JP2007536745A - 電子のスピンの位置および符号を利用する半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
基板を設けるステップ、この基板の上に強磁性層を成長させるステップ、この強磁性層の上にトンネル障壁層を成長させるステップ、その強磁性層の上に第1非磁性金属接点を設けるステップおよび単一の強磁性層について第2非磁性金属接点を設けるステップを備える方法によって、磁気トンネル接合部のために利用される層構造を示すスピンバルブ構造が設けられている。そのような片面構造に加えて、半絶縁性GaAs基板の上面に、例えばGa0.94Mn0.06As/非ドープ型GaAs/Ga0.94Mn0.06As3層構造と非ドープ型LT−GaAs緩衝層とを有する両面構造を設けることができる。内側の正方形接点と周囲の電気バック接点とがある。このサンプル構造によれば、強磁性体およびGaAsトンネル障壁の双方を通して2プローブ式磁気抵抗測定を実行することができる。デバイスの抵抗は、トンネル障壁を介する垂直トンネリングプロセスによって充分優位を占めている。
Description
スピン電子工学の原理に基づいた、すなわち電子の電荷ではなく電子のスピンの位置および符号を調整下にある顕著な因子として利用する電子回路の製造では、回路の計算要件が要求されるときに電子のマニピュレーションを可能にする「スピンバルブ」調整を創り出すことが必要である。本発明は、そのようなデバイス、特にスピンバルブに関するものである。本発明の1つの観点によれば、それは特に、スピン電子工学デバイスにおける片面スピンバルブに関するものである。本発明の別の観点によれば、それは特に、スピン電子工学デバイスにおける両面スピンバルブに関するものである。
このようなスピンバルブはこれまで、両方の外側層が強磁性材料あるいは半導体であるサンドイッチ構造を形成することによって製造されてきた。この認識された要件は、最適なスピンバルブの設計および実施にある種の制限をもたらしていた。
本発明は、外側サンドイッチ層の一方かつ一方だけが強磁性半導体であり、他方が非磁性材料である場合にスピンバルブ状効果を得ることのできるデバイスについて記載されている。この「片面スピンバルブ」構成によれば、スピンバルブの構成および向上した性能についてのより広範囲の可能性がもたらされる。このような環境の下におけるスピンバルブ効果は、トンネリングに寄与する状態密度の変化から引き起こされる、と信じられている。この効果の原因は、まだ学問研究および論議の最中であるが、それ自体はこの開示に影響を与えることはない。
非磁性金属(Au)と強磁性材料(GaMn)Asとの間のAlOx(酸化アルミニウム)のトンネル障壁について行われた観察によると、これはスピンバルブの特徴を表わすことのできる巨大な磁気抵抗を示すことがある、ということがわかる。
結晶学的に等軸であるGaMnAsにおけるように、その平面には原則として2つの磁化容易軸を有する磁性半導体層が設けられている(この場合には、[001]方位を有するため、その平面には[100]軸および[010]軸がある)が、これらの軸は、熱的効果、歪み効果あるいは他の効果のために実際にはわずかに異なっており、これら2つの軸のうち磁化が容易な方に沿った磁気反転は従来の場合のように180゜反転によって起きるものの、磁化があまり容易でない方の軸に沿った磁気反転には、印加された反転磁界の特定範囲にわたって安定である「ハーフウェイハウス」が含まれており、ここでは90°反転が起きる(この90°反転は、磁化の初期方向に対して「左」かあるいは「右」かのいずれかである)。このことはまた、磁気反転が同時体積磁気回転によるのではなく、磁区壁の核生成および移動によって起きる、ことを意味している。
両方の軸に関しては、半導体には極めて類似した状態密度が存在するが、重要なことには、実際の輸送キャリアは、モーメントの点でも、デバイスの対応側部におけるそれらの状態密度に合致しなければならない(Al2O3がトンネル障壁として使用され、Ti(Au)が対応側部として使用されたが、対応側部はここでは、半導体からのトンネル障壁の他方側面における材料/構造として定義されている)。その結果、トンネル障壁を直交状に通るトンネリングについては、モーメントの横成分があってはならない。それゆえ、大部分の状態はトンネリングのためには禁止されており、また、そのトンネリング電流はある程度、スピン分極されている。それゆえ、磁化が容易な2つの軸はエネルギーおよび状態密度の点で極めて類似しているが、状態密度のモーメント分布の違いは、トンネリング電流について大いに重要であり、そのため、GaMnAsにおける磁化の方位にかなり左右される。
磁化が最も容易な軸は例えば加えられた磁界によって選択することもできるので、これによって、スピンバルブ、GMRヘッドなどの創出が可能になるが、ここでは、(a)関連するただ1つの強磁性層があり、(b)金属を覆う半導体の利点は展開することができ、また、(c)より大きい感度は特に期待することができる。
そして、効果が、関連する結晶構造の量、組成(特に、存在する強磁性要素の量)および方位に左右され、その効果が、トンネリング障壁に関する磁界の強度および方位を変える、ということが観察された。
また、磁区壁の形成および伝播を通して起きると信じられている磁化の符号の反転は、磁気異方性が温度に依存しないのに対して、温度の関数である。このことによって、磁気異方性および輸送異方性が厳密には互いに関連しないものであり、独立して最適化することができる、という観察結果が得られる。
一方では、エピタキシャル成長した(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)As構造における超巨大なトンネリング異方性磁気抵抗が明らかにされている。この効果は、接点の平行な配向あるいは非平行な配向からではなく、磁化方位における強磁性半導体の電子構造の強い依存性から生じる。この効果の重要な新規のスピン電子工学的特徴は、(i)正常および反転の両方のスピンバルブ状信号、(ii)界面に対して垂直である磁界についての大きい非ヒステリシス磁気抵抗、(iii)外部抵抗についての磁化方位が一般に磁化容易軸および磁化困難軸に配向していないこと、および(iv)低いバイアスおよび温度でのこの効果の極めて大きい増幅である。
単一の磁性層を利用するスピンバルブ状トンネル磁気抵抗の観察から、本発明者は、スピンバルブ状効果が、連結された2つの強磁性体によるスピン分極電流の投入および検出からではなく、単一の強磁性層における強いスピン軌道結合から生じる、新しい種類のスピン電子工学的デバイスを導入する。標準的な金属/絶縁体/強磁性の半導体トンネリングデバイスにおいては、スピンバルブ状信号が観察される。この作用は、磁化方向に関する(Ga,Mn)Asにおける異方性状態密度とこの材料における二段階磁化反転プロセスとの相互作用によって引き起こされる。
スピンマニピュレーションに依存するデバイスは、コンピュータに起因する電力消費の増大という電流傾向と個々の電子部品の寸法が縮小されるにつれて増大するエネルギー散逸損失によってそれらが動作不能になるであろう恐れとに逆戻りするかもしれないマイクロ電子機器の低エネルギー散逸性代替品を提供するように意図されている。スピン電子工学には、即時オンオフコンピュータの実現のために魅力的な展望が開かれている情報処理機能性と記憶機能性との充分な一体化の結果がもたらされることも期待されている。現在のスピン電子工学研究の望まれた目標の1つは、現行のマイクロ電子機器技術によるスピン電子部品の一体化のための新しい手段をもたらすであろう全ての半導体基構造における金属スピンバルブ状作用(Phys.Rev.Lett.の第74巻(1995)、第3273ページで、J.S.Moodera,L.R.Kinder,T.M.Wong,R.Meserveyによって示唆されたような)の備わったデバイスを実現することである。このようなデバイスを達成するためにしばしば提案された基本構想は、2つの強磁性半導体どうしの間におけるトンネル障壁からなる。このようなわけで、いくらか見込みのある(Ga,Mn)As/(Al,Ga)As/(Ga,Mn)As構造が先に研究された(例えば、J.Appl.Phys.第89巻(2001)、第6745ページにおけるY.Higo,H.ShimizuおよびM.Tanaka、また、Nature(2004)の第428ページ、539ページにおけるM.Yamanouch,D.Chiba,F.MatsukuraおよびH.Ohnoを参照のこと)。しかしながら、これらのシステムの充分な可能性を実現するには、先に考えられたものとはどちらかというと異なっていると本発明者が発見した(Ga,Mn)Asの中へのトンネリングの物理学の完全な理解が必要であろう。
この精神で、本発明者は、トンネル障壁に適合した単一の強磁性(Ga,Mn)As層と非磁性金属接点とからなる構造における輸送を研究している。本発明者の測定によれば、このシステムがスピンバルブ状信号を示すという予期しない結果が明らかになっている。標準的なスピンバルブの設計における複雑さのいくつか、例えば2つの強磁性体における相異なる抗電界を引き起こすための必要性のいくつかは、この構造では直ちに排除される。本発明者は、単一の(Ga,Mn)Asトンネリング構造の豊富な実験性能のいくつかをここに開示するとともに、二段階磁化反転プロセスと(Ga,Mn)As層における磁化方位依存性状態密度(DOS)とによるトンネリング異方性磁気抵抗(TAMR)として測定されたスピンバルブ状効果の解釈を提供する。
従って、本発明に記載されたように、電子のスピンの位置および符号を利用する簡単な半導体デバイスに対する要望が存在している。
本発明の1つの目的は、半導体材料の中において安定的な部分反転磁化状態を機能的に利用するそのような半導体を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、両面強磁性半導体トンネル接合部に極めて大きいトンネリング異方性磁気抵抗をもたらすことである。
この技術の可能性を充分に実現するために必要とされる主要な構成要素は、現行の金属基スピンバルブに類似した作用とそれらの金属対応物においては達成できない新規なスピン電子工学的特徴とが備わったデバイスである。この方向における先の試みによって、金属デバイスの機能性に明らかによく似ている見込みのあるスピンバルブ結果がもたらされた。しかしながら、単一の(Ga,Mn)As層構造におけるトンネリング異方性磁気抵抗(TAMR)に関する本発明者の最近の発見では、J.Appl.Phys.89巻(2001)の第6745ページでY.Higo,H.ShimizuおよびM.Tanakaによって、また、Nature(2004)の第428ページ、539ページにおけるM.Yamanouch,D.Chiba,F.MatsukuraおよびH.Ohnoによって言及されたような構造における限り観察された中程度磁気抵抗(MR)効果は、伝統的な金属トンネリングMR(TMR)からではなくTAMRから生じることが提唱されている。このことが事実であれば、そのデバイス作用は、TMRについてのものよりもいっそう豊富であるべきであり、金属基デバイスにおいて可能性のない多くの新しい機能性を備え得るであろう。この仮説を吟味するために、本発明者は強磁性半導体(Ga,Mn)Asに基づいたトンネル構造を製造した。本発明者は、これらの構造では100 000%を超える巨大なTAMR効果が存在することを報告する。
本発明は、本発明による実施形態の以下の説明によって、図面を参照しながらこれから説明される。
図1〜4には、片面スピン電子デバイスに関連している本発明の1つの実施形態が示されている。本発明者の第1サンプルにおける磁性層は、GaAs(001)基板の上への低温(270℃)分子線エピタキシーによって成長した、70nm厚さのエピタキシャル(Ga,Mn)As薄膜である((Ga,Mn)Asの成長に関する考察については、例えば、J.Cryst.Growthの175/176巻(1997)第1069ページのA.Shen,H.Ohno,F.Matsukura,Y.Sugawara,N.Akiba,T.Kuroiwa,A.Oiwa,A.Endo,S.Katsumoto,Y.Iyeによるもの、J.Cryst.Growthの247巻(2003)第42ページのR.P.Campion,K.W.Edmonds,L.X.Zhao,K.Y.Wang,C.T.Foxon,B.L.GallagherおよびC.R.Staddonによるものを参照のこと)。高解像度X線回折によると、このサンプルは基板の結晶特性に匹敵する高い結晶特性を有することが示された。測定された格子定数およびSchottらの較正曲線(Appl.Phys.Lett.の82巻(2003)第4678ページのG.M.Schott,G.Schmidt,G.Karczewski,L.W.Molenkamp,R.Jakiela,A.Barcz,G.Karczewskiによる)から、強磁性層におけるMnの濃度はおよそ6%である。エッチキャパシタンス−電圧制御測定値はおよそ~1021cm−3の正孔密度概算値をもたらし、70Kのキュリー温度がSQUID測定から決定された。
成長の後に、サンプルは、1.4nmAl層が(Ga,Mn)Asの上へ蒸着されたRFスパッタリングシステムへ移送された。このAl層は被覆されたAlOx(酸化アルミニウム)を現場製造し、それによって、トンネル障壁を形成することで、酸化された。次いで、300nmのAu層に続く付着層として5nmのTiを蒸着させることで、電気接点がその構造の上に作られた。次いで、光リソグラフィおよび化学支援イオンビームエッチング(CAIBE)が利用されて、図1に示すようにデバイスがパターン化された。第1ステップでは、材料はエッチングされて、トンネル障壁における金属接点からなる、中央の100mm×100mm正方形ピラーだけが残る。次いで、周囲のW付着層およびAu接点が(Ga,Mn)As表面に蒸着されて、バック接点がもたらされる。
(Ga,Mn)As層のバルク抵抗は1.1×10−3Wcmであり、これは、高品質材料についての期待値(Appl.hys.Lett.の81巻(2002)第4991ページのK.W.Edmonds,K.Y.Wang,R.P.Campion,A.C.Neumann,N.R.S.Farley,B.L.Gallagher,C.T.Foxonによるもの)に一致しており、また、中央ピラーとバック接点との間における10Ωのオーダーの抵抗に対応している。この値は、トンネル障壁のない類似したピラーを介する抵抗を測定することによって、確認された。この抵抗はデバイス全体の大きさよりも小さい大きさの2桁を超えるものであり、(Ga,Mn)Asのどのようなバルク磁気抵抗を充分に無視することができる。
このサンプルは、任意の方向に300mT程度磁界の印加が可能になる3対のヘルムホルツコイルが取り付けられた可変温度4Heクリオスタットの中へ挿入された。ここに示された測定値については、磁界は磁性層の平面の中に維持された。磁界の方向は、図1bに表示されたように、[100]結晶学的方向に対するその角度Aによって付与される。
図1aは、様々な角度、すなわちφ=0度、55度および50度で印加された磁界の関数としてのサンプル抵抗の典型的な曲線を示している。それぞれの曲線について、磁界は負の飽和度から正の飽和度まで一掃されるとともに再び戻されるが、そのプロットは−30mTから+30mT程度の関心領域に焦点が合わされる。全ての場合において、磁気抵抗は、2つの切換事象(図では符号が付けられたHc1およびHc2)によって約3%限定された振幅があるスピンバルブ状作用を示しているが、サンプルの抵抗はこれらの事象の外側におけるその値とは異なっている。しかしながら、TAMR特徴構成の幅および符号は磁界の角度に左右される。図1aの相異なる曲線を比較すると、その特徴構成が負から正へ変化する(例えば、図1aにおける0度曲線と55度曲線との間で)という事実にもかかわらず、デバイスがただ2つのはっきりした抵抗状態、すなわち約2920Ωの低い状態と3000Ω直上の高い状態を有するように見える、ということを本発明者は強調したい。
この作用をよりよく理解するために、本発明者は、磁界からのデータが図2の極性プロットにおける多くの角度で一掃されることを要約する。ここで、開放符号は、切換事象Hc1およびHc2が個々の一掃のそれぞれについて起きる磁界を表わしている。これらは、より高い抵抗の部分とより低い抵抗の部分との間に境界を画定する。影付き区域は、サンプルがその高い抵抗状態にある領域を表示している。このようにして観察すると、切換事象の軌跡は、エピタキシャルFe薄膜(J.Appl.Phys.78巻(1995)の第7210ページのR.P.Cowburn,S.J.Gray,J.Ferre,J.A.C.Bland,J.Miltat)および(Ga,Mn)As(J.Appl.Phys.94巻(2003)の第4530ページのG.P.Moore,J.Ferre,A.Mougin,M.Moreno,L.Dwitz)の磁気光学的研究や、平面内ホール幾何学における(Ga,Mn)Asに関する輸送研究(Phys.Rev.Lett.の90巻(2003)第107201ページのH.X.Tang,R.K.Kawakami,D.D.Awschalom,M.L.Roukes)および90±磁区壁の核生成および伝播によって二段階でそれらの磁化Mを反転させる材料に関連したものにおいて先に観察された切換事象への著しい類似性を有する高度に対称的なパターンを形成している。単一磁区理論の範囲内で、本発明者は、本発明者のシステムの全磁気エネルギーEmについての表示を書き留めることができる。
Em=Kusin2(θ)+Kcsin2(2θ)−MHcos(θ−φ) (式1)
ここで、Kcは、(Ga,Mn)Asにおいて支配的であると期待された等軸異方性であり(上記のようなMooreらによるもの。また、Appl.Phys.Lett.81巻(2002)の第2806ページのD.Hrabovsky,E.Vanelle,A.R.Fert,D.S.Yee,J.P.Redoules,J.Sadowski,J.Kanski,L.Ilver)、Kuは、(Ga,Mn)Asにおいてしばしば観察された単軸異方性である(上記のようなMooreらによるもの)。Hは印加された磁界の振幅であり、また、φは[100]結晶方向から測定された磁化の角度である。磁化の反転はその構造を通して伝播する磁区壁を通して起きるので、干渉性磁化反転のStoner−Wohlfarthの映像(Philos.Trans.London Ser.A240巻(1948)の第599ページのE.C.Stoner,E.P.Wohlfarth)は適用されない。その代わりに、Cowburnらにおいて検討されたように(上記を参照)、そのようにすることで取得されたエネルギーがサンプルを通して磁区壁を核生成し/伝播するための必要なエネルギーよりも大きい限り、磁化はその極小値から全体的エネルギー最小値へ切り換わるであろう。このエネルギーをεとすると、それは、磁界が一掃された(より高い磁界での2軸性磁化容易軸から離れた回転を無視して)ときに磁化の切り換えが二段階で起きるEmの形態から得られる。第1ステップでは、Mは、磁界がこれから90±斜めである磁化容易軸へ初めに印加された方向に最も近い等軸の磁化容易軸から切り換わるであろう。次いで、第2ステップでは、Mは、その充分な反転を達成する付加的な90度によって切り換わるであろう。1つのステップで解析がさらに遂行されると、これらの切換事象が起きる磁界が
Hc1,2=(ε+/−Ku)=(M‖cos(φ)│+/−│sin(φ)‖)
によって与えられることがわかり、ここで、分母におけるプラス(マイナス)符号はHc1(Hc2)についてのものである。分子におけるKuの前の符号は、切り換えが単軸性磁化容易軸へ向かうものであるかあるいはそれから離れるものであるかによって決まる。それゆえ、その符号は、90度ごとに反転し、また、Hc1およびHc2について反対である(再びCowburnらを参照)。
ここで、Kcは、(Ga,Mn)Asにおいて支配的であると期待された等軸異方性であり(上記のようなMooreらによるもの。また、Appl.Phys.Lett.81巻(2002)の第2806ページのD.Hrabovsky,E.Vanelle,A.R.Fert,D.S.Yee,J.P.Redoules,J.Sadowski,J.Kanski,L.Ilver)、Kuは、(Ga,Mn)Asにおいてしばしば観察された単軸異方性である(上記のようなMooreらによるもの)。Hは印加された磁界の振幅であり、また、φは[100]結晶方向から測定された磁化の角度である。磁化の反転はその構造を通して伝播する磁区壁を通して起きるので、干渉性磁化反転のStoner−Wohlfarthの映像(Philos.Trans.London Ser.A240巻(1948)の第599ページのE.C.Stoner,E.P.Wohlfarth)は適用されない。その代わりに、Cowburnらにおいて検討されたように(上記を参照)、そのようにすることで取得されたエネルギーがサンプルを通して磁区壁を核生成し/伝播するための必要なエネルギーよりも大きい限り、磁化はその極小値から全体的エネルギー最小値へ切り換わるであろう。このエネルギーをεとすると、それは、磁界が一掃された(より高い磁界での2軸性磁化容易軸から離れた回転を無視して)ときに磁化の切り換えが二段階で起きるEmの形態から得られる。第1ステップでは、Mは、磁界がこれから90±斜めである磁化容易軸へ初めに印加された方向に最も近い等軸の磁化容易軸から切り換わるであろう。次いで、第2ステップでは、Mは、その充分な反転を達成する付加的な90度によって切り換わるであろう。1つのステップで解析がさらに遂行されると、これらの切換事象が起きる磁界が
Hc1,2=(ε+/−Ku)=(M‖cos(φ)│+/−│sin(φ)‖)
によって与えられることがわかり、ここで、分母におけるプラス(マイナス)符号はHc1(Hc2)についてのものである。分子におけるKuの前の符号は、切り換えが単軸性磁化容易軸へ向かうものであるかあるいはそれから離れるものであるかによって決まる。それゆえ、その符号は、90度ごとに反転し、また、Hc1およびHc2について反対である(再びCowburnらを参照)。
上式に本発明者のデータを当てはめると、図2の極性プロットにおける実線が作られるが、これは実験結果とよく一致している。この当てはめによって、本発明者は、Kuについては約−450エルグ/cm3、εについては1550エルグ/cm3の値を引き出すことができる。本発明者は、SQUID測定を通してこのサンプルの二段階切換作用を確認した。
この解析と図2とから、本発明者のサンプルは、磁化が[100]あるいは
の結晶学的方向に沿って行われるときに高い抵抗状態にあることと、磁化が[010]あるいは
であるときに低い抵抗を有することとが明らかである。この映像は、より高い磁界で磁気抵抗の作用によってさらに支持されている。磁界が磁化容易軸に沿って配向しておらず、かつ、磁界が充分な飽和へ一掃されるときには、磁化は、磁化容易軸からその後に観察される抵抗の漸進的変化に対応しているH.Aに平行である方向へ離れて回転するであろう。
本発明者はここで、磁化方位に関して(Ga,Mn)Asにおける異方性がこのスピンバルブ状効果の観察を表現するためには充分に大きいということを示している理論的解析へ戻る。(Ga,Mn)Asの電子構造は、分極したMn局部モーメントによって作られた、スピン密度SMnの備わった有効転換磁界h=JpdSMnの存在下における多数のGaAs価電子帯のk.p包絡機能説明を利用して計算される(D.J.SinghおよびD.A.Papaconstantopoulos(Springer Verlag,Berlin,(2003)によって編集されたElectronic Structure and Magnetism of Complex MaterialsにおけるJ.KAonig,J.Schliemann,T.Jungwirth,およびA.H.MacDonaldを参照)。[100]および[010]に沿った磁化のためのトンネル抵抗どうしの間における差についての破線の面内等軸対称は、0.1%程度の面内単軸性歪みを導入することによって理論的にモデル化される。価電子帯における極めて強いスピン軌道相互作用のために、そのような小さい歪みは、上で概算されたものに匹敵するKuの値になるとともにかなり大きいDOS異方性にもなる。
部分的なDOSを所与の帯域についての所与のkzでのDOSとして定義することによって、本発明者は、図3に、Mnモーメント転換磁界の存在によるスピン分割であるGaAsの重いホール状態および軽いホール状態に由来する4つの占有帯のそれぞれについての面外ウェーブベクトルkzの関数として計算されたフェルミエネルギーでの相対部分DOS異方性を示す(ΔDOSpartialはDOSpartial(M‖[010])−DOSpartial(M‖[100])と等価である)。kband F,zは、6%のMnGa濃度についての所与の帯域におけるフェルミウェーブベクトルである。
実験による70Kのキュリー温度は、正孔密度を3×1020nm−3に仮定し、Mnによって占められた陽イオン部位が4%wであると仮定することで、理論的に再生されるが、これは実験濃度が概算するものにかなり一致している、ことに留意すべきである。全てのkzをフェルミウェーブベクトルkF,zまで積分して全ての帯域を加算することによって得られた全DOS(DOStotal)には、磁化方位に対して1%未満のフェルミエネルギーでの異方性がある。しかしながら、トンネルコンダクタンスは、面内モーメントがトンネリングの間に保存されないときだけ、DOStotalに比例している。より清浄な障壁および界面については、面内モーメントが少なくとも部分的に保存されて、大まかに言えば、より高い帯域およびkzのある状態についてのトンネリングのより高い可能性がもたらされる。図3に示されたように、これらの状態のDOSpartialは、磁化方位付けの際に10数パーセントだけ変化することがある。図3は、全体のトンネル磁気抵抗効果の大きささらには符号が、置換型Mn不純物におけるか、あるいは帯域の相異なる範囲およびトンネリング電流の優位を占めるkzの状態を選択することができる障壁および界面特性における局部的スピンの密度のような(Ga,Mn)As薄膜のパラメータによって決まる、ということも示唆している。
(Ga,Mn)AsのDOSpartial異方性によって作られた磁気抵抗効果の全体の大きさを概算するために、本発明者は、清浄な障壁(完全な面内モーメント保存)については、トンネリングが、それぞれの帯域におけるフェルミウェーブベクトルに近いkzのある(Ga,Mn)Asにおける状態によって優位を占めることと、これらの状態のトンネリング可能性が帯域指数から独立していることとを仮定することから始める。本発明者はその後、kzを減少させてフェルミエネルギーでの状態を加えることによって、モーメント保存条件を徐々に緩和する。図4では、本発明者は、2つの磁化方位について積分されたこのDOSint(トンネリングに寄与するkzの仮定範囲にわたって積分されて、4つの占有帯域にわたって加算された)の間における相対差をプロットしている。トンネリング過程において加わるフェルミエネルギーでの全DOSの10%程度については、理論的DOSint異方性は、実験的に観察された数パーセントのオーダーのTAMRと明確に一致している。
図4の左パネルにおける曲線は、相異なるMnドーピング濃度によって分類されており、Mnの局部的スピン密度における磁気抵抗効果の一般的依存性を示している。中間磁界水準においては、このことは、スピン密度の大きさ|SMn|が、一定温度でのMn不純物の数を変化させることによって、あるいは一定ドーピング水準での個々のMn局部モーメントの温度依存性平均スピン分極によって変化するかどうかについては、(Ga,Mn)As電子構造が有効転換磁界h=JpdSMnの全体値にだけ依存する、ということを想起することによって理解することができる。それゆえ、図4の左パネルにおけるデータは、トンネル磁気抵抗の符号が温度とともに変化可能である、ということを示唆している。本発明者は、この符号の変化が単軸性異方性エネルギー定数の符号の変化によることなく起きる、ということを強調したい。図4における右パネルもまた、(Ga,Mn)As価電子帯における正孔の数に対するTAMRの強い依存性を予測している。
本発明者のサンプルでは、Mnドーピングおよび正孔密度は明らかに一定である。しかしながら、温度依存性は試験することができ、その実験によって、上記理論的曲線に見られた符号の変化が確認される。図1cには、1.6〜20Kの温度範囲についての30度に沿った一組の磁気抵抗曲線が示されている。1.6Kでは、TAMR信号は明確に負である。15Kによってゼロまで徐々に減少するその振幅は、符号を変化させるとともに、温度が20Kまで上昇すると再び成長する。実際に、本発明者は、温度が4Kから20Kまで増大すると、全体の極性プロットが符号を反転させる。Kuの符号は温度とともに変化しないので、これは、転換および磁気異方性が本発明者のシステムとは独立して変わることができるという実験的確認である。
ここで研究されたTAMRは、スピン電子研究に新しい方向を開く豊富な現象論を示している。第2の強磁性層を回避することは、高温での操作のために基本的な結果を有してもよい。(Ga,Mn)As/(Al,Ga)As/(Ga,Mn)As型の構造では、ヘテロ構造の内側に埋められる強磁性層は、成長後アニーリング処置によって効果的に処理されるはずがなく、それゆえ、その比較的乏しい成長時磁気特性のままである(Appl.Phys.Lett.の82巻(2003)第3020ページのD.Chiba,K.Takamura,F.Matsukura,およびH.Ohnoを参照)。本発明者の設計によれば、(Ga,Mn)Asあるいは関連した強磁性半導体において達成され、過去2年にわたって徐々に増大している遷移温度によって制限された温度での、可能性のある操作が示唆されている。そのデータもまた、スピンバルブ状信号の意味、すなわち、高抵抗状態あるいは低抵抗状態が飽和状態で実現するかどうかということが、磁界の印加される角度によって、温度によって、あるいは、(Ga,Mn)As層、界面、およびトンネル障壁の構造的パラメータによって変わることができる、ということを示している。
最後だからといって重要でないことはないが、本発明者の実験によれば、2つの強磁性接点のある構造におけるトンネル磁気抵抗についての新しい展望がもたらされている。本発明者は、スピンバルブ実験の解析には、特に強いスピン軌道結合が存在している材料には、注意する必要があることを実証している。本発明者がここでわかったように、スピンバルブ状信号の存在は、トンネル構造におけるスピン分極電流の放出および検知を自動的に意味するものではない。他方において、建設的な方法で組み合わされた2つの明確な材料特性によって、今までにない特性の備わった双安定の磁気抵抗デバイスをもたらすことができる。本発明者はまた、ここで考察された効果の増幅が、例えばエピタキシャルAlAsのようなより大きいモーメント保存度の備わった障壁を利用することで、さらに最適化され得る、ということにも気付いている。
図1〜4に示されてこれまでに説明されたシステムには、1つの明確な座標システムがある。図5〜16に示されて以下で説明されるシステムには、異なった明確な座標システムがある。これら2つのシステムは、互いに対して約150度だけ回転される。
図5には、両面強磁性半導体トンネル接合部に極めて大きいトンネリング異方性が備わったデバイスが示されており、この図5は、低温分子線エピタキシー(LT−MBE)によってもたらされたような磁気トンネル接合部について使用された層構造を示している。Ga1−xMnxAs(x=6%,d=100nm)(参照符号201)/非ドープ型GaAs(厚さ2nm,参照符号202)/Ga1−xMnxAs(x=6%,d=10nm,参照符号203)の3層構造が、半絶縁性GaAs基板(参照符号207)および非ドープ型LT−GaAs緩衝層(120nm,参照符号201)の上面で成長した。(Ga,Mn)As層の強磁性遷移温度Tcは65Kである。図5bには、サンプルレイアウトおよび接触パッドが備わった最終輸送デバイスの模式図が示されている。金属蒸着および離昇に続く正のフォトレジストの備わった光リソグラフィを利用することで、ヘテロ構造は、100μmの側面の備わった内側の正方形接点メサ204と周囲の電気バック接点205との中へパターン化された。正方形メサ204の上面(Ti−Au接点)は10nm厚さの上側(Ga,Mn)As層203に接触しており、バック接点205は100nm厚さの下側(Ga,Mn)As層207に付着している。このサンプル構造によれば、強磁性体およびGaAsトンネル障壁の双方を通して2プローブ式磁気抵抗測定を実行することができる。このデバイスの抵抗は、トンネル障壁を介する垂直トンネリングプロセスによって充分優位を占めており、同様にパターン化された、トンネル障壁のない対照試料が10Ωのオーダーの抵抗を有し、トンネリング異方性磁気抵抗効果を示すサンプルは、T=4.2Kでのその低抵抗状態においておよそ500kΩの抵抗を有する。このことによって、(Ga,Mn)Asの体積磁気抵抗に由来するどのような寄与も充分に無視することができるようになる。
2プローブ式MR測定はその後、層積層体を垂直に流れている電流に対して実施される。(Ga,Mn)Asの体積抵抗率はわずかおよそ10−3Ωcmであるので、デバイス抵抗はトンネル障壁によって優位を占めている。同様にパターン化された、トンネル障壁のない対照試料は、どのような体積(Ga,Mn)As MRも充分無視することができると確かめるための10Ωの抵抗を有する。
輸送測定は、温度可変インサートと相互直交状の3つの電磁コイルからなるセットとで適合された磁石クリオスタットの中で実施された。それらは、任意の方向において300mT程度の磁界の印加を可能にする。多層の平面に印加された磁界は角度φによって表わされ、φ=0度はその磁石におけるXコイルの磁界の方向である。このサンプルについて、相異なる2つの型の実験が実施された。まず初めに、磁気抵抗の測定が、角度φ0でサンプル磁化を飽和させることによって実行され、その後、磁界の大きさHが一定角度φ0で掃き上げられるかあるいは掃き下ろされると、デバイスの抵抗が測定された。実験の第2の型は、φスキャンであり、かつ、磁界の角度φを一定の大きさH0で一掃する間にその抵抗を測定することからなっている。
図6は、10mVのバイアスおよびT=4.2Kで取得された磁気抵抗のプロットを示している。これらの測定値は[100]および[010]の結晶方向に沿って印加された磁界で取得された。これらの方向は、SQUID磁気測定によって実証されたように、サンプルにおける磁化容易軸である。また、この分野におけるいくつかのグループによれば、類似した(Ga,Mn)As層について、J.Appl.Phys.94巻(2003)の第4530ページのMoore,G.P.,Ferre,J.,Mougin,A.,Moreno,M.,およびDaewitz,L.による「Magnetic anisotropy and switching process in diluted Ga1−xMnxAs magnetic semiconductor films」およびAppl.Phys.Lett.81巻(2002)の第2806ページのHrabovsky,D.,Vanelle,E.,Fert,A.R.,Yee,D.S.,Redoules,J.P.,Sadowski,J.,Kanski,J.,Ilver,L.による「Magnetization reversal in GaMnAs layers studied by Kerr effect」と同様な磁気異方性が報告されている。
それぞれの方位について、磁界は正の飽和状態から負の飽和状態まで一掃され、ヒステリシス状に対称である曲線を作成するために戻された。60度についての1つの方向には受け入れ矢印と参照符号208とがあり、150度についての1つの方向には受け入れ矢印と参照符号209とがある。両方の曲線について、かつ、30mTよりも大きい磁界において、デバイスの抵抗は、印加された磁界とそれぞれの磁化容易軸との間における2層の磁化の回転によって引き起こされた漸進的な変化だけを示している。より低い磁界であってゼロを横切った後には、磁化は、磁区壁の形成によってその方向を急に反転する。輸送データでは、このことは、抵抗における確定した変化と同様に、それ自体を明示している。重要な観点は、磁気抵抗が約30%〜40%程度の信号変化の備わったスピンバルブ状であるものの、それが正および負の双方であってよい、ということである。このことによって、本発明者の発見と、Phys.Rev.Lett.の87巻(2001)第026602ページのTanaka,M.,とHigo,Y.,によって報告された「Large Tunneling Magnetoresisitance in GaMnAs/AlAs/GaMnAs Ferromagnetic Semiconductor Tunnel Junctions」のような構造に基づいた類似の(Ga,Mn)Asにおけるトンネリング磁気抵抗(TMR)として解釈された先の報告とは、はっきりと見分けられる。
図6は、SQUIDによって実証されたように、(Ga,Mn)Asにおける2つの等軸状磁化容易軸(それぞれ[100]および[010])に近い60度(符号208)および150度(符号209)に沿って、電圧バイアスV=10mV、温度T=4.2Kで取得されたMRスキャンを示している。低い|H|であって、いずれかの一掃方向にゼロを横切った後には、Mはその方向を急に反転する。このことは、40%のスピンバルブ信号になる抵抗における変化として、輸送においてそれ自体を明示している。60度に沿った測定は、先の観察結果と類似しているように見え、また、伝統的なTMRについては間違えやすいであろう。しかしながら、150度で観察された顕著な符号変化は、その効果の異なった起源を指し示し、また、単一強磁性デバイスにおけるTAMRの観察結果と調和した解釈を強く示唆している。
本発明者がその平面において他の角度で|H|を適用すると、効果の増幅は一定のままであるが、くっきりした切換事象の位置および符号は、単一の磁性層デバイスについてのものと一致する内在的対称性のある強い角度依存性を呈する。それらのピークの形状におけるいくつかの微細構造を無視することで、二段階磁化反転の比較的まっすぐな映像は、この低い|H|対称性の原因となる。それは、小さい面内単軸性寄与がある主として等軸のものである(Ga,Mn)Asの磁気異方性と、磁気反転が60度の磁区壁の核生成および伝播によって起きるという事実との組み合わせに由来する。低い磁界では、磁化の干渉性回転ではなく、支配的な反転機構は、そのようにすることによるエネルギー利得が磁区壁の核生成/伝播に必要なエネルギーよりも大きいときにはいつも、急に切り換わる磁化からなっている。
別の重要な相違点は、磁界がサンプルの平面に対して垂直にすなわち磁化困難軸に沿って印加されるときの、極めて強い磁気抵抗である。V=5mVの励磁電圧におけるT=4.2Kでの対応測定値が図7に表示されている。面内測定におけるHに比較すると、この磁気抵抗曲線によって、2つの磁性層の極めて強い面内異方性が確認される。このバイアスでの最大抵抗変化は約600%である。この値は、サンプルの平面に印加された同じ励磁電圧および磁界の備わった対応構成よりも際立って大きい。掃き上げ曲線は参照符号210で受け入れられ、また、掃き下ろし曲線は参照符号211で受け入れられた。
磁界が相互直交状の2つの磁化容易軸からずっと離れた角度で平面内に印加されると、効果の大きさはおおむね一定のままであるが、くっきりした切換事象の位置は、図8において実証された強い角度依存性を呈する。ここで、その磁界は、0度〜170度の範囲内の角度で10度ずつ、サンプルの平面の中へ印加された。いっそう明確にするために、個々の磁気抵抗曲線は垂直方向にずれている。これらの磁化容易軸は、60度程度の角度および150度程度の角度であり、プロットから、保磁磁界の最小値はこれらの角度で存在していることが明らかである。これらの磁化容易軸からずっと離れた磁界については、その輸送構成はいっそう広くなる。最大保磁磁界は、サンプルの端部に沿った方向に近い、20度程度の角度および110度程度の角度で存在している。これらは、サンプル抵抗の最も強い連続変化を表示する方向でもあり、1つの層あるいは両方の層のStoner Wohlfarth状干渉性回転に帰することができるものである。
一般に、任意の所与磁界角では、多数の階段状構成が存在している。このような構成の豊富さにもかかわらず、主要な構成は磁化反転の比較的まっすぐな映像によって理解することができる。それは、J.Appl.Phys.94巻(2003)の第4530ページのMoore,G.P.,Ferre,J.,Mougin,A.,Moreno,M.,およびDaewitz,L.による「Magnetic anisotropy and switching process in diluted Ga1−xMnxAs magnetic semiconductor films」あるいはAppl.Phys.Lett.81巻(2002)の第2806ページのHrabovsky,D.,Vanelle,E.,Fert,A.R.,Yee,D.S.,Redoules,J.P.,Sadowski,J.,Kanski,J.,Ilver,L.による「Magnetization reversal in GaMnAs layers studied by Kerr effect」のような文献から、また、単一の(Ga,Mn)As層および類似の(Ga,Mn)As層が等軸性寄与[100]軸および[010]軸に沿ったより小さい単軸性寄与からなる異方性を有する単一(Ga,Mn)As層についての本発明者のSQUIDおよび磁気輸送測定から、既知である。単一の磁区の全磁気エネルギーEmについての表示は、
Em=Kusin2(θ)+Kcsin2(2θ)−MHcos(θ−φ) (式1)
になり、ここで、Kcは等軸異方定数であり、Kuは単軸異方定数である。Hは印加された磁界の振幅であり、qは[100]結晶方向から測定された磁化の角度である。本発明者のデータから、低い磁界では磁化の干渉性回転は磁化反転の支配的機構ではないことが明らかである。これらの磁界水準では、磁区壁は役割を果たす。磁化は、そのようにすることによるエネルギー利得が磁区壁の核生成/伝播に必要なエネルギーよりも大きいときにはいつも、局部エネルギー最小値から全体エネルギー最小値へ切り換わる。全体エネルギー最小値が電流磁化方向に対してどこに存在しているかによって左右されるが、磁区壁は90度磁区壁あるいは180度磁区壁であってよい。
Em=Kusin2(θ)+Kcsin2(2θ)−MHcos(θ−φ) (式1)
になり、ここで、Kcは等軸異方定数であり、Kuは単軸異方定数である。Hは印加された磁界の振幅であり、qは[100]結晶方向から測定された磁化の角度である。本発明者のデータから、低い磁界では磁化の干渉性回転は磁化反転の支配的機構ではないことが明らかである。これらの磁界水準では、磁区壁は役割を果たす。磁化は、そのようにすることによるエネルギー利得が磁区壁の核生成/伝播に必要なエネルギーよりも大きいときにはいつも、局部エネルギー最小値から全体エネルギー最小値へ切り換わる。全体エネルギー最小値が電流磁化方向に対してどこに存在しているかによって左右されるが、磁区壁は90度磁区壁あるいは180度磁区壁であってよい。
磁気抵抗の適切な小さいループを測定することによって、本発明者は、両方の層がφ=60度に近いそれらの単軸性磁化容易軸を有し、第2のわずかに磁化が容易でない軸が150度に沿っている、ことを示すことができる。典型的なデータは図9に示されている。点線の黒い曲線212は、φ=0度に沿った正の飽和状態から負の飽和状態への掃き下ろしの間にまず取得された。この抵抗データにおける第1の最も大きい急上昇は、最も近い等軸性磁化容易軸(φ=330度)からφ=235度に沿った単軸性磁化容易軸へ遷移する両方の層によるためである、とみなされた。このことは、さらに別の点線状曲線213を(13mT)程度までだけ測定し、第1急上昇の後にその磁界を停止することによって、試験された。その後、磁界は、0度に沿ってゼロまで掃き戻され、次いでφ=235度に沿って再び上昇した。付加的曲線214に沿った抵抗の漸進的減少を除いて、150mT程度で急な上昇は起きないが、これは、磁化がすでにこの方向に沿って存在していたということの証明である。類似の実験によって、750kΩ程度の上部抵抗水準は両方の磁性層が150度程度でわずかに弱い磁化容易に沿って磁化されることに関連がある、ことが示された。
小さいループは、磁気異方性がこのデバイスに内在する輸送/抵抗異方性と密接に関連しているということを示している。図6から、700kΩ程度の高抵抗状態に等しいM||[100]を両方の層が有し、また、それらがM||[010]であれば、これは480kΩの抵抗に相当している、ことがわかる。これは本発明者のデバイスにおける独自の特徴であるが、その理由は、Phys.Lett.54A巻(1975)の第225〜226ページの「Tunneling between ferromagnetic films」におけるJulliere,M.のモデルの内部で説明された普通のスピンバルブとは対照的に、本発明者のサンプルが、これらの層における磁化の絶対方向に対して正確に高感度であって、それらの相対方位(平行/逆平行)に対しても正確に高感度である磁界センサを表示しているからである。この特性は図10に実証されている。このφスキャンでは、T=4.2KおよびV=5mVで、磁界振幅|H|は300mTで一定に維持され、その方向は反時計回りに一掃される。この測定は、Mを飽和させるために充分に大きい|H|で、時計回りあるいは反時計回りに一掃されることと同一である。そのグラフは、印加された磁界の方向に対してプロットされたこのデバイスの抵抗を表示している。高い外部磁界のために、これら2つの層の磁化がほぼ共線的なものであることを確実に推測することができる。データは、60度程度での最も低い抵抗と120度での最も高い抵抗との間に300%を超える変化があるという予期しない結果をもたらしている。
φスキャンの状況は、印加された磁界の大きさとともに劇的に変化する。このことは図11に実証されており、ここでの磁界は、磁化の90度切り換えについての任意の方向に沿って必要とされる最も高い磁界よりもわずかに高いように、注意深く選択された。まず、磁化は、負の単軸性磁化容易軸、φ=240度に沿って飽和された。その後、磁界は、H=25mTまで低くされて、時計回り方向に一掃され(第1曲線221)、かつ、反時計回り方向に一掃された(第2曲線222)。
このデータの主要な特徴は、抵抗水準における40%程度の急上昇である。これらは、φ=90度ではサンプルが[010]磁化容易軸に沿っているMに関連した低い抵抗状態にあるということに留意することによって、割に簡単に説明することができる。φは[100]磁化容易軸にいっそう近接して一掃されるので、Mは、(Ga,Mn)As層における面内等軸対称性を破壊する付加的な単軸のために高い抵抗状態に対応して、この方向へ最終的に切り換わるであろう。これらの曲線は、それらが磁化容易軸についてほぼ面対称であるべきであるので、2つの一掃方向について異なっているに違いない。この対称性からの偏差は不均一な歪み分布の結果であると考えられる。
最小抵抗値と最大抵抗値との間に位置しているデータには、磁化容易軸に完全に沿っている層の磁化に対応しているいくつかの特徴的な抵抗水準が存在している。様々な中間状態の存在は直接的な方法で説明することができる。意図的に、これら2つの層の磁気異方性は同一ではない。これらの層におけるわずかに異なった歪み状態と異なった厚さとによって、わずかに異なった保磁磁界が創り出される。従って、磁界が平面の中で回転されると、これらの層は同時には切り換えられない。2つの層のうちのより柔らかい層が早く切り換えられるであろう。これによって、磁石どうしの間における相対角度が300mTφスキャンにおけるようなゼロではなく、例えば90度あるいは180度である構成が創り出される。これらの構成には全て、異なった抵抗が備わっているので、サンプルのスピンバルブ状作用が、普通の磁気抵抗測定と同様に、回転する磁界において認められる。対照実験として、H=15mTでの同様のφスキャンもまた実施された。予想どおり、15mTは、これらの層のいずれかを任意の磁界方向で切り換えるためにはあまりにも低い磁界であるため、サンプルの抵抗はその最も低い値で一定のままであった。このような独自の作用によって、ある閾値よりも高くてそれよりも低くはない回転磁界においてプログラムすることのできるスピンバルブについての新規な設計展望が開けている。
トンネル接合部のスピンバルブ状信号の大きさは、図12に表示された極めて強い電圧依存性を示している。様々な曲線は、4.2Kの温度でφ=30度に沿って取得された磁気抵抗測定値に関するものである。励磁電圧は500μVから10mVまでの範囲にある(曲線231、232、233、234および235)。低抵抗状態は、バイアスの減少にともなって500kΩから約750kΩまで増大する、比較的低い変化を示す。これに対して、高い抵抗値は、同じ電圧範囲において350%を超えて増大する。同じような値は、異なったバイアスでのφスキャンについて適用される。
図13、図4および図15は、磁気抵抗およびφスキャン測定における減少温度の結果を示している。このデータから、この構成の大きさは極端に温度依存性であることが明らかである。T=1.7Kへの温度減少によって、図13におけるφ=60度磁気抵抗曲線に表わされたように、150000%への増大への効果が引き起こされる。バイアスおよび温度の両方がより低いためにそれは大きすぎるが、その効果は、図6における対応曲線におけるものと定性的にまだ同じである。付加的な測定値は、温度あるいはバイアスがいっそう下がると、構成の大きさがなお増大する、ことを示している。しかしながら、そのようにすると、1010Ωへ到達する高抵抗水準を解消することはますます困難になる。従って、150000%は、本発明者が実験設備によって制限されるように、本発明者の効果の大きさについてのまさに下限である。
図16は低いバイアス電圧および温度での効果の増幅を示しており、この中で、a)は、様々なバイアス電圧についての4.2Kでのφ=30度に沿ったTAMRを表わし、b)は、1.7Kおよび1mVバイアスでの超巨大なTAMRを表わし、c)およびd)は、低いバイアスおよび温度でTAMRが状態密度の詳細な異方性を精査することを示している、1.7Kでの様々なバイアス電圧についてのφを表わしている。
本発明者のデバイスにおける別の顕著な特性は、図16aに表示された、信号の極めて強い電圧依存性である。様々な曲線は、500マイクロボルトから10mVまでの範囲に及ぶ電圧についてT=4.2Kでのφ=65度に沿った磁気抵抗を示している。その低抵抗状態には、バイアスが減少するにつれて20%程度の比較的小さい変化がある。これに対して、高抵抗状態は250%を超えて増大する。TAMR効果の振幅はまた、図16bに示されたように、Tに対して極めて高感度でもある。ここで、本発明者が4Kと1.7KとにおけるV=1mV曲線を比較すると、その効果は150000%まで増大している。実際に、これは使用された増幅器の検出限界に対応している下限に過ぎない。効果の振幅は低いVおよびTで劇的に増大し、一般的な対称性は、効果の原因が変化しないことと、しかし、それは付加的な機構によって増幅されることとを表わして、変化しないままである。
この超巨大なTAMRの増幅は、金属絶縁体遷移層が交差するときにEFでのEfros−Shklovskiiギャップの開口に起因するように思われる汚染金属からのトンネリングにおける周知のゼロバイアス異形の現れとして理解することができる。実際に、そのような効果は、注入領域を障壁に近い極めて薄い層に制限する2〜3オングストロームの短い(Ga,Mn)As平均自由行路を仮定すると、本発明者のデバイスにおいて観察されるであろう。従って、障壁の近くの空乏化によって、(Ga,Mn)Asスラブの大部分においてよりも注入領域において低いキャリア密度が引き起こされるに違いない。従って、注入器は、典型的な(Ga,Mn)As層よりも金属絶縁体遷移層にいっそう近いものであろう。さらにまた、本発明者は、DOSがMとともに変化することをすでに知っている。従って、本発明者が実験を低いVおよびTで行うと、トンネリングにおいて加わる効果的なDOSは、TAMR効果の大きい増幅につながるMの再方位付けとともに、金属絶縁体遷移層を通して行うことができる。Efros−Shklovskiiギャップが支配的な促進機構であるというさらに別の表示は、Tが4.2Kから1.7Kまで変化するときの効果の増幅が、低いバイアス電圧については強いものの、より高い電圧(10mV)ではSi:Bの金属絶縁体遷移層の近くにおけるトンネリング実験の結果に一致しているように見えない。無秩序で不純物が介在するトンネリングのようなTAMRの促進についての他の可能な機構は、役割を果たすこともできるとともに、おおむね却下すべきものではない。
最後に、図16cおよび16dには、様々なVについての1.7Kでのφスキャンが示されており、これらは、(Ga,Mn)As層のDOSにおける異方性についての検出器として作用する、このデバイスの別の重要な点を実証している。図16cには、より低いバイアスでよりいっそう顕著になるいくつかの微細構造がすでに示されている。これは、本発明者がDOSの異方性における微細構造の検出を開始するときに期待されており、ギャップの開口が相異なる有効質量を有する様々な帯域について異なって作られるべきであると仮定すると、複雑なものであろう。
要約すれば、(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asトンネル構造における超巨大なTAMR効果が観察されたが、それは、4Kでは数百%のオーダーのものであり、また、より低い温度では150 000%まで増幅され得る。この構造の作用は、磁界が[010]方向に沿って印加されたときの普通のTMRによく似ているだけでなく、振幅に対する感度のみならず印加された磁界の方向に対する感度までものような新しい機能性もまた表わしている。この新規な効果の実験的特徴の多くは、磁化方向に対する一粒子型トンネリングのDOS異方性によって理解することができる一方で、低いバイアスおよび温度での劇的な増幅によって、強いスピン軌道相互作用の備わった無秩序な相互作用型電子装置におけるトンネリング輸送の理論についての新しい困難な問題が引き起こされる。
それらの磁化の方向に左右される状態密度がある2つの層の間におけるトンネリングを利用することで、本発明者は半導体スピンバルブデバイスについての新しい機能性を実証している。これらの機能性には、磁化の相対方位に対する感度のみならずそれらの絶対方位に対する感度およびそれに加えて外部磁界の方向に対する感度までもと同様に、振幅が100000%を超える効果が含まれている。
図17には、角度φでMを飽和させた後の0mTでのサンプル抵抗が示されている。測定の階段関数作用によって、外部磁界のあるTAMRデバイスへ情報を書き込むとともに、後にこのデバイスの抵抗を測定することでそれを読み出すことが可能になる。ここに示されたデータは、T=4.2KでのAu/AlOx/(Ga,Mn)Asサンプル(a)と、T=4.2Kでの(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asサンプル(b)と、T=1.8Kでの(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asサンプル(c)とにおいて測定されたものである。従って、この図は、外部磁界による記憶素子の読み取り/書き込みおよび/またはTAMRセンサのプログラム可能性に関連がある。以下の本文において、角度φは0度が[100]結晶方向に沿って位置するように定義される、ことに留意しなければならない。
TAMRにおいては、サンプルのそれぞれの強磁性層における磁化Mの絶対方位どうしの間には直接的な相関関係がある。このことは例えば、外部磁界のためのセンサを構成するために、あるいは、TAMRに基づいたデバイスの中に情報を記憶するために、様々なやり方で使用することができる。このセンサの原理と記憶の原理とは、TAMRデバイスにおける強磁性層の総数とは関係なく、同じであってよい。図17におけるデータは、磁化Mを角度φに沿って飽和させた後に測定された磁界B=0mTでのサンプル抵抗のプロットである。片面強磁性TAMRサンプル(図17a)および両面強磁性TAMRサンプル(図17b,17c)の両方とも、この種の実験において定性的に類似した特徴を示している。これらの図は、磁気状態を準備するために利用された角度φに沿ったサンプルの抵抗を表示している。全てのプロットにおける最も顕著な特徴は、低抵抗状態と高抵抗状態とを分離するはっきりした階段があることである。(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asサンプルの場合には、4.2K測定における普通のTAMR(図17b)について両方とも真実であるが、より低い温度で起きる超巨大なTAMR(T=1.8K、図17c)についても真実である。
階段状作用の背後にある機構は本発明者のTAMRモデルを使って説明することができる。磁界が極めて高くて角度φに沿った値を指しているときには、その磁化は磁界に沿って配向している。磁界がゼロまで低くなると、その磁化は磁化容易軸の1つに沿って落ち着く。例えば90度方向程度の隔たりでは、[010]磁化容易軸が好ましく、0度方向程度の隔たりでは、その磁化は[100]磁化容易軸へ静止する。このことは、これらの測定において2つの主要な抵抗水準が存在することを説明している。
サンプルのこの特性は、記憶素子を製造するために使用することができる。まず、その情報(例えば、高い抵抗は「1」に等しく、低い抵抗は「0」に等しい)は、例えば外部磁界を利用して、適切な方向に沿って磁化を切り換えることで、その素子の中へ書き込むことができる。その後、ゼロの外部磁界で、その情報は、デバイスの抵抗を測定することで読み取ることができる。
この特許の範囲内で説明されたこのデバイスの組み立てには、対称性の破壊が必要であり、また、それによって、磁化ベクトルが様々な結晶学的方向に沿って整合するときに相異なる抵抗状態の観察をもたらすために、強磁性層における磁気異方性の創造が必要である。さらにまた、このデバイスの詳細な作用は、磁化反転プロセスそれ自体に左右される。本発明者は、磁気異方性および磁気反転プロセスの両方を上側層によるとともに下側にある基板および緩衝層の細部によって調整することができる、ということを提案する。
立方対称性のある材料については、[100]、[010]、および[001]の結晶学方向の間に対称性がある。対象層へ完全には格子状一致しない下側層における成長から生じる歪みに起因して、対称性が[001]成長方向と[100]および[010]方向を含んでいる平面との間で破壊される、ということは周知である。しかしながら、[100]方向と[010]方向とは一般的に等価である。
[100]方向と[010]方向との間に異方性を創り出すために、面内4重対称性は破壊しなければならない。このような対称性の破壊を達成する3つの方法は、次のとおりである。
A 名目上の主格子方向に対してわずかにミスカットされている基板における成長を開始し、その後にシステム対称性を破壊すること。
B 緩衝層の適切な選択。
C 上側層の使用。
A 名目上の主格子方向に対してわずかにミスカットされている基板における成長を開始し、その後にシステム対称性を破壊すること。
B 緩衝層の適切な選択。
C 上側層の使用。
面内4重対称性の破壊に加えて、磁気抵抗スキャンの間に様々な結晶学方向どうしの間で抵抗状態のはっきりした切り換えを達成するためには、ゆっくりした連続的な回転とは対照的に、磁化方向における不連続的な変化が必要である。このことは、干渉性回転による代わりに、磁区壁の核生成および伝播による巨視的磁化状態の補正に好都合である状態を創り出すことによって、達成することができる。さらにまた、上に掲げたものと同じ3つの方法を独立してあるいは組み合わせて利用することで、そのような切り換えを、全ての3つが作用して層の全体対称性を破壊するように達成するとともに、磁区壁の形成に好都合である核生成種を創り出すことができる。
以下の本文では、本発明者は、強磁性層の磁気異方性と磁化再方位付けプロセスとにおける上掲因子におけるそれぞれの役割の研究に関する実験結果を示す。
図18には、高抵抗状態と低抵抗状態との間の遷移領域において測定された高い角度分解能φスキャン(B−0mT)が示されている。測定値は、T=4.2K(a)およびT=1.8K(b)での中間抵抗状態の存在を示している。この状態では、2つの磁化どうしの角度は90度である。従って、図18は、2つの(Ga,Mn)As層の磁化どうしの角度である90度によって特徴付けられた磁気状態の存在を実証している。
(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asサンプルについての、図17bおよび図17cにおける高抵抗状態および低抵抗状態の間の遷移領域のより細密な検査によると、サンプルが中間抵抗状態にある小さい隔たりの存在が明らかになる。このことは、図18a(T=4.2K)および図18b(T=1.8K)に表示された高い角度分解能φスキャンによって示されている。中間状態の解釈は、この角度間隔において、2つの層の一方が高抵抗[100]方向に弛緩し、例えばわずかに異なった結晶磁気異方性の備わった他方が低抵抗[010]方向に沿って配向する、ということである。この場合には、2つの磁気ベクトルの間に90度の角度がある。遷移領域の上方および下方で、これら2つの磁化は共線的である。
図18bにおける低温測定結果は90度状態における別の興味深い性質を示している。同じ測定結果(満ちた正方形)が2回取得されると(満ちた円形)、1つの測定結果および所与角度ではサンプルは高抵抗状態にあり、その後の同じ角度での測定結果ではサンプルは中間状態にある。繰り返し測定結果は、説明文「繰り返し」で表され、満ちた円形で示されている。言い換えれば、この角度ウィンドウはサンプルの抵抗双安定性を表示している。実験によって、この双安定性は1.5mV〜7.5mVとの間の大きい範囲における励磁電圧について存在していることが実証された。
図19は、図19a)においては、図17cの高抵抗形態および低抵抗形態の遷移領域に近いφ=51度およびφ=149度に沿った磁気状態を準備した後に、(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asトンネル接合部においてゼロ磁界で測定されたIV曲線を示している。この測定結果は、電流支援型切り換えの根拠であるV=7mVでのはっきりした不連続性を示している。図19b)は、149度のIV曲線(星印)の不連続性と、サンプルの高抵抗状態と中間抵抗状態(「90度」)との間の電流支援型切り換えを示唆する図18bの双安定性との相関関係を示している。従って、図19は、磁化の電流誘発型切り換え/電流支援型切り換えの根拠に関係がある。
以下における様々な実験には、磁界に影響を及ぼすことができるという根拠が含まれており、従って、適切な電流を印加することにより、サンプルの抵抗状態が示される。
図19aは、−10mVから+10mVまでの励磁電圧を一掃することによって、また、(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asトンネル接合部を通して電流を測定することによって記録された2つのIV曲線を示している。これらの測定は、磁気状態がそれぞれφ=51度およびφ=149度に沿った大きい磁界で準備された後に、T=1.7Kおよびゼロの磁界で行われた。これらの角度は、図17cに示された高抵抗状態と低抵抗状態との間の遷移領域に近いものであり、従って、双安定性を示している図18bに示された領域にも近いものである。両方のIV曲線の最も顕著な特徴は、x軸におけるおよそ7mVの箇所に位置した不連続性である。このサンプルは、高い抵抗状態から極めて低い抵抗状態へ急に遷移を受ける。これらの特徴構成が図18bの双安定性領域に近いことは、両方の実験における抵抗の降下が同じ原因であるという仮説に直ちに結び付く。図19bにおいて、本発明者は、149度のIV曲線(星印)の不連続性と147度周辺の双安定性領域とを比較する。その抵抗を匹敵するものにすることを可能にするために、φスキャンは、IV曲線の不連続性の箇所に近い6.9mVのバイアスで測定された。一致は、特に90度/中間抵抗状態について、良好である。従って、本発明者は、この場合におけるトンネル構造の中へ充分に高い電流を注入することが平行磁化状態から90度磁化状態への遷移に好都合である、ということを提案する。
図20は、双安定性の内側であるφ=146.75度に沿った磁界が準備されたサンプルの磁気状態を示している。その後、外部磁界は、サンプルへ電圧が印加される間にゼロにされた。この処置は多数回、繰り返されて、ゼロ磁界でのその結果の抵抗値が測定値の指数に対してプロットされた。
このようにして、図20は、トンネル接合部の磁化作用において電流が有する影響のいっそうの根拠を表している。そのデータは、トンネル接合部の磁気状態がφ=146.75度に沿った大きい磁界を利用して準備された時点ごとにおける、それに続く多くの測定結果の集計である。この角度は、図18bに表示された双安定性ウィンドウと一致している。実験の間に、サンプルは、1.5mV〜7.5mVとの間で選択された所定電圧バイアスで一定に維持された。外部磁界がゼロまで低くされた後に、サンプルの抵抗が測定された。この処置は多数回、繰り返されて、ゼロ磁界でのその結果の抵抗値が指数に対してプロットされた。測定された全てのバイアスで、本発明者は、より高い抵抗水準とより低い抵抗水準との共存に気付いている。本発明者はまた、励磁電圧が変化すると、より高い抵抗状態とより低い抵抗状態との間の均衡が移動することにも気付いている。バイアスが高ければ高いほど、より低い抵抗状態の形成に明らかに好都合であり、バイアスが低ければ低いほど、この角度でのより高い抵抗状態の形成に明らかに好都合である。
これまでの本発明者の知見では、この実験におけるバイアス電流の増大によって低抵抗状態の発生の確率が増大するように見える。このことはまた、図20に示されたデータからも直ちに明らかである。これらの知見は、サンプルとその磁気切り換え作用を通る電流の間の明確かつ強い相互関係が存在するという事実を明確に支持する。
図21には、(Ga,Mn)AsウエハS20から取得された成長ずみ試料におけるSQUIDが示されている。その測定値は、サンプルの[110]縁から15度ずれた方位にある磁界で導かれる。
図22には、名目上は片面TAMR層と同一であるAu/AlOx/(Ga,Mn)AsサンプルにおけるSQUID測定値が示されている。これらの測定値は、使用された磁化反転/磁気異方性モデルの妥当性を確認するものである。(a)[100]磁化容易軸および[110]磁化困難軸に沿った磁界での測定値。(b)測定値はサンプルの[110]縁から15度ずれた方位にある磁界で導かれる。
上記の図21および図22は、強磁性層の異方性をその強磁性層の上部における表面層によって調整することができる、という実証に関係がある。
本発明者は、強磁性(Ga,Mn)As層の磁気異方性および切換作用における強磁性上側層の影響を研究するために、一組のSQUID測定を実行した。これらのSQUID測定についての第2の目的は、輸送データを説明するために使用された磁気異方性/磁区壁関連切換機構モデルを支持することであった。
このサンプルでは、磁化反転には、面内異方性方向どうしの間における2つの連続的90度切換事象かあるいは全磁化容易軸([010]方向)における単一の180度切換事象かのいずれかが、常に含まれている。これらの磁気抵抗データでは、これらの切換事象は、くっきりした階段として(あるいは、図示されていないが、ある角度で)現れている。SQUIDでは、それらは測定された磁気モーメントにおける階段として現れている。このSQUIDデータを解析するためには、人は、SQUID磁力計が磁化ベクトルの絶対値を測定するのではなく測定軸へのその射影だけを測定する、ということに留意しなければならない。本発明者の事例では、測定軸は印加された磁界の軸に対して平行である。このことは、サンプルの全磁気モーメントがMtであり、かつ、そのベクトルがSQUID軸の方向に対して角度φだけ回転された磁化容易軸に沿って示されるときには、測定されたモーメントMmがMm=Mt cos(φ)によって与えられる、ことを意味している。
図21には、(Ga,Mn)AsウエハS20(これは、(Ga,Mn)As/AlOx/Au輸送デバイスの組み立てに利用された上側層である)から取得された成長ずみ試料におけるSQUID測定値が示されており、図22には、AlOxおよびAuの上側層で被覆された同じ上側層について測定されたSQUIDデータが示されている。これら2つの上側層の備わったサンプルは、TAMRを表した単一強磁性トンネル接合部と名目上同じである。成長ずみサンプルについての図21における測定値は、サンプルの[110]縁から15度ずれた方位にある磁界で導かれる。同じことは、上側層の備わったサンプルについての図22における測定値に当てはまる。これは、2つの連続的90度階段での磁化反転(「二段階切り換え」)に関連した単一型片面スピンバルブサンプルが極めてはっきりした急な磁区壁支援型切換特性を示した角度に対応している。上側層のない成長ずみサンプルについてのSQUID測定値は、二段階切り換えのどのような有意の符号も示していない。これに対して、図22bにおける被覆されたサンプルの測定値は、以下の解析に示されたように、二段階切り換えを示している。
図22aには、層の[110]磁化困難軸に沿った磁界のある測定値と、[100]磁化容易軸に沿った磁界のある別の測定値とが含まれている。測定された磁気モーメントの大きさから、人は、層の全磁気モーメントが1.01×10−5であると容易に結論付ける。この値は、[110]軸の測定から引き出されたものであるが、その理由は、本発明者の取付方式では、サンプルの縁に沿った配向が、縁に対して45度回転された磁化容易軸に沿った配向よりもいっそう正確であるからである(このSQUID測定はサンプルの取り付けにおいて4度の誤配向を示した)。図20bでは、残留磁化は8.56×10−6emuであり、これは、磁界方向から31.2度離れた磁化容易軸に存在する全磁気モーメントの射影である。これは、意図された名目上の30度配向に見事に一致している。ヒステリシスループにおける以下の大きいステップは、本発明者のモデルによって予測されたように、[100]から[0‐10]への磁化の90度切り換えに関連している。
要約すると、SQUIDデータによれば、本発明者の磁気モデルと、上側層が下側にある(Ga,Mn)As層の磁化作用に重要な役割を演じるという事実との両方が確認される。
強磁性体における相異なる上側層の影響を決定するために、いくつかの付加的なSQUID測定が行われた。それらは全て、それらをトンネル接合部の結果と比較することができるようにするために、ウエハS20からのサンプルについて実行された。検査した上側層の全ては、薄いAlOx上側層で被覆されたS20である成長ずみサンプルの磁気作用を変化させた。
図23は、薄いAlOxだけで被覆されたウエハS20からの試料に行われた様々なSQUID測定を表示している。図19aは上側層の2つの等軸性磁化容易軸に沿った2つの測定を示しており、これらは、S20の電気的磁気抵抗測定の0度方向および90度方向に対応している。残留磁化は9.12×10−6emuである。図19bにおける測定はサンプルの縁に沿って行われたが、それらは、cos(45°)の因子によってすっかり減少しているとして説明することができる。同じ考察を、図19cに示された測定に適用することができる。そのサンプルは、サンプルの縁から15度離れた角度で、言い換えれば、Bの方向からおよそ30度離れた最近接磁化容易軸で、磁界に取り付けられる。それはまた、図21および図22bに示された測定値と等価でもある。比較することによって、AlOx上側層の適用によってもまた、はっきりした二段階切り換えの発生が起きるように見えるが、それは、90度切り換えは、AlOx被覆サンプル(図23c)では確認することができるが、成長ずみサンプル(図21)では生じないからである。
図24は、薄いAu上側層で被覆された70nm厚さの(Ga,Mn)AsサンプルにおけるSQUID測定値を示している。これらのサンプル縁の1つに対して小さい角度(<30度)での磁界。このサンプルは二段階切り換えを示している。
同じ観察がS20の上部におけるAu上側層について行われている。そのSQUID測定値は図24に表示されている。また、このサンプルにおいて、本発明者は、サンプル縁の一方に対して小さい角度で印加された磁界で二段階切り換えが生じたことを発見した。
要約すると、強磁性層における上側層は、その磁気異方性および/または切換作用を二段階磁化反転の促進のようなやり方で顕著に変化させることができるとともに、それはTAMRの擬似スピンバルブ作用の重要な構成要素である。
本発明者は、下にある基板のミスカット(結晶方位ずれ)によって強磁性層の磁気異方性および磁化反転に影響が及ぶことを見出だし、また、そのことに留意している。
この仮説を支持するために、本発明者は、意図的にミスカットしたGaAs[001]基板の上に、いくつかの単一の強磁性(Ga,Mn)As層を成長させた。これらのサンプルは次のものを含んでいた。
S97A: ミスカットなし
S97B: ミスカット5度/[110]、90度
S97C: ミスカット5度/[111]、90度
S97D: ミスカット5度/[111]、180度
S97A: ミスカットなし
S97B: ミスカット5度/[110]、90度
S97C: ミスカット5度/[111]、90度
S97D: ミスカット5度/[111]、180度
これらのサンプルの比較可能性を最大にするために、相異なる4つの基板が、MBEチャンバーの中で互いに隣接するように置かれた。従って、全ての成長条件は全てのサンプルについて同じである。成長の後に、およそ3×3mmの正方形をした大きさの小片が切断され、また、T=4.2Kでの一連の測定がそれらの全てについて行われた。答えるべき質問は、サンプルがそれらの磁化反転作用および磁気異方性の点でどのように異なっているのか、ということであった。SQUID信号における二段階切り換えの可視性を最大にするために、サンプルは、サンプルの[110]方向から約15度の角度でSQUID(従って外部磁界)の測定方向に配向された。SQUID測定の結果は、全てのサンプルが異なった磁化反転を呈することである。全てのサンプルは、二段階あるいは少なくとも複数段階の反転の兆候を示している。サンプルからサンプルまで、これらのステップは多かれ少なかれ顕著であり、最も顕著でないのはサンプルS97AおよびS97Bである。図25に認められたように、S97CおよびS97Dは、より豊富でより強い特徴を示している。被覆用(Ga,Mn)As上側層の磁気反転におけるミスカットの正確な役割は、これらの予備的測定だけからはまだ決定することができないが、ミスカットが(Ga,Mn)Asの磁気異方性を顕著に変化させることは明らかである。
以下のことは、Au/AlOx/(Ga,Mn)Asおよび(Ga,Mn)As/GaAs/(Ga,Mn)Asサンプルと、下にあるGaAs緩衝層の成長細目とに関係がある。MBE成長ずみ強磁性層の異方性は、下にある層の細目によって調整することができる。本発明者は、本発明者の全ての(Ga,Mn)As基TAMRサンプルにおける緩衝層成長の特定方法を使用している。この緩衝層は2層であって、その第1緩衝層は高温GaAsから構成されており、その第2層は低温GaAsの薄い層である。
成長を開始させる前に、GaAs基板は630℃に10分間、加熱される。この基板の温度が400℃を超えるとすぐに、小さいAsフラックスが添加される。その後、基板の温度が620℃までわずかに下げられ、Gaフラックスが添加される。これによって、高温緩衝層の成長が開始される。300nmの厚さでは、基板は270℃へ向かって冷却され、それが570℃を下回るとすぐに、Asフラックスはゼロにされて、緩衝層の成長が停止される。この時点では、表面再構成は2×4である。温度はさらに下げられて、それが270℃に到達すると、それは15分間、保持される。その後、AsおよびGaの両元素供給源のシャッターが30秒間、開けられる。その後、主シャッターが10秒間、開けられて、低温GaAs緩衝層が成長される。低温GaAs緩衝層の表面再構成は1×1である。1nmの目標最終厚さになるとすぐに、Mnフラックスが添加されて、第1機能的強磁性層の成長が開始する。
下にある高温GaAs緩衝層のダングリングボンドの対称性を減少させて、上における機能的(Ga,Mn)As層に影響を及ぼし続けるために、極めて薄い低温GaAs緩衝層を使用することは、厳しいかもしれない。
この効果の背後にある構想は、大部分の材料が、その表面での原子の位置と同様に、面内4重対称性を有する一方で、ダングリングボンドの表面再構成が対称性を減少させ、従って、動的成長プロセスの間にその層の対称性が低下する、という事実を利用するためのものである。
上記プロセスによって半導体デバイスを創り出すことは可能であり、ここでは、3つ以上の磁性層が例えばこの方法の繰り返しによって設けられている。このような複数の磁性層によれば、効果を増幅し、かつ/または、複合的な抵抗水準システムを創り出すことができる。
1つ以上の磁性層に異方性を創り出すための複数の方法が存在している。好ましい方法のいくつかは次のとおりである。そのような異方性は、1つ以上の磁性層の組立ステップにおけるアニーリングステップによって作ることができる。1つ以上の磁性層における異方性は、圧電効果および/または磁気歪効果および/または表面効果によって、作りかつ/または調整することができる。これらの効果は互いに独立して利用することができ、あるいは、それらは一連の組立ステップにおいて組み合わせることができる。
1つ以上の強磁性電極における異方性は、冷間圧延ステップによって、または、代わりにあるいは付加的に、層成長の間において磁界を印加することによって、作ることができる。
上記説明に従って設けられたスピンバルブ構造は、磁性合金で製造された1つ以上の磁性層からなっていてもよい。そのような磁性層はCoFePt薄膜からなっていてもよい。
1つ以上の磁性層が磁性金属多層積層体からなっているスピンバルブ構造を設けることは意図されている。そのような積層体は一組のCoFe薄膜およびPt薄膜からなっていてもよい。
異なったスピンバルブ構造は、LaxSr1−xMnO(LSMO)のある1つ以上の磁性層からなっており、ここで、0≦x≦1である。
1つ以上の磁性層がCoおよびPdの多層構造からなっているスピンバルブ構造を利用することもまた好ましい。
本発明によるスピンバルブ構造の範囲内で、1つ以上の磁性層における異方性は、圧電効果および/または磁気歪効果および/または表面効果によって、作りかつ/または調整することができる。さらにまた、反強磁性層によって1つ以上の磁性層に異方性を作りかつ/またはそれを調整することもできる。
好ましいスピンバルブ構造の範囲内で、1つ以上の強磁性電極は磁性多層からなっている。
本発明によるスピンバルブ構造の範囲内で、1つ以上の磁性層はマグネタイトからなっていてもよい。
201 非ドープ型LT−GaAs緩衝層
202 非ドープ型GaAs
203 (Ga,Mn)As層
204 正方形メサ204
205 電気バック接点205
207 半絶縁性GaAs基板
202 非ドープ型GaAs
203 (Ga,Mn)As層
204 正方形メサ204
205 電気バック接点205
207 半絶縁性GaAs基板
Claims (37)
- 半導体材料の中で安定した部分反転磁化状態を機能的に使用する電子デバイス。
- 半導体が強磁性体であるか、あるいは、デバイスがスピンバルブである、請求項1に記載の電子デバイス。
- 側方形態が使用され、強磁性層の平面内に電流の流れが可能である、請求項1または2に記載の電子デバイス。
- 側方形態が使用され、強磁性層のパターニングによって、および/または、強磁性層の領域の空乏化によって、トンネル障壁が画定されている、請求項1または2に記載の電子デバイス。
- トンネル障壁が取り付けられた単一の強磁性層と非磁性金属接点とを備えるスピンバルブ構造。
- 側方形態が使用され、強磁性層の平面内に電流の流れが可能である、請求項5に記載のスピンバルブ構造。
- 側方形態が使用され、強磁性層のパターニングによって、および/または、強磁性層の領域の空乏化によって、トンネル障壁が画定されている、請求項5に記載のスピンバルブ構造。
- 磁気異方性および輸送異方性の独立した最適化が選択されることを特徴とする、請求項5に記載のスピンバルブ構造。
- 安定した部分反転磁化状態およびそれに依存する効果が、依存性のものであり、電子デバイスの内部におけるトンネル障壁あるいは他の対応構造に関する磁界の強度および方位を考慮することによって最適化することができることを特徴とする、請求項5〜8の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 安定した部分反転磁化状態およびそれに依存する効果が、依存性のものであり、実用温度の選択によって最適化することができることを特徴とする、請求項3〜9の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 構造が、回転磁界において所定の閾値の大きさを越えるプログラム可能であることを特徴とする、請求項1〜10の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 構造が、絶対磁界方向に対して高感度であることを特徴とする、請求項1〜11の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 強磁性層が、本質的に半導体強磁性体、または金属強磁性体かあるいは強磁性酸化物のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜12の一項に記載のスピンバルブ構造。
- スピンバルブ構造の磁化状態は、特定の閾値を超える電流を利用することで変化させることができることを特徴とする、請求項1〜13の一項に記載のスピンバルブ構造。
- スピンバルブ構造における抵抗効果の振幅は、エピタキシャル障壁および第2強磁性層の一方または双方の使用によって増大させることができることを特徴とする、請求項1〜14の一項に記載のスピンバルブ構造。
- デバイスが、3つ以上のはっきりした抵抗状態を有してもよいことを特徴とする、請求項1〜15の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 3つ以上のはっきりした抵抗状態を作るために2つの強磁性層の非平行配向が利用されることを特徴とする、請求項1〜16の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層が、磁性合金、例えばCoFePt膜を備えることを特徴とする、請求項1〜17の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層が、磁性金属多層積層体、例えば一組のCoFe薄膜およびPt薄膜を備えることを特徴とする、請求項1〜18の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層が、LaxSr1−xMnO(LSMO)を備え、ここで、0<=x<=1であることを特徴とする、請求項1〜19の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層が、CoおよびPdの多層構造を備えることを特徴とする、請求項1〜20の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層における異方性が、圧電効果および/または磁気歪効果および/または表面効果によって作られかつ/または調整される、請求項1〜21の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層における異方性が、反強磁性層によって作られおよび/または調整される、請求項1〜22の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の強磁性電極が、磁性多層を備える、請求項1〜23の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 1つ以上の磁性層が、マグネタイトを備える、請求項1〜24の一項に記載のスピンバルブ構造。
- 基板を設けるステップ、この基板の上に強磁性層を成長させるステップ、この強磁性層の上にトンネル障壁層を成長させるステップ、その強磁性層の上に第1非磁性金属接点を設けるステップおよびその強磁性層について第2非磁性金属接点を設けるステップを備える、スピンバルブ構造を製造する方法。
- 強磁性層について第2非磁性金属接点を設けるステップが、強磁性層の上にトンネル障壁層および第1非磁性金属接点を部分的に成長させるだけか、あるいは、基板に対向する強磁性層の自由表面を取得するためにトンネル障壁層および第1非磁性金属接点の一部をエッチング除去し、その強磁性層における前記自由表面の一部に第2非磁性金属接点を設けるかのいずれかを備える、請求項26に記載の方法。
- エピタキシャル障壁および第2強磁性層の一方あるいは双方は、スピンバルブ構造における抵抗効果の振幅がエピタキシャル障壁および第2強磁性層の一方あるいは双方の使用によって増大することができるように、付加的に設けられる、請求項26に記載の方法。
- 1つ以上の磁性層における異方性が、アニーリングステップによって作られる、請求項26に記載の方法。
- 1つ以上の磁性層における異方性が、圧電効果および/または磁気歪効果および/または表面効果によって作られかつ/または調整される、請求項26に記載の方法。
- 1つ以上の強磁性電極における異方性が、冷間圧延ステップによって作られる、請求項26に記載の方法。
- 1つ以上の強磁性電極における異方性が、層成長の間における磁界の印加によって作られる、請求項26に記載の方法。
- 基板と基板の上における強磁性層とを備え、その強磁性層の第1表面部分にトンネル障壁層が設けられ、このトンネル障壁層は第1非磁性金属接点を有し、その強磁性層の第2表面部分に第2非磁性金属接点が設けられている、請求項26によって製造された半導体デバイス。
- 第1表面部分は中央部分であり、第2表面部分は周囲部分である、請求項28に記載の半導体デバイス。
- その効果を増幅し、かつ/または、複合的な抵抗水準システムを創り出すために、3つ以上の磁性層が使用される、請求項26に記載の半導体デバイス。
- 強磁性層の磁気異方性および輸送異方性の独立した最適化および/または磁化反転のプロセスが、下にある層の表面再構成、表面対称性、または格子定数によって、あるいはそれらの組み合わせによって、かつ/または、下にある基板の結晶方位ずれによって調整される、請求項5に記載のスピンバルブ構造および請求項26に記載のスピンバルブ構造を製造する方法。
- 強磁性層の磁気異方性および輸送異方性の独立した最適化および/または磁化反転のプロセスが、強磁性層の上面における層によって調整される、請求項5に記載のスピンバルブ構造または請求項9に記載の方法。
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