JP2002088413A - 溶接性と靭性に優れた高張力鋼の製造方法 - Google Patents

溶接性と靭性に優れた高張力鋼の製造方法

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JP2002088413A
JP2002088413A JP2000280264A JP2000280264A JP2002088413A JP 2002088413 A JP2002088413 A JP 2002088413A JP 2000280264 A JP2000280264 A JP 2000280264A JP 2000280264 A JP2000280264 A JP 2000280264A JP 2002088413 A JP2002088413 A JP 2002088413A
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strength
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Toshinaga Hasegawa
俊永 長谷川
Masanori Minagawa
昌紀 皆川
Hiroyuki Shirahata
浩幸 白幡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 引張強度が570MPa級で、溶接性と靭性
が要求される構造物全般に供される構造物用鋼の製造方
法に関し、特に板厚が50〜200mmの厚手材におい
て、優れた溶接性と強度・靭性を両立した高張力鋼の製
造を提供する。 【解決手段】 所定の化学成分を含有し、かつPcm値が
0.18%以下で、残部Fe及び不可避不純物からなる
鋼片をAc3 変態点〜1150℃に加熱後、累積圧下率
が30%以上の熱間圧延を800℃以上で終了し、引き
続き冷却速度が3〜30℃/sの加速冷却を750℃以上
から開始し、650℃以下、500℃以上で停止するこ
とを特徴とする、溶接性と靭性に優れた板厚50〜20
0mmの高張力鋼の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張強度が570
MPa級で、溶接性と靭性が要求される構造物全般に供
される構造物用鋼の製造方法に関するもので、特に板厚
が50〜200mmの厚手材において優れた溶接性と強度
・靭性とが両立した鋼の製造に有用である。用途として
は、例えば建築構造物、海洋構造物、船舶、橋梁、ライ
ンパイプ等の溶接構造物に用いることができる。また鋼
の形態は特に問わないが、構造部材として用いられ、低
温靭性が要求される鋼板、特に厚板、鋼管素材あるいは
形鋼で有用である。
【0002】
【従来の技術】一般に、引張強度が570MPa以上の
高張力鋼は、省合金と溶接性確保の観点から、焼入れ焼
戻し、あるいは加工熱処理(TMCP)等の調質処理に
より製造されるのが一般的である。しかし、板厚が50
mm程度以上の厚手材においては、強度確保のために合金
元素量が高くならざるを得ないため、調質処理を前提と
した場合でも溶接性、靭性の確保が困難となる。
【0003】引張強度が570MPa以上の高張力鋼の
製造方法としては、再加熱焼入れ・焼戻し処理が先ず挙
げられる。ただしこの製造方法では、厚手材において強
度・靭性と溶接性とを両立させることは容易でない。溶
接性に優れた高張力鋼の製造方法としては、例えば特開
平11−80832号公報において、Pcm値が0.17
〜0.23%で引張強度が565MPa以下の高張力鋼
を、加工熱処理と再加熱焼入れ+焼戻しによって製造す
る方法が開示されているが、Pcm値が0.18%以下の
組成で引張強さが570MPa以上で、かつ再加熱焼入
れ焼戻しによらない生産性の高い製造方法は今まで示さ
れていない。
【0004】再加熱焼入れ・焼戻しに比べて焼入性を高
められ、比較的合金元素量を低減することが可能で、溶
接性を向上できる方法として、直接焼入れ・焼戻し処理
がある。この製造方法では、焼入れ前の合金元素の固溶
量が再加熱焼入れ・焼戻しに比べて多く、またオーステ
ナイト粒径が比較的粗大であるため、焼入性が向上す
る。ただしこの製造方法においては、熱間圧延において
低温圧延となる制御圧延によってオーステナイト粒の微
細化を図っておかないと、靭性の劣化が顕著となる懸念
がある。また両方法とも、焼入れ後は靭性を高めるため
に焼戻し処理が必須であり、その分生産性が低下し製造
コストが高くなる。
【0005】以上の理由から、強度と溶接性の両立のた
めには、直接焼入れ・焼戻し処理が好ましいと考えられ
るが、制御圧延や焼戻し工程の必要性等、この方法でも
生産性に問題があり、また再加熱焼入れ・焼戻しに比べ
て相対的には溶接性向上が望めるものの、例えば板厚5
0mm以上の厚手材で、溶接の予熱が完全に不要となるよ
うな化学組成とすることは非常に困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明において
は、生産性の高い製造方法を前提として、板厚50〜2
00mmの厚手材においても、引張強度が570MPa以
上で、かつ靭性と溶接性とを同時に向上できる方法を提
供することを課題とした。靭性としては、一般の溶接構
造物として十分な安全性を確保できるよう、2mmVノッ
チシャルピー衝撃試験の破面遷移温度が−20℃以下で
あること、溶接性としては、室温での予熱が不要となる
組成として、Pcm値で0.18%以下にできることとし
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生産性の
高い製造方法として、圧延後引き続き加速冷却を行う直
接焼入れ法においてさらに焼戻しを省略すべく、加速冷
却を途中で停止する方法を採用し、該製造方法において
上記課題を満足するための成分、製造条件の研究を行
い、低Pcmと強度・靭性との両立のためには、強化方法
として細粒化と析出強化を活用すべきであると判断する
に至った。
【0008】先ず細粒化については、生産性を阻害する
制御圧延によるよりも、鋼片の加熱温度を低温化して加
熱オーステナイト粒径を微細化する方が好ましい。加え
て、低温加熱は熱間圧延温度が必然的に低温化するた
め、生産性を阻害ことなく制御圧延効果が得られる利点
もある。
【0009】本発明においては、低温加熱と引き続く熱
間圧延の最適化を行った上で、低温加熱、加速冷却途中
停止プロセスにおいて、Pcmを高めることなく強度と靭
性とを向上させるための成分元素の検討を詳細に行い、
Vが低温オーステナイト温度域で析出と固溶とが適正に
バランスし、V析出物によるピン止め効果で加熱オース
テナイトが微細化すると共に、変態後のフェライトマト
リクス中での析出強化も期待できることを見出した。V
は加速冷却の途中停止後の冷却段階でも析出が可能で、
析出強化に寄与する。
【0010】さらに本発明者らは、加速冷却を途中で停
止するプロセスにおいて、V単独では強化の程度は小さ
いが、Moと複合添加することで析出強化量が顕著に増
加することを初めて見出した。このような低温加熱、加
速冷却途中停止プロセスにおけるV、およびV,Mo複
合添加による組織微細化、強度向上の効果は、他の析出
強化元素ではあまり大きく期待できない。
【0011】本発明は、以上の新知見に基づいて、必要
特性を満足するための具体的要件を実験に基づいて明ら
かにして発明に至ったものであり、その要旨とするとこ
ろは以下のとおりである。 (1)質量%で、 C :0.01〜0.12%、 Si:0.01〜1%、 Mn:0.1〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Al:0.001〜0.1%、 N :0.001〜0.01%、 V :0.03〜0.3%、 Mo:0.05〜0.5% を含有し、さらに下記(1)式で示されるPcm値が0.
18%以下で、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片
をAc3 変態点〜1150℃に加熱後、累積圧下率が3
0%以上の熱間圧延を800℃以上で終了し、引き続き
冷却速度が3〜30℃/sの加速冷却を750℃以上から
開始し、650℃以下、500℃以上で停止することを
特徴とする、溶接性と靭性に優れた板厚50〜200mm
の高張力鋼の製造方法。 Pcm=C%+Si%/30+Mn%/20+Cu%/20+Ni%/60+Cr%/20+Mo%/15+V%/10+5B% …… (1) (2)鋼片が、質量%でさらに、 Ni:0.1〜3%、 Cu:0.05〜1.5%、 Cr:0.05〜2%、 W :0.1〜2%、 Ti:0.003〜0.1%、 Nb:0.003〜0.5%、 Ta:0.01〜0.5%、 Zr:0.005〜0.1%、 B :0.0002〜0.005% の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記
(1)に記載の溶接性と靭性に優れた板厚50〜200
mmの高張力鋼の製造方法。 (3)鋼片が、質量%でさらに、Mg:0.0001〜
0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、RE
M:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有
することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の
溶接性と靭性に優れた板厚50〜200mmの高張力鋼の
製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て詳細に述べる。本発明は、製造方法の限定と同時に化
学組成の適正化も必須である。そこで、先ず化学組成
(質量%)の限定理由とその作用を述べる。Cは鋼の強
度を向上させる有効な成分として含有するもので、0.
01%未満では構造用鋼に必要な強度の確保が困難であ
るが、0.12%を超える過剰の含有は母材及び溶接部
の靭性や耐溶接割れ性を低下させるため、0.01〜
0.12%の範囲とした。
【0013】Siは脱酸元素として、また母材の強度確
保に有効な元素であるが、0.01%未満の含有では脱
酸が不十分となり、また強度確保に不利である。逆に1
%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を形成して延性や
靭性の劣化を招く。そこでSiの範囲は0.01〜1%
とした。
【0014】Mnは母材の強度、靭性の確保に必要な元
素であり、最低限0.1%以上含有する必要があるが、
過剰に含有すると、硬質相の生成や粒界脆化等により母
材靱性や溶接部の靭性、さらに溶接割れ性などを劣化さ
せるため、材質上許容できる範囲で上限を3%とした。
【0015】Pは不純物元素であり、鋼の特性に対して
有害であるため極力低減する方が好ましいが、本発明に
おいては実用上悪影響を許容できる量として、上限を
0.02%とする。
【0016】Sも基本的には不純物元素であり、特に鋼
の延性、靭性に悪影響が大きいため低減が好ましい。実
用上悪影響が許容できる量として上限を0.01%に限
定する。ただしSは微量範囲では、微細硫化物を形成し
て溶接熱影響部(HAZ)靭性向上に寄与するため、H
AZ靭性を考慮する場合は0.0005〜0.005%
の範囲で添加することが好ましい。
【0017】Alは脱酸、加熱オーステナイト粒径の細
粒化等に有効な元素であるが、効果を発揮するためには
0.001%以上含有する必要がある。一方、0.1%
を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延
性を極端に劣化させるため、0.001〜0.1%の範
囲に限定する必要がある。
【0018】Nは、VやAlやTiと結びついてオース
テナイト粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械
的特性向上に有効である。また、工業的に鋼中のNを完
全に除去することは不可能であり、必要以上に低減する
ことは製造工程に過大な負荷をかけるため好ましくな
い。そのため、工業的に制御が可能で、製造工程への負
荷を許容できる範囲として下限を0.001%とする。
一方、過剰に含有すると固溶Nが増加し、延性や靭性に
悪影響を及ぼす可能性があるため、許容できる範囲とし
て上限を0.01%とする。
【0019】Vは析出強化により母材の強度を向上する
ため、本発明においては必須の元素である。下記に示す
Moと共存してその発現効果が大となるが、効果を発揮
するためには0.03%以上必要である。添加量が多く
なるほど強化量も増加するが、それに伴って母材靭性、
HAZ性が劣化し、かつ析出物が粗大化して強化の効果
も飽和する傾向となるため、強化量に対して靭性劣化が
小さい範囲として、上限を0.3%とする。
【0020】MoはVによる析出強化を最大限利用する
上で必須の元素である。Moが存在することにより、熱
間加工で導入された転位、空孔の消滅が抑制され、Vの
析出サイトとして働くため、Vの析出強化量が増加す
る。また、Moにはそれ自身でも固溶強化、析出強化、
さらには変態強化による強化への寄与が期待できる。こ
れらの効果は0.05%未満では期待できず、0.5%
超では効果が飽和する上、溶接性を阻害するようになる
ため、本発明においてはMoを0.05〜0.5%に限
定する。
【0021】以上が本発明の鋼材の基本成分の限定理由
であるが、本発明においては、強度・靭性の調整のため
に、必要に応じてNi,Cu,Cr,W,Ti,Nb,
Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含有することが
できる。
【0022】Niは母材の強度と靭性を同時に向上で
き、非常に有効な元素であるが、効果を発揮するために
は0.1%以上の添加が必要である。Ni量は増加する
ほど母材の強度・靭性を向上させるが、3%を超えるよ
うな過剰な添加では、効果が飽和する一方でHAZ靭性
や溶接性の劣化を生じる懸念があり、また高価な元素で
あるため経済性も考慮して、本発明においてはNiの上
限を3%とする。
【0023】CuもNiとほぼ同様の効果を有する元素
であるが、効果を発揮するためには0.05%以上の添
加が必要であり、1.5%超の添加では熱間加工性やH
AZ靭性に問題を生じるため、本発明においては0.0
5〜1.5%の範囲に限定する。
【0024】Crは焼入性の向上、固溶強化により強度
向上に有効な元素であり、効果を生じるためには0.0
5%以上必要であるが、Crは過剰に添加すると焼入れ
硬さの増加、粗大析出物の形成等を通して、母材やHA
Zの靭性に悪影響を及ぼすため、許容できる範囲として
上限を2%に限定する。
【0025】WもCrと同様な効果によって強度を高め
るのに有効な元素であるが、効果を発揮でき、他特性に
悪影響を及ぼさない範囲として0.1〜2%に限定す
る。
【0026】Tiはオーステナイト中に安定なTiNを
形成して、母材だけでなくHAZの加熱オーステナイト
粒径微細化に寄与するため、強度向上に加えて靭性向上
にも有効な元素である。ただし、その効果を発揮するた
めには0.003%以上含有させる必要がある一方、
0.1%を超えて過剰に含有させると、粗大なTiNを
形成して靭性を逆に劣化させるため、本発明においては
0.003〜0.1%の範囲に限定する。
【0027】Nbは、本発明においては主として変態強
化により微量で高強度化に寄与する。また、オーステナ
イトの加工・再結晶挙動に大きな影響を及ぼすため、母
材靭性向上にも有効である。効果を発揮するためには
0.003%以上必要である。ただし、0.5%を超え
て過剰に添加すると靭性を極端に劣化させるため、本発
明においては0.003〜0.5%の範囲に限定する。
【0028】TaもNbと同様の効果を有し、適正量の
添加により強度、靭性の向上に寄与するが、0.01%
未満では効果が明瞭には生ぜず、0.5%を超える過剰
な添加では粗大な析出物に起因した靭性劣化が顕著とな
るため、範囲を0.01〜0.5%とする。
【0029】Zrも強度向上に有効な元素であるが、効
果を発揮するためには0.005%以上必要である。一
方、0.1%を超えて過剰に添加すると粗大な析出物を
形成して靭性に悪影響を及ぼすため、上限を0.1%と
する。
【0030】Bは極微量で焼入性を高める元素であり、
高強度化に有効な元素である。Bは固溶状態でオーステ
ナイト粒界に偏析することによって焼入性を高めるた
め、極微量でも有効であるが、0.0002%未満では
粒界への偏析量を十分に確保できないため、焼入性向上
効果が不十分となったり、効果にばらつきが生じたりし
やすくなるため好ましくない。一方、0.005%を超
えて添加すると、鋼片製造時や再加熱段階で粗大な析出
物を形成する場合が多いため、焼入性向上効果が不十分
となったり、鋼片の割れや析出物に起因した靭性劣化を
生じる危険性も増加する。そのため、本発明においては
Bの範囲を0.0002〜0.005%とする。
【0031】さらに本発明においては、延性の向上、継
手靭性の向上のために、必要に応じてMg,Ca,RE
Mの1種または2種以上を含有することができる。M
g,Ca,REMは、いずれも硫化物の熱間圧延中の展
伸を抑制して延性特性向上に有効である。酸化物を微細
化させて継手靭性の向上にも有効に働らく。その効果を
発揮するための下限の含有量は、Mgは0.0001
%、Caは0.0005%、REMは0.005%であ
る。一方、過剰に含有すると硫化物や酸化物の粗大化を
生じ、延性、靭性の劣化を招くため、上限を各々Mg,
Caは0.01%、REMは0.1%とする。
【0032】本発明においてはさらに、前記(1)式で
示したPcm値を0.18%以下に限定する。これは溶接
性を確保するための要件である。すなわち、溶接の拘束
が厳しい場合には溶接熱影響部において低温割れを生じ
る恐れがあるが、Pcm値が0.18%以下であれば、拘
束の厳しいy開先拘束割れ試験においても割れ防止限界
予熱温度がほぼ0℃以下となり、通常の溶接条件では、
予熱を施さなくても確実に低温割れを回避できるためで
ある。
【0033】次に、製造方法に関する要件について説明
する。本発明の目的とするところの、Pcm値が0.18
%以下で、引張強度が570MPa以上の靭性に優れた
厚手高張力鋼を達成するための方法は、本発明の化学組
成範囲を満足する鋼片を、Ac3 変態点〜1150℃に
加熱後、累積圧下率が30%以上の熱間圧延を800℃
以上で終了し、引き続き冷却速度が3〜30℃/sの加速
冷却を750℃以上から開始し、650℃以下、500
℃以上で停止することを要件とする。
【0034】先ず、熱間圧延に先立って鋼片をAc3 変
態点〜1150℃に加熱する。これは、加熱温度がAc
3 変態点未満ではフェライトとオーステナイトとの混合
組織となって、粗大なフェライトが残存して強度低下、
靭性劣化を生じる可能性があって好ましくない。また1
150℃超では加熱オーステナイト粒径が粗大化するた
めに、変態組織の微細化によって強度、靭性の向上を図
るためには低温での制御圧延が必要となり、生産性が低
下するため、高生産性を目的としている本発明には適さ
ない。なお、Vによる加熱オーステナイト粒の微細化効
果と析出強化との両立のためには、鋼片の加熱温度をA
c3 変態点以上、1050℃以下とすることがより好ま
しい。
【0035】鋼片をAc3 変態点〜1150℃に加熱し
た後、さらに熱間圧延によってオーステナイトの微細化
を図る。低温加熱とVの添加によって加熱オーステナイ
ト粒がもともと微細であるため、累積圧下率で30%以
上の圧延を行えば、再結晶によってさらにオーステナイ
トの細粒化が進行する。累積圧下率は大きいほど再結晶
による細粒化効果は大きくなる。
【0036】本発明においては、低温加熱とVの添加に
よって加熱オーステナイト粒がもともと微細であるため
再結晶は容易であり、また一般の制御圧延と異なり、オ
ーステナイトの未再結晶域圧延による効果を必須要件と
していないため、該熱間圧延の温度条件はほとんど考慮
する必要はない。ただし本発明においては、生産性の観
点から800℃以上で熱間圧延を終了することとする。
Nbが添加されている場合には、800℃以上で圧延を
終了してもオーステナイト未再結晶域圧延を含む場合も
あるが、材質的な悪影響は全くなく、問題ない。
【0037】熱間圧延に引き続き、加速冷却を施す。低
Pcm成分において、50mm以上の厚手材で引張強度を5
70MPa以上とするためには加速冷却が必須であり、
加速冷却の条件としては、冷却速度が3〜30℃/sの加
速冷却を750℃以上から開始し、650℃以下、50
0℃以上の範囲で停止することを要件とする。加速冷却
の冷却速度が3℃/s未満では、組織の微細化が十分でな
く、強度を確保することが困難となる。一方、30℃/s
超では、表面硬度が過大となり、応力腐食割れに対する
感受性の増加や加工性の劣化の懸念が大きくなるため好
ましくない。従って、本発明では加速冷却の冷却速度を
3〜30℃/sに限定する。
【0038】加速冷却の開始温度を750℃以上から開
始するのは、加速冷却の開始までに粗大な組織が変態を
開始することを回避することが目的であり、本発明の化
学組成範囲の鋼においては、750℃以上で加速冷却を
開始すれば、加速冷却前の変態は最大限でも材質に悪影
響を及ぼさない程度に微量であり、大半は加速冷却中に
微細組織変態して強度・靭性向上に寄与する。
【0039】本発明においては、加速冷却を650℃以
下、500℃以上の範囲で停止する。本発明の如く生産
性を考慮して、加速冷却ままを最終状態として焼戻しを
行わない場合、加速冷却を途中で停止して、焼入れに伴
う残留応力の軽減、過大な表面硬度の防止、靭性に好ま
しくない硬質相の自己焼戻し、さらには加速冷却停止後
の冷却中におけるV等の析出を利用した析出強化、等を
図る必要がある。そのためには、加速冷却を500℃以
上で停止する必要がある。一方、加速冷却の停止温度の
上限を650℃に限定したのは、加速冷却の停止温度が
650℃超であると、加速冷却停止後も無視できない量
の未変態オーステナイトが存在して、該オーステナイト
が加速冷却停止後の冷却速度の遅い冷却過程で粗大組織
に変態して、強度、靭性の劣化を生じるためである。
【0040】なお、加速冷却停止後の冷却は、一定以上
に徐冷とする必要があるが、板厚が50mm以上の場合は
放冷で十分効果を発揮する。より析出強化を図るため
に、放冷よりもさらに冷却速度を低減しても構わない
が、析出物の粗大化、転位密度低下による強度低減を生
じないために、加速冷却停止後の冷却速度は、200℃
以上までは0.1℃/s以上であることが好ましい。
【0041】なお本発明は、一般的に溶接性(低Pcm)
と同時に強度・靭性を確保することが困難な、板厚が5
0〜200mmの厚手高張力鋼の製造に対して特に有用で
あるが、本発明を板厚50mm未満の高張力鋼の製造へ適
用することをなんら妨げるものではない。
【0042】次に、本発明の効果を実施例によってさら
に具体的に述べる。
【実施例】実施例に用いた供試鋼の化学組成を表1に示
す。本発明の化学組成を有する鋼片番号1〜10と、本
発明の化学組成範囲を逸脱している鋼片番号11〜15
において、表2に示す製造条件により鋼板を製造し、機
械的性質を調査した。機械的性質としては、引張特性及
び2mmVノッチシャルピー衝撃特性を調査した。機械的
性質は、圧延方向に直角な方向(C方向)の板厚中心部
から試験片を採取して実施した。機械試験結果を表3に
示す。
【0043】鋼材 No.A1〜A12は本発明により製造
したものであり、鋼材 No.B1〜B8は本発明のいずれ
かの要件を満足していないものである。表3の機械的性
質から明らかなように、本発明による鋼材 No.A1〜A
12は、板厚が50mm以上の厚手材で、かつPcmが0.
18%以下で、溶接性が極めて良好であるにもかかわら
ず、引張強度として600MPa以上が達成されてお
り、また、靭性も2mmVノッチシャルピー衝撃試験の破
面遷移温度(vTrs)で−50℃以下と極めて良好と
なっている。
【0044】一方、本発明の要件を満足していない鋼材
No.B1〜B8の鋼板は、本発明により製造された鋼材
No.A1〜A12の鋼板に比べて、強度、靱性、あるい
は溶接性のうちの1つ以上が劣っていることが明らかで
ある。先ず、鋼材 No.B1〜B5は化学組成が本発明を
満足していないために、製造方法は本発明を満足してい
るものの、十分な特性を達成できなかった例である。鋼
材 No.B1は、C及びPcm値が過剰であり、その結果、
靭性と溶接性とが本発明に比べて劣っている。鋼材 No.
B2は、Vが含有されていないため、本発明のような焼
戻しを行わない製造方法では、強度が570MPa級鋼
としては十分でない。鋼材 No.B3は、Vは含有されて
いるもののMoが無添加であるため、Vによる強化が十
分でなく、従って強度が低めとなっている。鋼材 No.B
4は、個々の成分は本発明の範囲内であるものの、Pcm
値が0.18%を超えているため溶接性が劣る。鋼材 N
o.B5は、P含有量が過大であるため靭性と溶接性とが
劣化している。
【0045】次に、鋼材 No.B6〜B8は、化学組成は
本発明を満足しているものの、製造方法が本発明の範囲
を逸脱しているために、本発明により製造したものに比
べて特性が劣っている例である。鋼材 No.B6は、鋼片
の加熱温度が過大であるため、本発明のように生産性の
観点から温度待ちを行わない場合は、圧延の仕上げ温度
が高くなるために靭性が十分でない。鋼材 No.B7は、
加速冷却の開始温度が低すぎるため、圧延と加速冷却ま
での放冷中に粗大な初析フェライトが生成してしまい、
強度が570MPa級鋼としては十分でなく、靭性も若
干劣化している。鋼材 No.B8は、加速冷却の停止温度
が低すぎるため、引張強度の割には降伏応力が過小とな
っており、靭性が本発明に比べて劣っている。
【0046】以上の実施例から、本発明によれば、温度
待ちのある制御圧延や焼戻し工程を含まない生産性の高
い製造方法においても、板厚50mm以上の厚手材におい
て、引張強度が570MPa以上で、かつ靭性と溶接性
とを同時に向上できることが明らかである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】本発明により、生産性の高い製造方法に
よっても、板厚50〜200mmの厚手材において、引張
強度が570MPa以上で、かつ靭性と溶接性とを同時
に向上した鋼材を提供することが可能となり、産業上の
効果は極めて顕著である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白幡 浩幸 大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA08 AA11 AA12 AA14 AA15 AA16 AA17 AA19 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA33 AA35 AA36 AA37 AA39 AA40 BA01 CA01 CA02 CB02 CC03 CC04 CD02 CD03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.01〜0.12%、 Si:0.01〜1%、 Mn:0.1〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Al:0.001〜0.1%、 N :0.001〜0.01%、 V :0.03〜0.3%、 Mo:0.05〜0.5% を含有し、さらに下記(1)式で示されるPcm値が0.
    18%以下で、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片
    をAc3 変態点〜1150℃に加熱後、累積圧下率が3
    0%以上の熱間圧延を800℃以上で終了し、引き続き
    冷却速度が3〜30℃/sの加速冷却を750℃以上から
    開始し、650℃以下、500℃以上で停止することを
    特徴とする、溶接性と靭性に優れた板厚50〜200mm
    の高張力鋼の製造方法。 Pcm=C%+Si%/30+Mn%/20+Cu%/20+Ni%/60+Cr%/20+Mo%/15+V%/10+5B% …… (1)
  2. 【請求項2】 鋼片が、質量%でさらに、 Ni:0.1〜3%、 Cu:0.05〜1.5%、 Cr:0.05〜2%、 W :0.1〜2%、 Ti:0.003〜0.1%、 Nb:0.003〜0.5%、 Ta:0.01〜0.5%、 Zr:0.005〜0.1%、 B :0.0002〜0.005% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1に記載の溶接性と靭性に優れた板厚50〜200mm
    の高張力鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼片が、質量%でさらに、 Mg:0.0001〜0.01%、 Ca:0.0005〜0.01%、 REM:0.005〜0.1% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1または2に記載の溶接性と靭性に優れた板厚50〜
    200mmの高張力鋼の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008156750A (ja) * 2006-11-30 2008-07-10 Jfe Steel Kk 板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板およびその製造方法
US8246768B2 (en) 2005-11-09 2012-08-21 Nippon Steel Corporation High-tensile steel plate of low acoustic anisotropy and high weldability having yield stress of 450 MPa or greater and tensile strength of 570 MPa or greater, and process for producing the same
CN108728729A (zh) * 2017-04-24 2018-11-02 鞍钢股份有限公司 一种低屈强比的高强度调质型容器钢及其生产方法
CN109868412A (zh) * 2019-02-18 2019-06-11 山东钢铁股份有限公司 一种焊前免预热大厚度低碳当量500MPa级高强钢及其制造方法

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