JP2000070010A - 繊維製面ファスナー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】長期にわたり所要の係合力が保持され、繊維製
の雄係合素子であっても柔軟性に富み、チクチク感のな
い良好な感触が得られ、加えて異常な剥離音を発生させ
ることのない面ファスナーを提供する。 【解決手段】織編成又は不織布などの繊維製基布(1) に
植え付けられる少なくとも多数の雄係合素子(2) を有
し、相手方の面ファスナーと係脱する繊維製の面ファス
ナーであって、前記基布(1) がその基布面の共通の部位
から各基端を隣接させて起立する複数の細線径のフック
状係合素子(2a,2a) からなる集合体を有しており、その
集合体である複数のフック状係合素子(2a,2a) の各基端
部を前記織編成基布(1) を透過するバッキング剤である
合成樹脂(3) の一部により接合一体化する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は所要の係合力が確保
され、柔軟で感触に優れ、しかも剥離が円滑になされる
繊維製の面ファスナーに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から広く知られた典型的な繊維製の
面ファスナーは、基布の織編成と同時に織編成して得ら
れる雌又は雄係合素子を有している。雌係合素子は一般
的にマルチフィラメントからなるループ形態を呈してお
り、雄係合素子はフック形状又はキノコ形状を呈してい
る。

【０００３】通常、前記面ファスナーの雄係合素子は、
一本の太い線径をもつモノフィラメントからなり、雄面
ファスナーのフック形状又はキノコ形状の雄係合素子と
雌面ファスナーの多数の雌係合素子であるループとが係
合離脱する。しかして、前記雄係合素子は単一のモノフ
ィラメントにより相手方のループとの所要の係合力を確
保しようとすると、ある程度の剛性をもつ太い線径とせ
ざるを得ない。そのため、感触が粗硬となるばかりでな
く、雄係合素子を雌係合素子から外すときに異音が発生
しやすい。

【０００４】同一材質及び同一線径の前記フック状係合
素子とキノコ状係合素子とを比較すると、キノコ状係合
素子の方がフック状係合素子よりも係合力に優れている
こと、しかもキノコ状係合素子はその係合頭部が全方向
に膨出するため、相手方ループに対して係合に方向性が
ないことも知られている。従って、キノコ状係合素子の
線径をフック状係合素子の線径よりも細くしても同一の
係合力が得られるため、同一の係合力であればキノコ状
係合素子の方が柔軟性に富むものとなる。

【０００５】しかし、キノコ状係合素子の係合頭部はそ
れ自体が弾性変形をすることがないため、面ファスナー
表面の感触がチクチク感を伴い、しかも相手方のループ
との係合形態がキノコ状係合素子の係合頭部の首部に巻
き付いた形態、いわゆる首吊り状態となるため、係合離
脱時に首部の部分で切断されやすく、或いは相手方のル
ープが切断されるなどして耐用性に欠けるきらいがあ
る。

【０００６】かかる現状にあって、例えばおむつやスポ
ーツ衣料、肌着などの直接肌に触れる部分にも多く使わ
れるようになり、柔軟性に富んで肌触りの感触に優れ、
しかも所要の係合力と剥離時の異音の発生が少ない繊維
製の面ファスナーが要求されるようになってきている。
こうした要求に応えるべく、柔軟性と肌触りに優れ、所
要の係合力をもつ雄面ファスナーが、例えば特公昭４７
−９３９０号公報に開示されている。

【０００７】この公報によれば、５０〜２００Ｄの線径
を有するフィラメントの３〜１０本を２００Ｔ／ｍ以上
に加撚し、これをパイル糸として基材に植え込んで、表
面に多数のループを有する基材シートを作成し、これを
加熱してループ形態を固定すると共に撚りを固定したの
ち、前記ループを頂部又は脚部の一部で切断し、次いで
これを開繊して基材の一箇所から細線径の複数本のフッ
クが起立する面ファスナーを製造する。かかる構造を有
する面ファスナーによれば、個々のフックの係合力を弱
めて剥離を容易にすると共に異常な剥離音の発生を抑
え、同時にループに対する係合率を増加させて総合で係
合力が大きくできるというものである。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかるに、公報に開示
された面ファスナーでは、その図面にも示されるように
フックをなす個々の繊維にも確実に撚りの形態が残るた
め、それらの係合頭部の形態が安定しないばかりでな
く、フック形状が複雑化して一律の係合力が期待でき
ず、また基材が織編成による布帛である場合には樹脂加
工を施してフックの抜け止めを行ってはいるものの、基
材の同じ位置から立ち上がる複数のフックの基端部は単
に撚合状態で固定されているに過ぎないため、使用初期
には前記基端部にある程度の剛性を期待することができ
るとは言え、繰り返しの使用によって前記撚合形態が解
除されやすく、この撚合形態が一旦解除されると前記基
端部は個々の繊維に分離した状態となり、個々のフック
では必要とする剛性をもつことができず、相手方の面フ
ァスナーとの押圧操作による係合時に簡単に腰砕けの状
態となって、ループとの係合ができず、トータルとして
の係合率が低下し、面ファスナーとして必要とする所要
の係合力も急激に低下することになる。

【０００９】本発明は、こうした課題を解決すべくなさ
れたものあり、具体的には長期にわたり所要の係合力が
保持され、繊維製の雄係合素子であっても柔軟性に富
み、チクチク感のない良好な感触が得られ、加えて異常
な剥離音を発生させることのない面ファスナーを提供す
ることを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段及び作用効果】かかる目的
は、本件請求項１〜６に係る発明により達成される。請
求項１に係る発明は、織編成又は不織布などの繊維製基
布に植え付けられる少なくとも多数の雄係合素子を有
し、相手方の面ファスナーと係脱する繊維製の面ファス
ナーであって、前記基布面の共通の部位から各基端を隣
接させて起立する複数の細線径の雄係合素子からなる集
合体を有してなり、前記織編成基布を透過するバッキン
グ剤の一部により前記隣接する雄係合素子の基端部同士
を結合してなることを特徴とする繊維製面ファスナーを
構成としている。

【００１１】本発明にあっては、複数の雄係合素子から
なる集合体が繊維製基布の同じ位置から立ち上がるよう
に構成したため、ここの雄係合素子の線径を従来の数分
の１に細くしても、同一位置から立ち上がる複数の雄係
合素子が相手方の雌面ファスナーの多数のループと係合
するようになり、係合率が向上して雄面ファスナーに所
望のトータルとしての所要の係合力を付与することがで
きる。また、前記集合体の基端部において各雄係合素子
同士がバッキング剤の一部により接着により固着一体化
されているため、集合体全体としての基端部の剛性が増
し、相手方の雌面ファスナーとの押圧による係合時にも
雄係合素子が容易には倒伏することがないため、相手方
ループとの係合率が向上でき、全体としての係合力も確
保される。

【００１２】請求項２に係る発明は、前記集合体の各雄
係合素子がフック形状を備えている。この種の繊維製の
雄係合素子としては、フック形状の他にもキノコ形状が
あるが相手方のループと離脱時に首吊り状態にある傘状
或いは球状の係合頭部が切断しやすく、またキノコ形状
の雄係合素子に較べて肌触りにチクチク感が少ないこ
と、並びに弾性変形によりループが容易に外れやすいこ
とから、前記雄係合素子としてはフック形状であること
が望ましい。勿論、本発明にあっても、キノコ形状の雄
係合素子を排除するものではない。

【００１３】請求項３に係る発明は、前記集合体を構成
する複数のフック状係合素子の係合頭部が、同集合体の
基端を中心として０°〜９０°の範囲内で異方向に方向
付けられている。このように集合体の複数のフック状係
合素子の係合頭部が多方向を向いているため、不規則な
方向を向いている相手方のループと係合される確率が高
くなり、しかも剥離力も多方向に均等に働くようにな
る。

【００１４】請求項４に係る発明は、前記集合体を構成
する各雄係合素子の少なくとも１つが他の係合素子より
も線径が太く設定されている。集合体を構成する各雄係
合素子の線径を異ならせることにより、係合力を確保す
ると共に係合面の全体的な感触を柔軟性に富んだものに
する。

【００１５】請求項５に係る発明にあっては、前記集合
体を構成する少なくとも１つの雄係合素子の高さを、他
の係合素子の高さより高く設定している。集合体を構成
する複数の雄係合素子の高さを異ならせることにより、
相手方の雌面ファスナーにあって同一部位に存在する高
さの異なるループと係合するようになり、トータルとし
ての係合力を増すこととができる。

【００１６】請求項６に係る発明は、前記基布面にはル
ープ状の雌係合素子を混在させている。この発明にあっ
ては、雄及び雌の係合素子が同一基布の表面に混在して
いるため、係合素子を雄と雌とで別個に管理する必要が
なくなり、また製品への取付時にも雄と雌とを判別する
必要がなくなる。

【００１７】

【発明の実施形態】以下、本発明の好適な実施の形態を
添付図面を参照しつつ具体的に説明する。図１は本発明
の第１実施例を示す面ファスナーのバックコーティング
がなされる前の部分斜視図であり、図２はバックコーテ
ィングがなされた後の同面ファスナーの係合素子を中心
に拡大して示す部分断面図である。

【００１８】本発明に係る面ファスナーは、織編成布或
いは不織布などからなる繊維製の基布１と、同基布１の
一表面から起立する多数のフック状係合素子２と、前記
基布の裏面からコーティングされる合成樹脂３とを備え
ている。

【００１９】前記基布に使われる繊維材料としては、ポ
リアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどからな
る、この種の繊維製の面ファスナーに使用される合成繊
維、或いは綿、羊毛などの天然繊維が挙げられ、前記フ
ック状係合素子には同じくポリアミド、ポリエステル、
ポリプロピレンなどからなる熱可塑性合成樹脂から得ら
れるモノフィラメントが使われ、バッキング剤として
は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂と、ポリイ
ソシアネート系硬化剤又はエポキシ系硬化剤との組合
せ、或いはアクリル系樹脂とメラミン系硬化剤との組合
せ、又はそれらのブレンドしたものの二液型接着剤や、
共重合ナイロン系一液型接着剤が使用される。

【００２０】本発明における特徴部の一つは、前記フッ
ク状係合素子２にある。図３は本実施例による集合体で
あるフック状係合素子２を形成する以前のループ織物の
一例を示している。この例によれば、２本のモノフィラ
メント４ａ，４ａを引き揃えて一本の経糸４として１／
１の平織組織の基布１にループ５を形成しながら織り込
み、熱セットしたのちに、そのループ５の脚部の一方を
切断して、図１に示すような各ループ５ごとに２個のフ
ック状係合素子２ａ，２ａが形成されたバックコーティ
ングがなされる以前の面ファスナーを得ている。

【００２１】本発明では、一本の経糸を構成する前記モ
ノフィラメントの本数は２本以上であれば任意である
が、本発明によるフック状係合素子２ａは単一でも必要
とする係合力が確保されることが肝要であるため、２〜
６本の集合体であることが好ましく、２〜３本でも十分
に機能が発揮される。ただし、柔軟性を重視するとき
は、より細線径のモノフィラメントが使われるため、一
本の経糸４として４〜６本のモノフィラメントを引き揃
えた状態で使われることが望ましい。この場合に、一個
のループ５からは使用する前記モノフィラメントの本数
に相当するフック状係合素子２が得られる。

【００２２】本実施例によれば、テープ織機により基布
及びループを織成するため、図１に示すように基布１の
構成糸のうち経糸１ａには単一糸条が使われるが、緯糸
１ｂはダブルピックのため引き揃えられた２本の糸から
なる。２本の引き揃えられたモノフィラメント４ａ，４
ａからなるフック形成用経糸４は、図３に示すように平
織組織からなる基布１の４本の基布用経糸１ａごとに配
され、ループ５を形成しながら緯糸方向に順次織り込ま
れる。１番目の基布用経糸１ａに沿って織り込まれる前
記フック形成用経糸４は、１番目の緯糸１ｂの下を潜
り、次の緯糸１ｂの上を跨いだのち３番目の緯糸１ｂの
下を潜り、基布用の１番目の前記経糸１ａ及び４番目の
緯糸１ｂを交差状に跨いでループ５を形成する。このル
ープ５を形成したのち、１番目の前記基布用経糸１ａに
沿って次に続く３本の緯糸１ｂの下と上とを交互に通
り、続く４番目の基布用経糸１ａ及び緯糸１ｂを交差状
に跨いで次のループ５を形成する。この操作を繰り返し
ながら経糸方向に順次ループ５を形成していく。緯糸方
向に隣合うループ５は、経糸方向に横糸１ｂの位置を１
本ずらした千鳥状に形成される。

【００２３】因みに、前記基布用経糸１ａ、同緯糸１ｂ
（２本双糸）及び２本が引き揃えられて織り込まれるフ
ック形成用経糸４の各繊度と各糸密度との具体例を紹介
すると、前記基布用経糸１ａが１４０ｄ×５５９本／１
０３．５ｍｍ、緯糸１ｂ（２本双糸）が１００ｄ×１０
４本／in、フック形成用経糸４が１５０ｄ×２６４本
（１３２×２本）である。勿論、本発明はかかる数値に
限定されるものではない。

【００２４】かくて得られたループ布帛には通常どおり
熱セットが施されてループ形態を固定する。このループ
形態が固定されたのち、基布１のループ５が形成された
側とは反対側の表面（裏面）にバックコーティングがな
されて、前記ループ５の基端が基布１に固着される。本
発明によれば、このバックコーティング時のバッキング
剤の一部を利用して、同一位置から立ち上がる複数のモ
ノフィラメント４ａ，４ａからなる前記ループ５の基端
部同士を固着一体化することを第２の特徴部としてい
る。

【００２５】すなわち、前記バックコーティングを好適
な条件下で行うと、バッキング剤の一部が基布１の目を
透過してループ５が形成された表面側にしみ出し、引き
揃えられて互いに接触するループ５の基端部の間を表面
張力により立ち上がり方向に浸透することができる。そ
して、この浸透量はバッキング剤の粘度が大きく影響す
る。

【００２６】例えば、バッキング剤として、上述したよ
うにポリウレタン系樹脂とポリイソシアネート系硬化剤
との二液型接着剤の場合、液自体の架橋反応時間を適時
に選定して、その反応の時間経過によって生じる粘度の
度合いにより浸透性を考慮する。更に、トルエン等の希
釈剤を加えて粘度の度合いを適当に選定することにより
浸透性を考慮する。

【００２７】バッキング剤に使用する希釈剤、溶媒の
量、そして接着剤の架橋反応時間等を適切に管理するこ
とにより、引き揃えられて互いに隣接するループ５の間
の浸透高さを任意の高さに制御することができる。図４
は基布１の同じ位置から立ち上がる２本のフック状係合
素子２の基端部に浸透したバッキング剤の浸透高さ
（ｘ）を上記第１実施例よりも高くした例を示してい
る。このように、前記浸透高さ（ｘ）を任意に変えるこ
とが可能である。

【００２８】さて、以上のようにしてバックコーティン
グがなされたループ付き基布１の各ループ５の脚部の一
部を、定法にしたがってループ切断装置により切断し、
フック状係合素子２を形成する。このループ切断装置に
より脚部を切断されるとき、基端部が互いに固着一体化
され引き揃えられた状態に束縛されていた２個のループ
５のフック部分は自由に動き得るようになり、各ループ
５がそれまでに受けていた応力履歴のうち、特に捩じり
応力に基づき、固着された基端部を中心として捩じりを
開放する方向に回動して互いに異なる方向を向くように
なる。

【００２９】こうした回動を積極的にさせようとすると
きは、複数本のモノフィラメント４ａを引き揃え状態で
織機に供給するとき、各モノフィラメント４ａのボビン
からの引き出しを、横取りとせずに縦取りとすることに
より、各フィラメント毎に所望の撚り（捩じり）を付与
することができる。この撚りは、既述した公報に開示さ
れたループ糸に対する積極的な加撚と異なり、その撚数
は極めて少なく、またその供給ボビンを右巻きと左巻き
とを交互にクリールに設置することにより、一本の経糸
を構成する複数のモノフィラメントからなるフック形成
用経糸４の各構成縦糸４ａ，４ａには逆方向の撚りが付
与されることになり、この撚りが前述のループ切断時に
元に戻ろうとして、前記回動が大きくなされ、図５に示
すように同一基端部から立ち上がる複数のフック状係合
素子２ａの開口方向が、前記既端部を中心として０°か
ら９０°の範囲内にて所要の角度θをもって異なる方向
を向くようになる。

【００３０】こうして得られる本発明の繊維製の面ファ
スナーによれば、基布１の同一位置からその基端部をバ
ッキング剤により固着一体化された複数のフック状係合
素子２ａが、その開口方向を異ならせて立ち上がってい
るため、従来では単一のフック状係合素子が相手方の複
数個のループと係合していたものが、同一位置にて複数
個のループを分割するようにして複数のフック状係合素
子２ａが係合するようになり、しかも各係合素子２ａが
単独でも十分に係合力が発揮できる線径に設定されてい
るため、トータルとしての係合率、延いては係合力が増
加し、しかも従来の単独のモノフィラメントから構成さ
れる係合素子よりも細線径であるため、面ファスナーと
の剥離時にも個々のフック状係合素子２ａは容易に弾性
変形して円滑な剥離を可能とするばかりでなく、異常な
剥離音の発生も極めて小さくなる。

【００３１】また、係合素子２がフック状であることか
ら面ファスナー表面の肌触りもチクチク感が少なく、更
には基端部を除いて各フック状係合素子２ａは通常より
も線径が細い分だけ柔軟性に優れ感触的にも極めて良好
である。特に、強調すべき点は基布１の同一位置から立
ち上がる複数のフック状係合素子２ａの基端部が全てバ
ッキング剤により固着一体化されているため、同基端部
の部分では剛性が増して各フック状係合素子２ａの倒屈
がしにくくなり、相手方の雌面ファスナーの押圧による
係合時にもフック形態が保持され、ループとの係合も円
滑になし得るようになり、係合率を更に増加させる。

【００３２】図６は本発明の第２実施例を示しており、
この実施例によれば同図に示すように基布１の同じ位置
から立ち上がる複数のモノフィラメントからなるフック
状係合素子の線径を異ならせている。図示例では、基布
１の同じ位置から立ち上がるフック状係合素子２ａ，２
ａ，２ｂを３個に設定し、そのうちの２個が他の１個よ
りも線径を細くしている。このようにフック状係合素子
２ａ，２ｂの線径を異ならせることにより、ループとの
係合力は主に太い係合素子２ｂに依存すると共に、他の
細径のフック状係合素子２ａによる係合力も加わり、所
要の係合力が確保され、同時にフック状係合素子２が起
立する係合面の全体の感触を柔軟性に富んだものとす
る。しかも、細径のフック状係合素子２ａの存在によ
り、面ファスナーの剥離時における異常な剥離音の発生
が更に抑制されることになる。

【００３３】図７は本発明の第３実施例を示しており、
この実施例によれば同図に示すように基布１の同じ位置
から立ち上がる複数のモノフィラメントからなるフック
状係合素子２ａ，２ｃの高さを異ならせている。このよ
うにフック高さを異ならせるには、一本のフック形成用
経糸４を構成する複数本のモノフィラメント（図示例で
は２本）４ａ，４ｂの熱収縮特性を異ならせればよい。
すなわち、前記複数のモノフィラメント４ａ，４ｂの一
方を高熱収縮性の材質を選び、他方を低熱収縮性の材質
を選ぶ。そして、織成後の熱セットにより、或いは最終
的な熱処理や染色時に収縮性を発現させれば、基布１の
同一位置から立ち上がる複数のフック状係合素子に自動
的に高さを異ならせることが可能である。

【００３４】このように同一位置から立ち上がる複数の
フック状係合素子２ａ，２ｃの高さを異ならせる場合に
は、例えば相手方の雌面ファスナーが不織布からなり、
そのループが一律の高さや形態でないときにも、各ルー
プに対応するフック状係合素子２ａ，２ｃが係合するよ
うになり、同一高さのフック状係合素子２ａ，２ａと較
べて一段と係合率が増し、細径のモノフィラメント４
ａ，４ｂからなる係合素子２ａ，２ｃであっても所要の
係合力が確保される。

【００３５】図８は、本発明の第４実施例を示してお
り、図１において緯糸方向に複数の列をなすフック状係
合素子列のうち一列おきのフック状係合素子列をループ
列に置き換えている。つまり、同一の基布１の同一表面
にフック状係合素子２と雌係合素子であるループ７とが
緯糸方向に交互の列を作っている。かかる構成により、
面ファスナーに雄と雌との区別を排除し、ファスナー製
品の管理及び取り付けを容易にする。

【００３６】以上の説明は、本発明の好適な実施の態様
について述べたものであり、本発明がこれらの実施例に
限定されないことは上述の説明からも理解できるところ
であり、例えば上記実施例ではフック状係合素子として
従来の典型的な形態を挙げたが、他の様々な形態を採用
することもでき、基布の同一位置から立ち上がるモノフ
ィラメントからなる係合素子の本数や線径も柔軟性と係
合力を考慮して、任意に決定できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係るバックコーティング
がなされる前の繊維製面ファスナーを模式的に示す部分
斜視図である。

【図２】本発明の面ファスナー部材の係合素子の一例を
示す拡大側面図である。

【図３】フック状係合素子を形成する前のループ織物構
造を模式的に示す部分斜視図である。

【図４】複数の係合素子の基端部における浸透高さを高
くした本発明の面ファスナーの一例を示す断面図であ
る。

【図５】複数の隣接する係合素子が互いに異なる方向を
向いた本発明の面ファスナーの一例を示す平面図であ
る。

【図６】異なる線径からなる複数のフック状係合素子を
もつ面ファスナーの部分断面図である。

【図７】異なる高さの複数のフック状係合素子をもつ面
ファスナーの部分断面図である。

【図８】フック状係合素子とループとが混在した本発明
の面ファスナーを模式的に示す部分斜視図である。

【符号の説明】

１ 繊維製基布 １ａ 基布用経糸 １ｂ 基布用緯糸 ２ 雄係合素子（集合体） ２ａ，２ｂ，２ｃ 単一のフック状係合素子 ３ バックコーティングの合成樹脂 ４ フック形成用経糸 ４ａ，４ｂ モノフィラメント ５ ループ ７ 雌係合素子としてのループ ｘ バッキング剤の浸透高さ

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 織編成又は不織布などの繊維製基布(1)
   に植え付けられる少なくとも多数の雄係合素子(2) を有
   し、相手方の面ファスナーと係脱する繊維製の面ファス
   ナーであって、 前記基布面の共通の部位から各基端を隣接させて起立す
   る複数の細線径の雄係合素子(2a 〜2c) からなる集合体
   を有してなり、 前記織編成基布(1) を透過するバッキング剤(3) の一部
   により前記隣接する雄係合素子(2a 〜2c) の基端部同士
   を結合してなることを特徴とする繊維製面ファスナー
2. 【請求項２】 前記集合体を構成する複数の雄係合素子
   (2a 〜2c) がフック形状を備えてなる請求項１記載の繊
   維製面ファスナー。
3. 【請求項３】 前記集合体を構成する複数のフック状係
   合素子(2a 〜2c) の係合頭部が、同集合体の基端を中心
   として０°〜９０°の範囲内で異方向に方向付けられて
   なる請求項２記載の繊維製面ファスナー。
4. 【請求項４】 前記集合体を構成する各雄係合素子(2a,
   2b) の少なくとも１つが他の係合素子よりも線径が太く
   設定されてなる請求項１又は２記載の繊維製面ファスナ
   ー部材。
5. 【請求項５】 前記集合体を構成する少なくとも１つの
   雄係合素子(2a)の高さが、他の係合素子(2c)の高さより
   高く設定されてなる請求項１〜３のいずれかに記載の繊
   維製面ファスナー部材。
6. 【請求項６】 前記基布面にはループ状の雌係合素子
   (7) が混在してなる請求項１記載の繊維製面ファスナ
   ー。