JP2000079469A - 溶接方法及び溶接装置 - Google Patents

溶接方法及び溶接装置

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JP2000079469A
JP2000079469A JP10248782A JP24878298A JP2000079469A JP 2000079469 A JP2000079469 A JP 2000079469A JP 10248782 A JP10248782 A JP 10248782A JP 24878298 A JP24878298 A JP 24878298A JP 2000079469 A JP2000079469 A JP 2000079469A
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welding
magnetic field
arc
molten pool
generating means
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JP10248782A
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English (en)
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Yukio Manabe
幸男 真鍋
Satoru Zenitani
哲 銭谷
Nobumi Hiromoto
悦己 広本
Yasuyuki Kobayashi
泰幸 小林
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接欠陥等を生じさせることなく、かつ高能
率な溶接が可能となる溶接方法、及び当該溶接方法を実
現するに好適な溶接装置を提供する。 【解決手段】 本発明に係る溶接装置は、被溶接材6に
対向してアーク3を発生させ溶融池4を形成するアーク
発生手段(1、2、7)と、磁場発生手段10とから概
略構成されている。磁場発生手段10は、図示しないコ
イル部材と、パイプ状柱体の長手方向に二分割した形態
とされた鉄芯10bとにより構成されている。すなわ
ち、鉄芯10bはコイル部材軸線を含む平面に対して非
対称に配置されている。本発明の溶接方法によれば、こ
の非対称な鉄芯10bにより、その強度が空間的に偏差
された「偏在した磁場」をアーク3又は溶融池4に付与
して、当該アーク3又は溶融池4に対してローレンツ力
F1を作用させ、開先60から溶融金属が落下すること
等のないように溶接が進行する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重力の影響により
溶融池に変形が生じるおそれがある溶接方法に関するも
のである。また、重力の影響は考慮しなくてもよいが溶
融池を積極的に変形させて、接合等をより有効に実施し
ようとする溶接方法に関するものである。さらに、本発
明は上記溶接方法を好適に実現する溶接装置にも関す
る。
【0002】
【従来の技術】溶接技術は、現今、煙突、橋梁、船舶、
圧力容器等の大型鋼構造物の製作、またその他一般的
に、鉄鋼材料、非鉄材料等の金属間接合が必要となる数
多くの場面において、必須の技術となっている。これに
伴い、工場、建設現地等にて使用される溶接技術として
は、MAG溶接、MIG溶接、TIG溶接、サブマージ
ドアーク溶接(SAW)、エレクトロガスアーク溶接等
が日常的に、またレーザ溶接、電子ビーム溶接(EB
W)等の特殊溶接技術も主に工場内において広範に、実
施されるようになっている。
【0003】ところで、上記した大型鋼構造物の製作
時、特に据え付け現地での作業時等には、その反転等を
容易に行うことができないため、通常、様々な姿勢によ
る溶接を実施することが不可欠となる。ここで「様々な
姿勢による溶接」とは、突き合わせ溶接の場合を考える
と、標準的な下向き溶接をはじめとして、横向き溶接、
上向き溶接、又は立向き溶接等の各種溶接姿勢のことを
指す。特に、後三者は、溶融池が重力の影響を受けて開
先等よりたれ落ちる等して溶接部に欠陥をもたらしやす
いため、これらは総じて一般に「難姿勢溶接」等と呼ば
れており、厳しい溶接施工条件であることが知られてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この難姿勢溶接を実施
する際には、上述したように重力の影響を常に考慮に入
れた施工を行わなければならない。例えば、横向き姿勢
によるエレクトロガスアーク溶接を考えた場合、図8に
示すように、溶融金属(溶融池)に働く重力の影響によ
り、当該溶融金属が開先60下方にて先行する部分Uが
生じ、また図9断面図から明らかなように、開先60の
上方においてはアンダーカット61、同下方においては
オーバラップ62等が生じるおそれが極めて大きい。こ
れらの溶接不良が発生すると、図9に示すように、開先
60下方においては融合不良63が生じ易くなる(先行
部分Uの存在によりアークからの十分な入熱が成されな
いため)等、もはや正常なビードとはならないことにな
る。
【0005】また、MAG溶接、TIG溶接等、一般
に、多層溶接の実施を想定可能な溶接方法にあっては、
ある一の層の溶接において上記アンダーカット61、オ
ーバラップ62等が生じることによって、次層の溶接を
行う際に融合不良等の溶接欠陥が発生する蓋然性が高ま
ることになる。なお、このような事態は、上向き、立向
き溶接においても同様に発生することは容易に想像がつ
き、これらの姿勢による溶接にあっても、やはり溶接欠
陥を招きやすいということがいえる。
【0006】このため従来までにおいては、上記難姿勢
溶接の実施は、高度の熟練を有した溶接工による半自動
溶接あるいは手溶接に頼るものとなっていた。しかし、
このような難姿勢溶接、特に上向き溶接においては、溶
接工に対しても不自然な作業姿勢を保つことを強制させ
るものであるから、一般に苦痛な作業となることが往々
にしてあり、可能な限り自動化されることが望まれてい
るものである。
【0007】しかし、これらの溶接を自動溶接化するに
際しても、上述した熟練工が行うのと同様な機能を持た
せるためには、例えば、複雑なウィービング機構、微妙
な入熱制御等が必要となる。さらに、これでも自動化実
現には足りないため、勢い安全かつ確実な低入熱溶接を
行うこととなり、結果極めて低能率な施工しか実現する
ことができなかった。すなわち、これらの作業を自動化
した場合には、高能率な溶接を行うことが殆ど不可能で
あった。
【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、溶接欠陥等を生じさせる
ことなく、かつ高能率な溶接が可能となる溶接方法、及
び当該溶接方法を実現するに好適な溶接装置を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために以下の手段をとった。すなわち、請求項
1記載の溶接方法は、被溶接材に対向してエネルギ束を
発生させ溶融池を形成し、前記エネルギ束又は前記溶融
池に対して偏在した磁場を付与することを特徴とするも
のである。
【0010】これによれば、エネルギ束が、例えば、ア
ーク又は電子ビーム等、電荷を空間上輸送する性質のも
のである場合には、当該エネルギ束又は溶融池に対して
ローレンツ力が作用することになる。これは、その電荷
の運ばれる運動が一種の電流と見なされることにより、
当該電流と偏在した磁場との間の相互作用により、周知
のように電磁力が発生するためである。また、このよう
な場合において、溶融池においても溶接電流が当然流れ
ると考えられるから、当該溶融池に対しても電磁力、す
なわちローレンツ力が作用することになる。なお、前記
磁場が「偏在」しているといことの意義については、後
述する実施形態において詳しく説明することとする。
【0011】また、請求項2記載の溶接方法は、前記溶
融池において所定の方向に整流された電流を流すことを
特徴とする。
【0012】これによれば、ローレンツ力が電場と磁場
の外積として定義されることを鑑みた場合に、電流があ
る所定の方向に整流されていると言うことは、当該ロー
レンツ力の作用方向をある一定の方向に規定することが
可能となることを意味する。
【0013】また、請求項3記載の溶接方法は、前記被
溶接材に対向して発生させる前記エネルギ束の方向が、
横向き、上向き、又は立向きであるとともに、前記磁場
の付与する方向を、前記溶融池に働く重力と反対方向の
ローレンツ力が作用するように規定することを特徴とす
るものである。
【0014】これによれば、いわゆる難姿勢溶接といわ
れる横向き、上向き、又は立向き姿勢に係る溶接施工に
際して、エネルギ束の下に形成される溶融池には重力と
反対方向のローレンツ力が作用することにより、溶融金
属が自重により落下するような事態等を回避することが
可能となる。つまり、溶融池に働く重力に対して、ロー
レンツ力がちょうど釣り合うか又はやや勝るような状態
で溶接を施工すれば、アンダーカットやオーバラップ等
の溶接不良の発生を回避することが可能となる。
【0015】また、請求項4記載の溶接方法は、前記被
溶接材に対向して発生させる前記エネルギ束の方向が下
向きであるとともに、前記磁場の付与する方向を、前記
被溶接材の面上において水平方向のローレンツ力が作用
するように規定することを特徴とするものである。
【0016】これによれば、前記請求項3に係る作用と
同様、溶融池(又はエネルギ束)に対してローレンツ力
が作用することとなる。ただし、この場合においては、
溶融池における重力の影響を考慮する必要はないが、何
らかの事情により溶融金属を水平方向におけるいずれか
の方向に偏らせたい場合に有効な溶接方法であることが
わかる。なお、「何らかの事情」とは、例えば、肉盛溶
接において溶接金属をある所定の位置に厚く盛りたい場
合であるとか、また、隅肉溶接時において、その角部と
なる溶接箇所に溶融金属を均等に付与する姿勢(この場
合は、作業員又は自動溶接装置等の姿勢)をとることが
困難な場合等を挙げることができる。
【0017】また、請求項5記載の溶接方法は、前記エ
ネルギ束とはアークであることを特徴とするものであ
る。
【0018】これによれば、アーク又は溶融池に対し
て、偏在した磁場が付与されることになるから、当該ア
ーク又は溶融池に対してローレンツ力が作用することに
なる。これは、前記アークとは、絶縁空間が破壊されて
電子が輸送されている空間(放電空間)であるとみなせ
ることから、これが電子の流れ、すなわち電流とみなさ
れることによるものである。また、上述同様、溶融池に
おいて溶接電流は当然流れることになるから、当該溶融
池に対しても電磁力、すなわちローレンツ力が作用する
ことになる。以上をふまえた上で、本発明は、アークを
利用した溶接にあって、請求項1から4に記載された作
用を享受することが可能となるものである。
【0019】また、請求項6記載の溶接装置は、被溶接
材に対向してエネルギ束を発生させ溶融池を形成するエ
ネルギ束発生手段と、前記溶融池又は前記エネルギ束に
おいて偏在した磁場を付与する磁場発生手段とを備えて
いることを特徴とするものである。
【0020】この溶接装置は、前記各種の溶接方法を実
施するに際して好適な構成となるものであるといえる。
【0021】また、請求項7記載の溶接装置は、前記磁
場発生手段が、コイル部材と、該コイル部材内部に配設
されるとともに同コイル部材軸線を含む平面に対して非
対称な形態となる鉄芯とを少なくとも有することを特徴
とする。
【0022】これによれば、「偏在した磁場」を形成す
るに際し、好適な磁場発生手段の構成であるといえる。
例えば、上に記した「鉄芯」が、コイル部材軸線を含む
平面を基準として、その半分の空間のみに底面が半円と
なる柱体状形態となる鉄芯であると仮定すれば、この磁
場発生手段は、コイル部材に通電することにより発生す
る磁場において、その半円柱体状の鉄芯が存在する側に
おいて強となり、それが存在しない側が弱となること
で、全体として「偏在した磁場」を発生させることが可
能となる。
【0023】また、請求項8記載の溶接装置は、前記エ
ネルギ束発生手段が、前記被溶接材に対向してアークを
発生させ溶融池を形成するアーク発生手段であることを
特徴とする。
【0024】この溶接装置は、特にアークを利用する溶
接方法を実施するに際して、好適な構成となるものであ
るといえる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下では、本発明の第一の実施形
態について、図を参照して説明する。図1は、本第一実
施形態に係る溶接装置の構成を示す説明図である。な
お、本第一実施形態においては、溶接形態として、横向
き姿勢となるエレクトロガスアーク溶接を例に挙げて説
明することとする。ただし、本発明はエレクトロガスア
ーク溶接の他、TIG溶接、MAG溶接等の別形態とな
る溶接法に適用可能なことは当然である。このことにつ
いては、後に説明することとする。
【0026】図1において、被溶接材6は、その表面上
で定義される法線の方向を、水平方向に一致させた姿勢
となっている。溶接トーチ1から突出した溶接ワイヤ2
は、溶接電源7のプラス側に、また、被溶接材6は同溶
接電源7のマイナス側にそれぞれ接続されている。そし
て、前記溶接ワイヤ2は、前記被溶接材6に形成された
開先60内に位置するようにされている。この状態で溶
接電源7を通電させることによって、開先60内にアー
ク(エネルギ束)3が発生し、当該アーク3の熱により
開先60の両側面、また既に形成され被溶接材6の一部
と化したビード65を溶融することにより溶融池4を形
成することになる。また溶接トーチ1は、図1中矢印A
1に示すように、開先60の長手方向に次第に移動して
いくことで、開先60全長にわたってビード65を連続
的に形成していくようになっている。なお、前記溶接ト
ーチ1、溶接ワイヤ2、及び溶接電源7は、本第一実施
形態におけるアーク発生手段にあたるものである。ま
た、本発明におけるより広義な用語によれば、これらが
エネルギ束発生手段にあたるものである。
【0027】被溶接材60の表面及び裏面には、開先6
0を挟むようにして二枚の摺動当金5が配されている。
これは、前記溶融池4が開先60外に飛び出すことのな
いよう、「抑え」としての役割が与えられているととも
に、当該溶融池4近傍に不活性ガスを導入する場合に、
その作用を有効ならしめるため当該ガスを閉じこめる役
割等を担っている。ただし、図1においては、その不活
性ガスの供給機構等は図示されていない。また、これら
摺動当金5は、溶接トーチ1と同様に、溶接進行に伴っ
て開先60の長手方向に移動するようになっている。な
お、摺動当金5の材質としては、一般的に銅が使用され
る。
【0028】前記摺動当金5の外方には、アーク3又は
前記溶融池4に対して偏在した磁場を付与するための磁
場発生手段10が設けられている。この磁場発生手段1
0は、図2に示すように、コイル部材10aと、外コイ
ル部材内部に配設される鉄芯10b、そして添加ワイヤ
20を一体的に構成したものとなっている。コイル部材
10aはコイル用電源19に接続されており、これによ
って通電状態にされることによって磁場を発生させるも
のである。鉄芯10bは、コイル部材10aの軸線Qを
含む平面Pに対して非対称な形態となっている。より具
体的には、図2に示すように、パイプ状柱体を長手方向
に半分に分割した形態とされた鉄芯10bが、平面Pの
図中向こう側のみに配されるようになっているものであ
る。添加ワイヤ20は、前記コイル部材10aの軸線Q
にちょうど一致するように配されている。この添加ワイ
ヤ20には、溶接電源7が分流器8を介して接続され、
当該溶接電源7からの電流が分流されるようになってい
る。
【0029】なお、前記添加ワイヤ20は、溶接中にあ
っては溶融池4の後方、すなわち、アーク3が当該溶融
池4に到達する点(以下、アーク点と略す)から離れた
地点に挿入されるようになっている。また、このような
添加ワイヤ20の溶融池4への挿入を可能とするため、
前記摺動当金5には、当該添加ワイヤ20を貫通させる
ための挿入孔5aが、上記条件を満たす適当な位置に形
成されている。
【0030】このような形態となる磁場発生手段10に
あっては、コイル部材10aから発生する磁場を、鉄芯
10bによって偏在した状態、すなわちその強度を空間
位置に関して偏差をもたせた状態とすることが可能とな
っている。つまり、図2においては、鉄芯10bが存在
する平面Pの図中向こう側においては磁場は強くなり、
またその反対側においては磁場が弱くなることになる。
さらに、添加ワイヤ20の存在によって、溶接ワイヤ
2、アーク3、溶融池4と流れる電流が、添加ワイヤ2
0を一電極として介することで溶接電源7へと帰還する
一つの閉回路を想定することができる。すなわち、この
場合、溶融池4における電流は、アーク点から添加ワイ
ヤ20の溶融池4における挿入点へと流れる整流された
電流となることになる。
【0031】以下では、上記構成となる溶接装置におけ
る作用及び効果を説明することとする。溶接が進行する
に際して、アーク点の下に形成される溶融池4には、常
に重力が働いている。図1に示すような横向き姿勢の溶
接においては、先に説明したように、開先60の上方に
てアンダーカット61、同下方にてオーバラップ62
(図9参照)等が生じやすい状態にある。しかるに、本
第一実施形態における溶接装置においては、磁場発生手
段10により形成された磁場及び溶融池4における前記
整流された電流の相互作用により、溶融池4にはローレ
ンツ力が働くようになっている。より具体的には、図3
に示すように、磁場B1が被溶接材6の表面から裏面へ
突き抜けるように付与されるとともに、電流Iがアーク
点3pから添加ワイヤ20の溶融池4における挿入点2
0pに対して流れる、という両者の関係から、ローレン
ツ力F1は、フレミングの左手の法則により図中上方に
向く力として溶融池4に対して作用することになる。つ
まり、このローレンツ力F1は、溶融池4に働く重力と
反対方向に作用することになる。
【0032】このローレンツ力F1の大きさが、溶融池
4に作用する重力の大きさとちょうど釣り合うか又はや
や勝るようであれば、当該溶融池4を上方に引き上げる
ことが可能となる。この場合、図8で説明したような開
先60下方における先行部分Uや、図9に示したアンダ
ーカット61、オーバラップ62等の溶接不良が発生す
ることがなくなる。したがって、本第一実施形態に係る
溶接装置及び溶接方法を使用すれば、融合不良63(図
9参照)等の溶接欠陥を招くことがなく、正常なビード
65を開先60の全長に渡って形成することができる。
【0033】また、上記ローレンツ力F1の発生源の一
つである電流Iは、上述したようにアーク点3pから添
加ワイヤ20の挿入点20pへと流れる整流された電流
とされていた。このことは、ローレンツ力F1の作用方
向を、上記のように開先60上方向に確実に規定するこ
とを可能とするものである。換言すれば、電流Iの方向
を規定することにより、この電流Iと磁場B1との外積
として規定されるローレンツ力F1の作用方向を、溶接
中において一定に保持することを可能ならしめるもので
あり、上の場合においては溶融池4を引き上げるという
作用及びそれに基づく効果を常に安定した状態で享受で
きることとなる。
【0034】ところで、開先60内に存在する電流は、
上記電流Iに係るものだけではない。代表的には、図4
に示すように、アーク3そのものを電流とみなしたとき
の、その電流Iaの存在がある。やや詳しく言えば、ア
ーク3とは、そもそも絶縁空間が破壊され電子が輸送さ
れている空間であると考えられるから、結局、それは電
流Iaが存在していると見なせることとなるものであ
る。
【0035】このように開先60内において形態の異な
る電流(I、Ia)の存在を仮定すると、前記磁場発生
手段10において、付与する磁場を鉄芯10bの構成に
より「偏在した」状態とすることには、次に示すような
意義が生じることになる。つまり、図1に示すように、
前記鉄芯10bを溶融池4に対向するように、また、鉄
芯10bが存在しない残りの半平面(平面Pに対して、
上記説明参照)はアーク3に対向するようにすれば、溶
融池4に対しては前記した磁場B1(以下、強磁場B
1)が、アーク3に対しては強磁場B1よりも弱い磁場
B2(以下、弱磁場B2)がそれぞれ付与されることに
なる。なお、強磁場B1、弱磁場B2の方向は、図4に
示すように、双方とも被溶接材6の表面から裏面へと抜
ける方向である。
【0036】ところで、今想定している横向き姿勢とな
るエレクトロガスアーク溶接にあっては、仮にアーク3
に対して上向きのローレンツ力が作用することとなると
当該アーク3が上方に偏向されることになるが、これは
好ましい状況といえるものではない。というのは、アー
ク3が上方へ偏向されれば、当該アーク3の圧力が開先
60上方にかかることとなり、図8で説明した溶融池4
における先行部分Uの張り出しをより大きくしてしまう
可能性があるからである。しかるに、上記したように選
択的な磁場付与を行えば、強磁場B1によっては、上述
した溶融池4を引き上げる比較的強力なローレンツ力F
1を作用させることが可能であるのに対し、アーク3に
対しては比較的弱いローレンツ力F2のみが働くことに
なる。したがって、アーク3の引き上げ作用を抑えるこ
とが可能となり、総合的に良好なビード65の形成を実
現することができることになる。
【0037】また、このような「偏在した磁場」を付与
することの意義としては、次のような例を挙げることも
できる。すなわち、図5に示すように、図4とは強弱の
関係が逆となるような磁場B3、B4をかけるようにす
る場合を考える。この場合、アーク3に対して強磁場B
3が、また溶融池4に対して弱磁場B4が付与されるこ
とになる。ただし、この場合においては、それぞれの磁
場B3、B4の方向は、被溶接材6の裏面から表面へと
抜ける方向に規定されている。これらの状況を実現する
ためには、鉄芯10bの位置を平面Pに対して先の例と
は反対にし、かつコイル部材10aに流す電流の向きを
変えれば容易に達成されることは明らかである。
【0038】このようにすると、アーク3には、電流I
a及び強磁場B3の相互作用により比較的強力な下向き
のローレンツ力F3が作用することになる。したがっ
て、アーク3は下方に偏向されることになり、上述した
のと逆の作用、すなわちアーク3圧力が、溶融池4にお
ける先行部分Uの張り出しを抑止するような力として働
く作用を得ることになるから、アンダーカット61を発
生させるようなことがなくなる。また、アーク3による
入熱が開先60下方に直接的になされることになるの
で、融合不良63を発生させるようなこともない。結
局、このような手段によっても、総合的に良好なビード
65の形成を実現することができることになる。
【0039】要すれば、磁場発生手段10は、ある限定
された領域に流れる電流に対して選択的に磁場を付与す
ることを可能とするものであり、かつこのように「偏在
した磁場」が付与された当該領域において、所定の方向
にローレンツ力を働かせるよう企図することが可能とな
る。その結果溶接欠陥のない良好なビードを形成するこ
とができるという大きな意義、あるいは効果を享受する
ことができるものである。
【0040】また、本第一実施形態においては、磁場発
生手段10内に添加ワイヤ20が一体的に構成されてい
た。この添加ワイヤ20には、先に説明したように、溶
接電源7が接続されており溶接電流が分流されるように
なっている。したがって、添加ワイヤ20はジュール加
熱されることになり、溶着量を増大させることが可能と
なる。すなわち、本第一実施形態における溶接装置は、
溶接能率の向上が図られたものとなっている、というこ
とができる。
【0041】なお、添加ワイヤ20に関しては、本発明
の趣旨に鑑みて次の事項を補足しておく。添加ワイヤ2
0は、上述したように、溶融池4内における電流を整流
する作用と、すぐ上で述べたように溶着量を増大させる
作用とを発揮するよう備えられているものである。ここ
で前者の作用に注目すると、本発明は、添加ワイヤ20
を設けることを必ずしも強制するものではない。すなわ
ち、図1、図3、又は図4に示す溶接の状況をみるとわ
かるように、溶接トーチ1の進行する方向には当然の如
くビード65は形成されておらず、後方部分のみが開先
60を接合した状況となっている。このことはつまり、
後方部分は導電性があるが、これより前方部分は絶縁的
であることを意味する。したがって、アーク3点からの
電流は、自発的に後方に、すなわち既に形成されたビー
ド65の方へと流れることになる。したがって、このよ
うな場合においては、電流整流作用は自発的に達成され
ることになるから、添加ワイヤ20を特別に設ける必要
はないことになる。より言えば、前記自発的な電流整流
作用が存在する限り、ローレンツ力を所定の方向に作用
させることが可能であるから、添加ワイヤ20を特に設
ける必要はない。ただし、添加ワイヤ20に係る前記し
た後者の作用、すなわち溶着量増大作用に特に関心を寄
せる場合、また、ビード65の特性改善のために何らか
の特別な成分を添加ワイヤ20によって添加する場合
等、他の事情がある場合に添加ワイヤ20を設けようと
することに対して、本発明はこれをも妨げようとするも
のでないことは言うまでもない。
【0042】以下では、本発明の第二の実施形態につい
て図を参照して説明する。図6は、本第二実施形態に係
る溶接装置の構成を示す説明図である。この第二実施形
態においては、溶接形態として、上向き姿勢となるTI
G溶接を例に挙げて説明することとする。なお、前記第
一実施形態において参照した図面に使用された符号であ
って、本第二実施形態において参照する図面において同
一内容の対象を指示する場合においては、同一の符号を
使用して説明することとする。
【0043】図6において、被溶接材6は、その表面上
で定義される法線の方向を、鉛直下向きに向けた姿勢と
なっている。溶接トーチ1から突出した非消耗電極2´
は、この表面に対向するように、かつ開先60内に位置
するように配されている。非消耗電極2´は、前記溶接
ワイヤ2と同様、アーク3を発生させる際の一電極とな
るものであるが、この場合においてはそれ自身が溶融し
て充填金属になることはない。ちなみに、これはTIG
溶接の特徴の一つであって周知の事実である。
【0044】その他の構成又はこれらの構成により達成
される作用は、上記第一実施形態において説明した場合
と概ね同様である。すなわち、非消耗電極2´の先端か
ら発したアーク3が、開先60の両側面及び既に形成さ
れたビード65を溶融することにより溶融池4を形成す
ること、また溶接トーチ1が開先60の長手方向に次第
に移動していくことで、ビード65を当該開先60の全
長に渡って形成していくこと、また溶接トーチ1、非消
耗電極2´、及び溶接電源7がアーク発生手段あるいは
エネルギ束発生手段にあたること等は、図1に示す場合
と同様である。
【0045】磁場発生手段11は、被溶接材6の裏面に
設けられている。これは、図6に示すように、門型形態
となる永久磁石であり、そのN極、S極が開先60を跨
ぐように配置されているものである。また、この磁場発
生手段11は、溶接トーチ1の開先60長手方向に沿っ
た動きに対応して、同方向に動作するようになってい
る。これらのことから、アーク3又は溶融池4に対し
て、磁場発生手段11により付与される磁場B5は、開
先60両側面を貫く方向に、言い換えれば被溶接材6の
表面に平行な方向に、存在することとなる。なお、ここ
では永久磁石を用いた形態について説明したが、これを
第一実施形態にて説明したような電磁石形態となるもの
に置換しても全く問題はない。本第二実施形態において
は、この磁場発生手段11の形態、大きさ、また移動態
様によって、アーク3又は溶融池4に対して「偏在した
磁場」を付与するよう構成されているものである。
【0046】添加ワイヤ21は、前記非消耗電極2´を
開先60長手方向において両側から挟むような位置に二
本配されている。また、これら二本の添加ワイヤ21
は、ワイヤ通電用電源22に接続されている。したがっ
て、この場合においては、前記第一実施形態とは異な
り、溶融池4内に流れる電流Iは、二本の添加ワイヤ2
1を両電極としてこれらの間を流れることにより、整流
されるようになっている。さらに、二本の添加ワイヤ2
1におけるその一の添加ワイヤ21に対しては、溶接電
源7が分流器8を介して接続されている。
【0047】以上のような構成となる溶接装置において
は、上記第一実施形態と同様な作用及び効果が得られる
ことが明らかに推測できる。ただし、本第二実施形態で
は、溶融池4に対して作用するローレンツ力F5は、図
6に示すように鉛直上向きとなる(なおこのことは、当
該ローレンツ力F5が溶融池4に働く重力と反対方向に
作用するという点においては前記第一実施形態と同様で
あるので、この点において両者に差異があることを意味
しない)。これは、電流Iが図6において左から右へと
流れることと、磁場B5が同図中、紙面表面から同裏面
へと貫くような方向に規定されていることによるもので
ある。溶融池4は、この上向きに作用するローレンツ力
F5によって、開先60の底部に押さえつけられるよう
な形となる。
【0048】したがって、上記溶接装置及び溶接方法に
おいては、重力の影響を受けて落下しようとする溶融池
4を開先60内に有効に留まらせることが可能となって
おり、結果、ビード形成時にアンダーカット、オーバラ
ップ等の溶接不良を発生させることがない。また、図6
においては、初層の施工完了後、多層溶接が実施される
ことになるが、この際、上述したように前層において溶
接不良が発生しないのであるから、当該前層と次層との
間に融合不良等の溶接欠陥を発生させることもない。結
局、本第二実施形態における溶接装置及び溶接方法によ
っても、正常なビード65を、開先60全長に渡って形
成することができる。
【0049】以下では、本発明の第三の実施形態につい
て図を参照して説明する。図7は、本第三実施形態に係
る溶接装置の構成を示す説明図である。この第三実施形
態においては、溶接形態として、下向き姿勢となるMA
G溶接を例に挙げて説明することとする。また、この場
合における溶接は、開先を備えた突き合わせ溶接ではな
く、いわゆる肉盛溶接を想定したものについて説明する
こととする。
【0050】図7において、被溶接材6は、その表面上
で定義される法線の方向を、鉛直上向きに向けた姿勢と
なっている。溶接トーチ1から突出した溶接ワイヤ2
は、この表面に対向するように配されている。その他の
構成又はこれらの構成により達成される作用等は、上記
第一実施形態又は第二実施形態における場合と概ね同様
であるので、その説明を省略することとする。また、溶
接電源7、コイル用電源19等の構成も図1あるいは図
6と同様である。図7においてはそれらの図示を省略し
た。
【0051】この溶接装置においては、図7の矢印A3
に示すように、溶接トーチ1は図面向こう側から手前側
に移動するようになっている。また、図7は、被溶接材
6表面に対する肉盛溶接を、図中右側から左側へと順に
行っている様子を示しているものである。つまり、右側
から順により以前に形成されたビード65a、65b、
…、65nとなっており、これらビードが被溶接材6表
面全面を覆ったときに溶接施工が完了する。
【0052】磁場発生手段10は、前記第一実施形態と
同様な構成を備えたものとなっている。またその配置
は、図7に示すように、被溶接材6表面に平行とされて
おり、磁場B6は、図7中に示すように図面手前側から
同奥側へと付与されるようになっている。なお、この磁
場B6は、鉄芯10bの位置が平面Pに対して上半面と
されていることに対応して、主にアーク3に対して付与
されるようになっている。さらに、この磁場発生手段1
0は、溶接進行に伴う溶接トーチ1に動作に対応して、
同様に移動するようになっているものである。
【0053】このような構成となる溶接装置において
は、ローレンツ力F6がアーク3に対して作用すること
となるとともに、その向きは、図7に示すように、被溶
接材6表面上において水平方向に図中右側を向くものと
なる。したがって、この場合においては、既に溶接施工
を終えたビードラインの存在する方向に、現に溶接施工
を行っているビード上のアーク3が偏向されることにな
る。つまり、現に溶接施工を行っている際に形成されて
いる溶融池4は、その前に溶接施工されたビード上に被
さるような形となることがわかる。この作用によって、
被溶接材6表面においては、各ビード側辺部が重なり合
うような形態となり、隙間のない肉盛溶接を行うことが
可能となる。なお、このような事情は、図7中ビード断
面を示しているD部をみれば瞭然となる。
【0054】このように本第三実施形態における溶接装
置及び溶接方法にあっては、前記した第一実施形態及び
第二実施形態におけるように、溶融池4が重力の影響を
受けて開先内より落下する等の懸念はないものの、これ
ら実施形態と同様に磁場B6を付与しローレンツ力F6
を利用した溶接を実施することによって、より高品位な
溶接施工を実現することができる。なお、上記ではアー
ク3に対して磁場B6を付与する例について述べたが、
溶融池4に対して同様な磁場B6を付与する場合であっ
ても、同じ効果を享受できるものと考えられる。
【0055】以下では上記各実施形態における補足事項
について説明する。まず、上記各実施形態を通して説明
したように、本発明はどのような溶接方法あるいは溶接
形態にあっても、基本的に適用可能である。すなわち、
横向きエレクトロガスアーク溶接(第一実施形態)、上
向きTIG溶接(第二実施形態)、下向きMAG溶接
(第三実施形態)の他、いかなる姿勢(横向き、上向
き、立向き等)、いかなる形態(TIG溶接、MAG溶
接等)、またいかなる状況(突き合わせ溶接、肉盛溶
接、隅肉溶接等)となる溶接であっても、それらを組み
合わせたものに対する本発明の適用は可能である。具体
的には、例えば、上記実施形態において示されなかった
立向きTIG溶接による肉盛溶接であるとか、上向きM
AG溶接による隅肉溶接等のことを指す。さらに、本発
明は上記の他、レーザ溶接、電子ビーム溶接などにも適
用可能である。なお、この場合において、レーザ溶接で
は、そのエネルギ束すなわちレーザ光が電荷を運搬する
性質のものでないことから、磁場を付与して溶融池にロ
ーレンツ力を作用させるためには、別途電流を流すため
の電場発生手段が必要となる。
【0056】また、第一、第二実施形態においては添加
ワイヤ20、21に、溶接電源7が分流器8を介して接
続されるようになっていたが、本発明はこの形態に特に
こだわるものではない。つまり、第一実施形態における
添加ワイヤ20においては、これを何らの電源とも接続
されない完全な独立な形態とすること、また、第二実施
形態における二本の添加ワイヤ21においては、これら
がワイヤ通電用電源22のみに接続されるような形態と
すること、とそれぞれ規定してもよい。
【0057】また、第一実施形態においては、磁場発生
手段10が独立して設けられるような形態となっていた
が、これを摺動当金5と一体的な構成としてもよい。ま
た、磁場発生手段10と一体的に構成されていた添加ワ
イヤ20を、第二実施形態に示したように磁場発生手段
とは別個に設けるような形態としてももちろんよい。
【0058】また、第二実施形態における二本の添加ワ
イヤ21を、一本にするような形態も当然本発明の概念
範囲内である。加えて、第二実施形態においては、初層
溶接時等に第一実施形態において説明したのと同様な理
由、すなわち自発的な電流整流作用が期待されるときに
は、必ずしも設ける必要はない。また、電流整流作用と
いう点に着目すれば、これを特別にワイヤ形状とする必
要はなく、より単純な電極形態となる給電部、集電部
(例えば、単なる直方体等)のような形態としてもよ
い。これは第一実施形態に対してもいえることである。
【0059】また、第三実施形態において説明した下向
き姿勢の溶接例では、その一例として肉盛溶接を挙げて
説明したが、これを第一、第二実施形態のような開先6
0が形成された被溶接材6に対する溶接を実施する際に
適用可能なことはもちろんである。つまり、開先60を
備える被溶接材6に対して下向き溶接を実施する際にお
いても、何らかの事情によりアーク3又は溶融池4にロ
ーレンツ力を作用させて溶接を実施することは可能であ
る。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の溶
接方法は、エネルギ束又は溶融池に偏在した磁場を付与
することにより、当該エネルギ束(電荷を空間上輸送す
る性質のものである場合)又は溶融池においてローレン
ツ力を作用させることが可能となる。したがって、例え
ば、溶融金属が開先から落下するような懸念がある場合
には、その反対方向に当該ローレンツ力を作用させるよ
うな溶接を実施すれば、溶接不良の発生のない健全なビ
ードを形成することが可能となる。また、磁場が「偏在
し」ていることから、ある限定された領域に流れる電流
に対して選択的に磁場を付与することが可能となる。す
なわち、エネルギ束のみに働くローレンツ力、又は溶融
池のみに働くローレンツ力、のように選択的なローレン
ツ力作用を得ることが可能となり、その結果よりきめ細
かな溶接条件の調整、監視、そして実施をすることがで
きる。
【0061】また、請求項2記載の溶接方法は、前記溶
融池において所定の方向に整流された電流を流すことか
ら、前記ローレンツ力の作用方向をある一定の方向に規
定することが可能となる。したがって、前記した例、開
先から溶融金属を落下させないようなローレンツ力とい
う想定に則して言えば、その落下させない作用、そして
それに基づく効果を常に安定した状態で享受することが
できる。
【0062】また、請求項3記載の溶接方法は、溶接姿
勢が横向き、上向き、又は立向きとなる、いわゆる難姿
勢溶接であるときに、前記磁場の付与する方向を、前記
溶融池に働く重力と反対方向のローレンツ力が作用する
ような方向に規定する。したがって、これは、前記した
例すなわち開先から溶融金属を落下させない等の作用効
果を得ることができる溶接方法であるということができ
る。より具体的には、この溶接方法によれば、ビード形
成時において、アンダーカットやオーバラップ等の溶接
不良の発生を回避することができる。また、溶接形態が
TIG溶接等である場合であって、かつ多層溶接を必要
とする場合にあっては、前層における溶接時に上述した
ように溶接不良を発生させることがないから、当該前層
のビードと次層のビードとの間に溶接欠陥を発生させる
ことがない。
【0063】また、請求項4記載の溶接方法は、溶接姿
勢が下向きとなるときに、前記磁場の付与する方向を、
前記被溶接材の面上において水平方向のローレンツ力が
作用するよう規定する。これによれば、何らかの事情に
より溶融金属を水平方向におけるいずれかの方向に偏ら
せたい場合に有効な溶接方法となる。なお、「何らかの
事情」とは、上記実施形態にて詳しく説明したように肉
盛溶接時に必要となる場合、また、隅肉溶接時等を考え
ることができる。
【0064】また、請求項5記載の溶接方法は前記エネ
ルギ束とはアークであるとすることから、前記偏在した
磁場はアーク又は溶融池に対して付与されるとともに、
これらに対してローレンツ力が作用することになる。し
たがって、本発明はアークを利用した溶接、例えば、T
IG溶接、MAG溶接、MIG溶接、エレクトロガスア
ーク溶接等において、上までに記した様々な効果を享受
することができる。
【0065】さらに、請求項6記載の溶接装置は、エネ
ルギ束発生手段、磁場発生手段を備えたものであり、前
記各種の溶接方法を実施するに際して好適な構成となる
ものであるといえる。したがって、この溶接装置によれ
ば、欠陥のない良好なビードの形成を行うことができ
る。
【0066】また、請求項7記載の溶接装置は、コイル
部材と、該コイル部材内部に配設されるとともに同コイ
ル部材軸線を含む平面に対して非対称な形態となる鉄芯
とを少なくとも有することから、前記「偏在した磁場」
を形成するに際し、好適な構成となるものであるという
ことがいえる。つまり、これによれば、非対称となる鉄
芯を通る磁力線と、通らない磁力線との存在があること
によって、空間的に強度の異なる磁場を得ることができ
る。
【0067】また、請求項8記載の溶接装置は、前記エ
ネルギ束発生手段が、アーク発生手段であるとすること
から、特にアークを利用する溶接方法を実施するに際し
て、好適な構成となるものであるといえるとともに、こ
のアーク利用の溶接に関して、上記効果を享受できる溶
接装置であるということができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一の実施形態に係る溶接装置の構成を示す
説明図である。
【図2】 磁場発生手段の構成を示す一部透視化した斜
視図である。
【図3】 溶融池に働くローレンツ力作用の様子を示す
説明図である。
【図4】 アーク及び溶融池に偏在した磁場を付与した
場合におけるローレンツ力作用の様子を示す説明図であ
る。
【図5】 アークに働くローレンツ力作用の様子を示す
説明図である。
【図6】 第二の実施形態に係る溶接装置の構成及びそ
の作用を示す説明図である。
【図7】 第三の実施形態に係る溶接装置の構成及びそ
の作用を示す説明図である。
【図8】 従来の溶接方法による開先内溶融池の様子を
示す説明図である。
【図9】 従来の溶接方法により発生した溶接不良の様
子を示す開先を断面視した説明図である。
【符号の説明】
1 溶接トーチ(アーク発生手段、エネルギ束発生手
段) 2 溶接ワイヤ(アーク発生手段、エネルギ束発生手
段) 2´非消耗電極(アーク発生手段、エネルギ束発生手
段) 3 アーク(エネルギ束) 4 溶融池 6 被溶接材 7 溶接電源(アーク発生手段、エネルギ束発生手段) 10、11 磁場発生手段 10a コイル部材 10b 鉄芯 20、21 添加ワイヤ F1〜F6 ローレンツ力 B1〜B6 磁場 I、Ia 電流
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 広本 悦己 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 小林 泰幸 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 Fターム(参考) 4E081 AA02 CA08 CA09 CA11 CA17 DA19 DA21 4E082 EA01 EB13 HA03 5H410 DD02 DD06 KK08

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被溶接材に対向してエネルギ束を発生さ
    せ溶融池を形成し、前記エネルギ束又は前記溶融池に対
    して偏在した磁場を付与することを特徴とする溶接方
    法。
  2. 【請求項2】 前記溶融池において所定の方向に整流さ
    れた電流を流すことを特徴とする請求項1記載の溶接方
    法。
  3. 【請求項3】 前記被溶接材に対向して発生させる前記
    エネルギ束の方向が横向き、上向き、又は立向きである
    とともに、 前記磁場の付与する方向を、前記溶融池に働く重力と反
    対方向のローレンツ力が作用するように規定することを
    特徴とする請求項1又は2記載の溶接方法。
  4. 【請求項4】 前記被溶接材に対向して発生させる前記
    エネルギ束の方向が下向きであるとともに、 前記磁場の付与する方向を、前記被溶接材の面上におい
    て水平方向のローレンツ力が作用するように規定するこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の溶接方法。
  5. 【請求項5】 前記エネルギ束とはアークであることを
    特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の溶接方
    法。
  6. 【請求項6】 被溶接材に対向してエネルギ束を発生さ
    せ溶融池を形成するエネルギ束発生手段と、 前記溶融池又は前記エネルギ束において偏在した磁場を
    付与する磁場発生手段とを備えていることを特徴とする
    溶接装置。
  7. 【請求項7】 前記磁場発生手段は、コイル部材と、該
    コイル部材内部に配設されるとともに同コイル部材軸線
    を含む平面に対して非対称な形態となる鉄芯とを少なく
    とも有することを特徴とする請求項6記載の溶接装置。
  8. 【請求項8】 前記エネルギ束発生手段とは、前記被溶
    接材に対向してアークを発生させ溶融池を形成するアー
    ク発生手段であることを特徴とする請求項6又は7記載
    の溶接装置。
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