JP2021030291A - 二電極サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

二電極サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を用い、溶融金属の揺動を安定させ、良好な溶接後のビードの外観形状を得ることのできる、二電極サブマージアーク溶接方法を提供する。【解決手段】溶接進行方向の前方にある第一電極10と、第一電極10の後方にある第二電極20とを有する、二電極サブマージアーク溶接方法であって、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を使用し、第一電極10と第二電極20の位相差を180°を含む180°近傍に設定し、所定の二電極の極性の関係を満たすように第一電極10と第二電極20の溶接電流のパルス波形の制御を行いながら溶接する。【選択図】図1

Description

本発明は、二電極サブマージアーク溶接方法に関する。
二電極サブマージアーク溶接方法は、大電流を供給して溶け込み深さと溶着量(溶着金属量)を増加させることができ、一電極サブマージアーク溶接方法に比べて高能率に溶接することができる。そのため、造船の組立てや高層建築物等の施工に適用されることにより、組立て性や施工性が良好になる。
この二電極サブマージアーク溶接方法においては、溶接入熱が20kJ/cmを超えるような大入熱溶接が適用されているが、その際の溶接電流は、各電極が1500Aを超えるような大電流を一次側の三相交流電流のu相、v相、及びw相の中の特定の相から使用することが必要になる。そのため、例えばサイリスタ型の交流電源では一般的な1500A容量の電源トランスを二台乃至三台並列運転することが必要になる。従って、二電極サブマージアーク溶接方法を実施する溶接装置の一次側電源には大電力容量が必要になり、経済的な課題があった。
このような課題に対して、電流波形の制御が自在な溶接電源(インバータ制御型の溶接電源等)を適用することにより、三相交流を直流化した後にインバータによって交流波形に変換することから使用率が高くなり、一次側の電力容量を抑制することができる。そのため、電源トランスの容量に近い溶接電流の設定ができ、上記する経済的な課題を解消することが可能になる。
しかしながら、このような電流波形の制御が自在な溶接電源を用いた超大入熱溶接の例はこれまでに無く、従来の可動鉄心移動型の交流電源と同じ設定の下で使用したとしても、必ずしも良好な溶接結果が得られる保証はない。ここで、「良好な溶接結果」とは、溶融金属の揺動を安定させることができ、良好な溶接後の溶接金属(ビード)の外観形状が得られることを意味している。
ここで、16mmの厚板の鋼板を対象とする場合であっても、入熱制限を超えることなく一パスで溶接を行うことのできる、二電極サブマージアーク溶接方法が提案されている。具体的には、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材と先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させ、電源から通電を行って加熱したフィラーワイヤをアークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる溶接方法である。ここで、フィラーワイヤとしては直径1.2mm又は1.4mmのものを使用し、極間を8mm乃至14mmに設定し、フィラーワイヤの送給速度を16m/min以下とし、フィラーワイヤの突き出し長さを35mm乃至40mmに設定する(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−213331号公報
特許文献1に記載の二電極サブマージアーク溶接方法によれば、厚板の鋼板を対象とした場合においても、入熱制限を超えることなく一パスで溶接を行うことが可能になる。しかしながら、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を用いた二電極サブマージアーク溶接方法において、溶融金属の揺動を安定させ、良好な溶接後のビードの外観形状を得ることができるか否かは不明である。
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を用いた二電極サブマージアーク溶接方法において、溶融金属の揺動を安定させ、良好な溶接後のビードの外観形状を得ることのできる、二電極サブマージアーク溶接方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による二電極サブマージアーク溶接方法の一態様は、
溶接進行方向の前方にある第一電極と、該第一電極の後方にある第二電極とを有する、二電極サブマージアーク溶接方法であって、
溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を使用し、
前記第一電極と前記第二電極の位相差を180°を含む180°近傍に設定し、
以下の式(A)を満たすように前記第一電極と前記第二電極の溶接電流のパルス波形の制御を行いながら溶接することを特徴とする。
Figure 2021030291
本態様によれば、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を使用し、第一電極と第二電極の位相差を180°近傍に設定した上で、第一電極と第二電極の極性が同じになる時間と異なる時間の比率を所定の数値範囲内に設定したことにより、大電力容量の一次側電源を不要としながら、溶融金属の揺動を安定させて、良好な溶接後のビードの外観形状を得ることができる。ここで、「溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源」として、例えばデジタル制御型溶接電源が挙げられ、このデジタル制御型溶接電源にはインバータ溶接電源が含まれる。デジタル制御型溶接電源では、交流電流の位相、周波数、波形、波形バランス(以下のEP率)、波形オフセット等を所望に制御することができる。
また、第一電極と第二電極の位相差に関する「180°を含む180°近傍」とは、170°乃至190°の範囲を意味しており、180°に設定されるのが好ましい。
二電極サブマージアーク溶接においては、第一電極と第二電極の間において、各電極の極性が異なる場合には反発する方向に電磁力が作用し、極性が同じ場合には引き合う方向に電磁力が作用する。この電磁力の作用により、それぞれの電極から発生するアーク柱には電極間で引き合う力と反発する力が繰り返し作用することになり、この繰り返しの作用力は溶接の安定性に大きな影響を及ぼし得る。
そこで、本発明者等はこの二種類の電磁力に着眼し、これら二種類の電磁力をもたらす時間の比率に関して種々検証した。その結果、第一電極と第二電極の極性が異なる時間に対する、第一電極と第二電極の極性が同じ時間の比率が0以上0.5未満の場合に、良好な溶接後のビードの外観形状を得られることを見出したものである。
また、本発明による二電極サブマージアーク溶接方法の他の態様は、前記第一電極と前記第二電極の双方において、前記パルス波形の一周期における正極の割合であるEP率を変化させて、溶着量と溶け込み深さの調整を行うことを特徴とする。
本態様によれば、パルス波形の一周期における正極の割合であるEP率(Electric Positive)を調整することにより、溶着量と溶け込み深さを所望に調整することができる。ここで、EP率は、25%乃至75%の範囲に設定することができる。本発明者等によれば、EP率を例えば40%以下と低く設定することにより、溶着量を多く、溶け込み深さを少なくできることが特定されている。また、EP率を例えば60%以上と高く設定することにより、溶着量を少なく、溶け込み深さを多くできることが特定されている。さらに、EP率を例えば50%程度に設定することにより、溶着量と溶け込み深さの双方を適量に調整できることが特定されている。
また、本発明による二電極サブマージアーク溶接方法の他の態様は、複数の厚板を組み合わせて角継手を溶接し、箱型断面四面ボックス柱を製作する際に適用することを特徴とする。
本態様によれば、大電流を必要とする、複数の厚板を組み合わせて箱型断面四面ボックス柱の角継手を溶接するに当たり、例えば電源定格の90%程度の電流条件の下で角継手の溶接を実現することができる。従って、従来の箱型断面四面ボックス柱の角継手の溶接のように、例えば1500A容量の電源トランスを二台乃至三台並列運転することなく、一次側の電力容量を可及的に抑制しながら、一パスにて角継手の溶接を行うことができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の二電極サブマージアーク溶接方法によれば、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を用いた二電極サブマージアーク溶接方法において、溶融金属の揺動を安定させることができ、良好な溶接後のビードの外観形状を得ることができる。
実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法を説明する説明図である。 実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法において適用される、デジタル制御型溶接電源の構成を周辺装置とともに示す図である。 第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示す図である。 (a)、(b)、(c)はいずれも、各実施例の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示す図である。 (a)、(b)はいずれも、各比較例の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示す図である。
以下、実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法]
はじめに、図1乃至図3を参照して、実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法を説明する説明図であり、図2は、実施形態に係る二電極サブマージアーク溶接方法において適用されるデジタル制御型溶接電源の構成を周辺装置とともに示す図である。また、図3は、第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示す図である。
図1に示すように、二電極サブマージアーク溶接方法では、溶接進行方向であるX方向の前方にある第一電極10と、第一電極10の後方にある第二電極20とを用いて行う溶接方法である。第一電極10は第一トーチからなり、第一ワイヤ送給装置15から送給された溶接ワイヤ18が、第一トーチ10から所定長さ突出される。同様に、第二電極20は第二トーチからなり、第二ワイヤ送給装置25から送給された溶接ワイヤ28が、第二トーチ20から所定長さ突出される。第二トーチ20は、第一トーチ10との間で所定の離間距離が確保され、かつ、溶接ワイヤ18に対して溶接ワイヤ28が所定の傾斜角度となるように第一トーチ10に対して所定の傾斜角度に設定される。
図2に示すように、第一電極10と第二電極20はそれぞれ、マイクロコンピュータ30を含むデジタル制御型溶接電源50に電気的に接続されている、第一溶接電源10Aと第二溶接電源20Aに接続されている。
第一トーチ10の近傍から第一トーチ10の下方へ向けて粒状のフラックスFを定量的に連続供給し、消耗電極である溶接ワイヤ18に対して第一電極10から通電を行い、母材BMと溶接ワイヤ18との間でアーク柱Aを発生させる。同様に、消耗電極である溶接ワイヤ28に対して第二電極20から通電を行い、母材BMと溶接ワイヤ28との間でアーク柱Aを発生させる。
溶接ワイヤ18,28はともに、ソリッドワイヤ、フラックス入りワイヤのいずれであってもよい。
第一トーチ10と第二トーチ20を溶接進行方向であるX方向へ所定の速度で移動させる過程で、アーク柱Aからのアーク熱により、溶接ワイヤ18,28と母材BMが溶融して、溶融池P(溶融金属)と溶融スラグFSが形成される。そして、第二トーチ20の後方では、溶融池Pと溶融スラグFSが凝固し、溶接金属であるビードBと凝固スラグCSが形成される。
デジタル制御型溶接電源50は、溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源であり、図2に示すように、インバータ制御電源40とマイクロコンピュータ30を有し、商用交流電源60から商用交流がインバータ制御電源40に入力されるようになっている。
インバータ制御電源40は、商用交流の入力側から順に、整流回路41、平滑回路42、インバータ回路43、変圧器44、整流回路45、及びリアクタ46を備える。
デジタル制御型溶接電源50は、マイクロコンピュータ30(マイコン)により、主回路であるインバータ制御電源40の出力レベルが制御される(PWM制御(Pulse Width Modulation))。
また、マイクロコンピュータ30には、第一ワイヤ送給装置15、第二ワイヤ送給装置25、第一溶接電源10A,及び第二溶接電源20Aが電気的に接続されており、各種のシーケンス制御が実行される。このシーケンス制御には、第一ワイヤ送給装置15と第二ワイヤ送給装置25における溶接ワイヤ18,28の送給速度制御や、第一電極10と第二電極20の溶接進行方向への速度制御が含まれる。さらに、第一電極10と第二電極20に入力される、交流電流の位相、周波数、波形、波形バランス、波形オフセット等の制御が含まれる。
図示を省略するが、マイクロコンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、及びNVRAM(Non-Volatile RAM)等のハードウェア構成を有し、各ハードウェアがバスを介して相互に接続されている。
ROMにはEEPROMが含まれ、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAMは、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPUは、RAMにロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDDには、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAMには、各種の設定情報等が記憶される。また、マイクロコンピュータ30は通信インターフェイスを有していてもよく、外部の制御装置やIT機器等に接続することも可能である。例えば、デジタルペンダント(ティーチングペンダント)等からの信号により、溶接モードや設定データを変更することができる。
図3は、デジタル制御型溶接電源50により制御される、第一電極10と第二電極20の溶接電流の時刻歴波形の一例を示す。第一電極10と第二電極20の溶接電流はいずれもパルス波形を有し、第一電極10の溶接電流の電流値I1は第二電極20の溶接電流の電流値I2よりも大きく設定されている。
また、第一電極10と第二電極20の溶接電流には所定の位相差があり、この位相差は170°乃至190°の範囲にあり、主として180°に設定される。
溶接電流の一周期分の時間はt0(時刻0〜時刻t1、時刻t1〜時刻t2)であり、第一電極10の溶接電流は、時刻t3で正極(+)から負極(−)に移行し、時刻t1で負極から正極に移行し、以後、時刻t6及び時刻t2で異極に移行する。
一方、第二電極20の溶接電流は、時刻t4で負極から正極に移行し、時刻t5で正極から負極に移行し、以後、時刻t7及び時刻t8で異極に移行する。
そして、ここでは、時刻t3までの時間間隔をΔt1、時刻t3〜時刻t4までの時間間隔をΔt2、時刻t4〜時刻t5までの時間間隔をΔt3、時刻t5〜時刻t1までの時間間隔をΔt4とする。
二電極サブマージアーク溶接においては、第一電極10と第二電極20の間において、各電極の極性が異なる(−と+、もしくは+と−)場合には反発する方向に電磁力が作用し、極性が同じ(−と−、もしくは+と+)場合には引き合う方向に電磁力が作用する。従って、溶接電流の一周期において、時間間隔Δt1とΔt3においては双方の電極間に反発力(図中の「反発」)が作用し、時間間隔Δt2とΔt4においては双方の電極間に引き合い力(図中の「引合」)が作用する。
そして、デジタル制御型溶接電源50においては、以下の式(1)を満たすように第一電極10と第二電極20の溶接電流のパルス波形の制御を実行する。
Figure 2021030291
以下の溶接実験にて詳説するが、本発明者等によれば、式(1)を満たすように第一電極10と第二電極20の溶接電流のパルス波形の制御を実行しながら、二電極サブマージアーク溶接を行うことにより、溶融金属の揺動を安定させることができ、良好な溶接後のビードの外観形状を得られることが特定されている。
また、パルス波形の一周期における正極の割合であるEP率を調整することにより、溶着量と溶け込み深さを所望に調整することができることも本発明者等により特定されている。図3において、EP率は、Δt1/t0で表すことができる。
ここで、EP率は、25%乃至75%の範囲に設定することができる。本発明者等によれば、EP率を例えば40%以下と低く設定することにより、溶着量を多く、溶け込み深さを少なくできることが特定されている。また、EP率を例えば60%以上と高く設定することにより、溶着量を少なく、溶け込み深さを多くできることが特定されている。さらに、EP率を例えば50%程度に設定することにより、溶着量と溶け込み深さの双方を適量に調整できることが特定されている。
従って、EP率を適宜変更することにより、溶着量を重視する場合、溶け込み深さを重視する場合、さらには双方を重視する場合の各ケースに応じた二電極サブマージアーク溶接を実現することができる。
図示する二電極サブマージアーク溶接方法によれば、デジタル制御型溶接電源50を適用することにより、三相交流を直流化した後にインバータによって交流波形に変換することから使用率が高くなり、一次側の電力容量を抑制することができ、電源トランスの容量に近い溶接電流の設定が可能になる。そのため、大電流を供給して溶込み深さと溶着量を増加させる二電極サブマージアーク溶接方法を、一次側の電力容量を抑制しながら行うことができる。
また、複数の厚板を組み合わせて角継手を溶接し、箱型断面四面ボックス柱を製作するに当たり、この角溶接では、高電流かつ低速度の条件下で、極間に多量の溶融金属が揺動しながら溶接が進むことになるため、電磁力による反発と引き合いの繰り返し作用はビードの外観形状に大きな影響を及ぼすことになる。そこで、図示する二電極サブマージアーク溶接方法を適用することにより、溶融金属の揺動を安定させることができ、このことによって良好な溶接後のビードの外観形状を得ることができるため、当該二電極サブマージアーク溶接方法は箱型断面四面ボックス柱の角継手の溶接に好適である。
[溶接実験とその結果]
次に、表1、図4及び図5を参照して、本発明者等により実施された溶接実験とその結果について説明する。
本発明者等は、デジタル制御型溶接電源を有する二電極サブマージアーク溶接機を用いて、溶接条件(電流波形、電流値、電極移動速度等)を種々変化させながら、板厚25mm乃至40mmの箱型試験体に対して角溶接を行う溶接実験を行った。ここで、溶接材料としては、直径6.4mmの溶接ワイヤと焼成型フラックスを用いた。溶接条件と溶接結果を以下の表1及び表2と図4及び図5に示す。
ここで、図4(a)は、実施例1,3,4の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示しており、図4(b)は、実施例2の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示しており、図4(c)は、実施例5,6の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示している。また、図5(a)、(b)はそれぞれ、比較例2、1の第一電極と第二電極の溶接電流の時刻歴波形を示している。
Figure 2021030291
Figure 2021030291
まず、表2より、比較例1乃至5はいずれも上式(1)を充足しておらず、ビード外観形状は著しく乱れていた。これらの比較例においては、溶接時における溶融金属の挙動が不安定であったことも確認されており、このことがビード外観形状の不良の要因であると推察される。
一方、実施例1乃至9はいずれも上式(1)を充足しており、ビード外観形状については美麗な外観が観察された。これらの実施例においては、溶接時における溶融金属の挙動が安定していることも確認されており、このことが美麗なビード外観形状の要因であると推察される。
また、図4(a)、(b)より、EP率が50%でない場合は、一方の電極の溶接電流のうち、比率の大きな極性の中に他方の電極の溶接電流の正負極の切替え点、言い換えると、電極に作用する電磁力の方向が変化する点が二点存在することが分かる。例えば、EP率35%の図4(a)においては、第一電極の負極が65%と比率が大きいが、この65%の範囲において、第二電極の溶接電流の正負極の切替え点が二点存在している。同様に、その横に示される第二電極の負極65%の範囲において、第一電極の溶接電流の正負極の切替え点が二点存在している。このことは、EP率65%の図4(b)においても同様のことが確認できる。
本実験結果より、上式(1)を充足するように第一電極10と第二電極20の溶接電流のパルス波形の制御を実行しながら、二電極サブマージアーク溶接を行うことにより、溶融金属の揺動を安定させることができ、良好な溶接後のビードの外観形状が得られることが実証されている。さらに、このような制御を実行することにより、板厚25mm以上の厚板を組み合わせてなる箱型断面四面ボックス柱の角継手を良好に実施できることが実証されている。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10:第一電極(第一トーチ)
15:第一ワイヤ送給装置
18:溶接ワイヤ(消耗電極)
20:第二電極(第二トーチ)
25:第二ワイヤ送給装置
28:溶接ワイヤ(消耗電極)
30:マイクロコンピュータ
40:インバータ制御電源
41:整流回路
42:平滑回路
43:インバータ回路
44:変圧器
45:整流回路
46:リアクタ
50:デジタル制御型溶接電源(溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源)
60:商用交流電源
BM:母材
B:溶接金属(ビード)
CS:凝固スラグ
A:アーク柱
P:溶融池(溶融金属)
FS:溶融スラグ
F:フラックス

Claims (3)

  1. 溶接進行方向の前方にある第一電極と、該第一電極の後方にある第二電極とを有する、二電極サブマージアーク溶接方法であって、
    溶接電流のパルス波形の制御が自在な溶接電源を使用し、
    前記第一電極と前記第二電極の位相差を180°を含む180°近傍に設定し、
    以下の式(A)を満たすように前記第一電極と前記第二電極の溶接電流のパルス波形の制御を行いながら溶接することを特徴とする、二電極サブマージアーク溶接方法。
    Figure 2021030291
  2. 前記第一電極と前記第二電極の双方において、前記パルス波形の一周期における正極の割合であるEP率を変化させて、溶着量と溶け込み深さの調整を行うことを特徴とする、請求項1に記載の二電極サブマージアーク溶接方法。
  3. 複数の厚板を組み合わせて角継手を溶接し、箱型断面四面ボックス柱を製作する際に適用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の二電極サブマージアーク溶接方法。
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