JP2000119816A - 高純度ガス用Fe基合金およびそれを用いた溶接継手 - Google Patents

高純度ガス用Fe基合金およびそれを用いた溶接継手

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JP2000119816A
JP2000119816A JP29103098A JP29103098A JP2000119816A JP 2000119816 A JP2000119816 A JP 2000119816A JP 29103098 A JP29103098 A JP 29103098A JP 29103098 A JP29103098 A JP 29103098A JP 2000119816 A JP2000119816 A JP 2000119816A
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gas
less
corrosion resistance
welded joint
welding
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JP29103098A
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Hiromasa Hirata
弘征 平田
Shigeki Azuma
茂樹 東
Yoshitomi Yamashita
良富 山下
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Kyodo Oxygen Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Kyodo Oxygen Co Ltd
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】半導体製造装置などで使用される、耐食性に優
れた高純度ガス用溶接継手の製造が可能になる。 【解決手段】重量%で、C:0.03%以下、Si:0.1%以
下、Mn:0.1%以下、Cr:20〜35%、Mo:0.1〜5%、N
b:0〜1%、Ti:0〜1%、Cu:0〜0.5%、W:0〜0.
5%、Ni:0〜5%で、不純物元素としてのSが0.005%
以下、Pが0.02%以下、Nが0.03%以下、Oが0.01%以
下、Insol.Alが0.005%以下であり、かつ下記の(1)、
(2)式を満足する高純度ガス用Fe基合金である。 [Sol.Al%]≦0.0002×[Cr%]+0.006 ・
・・ (1) [Sol.Al%]≦0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006 ・
・・ (2)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造装置などで
使用される高純度ガス用Fe基合金およびそれを用いた溶
接継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体等の製造においては、高集
積度化の進展にともない、1μm以下の微細なパターン加
工が必要とされている。このような製造プロセスでは微
小な塵や不純物(パーティクル)が配線に付着し、回路
不良の原因となることから、使用する反応ガスおよびキ
ャリアガスはともに高純度であることが要求される。ま
た、半導体製造用ガスとしては不活性ガス以外に塩素、
クロロシラン類といった腐食性のガスも使用されるの
で、ガス供給系を構成する部材にはこれらに対する高い
耐食性も併せて要求される。
【0003】従来、半導体製造用ガス供給系の構成部材
には、SUS316Lに代表されるオーステナイト系ステンレ
ス鋼が使用されてきた。特に、特開昭63-161145号公報
には、Mn、Si、Al、O等を規制することにより、非金属
介在物量を低減し、管内面側のパーティクルを低減しう
るオーステナイトステンレス鋼が開示されている。しか
し、ここで開示されるステンレス鋼は腐食性ガスに対す
る耐食性が十分でないため、最近になって、さらに特開
平7-243000号公報や特開平7-233476号公報において、
表面皮膜処理を前提とする耐食性の向上を図ったフエラ
イト系ステンレス鋼が提案されている。
【0004】例えば、特開平7-233476号公報には、Cr
を13〜35%含むフェライト系ステンレス鋼を不活性ガス
と微量のH20および/またはH2の混合ガスの雰囲気中で
300〜600℃の温度で熱処理することにより、鋼の最表層
にCr酸化膜を生成させて耐食性を向上させる方法が提案
されている。
【0005】これらを構造物として組み立てる場合に
は、TIG溶接等による溶接施工を回避することができな
い。この溶接施工の際に、溶接熱サイクルによって高温
に晒された熱影響部では耐腐食性が劣化する。そのた
め、特開平7-233476号公報では溶接熱影響部での鋭敏
化を防止するため、C、N成分を低減したフエライト系
ステンレス鋼についても提案されている。しかし、溶接
熱影響部では様々な温度履歴に基づいて加熱されるた
め、ある特定の温度域で生じる鋭敏化だけでなく、表面
皮膜の変質が生じることになるが、提案された鋼ではこ
れらについて配慮されていない。また、Si、Mn、Alを低
減すると溶接金属中の非金属介在物の総量を低減するこ
とは可能であるが、完全に発塵源を抑えることは極めて
困難である。
【0006】また、溶接により溶融、凝固する溶接金属
では全く耐食性皮膜が破壊されるため、溶接熱影響部に
比してよリ一層耐食性が劣化する。そのため、ウルトラ
クリーンテクノロジー、Vo1.8、No.2、(1996)P.98〜1
01では、新たに開発された高速1周ナロービードの溶接
技術によって、溶接ままの状態で溶接ビードに十分な耐
食性を付与することができることが紹介されている。し
かし、この溶接技術を的確に適用するには、周辺技術を
含めた特殊な溶接方法の確立が必要になるという問題が
ある。
【0007】一方、溶接中には鋼中のSi、Mn、Al等が酸
化し、溶接金属中に非金属介在物として残留すること
も、耐食性を劣化させるとともに発塵の原因となる。そ
のため、特開平7-243000号公報にはCrを20〜30%と高
濃度に含むフェライトステンレス鋼が提案されており、
溶接部の非金属介在物量を低減し、発塵を防止するため
にSi、Mn、Alの低減を図ることが開示されている。確か
に、Si、Mn、Alの低減を図ることによって、非金属介在
物の総量を低減することは可能であるが、完全に抑制す
ることは極めて困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題に
鑑みてなされたものであり、半導体製造用ガス供給系に
用いられる構造物の溶接施工に際し、溶接金属および溶
接熱影響部(以下、単に「HAZ」という)を含む溶接部
であっても、耐食性に優れる高純度ガス用Fe基合金およ
びそれを用いた溶接継手を提供することを目的としてな
されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前述の課題
を解決するため、種々の検討を重ねた結果、次の(a)〜
(b)の知見を得ることができた。
【0010】(a) 溶接時のHAZでは、融点直下から様々
な熱サイクルを受ける。600〜900℃までに加熱された領
域では、皮膜中のCrが鋼中のC、Nと結合し、炭窒化物
となるため、耐食性が劣化する。そのため、特開平7-2
33476号公報では、HAZでの鋭敏化を防止するためC、N
を低減している。しかし、C、Nを低減したとしても、
900℃以上の高温HAZにおいて、耐食性の劣化が生じる。
この要因について各種の分析機器を用いて調査した結
果、酸化皮膜中にAlが混入していることが分かった。ま
た、詳細観察によれば、溶接時の熱変形によってCr酸化
皮膜が破壊された部分では、Alの酸化が発生しているこ
とも明らかになった。これらの原因については、次のよ
うに推測される。
【0011】すなわち、鋼中に非金属介在物として存在
しないAl(以下、「So1.Al」という)は、O(酸素)と
の親和力がCrに比して極めて強いため、溶接雰囲気中の
微量なOと結合することに起因している。そこで、Crと
Sol.Al量の異なる鋼について種々検討を行った結果、鋼
中のSol.Al量をCrと所定の関係を満足するようにするこ
と、具体的には、Sol.Al量をCrとの特定関係以下に抑え
ることによって、高温HAZでの耐食性を改善しうること
見出した。鋼中のSol.Al量を抑えることによって、溶接
時の熱変形でCrの酸化皮膜が破壊された部分であって
も、エネルギー的に安定したSol.Alよりも、量的に多い
CrがOと結合するためである。
【0012】(b) 溶接金属中の非金属介在物量は、主と
して製鋼時に脱酸元素として添加されるMn、Si、Al量を
低減することによって、抑制することができる(例え
ば、特開平7-243000号公報参照)。しかし、実際の製
鋼技術面において、非金属介在物を皆無にすることは困
難であり、例えば、鋼中に非金属介在物として存在する
Al(以下、「Insol.Al」という)は、溶接時に溶融池中
に溶解せず、溶接中に凝集し、溶融池表面に浮上する。
そして、接ガス面に存在して、耐食性をわずかに劣化さ
せるので、鋼中のInsol.Al量は0.005%以下とする必要
がある。
【0013】さらに非金属介在物に関する種々検討を重
ねた結果、溶接中に生成する非金属介在物(元から鋼中
に存在していた非金属介在物を除く)の形態は、鋼中の
Mn、Si、Sol.Al量の影響を受けることを明らかにした。
すなわち、Sol.Al量がSi、Mn量に比して相対的に多く
なる場合、溶融池内ではAlを主体とした複合酸化物を
生成する。この酸化物は極めて凝集、粗大化しやすく、
また溶融池の表面へ浮上するため、接ガス面に残留し、
溶接金属の耐食性を劣化させる。そこで、So1.Al量をSi
およびMnと所定の関係を満足するようにすること、具体
的には、Sol.Al量をSiおよびMnとの特定関係以下に抑え
ることによって、上記のAlを主体とした複合酸化物をS
i、Mnを主体とした酸化物に代えて、酸化物の凝集、粗
大化を抑制し、耐食性の劣化を防止する。
【0014】(c) さらに、所定の化学組成からなる高純
度ガス用Fe基合金を、不活性ガスArまたはHeの単独ガス
若しくは混合ガス、またはそれらに0〜20%のH2ガス
を混合したシールド雰囲気中で溶接し、熱処理の雰囲気
として不活性ガスのArまたはHeの単独ガス若しくは混合
ガスに1ppm〜10%のO2を添加したガスを用い、または
さらに0〜5%のH20を添加したガスを用いて、600℃〜
融点以下の温度で{(−T/200)+8}〜120秒の時間で
加熱することで十分な耐食性を有する継手が得られるこ
とを知見した(ただし、Tは加熱温度(℃)を示す)。
【0015】本発明は、このような検討に基づいて完成
されたものであり、下記(1)の高純度ガス用Fe基合金お
よび(2)の高純度ガス用溶接継手を要旨としている。
【0016】(1) 重量%で、C:0.03%以下、Si:0.1
%以下、Mn:0.1%以下、Cr:20〜35%、Mo:0.1〜5
%、Nb:0〜1%、Ti:0〜1%、Cu:0〜0.5%、W:
0〜0.5%、Ni:0〜5%で、残部はFeおよび不可避的不
純物からなり、不純物元素としてのSが0.005%以下、
Pが0.02%以下、Nが0.03%以下、Oが0.01%以下、In
sol.Alが0.005%以下であり、かつSo1.Alが下記の(1)式
および(2)式の関係を満足することを特徴とする高純度
ガス用Fe基合金。
【0017】 [Sol.Al%]≦0.0002×[Cr%]+0.006 ・・・ (1) [Sol.Al%]≦0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006 ・・・ (2) (2) 上記(1)のFe基合金を、シールドガスとして不活性
ガスのArまたはHeの単独ガス若しくは混合ガスを用い、
または前記単独ガス若しくは混合ガスに0〜20%のH2
を添加したガスを用いてTIG溶接した溶接継手であっ
て、熱処理の雰囲気として不活性ガスのArまたはHeの単
独ガス若しくは混合ガスに1ppm〜10%のO2を添加した
ガスを用い、またはさらに0〜5%のH20を添加したガ
スを用いて、600℃〜融点の温度範囲で、{(−T/20
0)+8}〜120秒の時間で加熱することを特徴とする高
純度ガス用溶接継手。ただし、Tは加熱温度(℃)を示
す。
【0018】
【発明の実施の形態】1.本発明のFe基合金 本発明のFe基合金の化学組成について、前記のように限
定した理由を、作用効果とともに説明する。
【0019】C:0.03%以下 Cは、鋼の引張強度を向上させるのに重要な元素であ
る。しかし、強力なオーステナイト生成元素であるため
過剰の添加はフェライト組織の安定性を劣化させる。さ
らに、Crとの親和力が強く、HAZにおいてCr炭化物を生
成し、有効Cr量を低下させ、耐食性の劣化、いわゆる鋭
敏化を招く。そのため、Cは0.03%以下とする。さらに
望ましい上限は、0.02%である。
【0020】Si:0.1%以下 Siは、鋼の製鋼時に脱酸元素として使用される。しか
し、酸化性の強い元素であるため、多量の添加は溶接金
属の非金属介在物量を増加させ、発塵源の増加を招く。
そのため、Si含有量は0.1%以下とする必要がある。さ
らに望ましい上限は、0.08%である。
【0021】Mn:0.1%以下 Mnは、鋼の製鋼時に脱酸元素として使用される。しか
し、蒸気圧の高い元素であり、多量に添加すると溶接中
の溶融池から蒸発し、HAZに付着して発塵、耐食性の劣
化の原因となる。そのため、Mn含有量は0.1%以下とす
る必要がある。さらに望ましい上限は、0.08%である。
【0022】Cr:20〜35% Crは、接ガス面にCr酸化皮膜を生成し、耐食性を確保す
るのに必須の元素である。十分な耐食性を有する皮膜を
生成させるためには、20%以上の添加が必要である。し
かし、過剰の添加は鋼製品の加工性を劣化させるだけで
なく、HAZにおいてシグマ相に代表される金属間化合物
相を生成しやすくなり、延性、靱性を著しく劣化させ
る。そのため、Cr含有量は35%以下とする。さらに望ま
しい上限は、30%である。
【0023】Mo:0.1〜5% Moは、腐食性ガスに対する耐食性を向上させるのに有効
な元素であり、0.1%以上の添加で効果が現れる。しか
し、過剰の添加は効果が飽和するとともに、HAZでシグ
マ相に代表される金属間化合物相を生成しやすくなり、
延性、靱性を著しく劣化させる。そのため、Mo含有量は
5%以下とする。さらに望ましい範囲は、0.5〜4%であ
る。
【0024】Nb、Ti:0〜1% NbおよびTiは、Cとの親和力が強くHAZでの鋭敏化抑制
に有効な元素であるため添加しても良い。しかし、過剰
の添加は耐溶接高温割れ性を劣化させるとともに鋼の熱
間加工性を劣化させる。そのため添加する場合には、そ
れぞれ1%以下とする。
【0025】Cu、W:0〜0.5% Cu、Wともに、耐食性を向上させる効果を有するため添
加しても良い。しかし、Wの過剰の添加は金属間化合物
相の生成を促進し、Cuの添加はフェライト相の組織安定
性を劣化させる。そのため、上限はともに0.5%とす
る。
【0026】Ni:0〜5% Niはフェライト鋼の靱性向上に有効な元素であるので添
加しても良い。しかし、過剰の添加はフエライト組織の
安定性を劣化させるため、添加する場合は上限を5%と
する。
【0027】S:0.005%以下 Sは不可避不純物元素であり、鋼製品の熱間加工性を劣
化させるため、その含有量を0.005%以下とする必要が
ある。さらに望ましい上限は、0.004%である。特に下
限は設けないが、極度の低減は製造コストの増大を招く
ため、0.0002%とするのが望ましい。
【0028】P:0.02%以下 Pは、Sと同様に不可避不純物元素である。熱間加工性
および溶接時の耐割れ性の観点から、その含有量を0.02
%以下とする必要がある。さらに望ましくは、0.015%
以下である。特に下限は設けないが、極度の低減は著し
く製造コストの増大を招くので、0.0002%とするのが望
ましい。
【0029】N:0.03%以下 NはHAZの脆化を招くとともにCr窒化物を生成し、耐食
性の劣化を招く。また、フェライト組織の安定性を劣化
させる。そのため、N含有量は0.03%以下とする必要が
ある。望ましくは、0.025%以下である。特に下限は設
けないが、極度の低減はコスト増を招くため、望ましく
は0.0005%とする。
【0030】O(酸素):0.01%以下 Oは鋼中にほとんど固溶せず、非金属介在物として存在
し、母材では発塵源になる。また、溶接中にも非金属介
在物として存在するOは溶湯表面に浮上し、発塵源とな
る。また、固溶Oも鋼中のAl、Si等と結合し、スラグを
生成して発塵源となる。そのため、Oは極力低減する必
要がある。上限は0.01%であるが、望ましくは0.008%
である。特に下限は設けないが、極度の低減はコスト増
を招くため、望ましくは0.0002%とする。
【0031】Insol.Al:0.005%以下 Alは強力な脱酸元素であり、製鋼時に脱酸剤として添加
される。Insol.Alとは、前述の通り、酸化物として鋼中
に存在するAlのことをいうが、Alの態別分析において酸
に溶解しないAlとして求められる。鋼中に酸化物として
存在するAlは、高融点であるため、溶接中に溶融池内で
溶融せず、凝集、粗大化し、溶湯表面に浮上して発塵源
となる。そのため、Inso1.Alは、0.005%以下とする必
要がある。望ましくは0.004%以下である。特に下限は
設ける必要はないが、極度の低減は製造コストの増大を
招く。そのため、望ましい下限は0.0002%とする。
【0032】So1.Al:前述の通り、So1.Alは、マトリッ
クス中に固着しているAlおよび窒化物を形成しているAl
をいう。So1.Alとして存在するAl窒化物はInso1.Alとは
異なり、高温HAZではマトリックス中に再固溶するた
め、皮膜の変質を招き、耐食性の劣化を招く。また、溶
接中の溶湯内に溶解し、Al主体の酸化物を生成し、溶湯
表面に浮上して発塵源となる。これらを防止するために
は、下記(1)、(2)式で示されるCr、Si、Mnとの関係式を
満足する必要がある。
【0033】 [Sol.Al%]≦0.0002×[Cr%]+0.006 ・・・ (1) 高温HAZにおいて、溶接時の熱変形によって破壊されたC
r酸化皮膜の部分でAl酸化が生じ、耐食性の劣化をきた
す。これを防止するためには、鋼中の[Sol.Al%]を、上
記(1)式で示すように低減する。
【0034】 [Sol.Al%]≦0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006 ・・・ (2) So1.Al量がSi、Mn量に比して多い場合には、溶融池内で
はAlを主体とした複合酸化物を生成する。この酸化物は
非常に凝集、粗大化しやすく、溶融池表面へ浮上するた
め、接ガス面に残留し、発塵源となるとともに溶接金属
の耐食性を劣化させる。これを防止するには、鋼中の[S
ol.Al%]を上記(2)式の関係を満たすように低減し、Al
主体の複合酸化物をSi、Mnを主体とした酸化物とし、酸
化物の凝集、粗大化を防止する必要がある。特に、[So
l.Al%]に下限は設けないが、極度の低減は製造コスト
の増大を招くので、望ましくは0.0002%とする. 2.本発明の溶接継手 本発明の溶接継手は、上述の化学組成からなるFe基合金
に特定の溶接方法および熱処理を施すものである。次
に、溶接方法および熱処理の条件を限定した理由につい
て、説明する。
【0035】溶接時のシールドガス、および必要に応じ
てバックシールドガスには、不活性ガスとしてArまたは
Heを単独ガス、若しくは混合ガスとして用いる。さらに
選択的に、Arまたは、Heの単独ガス若しくは混合ガスに
0〜20%のH2を添加したガスを用いることができる。
【0036】本発明における溶接は、不活性ガス中で施
工する必要がある。不活性ガスの中でもN2は溶融池中
に溶解し、フェライト組織の組織安定性を劣化させると
ともに、溶接金属およびHAZの著しい脆化を招くため、
不活性ガスとしてArまたはHeに限定して、それらの単独
ガス若しくは混合ガスを使用する。また、H2は還元性
のガスであり、溶接中のスラグ生成を抑制する効果が期
待できるため、シールドガスとして添加しても良い。し
かし、20%を超える添加は溶接金属にH2が溶解し、溶
接低温割れを招く。そのため、H2を添加する場合に
は、その上限は20%とする。望ましい上限は、15%であ
る。
【0037】熱処理の雰囲気には、不活性ガスとしてAr
またはHeの単独ガス若しくは混合ガスに1ppm〜10%のO
2を添加したガスを用いる。必要ある場合には、さらに
0〜5%のH20を添加したガスを用いることができる。
【0038】熱処理は耐食性を有するCr酸化皮膜を成長
させるため、不活性ガスとしてArまたはHeの単独ガス若
しくは混合ガスにO2を添加した雰囲気中で行う必要が
ある。しかし、O2が1ppm未満では皮膜の成長に効果が
なく、また、10%を超えるとCr以外のAl、Si等の脱酸元
素が酸化し、耐食性をかえって劣化させる。そのため、
2の混合比は、1ppm〜10%とする。さらに望ましいO2
の混合比は、3ppm〜5%である。
【0039】また、H20はO2と同様に、Cr酸化皮膜を成
長させる効果があるため、添加してもよい。H20を添加
する場合には、その混合比の上限は5%とすることが望
ましい。ここで規定する熱処理雰囲気は、溶接施工時に
構造物全体がその雰囲気中に保持される必要はなく、耐
食性が要求される溶接部、例えば、鋼管であれば接ガス
面である管内面側だけがこの雰囲気中に保持されるよう
にすれば良い。
【0040】熱処理の加熱温度は、600℃〜融点以下の
温度範囲で実施する。加熱温度が600℃未満になると、C
rの拡散が遅く、皮膜の生成に長時間を要することにな
るためである。
【0041】熱処理の加熱時間は、{(−T/200)+
8}〜120秒間とする。ただし、Tは加熱温度(℃)を表
す。加熱時間は加熱温度との関係で決まり、少なくとも
{(−T/200)+8}以上加熱する必要がある。しか
し、120秒を超える加熱は、シグマ相に代表される金属
間化合物相や窒化物相の生成を招くおそれがある。その
ため、120秒以下とする。
【0042】熱処理の熱源には高周波誘導加熱等あらゆ
る熱源を利用できるが、加熱速度が5℃/min以下である
と、酸化皮膜の異常成長を招き、耐食性を劣化させるお
それがあるので、加熱速度を5℃/min以上とすることが
望ましい。また、冷却速度についても同様のことが言
え、特に酸化皮膜の成長が著しい、加熱温度から500℃
までの平均冷却速度が10℃/s以上にするのが望ましい。
【0043】
【実施例】表1に示す22種類の化学組成を有するFe基合
金を溶製して、外径6.35mm、肉厚1mmの供試鋼管を試作
した。供試鋼管の端面を機械加工で仕上げ、各種ガスを
シールドガスおよび必要に応じてバックシールドガスと
して用い、TIG突き合わせ溶接を行い、溶接継手を作製
した。また、この溶接継手の内面に各種ガスを流し、種
々の条件にて熱処理を行った。その後、得られた溶接縦
手の耐食性を評価した。
【0044】
【表1】
【0045】耐食性は、継手内部に臭化水素ガスを5気
圧封入し、温度80℃で100時間保持した後、管内面の変
化を走査型電子顕微鏡にて観察して評価した。耐食性評
価の基準は、孔食など腐食部分の有無により評価した。
同時に、2次イオン質量分析計を用いて、溶融線から0.
2mm離れたHAZ表面および管内面の溶接金属中央の酸化皮
膜中のCr量の深さ方向への分布を測定し、酸化皮膜中の
Cr濃度の最高値およびCrが濃化している厚さを求めた。
このとき、皮膜中のCrの最高濃度が90%以上であるもの
が合格の目安となり、耐食性を有する皮膜として、皮膜
厚さ2μm以上となるのが望ましい。
【0046】本発明例の評価結果を表2および表3に示
し、比較例の評価結果を表4の示す。表2、3から、本
発明で規定する化学組成の供試鋼管に、本発明で規定す
る溶接方法および熱処理を施すことによって得られた継
手AJl〜AJ37は、十分な耐食性を発揮することが分か
る。
【0047】−方、表4に示すように、いずれの比較例
も耐食性に不具合が生じている。まず、継手BJ1は、溶
接時のシールドガスおよびバックシールドガスにN2
使用したものであるが、溶接金属中にオーステナイトが
生成し、皮膜中のCr濃度が90%を下回り、耐食性が劣っ
ている。また、継手BJ2およびBJ3は、溶接時のシールド
ガスおよびバックシールドガスに過剰なH2を混合した
ガスを使用したため、溶接金属に低温割れが発生した。
【0048】次ぎに、継手BJ4は、熱処理の雰囲気のO2
の混合比が過剰であったために、HAZおよび溶接金属表
面でCr以外の元素の酸化が生じ、皮膜中のCr量が90%以
下となり、耐食性が劣っている。また、継手BJ5は、熱
処理時の温度が400℃と低かったために、溶接金属の皮
膜厚さが1.4μmと薄く、十分な耐食性が得られなかっ
た。これに対し、継手BJ6は熱処理温度が母材の融点を
超えるものであったため、継手母材の全体が溶融、折損
した。
【0049】継手BJ7は、熱処理の加熱時間が{(−T/
200)+8}未満であったため、溶接金属表面の皮膜厚さ
が1.6μmと薄く、十分な耐食性が得られなかった。継手
BJ8は、熱処理の加熱時間が120秒を超えたため、Cr以外
の元素の酸化も生じ、HAZおよび溶接金属表面のいずれ
の皮膜中のCr量も90%以下となり、耐食性が劣る。
【0050】継手BJ9およびBJ14は、供試材中のSo1.Al
量とCrの関係が(1)式の0.0002×[Cr%]+0.006の値を上
回ったために、HAZ、溶接金属表面のいずれの皮膜中のC
r量も90%以下となり、耐食性が劣った。さらに、So1.A
l量が(2)式の0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006の値を
も上回ったため、溶接ビード表面に凝集したスラグが生
成し、その部分が試験中にはがれ、腐食が生じている部
分が観察された。一方、継手BJlOおよびBJ12は、HAZ、
溶接金属とも表面の皮膜の性状は良好であったが、So1.
Al量が(2)式の0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006の値を
上回ったため、溶接ビード表面に凝集したスラグが生成
し、その部分が試験中にはがれ、腐食が生じた。
【0051】継手BJllは、本発明で規定するCr量を下回
ったため、十分なCr濃度の皮膜が生成せず、耐食性が劣
る。継手BJ13は、Cr量が本発明で規定する範囲を上回っ
たため、HAZでCrを多量に含むシグマ相が生成したた
め、皮膜中のCr量が90%を下回り、耐食性が劣る。ま
た、Insol.Al量が0.005%を超えたため、溶接ビード表
面に凝集し、その部分から腐食が生じた。継手BJ15は、
So1.Al量が前記(1)式で示すCrとの関係および前記(2)式
で示すSi、Mnとの関係を満足せず、さらに、Insol.Al量
およびO量も本発明で規定する範囲を上回ったため、極
めて耐食性が劣っていた。
【0052】以上の説明の通り、本発明で規定する化学
組成を有するFe基合金に、本発明で規定する条件で溶接
および熱処理を施すことによって、十分な耐食性を発揮
する溶接継手が得られることが明らかである。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【発明の効果】本発明のFe基合金によれば、構造物の組
立に際して溶接施工をともなう場合であっても、溶接金
属およびHAZを含む溶接部は優れた耐食性を発揮するこ
とができる。したがって、このFe基合金を用いた本発明
の溶接継手は、半導体製造装置などで使用される高純度
ガス用溶接継手として好適なものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 東 茂樹 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内 (72)発明者 山下 良富 和歌山県和歌山市湊1850番地共同酸素株式 会社内 Fターム(参考) 4E001 AA03 BB07 CC04 DD02 DD03 DD05 DD06 4K042 AA24 DC02 DC03 DC04 EA03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.03%以下、Si:0.1%以
    下、Mn:0.1%以下、Cr:20〜35%、Mo:0.1〜5%、N
    b:0〜1%、Ti:0〜1%、Cu:0〜0.5%、W:0〜0.
    5%、Ni:0〜5%で、残部はFeおよび不可避的不純物か
    らなり、不純物元素としてのSが0.005%以下、Pが0.0
    2%以下、Nが0.03%以下、Oが0.01%以下、Insol.Al
    が0.005%以下であり、かつSo1.Alが下記の(1)式および
    (2)式の関係を満足することを特徴とする高純度ガス用F
    e基合金。 [Sol.Al%]≦0.0002×[Cr%]+0.006 ・・・ (1) [Sol.Al%]≦0.02×([Si%]+[Mn%])+0.006 ・・・ (2)
  2. 【請求項2】請求項1に記載のFe基合金を、シールドガ
    スとして不活性ガスのArまたはHeの単独ガス若しくは混
    合ガスを用い、または前記単独ガス若しくは混合ガスに
    0〜20%のH2を添加したガスを用いてTIG溶接した溶接
    継手であって、熱処理の雰囲気として不活性ガスのArま
    たはHeの単独ガス若しくは混合ガスに1ppm〜10%のO2
    を添加したガスを用い、またはさらに0〜5%のH20を
    添加したガスを用いて、600℃〜融点の温度範囲で、
    {(−T/200)+8}〜120秒の時間で加熱することを特
    徴とする高純度ガス用溶接継手。ただし、Tは加熱温度
    (℃)を示す。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1448803A4 (en) * 2001-11-30 2006-08-16 Ati Properties Inc FERRITIC STAINLESS STEEL WITH HIGH-TEMPERATURE CRYSTAL STRENGTH
US7842434B2 (en) 2005-06-15 2010-11-30 Ati Properties, Inc. Interconnects for solid oxide fuel cells and ferritic stainless steels adapted for use with solid oxide fuel cells
US7981561B2 (en) 2005-06-15 2011-07-19 Ati Properties, Inc. Interconnects for solid oxide fuel cells and ferritic stainless steels adapted for use with solid oxide fuel cells
US8158057B2 (en) 2005-06-15 2012-04-17 Ati Properties, Inc. Interconnects for solid oxide fuel cells and ferritic stainless steels adapted for use with solid oxide fuel cells
KR101207644B1 (ko) 2010-12-28 2012-12-03 주식회사 포스코 고강도 오스테나이트계 레이저용접 강관 및 그 제조방법
KR101207682B1 (ko) 2010-12-28 2012-12-03 주식회사 포스코 고강도 오스테나이트계 가스실드아크용접 강관 및 그 제조방법

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