JP2000104549A - エンジンの冷却装置の異常診断装置 - Google Patents
エンジンの冷却装置の異常診断装置Info
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Abstract
故障を容易かつ確実に検出することができる手段を提供
する 【解決手段】 エンジンの冷却装置1においては、コン
トロールユニット13によって演算された冷却水温度推
定値と、水温センサ11によって検出される実際の冷却
水温度の差が所定の設定値より大きいときにサーモスタ
ット弁10が開故障を起こしているものと判定されるよ
うになっている。したがって、極めて簡素な構造で、サ
ーモスタット弁10の開故障を容易かつ確実に検出する
ことができる。
Description
置の異常診断装置に関するものであって、とくに冷却水
温度に応じて開閉してエンジンとラジエータとの間での
冷却水の行き来を規制するサーモスタット弁の開故障を
検出するための異常診断装置に関するものである。
に保つために、エンジンのウォータジャケット内の冷却
水を第1通路を介してラジエータに送り、該ラジエータ
で冷却された冷却水を第2通路を介してウォータジャケ
ットに戻す冷却装置が設けられている。ここで、エンジ
ンを適温に保つには、冷却水温度は、おおむね80°C
前後であるのが好ましい。なお、冷却水温度が過度に上
昇したときにはエンジンが正常に作動しないおそれがあ
るので、冷却水温度の異常上昇時には、エンジンを強制
的に停止させるようにした冷却装置が提案されている
(特開平8−319831号公報参照)。
冷却水温度を適温に保つために、第1通路内の冷却水を
第2通路にバイパスさせるバイパス通路と、冷却水温度
に応じて開閉してウォータジャケットとラジエータとの
間での冷却水の行き来を規制するサーモスタット弁とが
設けられている。このサーモスタット弁は、基本的に
は、その周囲の冷却水温度が開弁温度設定値(例えば、
82°C)よりも低いときには閉じ、このとき第1通路
内の冷却水は、ラジエータを通らず、全面的にバイパス
通路を介して第2通路に流れ、冷却水温度は速やかに上
昇する。他方、冷却水温度が開弁温度設定値以上となっ
たときにはサーモスタット弁が開き、このとき第1通路
内の冷却水の一部は、ラジエータを通って第2通路に流
れ、冷却水は適度に冷却されて適温に保たれる。なお、
普通のサーモスタット弁は、開弁温度設定値を境に一挙
に開閉するわけではなく、これより低い温度から徐々に
開き始める。
モスタット弁は、ときには開きぱなしになるといった故
障、いわゆる開故障を起こすことがある。そして、サー
モスタット弁が開故障を起こした場合は、エンジン始動
後に冷却水温度がなかなか上昇しない。このため、エン
ジンの運転初期には排気ガス温度が十分には高まらず、
排気ガス浄化用触媒が十分には機能せず、エミッション
が悪化するといった問題が生じる。また、エンジンの各
種制御機器は、一般に冷却水温度が所定の設定値まで上
昇したときに制御を開始するようになっているが、サー
モスタット弁が開故障を起こすと、エンジン始動後にお
いてこれらの制御の開始タイミングが遅れるといった問
題が生じる。
にかつ確実に検出することができる手段が求められてい
る。
めになされたものであって、簡素な構造でもって、エン
ジンの冷却装置のサーモスタット弁の異常、とくに開故
障を容易にかつ確実に検出することができる手段を提供
することを解決すべき課題とする。
めになされた本発明は、(a)冷却水温度に応じて開閉
してエンジンとラジエータとの間での冷却水の行き来を
規制するサーモスタット弁が設けられているエンジンの
冷却装置の異常診断装置において、(b)エンジン及び
該エンジンを搭載した車両の運転状態に基づいて、エン
ジンの冷却水温度を推定する冷却水温度推定手段と、
(b)実際の冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段
と、(c)冷却水温度推定手段によって推定された冷却
水温度推定値と、冷却水温度検出手段によって検出され
た冷却水温度とに基づいて、サーモスタット弁の異常の
有無を検出する異常検出手段とが設けられていることを
特徴とするものである。なお、サーモスタット弁は、エ
ンジンからラジエータへの冷却水通路、あるいはラジエ
ータからエンジンへの冷却水通路のいずれに配置されて
いてもよい。
るのが好ましい運転状態としては、例えば、エンジン始
動時の冷却水温度、エンジン回転数、車速、吸気温、外
気温、点火リタード量、燃料供給停止(フューエルカッ
ト)の有無ないしは延継続時間、空燃比のエンリッチ化
の有無、ラジエータ冷却用ファンの作動の有無、エアコ
ンヒータの作動の有無、希薄燃焼(リーンバーン)の有
無ないしは延継続時間などがあげられる。
値から放熱量推定値を減算して得られる熱量が、1次遅
れで冷却水に吸収されるものとして、普通の熱収支計算
により算出することができる。なお、放熱量推定値は、
外気温を考慮して、ないしは外気温に基づいて推定する
のが好ましい。また、異常検出手段は、冷却水温度推定
値と実際の冷却水温度の差が基準値より大きいときに、
サーモスタット弁が異常であると判定するようになって
いるのが好ましい。
(冷却水温度推定中)に冷却水温度が下降して、所定水
温まで低下したときには、該冷却水温度の推定を最初か
らやり直すのが好ましい。
却水温度推定値と実際の冷却水温度とに基づいて、サー
モスタット弁の異常、とくに開故障を容易かつ確実に検
出することができる。また、一般にエンジンにはもとも
と、冷却水温度検出手段に相当する水温センサが設けら
れているので、実際にこの異常診断装置を設ける上にお
いては、格別の冷却水温度検出手段を設ける必要はな
い。また、一般にエンジンには、マイクロコンピュータ
を備えたエンジンコントロールユニットが設けられてい
るので、このエンジンコントロールユニットを冷却水温
度推定手段及び異常検出手段として利用すれば、冷却水
温度推定手段あるいは異常検出手段として格別なハード
ウエアを設ける必要はなく、既存のエンジンコントロー
ルユニットに冷却水温度推定用及び異常診断用のソフト
ウエア(プログラム)を組み込むだけですむ。したがっ
て、本発明にかかるこの異常診断装置は、極めて低コス
トで設けることができる。
推定手段が少なくとも車速に基づいて冷却水温度を推定
し、かつ異常検出手段が、正常なサーモスタット弁が閉
弁状態となる冷却水温度領域内でサーモスタット弁の異
常の有無を検出するようになっているのが好ましい。こ
の場合、冷却水温度推定手段が、サーモスタット弁の閉
弁時における冷却水の漏れ量を考慮して冷却水温度を推
定するようになっているのがさらに好ましい。このよう
にすれば、エンジン高回転時等において、本来は閉弁状
態となるべきときにサーモスタット弁に冷却水漏れが生
じた場合でも、冷却水温度を正確に推定することができ
る。なお、このようなサーモスタット弁の冷却水漏れ
は、該サーモスタット弁がラジエータからエンジンへの
冷却水通路に配置された場合に顕著となる。
段が、エンジン始動後において冷却水温度の推定精度を
低下させる所定の状態が発生するまでに、サーモスタッ
ト弁の異常の有無の検出を終了するようになっているの
が好ましい。ここで、冷却水温度の推定精度を低下させ
る状態としては、例えば、冷却水温度推定手段によって
推定される冷却水温度推定値がサーモスタット弁開弁温
度に到達すること、エンジンの燃料供給停止(フューエ
ルカット)の延継続時間が所定値を超えること、あるい
はエンジンの希薄燃焼(リーンバーン)の延継続時間が
所定値を超えることなどがあげられる。なお、エンジン
が冷機状態で始動されたときには、燃料供給停止又は希
薄燃焼が抑制されるようになっているのが好ましい。
温度に到達する前にサーモスタット弁の異常の有無の検
出を終了させるのが好ましいのは、サーモスタット弁が
開いている状態では冷却水のもつ熱量が大量にラジエー
タから放熱され、このラジエータでの放熱量を正確に推
定することが困難だからである。なお、現実のサーモス
タット弁では、開弁温度設定値(例えば、82°C)を
境にして一挙に開閉されるわけではなく、該開弁温度設
定値より低温状態から徐々に開き始める。したがって、
上記のサーモスタット弁の開弁温度は、サーモスタット
弁が所定の開度(例えば、50%)となる温度としても
よい。
継続時間が所定値を超える前にサーモスタット弁の異常
の有無の検出を終了させるのが好ましいのは、燃料供給
停止あるいは希薄燃焼が頻繁に行われた状態では、発熱
量が比較的小さいので該発熱量を正確に推定することが
困難だからである。したがって、エンジンが冷機状態で
始動される場合は、燃料供給停止又は希薄燃焼を抑制す
ることにより、冷却水温度の推定精度を高めることがで
きる。なお、冷機状態でのエンジン始動後において、燃
料供給停止制御あるいは希薄燃焼制御が実行される前
に、サーモスタット弁の異常の有無の検出を終了させる
ようにしてもよい。
段が、外気温度が低いときにサーモスタット弁の異常の
有無を検出するようになっているのが好ましい。このよ
うにすれば、サーモスタット弁の異常の有無の判定精度
が高められる。
段が、冷却水温度推定値と実際の冷却水温度との差の積
算値に基づいてサーモスタット弁の異常の有無を検出す
るようになっていてもよい。なお、この場合、異常検出
手段が、エンジン始動後所定時間内にサーモスタット弁
の異常の有無を検出するようになっているのが好まし
い。このようにすれば、ブロア(電動ファン)の作動等
に伴う一時的な実冷却水温度の低下に起因して誤診断が
生じるのが防止される。
始動時における実際の冷却水温度に応じて変更されるよ
うになっているのが好ましい。また、異常検出手段が所
定の異常判定値に基づいてサーモスタット弁の異常の有
無を判定するようになっている場合は、異常判定値がエ
ンジン始動時における実際の冷却水温度に応じて変更さ
れるようになっているのが好ましい。このようにすれ
ば、エンジン始動時の冷却水温度の違いに伴う実冷却水
温度の上昇勾配の違いに起因して誤診断が生じるのが防
止される。
定手段がエンジンから冷却水への放熱比率を含む水温推
定演算式に基づいて冷却水温度を推定するようになって
いる場合は、放熱比率がエンジンの点火時期に応じて変
更されるようになっているのが好ましい。このようにす
れば、点火時期が遅角されることに伴う冷却水への放熱
量の違いに起因して誤診断が生じるのが防止される。
温度がエンジン始動時における実際の冷却水温度よりも
低いときには、異常検出手段によるサーモスタット弁の
異常の有無の検出が禁止され、又は検出結果が実質的に
無効とされるようになっているのが好ましい。このよう
にすれば、半暖機時等において、冷却水温度と外気温度
とが異なることに伴う冷却水の推定温度の推定誤差に起
因して誤診断が生じるのが防止される。
発明の実施の形態を具体的に説明する。 (実施の形態1)以下、本発明の実施の形態1を説明す
る。図1に示すように、自動車用の水冷式エンジンの冷
却装置1においては、エンジン運転時には冷却水が、順
に、シリンダブロック2のウォータジャケット(図示せ
ず)と、該シリンダブロック2の上側に配置されたシリ
ンダヘッド3のウォータジャケット(図示せず)とを流
通した後、第1通路4に排出されるようになっている。
かくして、エンジンは冷却水によって適度に冷却されて
適温に保持される一方、冷却水はエンジンによって加熱
されて昇温する。なお、図1中のシリンダブロック2及
びシリンダヘッド3内の各矢印は、冷却水の流れる方向
を大まかに示している。
が適温まで上昇している普通の運転状態)にあるときに
は、第1通路4に排出された冷却水の一部は、矢印X1、
X2で示すように、ラジエータ5内を通り抜けて冷却さ
れた後、第2通路6に排出され、この後ウォータポンプ
7を経由してシリンダブロック2のウォータジャケット
に戻される。ここで、第1通路4は比較的高い位置に配
置され、ラジエータ上端部付近でラジエータ5に接続さ
れている。他方、第2通路6は比較的低い位置に配置さ
れ、ラジエータ下端部付近でラジエータ5に接続されて
いる。
タ内の冷却水)は、走行風あるいは電動ファン8による
強制通風により冷却されるようになっている。また、第
1通路4内の冷却水の残部は、矢印X3で示すように、
ラジエータ5を通らず、第1通路4と第2通路6とを連
通させるバイパス通路9を介して、直接第2通路6に流
れる。
接続部より若干ラジエータ寄りの部位には、周囲の冷却
水温度に応じて開閉するサーモスタット弁10(いわゆ
る入口サーモ)が配置されている。なお、サーモスタッ
ト弁10の具体的な構造及び機能は後記のとおりであ
る。そして、第1通路4のバイパス通路9との接続部よ
りエンジン側の部位(エンジン近傍)には、冷却水温度
thw(エンジン水温)を検出する水温センサ11(冷却
水温度検出手段)が設けられている。
噴射制御、空燃比制御等)を行うほか、冷却水温度を推
定するとともにサーモスタット弁10の異常とくに開故
障の有無を検出する、マイクロコンピュータを備えたコ
ントロールユニット12(冷却水温度検出手段、異常検
出手段)が設けられている。
とおり、水温センサ11によって検出される冷却水温度
thw、吸気温センサ(図示せず)によって検出される吸
気温度thaa、外気温センサ(図示せず)によって検出さ
れる外気温度tho、車速センサ(図示せず)によって検
出される車速V、回転数センサ(図示せず)によって検
出されるエンジン回転数Ne、スロットルセンサ(図示
せず)によって検出されるスロットル開度TVO、空燃
比センサ(図示せず)によって検出される空燃比Kaf
(A/F)、エアフローメータ(図示せず)によって検
出される吸入空気量g等に基づいて、各種エンジン制御
と、冷却水温度の推定と、サーモスタット弁10の異常
ないしは故障(例えば、開弁故障)の有無の検出とを行
うようになっている。
り、サーモスタット弁10が第2通路6に配置されてい
るが、これを第1通路4に配置してもよい。この場合
は、図1中に破線で示すように、サーモスタット弁1
0’(いわゆる出口サーモ)を、第1通路4の、バイパ
ス通路9との接続部より若干ラジエータ寄りの部位に配
置することになる。
ーモスタット弁10の具体的な構造を説明する。ここ
で、図2(a)は閉弁状態にあるサーモスタット弁10
を示し、図2(b)は開弁状態にあるサーモスタット弁
10を示している。なお、図2(a)、(b)におい
て、H1はラジエータ側であり、H2はエンジン側であ
る。図2(a)、(b)に示すように、サーモスタット
弁10には、第2通路6に固定されたケース15と、該
ケース15に固定されたピストン16と、第2通路軸線
方向すなわちY1、Y2方向に移動可能な可動体17とが
設けられている。この可動体17は、ワックスケース1
8と、該ワックスケース18内に封入された合成ゴムス
リーブ19及びワックス20と、ワックスケース18の
外周部に固定された弁部材22とで構成されている。こ
こで、ピストン16のH2側の部分は、ワックスケース
18内に挿入されて合成ゴムスリーブ19内に差し込ま
れている。また、可動体17は、ばね21によって、常
時Y2方向に付勢されている。
いて、基本的には、周囲の冷却水温度が開弁温度設定値
(例えば、82°C)よりも低いときには、図2(a)
にその状態を示すように、可動体17は、ばね21によ
ってY2方向に付勢されてH1側に位置し、弁部材22と
ケース15とが当接する。このとき、サーモスタット弁
10は閉弁状態となり、第2通路6は閉止され、冷却水
の流れは止められる。なお、この状態では、ワックス2
0は固体の状態にある。
以上となったときには、図2(b)にその状態を示すよ
うに、ワックス20は昇温・融解して液体となり膨張す
る。その結果、液状のワックス20が合成ゴムスリーブ
19を圧縮し、その結果ピストン16がワックスケース
18(合成ゴムスリーブ19)から押し出される。しか
しながら、ピストン16はケース15ひいては第2通路
6に固定されているので、可動体17がばね21の付勢
力に抗してY1方向に移動し、その結果弁部材22とケ
ース15とが離間する。このとき、サーモスタット弁1
0が開弁状態となり、第2通路6内で、冷却水がY1方
向に流れる。図2(b)中において、両矢印は冷却水が
流れる経路を示している。なお、前記のとおり、サーモ
スタット弁10は、開弁温度設定値を境にして一挙に開
くわけではなく、該開弁温度設定値より低温状態から徐
々に開き始める。
ンジン高回転時には、ウォータポンプ7の吐出圧が高ま
り、この吐出圧がサーモスタット弁10の弁部材22を
開弁方向に押圧する。このため、冷却水温度がサーモス
タット弁開弁温度より低い場合でも、弁部材22が開
き、第1通路4内の冷却水の一部はラジエータ5を通っ
て第2通路6に流入する。したがって、エンジン高回転
時には、冷却水温度を推定する上においてかかるサーモ
スタット弁10の冷却水漏れを考慮する必要がある。
つつコントロールユニット12によるエンジン制御を説
明するが、一般的なエンジン制御はよく知られており、
またかかる一般的なエンジン制御は本願発明の要旨とす
るところでもないので、その詳しい説明は省略し、ここ
では本願発明の要旨に関連する燃料供給停止制御(フュ
ーエルカット制御)と空燃比制御(希薄燃焼制御(リー
ンバーン制御)を含む)とについてのみ説明する。
に実行される。そして、このエンジン制御においては、
減速時等においてエンジン出力を必要としない運転状態
では燃料供給(燃料噴射)を停止して燃費性能を高める
ようにしている。また、運転状態に応じて空燃比を変
え、とくに低出力領域では空燃比を20以上にして希薄
燃焼(リーンバーン)を行い、燃費性能を高めるととも
に、エミッション性能を向上させるようにしている。な
お、冷機状態でエンジンを始動させた場合は、後で説明
するサーモスタット弁10の異常診断の精度を高めるた
めに、燃料供給停止及び希薄燃焼を抑制するのが好まし
い。
ン回転数Ne、吸気充填量Ce、スロットル開度TVO
等の制御情報が入力(検出)される。続いて、ステップ
S2で、スロットル開度TVOが全閉であるか否かが判
定され、全閉であれば(YES)、さらにステップS3
で、エンジン回転数Neが、燃料供給停止を行う上での
下限回転数Ne1以上であり、かつ上限回転数Ne2以下
であるか否かが判定される。
Ne2であると判定された場合(YES)、すなわちエ
ンジンが燃料供給停止を支障なく行うことができる運転
状態にある場合は、ステップS4で燃料供給が停止され
る(F/C制御)。続いて、ステップS5で、燃料供給
停止の延継続時間をカウントするためのF/Cカウンタ
TF/Cが1だけインクリメントされる。このF/Cカウ
ンタTF/Cは、後記のサーモスタット弁10の異常診断
ルーチン(図5参照)で用いられる。
開度TVOが全閉でないと判定された場合は(NO)、
ステップS6で、例えば図7に示すようなマップを用い
て、エンジン回転数Neと吸気充填量Ceとに応じて目
標空燃比が設定される(A/Fゾーン判定)。図7に示
すように、目標空燃比は、エンジン回転数Neと吸気充
填量Ceとに応じて設定された各空燃比領域R1〜Rn毎
に好ましく設定されているが、低出力領域では20以上
(A/F≧20)となっている。続いて、ステップS7
で、空燃比がステップS6で設定された目標空燃比とな
るよう空燃比制御(フィードバック制御)が行われる。
20以上であるか否か、すなわち希薄燃焼中であるか否
かが判定される。ここで、A/F≧20であれば(YE
S)、ステップS9で希薄燃焼の延継続時間をカウント
するためのL/BカウンタT L/Bが1だけインクリメン
トされる。このL/BカウンタTL/Bは、後記のサーモ
スタット弁10の異常診断ルーチン(図5参照)で用い
られる。なお、A/F<20であれば(NO)、ステッ
プS9をスキップする。
ット12による冷却水温度推定ルーチンを説明する。こ
の冷却水温度推定ルーチンでは、ステップT1〜ステッ
プT11が順に(シ−ケンシャルに)実行される。ステ
ップT1では、例えば図8に示すような特性でもって、
始動時水温ths(エンジン始動時における冷却水温度)
に応じて基本判定時間TBASEが設定される。ステップT
2では、エンジンないしは車両の運転状態に応じて基本
判定時間T BASEを補正するための判定時間補正値Kが設
定され、続いてステップT3で、基本判定時間TBASEと
判定時間補正値Kとを加算することにより、判定時間T
mが演算される(Tm=TBASE+K)。この判定時間T
mは、後記のサーモスタット弁10の異常診断ルーチン
(図5参照)で用いられ、エンジン始動後の経過時間が
この判定時間Tmを超え、かつ後記の吸入空気量積算値
qsが所定値を超えているときに、サーモスタット弁1
0の開故障の有無の判定を行うようにしている。
9(a)〜(h)に示すような特性でもって車速と、吸
気温と、点火リタード量と、燃料供給停止(フューエル
カット)の有無と、濃厚燃焼(エンリッチ燃焼)の有無
と、電動ファン8の作動の有無と、エアコンヒータの作
動の有無と、空燃比が20以上であるか否かとに応じて
設定される各補正値k1〜k8を加算して設定される(K
=k1+k2+……k7+k8)。
うな特性でもって、始動時水温thsに応じて吸気量積算
基準値QBが設定される。ステップT5では、吸気量積
算基準値QBにエンジンないしは車両の運転状態に応じ
て設定される吸気量積算値補正値K’を加算することに
より吸気量積算値Qmが演算される(Qm=QB+
K’)。この吸気量積算値Qmは、後記のサーモスタッ
ト弁10の異常診断ルーチン(図5参照)で用いられ、
エンジン始動後の経過時間が判定時間Tmを超え、かつ
後記の吸入空気量積算値qsがこの吸気量積算値Qmを
超えているときに、サーモスタット弁10の開故障の有
無の判定を行うようにしている。なお、吸気量積算値補
正値K’は、詳しくは図示していないが、前記の判定時
間補正値Kの場合と同様の手法で設定される補正値
k1’〜k8’を加算することにより設定される。そし
て、ステップT6では、前回の吸入空気量積算値qsに
今回の吸入空気量qを加算して、今回の吸入空気量積算
値qsが演算される(qs=qs+q)。
に応じて、基本冷却水温度推定値thwcBが設定される。
この基本冷却水温度推定値thwcBは、概略的には、例え
ば図11に示すように、吸入空気量積算値qsが大きい
ときほど大きくなるように設定されている。より詳しく
は、基本冷却水温度推定値thwcBは、サーモスタット弁
10が完全に閉じているものとして演算される第1の基
本冷却水温度推定値thwc B1と、サーモスタット弁10の
冷却水漏れを考慮して演算される第2の基本冷却水温度
推定値thwcB2と、例えば図9(a)に示すような特性で
設定される車速に基づく補正値j1とを加算して演算さ
れる(thwcB=thwcB1+thwcB2+j1)。なお、第1の基
本冷却水温度推定値thwcB1は、例えば図12(a)に示
すような特性でもって、吸入空気量積算値qsに応じて
設定される。また、第2の基本冷却水温度推定値thwcB2
は、例えば図12(b)に示すような特性でもって、吸
入空気量積算値qsに応じて設定される。
wcBを補正するための補正値Jが設定され、続いてステ
ップT9で基本冷却水温度推定値thwcBに冷却水温度補
正値Jを加算して今回の冷却水温度推定値thwc(n)が演
算される(thwc(n)=thwcB+J)。冷却水温度補正値J
は、例えば、それぞれ図9(b)〜(h)に示すような
特性でもって吸気温と、点火リタード量と、燃料供給停
止(フューエルカット)の有無と、濃厚燃焼(エンリッ
チ)の有無と、電動ファン8の作動の有無と、エアコン
ヒータの作動の有無と、空燃比が20以上であるか否か
とに応じて設定される各補正値j2〜j8を加算して設定
される(J=j2+j3……k7+k8)。
次遅れを考慮して、前回の冷却水温度推定値thwc(n-1)
と今回の冷却水温度推定値thwc(n)とに基づいてサーモ
スタット弁10の異常診断ルーチンで用いられる冷却水
温度推定値thwcが演算される。なお、式1においてαは
0より大きく1より小さい1次遅れ定数である。
定値thwc(n)が前回の冷却水温度推定値thwc(n-1)に置き
換えられる。すなわち、次回のルーチンに備えて前回の
冷却水温度推定値thwc(n-1)が更新される。
ット弁10の異常診断手法の概要を説明する。このサー
モスタット弁10の異常診断においては、基本的には、
サーモスタット弁10が正常である場合と開故障を起こ
している場合とでは、冷却水通路4、6の所定の部位で
の冷却水温度の上昇パターンが異なることを利用して、
サーモスタット弁10の開故障の有無を判定するように
している。
る場合と、開故障を起こしている場合とについて、冷機
状態でのエンジン始動後における、冷却水通路4、6の
所定の部位での冷却水温度の時間に対する変化特性を示
すグラフである。図5において、グラフA1〜A3とグラ
フB1〜B3とは、それぞれ次の冷却水温度を示してい
る。なお、P1〜P3位置は、図1中に示されている。
冷却水温度(thw) A2:サーモスタット弁正常時のP2位置の冷却水温度 A3:サーモスタット弁正常時のP3位置の冷却水温度 B1:サーモスタット弁開故障時のP1位置の冷却水温度
(thw) B2:サーモスタット弁開故障時のP2位置の冷却水温度 B3:サーモスタット弁開故障時のP3位置の冷却水温度
弁10が正常に作動している場合は、P1位置の冷却水
温度thw(グラフA1)とP2位置の冷却水温度(グラフ
A2)の差が極めて顕著である。例えば、エンジン始動
後250秒の時点では、P1位置の冷却水温度とP2位置
の冷却水温度の差は51.1°Cである。これに対し
て、P1位置の冷却水温度(グラフA1)とP3位置の冷
却水温度(グラフA3)の差は比較的小さく、19.6°
Cである。他方、サーモスタット弁10が開故障を起こ
しているときには、P1〜P3位置の各冷却水温(グラフ
B1〜B3)の間にはさほど差が生じない。
却水温度すなわち水温センサ11によって検出される冷
却水温度thwは、サーモスタット弁10が正常である場
合と、開故障を起こしている場合とでは大きく異なる。
また、サーモスタット弁10が正常である場合のP1位
置の冷却水温度thwは、前記の冷却水温度推定値thwcと
ほぼ一致する。したがって、冷却水温度推定値thwcと水
温センサ11で検出される実際の冷却水温度thwとが大
きく異なれば、サーモスタット弁10が開故障を起こし
ているものと判定することができる。そこで、この冷却
装置1では、基本的には、エンジン始動後の比較的早い
時期(正常なサーモスタット弁10が閉弁しているべき
時期ないしは状態)において、冷却水温度推定値thwcと
実際の冷却水温度thwとの間の差|thwc−thw|が所定の
設定値より大きいときには、サーモスタット弁10が開
故障を起こしているものと判定するようにしている。
つつ、コントロールユニット12による、具体的なサー
モスタット弁10の異常診断手法を説明する。この異常
診断ルーチンにおいては、まずステップU1で、エンジ
ンがクランキング開始後、完爆状態に達したか否かが判
定され、完爆状態に達していなければ(NO)、完爆状
態に達するまでこのステップU1が繰り返し実行される
(完爆状態に達するまで待機する)。
ていると判定された場合(YES)、すなわちエンジン
が完全に始動したときには、ステップU2で、水温セン
サ11によって検出される冷却水温度thw、車速センサ
(図示せず)によって検出される車速V、回転数センサ
(図示せず)によって検出されるエンジン回転数Ne等
が入力される。続いて、ステップU3で、エンジン始動
時における冷却水温度thwが、始動時水温thsとして記憶
される。なお、このステップU3は、エンジン始動後に
1回だけ実行される。
基準水温ths0より低いか否かが判定される。ここで、基
準水温ths0は、サーモスタット弁10の開弁温度付近に
設定されている。このステップU4でths≧ths0である
と判定された場合は(NO)、ステップU20でこの異
常診断ルーチンが停止される(モニタ不可)。けだし、
ths≧ths0である場合は、エンジン始動時点ですでに冷
却水温度が高くなっており、このためサーモスタット弁
10が正常であるか否かによって水温thwにあまり差異
が生じないので、上記水温差|thwc−thw|に基づいて
サーモスタット弁10の開故障の有無を判定するのは好
ましくないからである。
あると判定された場合は(YES)、ステップU5で、
エンジン始動後(完爆後)の経過時間をカウントするた
めの第1カウンタT1が1だけインクリメント(加算)
される。この第1カウンタT1は、このルーチンが1回
実行される毎に1づつインクリメントされ、他方このル
ーチンは一定の時間間隔で実行されるので、この第1カ
ウンタT1のカウント値(積算値)でエンジン始動後の
経過時間を把握することができる。
推定ルーチン(図4参照)で算出された冷却水温度推定
値thwcが読み込まれる。続いて、ステップU7で、エン
ジン回転数Neが基準回転数Ne0以上であるか否かが
判定される。エンジン回転数Neがあまり高いと、ウォ
ータポンプ7の吐出圧が上昇するので、サーモスタット
弁10が正常な場合でも、冷却水温度が低いときに冷却
水の水圧によってサーモスタット弁10が開かれ、冷却
水はラジエータ5によってかなり冷却されることにな
り、冷却水温度推定値thwcの精度が極めて悪くなる。し
たがって、冷却水温度推定値thwcに基づいてサーモスタ
ット弁10の開故障の有無を判定するのは好ましくな
い。そこで、この異常診断ルーチンでは、Ne≧Ne0
である状態の延継続時間に対応する第2カウンタT2の
カウント値(積算値)が所定値T20以上である場合は、
後記のステップU18で該異常診断ルーチンを停止する
ようにしている。
ると判定された場合は(YES)、ステップU8で、N
e≧Ne0である状態の延継続時間に対応する値をカウ
ントするための第2カウンタT2が1だけインクリメン
ト(加算)される。他方、ステップU7でNe<Ne0
であると判定された場合は(NO)、ステップU8をス
キップする。
で、それぞれ、前記のエンジン制御ルーチン(図3)で
演算された、燃料供給停止の延継続時間に対応するF/
CカウンタTF/Cのカウント値が所定値TF/C0未満であ
るか否かと、希薄燃焼の延継続時間に対応するL/Bカ
ウンタTL/Bのカウント値が所定値TL/B0未満であるか
否かとが判定される。ここで、TF/C≧TF/C0又はTL/B
≧TL/B0であると判定された場合は(ステップU9又は
ステップU10でNO)、発熱量が非常に少ないので、
これ以上冷却水温度の推定を続行すると、かえって冷却
水温度推定値thwcの精度が低下するおそれがある。つま
り、冷却水温度推定ルーチンで、燃料供給停止あるいは
希薄燃焼に対する補正を行っても、冷却水温度を正確に
推定することはできない。そこで、後記のステップU1
4にスキップして、この時点でサーモスタット弁10の
開故障の有無の判定を行うようにしている。
ると判定され(YES)、かつステップU10でTL/B
<TL/B0であると判定された場合は(YES)、ステッ
プU11とステップU12とで、それぞれ、第1カウン
タT1が、前記の冷却水温度推定ルーチンで演算された
判定時間Tmを超えているか否かと、冷却水温度推定ル
ーチンで演算された吸入空気量積算値qsが吸気量積算
値Qmを超えているか否かとが判定される。
ると判定され(YES)、かつステップU12でqs>
Qmであると判定された場合は(YES)、エンジン始
動後十分な時間が経過しており、かつ発熱量が十分であ
るので、冷却水温度推定値thwcに基づいてサーモスタッ
ト弁10の開故障の有無を高精度で判定することができ
る状態にある。そこで、この場合は、後記のステップU
14にスキップして、サーモスタット弁10の開故障の
有無の判定を行うようにしている。この過程が、この異
常診断における正常な流れである。
定された場合は(ステップU11又はステップU12で
NO)、ステップU13で冷却水温度推定値thwcが所定
値thw0以上であるか否かが判定される。ここで、thwc<
thw0であれば(NO)、冷却水温度推定値thwcと実際の
冷却水温度thwとの差があまり生じておらず、したがっ
てサーモスタット弁10の開故障の有無を判定するのは
好ましくないので、ステップU2に復帰してステップU
2〜ステップU13が繰り返し実行される。
ると判定された場合は(YES)、サーモスタット弁1
0がまもなく所定開度以上となるものと予測され、この
ような状態になったときには冷却水温度を正確に推定す
ることができないので、直ちにステップU14以下でサ
ーモスタット弁10の開故障の有無の判定を行うように
している。
wcと実際の冷却水温度thwの差|thwc−thw|が設定値A
より大きいか否かが判定される。ここで、|thwc−thw
|≦Aであれば、冷却水温度推定値thwcと実際の冷却水
温度thwとがほぼ一致しているので、サーモスタット弁
10は正常であるものと判定され、ステップU19でサ
ーモスタット弁10が正常であることが記憶ないしは表
示される(サーモスタット正常メモリ)。
>Aであると判定された場合は(YES)、ステップU
15とステップU16とで、それぞれ、第1カウンタT
1が所定値T10より大きいか否かと、第2カウンタT2が
所定値T20より小さいか否かとが判定される。そして、
ステップU15でT1≦T10であると判定された場合
(NO)、又はステップU16でT2≧T20であると判
定された場合は(NO)、まだ冷却水温度の推定に最低
限必要な時間が経過していないか、又はNe≧Ne0で
ある状態の延継続時間が長く、サーモスタット弁10の
冷却水漏れがかなり多いものと考えられるので、サーモ
スタット弁10の開故障の有無の判定を行うことが好ま
しくない。そこで、ステップU18で該異常診断ルーチ
ンが停止される(モニタ不可)。なお、なお、エンジン
回転数Neに応じて、上記所定値Aあるいは冷却水温度
推定値thwcを変更するようにしてもよいが、サーモスタ
ット弁10における冷却水の漏れ量は、該サーモスタッ
ト弁10の経年劣化や製品誤差にもよるので、この異常
診断ルーチンのようにするのが好ましい。
10であり、かつT2<T20であると判定された場合は
(ステップU15、U16がいずれもYES)、サーモ
スタット弁10が開故障を起こしているものと判定さ
れ、ステップU17でサーモスタット弁10が開故障を
起こしていることが記憶ないしは警告される(ワーニン
グ、サーモスタット故障メモリ)。
ルーチンでは、エンジンが完爆した時点から冷却水温度
推定値の演算を開始(カウント開始)するようにしてい
るが、エンジン始動後において冷却水温度の変化にあま
り影響がない期間は待機して、例えば始動後燃料増量を
開始するなどして、冷却水温度が実際に変化し始める時
点から冷却水温度推定値の演算を開始(カウント開始)
するようにしてもよい。また、水温センサ11によって
検出される水温thwの変化に基づいて冷却水温度を推定
するようにしてもよい。
態2を説明するが、この実施の形態2にかかるエンジン
の冷却装置ないしその異常診断装置においては、基本構
成は実施の形態1の場合と同様であり、コントロールユ
ニット12による異常診断手法が異なるだけである。よ
って、以下では説明の重複を避けるため、実施の形態2
にかかる異常診断手法についてのみ説明する。
しつつ、実施の形態2にかかるサーモスタット弁10の
異常診断手法を説明する。図13に示すように、この実
際の形態2にかかる異常診断ルーチンでは、まずステッ
プV1で、冷却水温度thw(実水温)、始動時冷却水温
度ths、吸入空気量g、エンジン回転数Ne、空燃比Kaf
(A/F)、車速V、外気温度tho、吸気温度thaa等の
各種データ値(制御情報)が入力される。
り、予測水温上昇率(dθp/dt)、すなわち予測水温θ
p(冷却水温度推定値thwc)の時間tについての微分値
が演算(算出)される。
c] Qout:冷却系(冷却水)から外部へ逃げる熱量[kcal
/sec] Kw:冷却系(冷却水)への放熱比率 Kq:燃料(ガソリン)の発熱量[kcal/g] g:吸入空気量[g/sec] Kaf:空燃比(A/F) Kn:摩擦熱の変換係数[kcal/revolution/60] Ne:エンジン回転数[r.p.m.] f(V):放熱係数(車速Vの関数) V:車速[m/sec] tho:外気温[°C]
放出される熱の差は該系の温度上昇を惹起するといった
熱力学上の一般原理に基づく熱収支式であり、この冷却
系では、これに入力される熱量Qinとこれから逃げる熱
量Qoutの差(Qin−Qout)が冷却系の温度上昇を惹起
する。なお、式2は常微分方程式であり、該冷却系の熱
的な動特性を示している。また、式3において、右辺第
1項(Kw・Kq・g/Kaf)は、燃料の燃焼によって生じ
る熱のうち冷却系(冷却水)に放出(入力)される熱を
あらわし、右辺第2項(Kn・Ne)は、エンジンの回転
に伴って生じる摩擦熱のうち冷却系(冷却水)に放出
(入力)される熱をあらわしている。式4は、流体中に
置かれた物体から流体への対流伝熱による放熱量は、流
体の流速の関数である伝熱係数(放熱係数)と、物体と
流体との間の温度差の積であらわされるといった、伝熱
工学上の一般原理に基づく式である。なお、通常、外気
温度thoは吸気温度thaaとほぼ一致するので、式4で外
気温度thoの代わりに吸気温度thaaを用いてもよい。
回の予測水温θp[k]すなわち冷却水温度推定値が演
算される。
1]に、微小なサンプリング時間Δtにおける温度上昇予
測値(dθp/dt)・Δtを加算して今回の予測水温θ
p[k]とするといった数値計算式である。サンプリング時
間Δtは、この故障診断ルーチンの1ルーチン(1サイ
クル)の実行に要する時間である。なお、この異常診断
ルーチンを最初に実行するときには、前回の予測水温θ
p[k-1]はまだ存在しないので、これに代えて始動時冷却
水温度thsを用いることになる。
p[k]が所定の設定値Aを超えているか否かが判定され
る。ここで、設定値Aは、冷却水温度の推定精度が十分
に高められるような適切な温度、例えばサーモスタット
弁10のの開弁温度近傍(例えば、80°C)に設定さ
れる。つまり、予測水温θp[k]が設定値Aに達したとき
に、正常か異常かの判定が行われることになる。そし
て、このステップV4で、θp[k]≦Aであると判定され
た場合は(NO)、冷却水温度の推定精度が十分には得
られないので、ステップV9で今回の予測水温θp[k]が
前回値に繰り下げられ、この後ステップV1に戻って、
ステップV1〜ステップV4が繰り返し実行される。
判定された場合は(YES)、ステップV5で実際の冷
却水温度thw(実水温)がしきい値Bより低い(小さ
い)か否かが判定される。ここで、しきい値Bは、冷却
水温度thwがこれより低いとサーモスタット弁10が異
常である(開弁故障している)と予想されるような適切
な値、例えば上記設定値Aより例えば20°C低い値
(例えば、60°C)に設定される。そして、このステ
ップV5で、thw≧Bであると判定された場合は(N
O)、実際の冷却水温度thwが予測水温θp[k]すなわち
冷却水温度推定値thwcにほぼ一致し、したがってサーモ
スタット弁10は正常であると予測されるので、ステッ
プV8でサーモスタット弁10は正常であるとの判定
(正常判定)が下され、この異常診断ルーチンは終了す
る。
ると判定された場合は(YES)、ステップV6で始動
時冷却水温度thsが所定値Cを超えているか否かが判定
される。この異常診断ルーチンでは、異常(故障)を正
常と判定する誤判定を防止するために、始動時冷却水温
度thsがもともと高いときには、異常診断の実行を禁止
するようにしている。なお、所定値Cは、例えば25°
Cに設定される。
と判定された場合は(NO)、異常診断の実行が禁止さ
れないので、ステップV7でサーモスタット弁10が異
常であるとの判定(故障判定)が下されワーニング(警
報)が発せられる。他方、ステップV6でths>Cであ
ると判定された場合は(YES)、異常診断の実行が禁
止されるので、異常診断を行わずにこの異常診断ルーチ
ンを終了する。
しきい値Bを60°Cに設定し、所定値Cを25°Cに
設定して、実施の形態2にかかる故障診断ルーチンを実
行した場合における、冷却水温度推定値thwc及び実際の
冷却水温度thwの時間に対する変化特性の具体例を示
す。この具体例では、グラフG1で示すように、冷却水
温度推定値thwcが80°Cに達した時刻t0(判定タイ
ミング)で、故障か正常化の判定が実施される。そし
て、例えばグラフG2で示すように、時刻t0で冷却水温
度thwがしきい値60°C以上となっていれば、サーモ
スタット弁10は正常であると判定される。これに対し
て、例えばグラフG3で示すように、時刻t0で冷却水
温度thwがしきい値60°C未満であれば、サーモスタ
ット弁10は異常である(開弁故障している)と判定さ
れる。このように、実施の形態2にかかるエンジンの冷
却装置の異常診断装置においても、冷却水温度推定値th
wcと実際の冷却水温度thwとに基づいて、サーモスタッ
ト弁10の異常ないしは故障、とくに開弁故障を容易か
つ確実に検出することができる。
態3を説明するが、この実施の形態3にかかるエンジン
の冷却装置ないしその異常診断装置においては、基本構
成は実施の形態1の場合と同様であり、コントロールユ
ニット12による異常診断手法が異なるだけである。よ
って、以下では説明の重複を避けるため、実施の形態3
にかかる異常診断手法についてのみ説明する。
しつつ、実施の形態3にかかるサーモスタット弁10の
異常診断手法を説明する。なお、この実施の形態3にか
かる異常診断手法は、前記の実施の形態2にかかる異常
診断手法(図13)を改良ないしは改善したものであ
り、したがって実施の形態2における異常診断手法の基
本的部分はこの実施の形態3についても当てはまる。
かかる異常診断ルーチンでは、まずステップV11で、
冷却水温度thw(実水温)、始動時冷却水温度ths、吸入
空気量g、エンジン回転数Ne、空燃比Kaf(A/
F)、車速V、外気温度tho、吸気温度thaa等の各種デ
ータ値(制御情報)が入力される。
の場合とほぼ同様に、基本的には前記の式2〜式4によ
り、予測水温上昇率(dθp/dt)、すなわち予測水温θ
p(冷却水温度推定値thwc)の時間tについての微分値
が演算(算出)される。ただし、冷却水への放熱比率K
wは、アイドル時と非アイドル時(オフアイドル時)と
で切り替えられ、アイドル時には非アイドル時よりも大
きい値が設定される。具体的には例えば、放熱比率Kw
は、アイドル時には0.4に設定され、非アイドル時に
は0.3に設定される。これは、アイドル時は非アイド
ル時に対して点火時期が遅角されているため、熱効率が
低下し、冷却水への放熱比率が上昇することを考慮した
ものである。なお、通常、外気温度thoは吸気温度thaa
とほぼ一致するので、式4で外気温度thoの代わりに吸
気温度thaaを用いてもよい。
場合とほぼ同様に、基本的には前記の式5により今回の
予測水温θp[k]すなわち冷却水温度推定値が演算さ
れる。なお、この異常診断ルーチンを最初に実行すると
きには、前回の予測水温θp[k-1]はまだ存在しないの
で、これに代えて始動時冷却水温度thsを用いることに
なる。
と実際の冷却水温度thw(実水温)との差(θp[k]−th
w)の積算値Σ(θp[k]−thw)が演算される。続いて、
ステップV15で、現在の吸気温度thaaが、エンジン始
動開始時から現時点に至るまでの間における最低吸気温
度thaminより低いか否かが判定される。そして、thaa<
thaminであれば(YES)、ステップV16で現在の吸
気温度thaaの値が新たに最低吸気温度thaminとして採用
される(thamin←thaa)。すなわち、最低吸気温度tham
inが更新される。他方、ステップV15でthaa≧thamin
であると判定された場合は(NO)、最低吸気温度tham
inは更新する必要がないので、ステップV16をスキッ
プする。
温度ths(始動時水温)と最低吸気温度thaminとの差(t
hs−thamin)が、始動時冷却水温度thsの関数である所
定の設定値Dより小さいか否かが判定される。なお、設
定値Dの始動時冷却水温度ths(始動時水温)に対する
変化特性は、例えば図16に示すような特性に設定され
る。ここで、(ths−thamin)≧Dであれば(NO)、
異常判定は行われず、ステップV11に復帰する。これ
は、半暖機時等、始動時冷却水温度thsが外気温度tho
(吸気温度thaa)よりも高いときにおける予測水温θ
p[k]の誤差に起因する誤診断を防止するためである。つ
まり、予測水温θp[k]を推算する演算式(式2〜式5)
における各係数は、エンジン始動時の冷却水温度が放置
によって外気温度に相当する温度まで十分に低下した状
態(エンジン始動時の冷却水温度が外気温度にほぼ等し
い)を想定して設定したものであるため、エンジン始動
時の冷却水温度が外気温度よりも高いと、予測水温θ
p[k]の推算に誤差が生じるからである。
n)<Dであると判定された場合は(YES)、ステッ
プV18で、エンジン始動開始時からの経過時間(始動
後経過時間)が、始動時冷却水温度thsの関数である所
定の設定時間Eより小さい(短い)か否かが判定され
る。ここで、始動後経過時間がE以上であれば(N
O)、異常判定は行われず、ステップV11に復帰す
る。すなわち、この異常診断手法では、予測水温θp[k]
と実際の冷却水温度thw(実水温)との差の積算値Σ
(θp[k]−thw)に基づいて異常判定を行うようにして
いる関係上、エンジン水温の上昇が緩慢で予測水温θ
p[k]がサーモスタット開弁温度Aに達するまでに長時間
を要する低負荷時等においては、上記積算値が大きくな
り、サーモスタット弁10が正常であっても開故障と誤
診断されるおそれがあるので、このような誤診断を防止
する必要があるからである。
がEより小さい(短い)と判定された場合は(YE
S)、ステップV19で、今回の予測水温θp[k]が所定
の設定値Aを超えているか否かが判定される。ここで、
設定値Aは、冷却水温度の推定精度が十分に高められる
ような適切な温度、例えばサーモスタット弁10の開弁
温度近傍(例えば、80°C)に設定される。つまり、
予測水温θp[k]が設定値Aに達したときに、正常か異常
かの判定が行われることになる。そして、このステップ
V19で、θp[k]≦Aであると判定された場合は(N
O)、冷却水温度の推定精度が十分には得られないの
で、ステップV24で今回の予測水温θp[k]が前回値に
繰り下げられ、ステップV11に復帰する。
と判定された場合は(YES)、ステップV20で、予
測水温θp[k]と実際の冷却水温度thw(実水温)との差
の積算値Σ(θp[k]−thw)が所定の設定値B(例え
ば、5℃)より大きい(高い)か否かが判定される。こ
こで、設定値Bは、例えば図17に示すように、始動時
冷却水温度ths(始動時水温)に応じて変化させるのが
好ましい。
であると判定された場合は(NO)、予測水温θp[k]と
実際の冷却水温度thw(実水温)との差が小さく、冷却
水温度thw(実水温)が十分に上昇しているものと考え
られるので、ステップV21で、サーモスタットは正し
く閉じており正常であるものと判定され(正常判定)、
今回の異常診断ルーチンは終了する。
w)>Bであると判定された場合は(YES)、ステッ
プV22で、始動時冷却水温度thsが所定値Cを超えて
いるか否かが判定される。ここで、ths≦Cであると判
定された場合は(NO)、予測水温θp[k]に対して実際
の冷却水温度thw(実水温)が低く、冷却水温度thwが十
分に上昇していないものと考えられるので、ステップV
23でサーモスタット弁10が異常であるとの判定(故
障判定)が下されワーニング(警報)が発せられ、今回
の異常診断ルーチンは終了する。また、ステップV22
でths>Cであると判定された場合は(YES)、異常
診断の実行が禁止されるので、異常診断を行わずにこの
異常診断ルーチンを終了する。
ンの冷却装置の異常診断装置においても、冷却水温度推
定値thwcと実際の冷却水温度thwとに基づいて、サーモ
スタット弁10の異常ないしは故障、とくに開弁故障を
容易かつ確実に検出することができる。
ンの冷却装置を模式的に示す側面断面図である。
るサーモスタット弁の閉弁状態における縦断面図であ
り、(b)はこのサーモスタット弁の開弁状態における
縦断面図である。
ンジン制御ルーチンのフローチャートである。
却水温度推定ルーチンのフローチャートである。
ーモスタット弁の異常診断ルーチンのフローチャートで
ある。
故障状態にある場合とにおける、エンジン始動後の冷却
水温度の時間に対する変化特性を示すグラフである。
に対する特性を示す図である。
す図である。
正値及び吸気量積算値の補正値の、車速、吸気温、点火
リタード量、燃料供給停止の有無、濃厚燃焼の有無、フ
ァン作動の有無、エアコンヒータの作動の有無及び希薄
燃焼の有無に対する変化特性を示す図である。
化特性を示す図である。
に対する変化特性を示す図である。
入空気量積算値に対する変化特性を示す図であり、
(b)は第2の基本冷却水温度推定値の吸入空気量積算
値に対する変化特性を示す図である。
ット弁の異常診断ルーチンのフローチャートである。
異常診断時における冷却水温度推定値及び実際の冷却水
温度の、時間に対する変化特性を示す図である。
ット弁の異常診断ルーチンのフローチャートである。
異常診断ルーチンにおける、設定値Dの始動時冷却水温
度ths(始動時水温)に対する変化特性を示す図であ
る。
異常診断ルーチンにおける、設定値Bの始動時冷却水温
度ths(始動時水温)に対する変化特性を示す図であ
る。
シリンダヘッド、4…第1通路、5…ラジエータ、6…
第2通路、7…ウォータポンプ、8…電動ファン、9…
バイパス通路、10…サーモスタット弁、10’…サー
モスタット弁、11…水温センサ、12…コントロール
ユニット、15…ケース、16…ピストン、17…可動
体、18…ワックスケース、19…合成ゴムスリーブ、
20…ワックス、21…ばね、22…弁部材。
Claims (18)
- 【請求項1】 冷却水温度に応じて開閉してエンジンと
ラジエータとの間での冷却水の行き来を規制するサーモ
スタット弁が設けられているエンジンの冷却装置の異常
診断装置において、 エンジン及び該エンジンを搭載した車両の運転状態に基
づいて、エンジンの冷却水温度を推定する冷却水温度推
定手段と、 実際の冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段と、 上記冷却水温度推定手段によって推定された冷却水温度
推定値と、上記冷却水温度検出手段によって検出された
冷却水温度とに基づいて、サーモスタット弁の異常の有
無を検出する異常検出手段とが設けられていることを特
徴とするエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項2】 上記冷却水温度推定手段が、少なくとも
エンジン回転数に基づいて冷却水温度を推定するように
なっていることを特徴とする、請求項1に記載されたエ
ンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項3】 上記異常検出手段が、冷却水温度推定値
と実際の冷却水温度の差が基準値より大きいときに、サ
ーモスタット弁が異常であると判定するようになってい
ることを特徴とする、請求項1又は2に記載されたエン
ジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項4】 上記冷却水温度推定手段が少なくとも車
速に基づいて冷却水温度を推定し、かつ上記異常検出手
段が正常なサーモスタット弁が閉弁状態となる冷却水温
度領域内でサーモスタット弁の異常の有無を検出するよ
うになっていることを特徴とする、請求項1〜3のいず
れか1つに記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装
置。 - 【請求項5】 上記冷却水温度推定手段が、サーモスタ
ット弁の閉弁時における冷却水の漏れ量を考慮して冷却
水温度を推定するようになっていることを特徴とする、
請求項4に記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装
置。 - 【請求項6】 上記異常検出手段が、エンジン始動後に
おいて冷却水温度の推定精度を低下させる所定の状態が
発生するまでに、サーモスタット弁の異常の有無の検出
を終了するようになっていることを特徴とする、請求項
1〜3のいずれか1つに記載されたエンジンの冷却装置
の異常診断装置。 - 【請求項7】 冷却水温度の推定精度を低下させる上記
所定の状態が、上記冷却水温度推定手段によって推定さ
れる冷却水温度推定値がサーモスタット弁開弁温度に到
達することであることを特徴とする、請求項6に記載さ
れたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項8】 冷却水温度の推定精度を低下させる上記
所定の状態が、エンジンの燃料供給停止の延継続時間が
所定値を超えることであることを特徴とする、請求項6
に記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項9】 冷却水温度の推定精度を低下させる上記
所定の状態が、エンジンの希薄燃焼の延継続時間が所定
値を超えることであることを特徴とする、請求項6に記
載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項10】 エンジンが冷機状態で始動されたとき
には、燃料供給停止又は希薄燃焼が抑制されるようにな
っていることを特徴とする、請求項8又は9に記載され
たエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項11】 上記異常検出手段が、外気温が低いと
きにサーモスタット弁の異常の有無を検出するようにな
っていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか
1つに記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項12】 上記冷却水温度推定手段が、少なくと
も外気温に基づいて冷却水温度を推定するようになって
いることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1つ
に記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項13】 上記異常検出手段が、冷却水温度推定
値と実際の冷却水温度との差の積算値に基づいてサーモ
スタット弁の異常の有無を検出するようになっているこ
とを特徴とする、請求項1に記載されたエンジンの冷却
装置の異常診断装置。 - 【請求項14】 上記異常検出手段が、エンジン始動後
所定時間内にサーモスタット弁の異常の有無を検出する
ようになっていることを特徴とする、請求項13に記載
されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項15】 上記のエンジン始動後所定時間が、エ
ンジン始動時における実際の冷却水温度に応じて変更さ
れるようになっていることを特徴とする、請求項14に
記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項16】 上記異常検出手段が所定の異常判定値
に基づいてサーモスタット弁の異常の有無を判定するよ
うになっていて、上記異常判定値がエンジン始動時にお
ける実際の冷却水温度に応じて変更されるようになって
いることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1
つに記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項17】 上記冷却水温度推定手段がエンジンか
ら冷却水への放熱比率を含む水温推定演算式に基づいて
冷却水温度を推定するようになっていて、上記放熱比率
がエンジンの点火時期に応じて変更されるようになって
いることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1
つに記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。 - 【請求項18】 外気温度がエンジン始動時における実
際の冷却水温度よりも低いときには、上記異常検出手段
によるサーモスタット弁の異常の有無の検出が禁止さ
れ、又は検出結果が実質的に無効とされるようになって
いることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1
つに記載されたエンジンの冷却装置の異常診断装置。
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