JP2000091664A - 磁気デバイス - Google Patents

磁気デバイス

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JP2000091664A
JP2000091664A JP10253144A JP25314498A JP2000091664A JP 2000091664 A JP2000091664 A JP 2000091664A JP 10253144 A JP10253144 A JP 10253144A JP 25314498 A JP25314498 A JP 25314498A JP 2000091664 A JP2000091664 A JP 2000091664A
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ferromagnetic
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 巨大磁気抵抗効果および磁気トンネリング効
果を利用して、従来に無い新しい能動的デバイスを提供
する。 【解決手段】 磁気トンネル効果素子10は、絶縁体層
12によって分離された第1強磁性体層14および第2
強磁性体層16を含む。第1強磁性体層と接触した状態
で反強磁性体層20が設けられる。この反強磁性体層に
より、第1強磁性体層の磁化が1つの方向に固定され
る。第2強磁性体層の磁化の方向は外部から印加される
磁界に応じて変化可能である。絶縁体層中に非磁性金属
層18が挿入されている。この非磁性金属層に電気信号
を入力して磁界を発生させ、第2強磁性体層の磁化を制
御する。第2強磁性体層の磁化方向に応じて、第1およ
び第2強磁性体層間の抵抗が変化するため、第1および
第2強磁性体層間の電圧を制御することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気トンネリン
グ効果あるいは巨大磁気抵抗効果を利用した磁気デバイ
スに関する。
【0002】
【従来の技術】巨大磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効
果型センサの例が、文献1「特開平6−111252」
や文献2「特開平5−114761」に開示されてい
る。文献1に開示の磁気抵抗効果型センサの構造では、
反強磁性体層、第1強磁性体層、非磁性体層および第2
強磁性体層が順次に積層する。反強磁性体層は、交換バ
イアス磁界を発生させて第1強磁性体層の磁化を固定す
るものである。文献2に開示の磁気抵抗効果型センサで
は、第1強磁性体層、非磁性体層および第2強磁性体層
が順次に積層する。第1強磁性体層の保磁力を、第2強
磁性体層の保磁力に比べて大きくしてあるため、反強磁
性体層が不要である。
【0003】これら磁気抵抗効果型センサでは、第1強
磁性体層の磁化の向きが固定されており、第2強磁性体
層の磁化が外部の磁界に応じて自在に向きを変える。こ
の場合、両者の磁化のなす角度に応じて、これら各層中
の伝導電子のスピン散乱の割合が変化する。従って、磁
気抵抗効果型センサの電気抵抗値は外部から加えられる
磁界に応答して変化する。
【0004】このように、磁気抵抗効果型センサを用い
ると、外部磁化の変化を電気抵抗値の変化として検出す
ることができる。通常の磁気抵抗効果型センサの検出感
度は、第2強磁性体層の磁気特性によって決定される。
一般に、第2強磁性体層としては軟磁気特性の優れた材
料が用いられる。
【0005】また、磁界の印加に伴って抵抗が変化する
現象としては、巨大磁気抵抗効果の他にも磁気トンネリ
ング効果が知られており(文献3「日本応用磁気学会誌
19,p369,1995」参照)、磁気センサへの
応用が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、巨大磁
気抵抗効果および磁気トンネリング効果を利用した磁気
デバイスとしては、受動的デバイスである磁気センサへ
の応用が一般的である。しかしながら、制御機能を有す
る能動的デバイスに関する応用については、これまでに
例が無い。
【0007】従って、この発明では、巨大磁気抵抗効果
および磁気トンネリング効果を利用して、従来に無い新
しい能動的デバイスを提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明の磁気
デバイスによれば、磁気トンネル効果素子を用いた磁気
デバイスであって、この磁気トンネル効果素子は、絶縁
体層によって分離された第1および第2強磁性体層を含
み、この第1強磁性体層の磁化が1つの方向に固定さ
れ、第2強磁性体層の磁化の方向が印加される磁界に応
じて変化可能であり、これら第1および第2強磁性体層
の各磁化方向の相対的な角度に応じて、これら第1およ
び第2強磁性体層間が異なる抵抗を示すものであり、絶
縁体層中に非磁性金属層が挿入されており、この非磁性
金属層を流れる電気信号により上述の磁界を発生させ、
第1および第2強磁性体層間の電圧あるいは電流を制御
することを特徴とする。
【0009】このように、非磁性金属層に流れる電気信
号が磁界を発生させ、その磁界により第2強磁性体層の
磁化が制御される。第1強磁性体層の磁化は固定されて
いるので、電気信号に応じて第1および第2強磁性体層
間の電気抵抗が変化する。従って、この磁気デバイスに
よれば、第1および第2強磁性体層間の電圧あるいは電
流を制御することができる。
【0010】この発明の磁気デバイスにおいて、好まし
くは、電気信号により発生する磁界の方向が、第2強磁
性体層中において当該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿
った方向であると良い。
【0011】このように、第2強磁性体層の磁化容易軸
に沿って磁界が印加されるので、第2強磁性体層の磁化
が、第1強磁性体層の磁化と同じ向きの状態と、第1強
磁性体層の磁化と逆向きの状態とで、切り替わるように
構成できる。すなわち、電気信号の高低あるいは電流の
向きに応じて、低抵抗状態と高抵抗状態とを示す磁気デ
バイスが得られる。
【0012】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
反強磁性体層を含むと良い。
【0013】このように、反強磁性体層の交換バイアス
磁界を利用して、第1強磁性体層の磁化を固定するのが
好適である。
【0014】あるいは、また、第1強磁性体層の保磁力
が、第2強磁性体層の保磁力よりも大きくなるように構
成すると良い。
【0015】このように構成するので、印加する磁界の
大きさが適当であれば、第1強磁性体層の磁化は固定し
た状態で、第2強磁性体層の磁化だけを変化させること
ができる。この構成によれば、反強磁性体層が不要であ
るから構造が簡略化される。
【0016】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、磁気トンネル効果素子にバイアス電流層を
設けてあり、このバイアス電流層に交流電流を印加する
ための交流電源を具え、この交流電流により発生するバ
イアス磁界が第2強磁性体層に印加されるように構成す
ると良い。
【0017】このように、バイアス磁界が第2強磁性体
層に印加されるので、非磁性体層に流れる電気信号が微
弱な場合であっても、電圧制御が可能である。
【0018】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、バイアス磁界は、第2強磁性体層中におい
て当該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿った方向とな
り、かつ、第1および第2強磁性体層の磁化に対して非
影響的な大きさであると良い。
【0019】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
反強磁性体層を含むと良い。
【0020】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
絶縁性の反強磁性体層を含むと良い。
【0021】このように構成してあるので、絶縁性の反
強磁性体層上にバイアス電流層を設けることができ、素
子構成が簡略化される。
【0022】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、第1強磁性体層の保磁力が、第2強磁性体
層の保磁力よりも大きいと良い。
【0023】次に、この発明の磁気デバイスによれば、
巨大磁気抵抗効果素子を用いた磁気デバイスであって、
この巨大磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層によって分
離された第1および第2強磁性体層を含み、第1強磁性
体層の磁化が1つの方向に固定され、第2強磁性体層の
磁化の方向が印加される磁界に応じて変化可能であり、
これら第1および第2強磁性体層の各磁化方向の相対的
な角度に応じて異なる抵抗値を示すものであり、非磁性
金属層が、巨大磁気抵抗効果素子を構成する他の層に比
較して抵抗値が低い材料で構成されており、この非磁性
金属層を流れる電気信号により上述の磁界を発生させ、
巨大磁気抵抗効果素子に印加される電流あるいは電圧を
制御することを特徴とする。
【0024】このように、非磁性金属層に流れる電気信
号が磁界を発生させ、その磁界により第2強磁性体層の
磁化が制御される。第1強磁性体層の磁化は固定されて
いるので、電気信号に応じて巨大磁気抵抗効果素子の電
気抵抗が変化する。従って、この磁気デバイスによれ
ば、巨大磁気抵抗効果素子に印加される電圧あるいは電
流を制御することができる。
【0025】この発明の磁気デバイスにおいて、好まし
くは、電気信号により発生する磁界の方向が、第2強磁
性体層中において当該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿
った方向であるのが良い。
【0026】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
反強磁性体層を含むと良い。
【0027】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、第1強磁性体層の保磁力が、第2強磁性体
層の保磁力よりも大きいと良い。
【0028】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、巨大磁気抵抗効果素子にバイアス電流層を
設けてあり、このバイアス電流層に交流電流を印加する
ための交流電源を具え、交流電流により発生するバイア
ス磁界が第2強磁性体層に印加されると良い。
【0029】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、バイアス磁界は、第2強磁性体層中におい
て当該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿った方向とな
り、かつ、第1および第2強磁性体層の磁化に対して非
影響的な大きさであるのが良い。
【0030】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
反強磁性体層を含むと良い。
【0031】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁
界によって、第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する
絶縁性の反強磁性体層を含むと良い。
【0032】また、この発明の磁気デバイスにおいて、
好ましくは、第1強磁性体層の保磁力が、第2強磁性体
層の保磁力よりも大きいと良い。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して、この発明の
実施の形態につき説明する。尚、図は、この発明の構成
および配置関係が理解できる程度に概略的に示されてい
るに過ぎない。また、以下に記載される数値等の条件や
材料は単なる一例に過ぎない。従って、この発明は、こ
の実施の形態に何ら限定されることがない。
【0034】第1から第5の実施の形態では、磁気トン
ネル効果素子を用いた電圧制御デバイスを例にして実施
の形態の磁気デバイスの説明を行う。
【0035】〔第1の実施の形態〕図1は、電圧制御デ
バイスの第1構成を示す図である。図1(B)は、電圧
制御デバイスの平面構成を示す図であり、図1(A)
は、図1(B)のI−I線の位置で切った切り口の断面
を示す図である。
【0036】この実施の形態の電圧制御デバイスには、
磁気トンネル効果素子(以下、TMR素子と略称す
る。)10が用いられている。このTMR素子10は、
絶縁体層12によって分離された第1強磁性体層14お
よび第2強磁性体層16を含む構造を有している。
【0037】また、第1強磁性体層14と接触するよう
に反強磁性体層20が設けられている。この反強磁性体
層20で発生する交換バイアス磁界により交換結合が生
じて、第1強磁性体層14の磁化が1つの方向に固定さ
れる。一方、第2強磁性体層16の磁化の方向は外部か
ら印加される磁界に応じて変化可能である。磁気トンネ
リング効果により、第1強磁性体層14および第2強磁
性体層16間の電気抵抗は、これら第1強磁性体層14
および第2強磁性体層16の各磁化方向の相対的な角度
に応じて異なる。従って、第2強磁性体層16の磁化に
より、上述の電気抵抗を制御することが可能である。
【0038】この実施の形態例の特徴的構成の一つは、
絶縁体層12中に非磁性金属層18が挿入されている点
にある。非磁性金属層18は、第1強磁性体層14およ
び第2強磁性体層16の双方に接触しないように、これ
らの間に設けられる。図1(A)に示す断面構成では、
非磁性金属層18を挿入したために、絶縁体層12が2
つの絶縁体層12aおよび12bに分離されている。図
1(A)に示すように、TMR素子10は、反強磁性体
層20、第1強磁性体層14、絶縁体層12a、非磁性
金属層18、絶縁体層12bおよび第2強磁性体層16
がこの順序で積層した構成を具えている。
【0039】この例では、第1強磁性体層14および第
2強磁性体層16は共にNi35Fe20Co45層(以下、
NiFeCo層と略称する。)である。また、絶縁体層
12aおよび12bはAl23 層である。非磁性金属
層18はCu層であり、反強磁性体層20はNiO層で
ある。これらNiFeCo層、Al23 層、Cu層、
NiO層はスパッタ法により形成する。各層の厚さは、
例えば、NiFeCo層14が2.0nm、NiFeC
o層16が10.0nm、Al23 層12aおよび1
2bがそれぞれ0.5nm、Cu層18が10.0n
m、NiO層20が27.0nmである。各層の堆積を
行った後、フォトリソグラフィ法による微細加工を行
い、各層の平面形状が1μm×0.5μmの長方形形状
となるように整形する(図1(B))。このとき、第1
強磁性体層14および第2強磁性体層16の磁化容易軸
の方向が長辺方向(長さ1μmの辺が延在する方向であ
り、図中のa方向に相当する。)と一致するように、微
細加工を行っている。
【0040】図2は、TMR素子10の磁気トンネリン
グ特性を示すグラフである。グラフの横軸は、TMR素
子10に印加される磁界の強度である。磁界はエルステ
ッド(Oe)単位で表し、−40Oeから40Oeの範
囲を10Oeごとに目盛って示してある。尚、磁界の正
負は、第1強磁性体層14の磁化の向きを基準にして定
めてある。
【0041】また、グラフの縦軸は、TMR素子10の
電気抵抗値の増加率を示す。この増加率を%表示で示
し、0.0%〜2.5%の範囲を0.5%ごとに目盛っ
て示してある。この電気抵抗値は、第1強磁性体層14
と第2強磁性体層16との間の電気抵抗値に相当する。
抵抗の増加率は、第1強磁性体層14の磁化の向きと第
2強磁性体層16の磁化の向きとが同じときを基準すな
わち0%としてある。このときのTMR素子10の抵抗
値は、約50Ωであった。
【0042】図2に示す測定結果は、第1強磁性体層1
4と第2強磁性体層16との間に電圧を印加して得たも
のである。各測定データはグラフ中に白丸記号で示して
ある。測定の開始前に予め−500Oe以下の磁界を印
加することにより、第1強磁性体層14の磁化の向きを
固定する。そして、−40Oeから40Oeの範囲の低
磁界を印加しながら、電気抵抗を測定する。
【0043】図2に示すように、TMR素子10の磁気
トンネリング特性はヒステリシス特性を示す。電気抵抗
は、20Oe程度の大きさの磁界が印加されるときに、
低抵抗状態(0.2%程度)から高抵抗状態(2.1%
程度)へと変化する。また、−10Oe程度の大きさの
磁界が印加されるときに、高抵抗状態から低抵抗状態へ
と変化する。
【0044】以上説明したように、TMR素子10は、
印加される磁界に応じて電気抵抗が変化する。そして、
このTMR素子10を利用した電圧制御デバイスによれ
ば、非磁性金属層18を具えており、この非磁性金属層
18に電気信号を入力して磁界を発生させ、第2強磁性
体層16の磁化を制御する。上述したように、第2強磁
性体層16の磁化方向に応じて、第1強磁性体層14お
よび第2強磁性体層16間の抵抗が変化するため、第1
強磁性体層14および第2強磁性体層16間の電圧を制
御することができる。
【0045】このため、非磁性金属層18に電気信号を
入力するための電極として、入力端子22およびグラン
ド端子24が設けられている(図1)。これらの電極
は、非磁性金属層18に入力する電流が短辺方向(長さ
0.5μmの辺が延在する方向であり、図中のb方向に
相当する。)に流れるように設けられる。この結果、非
磁性金属層18を流れる電流により発生する磁界の方向
は、第2強磁性体層16中においてその磁化容易軸に沿
った方向(a方向)となる。従って、非磁性金属層18
中に流れる電流の向きを変えれば、それに応じて、第2
強磁性体層16の磁化の向きが反転するように構成され
る。
【0046】また、TMR素子10には、抵抗26を介
して定電圧電源28が接続されている。すなわち、第1
強磁性体層14と第2強磁性体層16との間に、抵抗2
6および定電圧電源28が例えば導線により接続されて
いる。また、TMR素子10および抵抗26間の導線中
に電極を設けてあり、出力端子30としてある。
【0047】次に、電圧制御デバイスの動作につき、図
3および図4を参照して説明する。図3は、動作時の磁
化の様子を示す斜視図である。図4は、入出力信号の様
子を示すグラフである。
【0048】図3(A)には、TMR素子10が低抵抗
状態の場合の磁化の様子が示されている。このとき、第
1強磁性体層14の磁化32の向きと第2強磁性体層1
6の磁化34の向きとが一致している(この状態を平行
状態と称する。)。非磁性金属層18に入力した電気信
号36は、図中の左側から右側に向かって流れる。電流
の流れる向きに対して時計回りの方向に磁界38が発生
し、第2強磁性体層16の磁化34を第1強磁性体層1
4の磁化32と同じ向きに揃える。
【0049】図3(B)には、TMR素子10が高抵抗
状態の場合の磁化の様子が示されている。このとき、第
1強磁性体層14の磁化32の向きと第2強磁性体層1
6の磁化34の向きとが逆転した関係になっている(こ
の状態を反平行状態と称する。)。非磁性金属層18に
入力した電気信号36は、図中の右側から左側に向かっ
て流れる。電流の流れる向きに対して時計回りの方向に
磁界38が発生し、第2強磁性体層16の磁化34を第
1強磁性体層14の磁化32に対して逆の向きにする。
【0050】図4の上側には、入力端子22に印加され
る入力電圧の様子(実線aで示す波形)が示されてい
る。入力電圧は、第2強磁性体層16の磁化を制御可能
な大きさのパルス波形を示す。この入力電圧の印加に対
応した電流が、上述の電気信号として非磁性金属層18
に入力される。入力電圧のパルス波形の正負は、TMR
素子10が低抵抗状態となる場合(図3(A)の場合)
を正とし、TMR素子10が高抵抗状態となる場合(図
3(B)の場合)を負としてある。すなわち、非磁性金
属層18に流れる電流により発生する磁界が第2強磁性
体層16中において第1強磁性体層14の磁化と同じ向
きになる場合を正とし、非磁性金属層18に流れる電流
により発生する磁界が第2強磁性体層16中において第
1強磁性体層14の磁化と逆の向きになる場合を負とす
る。
【0051】図4の下側には、出力端子30から検出さ
れる出力電圧の様子(実線bで示す波形)が示されてい
る。出力電圧は入力電圧の正負に応じて変化する。入力
端子22に正の入力電圧が印加されると、TMR素子1
0は低抵抗状態となる。従って、第1強磁性体層14お
よび第2強磁性体層16間の抵抗が低下して、出力電圧
は低電圧状態(ロー状態)となる。一方、入力端子22
に負の入力電圧が印加されると、TMR素子10は高抵
抗状態となる。従って、第1強磁性体層14および第2
強磁性体層16間の抵抗が増加して、出力電圧は高電圧
状態(ハイ状態)となる。
【0052】尚、定電圧電源28により第1強磁性体層
14および第2強磁性体層16間に流れる電流は、非磁
性金属層18を流れる電流と直交する方向に流れる。従
って、これらの電流により発生する磁界の方向も互いに
直交した関係となり、この定電圧電源28により駆動さ
れる電流が電圧制御デバイスの動作に影響を与えること
はない。
【0053】以上説明したように、この実施の形態の電
圧制御デバイスによれば、入力電気信号により電圧制御
を行うことが可能である。上述した構成例では、±10
mVの入力電圧に対して100mVの電圧制御を行うこ
とができる。このように、比較的簡単な素子構成である
が、微小電気信号に応じて比較的大きな電圧の制御が可
能である。
【0054】〔第2の実施の形態〕次に、第2の実施の
形態について説明する。第1の実施の形態と重複する構
成については説明を省略する場合がある。
【0055】図5は、電圧制御デバイスの第2構成を示
す図である。図5(B)は、電圧制御デバイスの平面構
成を示す図であり、図5(A)は、図5(B)のI−I
線の位置で切った切り口の断面を示す図である。
【0056】この実施の形態の電圧制御デバイスには、
磁気トンネル効果素子(以下、TMR素子と略称す
る。)10aが用いられる。TMR素子10aは、絶縁
体層12によって分離された第1強磁性体層14および
第2強磁性体層16を含む構造を有している。
【0057】また、絶縁体層12中に非磁性金属層18
が挿入されている。非磁性金属層18は、第1強磁性体
層14および第2強磁性体層16の双方に接触しないよ
うに、これらの間に設けられる。図5(A)に示す断面
構成では、非磁性金属層18を挿入したために、絶縁体
層12が2つの絶縁体層12aおよび12bに分離され
ている。図5(A)に示すように、TMR素子10a
は、第1強磁性体層14、絶縁体層12a、非磁性金属
層18、絶縁体層12bおよび第2強磁性体層16がこ
の順序で積層した構成を具えている。
【0058】また、第1強磁性体層14の保磁力を、第
2強磁性体層16の保磁力よりも大きくしてある。この
例では、第1強磁性体層14は、6.0nmの膜厚のC
o層である。また、第2強磁性体層16は、10.0n
mの膜厚のNi35Fe20Co45層である。このように、
第1強磁性体層14と第2強磁性体層16とを異なる材
料で構成し、各々の保磁力が互いに異なるように設計し
てある。よって、第1強磁性体層14の磁化の向きは一
方向に固定され、外部磁界に応じて第2強磁性体層16
の磁化だけが自在に向きを変えるように構成することが
できる。
【0059】また、絶縁体層12aおよび12bは、そ
れぞれ0.5nmの膜厚のAl23 層である。非磁性
金属層18は、10.0nmの膜厚のCu層である。こ
れらNiFeCo層、Co層、Al23 層、Cu層は
スパッタ法により形成する。第1の実施の形態と同様
に、各層の堆積を行った後に、フォトリソグラフィ法に
よる微細加工を行い、各層の平面形状が1μm×0.5
μmの長方形形状となるように整形する(図5
(B))。このとき、第1強磁性体層14および第2強
磁性体層16の磁化容易軸の方向が長辺方向(長さ1μ
mの辺が延在する方向であり、図中のa方向に相当す
る。)と一致するように、微細加工を行っている。
【0060】そして、非磁性金属層18に電気信号を入
力するための電極として、入力端子22およびグランド
端子24が設けられている(図5)。これらの電極は、
非磁性金属層18に入力する電流が短辺方向(長さ0.
5μmの辺が延在する方向であり、図中のb方向に相当
する。)に流れるように設けられる。この結果、非磁性
金属層18を流れる電流により発生する磁界の方向は、
第2強磁性体層16中においてその磁化容易軸に沿った
方向(a方向)となる。
【0061】また、TMR素子10aには、抵抗26を
介して定電圧電源28が接続されている。すなわち、第
1強磁性体層14と第2強磁性体層16との間に、抵抗
26および定電圧電源28が例えば導線により接続され
ている。また、TMR素子10aおよび抵抗26間の導
線中に電極を設けてあり、出力端子30としてある。
【0062】図6は、TMR素子10aの磁気トンネリ
ング特性を示すグラフである。グラフの横軸は、TMR
素子10aに印加される磁界の強度である。磁界はエル
ステッド(Oe)単位で表し、−40Oeから40Oe
の範囲を10Oeごとに目盛って示してある。尚、磁界
の正負は、第1強磁性体層14の磁化の向きを基準にし
て定めてある。
【0063】また、グラフの縦軸は、TMR素子10a
の電気抵抗値の増加率を示す。この増加率を%表示で示
し、0.0%〜3.5%の範囲を0.5%ごとに目盛っ
て示してある。この電気抵抗値は、第1強磁性体層14
と第2強磁性体層16との間の電気抵抗値に相当する。
抵抗の増加率は、第1強磁性体層14の磁化の向きと第
2強磁性体層16の磁化の向きとが同じときを基準すな
わち0%としてある。
【0064】図6に示す測定結果は、第1強磁性体層1
4と第2強磁性体層16との間に電圧を印加して得たも
のである。各測定データはグラフ中に白丸記号で示して
ある。測定の開始前に予め−500Oe以下の磁界を印
加することにより、第1強磁性体層14の磁化の向きを
固定する。そして、−40Oeから40Oeの範囲の低
磁界を印加しながら、電気抵抗を測定する。
【0065】図6に示すように、TMR素子10aの磁
気トンネリング特性はヒステリシス特性を示す。電気抵
抗は、20Oe程度の大きさの磁界が印加されるとき
に、低抵抗状態(0.2%程度)から高抵抗状態(3.
2%程度)へと変化する。また、−10Oe程度の大き
さの磁界が印加されるときに、高抵抗状態から低抵抗状
態へと変化する。
【0066】以上説明したように、TMR素子10a
は、印加される磁界に応じて電気抵抗が変化する。そし
て、このTMR素子10aを利用した電圧制御デバイス
によれば、非磁性金属層18を具えており、この非磁性
金属層18に電気信号を入力して磁界を発生させ、第2
強磁性体層16の磁化を制御する。上述したように、第
2強磁性体層16の磁化方向に応じて、第1強磁性体層
14および第2強磁性体層16間の抵抗が変化するた
め、第1強磁性体層14および第2強磁性体層16間の
電圧を制御することができる。
【0067】この第2の実施の形態の電圧制御デバイス
の動作は、第1の実施の形態の電圧制御デバイスの動作
と同様であるから説明を省略する。上述したように、こ
の構成例の場合には反強磁性体層が不要であるから、比
較的作製が容易であるという利点がある。
【0068】〔第3の実施の形態〕次に、第3の実施の
形態について説明する。この構成例の特徴は、第1の実
施の形態で説明したTMR素子にバイアス電流層を設け
た点にある。第1の実施の形態と重複する構成について
は説明を省略する場合がある。
【0069】図7は、電圧制御デバイスの第3構成を示
す図である。図7(A)は、電圧制御デバイスの構成を
示す斜視図であり、図7(B)は、電圧制御デバイスの
平面構成を示す平面図である。
【0070】上述したように、この構成例では、バイア
ス電流層40をTMR素子10に設けてある。このバイ
アス電流層40は、交流電流(バイアス電流)を流すこ
とにより、第2強磁性体層16の磁化の方向に沿って印
加される交流磁界(バイアス磁界)を発生させるための
膜体である。このバイアス電流層40は、絶縁体層42
を介して第2強磁性体層16の上に堆積している。この
バイアス電流層40には交流電源44が接続されてお
り、これにより動作時にバイアス電流が流される。この
実施の形態では、バイアス電流層40は、1.0μmの
膜厚のCu層である。また、絶縁体層42は、1.0μ
mの膜厚のAl23 層である。
【0071】尚、TMR素子10の構成は、第1の実施
の形態で説明した通りである。また、TMR素子10の
磁気トンネリング特性は図2に示した通りである。その
他の構成も図1に示すものと同様である。
【0072】次に、電圧制御デバイスの動作につき、図
8および図9を参照して説明する。図8は、磁気トンネ
リング特性とバイアス磁界との関係を示すグラフであ
る。図9は、入出力信号およびバイアス電流の様子を示
すグラフである。
【0073】図8に示す磁気トンネリング特性aは、図
2に示したものを概略化したものに相当する。グラフの
横軸は、TMR素子10に印加される磁界の強度を表
す。グラフの縦軸は、TMR素子10の電気抵抗値を表
す。TMR素子10は、印加磁界がHrになると低抵抗
Rlowの状態から高抵抗Rhighの状態へと変化
し、印加磁界が−Hfになると高抵抗Rhighの状態
から低抵抗Rlowの状態へと変化する。バイアス電流
層40に流すバイアス電流の大きさは、これにより発生
するバイアス磁界が−Hfよりも大きく、かつHrより
も小さい範囲の磁界となるように、設定される。従っ
て、バイアス磁界だけで第2強磁性体層16の磁化が変
化することはない。しかし、バイアス磁界の最大値がH
rに近い値となるようにし、バイアス磁界の最小値が−
Hfに近い値となるように、バイアス電流の値を定める
のが好適である。
【0074】尚、高抵抗状態および低抵抗状態のそれぞ
れにおけるTMR素子10の磁化の様子は、図3に示し
た通りである。
【0075】図9の上側には、入力端子22に印加され
る入力電圧の様子(実線aで示す波形)が示されてい
る。入力電圧はパルス波形を示す。この入力電圧の印加
に対応した電流が非磁性金属層18に入力される。入力
電圧のパルス波形の正負は、非磁性金属層18に流れる
電流により発生する磁界が第2強磁性体層16中におい
て第1強磁性体層14の磁化と同じ向きになる場合を正
とし、非磁性金属層18に流れる電流により発生する磁
界が第2強磁性体層16中において第1強磁性体層14
の磁化と逆の向きになる場合を負とする。
【0076】図9の中間には、バイアス電流層40に流
れるバイアス電流の様子(実線bで示す波形)が示され
ている。図示のように、バイアス電流は、一定の繰り返
し周期で変動する交流電流である。尚、バイアス磁界と
第1強磁性体層14の磁化とが逆の向きのときのバイア
ス電流の符号を正とし、バイアス磁界と第1強磁性体層
14の磁化とが同じ向きのときのバイアス電流の符号を
負と定める。
【0077】図9の下側には、出力端子30から検出さ
れる出力電圧の様子(実線cで示す波形)が示されてい
る。出力電圧は入力電圧およびバイアス電流の正負に応
じて変化する。入力端子22に正の入力電圧が印加し、
かつ、バイアス電流層40に正のバイアス電流が流れる
とき、TMR素子10は低抵抗状態となる。従って、第
1強磁性体層14および第2強磁性体層16間の抵抗が
低下して、出力電圧が低電圧状態(ロー状態)となる。
一方、入力端子22に負の入力電圧が印加し、かつ、バ
イアス電流層40に負のバイアス電流が流れるとき、T
MR素子10は高抵抗状態となる。従って、第1強磁性
体層14および第2強磁性体層16間の抵抗が増加し
て、出力電圧が高電圧状態(ハイ状態)となる。
【0078】このように、バイアス磁界を印加すること
により、微小な入力電気信号により比較的大きな電圧の
制御を行うことが可能である。上述した構成例では、±
1mVの入力電圧に対して100mVの電圧制御を行う
ことができる。
【0079】〔第4の実施の形態〕次に、第4の実施の
形態について説明する。この構成例の特徴は、第2の実
施の形態で説明したTMR素子にバイアス電流層を設け
た点にある。第2の実施の形態と重複する構成について
は説明を省略する場合がある。
【0080】図10は、電圧制御デバイスの第4構成を
示す図である。図10(A)は、電圧制御デバイスの構
成を示す斜視図であり、図10(B)は、電圧制御デバ
イスの平面構成を示す平面図である。
【0081】上述したように、この構成例では、バイア
ス電流層40をTMR素子10aに設けてある。このバ
イアス電流層40は、交流電流(バイアス電流)を流す
ことにより、第2強磁性体層16の磁化の方向に沿って
印加される交流磁界(バイアス磁界)を発生させるため
の膜体である。このバイアス電流層40は、絶縁体層4
2を介して第2強磁性体層16の上に堆積している。こ
のバイアス電流層40には交流電源44が接続されてお
り、これにより動作時にバイアス電流が流される。この
実施の形態では、バイアス電流層40は、1.0μmの
膜厚のCu層である。また、絶縁体層42は、1.0μ
mの膜厚のAl23 層である。
【0082】尚、TMR素子10aの構成は、第2の実
施の形態で説明した通りである。また、TMR素子10
aの磁気トンネリング特性は図6に示した通りである。
その他の構成も図5に示すものと同様である。
【0083】この第4の実施の形態の電圧制御デバイス
の動作は、第3の実施の形態の電圧制御デバイスの動作
と同様であるから説明を省略する。上述したように、こ
の構成例の場合には反強磁性体層が不要であるから、比
較的作製が容易であるという利点がある。しかも、バイ
アス磁界を印加することにより、微小な入力電気信号に
より比較的大きな電圧の制御を行うことが可能である。
【0084】〔第5の実施の形態〕第5の実施の形態の
構成は、第1の実施の形態で説明したTMR素子にバイ
アス電流層を設けたものである。図11は、電圧制御デ
バイスの第5構成を示す図である。図11(A)は、電
圧制御デバイスの構成を示す斜視図であり、図11
(B)は、電圧制御デバイスの平面構成を示す平面図で
ある。
【0085】第1の実施の形態で説明したように、TM
R素子10は、絶縁体層12によって分離された第1強
磁性体層14および第2強磁性体層16を含む構造を有
している。また、第1強磁性体層14と接触するように
反強磁性体層20が設けられている。そして、絶縁体層
12中に非磁性金属層18が挿入されており、絶縁体層
12が2つの絶縁体層12aおよび12bに分離されて
いる。バイアス電流層40は、直接反強磁性体層20の
上に堆積している。このバイアス電流層40には交流電
源44が接続されており、バイアス電流の印加が可能で
ある。図11(A)に示すように、第2強磁性体層1
6、絶縁体層12b、非磁性金属層18、絶縁体層12
a、第1強磁性体層14、反強磁性体層20およびバイ
アス電流層40がこの順序で積層した構成が得られてい
る。
【0086】このように、この実施の形態では、反強磁
性体層20が絶縁性の層(NiO層)であるため、この
層によりバイアス電流層40とTMR素子10との絶縁
分離が達成される。よって、新たに絶縁層を設ける必要
がないので、素子構成が簡略化される。
【0087】尚、第3の実施の形態の構成(図7)の場
合は、第2強磁性体層16がバイアス電流層40と非磁
性金属層18との間に位置しているのに対して、第5の
実施の形態の構成(図11)の場合は、第2強磁性体層
16、非磁性金属層18およびバイアス電流層40がこ
の順序で積層した構造となっている。従って、入出力信
号の対応関係が反転したものとなる。
【0088】図12は、入出力信号およびバイアス電流
の様子を示すグラフである。図12の上側には、入力端
子22に印加される入力電圧の様子(実線aで示す波
形)が示されている。入力電圧はパルス波形を示す。こ
の入力電圧の印加に対応した電流が非磁性金属層18に
入力される。入力電圧のパルス波形の正負は、非磁性金
属層18に流れる電流により発生する磁界が第2強磁性
体層16中において第1強磁性体層14の磁化と同じ向
きになる場合を正とし、非磁性金属層18に流れる電流
により発生する磁界が第2強磁性体層16中において第
1強磁性体層14の磁化と逆の向きになる場合を負とす
る。
【0089】図12の中間には、バイアス電流層40に
流れるバイアス電流の様子(実線bで示す波形)が示さ
れている。図示のように、バイアス電流は、一定の繰り
返し周期で変動する交流電流である。尚、バイアス磁界
と第1強磁性体層14の磁化とが逆の向きのときのバイ
アス電流の符号を正とし、バイアス磁界と第1強磁性体
層14の磁化とが同じ向きのときのバイアス電流の符号
を負と定める。
【0090】図12の下側には、出力端子30から検出
される出力電圧の様子(実線cで示す波形)が示されて
いる。出力電圧は入力電圧およびバイアス電流の正負に
応じて変化する。入力端子22に正の入力電圧が印加
し、かつ、バイアス電流層40に正のバイアス電流が流
れるとき、TMR素子10は高抵抗状態となる。従っ
て、第1強磁性体層14および第2強磁性体層16間の
抵抗が増加して、出力電圧が高電圧状態(ハイ状態)と
なる。一方、入力端子22に負の入力電圧が印加し、か
つ、バイアス電流層40に負のバイアス電流が流れると
き、TMR素子10は低抵抗状態となる。従って、第1
強磁性体層14および第2強磁性体層16間の抵抗が減
少して、出力電圧が低電圧状態(ロー状態)となる。
【0091】以上の第1から第5の実施の形態では、電
圧制御デバイスを例にして磁気デバイスの説明を行った
が、これらの実施の形態の磁気デバイスは電流制御デバ
イスとしても応用できる。例えば、TMR素子に抵抗を
介して定電圧電源を接続するのではなく、定電流電源を
直接接続すればよい。
【0092】さらに、TMR素子の構成材料は上記の例
に限られるものではない。例えば、強磁性体層の材料と
しては、Fe、Ni、Co、またはこれらの合金等を用
いることができる。反強磁性体層の材料としては、Ni
Mn、IrMn、FeMn、CoO、α−Fe23
を用いることができる。非磁性金属層の材料としては、
Ag、Al等を用いることができる。絶縁体層の材料と
しては、MgO、SiO2 等を用いることができる。絶
縁性の反強磁性体層の材料としては、CoO、α−Fe
23 等を用いることができる。
【0093】以下の第6から第10の実施の形態では、
巨大磁気抵抗効果素子を用いた電流制御デバイスを例に
して実施の形態の磁気デバイスの説明を行う。
【0094】〔第6の実施の形態〕図13は、電流制御
デバイスの第1構成を示す図である。図13(B)は、
電流制御デバイスの平面構成を示す図であり、図13
(A)は、図1(B)のI−I線の位置で切った切り口
の断面を示す図である。
【0095】この実施の形態の電流制御デバイスには、
巨大磁気抵抗効果素子(以下、GMR素子と略称す
る。)46が用いられている。このGMR素子46は、
非磁性金属層18によって分離された第1強磁性体層1
4および第2強磁性体層16を含む構造を有している。
【0096】また、第1強磁性体層14と接触するよう
に反強磁性体層20が設けられている。この反強磁性体
層20で発生する交換バイアス磁界により交換結合が生
じて、第1強磁性体層14の磁化が1つの方向に固定さ
れる。一方、第2強磁性体層16の磁化の方向は外部か
ら印加される磁界に応じて変化可能である。巨大磁気抵
抗効果により、GMR素子46の電気抵抗は、これら第
1強磁性体層14および第2強磁性体層16の各磁化方
向の相対的な角度に応じて異なる。従って、第2強磁性
体層16の磁化により、上述の電気抵抗を制御すること
が可能である。
【0097】以上説明したように、GMR素子46は、
反強磁性体層20、第1強磁性体層14、非磁性金属層
18および第2強磁性体層16がこの順序で積層した構
成を具えている。
【0098】また、この実施の形態例の特徴的構成の一
つは、非磁性金属層18が、GMR素子46を構成する
他の層に比較して抵抗値が低い材料で構成されている点
にある。このため、非磁性金属層18に入力される電気
信号は、第1強磁性体層14や第2強磁性体層16に向
かって伝播されにくくなり、選択的に非磁性金属層18
を通過するようになる。
【0099】この例では、第1強磁性体層14および第
2強磁性体層16は共にNi35Fe20Co45層(以下、
NiFeCo層と略称する。)である。また、非磁性金
属層18はCu層であり、反強磁性体層20はNiO層
である。これらNiFeCo層、Cu層、NiO層はス
パッタ法により形成する。各層の厚さは、例えば、Ni
FeCo層14が2.0nm、NiFeCo層16が1
0.0nm、Cu層18が10.0nm、NiO層20
が27.0nmである。各層の堆積を行った後、フォト
リソグラフィ法による微細加工を行い、各層の平面形状
が1μm×0.5μmの長方形形状となるように整形す
る(図1(B))。このとき、第1強磁性体層14およ
び第2強磁性体層16の磁化容易軸の方向が長辺方向
(長さ1μmの辺が延在する方向であり、図中のa方向
に相当する。)と一致するように、微細加工を行ってい
る。
【0100】図14は、GMR素子46の巨大磁気抵抗
効果特性を示すグラフである。グラフの横軸は、GMR
素子46に印加される磁界の強度である。磁界はエルス
テッド(Oe)単位で表し、−40Oeから40Oeの
範囲を10Oeごとに目盛って示してある。尚、磁界の
正負は、第1強磁性体層14の磁化の向きを基準にして
定めてある。
【0101】また、グラフの縦軸は、GMR素子46の
電気抵抗値の増加率を示す。この増加率を%表示で示
し、0.0%〜2.5%の範囲を0.5%ごとに目盛っ
て示してある。抵抗の増加率は、第1強磁性体層14の
磁化の向きと第2強磁性体層16の磁化の向きとが同じ
ときを基準すなわち0%としてある。
【0102】図14に示す測定結果は、直流4端子法に
より得たものである。ここでは、第2強磁性体層16上
の2点間に電圧を印加して測定を行っている。各測定デ
ータはグラフ中に白丸記号で示してある。測定の開始前
に予め−500Oe以下の磁界を印加することにより、
第1強磁性体層14の磁化の向きを固定する。そして、
−40Oeから40Oeの範囲の低磁界を印加しなが
ら、電気抵抗を測定する。
【0103】図14に示すように、GMR素子46の巨
大磁気抵抗効果特性はヒステリシス特性を示す。電気抵
抗は、20Oe程度の大きさの磁界が印加されるとき
に、低抵抗状態(0.1%程度)から高抵抗状態(2.
2%程度)へと変化する。また、−20Oe程度の大き
さの磁界が印加されるときに、高抵抗状態から低抵抗状
態へと変化する。
【0104】以上説明したように、GMR素子46は、
印加される磁界に応じて電気抵抗が変化する。そして、
このGMR素子46を利用した電流制御デバイスによれ
ば、非磁性金属層18を具えており、この非磁性金属層
18に電気信号を入力して磁界を発生させ、第2強磁性
体層16の磁化を制御する。上述したように、第2強磁
性体層16の磁化方向に応じて、GMR素子46の抵抗
が変化するため、GMR素子46中に流れる電流を制御
することができる。
【0105】このため、非磁性金属層18に電気信号を
入力するための電極として、入力端子22およびグラン
ド端子24が設けられている(図13)。これらの電極
は、非磁性金属層18に入力する電流が短辺方向(長さ
0.5μmの辺が延在する方向であり、図中のb方向に
相当する。)に流れるように設けられる。この結果、非
磁性金属層18を流れる電流により発生する磁界の方向
は、第2強磁性体層16中においてその磁化容易軸に沿
った方向(a方向)となる。従って、非磁性金属層18
中に流れる電流の向きを変えれば、それに応じて、第2
強磁性体層16の磁化の向きが反転するように構成され
る。
【0106】また、GMR素子46には定電圧電源28
が接続されている。すなわち、第2強磁性体層16の第
1の端部と定電圧電源28との間、および第2強磁性体
層16の第2の端部と定電圧電源28との間が、それぞ
れ例えば導線により接続されている。第1の端部と第2
の端部とは長辺方向(a方向)に亘り離間した位置であ
る。従って、定電圧電源28により印加される電流は、
第2強磁性体層16の磁化容易軸に沿った方向に流れる
ように構成される。また、GMR素子46および定電圧
電源28間の導線中に電極を設けてあり、出力端子30
としてある。
【0107】次に、電流制御デバイスの動作につき、図
15および図16を参照して説明する。図15は、動作
時の磁化の様子を示す斜視図である。図16は、入出力
信号の様子を示すグラフである。
【0108】図15(A)には、GMR素子46が低抵
抗状態の場合の磁化の様子が示されている。このとき、
第1強磁性体層14の磁化32の向きと第2強磁性体層
16の磁化34の向きとが一致している(この状態を平
行状態と称する。)。非磁性金属層18に入力した電気
信号36は、図中の左側から右側に向かって流れる。電
流の流れる向きに対して時計回りの方向に磁界38が発
生し、第2強磁性体層16の磁化34を第1強磁性体層
14の磁化32と同じ向きに揃える。
【0109】図15(B)には、GMR素子46が高抵
抗状態の場合の磁化の様子が示されている。このとき、
第1強磁性体層14の磁化32の向きと第2強磁性体層
16の磁化34の向きとが逆転した関係になっている
(この状態を反平行状態と称する。)。非磁性金属層1
8に入力した電気信号36は、図中の右側から左側に向
かって流れる。電流の流れる向きに対して時計回りの方
向に磁界38が発生し、第2強磁性体層16の磁化34
を第1強磁性体層14の磁化32に対して逆の向きにす
る。
【0110】図16の上側には、入力端子22に印加さ
れる入力電流の様子(実線aで示す波形)が示されてい
る。入力電流は、第2強磁性体層16の磁化を制御可能
な大きさのパルス波形を示す。この入力電流が、上述の
電気信号として非磁性金属層18に入力される。入力電
流のパルス波形の正負は、GMR素子46が低抵抗状態
となる場合(図15(A)の場合)を正とし、GMR素
子46が高抵抗状態となる場合(図15(B)の場合)
を負としてある。すなわち、非磁性金属層18に流れる
電流により発生する磁界が第2強磁性体層16中におい
て第1強磁性体層14の磁化と同じ向きになる場合を正
とし、非磁性金属層18に流れる電流により発生する磁
界が第2強磁性体層16中において第1強磁性体層14
の磁化と逆の向きになる場合を負とする。
【0111】図16の下側には、出力端子30から検出
される出力電流の様子(実線bで示す波形)が示されて
いる。出力電流は入力電流の正負に応じて変化する。入
力端子22に正の入力電流が印加されると、GMR素子
46は低抵抗状態となる。従って、GMR素子46の抵
抗が低下して、出力電流は高電流状態(ハイ状態)とな
る。一方、入力端子22に負の入力電流が印加される
と、GMR素子46は高抵抗状態となる。従って、GM
R素子46の抵抗が増加して、出力電流は低電流状態
(ロー状態)となる。
【0112】尚、定電圧電源28によりGMR素子46
に流れる電流は、非磁性金属層18を流れる電流と直交
する方向に流れる。従って、これらの電流により発生す
る磁界の方向も互いに直交した関係となり、この定電圧
電源28により駆動される電流が電流制御デバイスの動
作に影響を与えることはない。
【0113】以上説明したように、この実施の形態の電
流制御デバイスによれば、入力電気信号により電流制御
を行うことが可能である。上述した構成例では、±1m
Aの入力電流に対して10mAの電流制御を行うことが
できる。このように、比較的簡単な素子構成であるが、
微小電気信号に応じて比較的大きな電流の制御が可能で
ある。
【0114】〔第7の実施の形態〕次に、第7の実施の
形態について説明する。第6の実施の形態と重複する構
成については説明を省略する場合がある。
【0115】図17は、電流制御デバイスの第2構成を
示す図である。図17(B)は、電流制御デバイスの平
面構成を示す図であり、図17(A)は、図17(B)
のI−I線の位置で切った切り口の断面を示す図であ
る。
【0116】この実施の形態の電流制御デバイスには、
GMR素子46aが用いられる。GMR素子46aは、
非磁性金属層18によって分離された第1強磁性体層1
4および第2強磁性体層16を含む構造を有している。
図17(A)に示すように、GMR素子46aは、第1
強磁性体層14、非磁性金属層18および第2強磁性体
層16がこの順序で積層した構造を具えている。
【0117】また、第1強磁性体層14の保磁力を、第
2強磁性体層16の保磁力よりも大きくしてある。この
例では、第1強磁性体層14は、6.0nmの膜厚のC
o層である。また、第2強磁性体層16は、10.0n
mの膜厚のNi35Fe20Co45層である。このように、
第1強磁性体層14と第2強磁性体層16とを異なる材
料で構成し、各々の保磁力が互いに異なるように設計し
てある。よって、第1強磁性体層14の磁化の向きは一
方向に固定され、外部磁界に応じて第2強磁性体層16
の磁化だけが自在に向きを変えるように構成することが
できる。
【0118】また、非磁性金属層18は、10.0nm
の膜厚のCu層である。これらNiFeCo層、Co
層、Cu層はスパッタ法により形成する。第6の実施の
形態と同様に、各層の堆積を行った後に、フォトリソグ
ラフィ法による微細加工を行い、各層の平面形状が1μ
m×0.5μmの長方形形状となるように整形する(図
17(B))。このとき、第1強磁性体層14および第
2強磁性体層16の磁化容易軸の方向が長辺方向(長さ
1μmの辺が延在する方向であり、図中のa方向に相当
する。)と一致するように、微細加工を行っている。
【0119】そして、非磁性金属層18に電気信号を入
力するための電極として、入力端子22およびグランド
端子24が設けられている(図17)。これらの電極
は、非磁性金属層18に入力する電流が短辺方向(長さ
0.5μmの辺が延在する方向であり、図中のb方向に
相当する。)に流れるように設けられる。この結果、非
磁性金属層18を流れる電流により発生する磁界の方向
は、第2強磁性体層16中においてその磁化容易軸に沿
った方向(a方向)となる。
【0120】また、GMR素子46aには定電圧電源2
8が例えば導線により接続されている。さらに、GMR
素子46aおよび定電圧電源28間の導線中に電極を設
けてあり、出力端子30としてある。
【0121】図18は、GMR素子46の巨大磁気抵抗
効果特性を示すグラフである。グラフの横軸は、GMR
素子46aに印加される磁界の強度である。磁界はエル
ステッド(Oe)単位で表し、−40Oeから40Oe
の範囲を10Oeごとに目盛って示してある。尚、磁界
の正負は、第1強磁性体層14の磁化の向きを基準にし
て定めてある。
【0122】また、グラフの縦軸は、GMR素子46a
の電気抵抗値の増加率を示す。この増加率を%表示で示
し、0.0%〜4.0%の範囲を0.5%ごとに目盛っ
て示してある。抵抗の増加率は、第1強磁性体層14の
磁化の向きと第2強磁性体層16の磁化の向きとが同じ
ときを基準すなわち0%としてある。
【0123】図18に示す測定結果は、直流4端子法に
より得たものである。各測定データはグラフ中に白丸記
号で示してある。測定の開始前に予め−500Oe以下
の磁界を印加することにより、第1強磁性体層14の磁
化の向きを固定する。そして、−40Oeから40Oe
の範囲の低磁界を印加しながら、電気抵抗を測定する。
【0124】図18に示すように、GMR素子46aの
巨大磁気抵抗効果特性はヒステリシス特性を示す。電気
抵抗は、20Oe程度の大きさの磁界が印加されるとき
に、低抵抗状態(0.1%程度)から高抵抗状態(3.
6%程度)へと変化する。また、−10Oe程度の大き
さの磁界が印加されるときに、高抵抗状態から低抵抗状
態へと変化する。
【0125】以上説明したように、GMR素子46a
は、印加される磁界に応じて電気抵抗が変化する。そし
て、このGMR素子46aを利用した電流制御デバイス
によれば、非磁性金属層18を具えており、この非磁性
金属層18に電気信号を入力して磁界を発生させ、第2
強磁性体層16の磁化を制御する。上述したように、第
2強磁性体層16の磁化方向に応じて、GMR素子46
aの抵抗が変化するため、GMR素子46aを流れる電
流を制御することができる。
【0126】この第7の実施の形態の電流制御デバイス
の動作は、第6の実施の形態の電流制御デバイスの動作
と同様であるから説明を省略する。上述したように、こ
の構成例の場合には反強磁性体層が不要であるから、比
較的作製が容易であるという利点がある。
【0127】〔第8の実施の形態〕次に、第8の実施の
形態について説明する。この構成例の特徴は、第6の実
施の形態で説明したGMR素子にバイアス電流層を設け
た点にある。第6の実施の形態と重複する構成について
は説明を省略する場合がある。
【0128】図19は、電流制御デバイスの第3構成を
示す図である。図19(A)は、電流制御デバイスの構
成を示す斜視図であり、図19(B)は、電流制御デバ
イスの平面構成を示す平面図である(バイアス電流層4
0、絶縁体層42を除く。)。
【0129】上述したように、この構成例では、バイア
ス電流層40をGMR素子46に設けてある。このバイ
アス電流層40は、交流電流(バイアス電流)を流すこ
とにより、第2強磁性体層16の磁化の方向に沿って印
加される交流磁界(バイアス磁界)を発生させるための
膜体である。このバイアス電流層40は、絶縁体層42
を介して第2強磁性体層16の上に堆積している。この
バイアス電流層40には交流電源44が接続されてお
り、これにより動作時にバイアス電流が流される。この
実施の形態では、バイアス電流層40は、1.0μmの
膜厚のCu層である。また、絶縁体層42は、1.0μ
mの膜厚のSiO2 層である。
【0130】尚、GMR素子46の構成は、第6の実施
の形態で説明した通りである。また、GMR素子46の
巨大磁気抵抗効果特性は図14に示した通りである。そ
の他の構成も図13に示すものと同様である。
【0131】次に、電流制御デバイスの動作につき、図
20および図21を参照して説明する。図20は、巨大
磁気抵抗効果特性とバイアス磁界との関係を示すグラフ
である。図21は、入出力信号およびバイアス電流の様
子を示すグラフである。
【0132】図20に示す巨大磁気抵抗効果特性aは、
図14に示したものを概略化したものに相当する。グラ
フの横軸は、GMR素子46に印加される磁界の強度を
表す。グラフの縦軸は、GMR素子46の電気抵抗値を
表す。GMR素子46は、印加磁界がHrになると低抵
抗Rlowの状態から高抵抗Rhighの状態へと変化
し、印加磁界が−Hfになると高抵抗Rhighの状態
から低抵抗Rlowの状態へと変化する。バイアス電流
層40に流すバイアス電流の大きさは、これにより発生
するバイアス磁界が−Hfよりも大きく、かつHrより
も小さい範囲の磁界となるように、設定される。従っ
て、バイアス磁界だけで第2強磁性体層16の磁化が変
化することはない。しかし、バイアス磁界の最大値がH
rに近い値となるようにし、バイアス磁界の最小値が−
Hfに近い値となるように、バイアス電流の値を定める
のが好適である。
【0133】尚、高抵抗状態および低抵抗状態のそれぞ
れにおけるGMR素子46の磁化の様子は、図15に示
した通りである。
【0134】図21の上側には、入力端子22に印加さ
れる入力電流の様子(実線aで示す波形)が示されてい
る。入力電流はパルス波形を示す。この入力電流が非磁
性金属層18に入力される。入力電流のパルス波形の正
負は、非磁性金属層18に流れる電流により発生する磁
界が第2強磁性体層16中において第1強磁性体層14
の磁化と同じ向きになる場合を正とし、非磁性金属層1
8に流れる電流により発生する磁界が第2強磁性体層1
6中において第1強磁性体層14の磁化と逆の向きにな
る場合を負とする。
【0135】図21の中間には、バイアス電流層40に
流れるバイアス電流の様子(実線bで示す波形)が示さ
れている。図示のように、バイアス電流は、一定の繰り
返し周期で変動する交流電流である。尚、バイアス磁界
と第1強磁性体層14の磁化とが逆の向きのときのバイ
アス電流の符号を正とし、バイアス磁界と第1強磁性体
層14の磁化とが同じ向きのときのバイアス電流の符号
を負と定める。
【0136】図21の下側には、出力端子30から検出
される出力電流の様子(実線cで示す波形)が示されて
いる。出力電流は入力電流およびバイアス電流の正負に
応じて変化する。入力端子22に正の入力電流が印加
し、かつ、バイアス電流層40に正のバイアス電流が流
れるとき、GMR素子46は低抵抗状態となる。従っ
て、GMR素子46の抵抗が低下して、出力電流が高電
流状態(ハイ状態)となる。一方、入力端子22に負の
入力電流が印加し、かつ、バイアス電流層40に負のバ
イアス電流が流れるとき、GMR素子46は高抵抗状態
となる。従って、GMR素子46の抵抗が増加して、出
力電流が低電流状態(ロー状態)となる。
【0137】このように、バイアス磁界を印加すること
により、微小な入力電気信号により比較的大きな電流の
制御を行うことが可能である。上述した構成例では、±
0.1mAの入力電流に対して10mAの電流制御を行
うことができる。
【0138】〔第9の実施の形態〕次に、第9の実施の
形態について説明する。この構成例の特徴は、第7の実
施の形態で説明したGMR素子にバイアス電流層を設け
た点にある。第7の実施の形態と重複する構成について
は説明を省略する場合がある。
【0139】図22は、電流制御デバイスの第4構成を
示す図である。図22(A)は、電流制御デバイスの構
成を示す斜視図であり、図22(B)は、電流制御デバ
イスの平面構成を示す平面図である(バイアス電流層4
0、絶縁体層42を除く。)。
【0140】上述したように、この構成例では、バイア
ス電流層40をGMR素子46aに設けてある。このバ
イアス電流層40は、交流電流(バイアス電流)を流す
ことにより、第2強磁性体層16の磁化の方向に沿って
印加される交流磁界(バイアス磁界)を発生させるため
の膜体である。このバイアス電流層40は、絶縁体層4
2を介して第2強磁性体層16の上に堆積している。こ
のバイアス電流層40には交流電源44が接続されてお
り、これにより動作時にバイアス電流が流される。この
実施の形態では、バイアス電流層40は、1.0μmの
膜厚のCu層である。また、絶縁体層42は、1.0μ
mの膜厚のSiO2 層である。
【0141】尚、GMR素子46aの構成は、第7の実
施の形態で説明した通りである。また、GMR素子46
aの巨大磁気抵抗効果特性は図18に示した通りであ
る。その他の構成も図17に示すものと同様である。
【0142】この第9の実施の形態の電流制御デバイス
の動作は、第8の実施の形態の電流制御デバイスの動作
と同様であるから説明を省略する。上述したように、こ
の構成例の場合には反強磁性体層が不要であるから、比
較的作製が容易であるという利点がある。しかも、バイ
アス磁界を印加することにより、微小な入力電気信号に
より比較的大きな電流の制御を行うことが可能である。
【0143】〔第10の実施の形態〕第10の実施の形
態の構成は、第6の実施の形態で説明したGMR素子に
バイアス電流層を設けたものである。図23は、電流制
御デバイスの第5構成を示す図である。図23(A)
は、電流制御デバイスの構成を示す斜視図であり、図2
3(B)は、電流制御デバイスの平面構成を示す平面図
である(バイアス電流層40、反強磁性体層20を除
く。)。
【0144】第6の実施の形態で説明したように、GM
R素子46は、非磁性金属層18によって分離された第
1強磁性体層14および第2強磁性体層16を含む構造
を有している。また、第1強磁性体層14と接触するよ
うに反強磁性体層20が設けられている。そして、バイ
アス電流層40は、直接反強磁性体層20の上に堆積し
ている。このバイアス電流層40には交流電源44が接
続されており、バイアス電流の印加が可能である。図2
3(A)に示すように、第2強磁性体層16、非磁性金
属層18、第1強磁性体層14、反強磁性体層20およ
びバイアス電流層40がこの順序で積層した構成が得ら
れている。
【0145】このように、この実施の形態では、反強磁
性体層20が絶縁性の層(NiO層)であるため、この
層によりバイアス電流層40とGMR素子46との絶縁
分離が達成される。よって、新たに絶縁層を設ける必要
がないので、素子構成が簡略化される。
【0146】尚、第8の実施の形態の構成(図19)の
場合は、第2強磁性体層16がバイアス電流層40と非
磁性金属層18との間に位置しているのに対して、第1
0の実施の形態の構成(図23)の場合は、第2強磁性
体層16、非磁性金属層18およびバイアス電流層40
がこの順序で積層した構造となっている。従って、入出
力信号の対応関係が反転したものとなる。
【0147】図24は、入出力信号およびバイアス電流
の様子を示すグラフである。図24の上側には、入力端
子22に印加される入力電流の様子(実線aで示す波
形)が示されている。入力電流はパルス波形を示す。こ
の入力電流が非磁性金属層18に入力される。入力電流
のパルス波形の正負は、非磁性金属層18に流れる電流
により発生する磁界が第2強磁性体層16中において第
1強磁性体層14の磁化と同じ向きになる場合を正と
し、非磁性金属層18に流れる電流により発生する磁界
が第2強磁性体層16中において第1強磁性体層14の
磁化と逆の向きになる場合を負とする。
【0148】図24の中間には、バイアス電流層40に
流れるバイアス電流の様子(実線bで示す波形)が示さ
れている。図示のように、バイアス電流は、一定の繰り
返し周期で変動する交流電流である。尚、バイアス磁界
と第1強磁性体層14の磁化とが逆の向きのときのバイ
アス電流の符号を正とし、バイアス磁界と第1強磁性体
層14の磁化とが同じ向きのときのバイアス電流の符号
を負と定める。
【0149】図24の下側には、出力端子30から検出
される出力電流の様子(実線cで示す波形)が示されて
いる。出力電流は入力電流およびバイアス電流の正負に
応じて変化する。入力端子22に正の入力電流が印加
し、かつ、バイアス電流層40に正のバイアス電流が流
れるとき、GMR素子46は高抵抗状態となる。従っ
て、GMR素子46の抵抗が増加して、出力電流が低電
流状態(ロー状態)となる。一方、入力端子22に負の
入力電流が印加し、かつ、バイアス電流層40に負のバ
イアス電流が流れるとき、GMR素子46は低抵抗状態
となる。従って、GMR素子46の抵抗が減少して、出
力電流が高電流状態(ハイ状態)となる。
【0150】以上の第6から第10の実施の形態では、
電流制御デバイスを例にして磁気デバイスの説明を行っ
たが、これらの実施の形態の磁気デバイスは電圧制御デ
バイスとしても応用できる。例えば、GMR素子に接続
された定電圧電源を定電流電源に変えることにより、電
圧制御デバイスを構成することも可能である。
【0151】さらに、GMR素子の構成材料は上記の例
に限られるものではない。例えば、強磁性体層の材料と
しては、Fe、Ni、Co、またはこれらの合金等を用
いることができる。反強磁性体層の材料としては、Ni
Mn、IrMn、FeMn、CoO、α−Fe23
を用いることができる。非磁性金属層の材料としては、
Ag、Al等を用いることができる(但し、他の層に比
べて低抵抗のものを用いる。)。絶縁体層の材料として
は、MgO、SiO2 等を用いることができる。絶縁性
の反強磁性体層の材料としては、CoO、α−Fe2
3 等を用いることができる。
【0152】
【発明の効果】この発明の磁気デバイスによれば、磁気
トンネル効果素子を用いた磁気デバイスであって、この
磁気トンネル効果素子は、絶縁体層によって分離された
第1および第2強磁性体層を含み、絶縁体層中に非磁性
金属層が挿入されており、この非磁性金属層を流れる電
気信号により磁界を発生させ、その磁界により第2強磁
性体層の磁化を制御する。第1強磁性体層の磁化は固定
されているので、電気信号に応じて第1および第2強磁
性体層間の電気抵抗が変化する。従って、この磁気デバ
イスによれば、第1および第2強磁性体層間の電圧ある
いは電流を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電圧制御デバイスの第1構成を示す図である。
【図2】TMR素子の磁気トンネリング特性を示す図で
ある。
【図3】動作時の磁化の様子を示す図である。
【図4】入出力信号の様子を示す図である。
【図5】電圧制御デバイスの第2構成を示す図である。
【図6】TMR素子の磁気トンネリング特性を示す図で
ある。
【図7】電圧制御デバイスの第3構成を示す図である。
【図8】磁気トンネリング特性とバイアス磁界との関係
を示す図である。
【図9】入出力信号およびバイアス電流の様子を示す図
である。
【図10】電圧制御デバイスの第4構成を示す図であ
る。
【図11】電圧制御デバイスの第5構成を示す図であ
る。
【図12】入出力信号およびバイアス電流の様子を示す
図である。
【図13】電流制御デバイスの第1構成を示す図であ
る。
【図14】GMR素子の巨大磁気抵抗効果特性を示す図
である。
【図15】動作時の磁化の様子を示す図である。
【図16】入出力信号の様子を示す図である。
【図17】電流制御デバイスの第2構成を示す図であ
る。
【図18】GMR素子の巨大磁気抵抗効果特性を示す図
である。
【図19】電流制御デバイスの第3構成を示す図であ
る。
【図20】巨大磁気抵抗効果特性とバイアス磁界との関
係を示す図である。
【図21】入出力信号およびバイアス電流の様子を示す
図である。
【図22】電流制御デバイスの第4構成を示す図であ
る。
【図23】電流制御デバイスの第5構成を示す図であ
る。
【図24】入出力信号およびバイアス電流の様子を示す
図である。
【符号の説明】
10,10a:TMR素子 12,12a,12b:絶縁体層 14:第1強磁性体層 16:第2強磁性体層 18:非磁性金属層 20:反強磁性体層 22:入力端子 24:グランド端子 26:抵抗 28:定電圧電源 30:出力端子 32,34:磁化 36:電気信号 38:磁界 40:バイアス電流層 42:絶縁体層 44:交流電源 46,46a:GMR素子

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気トンネル効果素子を用いた磁気デバ
    イスであって、 該磁気トンネル効果素子は、絶縁体層によって分離され
    た第1および第2強磁性体層を含み、該第1強磁性体層
    の磁化が1つの方向に固定され、前記第2強磁性体層の
    磁化の方向が印加される磁界に応じて変化可能であり、
    これら第1および第2強磁性体層の各磁化方向の相対的
    な角度に応じて、これら第1および第2強磁性体層間が
    異なる抵抗を示すものであり、 前記絶縁体層中に非磁性金属層が挿入されており、 該非磁性金属層を流れる電気信号により前記磁界を発生
    させ、前記第1および第2強磁性体層間の電圧あるいは
    電流を制御することを特徴とする磁気デバイス。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記電気信号により発生する磁界の方向が、前記第2強
    磁性体層中において当該第2強磁性体層の磁化容易軸に
    沿った方向であることを特徴とする磁気デバイス。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する反強
    磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイス。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記第1強磁性体層の保磁力が、前記第2強磁性体層の
    保磁力よりも大きいことを特徴とする磁気デバイス。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記磁気トンネル効果素子にバイアス電流層を設けてあ
    り、 該バイアス電流層に交流電流を印加するための交流電源
    を具え、 該交流電流により発生するバイアス磁界が前記第2強磁
    性体層に印加されることを特徴とする磁気デバイス。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記バイアス磁界は、前記第2強磁性体層中において当
    該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿った方向となり、か
    つ、前記第1および第2強磁性体層の磁化に対して非影
    響的な大きさであることを特徴とする磁気デバイス。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する反強
    磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイス。
  8. 【請求項8】 請求項5に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記磁気トンネル効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する絶縁
    性の反強磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイ
    ス。
  9. 【請求項9】 請求項5に記載の磁気デバイスにおい
    て、 前記第1強磁性体層の保磁力が、前記第2強磁性体層の
    保磁力よりも大きいことを特徴とする磁気デバイス。
  10. 【請求項10】 巨大磁気抵抗効果素子を用いた磁気デ
    バイスであって、 該巨大磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層によって分離
    された第1および第2強磁性体層を含み、前記第1強磁
    性体層の磁化が1つの方向に固定され、前記第2強磁性
    体層の磁化の方向が印加される磁界に応じて変化可能で
    あり、これら第1および第2強磁性体層の各磁化方向の
    相対的な角度に応じて異なる抵抗値を示すものであり、 前記非磁性金属層が、前記巨大磁気抵抗効果素子を構成
    する他の層に比較して抵抗値が低い材料で構成されてお
    り、 該非磁性金属層を流れる電気信号により前記磁界を発生
    させ、前記巨大磁気抵抗効果素子に印加される電流ある
    いは電圧を制御することを特徴とする磁気デバイス。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記電気信号により発生する磁界の方向が、前記第2強
    磁性体層中において当該第2強磁性体層の磁化容易軸に
    沿った方向であることを特徴とする磁気デバイス。
  12. 【請求項12】 請求項10に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する反強
    磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイス。
  13. 【請求項13】 請求項10に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記第1強磁性体層の保磁力が、前記第2強磁性体層の
    保磁力よりも大きいことを特徴とする磁気デバイス。
  14. 【請求項14】 請求項10に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記巨大磁気抵抗効果素子にバイアス電流層を設けてあ
    り、 該バイアス電流層に交流電流を印加するための交流電源
    を具え、 該交流電流により発生するバイアス磁界が前記第2強磁
    性体層に印加されることを特徴とする磁気デバイス。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記バイアス磁界は、前記第2強磁性体層中において当
    該第2強磁性体層の磁化容易軸に沿った方向となり、か
    つ、前記第1および第2強磁性体層の磁化に対して非影
    響的な大きさであることを特徴とする磁気デバイス。
  16. 【請求項16】 請求項14に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する反強
    磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイス。
  17. 【請求項17】 請求項14に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記巨大磁気抵抗効果素子は、交換バイアス磁界によっ
    て、前記第1強磁性体層の磁化を一方向に固定する絶縁
    性の反強磁性体層を含むことを特徴とする磁気デバイ
    ス。
  18. 【請求項18】 請求項14に記載の磁気デバイスにお
    いて、 前記第1強磁性体層の保磁力が、前記第2強磁性体層の
    保磁力よりも大きいことを特徴とする磁気デバイス。
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