JP2000038254A - 糸条パッケージのボビン検査方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボビンの傷、欠損等の欠陥を誤認識すること
なく安定して検出し、かつ処理も高速に行える糸条パッ
ケージのボビン検査方法を提供する。 【解決手段】 ボビン(2)上に糸巻体(1)を形成させた糸
条パッケージ(P)を所定の測定位置に配置し、欠陥を検
査する必要のある範囲内でボビン(2)の各測定点と予め
設定した測定基準位置との間の距離を変位測定手段(5)
によって測定し、各測定点とこれに対応する測定距離と
の間で一対一の対応関係を持つパターン情報とし、欠陥
が無いと判定するするために予め作成された正常パター
ンと得られたパターン情報とを比較し、そして正常パタ
ーンに合致しなかった場合にボビン(2)に欠陥が有ると
判別することを特徴とする糸条パッケージのボビン検査
方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、合成繊維糸条を巻
き取るためのボビンに生じた欠陥を自動的に検査するた
めのボビンの検査方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、連続して繰り出される合成繊維
糸条を糸条パッケージとして、一旦巻き取り機によって
筒状体（以下、「ボビン」と呼ぶ）に巻き取ることが行
われている。巻き取った糸条パッケージは、その後、後
加工工程へ送られていく訳であるが、繰り返し使用する
と、ボビンの表面部や端面部に傷を生じる。このような
場合、糸条パッケージから巻き取られた糸条を解舒して
行く際に、糸条がその傷に引っかかり、解舒がうまくで
きなかったり、断糸が起こったりする。このような事態
が生じると、加工機の運転を一時停止して必要な対策を
施した後、加工機を再立ち上げする必要があるため、加
工機の稼働効率を著しく損なってしまう結果となる。こ
のような問題を回避するためには、糸条パッケージの選
別工程において、ボビン自体の傷を作業者の目視によっ
て検査し、傷を発見した糸条パッケージを選別すること
が行われている。

【０００３】ボビンの欠陥の検査は、前述のように主に
作業者の目視チェックで行われている。その上、ボビン
は、糸条パッケージの一部を構成するという性質上、糸
条パッケージの一部を構成する巻糸体の毛羽や綾外れ等
の外観検査と同時にその検査が行われることが多い。し
かも、生産性の向上という観点からボビン検査に十分な
時間をかける余裕はなく、短時間で検査を終了しなけれ
ばならないのが実状である。さらに、この作業は、単調
な繰り返し作業であるために、作業者にとっては疲労の
著しい作業である。なお、この作業においては、例え熟
練した作業者であっても個人差、体調、疲労度合いによ
って選別結果にばらつきが生じ、誤って傷のあるボビン
を後工程へ流してしまうこともある。

【０００４】以上に述べたような諸条件が重なって、糸
条パッケージを構成するボビンの欠陥の検査は、内容的
に非常に自動化が困難な作業であって、この作業を軽減
あるいは自動的に行う手段が現状ではないというのが実
状である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は前記の諸問題
に鑑みなされたもので、その解決しようとする課題は、
「糸条パッケージの一部を構成するボビンの傷等の欠陥
を誤認識することなく、安定かつ迅速に検出することが
できる、糸条パッケージ用ボビンの自動検査方法を提供
する。」ことにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】ここに、請求項１の発明
として、「ボビン上に糸巻体を形成させた糸条パッケー
ジを所定の測定位置に配置し、欠陥を検査する必要のあ
る範囲内でボビンの各測定点と予め設定した測定基準位
置との間の距離を変位測定手段によって測定し、各測定
点とこれに対応する測定距離との間で一対一の対応関係
を持つパターン情報とし、欠陥が無いと判定するするた
めに予め作成された正常パターンと得られたパターン情
報とを比較し、そして正常パターンに合致しなかった場
合にボビンに欠陥が有ると判別することを特徴とする糸
条パッケージのボビン検査方法」が提供される。

【０００７】また、請求項２の発明として、「請求項１
記載の糸条パッケージのボビン検査方法であって、欠陥
を持たないボビンに対して予め得られたパターン情報に
対して外乱の影響を排除するための閾値幅を設定し、該
閾値を越えないパターン情報を前記の正常パターンとす
ることを特徴とする糸条パッケージのボビン検査方法」
が提供される。

【０００８】また、請求項３の発明として、「請求項１
又は請求項２記載の糸条パッケージのボビン検査方法で
あって、糸条パッケージ又は変位測定手段を回転させ
て、前記測定基準位置とボビンの各測定点との間の距離
を測定することを特徴とする糸条パッケージのボビン検
査方法」が提供される。

【０００９】更に、請求項４の発明として、「請求項２
記載の糸条パッケージのボビン検査方法であって、得ら
れた測定距離情報が前記の閾値を越えてから、該閾値を
下方に横切るまでの間、該測定距離情報を積算し、この
積算量の大小によって糸条パッケージのボビンに存在す
る欠陥を判定することを特徴とする糸条パッケージのボ
ビン検査方法」が提供される。

【００１０】そして、請求項５の発明として、「請求項
１記載の糸条パッケージのボビン検査方法であって、欠
陥を検査する必要のある糸条パッケージのボビンの各測
定点と予め設定した測定基準位置との間の距離を変位測
定手段によって測定するに際して、レーザー光を使用す
ることを特徴とする糸条パッケージのボビン検査方法」
が提供される。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。図１は本発明の方法の模式
説明図である。該図において、１は巻糸体、２はボビン
をそれぞれ示し、糸条パッケージＰはこれらの巻糸体１
とボビン２とから構成されている。また、３は該糸条パ
ッケージＰを載せるためのトレイ、４は該トレイ３に設
けられた糸条パッケージＰの回転手段をそれぞれ示す。
なお、トレイ３には、糸条パッケージＰを保持するボビ
ンホルダー（図示せず）が設けられており、その後部に
は該ボビンホルダーを回転させる前記の回転手段４が設
けられているのである。ここで、該回転手段４として
は、公知のものを使用すればよく、一例を挙げれば、回
転角度の制御を容易に行うことができるサーボモータ等
を好適に使用することができる。また、本発明の検査装
置の構成には直接的に関係しないため、該図には示さな
いが、通常、トレイ３に載せられた糸条パッケージＰ
は、ベルトコンベアのような搬送手段によって、糸条パ
ッケージを検査する位置まで次々と正確に位置決め搬送
され、検査が終了すると、次の工程へ送られるようにさ
れている。

【００１２】更に、該図において、５は変位測定手段で
あり、６は情報処理手段であって、該変位測定手段５に
より測定された測定距離情報に基づき、ボビン２の傷の
有無を判断するための手段である。また、７はボビン２
上の傷、８は変位測定手段から投光された光軸をそれぞ
れ示すものとする。なお、該変位測定手段５は、投受光
手段を有し、しかも、指向性の高いレーザー光のような
光軸を利用した光学式のものが好ましい。このような指
向性の高い光軸８を使用するのは、走行する糸条をボビ
ンに捕捉するためにボビンに刻設されたスリット等によ
って誤った距離検出が行われるのを回避するためであ
る。このようにして、変位測定手段５によって検出され
た距離情報は、情報処理を容易とするために、例えば測
定距離に正比例或いは反比例した電圧信号として変位測
定手段５から情報処理手段６へと送られる。

【００１３】以上のように構成された検査装置におい
て、ボビンの欠陥を検査する本発明の方法について、更
に、図２を援用しながら以下に詳細に説明する。

【００１４】本発明の方法では、先ず糸条パッケージＰ
を予め正確に位置決め制御された所定の測定位置へと配
置させる。そして、変位測定手段５のレーザー光の受光
位置と、レーザー光の光軸８がボビン２に交差する位置
との間の距離の測定を開始する。この距離の測定は、レ
ーザー光をボビン２上に投光し、その反射光を受光する
公知の測定方法等によっ行われる。なお、この距離の測
定は、ボビンホルダーに把持された糸条パッケージＰを
回転手段４によって糸条パッケージＰを回転させる場合
にあっては、糸条パッケージＰの回転が行われている間
中にも行われる。したがって、回転手段４によって糸条
パッケージＰが一回転させられた時点では、結果として
ボビン２の全周に渡って測定基準位置（図１の実施態様
では、変位測定手段５が固定されている位置）からの距
離が測定されたこととなる。この際、光軸８がボビン２
と交差する位置については、ボビン２の端面部から巻糸
体１が形成されている表面部まで必要に応じて、ボビン
の欠陥を検査する必要がある範囲に合せて調整可能なよ
うにされている。

【００１５】本発明の方法では、欠陥を検査する必要の
ある範囲内でボビン２の各測定点と予め設定した測定基
準位置との間の距離を変位測定手段５によって測定す
る。これを図１の実施態様に即して述べれば、回転手段
４でボビン２を一回転させることによって、ボビン２の
全周の各側定点において一対一に対応する距離情報を得
ている。そして、得られた距離情報は、測定距離に正比
例する電圧の如き電気情報に変換され、これにより、情
報処理手段６で容易に情報処理できるようになされてい
る。

【００１６】ここで、図２に示したチャートを簡単に説
明すると、該チャートでは縦軸には距離情報を反映する
電気情報である「電圧」、横軸はボビン表面部の端部全
周に渡って測定する各側定点を実質的に代表するように
「ボビン回転角」を採ってある。したがって、これらの
「電圧」と「ボビン回転角」とは、本発明の請求項１で
言う「測定距離」と「各測定点」とをそれぞれ代表して
おり、この故に、該チャートは「各測定点とこれに対応
する測定距離との間で一対一の対応関係を持つパターン
情報」を構成することとなる。なお、前述したように距
離情報は、電気信号に変換して情報処理を容易に行う必
要が有り、この理由から「測定距離」は、その長さに対
応するに相当する「電圧値」に変換されて情報処理手段
６へ転送され、この情報処理手段６において情報処理が
行われてボビンの欠陥の有無が判定されることとなる。

【００１７】ここで、ボビンが持つ欠陥は、ボビンが様
々な要因で受けるダメージによってボビン表面あるいは
端部に形成される。この欠陥として最も深刻なのは、ボ
ビンの表面が剥離したり、欠損したりしている場合であ
る。したがって、以下にはこの様な欠陥を例に採って本
発明の方法を説明する。

【００１８】前記のような欠陥を持つボビンを判別する
方法では、先ず図２（ａ）に示すように情報処理手段６
に入力されてきた電圧信号は、ボビン２への屑糸の付着
やボビン２の真円度の変化などの影響によって変動す
る。したがって、これらの影響を可能な限り排除できる
ようにする必要がある。このため、例えばボビン２の表
面が剥離したり、欠損したような欠陥に対しては、正常
なボビン２の表面が陥没していることとなり、その測定
距離は長くなる（即ち、電圧信号は高くなる）ことを利
用する。つまり、ボビン２の表面が陥没したような欠陥
を持っていれば、この時得られる「各測定点とこれに対
応する測定距離との間で一対一の対応関係を持つパター
ン情報」としは、図２（ａ）のようなチャートが得られ
るのである。この時、ボビン２に陥没、変形、屑糸の付
着等がなく、しかもボビン２が真円であるとすれば、こ
の時のパターンは、該図の破線で示したパターンを持
つ。

【００１９】しかし、一般に情報処理手段６に供給され
る電気信号は、屑糸の付着、ボビンの真円度、測定器の
測定精度等の影響によって生じた物理的ノイズ、或いは
電気的ノイズ等の外乱が混入している。もし、これらの
外乱要因を除去しないで糸条パッケージＰのボビン２の
不良判定を行えば、正常なボビンであるにもかかわらず
不良と判定されてしまう可能性が有る。そこで、陥没欠
陥を持つボビンの不良判定行う場合には、を図２（ａ）
のように閾値を設け、正常なボビン２の表面までの測定
距離よりやや長い（電圧としては高い）ところに設定し
たパターンを「正常パターン」として採用する。そし
て、比較する電圧値情報が閾値を超えた場合、即ち正常
パターンを越えた場合に欠陥と判定する。

【００２０】なお、高い周波数を持つスパイク状の物理
的、電気的ノイズからの影響を軽減するために、ローパ
スフィルターを情報処理手段６に送られてくる信号系に
対して設けることもできる。また、図２（ｂ）のように
閾値以上になった信号（測定距離情報）を閾値を越えて
から、閾値を下方に横切るまでの間積算し、この積算量
（積算面積）の大小が欠陥の有無を判別するための基準
値を越えたかどうかで、ボビンの良否の判定を行うこと
がより望ましい。このようにすると、図２（ａ）で示し
たように閾値だけの判定では、不良（ＮＧ）と判断され
たものが、積算量（積算面積）の大小による良否判断を
導入した方法では、不良でない（ＯＫ）となり、外乱に
よる影響を極力小さくできる。

【００２１】なお、本発明の実施態様例では、光学式の
変位測定手段を例に採って説明したが、ボビンに触針を
当てて、直接ボビンの凹凸を計測する公知の触針式の変
位測定手段によっても行うことができる。ただし、非接
触でかつ迅速に距離測定が行えるという点で光学式の変
位測定手段が好ましい。また、本発明の方法では、糸条
パッケージを回転させる実施態様例について説明した
が、糸条パッケージを固定しておき、変位測定手段をボ
ビンの周りに回転させるようにしても良いことは言うま
でもない。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、シンプルかつ安価な構
成でボビンの欠陥を高速に検査できるため、選別ライン
の稼動率を損ねることなく現状の目視検査に変えての適
用が可能で、疲労度の高い作業から作業者を開放するこ
とが可能という顕著な効果を奏す。また、屑糸やノイズ
等の外乱による影響を容易に排除でき、精度の高い検査
結果を得ることができるという効果も奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、実施態様例を示す概略システム図であ
る。

【図２】図２は、基準位置とボビンとの間の距離と、変
位計から情報処理手段へ転送されてくる信号との関係を
表す説明図である。

【符号の説明】

１ 糸条パッケージ ２ ボビン ３ トレイ ４ 駆動手段 ５ 変位測定手段 ６ 情報処理手段

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ボビン上に糸巻体を形成させた糸条パッ
   ケージを所定の測定位置に配置し、 欠陥を検査する必要のある範囲内でボビンの各測定点と
   予め設定した測定基準位置との間の距離を変位測定手段
   によって測定し、 各測定点とこれに対応する測定距離との間で一対一の対
   応関係を持つパターン情報とし、 欠陥が無いと判定するするために予め作成された正常パ
   ターンと得られたパターン情報とを比較し、そして正常
   パターンに合致しなかった場合にボビンに欠陥が有ると
   判別することを特徴とする糸条パッケージのボビン検査
   方法。
2. 【請求項２】 請求項１記載の糸条パッケージのボビン
   検査方法であって、 欠陥を持たないボビンに対して予め得られたパターン情
   報に対して外乱の影響を排除するための閾値幅を設定
   し、 該閾値を越えないパターン情報を前記の正常パターンと
   することを特徴とする糸条パッケージのボビン検査方
   法。
3. 【請求項３】 請求項１又は請求項２記載の糸条パッケ
   ージのボビン検査方法であって、糸条パッケージ又は変
   位測定手段を回転させて、前記測定基準位置とボビンの
   各測定点との間の距離を測定することを特徴とする糸条
   パッケージのボビン検査方法。
4. 【請求項４】 請求項２記載の糸条パッケージのボビン
   検査方法であって、得られた測定距離情報が前記の閾値
   を越えてから、該閾値を下方に横切るまでの間、該測定
   距離情報を積算し、この積算量の大小によって糸条パッ
   ケージのボビンに存在する欠陥を判定することを特徴と
   する糸条パッケージのボビン検査方法。
5. 【請求項５】 請求項１記載の糸条パッケージのボビン
   検査方法であって、欠陥を検査する必要のある糸条パッ
   ケージのボビンの各測定点と予め設定した測定基準位置
   との間の距離を変位測定手段によって測定するに際し
   て、レーザー光を使用することを特徴とする糸条パッケ
   ージのボビン検査方法。