JP2000054064A - 溶接性および靱性にすぐれた高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶接性および靱性にすぐれた高張力厚鋼板およびその製造方法

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JP2000054064A
JP2000054064A JP10221233A JP22123398A JP2000054064A JP 2000054064 A JP2000054064 A JP 2000054064A JP 10221233 A JP10221233 A JP 10221233A JP 22123398 A JP22123398 A JP 22123398A JP 2000054064 A JP2000054064 A JP 2000054064A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】引張強さ570MPa以上で、靱性にすぐれ、かつ
溶接割れ防止鋼板温度を0℃以下とすることのできる、
板厚が75mmを超える高張力厚鋼板およびその製造方法の
提供。 【解決手段】重量%で、C:0.05〜0.14%、Si:0.01
〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、P:0.015%以下、S:0.
005%以下、Cu:0.30〜0.50%、Ni:0.15〜0.50
%、Cr:0.30〜0.60%、Mo:0.05〜0.4%、Nb:
0.015〜0.045%、Ti:0.030%以下、Al:0.005〜0.
10%、N:0.001〜0.007%、およびB:下記式で示さ
れる範囲、を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物
からなり、溶接割れ感受性組成(Pcm)を0.20%以下と
した鋼板、および上記組成の素材を、1050〜1250℃の温
度に加熱後圧延して、800〜900℃にて所定の板厚に仕上
げて直接焼き入れし、さらに350〜550℃の温度で焼戻し
処理を施す鋼板の製造方法。 0.0003≦B≦0.0005+(Cu/1000)+(Ni/500)+(Mo
/500)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁、建築物など
の大形鉄鋼構造物に用いられる、靱性の良好な溶接性に
すぐれた高張力厚鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】引張強さが570MPa以上の鋼板は、橋梁等
の鉄鋼構造物に広く用いられている。近年の動向とし
て、施工コストを削減する目的で、これら構造物の構成
部品点数低減がはかられ、例えば橋梁などでは、主桁を
少なくするような設計が採用される。このためフランジ
の板厚を増し、従来75mm厚程度までであった使用鋼板
は、100mm厚前後のものが要求されるようになってきて
いる。
【0003】しかし、一般に強度をそのまま維持して板
厚を厚くしようとすれば、靱性や溶接性のすぐれた鋼板
の製造が困難になってくる。これは板厚が厚くなれば強
制冷却時の冷却速度が遅くなって、低温変態生成物の形
成が不十分となり、焼入れる場合では焼入れ硬さが不十
分になるからである。この不十分な焼入れ状態で、強度
を確保するために低温での焼戻しをおこなえば、靱性の
大きく劣る鋼板になる。一方、遅い冷却速度でも、C量
を増し、焼入れ性向上元素を多く添加すれば、低温変態
生成物を形成させる、ないしは十分な焼き入れをおこな
わせることは可能である。しかしながら、これらの元素
の含有量増加は靱性を低下させる原因となる。
【0004】橋梁等の大形鉄鋼構造物の建設において
は、施工現場での溶接もおこなわれるため、溶接前の予
熱不要の鋼板が求められ、これまでは約25℃の温度にて
溶接割れが発生しない鋼板が適用されてきた。この溶接
性に対して、C量増加やこれら焼入れ性向上元素の増加
は、割れ感受性を増すため、板厚が厚く強度の高い鋼板
の製造を一層困難にする。さらに、冬季の山間部での工
事など、気温が0℃前後の環境で溶接をおこないたい場
合があり、0℃ないしはそれ以下の温度においても、溶
接割れが発生しない鋼板に対する要望が増しつつある。
【0005】従来より、靱性および溶接性にすぐれた高
強度の厚鋼板や、その製造方法の技術は数多く公表され
ている。しかしながら、強度が570MPaを超える場合
は、厚さが50mm程度以下を対象とするものが主であり、
強度が高く溶接性にすぐれ、板厚が75mmを超え、しかも
割れ防止予熱温度が低い鋼板となるとほとんど報告され
ていない。例えば、特開平9-3596号公報には、板厚が10
0mmまでの、降伏比80%以下引張強さ590MPa以上の低
降伏比型高張力鋼板、およびその製造方法の発明が提示
されているが、溶接の割れ防止予熱温度は50℃以下とし
ている。また、特開平9-13143号公報には、板厚40〜100
mmを対象とした、溶接性にすぐれ600MPa級の鋼板およ
びその製造方法の発明が開示されている。しかし、実施
例から判断される限り、溶接割れ防止予熱温度は25℃で
あり、また試験材の板厚は43〜75mmの範囲しか示されて
いない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、引張
強さ570MPa以上で、靱性にすぐれ、かつ溶接割れ防止
のための鋼板温度を0℃以下とすることのできる、板厚
が75mmを超える高張力厚鋼板およびその製造方法を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、板厚中央
部の引張強さが570MPa以上で、溶接時の鋼板温度を0
℃以下にすることができ、靱性がすぐれた板厚75mm以上
の鋼板を得るための組成範囲と、さらにその鋼板を圧延
終了後その温度から焼入れる直接焼き入れ法にて製造す
る方法を調査した。
【0008】まず焼入れ焼戻しによる調質鋼を前提と
し、成分の検討をおこなった結果は、炭素量を選定し、
その上で焼入れ性向上元素を添加することにより、板厚
75mm以上にて所要強度は十分得ることができた。その強
度を得た上で、さらに橋梁等の構造物に必要な鋼の靱性
(vTs≦−5℃)と、溶接の割れ防止のための鋼板温度
を低下できる組成の検討を進めた。割れ防止鋼板温度の
目標は、JIS規格Z-3158の斜めY形溶接割れ試験法に基
づき、試験片温度を0℃として試験溶接部に割れのない
こととした。
【0009】溶接の割れ感受性は、次式で示されるPcm
の値を低くする必要がある。
【0010】 Pcm(%)=C(%)+(Si(%)/30)+(Mn(%)/20)+(Cu(%)/20) +(Ni(%)/60)+(Cr(%)/20)+(Mo(%)/15) +(V(%)/10)+5B(%) ・・・・・ この鋼板組成によるPcmの値と、割れ防止鋼板温度との
関係を調べた結果、鋼板温度を0℃以下にするには、Pc
mを0.20以下にすればよいことがわかった。そこでPcm
が0.20以下である範囲にて、厚さ100mm前後の鋼板で目
標とする強度を得、その上で、十分な靱性を得るための
合金成分の検討をさらに進めた結果、次のようなことが
明らかになった。
【0011】まず、靱性を損なうことなく焼入れ性を向
上させるための、強度増加に有意な元素は、Crおよび
Cuであった。そこでこれらの元素は積極的に用いるこ
ととした。Moもよいが、添加量が増すとすると靱性を
やや悪くする傾向があったため、多くは添加しないこと
にした。Bは少量の含有で焼き入れ性を大幅に向上させ
ることができ、しかも炭素当量を増さないので、その利
用を検討の結果、この板厚の厚い鋼板でも極めて有効で
あることがわかった。ただし、Bの添加は一定量以上含
有させれば、その含有量に関わりなくほぼ同じ焼入れ性
向上効果が得られるが、量が増すと靱性を劣化させる作
用がある。そこでこの作用を抑止する対策を調べた結
果、Cu、NiおよびMoの存在が有効であることがわ
かった。これらの元素が含有されていることにより、必
要含有量よりも過剰にBが存在していても、靱性を悪く
することがないので、Bの含有許容範囲を拡大すること
ができ、B添加を効果的に利用することができるのであ
る。
【0012】これらの検討の中で、焼入れ性を向上さ
せ、焼戻し軟化を抑止し、さらに析出硬化も期待できる
として、一般に高張力鋼板に多用されるVの添加が、靱
性を劣化させるため好ましくないことがわかった。Vは
添加元素としてその効果を発揮させる場合、通常0.05%
前後含有させるが、その利点よりも靱性劣化という難点
の方が顕著であった。これは、一つには、板厚が厚くな
ると、焼入れ時の冷却ばかりでなく、焼戻し時の冷却も
極めてゆっくりした冷却となり、微細であるべきその析
出物が粗大化してしまうためではないかと思われる。そ
こで、Vは添加しないことにした。
【0013】Vに代わる元素としては、Nbが有効であ
った。Nbを含有させることにより、強度増加と靱性の
向上がもたらされ、とくに圧延終了後その温度から焼入
れる直接焼き入れ法において効果的であった。Nb添加
の効果は、焼入れ性向上よりは、結晶粒の微細化と、析
出硬化にあると考えられる。すなわち結晶粒の微細化に
より、強度の向上と靱性の向上が得られ、その上Nbの
炭化物や窒化物の微細析出物は、Vのそれに比較して凝
集や粗大化が起こりにくい。
【0014】以上のような検討結果から選定された組成
の鋼は、通常の焼入れ焼戻しによる調質熱処理によっ
て、目標とする特性の鋼板を得ることができる。しかし
ながら、製造工程の合理化の点からは、圧延加工の熱を
利用して、圧延後直ちに焼き入れることが望ましい。そ
こで、この直接焼入れによる製造方法の条件について調
査の結果、圧延素材の加熱温度は高めとし、Ar3変態温
度直上で圧延を終了して直ちに急冷して焼入れ後、焼戻
し温度は通常より低めとすることが、目標とする特性の
鋼板を製造するために重要であることがわかった。圧延
素材の加熱温度を高くするのは、Nbを圧延前に固溶状
態にしておくことが、Nb添加の効果を十分発揮させる
ために必要であるからである。また、焼戻し温度は、通
常、十分な靱性を得るために高めとすることが必要であ
るが、Vの代わりにNbを添加することによって、焼戻
し温度を低くして十分な靱性を確保できることがわかっ
たのである。これは、Nb添加による結晶粒の微細化が
効果的に作用したと考えられる。Nbは、その微細析出
による結晶粒成長抑止効果もあるが、熱間圧延のパス間
での再結晶を抑止し、圧延直後における結晶粒を微細化
する効果もあると考えられる。焼戻し温度を低くできる
ことは、同じ強度を得るための鋼の成分の低減、ことに
C量やMn量を少なくすることができ、これは鋼の靱性
や溶接性の改善に有意である。
【0015】以上のような知見に基づき、さらにそれぞ
れの元素の効果的な含有量の範囲限界、および製造条件
の範囲を明確にし、本発明を完成させた。本発明の要旨
は次のとおりである。
【0016】(1)重量%で、C:0.05〜0.14%、Si:
0.01〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、P:0.015%以下、
S:0.005%以下、Cu:0.30〜0.50%、Ni:0.15〜
0.50%、Cr:0.30〜0.60%、Mo:0.05〜0.4%、N
b:0.015〜0.045%、Ti:0.030%以下、Al:0.005
〜0.10%、N:0.001〜0.007%、およびB:下記式で
示される範囲、を含有し、残部はFeおよび不可避的不
純物からなり、下記式で定義されるPcmの値が0.20以
下である、引張強さ570MPa以上の靱性が良好で寒冷地に
おける溶接性にすぐれた板厚75mmを超える高張力厚鋼
板。
【0017】 0.0003≦B(%)≦0.0005+(Cu(%)/1000)+(Ni(%)/500) +(Mo(%)/500) ・・・・・ Pcm=C(%)+(Si(%)/30)+(Mn(%)/20)+(Cu(%)/20) +(Ni(%)/60)+(Cr(%)/20)+(Mo(%)/15) +(V(%)/10)+5B(%) ・・・・・ (2)上記の組成の素材を1050〜1250℃の温度に加熱後、
圧延して800〜900℃にて所定の板厚に仕上げ、直接焼き
入れし、さらに350〜550℃の温度で焼戻し処理を施すこ
とを特徴とする、上記(1)の高張力厚鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明鋼板の化学組成、または製
造条件の限定理由を以下に説明する。Cの含有量を0.05
〜0.14%とする。Cは鋼の強度を決定するための最も重
要な元素である。含有量が0.05%未満の場合、必要とす
る570MPa以上の強度を得ることが困難になる。また0.
14%を超える含有は、鋼板の靱性および溶接性が目標を
下回る結果となる。したがって、その含有範囲を0.05〜
0.14%とするが、強度が十分高く、靱性および溶接性の
いずれもすぐれた、バランスした性能を得るためには、
0.06〜0.10%の範囲にあることが望ましい。
【0019】Siの含有は、靱性を悪くすることなく鋼
の強度を向上させる効果があり、その含有量を0.01〜0.
5%とする。0.01%を下回る含有量では効果がなく、0.5
%を超える含有は鋼板の表面性状を悪くするからであ
る。
【0020】Mnは含有量を0.5〜1.4%とする。Mnは
Cとともに鋼の強度を確保するために重要である。0.5
%未満では鋼の強度が不足し、1.4%を超える場合は、
靱性が悪くなる。強度が十分高く、靱性が良好な範囲と
して好ましいのは、1.0〜1.4%である。
【0021】Pは鋼の不可避的不純物の一つで、鋼の靱
性を劣化させ、溶接性を悪くするので、少なければ少な
いほどよい。顕著な悪影響をおよぼさない範囲として、
0.015%以下とする。
【0022】Sも不可避的不純物の一つであり、鋼の靱
性を著しく劣化させるので、その含有量は少なければ少
ないほどよい。顕著な悪影響をおよぼさない範囲とし
て、0.005%以下とする。
【0023】Cuの含有量は0.30〜0.50%とする。Cu
は溶接性や靱性を大きく損なうことなく、焼入れ性向上
により、鋼の強度を増加させることができるので、積極
的に利用する。このため、少なくとも0.30%以上含有さ
せる。しかし、多くなりすぎると靱性に影響が現れるの
で、上限を0.50%までとする。
【0024】Niは靱性や溶接性を損なわずに強度を上
昇させることができる。ただし、高価であり、その効果
を得るにはやや多量の添加が必要なので、使用を抑制し
たい元素である。しかし、Cuを鋼に添加する場合、C
uによる熱間脆性を抑止する効果があるので、含有させ
る必要がある。この目的には、Cu量の1/2から等量
程度以上の含有が必要であるので、Niの含有量は0.15
〜0.50%とする。
【0025】Crの含有量は0.30〜0.60%とする。Cr
はCuと同様溶接性や靱性を損なうことなく、鋼の強度
を増加させることができるので、積極的に利用する。そ
の効果を十分発揮させるには、少なくとも0.30%以上の
含有が必要であるが、含有量が増してくると靱性を悪く
するので、多くても0.60%までである。望ましいのは、
0.40〜0.60%である。
【0026】Moの添加は鋼の強度を向上させ、またB
の添加による靱性の低下を緩和する効果があり、その含
有量を0.05〜0.4%とする。0.05%未満ではその効果が
十分でなく、0.4%を超える含有は、鋼の靱性が低下し
てくるおそれがあるからである。好ましいのは、0.05〜
0.15%の含有である。
【0027】Bは、炭素当量を増すことなく、少量の含
有で焼入れ性が向上するので、溶接性の劣化なしに強度
を向上させ得る、重宝な元素である。その効果を十分発
揮させるには、0.0003%以上の含有があればよい。しか
し、より多く含有させてもその効果は飽和して変わらな
いが、靱性が劣化してくる傾向がある。この靱性劣化の
傾向は、Cu、NiおよびMoの存在により緩和され
る。そこで、Bの含有量範囲を、 0.0003≦B(%)≦0.0005+(Cu(%)/1000)+(Ni(%)/500) +(Mo(%)/500) ・・・・・ とする。
【0028】Nbの含有量は0.015〜0.045%とする。N
bの含有は鋼の結晶粒を細かくし、靱性を劣化させずに
強度の向上を得ることができる。このような効果を十分
得るためには、0.015%以上の含有が必要である。しか
し多すぎる添加は、靱性の劣化や溶接性の低下を来たす
ので、多くても0.045%までである。望ましいのは、0.0
25〜0.035%のせまい範囲に管理することである。
【0029】Tiは、添加しなくてもよい。しかし結晶
粒を細かくし、Nを固定してB添加による効果を十分発
揮させる効果があるので、必要により添加する。添加す
る場合その含有量は0.005〜0.030%とするのが望まし
い。これは0.005%を下回る場合、その添加の効果は十
分でなく、0.030%を超えると鋼の靱性が劣化してくる
からである。
【0030】Alは製鋼段階における鋼の脱酸のために
添加し、その含有範囲は0.005〜0.10%とする。0.005%
を下回る含有量の場合、鋳片に欠陥が残存するおそれが
ある。また多すぎてもその効果は飽和し、鋼の靱性を悪
くするようになるので、0.10%までの含有とする。
【0031】Nは鋼の不可避的不純物の一つであるが、
少量の存在はAlやNbあるいはTiと結合して微細な
析出物を形成し、特に溶接部の結晶の粗大化を抑止する
効果がある。このためには、少なくとも0.001%以上の
含有が望ましい。しかし、0.007%を超える含有は鋼の
靱性を悪くするので、Nの含有量を0.001〜0.007%とす
る。
【0032】前出の式で示される溶接の割れ感受性P
cmの値は、0.20以下となるよう各成分の量を管理する。
Pcmの値が0.20を超えると、鋼板温度0℃で割れが発生
するからである。
【0033】鋼板の熱処理を直接焼入れ法にておこなう
場合は、以下の条件にて処理する。熱間圧延する素材鋼
の加熱温度は、1050〜1250℃とする。これは1050℃を下
回るとNb添加による細粒化効果が十分得られなくなる
からである。熱間圧延前にNbが十分固溶状態にならな
くなるためと思われる。また、1250℃を超えて加熱して
も得られた鋼板の特性改善には何の効果も認められず、
酸化スケールや加熱燃料の損失を増すだけである。好ま
しい加熱温度は1050〜1160℃である。
【0034】熱間圧延は、所定の板厚に仕上げる終了温
度を800〜900℃とする。800℃未満では、変態温度を大
きく下回ることになり、十分な焼入れ強度が得られなく
なる。また900℃を超えると、鋼板の靱性が低下するお
それがある。好ましいのは830〜880℃である。なお、望
ましいのは900℃以下で50%以上の累積圧下を付与する
ことで、より一層の細粒化および靱性の向上が得られ
る。
【0035】熱間圧延終了後、できる限り時間をおかず
に強制冷却する。すなわち焼入れをおこなう。十分な焼
入れ強度を得るためには、強制冷却は、水などの冷却媒
体が鋼板面全体に均一にあたるようにして、板厚の中心
部で1℃/s以上、望ましくは2℃/s以上の冷却速度で
おこなうのがよい。なお強制冷却の開始は、多少遅れた
としても、鋼板表面にて750℃以上の温度から開始する
ことが望ましい。
【0036】焼戻しは350〜550℃の温度でおこなう。35
0℃未満の温度では靱性が不十分になる。550℃を超える
温度で焼戻す場合、合金成分等を多く添加すれば強度と
靱性を確保することは可能であるが、Pcmを十分低くす
ることが困難になってくる。また焼入れが不十分な場
合、焼戻し温度を下げることによって強度を確保するこ
とは可能であるが、そうすると靱性の劣る鋼となる。し
たがって、上記成分範囲にて、Pcmが0.2以下で、所要
板厚および強制冷却速度から、十分な焼入れがおこなわ
れ、かつ350〜550℃の焼戻し温度にて引張強さが570M
Pa以上となるように、個々の鋼成分とその量を選定す
れば、靱性および溶接性のすぐれた高張力厚鋼板が得ら
れるのである。
【0037】
【実施例】表1に示す組成の鋼を鍛造して、厚さ300mm
の圧延素材とし、表2に示す加熱温度、仕上げ温度、お
よび板厚として熱間圧延をおこない、仕上げ圧延後直ち
に焼入れを実施し、次いで表2中に示す温度で焼戻しを
おこなった。得られた鋼板の板厚中央部より、圧延と直
角の方向に試験片を採取して引張り試験をおこない、圧
延と平行な方向に試験片を採取してシャルピー衝撃試験
をおこなった。また、JIS規格Z-3158の斜めY形溶接割
れ試験法に基づき、試験片温度を0℃として溶接試験を
おこない、溶接部の割れの有無を調査した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】鋼板の評価試験結果を表2に併記する。表
1において、鋼記号A〜Fは本発明の組成範囲を満足す
るものであるが、鋼記号G〜Sは、いずれかの組成、ま
たはPcm値が本発明で規制する範囲を逸脱している。表
2において、性能評価の判断基準を、引張強さ570MPa
以上、靱性はvTrsが−5℃以下、溶接性は試験片温度が
0℃にて割れの発生がないこととすれば、本発明の有効
性は明らかである。
【0041】組成が本発明範囲を満足する鋼による試験
結果を表2の試験番号1〜16に示すが、熱間圧延以降
の製造条件が不十分な場合、目標性能が得られないこと
がある。例えば、試験番号3は仕上げ温度、ないしは焼
入れ温度が低すぎ、試験番号5では、素材加熱温度が低
すぎ、試験番号13は焼戻し温度が高すぎて、いずれの
場合も、十分な強度が得られていない。また、試験番号
4は仕上げ温度が高すぎ、試験番号8では加熱温度が高
すぎ、試験番号9は焼戻し温度が低すぎて、いずれの場
合も強度は十分であるが靱性が劣っている。しかしなが
ら、製造条件が適正である場合、このように鋼組成を限
定された鋼は、すぐれた強度、靱性および溶接性を得る
ことができる。
【0042】これに対し、製造条件が十分満足すべき範
囲に入っていても、鋼番号G〜Sの化学組成が本発明で
規制する範囲を逸脱している場合、表2の試験番号17
〜29の結果から明らかなように、強度、靱性、または
溶接性のいずれもが目標特性を超える鋼板とはならない
のである。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、板厚中央部の引張強さ
が570MPa以上、靱性はvTrsが−5℃以下、溶接性は鋼
板温度が0℃にて割れの発生がない、板厚75mmを超える
高強度厚鋼板が得られ、また直接焼き入れ法により、そ
の鋼板を容易に製造することができる。この鋼板は、橋
梁など鋼構造物の施工条件を緩和し、その建設コストの
低減に効果的に活用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA11 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA31 AA35 BA01 CA02 CB02 CC03 CC04 CD06 CF01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05〜0.14%、Si:0.01
    〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、P:0.015%以下、S:0.
    005%以下、Cu:0.30〜0.50%、Ni:0.15〜0.50
    %、Cr:0.30〜0.60%、Mo:0.05〜0.4%、Nb:
    0.015〜0.045%、Ti:0.030%以下、Al:0.005〜0.
    10%、N:0.001〜0.007%、およびB:下記式で示さ
    れる範囲、を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物
    からなり、下記式で定義されるPcmの値が0.20以下で
    ある、引張強さ570MPa以上の靱性が良好で寒冷地におけ
    る溶接性にすぐれた板厚75mmを超える高張力厚鋼板。 0.0003≦B(%)≦0.0005+(Cu(%)/1000)+(Ni(%)/500) +(Mo(%)/500) ・・・・・ Pcm=C(%)+(Si(%)/30)+(Mn(%)/20)+(Cu(%)/20) +(Ni(%)/60)+(Cr(%)/20)+(Mo(%)/15) +(V(%)/10)+5B(%) ・・・・・
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成を有する素材
    を、1050〜1250℃の温度に加熱後圧延して、800〜900℃
    にて所定の板厚に仕上げて直接焼き入れし、さらに350
    〜550℃の温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする、
    請求項1に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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