなってい
る。したがって、従来の素子に比べ、陰極の仕事関数を
小さく、陽極の仕事関数を大きくでき、電極と有機層の
界面での電子や正孔に対するエネルギー障壁をなくすこ
とができ、電子と正孔を非常に効率よく有機層に注入す
ることができる。よって、素子の特性としては、低電圧
で輝度の高い、高効率の特性を得ることが可能となる。
【0027】また、本発明の他の特徴は、上記半導体材
料が、バンドギャップが3.0eV以上で、電子親和力
が隣接する有機層の電子親和力と同程度の値であり、か
つ、ドーピングによってn型にした際に、仕事関数が、
隣接する有機層の仕事関数よりも小さいことである。
【0028】このように、陰極として用いられる半導体
材料のバンドギャップが3.0eV以上であれば、可視
光領域でほぼ透明であり、透明電極として用いることが
可能となる。また、隣接する有機層の電子親和力と同程
度の電子親和力であれば、該陰極の有機層との界面にお
けるエネルギのスパイクを小さくできる。更に、隣接す
る有機層の仕事関数よりも半導体材料の仕事関数が小さ
ければ、有機層と陰極との間にエネルギ障壁が形成され
てしまうことが防止できる。したがって、このような半
導体材料を陰極として用いることで、電子、正孔を効率
的に有機層に注入可能であるため低電圧で発光輝度が高
く、また、耐久性が高く、実用性に優れた素子を得るこ
とが可能となる。
【0029】この様な半導体材料としては、例えば、G
aN系、AlN系、ZnO系、ZnS系等の化合物半導
体等が適用可能であるが、特に、GaN系化合物半導体
は、比較的容易にn型を作製でき、一般的に用いられる
有機物の電子親和力と同程度の電子親和力を有し、かつ
化学的に安定であり、微細加工技術が確立されているた
め有機ELの陰極として好適である。
【0030】本発明の他の特徴は、上述の有機電界発光
素子において、前記陰極を構成する前記半導体材料の一
部を能動層として用いた薄膜トランジスタを有し、該薄
膜トランジスタによって素子での発光を制御することで
ある。
【0031】有機層に流れ込む電流をこの薄膜トランジ
スタによって制御できるため、基板上に複数の有機電界
発光素子を形成し、各素子を選択的に発光させることが
容易で表示品質の高い表示装置とすることができる。ま
た、この薄膜トランジスタの能動層を上述のような半導
体材料からなる素子陰極と兼用させることができるた
め、各素子に薄膜トランジスタを作り込むことによる製
造工程の増加を最小限に抑えることができる。また、有
機層の陽極あるいは陰極と、薄膜トランジスタとを異な
る材料で形成すると、素子電極材料と薄膜トランジスタ
との接続部における接触抵抗が加わることとなり、その
分有機電界発光素子に流す電流が少なくなってしまう。
しかし、本発明のように薄膜トランジスタの能動層と有
機電界発光素子の陰極とを兼用させれば、非常に効率の
良い素子を作製することが可能となる。
【0032】本発明の更に別の特徴は、上述の有機電界
発光素子が、素子外へ射出される発光光を所望の色とす
るための色変換層を備え、該色変換層が、前記半導体材
料を用いて形成された前記陰極の少なくとも一部、又は
該陰極とは別に形成された前記半導体材料によって構成
され、該半導体材料には変換色に応じて組成が調整され
又は変換色に応じて所定濃度の不純物が添加されている
ことである。
【0033】従来のように色変換層として、蛍光色素あ
るいは蛍光顔料と樹脂などからなるバインダー等を用い
ると、蛍光量子効率の経時変化が大きく、長時間使用す
ると蛍光強度が低下し発光色も変わってしまうという問
題や、有機電界発光素子の他層を形成する過程で色変換
層が変質して蛍光効率が低下しやすいという問題点があ
った。しかし、陰極を構成する半導体材料と概ね等しい
或いは同一材料で色変換層を形成するため、このような
半導体材料からなる色変換層が長時間安定した光変換特
性を発揮する。例えば、有機電界発光素子の半導体材料
がGaN系半導体である場合に、色変換層として、例え
ばInGaN系半導体が適用可能である。このような材
料は、発光効率が高く長時間使用しても特性の低下はほ
とんどない。また組成を制御することで様々な発光色が
実現できるほか、微細加工が容易で高精細な多色発光素
子の作製が可能となるとともに、安定な材料であるため
後工程における特性低下もない。また陰極材料の一部と
しても利用することが可能であるから、色変換層を有機
層、例えば発光層(電子輸送層)の直下に形成すること
ができ、発光層での発光を効率よく変換できる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いてこの発明の好
適な実施の形態(以下実施形態という)について説明す
る。
【0035】[実施形態1]図1は、本実施形態1に係
る有機EL素子の構成を示している。有機EL素子で
は、陰極22と陽極30の間に挟まれている有機層24
に対し、電子・正孔を効率よく注入するために、仕事関
数の小さい陰極22と仕事関数の大きな陽極30を用い
る必要がある。従来は、上述のように陰極は金属、陽極
は透明電極とする固定観点があったが、本実施形態1で
は、陰極22として、バンドギャップが大きく可視光領
域で透明であるn型半導体材料を用い、一方陽極30と
しては、仕事関数の大きい金属材料を用いている。
【0036】本実施形態1のような陰極22に使用でき
る半導体としては、GaN系化合物半導体、AlN系化
合物半導体、ZnO系化合物半導体、ZnS系化合物半
導体等がある。これらの半導体材料はバンドギャップが
大きく、電子親和力が小さく、Si等をドープしてn型
にした場合に、アルカリ金属やアルカリ土類金属に比べ
てその仕事関数が同等かもしくはそれよりも小さくな
る。また、電気抵抗を十分小さくすることも可能であ
る。さらにバンドギャップが3eV以上であれば、可視
光領域ではほぼ透明であるため、透明電極として用いる
ことができる。また、このような半導体は、アルカリ金
属やアルカリ土類金属に比べて化学的に安定であるた
め、電極の腐食、酸化による素子の劣化を抑制すること
ができる。
【0037】ここで、陰極22に隣接する有機層24
(本実施形態1では有機発光層26)との界面における
エネルギースパイクを小さくするためには、陰極22で
ある半導体と、有機層24の電子親和力の差が小さいこ
とが望ましい。この様な条件を考慮すると、陰極22と
して窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体(Inx
yAl1-x-yN:0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y
≦1)が好適である。このGaN系化合物半導体は、比
較的容易にn型を作製することができ、一般的に発光層
等に用いられる有機物の電子親和力と同程度の電子親和
力を有し、かつ化学的に安定であるためである。更に、
このGaN系化合物半導体は、微細加工技術が確立され
ており、この点からも、有機EL素子の陰極22として
最も好ましい。
【0038】陰極22に上記のような半導体を用いた場
合、陽極30には仕事関数の大きな金属を用いることが
できる。従来の素子で陽極に用いられているITOより
も仕事関数が大きい金属は、Ni,Pd,Ir,Pt,
Au等があり、化学的に安定な物質が多い。したがっ
て、陰極にアルカリ土類金属、陽極にITOを用いた従
来の素子に比べ、本実施形態1で示す素子は、陰極、陽
極のいずれの電極も化学的に安定であり、耐久性を非常
に高くすることが可能である。但し、陽極30としてI
TOを用いても良く、この場合には、完全に透明な有機
EL素子を構成することができ、陽極側からも光を取り
出すことができる。
【0039】また、本実施形態1に係る有機EL素子
は、耐久性だけでなく、発光効率そのものも向上する。
例えば、陰極22にGaN系半導体を用い、陽極30に
Au、発光層26としてアルミキノリノール錯体Alq
3 、正孔輸送層28としてトリフェニルアミン四量体T
PTEを用いた場合において、図2は各層が孤立してい
る場合のエネルギー準位を示している。素子を構成する
ためにこれらの層を積層した場合のエネルギー準位を図
3に示す。
【0040】まず図2に示すように、GaNの電子親和
力は2.7eVであり、n型にした場合、仕事関数はこ
の値とほぼ同程度まで小さくなる。一方、陽極30のA
uの仕事関数は5.1eVである。従来の素子に用いら
れる電極に比べて陰極22の仕事関数が小さく、陽極3
0の仕事関数が大きいため、図9と図3との比較から理
解できるように、電極と有機層の界面での電子や正孔に
対するエネルギー障壁は存在しない。このため、電子と
正孔を非常に効率よく有機層に注入することができる。
したがって、陽極30と陰極22間に低電圧を印加する
ことで、輝度の高い、高効率の発光特性の有機EL素子
を実現することが可能となる。
【0041】
【実施例1】以下に、図1に示す本実施形態1に係る有
機EL素子の製造条件等の一実施例を示す。
【0042】(1)GaN成膜 GaNは、有機金属気相成長法(以下「MOVPE:Me
tal Organic Vapor Phase Epitaxy」と記す)による気
相成長により製造した。用いられたガスは、アンモニア
(NH3)、ギャリアガス(H2)、トリメチルガリウム
(Ga(CH33)(以下「TMG」と記す)、トリメ
チルアルミニウム(Al(CH33)(以下「TMA」
と記す)、トリメチルインジウム(In(CH33
(以下「TMI」と記す)、シラン(SiH4)、ジエ
チル亜鉛(Zn(C25 2)(以下、「DEZ」と記
す)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5
52)(以下「CP2Mg」と記す)、アルシン(A
sH3)及びジメチル亜鉛(以下「DMZ」と記す)で
ある。
【0043】まず、有機洗浄及び熱処理により基板20
である単結晶サファイア基板のa面を洗浄し、このa面
を主面としてサファイア基板20をMOVPE装置の反
応室に載置されたサセプタに装着した。次に、常圧でH
2 を流速2リットル/分で約30分間反応室に流しなが
ら温度1100℃でサファイア基板20をベーキングし
た。次に、温度を1150℃に保持し、H2 を20リッ
トル/分、NH3 を10リットル/分、TMGを1.7
×10-4モル/分、H2 ガスにより0.86ppmに希
釈されたシランを20×10- 8モル/分で導入し、膜
厚約2.0μm、シリコン(Si)ドープのn型GaN
から成る有機EL用の陰極22を作製した。
【0044】(2)有機EL層、電極層の成膜 上記の方法で作製した陰極(GaN)22の上に、有機
発光層26を形成した。具体的には、真空蒸着法により
真空度約2×10-7Torr、蒸着速度約30Å/分の
条件でアルミキノリノール錯体(Alq3 )を約600
Å形成し、これを有機発光層26とした。その上に、発
光層26と同条件でトリフェニルアミン四量体(TPT
E)を約600Å形成し、これを有機正孔輸送層28と
した。
【0045】陽極30は、真空度1×10-6Torr、
蒸着速度約150Å/分でAuを約1000Å成膜する
ことにより形成した。
【0046】以上のようにして得られる有機EL素子の
1個当たりの大きさは3mm×3mmであり、25mm
×35mmの基板20上に6個作製した。
【0047】比較例1として、ガラス基板上に高周波マ
グネトロンスパッタ法でITOを1500Å成膜して陽
極30とし、その上に、上記と同様の方法で、正孔輸送
層、発光層、を600Åづつ蒸着した後、MgAg電極
を真空蒸着し、比較用の有機EL素子を作製した。
【0048】比較例2として、ガラス基板上に高周波マ
グネトロンスパッタ法でITOを1500Å成膜して陽
極30とし、その上に、上記と同様の方法で、正孔輸送
層、発光層を、600Åづつ蒸着した後、LiFを5Å
蒸着し、その上にAl電極を1500Å真空蒸着し、比
較用の有機EL素子を作製した。
【0049】(3)特性評価 以上のように作製した有機EL素子(実施例1、比較例
1、比較例2)の各陽極側に正、陰極側に負の直流電圧
を印加し、基板側からの発光を観察した。なお、本実施
形態1に係る有機EL素子では、積層構造が従来の素子
と逆である。つまり、実施例1では金属電極が陽極30
であり観察する基板側というのは陰極側となるのに対
し、比較例1,2の有機EL素子では金属電極が陰極2
2であって観察する基板側とは、陽極側を意味する。
【0050】図4は、実施例1に係る有機EL素子と、
比較例1及び2の有機EL素子の発光特性を示してい
る。横軸は電極間に印加する電圧であり、縦軸は光電子
増倍管で測定した発光強度である。比較例1のMgAg
−ITO系の素子では、発光開始電圧が約2.0V、比
較例2のLiF/Al−ITO系の素子では、発光開始
電圧が約1.7Vである。これらに対し、本発明に係る
実施例1のGaN−Au系の電極を用いた素子では、発
光開始電圧が約1.2Vまで大幅に低下し、発光効率が
大幅に改善されていることが分かる。
【0051】[実施形態2]本実施形態2に係る有機E
L素子は、上記実施形態1のように陰極としてn型半導
体材料(例えばGaN系)を用いた有機EL素子が、各
素子での発光を制御するスイッチング素子として薄膜ト
ランジスタ(TFT)を内蔵している。
【0052】図5は、このような本実施形態2に係る有
機EL素子の構成を示している。
【0053】有機EL素子の陰極32として用いるn型
半導体材料、例えばGaN系半導体材料は、必ずしも単
結晶である必要はなく、多結晶でも十分な特性が得られ
る。このため、GaNをトランジスタ能動層として用い
てTFTを構成することができ、この様なTFTを内蔵
することで有機EL素子の選択的な駆動が可能になる。
【0054】本実施形態2において、ガラスやサファイ
ア等の透明基板20上に形成される有機EL部は、上述
の実施形態1と同様に、陰極32としてGaN等の半導
体材料が用いられ、この陰極32と、仕事関数の大きな
陽極30との間に多層構造(単層でも可)の有機層24
が形成されている。
【0055】素子のTFT部は、能動層(TFT能動層
兼用陰極:半導体層)と、この能動層(陰極32)上に
形成されたゲート電極36、及び能動層(陰極32)と
透明基板20との間に形成された配線層34を備える。
ここで、配線層34に用いられる金属材料は、Al等、
能動層であるn型GaN(陰極32)とのオーミック性
のよい材料が好ましい。配線層と34一部重なるように
成膜したGaN層(陰極32)の上には、仕事関数の大
きなAu,Ni等の薄膜が形成され、これがTFT部の
ショットキーゲート電極36をなす。有機層24に流れ
込む電流は、このショットキーゲート電極36に印加さ
れる電圧によって制御される。また適当な絶縁層38に
よって、配線層、ゲート電極等と直接接触しないように
有機層24が形成されており、その上に陽極30が形成
されている。
【0056】有機EL素子において、これまでにも、T
FTによるアクティブマトリックス駆動を行うディスプ
レイが提案されている(特開平10−189252号公
報、特開平10−161563号公報)。これらの技術
は単純駆動に比べて高精細ディスプレイが可能となり、
また駆動電圧が低減できるなどの優れた特徴があった
が、下記のような問題があった。
【0057】即ち、これらの従来技術においては、TF
Tの能動層として、アモルファス状あるいは多結晶状の
シリコンが用いられており、発光層への電流注入を制御
するゲート部分はゲート電極−ゲート酸化膜−シリコン
の3層構造のいわゆるMOS(Metal-Oxide-Semiconduc
tor)構造をとっている。(i)このような多層構造では製
造プロセスが複雑で効率的な素子作製が困難であるとと
もに、ゲート酸化膜の厚さにより特性が大きく異なる性
質があり、ディスプレイとした場合に、各画素の発光状
態を均一に制御することが難しい。(ii)また有機EL素
子をより明るく発光させるためにはより多くの電流を流
す必要があるが、アモルファスあるいは多結晶シリコン
の電子移動はせいぜい数10cm2 /V/s程度と小さ
い。このため電気抵抗が大きく、また有機EL層の陽極
あるいは陰極と、TFTとが異なる材料で形成されてい
ることにより、電極材料とTFTの接続部における接触
抵抗が加わって、有機EL素子に流す電流値を高くでき
なかった。(iii)さらにシリコンはバンドギャップが
1.2eVと小さいため、温度によるTFTの特性変化
が大きいという問題もあった。
【0058】これに対し、本実施形態2のように有機E
L素子の陰極(GaN)をTFTの能動層に兼用したT
FT内蔵型の有機EL素子は、TFTのゲート部分がゲ
ート電極−GaN層の2層のみからなるいわゆるMES
(MEtal-Semiconductor)構造であり、簡便な製造プロ
セスで作製できる。また、均一な素子形成が可能で、デ
ィスプレイの全面にわたって均一な発光が可能となる。
またGaNの電子移動度は、単結晶で800cm2 /V
/s以上、アモルファスあるいは多結晶状であっても2
00cm2 /V/s以上と多結晶のシリコンよりも大き
く、また陰極32と、TFTの能動層とを同じGaNを
用いて形成したことで、両者の接触抵抗は無い。したが
って、電気抵抗が従来より大幅に小さくなり、同じサイ
ズの有機EL素子で、より大きな電流を流すことがで
き、有機EL素子の高輝度化が図られる。また、GaN
系化合物半導体は、バンドギャップが3.4eVと大き
く温度による特性の変化が小さいという特徴もある。
【0059】また、この様なGaN−TFTを用いた有
機EL素子は、従来のようなシリコンTFTを用いた場
合に比較して、輝度が20%程度向上し、また各画素の
輝度等のばらつきも従来の3%程度から1%以内に低減
されている。
【0060】
【実施例2】以下に、図5に示す本実施形態2に係るT
FT内蔵型有機EL素子の製造条件等の一実施例を示
す。
【0061】ガラス基板20上に真空蒸着法によってA
lを膜厚1μm蒸着し、フォトリソグラフィーによるパ
ターニングと湿式エッチングとを行って、配線層34を
形成した。
【0062】次に、基板温度を500℃に保持し、H2
を20リットル/分、NH3 を10リットル/分、TM
Gを1.7×10-4モル/分、H2 ガスにより0.86
ppmに希釈されたシランを20×10-8モル/分で導
入し、膜厚約2.0μm、シリコン(Si)ドープの多
結晶n型GaNを形成し、これにより有機EL部の陰極
32を作製した。この陰極32をリアクティブイオンエ
ッチングによって所望のパターンとした後、該陰極32
の上に、スパッタリングによって、Au/Niの二層膜
を形成し、所定の形状にパターニングすることでゲート
電極36を作製した。
【0063】更に、これら配線層34、陰極(GaN)
32及びゲート電極36を覆うように、スパッタリング
によって膜厚1μmのSiO2 からなる絶縁層38を形
成した。その後、リアクティブイオンエッチングによっ
て、発光領域を形成する部分を開口した。
【0064】次に、真空蒸着法により蒸着速度約30Å
/分の条件で、Alq3 を約600Å形成しこれにより
有機発光層を得た。この有機発光層の上には、発光層と
同条件でTPTEを約600Å形成し、有機正孔輸送層
を得た。最後に、陽極30として、蒸着速度約150Å
/分でAuを約1000Å形成した。
【0065】以上のようにして得られた有機EL素子の
配線層34に負、陽極30に正の直流定電圧を印加し、
さらにTFTのゲート電極36に負の制御用電圧を印加
したところ、有機EL部での発光強度を制御できること
が確認された。
【0066】[実施形態3]本実施形態3に係る有機E
L素子は、発光層からの光を異なる波長に変換して多色
発光を可能としたカラーディスプレイなどに用いるた
め、色変換層を備える。そして、上述の実施形態1及び
2において有機EL素子の陰極として用いているGaN
系化合物半導体材料をこの色変換層の材料としても用い
ている。
【0067】GaN系化合物半導体は、バンドギャップ
が3.4eVあり、青色のフォトルミネッセンスを示す
材料であるが、この波長を、GaNにInを添加するこ
とによって長波長側にシフトさせることができる。例え
ば、In0.43Ga0.57Nに不純物としてZn,Siをド
ープした物は、緑色のフォトルミネッセンスを示す。ま
た、In0.87Ga0.13Nに不純物としてZn,Siをド
ープした物は、赤色のフォトルミネッセンスを示す。
【0068】図6は、本実施形態3に係る有機EL素子
の概略構成の一例を示している。なお、図6の有機EL
素子は、色変換層を除けば、図5に示すTFT内蔵型有
機EL素子(実施形態2)の構成と同様であり、対応す
るものには同一符号を付して説明を省略する。
【0069】ガラス基板20上には、色変換層40とし
て、3つの組成の異なるInGaN層が形成されてお
り、それぞれ青、緑、赤色の色変換層(40B、40
G、40R)として用いる。上述のようにGaN半導体
は、青色のフォトルミネッセンスを示すため、青色の色
変換層は特に必要としないが、ここでは、色変換層とし
てInGaNを採用し、青色の色変換層40Bとして、
例えば、In0.08Ga0.92Nの組成とした場合を例に説
明する。緑色の色変換層40Gは、例えばIn0.43Ga
0.57Nの組成であり、また赤色の色変換層40Rは、例
えばIn0.87Ga0. 13Nの組成を有する。なお、本実施
形態において、GaNおよびInGaNは、実際には
「Inx Gay Al1-x-y N」(0≦x≦1、0≦y≦
1、0≦x+y≦1)で表わされるものである。
【0070】これらの色変換層40の上には、TFTの
能動層及び有機ELの陰極を兼用するn型GaN層32
が形成されており、その上には、有機層24が形成され
ている。本実施形態3のように色変換を行う場合、有機
層24としては、短波長の光が得られる材料を用いる必
要がある。したがって、有機発光層には、青色又はそれ
よりも短い波長の蛍光を示す材料を用いる。また、有機
層24上の所定の領域には、仕事関数の大きな材料を用
いた陽極30が形成されている。なお、図6では、各画
素毎に隔離された陽極30を形成した例を示している
が、TFTを用いて各有機EL素子を駆動する場合に
は、有機EL層への注入電流はTFTのゲート電圧で制
御されるため、陽極30は必ずしも分離されている必要
はない。
【0071】以上のような構成において、有機EL素子
の配線層34に負、陽極30に正の直流定電圧を印加
し、さらにTFTのゲート電極36に負の制御用電圧を
印加すると、有機層で発光した光が対応する色変換層4
0(40B、40G、40R)で青色、緑色、赤色にそ
れぞれ変換されて外部へ射出される。表示するイメージ
に応じて選択するTFTを制御すれば、対応する素子が
発光し所望のイメージが表示可能なフルカラーのディス
プレイを実現できる。
【0072】なお、図6及び以上の説明では、各色ごと
に色変換層40を形成した後、その上に陰極32を形成
しているが、各色変換層40と陰極32とを一体化した
構成でもよい。この場合、InGaNに不純物をドープ
してn型とし、また変換すべき色に応じてInGaNの
組成を調整して成膜して色変換層兼用の陰極を形成す
る。そして、各色に対応した素子については、例えば図
5に示すような素子構成とすればよい。
【0073】有機EL素子において発光層からの光の一
部を異なる波長の光に変換することで多色発光を可能に
したディスプレイが従来より提案されている(特開平1
0−177895号公報、特開平9−208944号公
報)。これらの技術は複数の発光層を用いることなく低
コストで多色発光が可能になるなどの優れた特徴があっ
たが、次のような問題があった。(i)従来技術では色変
換層は蛍光色素あるいは蛍光顔料と樹脂などからなるバ
インダーで形成されている。この色変換層では蛍光量子
効率の経時変化が大きく、長時間使用すると蛍光強度が
低下し発光色も変わってしまう。(ii)通常は色変換層を
形成して、その後にITO膜や有機EL層を形成する
が、その過程で色変換層が変質して蛍光効率が低下しや
すい。
【0074】しかし、本実施形態3の有機EL素子で
は、図6のような有機EL素子の色変換層として、例え
ばInGaNを用いている。InGaNは発光ダイオー
ド(LED)の発光層としても用いられている半導体
で、発光効率が高く長時間使用しても特性の低下はほと
んどない。また組成を制御することで様々な発光色が実
現できるほか、微細加工が容易で高精細な多色発光素子
の作製が可能となるとともに、安定な材料であるため後
工程における特性低下も全くない。また、陰極材料と共
通しているため実質的に陰極の一部として利用すること
ができ、これにより色変換層を発光層(電子輸送層)の
直下に形成することができ、発光層での発光を効率よく
変換できる。従来は基板上に色変換層−保護層−陽極
(ITO膜)−正孔輸送層−発光層(電子輸送層)と順
に形成され、色変換層と発光層との間にいくつもの層が
入る構造をとっているため、発光層での発光が分散し効
率よく色変換をすることができなかった。これに対し、
本実施形態3では、以上のようにInGaN色変換層を
用いており、従来と比較して色変換効率が20%向上
し、高効率・低コストの多色発光素子を提供することが
可能となる。
【0075】
【実施例3】以下に、図6に示すような本実施形態3に
係る有機EL素子の製造条件等の一実施例を図7を参照
して説明する。
【0076】まず、ガラス基板20上の上全面にスパッ
タ法により膜厚1μmの酸化シリコン(SiO2 )から
なる絶縁層50、膜厚0.1μmのチタン(Ti)から
なる第1犠牲層52を順次形成した。その後、これらの
上にフォトレジストを一様に塗布して、フォトリソグラ
フィにより色変換層に対応する部分のフォトレジストを
除去した(図7(a)参照)。
【0077】次に、図7(b)のように、残ったフォト
レジストをマスクとして下層の第1犠牲層52、絶縁層
50をエッチングし、その後、フォトレジストを除去し
た。
【0078】続いて、MOCVD法により、温度を30
0℃に保持しながら、N2 またはH2 を20リットル/
分、NH3 を10リットル/分、TMGを1.53×1
- 4 モル/分、TMIを0.02×10-4モル/分、
DEZを4.0×10-7モル/分、モノシランを5.0
×10-9モル/分で、20分供給して、膜厚約1μmの
In0.08Ga0.92Nから成るZnとSiを添加したIn
GaN54を形成した。
【0079】その後、エッチングにより第1犠牲層52
を除去すると、第1犠牲層52の上に形成されたInG
aN54が同時に除去されて青色発光の領域、即ち青色
の色変換層40Bが形成得られた(図7(d)参照)。
【0080】図7(d)に示すように、試料の上全面に
スパッタ法により、膜厚0.1μmのチタン(Ti)か
らなる第2犠牲層56を形成してパターニングを行っ
た。そして、図7(e)に示すように、MOCVD法に
より、温度を300℃に保持しながら、N2 またはH2
を20リットル/分、NH3 を10リットル/分、TM
Gを0.75×10-4モル/分、TMIを0.6×10
-4モル/分、DEZを4.0×10-7モル/分、モノシ
ランを5.0×10- 9 モル/分で、20分供給して、
膜厚約1μmのIn0.43Ga0.57Nから成るZnとSi
を添加したInGaN58を形成した。エッチングによ
り第2犠牲層56を除去すると、第2犠牲層56の上に
形成されたInGaN58が同時に除去されて緑色発光
の領域、つまり緑色の色変換層40Gが形成された。
【0081】次に、TMGを0.15×10-4モル/
分、TMIを1.0×10-4モル/分で他は同じ条件と
して同様なプロセスで膜厚約1μmのIn0.87Ga0.13
Nから成るZnとSiを添加した色変換層を形成するこ
とで、赤色発光の領域、つまり赤色の色変換層40Rが
形成された。
【0082】また、真空蒸着法によってAlを膜厚1μ
m蒸着し、フォトリソグラフィーによるパターニングと
湿式エッチングによって、色変換層40の上部の端面
に、配線層34を形成した。
【0083】その後、各色変換層40の上に、有機EL
の陰極兼TFTの半導体層となるn型GaN32を形成
し、スパッタリングによって成膜したSiO2からなる
絶縁層38を形成し、TFT部分を絶縁した。
【0084】更にこれらの上に、有機層24として青色
発光層となる亜鉛キレート錯体EM1を真空蒸着によっ
て試料の前面に成膜し、さらに、正孔輸送層TPTE
も、試料前面に蒸着した。その後、陽極としてAuを、
機械的なマスクを通して発光部の上部に成膜し、マルチ
カラーの有機EL素子を作製した。
【0085】この素子に、直流電流を流して発光特性を
測定したところ、各色変換層を通して得られる光のスペ
クトルのピーク波長は、それぞれ460nm、530n
m、660nmで、光の三原色である青色、緑色、赤色
の発光色を示すとともに、発光スペクトルの半値幅が小
さく色純度が優れた素子が得られた。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、この発明において
は、有機EL素子の陰極として、バンドギャップが大き
く可視光領域で透明で、仕事関数の小さいn型の半導体
材料を用いる。したがって、電子、正孔を効率的に有機
層に注入可能であるため低電圧で発光輝度の高い素子が
得られ、また、電極材料として化学的に安定な材料を用
いることができるため素子の耐久性が高まり実用性に優
れた素子を得ることができる。
【0087】また、薄膜トランジスタを素子内に内蔵す
る場合に、該トランジスタの能動層として有機EL素子
の陰極を利用すれば、各有機EL素子の発光制御を正確
にかつ効率よく行うことができる。
【0088】更に色変換層の材料として、有機EL素子
の陰極(薄膜トランジスタの能動層兼用の場合も含む)
を構成する半導体材料と共通化することで、化学的に安
定な色変換層を得られるとともに、有機層のすぐ近くに
この色変換層を形成することも可能であり有機層で発光
した光を効率的に色変換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る有機EL素子の構
成を示す図である。
【図2】 実施形態1の有機EL素子に用いられる各材
料の個別のエネルギー準位を示す図である。
【図3】 図2の各材料を積層した場合のエネルギー準
位を示す図である。
【図4】 実施例1と比較例1及び2の有機EL素子の
発光特性を示す図である。
【図5】 本発明の実施形態2に係る有機EL素子の構
成を示す図である。
【図6】 本発明の実施形態3に係る有機EL素子の構
成を示す図である。
【図7】 実施形態3に係る有機EL素子の製造工程の
一例を説明する図である。
【図8】 従来の有機EL素子の構成を示す図である。
【図9】 従来の有機EL素子に用いられる各材料の個
別のエネルギー準位を示す図である。
【図10】 図9の各材料を積層した場合のエネルギー
準位を示す図である。
【符号の説明】
20 透明基板、22 陰極、24 有機層、26 有
機発光層、28 有機正孔輸送層、30 陽極、32
陰極(TFT能動層兼用陰極)、34 配線層、36
ゲート電極(ショットキーゲート電極)、38,50
絶縁層、40,40B,40G,40R 色変換層、5
2 第1犠牲層、54,58 InGaN層、56 第
2犠牲層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤川 久喜 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 三浦 篤志 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 多賀 康訓 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 3K007 AB03 AB04 AB06 AB12 CB00 DA01 DB03 DC00 EB00 EC00 FA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極および陰極と、これらに挟まれた1
    層または複数層の有機化合物層より構成される有機電界
    発光素子であり、 前記陽極として、仕事関数の大きい金属又は透明電極が
    用いられ、 前記陰極として、バンドギャップが大きく可視光領域で
    透明で、仕事関数の小さいn型の半導体材料が用いられ
    ていることを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の有機電界発光素子にお
    いて、 前記半導体材料は、 バンドギャップが3.0eV以上で、 電子親和力が隣接する有機層の電子親和力と同程度の値
    であり、 かつ、ドーピングによってn型にした際に、仕事関数
    が、隣接する有機層の仕事関数よりも小さいことを特徴
    とする有機電界発光素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の有機電界
    発光素子において、 更に、前記陰極を構成する前記半導体材料の一部を能動
    層として用いた薄膜トランジスタを有し、該薄膜トラン
    ジスタによって素子での発光を制御することを特徴とす
    る有機電界発光素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記
    載の有機電界発光素子において、 更に、素子外へ射出される発光光を所望の色とするため
    の色変換層を備え、 該色変換層は、 前記半導体材料を用いて形成された前記陰極の少なくと
    も一部、又は前記陰極とは別に形成された前記半導体材
    料によって構成され、該半導体材料には変換色に応じて
    組成が調整され又は変換色に応じて所定濃度の不純物が
    添加されていることを特徴とする有機電界発光素子。
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