JP2000034301A - カルボキシメチルセルロース又はその塩類 - Google Patents

カルボキシメチルセルロース又はその塩類

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水性組成物において、流動性や塗布性および
チクソトロピー性を両立できるカルボキシメチルセルロ
ース又はその塩類(CMC)を得る。 【解決手段】 CMCは、ソルビトール水溶液を調製し
たとき、1時間後の粘度η1 と24時間後の粘度η24
の粘度比η24/η1 が1.4以上である。CMCは、
(1)4重量%食塩水を溶媒としたとき、1重量%溶液
の濁度が30%以上、(2)1重量%水溶液の粘度が2
0〜1000(mPa ・s )、又は(3)平均エーテル化
度が0.6〜1.0である。このようなCMCは、製造
工程のうち、セルロースとアルカリとを反応させてアル
カリセルロースを生成させる工程において、反応温度を
20〜50℃とすることにより得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の粘度特性を
有するカルボキシメチルセルロース又はその塩類および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水性組成物、例えば、塗料、接着
剤、コーティング剤、パップ剤、ソフトクリームなどに
は、カルボキシメチルセルロース又はその塩類(以下、
単にCMCと総称する)が使用されている。
【0003】このような水性組成物には、基材へ円滑に
塗布するための流動性が要求されるとともに、塗布後に
は、非流動化して塗膜を形成することが要求される。し
かし、流動性の高い組成物は塗布性が高いものの、流動
性の高い組成物を塗布すると垂れを生じることがある。
一方、保形性を付与するため、充填剤や粘性調整剤など
を添加して組成物の粘度とともにチクソトロピー性を付
与することが行われている。しかし、組成物の粘度を高
めると、流動性や塗布性が低下する。このように、従来
のCMCを用いると、各物性のバランス、特に流動性や
塗布性とチクソトロピー性とを両立させることが困難で
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、水性組成物の流動性や塗布性およびチクソトロピー
性を両立させることのできるCMCおよびその製造方法
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、特定の粘度特性を有す
るCMCを用いると、高い流動性と高いチクソトロピー
性とを両立できることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明のCMCは、ソルビトー
ル水溶液を調製したとき、1時間後の粘度η1 と24時
間後の粘度η24との粘度比η24/η1 が1.4以上であ
る。
【0007】本発明の方法では、セルロースとアルカリ
とを温度20〜50℃で反応させてアルカリセルロース
を生成させる工程と、アルカリセルロースとモノクロロ
酢酸との反応によりCMCを生成させる工程とで構成さ
れている方法により、特定の粘度特性を有するCMCを
製造する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のCMCの塩型としては、
ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニ
ウム塩などが例示でき、これらの塩の混合物であっても
よい。CMCとしては、通常、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム塩が使用される。
【0009】本発明のCMCは、ソルビトール水溶液を
調製したとき、1時間後の粘度η1と24時間後の粘度
η24との粘度比η24/η1 が1.4以上(例えば、1.
5〜10程度)、好ましくは1.8以上(例えば、2〜
5程度)であり、通常、1.5〜5程度である。粘度比
η24/η1 が1.4未満では、本発明のCMCを含む水
性組成物を基材に塗布した後の粘度上昇が小さく、高い
保形性を付与することが困難である。
【0010】このような粘度比のCMCを用いると、水
性組成物を調製した直後では粘度が低く流動性が高いの
で基材に塗布し易い。一方、基材に塗布した後、しばら
くするとCMCと組成物中に含まれる他成分との相互作
用により、水性組成物の粘度が大きく上昇し、高い保形
性を保持させることができる。
【0011】さらに、本発明のCMCは、4重量%食塩
水を溶媒としたとき、1重量%溶液の濁度が30%以上
(例えば、30〜90%程度)、好ましくは35%以上
(例えば、35〜85%程度)である。このような濁度
を有するCMCは、水性組成物を調製した直後は粘度が
低いため流動性(基材への塗布性)が高く、塗布した
後、しばらくするとCMCと組成物中の他成分との相互
作用により、組成物の粘度が大きく上昇し、高い保形性
を保持できる。なお、濁度が30%未満では、CMCを
含む組成物において、基材へ塗布した後の粘度上昇が小
さく、高い保形性を付与できない。
【0012】さらに、本発明のCMCは、1重量%水溶
液の粘度が20〜1000(mPa ・s )、好ましくは5
0〜800(mPa ・s )、さらに好ましくは90〜40
0(mPa ・s )程度である。このような粘度を有するC
MCを含む水性組成物は、流動性(基材への充填性)お
よび保形性を向上できる。なお、粘度が20(mPa ・s
)未満では、水性組成物の粘度が低く、保形性が低下
しやすく、1000(mPa ・s )を越えると、水性組成
物の粘度が高くなり過ぎて流動性や基材への塗布性が低
下しやすい。
【0013】本発明のCMCの平均エーテル化度は、例
えば、0.6〜1.0、好ましくは0.7〜0.95、
さらに好ましくは0.8〜0.95程度である。平均エ
ーテル化度が0.6未満では、水性組成物に必要な表面
の艶(光沢)が得られなかったり、分散安定性が低下
し、十分な流動性が得られない場合がある。一方、平均
エーテル化度が1.0を越えると、塗布後に高い保形性
を付与できない場合がある。
【0014】なお、CMCの平均重合度は、前記特性の
範囲内で調整でき、例えば、10〜2000、好ましく
は50〜1000、さらに好ましくは200〜800程
度である。
【0015】このようなCMCは、慣用のスラリー法
(高液倍率法)やニーダー法(低液倍率法)などの種々
の方法、例えば、セルロースとアルカリとを反応させて
アルカリセルロースを生成させる工程(マーセル化工程
又はアルセル化工程)と、アルカリセルロースとモノク
ロロ酢酸との反応によりカルボキシメチルセルロースを
生成させる工程(エーテル化工程又はカルボキシメチル
化工程)とで構成された方法により製造できる。
【0016】セルロースとしては、種々の原料、例え
ば、木材パルプ,リンターパルプなどが使用できる。ア
ルカリとしては、アルカリ(リチウム,カリウム,ナト
リウムなど)、アンモニアなどが利用できる。アルカリ
としては、通常、ナトリウムが使用される。アルカリ
は、通常、水酸化物又は水溶液として使用される。
【0017】マーセル化工程において、アルカリ(水酸
化ナトリウムなど)の使用量は、通常、セルロース10
0重量部に対して30〜80重量部、好ましくは40〜
75重量部程度の範囲から選択できる。なお、スラリー
法において、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)の使用
量は、通常、セルロース100重量部に対して35〜7
0重量部、好ましくは45〜65重量部程度である。ス
ラリー法では、セルロース濃度1〜7重量%程度、ニー
ダー法では、セルロース濃度10〜25重量%程度でマ
ーセル化を行う場合が多い。また、マーセル化工程での
アルカリ濃度は、スラリー法,ニーダー法などにより異
なるが、スラリー法では、通常、1〜10重量%程度の
水性媒体中で行うことができ、ニーダー法では、通常、
濃度2〜15重量%程度の水性媒体中で行うことができ
る。
【0018】マーセル化工程は、適当な溶媒の存在下で
行ってもよい。溶媒としては、例えば、水,アルコール
類(エタノール,イソプロパノールなど),ケトン類
(アセトン),セロソルブ類(メチルセロソルブ,エチ
ルセロソルブなど)などが例示できる。
【0019】本発明において、アルカリセルロース生成
工程では、温度20〜50℃、好ましくは25〜40
℃、さらに好ましくは25〜35℃で反応させるのが有
利である。反応温度が低いと、前記特性を有するCMC
を得ることが困難である。
【0020】カルボキシメチル化工程において、モノク
ロロ酢酸の使用量は、カルボキシメチル化の程度に応じ
て選択でき、例えば、セルロース100重量部に対して
30〜100重量部、好ましくは45〜75重量部程度
の範囲から選択できる。
【0021】このようにして生成したCMCは、脱液、
洗浄して乾燥することにより精製できる。なお、必要で
あれば、反応終了後、粘度調整のため、過酸化水素,過
酢酸などの過酸化物で処理してもよい。
【0022】前記のように本発明のCMCは特定の粘度
特性を有するため、本発明のCMCを含む水性組成物
は、塗布する際の流動性や塗布性およびチクソトロピー
性を両立させることができる。よって、得られた水性組
成物は種々の用途に使用できる。例えば、エマルジョン
の乳化剤や保護コロイド、塗料、接着剤、パップ剤、コ
ーティング剤などが挙げられる。さらには合成洗剤のビ
ルダー、その粘性を利用したソフトクリームやジャムな
どの安定剤、乳剤、クリーム、軟こうの安定剤、医薬品
としては膨張性下剤、錠剤製造時の結合剤としても使用
できる。
【0023】CMCの添加量は、用途に応じて選択でき
る。例えば、塗料や接着剤では、固形分換算で、塗料や
接着剤の樹脂100重量部に対して0.1〜50重量
部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは1〜
10重量部程度である。
【0024】また、得られた水性組成物は、その用途に
応じて他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、可塑剤
や滑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定
剤、さらには着色剤や帯電防止剤、防腐剤などの添加剤
を配合してもよい。これらの添加剤は一種又は二種以上
混合して使用できる。
【0025】適した応用分野として、塗料の粘結剤、歯
磨の粘結剤、ソフトクリームの増粘保形剤が挙げられ
る。
【0026】
【発明の効果】本発明において、得られたCMCは特定
の粘度挙動を示すため、本発明のCMCを含む水性組成
物は流動性や塗布性およびチクソトロピー性を両立でき
る。
【0027】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳し
く説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。
【0028】実施例1 撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピ
ルアルコール1684重量部と水124重量部、および
粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約30
℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム41.6重量部
と水40.7重量部との水溶液を入れ、温度30〜35
℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製し
た。次いで、モノクロル酢酸44.2重量部とイソプロ
ピルアルコール35.8重量部の混合液を投入して混合
した後、70℃に昇温して反応を1時間行った。反応終
了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱液
し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄
し、過酸化水素で粘度調整した後、脱液して乾燥するこ
とにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
(CMC)を製造した。
【0029】実施例2 二軸の撹拌翼を有する5L反応器に、イソプロピルアル
コール883重量部と水酸化ナトリウム141重量部と
水190重量部との混合液を入れた後、粉砕したパルプ
200重量部を投入し、30〜35℃で60分間撹拌混
合した。反応器にモノクロル酢酸140重量部とイソプ
ロピルアルコール113重量部との混合液を投入した
後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応終了
後、反応器から内容物を取り出しで遠心分離機で脱液
し、湿綿を約80重量%のメチルアルコール水溶液で洗
浄し、過酸化水素で粘度調整した後、脱液して乾燥し、
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を
製造した。
【0030】実施例3 撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピ
ルアルコール1664重量部と水160重量部、および
粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約20
℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム34.0重量部
と水33.3重量部との混合液を入れ、温度20〜30
℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製し
た。次いで、モノクロル酢酸33.7重量部とイソプロ
ピルアルコール27.3重量部との混合液を投入して混
合した後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応
終了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱
液し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗
浄し、過酸化水素で粘度調製した後、脱液して乾燥する
ことにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
(CMC)を製造した。
【0031】比較例1 アルカリセルロースの調製工程で、温度を10〜20℃
未満とする以外は、実施例1と同様にしてCMCを得
た。
【0032】比較例2 アルカリセルロースの調製工程で、温度を10〜20℃
未満とする以外は、実施例2と同様にしてCMCを得
た。
【0033】比較例3 撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピ
ルアルコール1675重量部と水114重量部、および
粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約20
℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム51.9重量部
と水50.9重量部との混合液を入れ、温度20〜30
℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製し
た。次いで、モノクロル酢酸33.7重量部とイソプロ
ピルアルコール27.3重量部との混合液を投入して混
合した後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応
終了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱
液し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗
浄し、過酸化水素で粘度調製した後、脱液して乾燥する
ことにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
(CMC)を製造した。
【0034】このようにして得られたCMCについて、
4重量%食塩水を溶媒とする1重量%溶液の濁度(食塩
水濁度)、およびソルビトール系水溶液の1時間後と2
4時間後の粘度(ソルビトール粘度)を測定した。
【0035】[食塩水濁度]所定量の4重量%食塩水
に、精秤したCMCを撹拌しながら添加し、凝固物(マ
マコ)をペンシルミキサーでつぶした。その後、濃度1
重量%となるように4重量%食塩水を加えて溶液を調製
した。温度25℃の恒温槽中で一定時間放置した後、溶
液が均一になるように撹拌し、溶液の濁度を濁度計(東
京電色(株)製,T−2600D型濁度計,光源:ハロ
ゲンランプを用いた積分球方式,セル長50mm)を用
いて測定した。 濁度(%)=散乱光/全透過光×100 [ソルビトール粘度]水136gと70重量%ソルビト
ール水溶液100.5gを500mlビーカーに入れて
撹拌した。この混合液に、50mlビーカー中でCMC
6.0gを94%エタノール水溶液7.5gに分散させ
た液を投入するとともに、ビーカーの付着物を水50g
で共洗し、ホモジナイザー(イカ社製,ウルトラタック
スT−25型)を用いて24000rpmで5分間均一
化した。この均一化液を25℃の恒温槽中で、撹拌停止
から一定時間(1時間後および24時間後)放置した
後、粘度を測定した(ブルックフィールドBH型粘度
計,10rpm,3分間後の値)。
【0036】結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】[ パップ剤]実施例で得られたCMC、ポ
リアクリル酸ナトリウム及びアルミニウムグリシネート
をグリセリンに分散させた液を作成し、この液とソルビ
トールにカオリンを分散させた液を、エデト酸ナトリウ
ムとともにゼラチン水溶液に加え、均一になるまで攪拌
した。得られたパップ剤の膏体を不織布に延展した。こ
のときの作業性は良好であった。また、数日間放置後
に、支持体不織布の背面を確認したところ、膏体侵み出
しは無かった。 [ その他]実施例で得られたCMCは、チクソトロピー
性を有しているため、組成物作成の初期に流動性が良好
で、塗布などの作業終了後に保形性が必要である、歯磨
き、ソフトクリームなどの分野に特に有効であった。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボキシメチルセルロース又はその塩
    類であって、ソルビトール水溶液を調製したとき、1時
    間後の粘度η1 と24時間後の粘度η24との粘度比η24
    /η1 が1.4以上であるカルボキシメチルセルロース
    又はその塩類。
  2. 【請求項2】 4重量%食塩水を溶媒としたとき、1重
    量%溶液の濁度が30%以上である請求項1記載のカル
    ボキシメチルセルロース又はその塩類。
  3. 【請求項3】 1重量%水溶液の粘度が20〜1000
    (mPa ・s )である請求項1記載のカルボキシメチルセ
    ルロース又はその塩類。
  4. 【請求項4】 平均エーテル化度が0.6〜1.0であ
    る請求項1記載のカルボキシメチルセルロース又はその
    塩類。
  5. 【請求項5】 カルボキシメチルセルロース又はその塩
    類の製造方法であって、セルロースとアルカリとを温度
    20〜50℃で反応させてアルカリセルロースを生成さ
    せる工程と、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との
    反応によりカルボキシメチルセルロースを生成させる工
    程とで構成されているカルボキシメチルセルロース又は
    その塩類の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001302701A (ja) * 2000-02-15 2001-10-31 Shin Etsu Chem Co Ltd アルカリセルロース及びセルロースエーテルの製造方法
JP2002234826A (ja) * 2001-02-08 2002-08-23 Sunstar Inc 口腔用組成物
WO2015053280A1 (ja) 2013-10-08 2015-04-16 キユーピー株式会社 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩および/またはその製造方法
WO2019221273A1 (ja) 2018-05-18 2019-11-21 日本製紙株式会社 カルボキシメチルセルロースを含有する分散組成物

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