JP2000020944A - 磁気記録ディスク用ポリエステルフィルム - Google Patents

磁気記録ディスク用ポリエステルフィルム

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JP2000020944A
JP2000020944A JP18631398A JP18631398A JP2000020944A JP 2000020944 A JP2000020944 A JP 2000020944A JP 18631398 A JP18631398 A JP 18631398A JP 18631398 A JP18631398 A JP 18631398A JP 2000020944 A JP2000020944 A JP 2000020944A
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magnetic recording
particles
recording disk
polyester film
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JP18631398A
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Hidekazu Kato
秀和 加藤
Masami Kuno
政己 久野
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 とくに高温、高湿下における寸法変化率、面
内異方性を特定することにより、望ましい表面形態を有
し、かつ、高温、高湿下においてもトラッキングずれの
良好な磁気記録ディスクを得ることができるポリエステ
ルフィルムを提供する。 【解決手段】 80℃、30分間の寸法変化率が0.1
%以下で面内異方性が0.05%以下、80℃、80%
RH下における30分間の寸法変化率が0.2%以下で
面内異方性が0.1%以下であることを特徴とする磁気
記録ディスク用ポリエステルフィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録ディスク
用ポリエステルフィルムに関し、とくに、高温高湿環境
下でも寸法安定性に優れ、かつ、フィルム表面が平滑で
ありながら表面欠点が生じにくい、高密度、高容量化が
可能な高性能磁気記録ディスク用ポリエステルフィルム
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のパーソナルコンピューター等の普
及とともに記憶装置としてのフロッピーディスクドライ
ブ装置およびフロッピーディスクは広く普及し、また、
フロッピーディスクの大容量化、高密度化も平行して進
行しつつある。フロッピーディスクは、二軸延伸ポリス
テルフィルムに磁性層を塗布して平滑化処理を行ない、
ディスク形状に打ち抜いて製造するのが一般的であり、
磁性層塗布には予め易接着層を設けることが多い。
【0003】また、従来の3.5インチのフロッピーデ
ィスクで2MBの記憶容量から、ほぼ同サイズで100
MB程度以上、さらには200MB以上のフロッピーデ
ィスクが検討されている。磁気記録ディスクの高密度記
録化にはディスク本体に起因するエラーを低減すること
が重要であるが、ディスク起因のエラーの大きな部分と
して、支持体である二軸延伸ポリエステルフィルムの寸
法安定性やフィルム表面欠点を原因とするものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】フロッピーディスクの
寸法安定性に関する課題に対して、従来から熱収縮率が
小さく、熱膨張係数がディスクドライブの熱膨張係数に
近いフィルムを選択することが提案されている。フロッ
ピーディスクの熱的性質については従来から十分に考慮
が払われてきたが、それにもかかわらず長期使用におい
てトラッキングずれの発生やディスクの平面性の悪化が
問題となっている。
【0005】また、フロッピーディスクの高密度記録方
法として最近提案されているものは、光束の書込み、読
出しを可能にするため、磁気ヘッドの記録、再生におい
てフロッピーディスクの柔軟性を利用することがあり、
フィルムの厚さとして、従来の75μmではなく70μ
m以下、さらには65μm以下の薄いものが求められて
いる。しかし、たとえば厚さ65μmの場合、従来の厚
さ75μmのものに比べ厚さとしては約13%の減少で
はあるが、フィルムの剛性度は概略厚さの3乗に比例す
ることを考慮すると、剛性度は35%程度低下すること
になる。このような柔軟性が新しい磁気記録方式におい
ては重要である反面、フィルムの製膜や加工工程でのフ
ィルムのしわ、巻き締り跡等の変形などの発生が著しく
増加する問題が起こった。さらに、表面粗さについても
一層の平滑化が必要となり、粒径の大きな無機粒子の添
加が許容されなくなるため、滑り性が悪くなってフィル
ム表面の傷発生防止という面で不利になっている。
【0006】本発明は、このような従来技術における近
年の状況に鑑み、とくに高温高湿下での長期使用におい
てもトラッキングずれや平面性の悪化が発生せず、特定
の摩擦係数をフィルムに与えることによって剛性が低く
表面が平滑であっても表面欠点が少ないフィルムが得ら
れることを見い出したもので、高密度記録フロッピー用
のベースフィルムへの要求を満たすフィルムを安定的に
提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の磁気記録ディスク用ポリエステルフィルム
は、80℃、30分間の寸法変化率が0.1%以下で面
内異方性が0.05%以下、80℃、80%RH下にお
ける30分間の寸法変化率が0.2%以下で面内異方性
が0.1%以下であることを特徴とするものからなる。
【0008】この本発明に係る磁気記録ディスク用ポリ
エステルフィルムにおいては、さらに、平均粒径0.0
4μm以上0.3μm未満の粒子を0.2〜0.4重量
%含有するとともに、平均粒径0.5μm以上の粒子は
実質的に含有しないポリエステル樹脂からなり、厚さが
25〜70μm、フィルム表面の中心線平均表面粗さ
(Ra)が4〜7nmであることが好ましい。
【0009】このような本発明に係る磁気記録ディスク
用ポリエステルフィルムによって、該フィルムの表面、
望ましくは両面が、特定の摩擦係数、つまり、フィルム
同士の静摩擦係数が0.4〜0.6、動摩擦係数が0.
3〜0.5の範囲に制御される。
【0010】また、本発明に係る磁気記録ディスクは、
このような磁気記録ディスク用ポリエステルフィルムフ
ィルムを用いて製造されたもので、とくに、100MB
以上の容量を有することができる。ディスクサイズとし
てはとくに限定されないが、最も汎用的な3.5インチ
サイズが好ましい。トラック密度としては、2000ト
ラック/インチ以上の高密度が可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、望ましい実施の
形態とともに詳細に説明する。本発明の磁気記録ディス
ク用ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂
とは、主な酸成分、グリコール成分の各々を芳香族ジカ
ルボン酸、脂肪族グリコールとする実質的に線状のポリ
エステルである。芳香族ジカルボン酸成分としては、例
えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタ
ル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジ
カルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェ
ニルケトンジカルボン酸などを用いることができる。脂
肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、
ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テト
ラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなど
の炭素数2〜10のポリメチレングリコール、シクロヘ
キサンジメタノールなどの脂環族グリコールなどを用い
ることができる。これらのポリエステルのうち、特にポ
リエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナ
フタレート、あるいは全ジカルボン酸成分、全グリコー
ル成分の各々の80モル%以上がテレフタル酸および/
または2,6−ナフタレンジカルボン酸、エチレングリ
コールである共重合ポリエステルが好ましい。また、酸
成分、グリコール成分の各々の20モル%未満で共重合
できる成分は上記以外に、酸成分としては例えばアジピ
ン酸、セバシン酸、アジピン酸、ダイマー酸、ドデカジ
オン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸など
の3官能カルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカル
ボン酸などの脂環族ジカルボン酸などがあり、グリコー
ル成分としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレ
ングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポ
リアルキレングリコール、ハイドロキノンなどの芳香族
ジオールなどがある。
【0012】上記ポリエステルは各種の方法で製造で
き、重合触媒として代表的には3酸化アンチモン等のア
ンチモン系、2酸化マンガン等のマンガン系、2酸化ゲ
ルマニウム等のゲルマニウム系、各種チタン化合物を用
いることができる。ポリマの固有粘度としてはとくに限
定されないが、25℃、o−クロロフェノール中の溶液
としての測定値にて0.4〜1.9のものが好ましい。
【0013】本発明に係る磁気記録ディスク用ポリエス
テルフィルムは、磁気記録ディスクに要求される機械特
性、等方性等の点から、とくに二軸配向ポリエステルフ
ィルムからなることが好ましい。
【0014】本発明における二軸配向ポリエステルフィ
ルムは、80℃、30分間の寸法変化率が0.1%以
下、好ましくは0.07%以下で面内異方性が0.05
%以下であり、80℃、80%RH下における30分間
の寸法変化率が0.2%以下、好ましくは0.15%以
下で面内異方性が0.1%以下である。長期使用時にお
けるトラックずれや平面性の悪化などのゆっくりした経
時的変化については、80℃という高い温度で、かつ、
乾燥下と高湿下の両条件下での特性を特定する必要があ
ることがわかったので、このように規定したものであ
る。
【0015】本発明における二軸配向ポリエステルフィ
ルムは、熱膨張係数が8×10-6(1/℃)〜25×1
-6(1/℃)が好ましく、より好ましくは10×10
-6(1/℃)〜23×10-6(1/℃)である。熱膨張
係数がこれらの範囲を外れると、読み取りヘッドなどフ
ロッピーディスク・ドライブ装置の金属製部品の熱膨張
係数との差が大きくなり、記録、読み取り時の温度差に
よってはトラッキング不良となるため好ましくない。ま
た熱膨張係数の異方性は0〜13×10-6(1/℃)が
好ましく、より好ましくは0〜10×10-6(1/℃)
である。熱膨張係数の異方性が大きくなると、温度変化
によって記録トラックが楕円状に変形することになり、
機械的な位置追従が困難になるため好ましくなく、特に
本発明のような高容量フロッピーディスクにおいては注
意が必要である。
【0016】本発明で使用するポリエステル樹脂は、平
均粒径0.04μm以上0.3μm未満の粒子を0.2
〜0.4重量%含有し、平均粒径0.5μm以上の粒子
は実質的に含有しないものであることが好ましい。粒子
としては外部添加粒子が好ましく、内部析出粒子は粒子
径のコントロールが難しいためこれを主な粒子とするこ
とは好ましくない。外部添加粒子としては炭酸カルシウ
ム、コロイダルシリカ、凝集シリカ、アルミナ、有機粒
子などの単分散粒子あるいは凝集粒子を用いることがで
きる。表面粗さの再現性、粗大な突起を減少させる等の
観点から、単分散粒子のうち特にコロイダルシリカ、有
機粒子が主な粒子として含有される場合が好ましく、更
に球状粒子であることが好ましい。また、粒径の異なる
粒子を組合せて(例えばコロイダルシリカと炭酸カルシ
ウム、有機粒子とアルミナなど)添加してもよく、有機
粒子としては、架橋ジビニルベンゼン粒子、シリコーン
粒子などを用いることができる。含有される粒子の平均
粒径は0.04μm以上0.3μm未満であり、好まし
くは0.05μm〜0.2μm、更に好ましくは0.0
8〜0.15μmである。含有粒子の平均粒径が0.0
4μm未満では表面の易滑性が十分ではなく、0.3μ
m以上では記録出力が低下するため好ましくない。含有
量は所定の表面粗さを得るために0.2〜0.4重量%
の範囲で適宜選択される。好ましくは0.2〜0.35
重量%、より好ましくは0.25〜0.35重量%であ
る。更に本発明では、高密度記録化に合わせ磁性層が薄
くなることに対応するため、平均粒径0.5μm以上、
好ましくは0.4μm、更に好ましくは0.3μm以上
の粒子は実質的に含有されない。ここで実質的に含有さ
れないとは0.05重量%未満を目安とする。
【0017】本発明のポリエステルフィルムは上述のよ
うに高密度磁気記録ディスク用であるため、厚さは好ま
しくは25〜70μmであり、より好ましくは25〜6
5μmである。フィルム表面(好ましくは、両面)の中
心線平均表面粗さ(Ra)は好ましくは4〜7nmであ
り、より好ましくは4.5〜6.5nmである。これら
は高密度記録方式の要請を充たすもので、フィルム厚さ
25μm未満ではディスクとしての剛性が極端に低く、
70μmを越えると磁気ヘッドによる記録再生において
フィルムの柔軟性が不足するため好ましくない。また、
表面粗さが4nm未満ではフィルム製造時に極端に傷が
発生しやすくなり、7nmを越えると記録出力が低下す
るため好ましくない。なお、中心線平均表面粗さについ
て、後述の易滑層がフィルム表面に積層されている場合
は易滑層表面を測定した値を意味する。
【0018】本発明におけるポリエステルフィルムは上
述のように高密度磁気記録ディスク用であるため、フィ
ルム表面(好ましくは、両面)の中心面平均粗さ(SR
a)は6〜10nmの範囲にあることが好ましく、より
好ましくは7〜9nmの範囲である。これらは高密度記
録方式の要請を充たすもので、中心面平均表面粗さ(S
Ra)が6nm未満ではフィルム製造時に極端に傷が発
生しやすくなり、10nmを越えると記録出力が低下す
るため好ましくない。なお、中心面平均表面粗さについ
て、後述の易滑層がフィルム表面に積層されている場合
は易滑層表面を測定した値を意味する。
【0019】さらに、本発明におけるポリエステルフィ
ルムは上述のように高密度磁気記録ディスク用であるた
め、フィルム表面(好ましくは、両面)の突起最大高さ
(SRmax)が150nm以下であることが好まし
く、より好ましくは130nm以下である。これも高密
度記録方式の要請を充たすもので、突起最大高さ(SR
max)が150nmを越えるとフィルム製造時に極端
に傷が発生しやすくなる。この突起最大高さについて
も、後述の易滑層がフィルム表面に積層されている場合
は易滑層表面を測定した値を意味する。
【0020】本発明に係るポリエステルフィルムにおい
ては、フィルム同士の静摩擦係数は0.4〜0.6の範
囲にあることが好ましく、より好ましくは0.45〜
0.55の範囲である。動摩擦係数は0.3〜0.5の
範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.35〜
0.45の範囲である。剛性度が低く表面平滑な磁気記
録ディスク用フィルムについて、製膜工程中および磁性
層加工工程での表面欠点を防止するには摩擦係数をこの
ように特定の範囲とする必要があり、例えば、摩擦係数
が上記範囲より大きい場合、工程内のロール上での走行
中あるいはロール状に巻き取る際、フィルムにしわや傷
が発生しやすくなる。反対に上記範囲より小さい場合に
もフィルムが走行する際にずれや振動が起こりやすく、
しわや傷の原因となる。
【0021】本発明のポリエステルフィルムには、摩擦
係数をコントロールするために単分散粒子を含有した易
滑層をフィルム表面に積層してもよい。単分散粒子とし
ては平均粒径0.03〜0.3μmが好ましく、含有量
は1×105 個/mm2 〜1×108 個/mm2 が好ま
しい。ポリエステル樹脂への添加粒子のみで必要な摩擦
係数を得ようとすると、粒子の多くはフィルム内に埋も
れてしまうため平均粒径が大きく添加量も多くなり、大
きな突起が形成されてしまう場合があるのに対して、易
滑層に添加した粒子はポリエステル樹脂界面上に並ぶた
め平均粒径が小さくとも易滑性において有効である。た
だし、単分散粒子が1×105 個/mm 2 未満では単分
散粒子同士の間隔が広くなりすぎるために実質的なブロ
ッキング防止効果が薄れために好ましくなく、1×10
8 個/mm2 より多い場合には粒子の凝集が生じ易くな
って粒子の脱落や、粗大突起の形成を引き起こすため好
ましくない。単分散粒子としては炭酸カルシウム、コロ
イダルシリカ、アルミナ、有機粒子などがあり、コロイ
ダルシリカ、有機粒子が主な粒子として含有される場合
が好ましい。単分散粒子は球状粒子であることが好まし
く、更に球形比が1.0〜1.3の粒子であることが好
ましい。また、粒径の異なる粒子を組み合せて(例えば
コロイダルシリカと炭酸カルシウム、有機粒子とアルミ
ナなど)添加されていてもよい。有機粒子としては、架
橋ジビニルベンゼン粒子、シリコーン粒子などがある。
【0022】易滑層に使用する樹脂としては、ポリエス
テル、アクリル、ウレタン、ナイロンなどの各系統の樹
脂およびそれらの混合物を用いることができるが、易滑
層の上に磁性層を積層することになるために易接着性が
あることが好ましく、ポリエステル樹脂、特に水溶性ま
たは水分散性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
水溶性ポリエステルとしてはスルホン酸塩基含有ポリエ
ステルが代表的であり、5−Naスルホイソフタル酸、
5−アンモニウムスルホイソフタル酸、5−Kスルホイ
ソフタル酸、4−Naスルホイソフタル酸などの成分に
よって、スルホン酸塩の基を分子内に導入したポリエス
テル樹脂である。スルホン酸塩の基を有する多価カルボ
ン酸成分は全多価カルボン酸成分の3〜50モル%、好
ましくは5〜25モル%含まれる。その他の多価カルボ
ン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,
6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4
−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリッ
ト酸、ピロメリット酸などがある。グリコール成分とし
ては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキ
サメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、
ポリテトラメチレングリコールなどがある。易滑層に使
用するポリエステル樹脂はガラス転移点40℃以上であ
ることが好ましい。フィルム製膜工程あるいは磁性層塗
布工程ともにフィルムは加熱を受けるため、ガラス転移
点が低い樹脂では易滑層が工程内ロールに張り付き、か
えってしわ発生などの原因になる。このような易滑層
が、乾燥後の(ドライの)厚みにて、0.01〜0.0
3μmの厚さで積層されることが好ましい。
【0023】本発明の二軸配向ポリエステルフィルム
は、上記ポリエステルより公知の方法によって製造する
ことができる。押出機により溶融されたポリエステルは
シート状に口金から押し出され、冷却ドラム上で冷却固
化され、次いで逐次延伸または同時二軸延伸を経て、熱
固定のあと二軸配向フィルムとして巻き取られる。これ
らの製造工程のなかで、フィルムの物性は、縦横方向の
延伸倍率および延伸温度、熱固定温度、さらには縦横方
向にリラックス操作などの条件を適宜選択することから
調整される。
【0024】本発明における易滑層の積層方法として
は、水性塗剤を調製しフィルム製膜工程内で塗布する方
法、共押出する方法、有機溶剤系の塗剤を調製して製膜
工程とは別途オフラインで塗工する方法などがあるが、
易滑層の厚さ、樹脂の特性、単分散粒子の添加、生産性
等から水性塗剤の塗布による方法が最もで好ましい。水
性塗剤の調製方法としては、樹脂を水に完全に溶解させ
る方法、乳化剤、分散剤等を用いて乳化液、懸濁液を作
る方法などがある。また、この時単分散粒子の添加を行
なうことが好ましく、そのため単分散粒子も水系の分散
液として調製されていることが好ましい。水性塗剤に
は、塗布に際してフィルムへの濡れ性を向上させるため
に界面活性剤(アニオン型、ノニオン型)を添加しても
よい。水性塗剤の塗布は、ポリエステルフィルムの配
向、結晶化が完了する以前に行なうことが必要で、例え
ば逐次二軸延伸製膜工程では縦延伸後のフィルムに塗布
し、横延伸、熱固定を経る間に易接着層とフィルム本体
との密着向上を得る方法が一般的である。塗布方式とし
ては、グラビアコート法、ロールコート法、メイヤバー
法などが用いられ、塗布前のフィルム表面をコロナ処理
等によって濡れ性を向上させる方法などが採られる場合
もある。
【0025】〔物性の測定方法ならびに効果の評価方
法〕本発明における特性値の測定方法ならびに効果の評
価方法は次の通りである。 (1)フィルム表面粗さ(中心線平均表面粗さRa) (株)小坂研究所製の触針式表面粗さ計を用いて、触針
荷重80mg、測定長4mm、カットオフ0.25mm
の条件で測定した。なお、Raの定義は、例えば奈良治
郎著「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センター、
1983)に示されているものである。
【0026】(2)フィルム表面粗さ(中心面平均粗さ
SRa) (株)小坂研究所製の3次元粗さ計を用いて、触針荷重
6mg、測定長500μm、カットオフ0.25mmの
条件で測定した。このSRaの最大値をフィルム表面の
突起最大高さ(SRmax)とした。
【0027】(3)静摩擦係数、動摩擦係数 75mm(幅)×100mm(長さ)のカットフィルム
サンプルを2枚重ねた上に重量200gの荷重(W)を
乗せ、上側のフィルムを150mm/分の速度で滑ら
せ、滑り始めの引っ張り力(Fs)から静摩擦係数(μ
s)を、滑らせている時の力(Fd)から動摩擦係数
(μd)を計算する。 μs=Fs(g)/W(g)、 μd=Fd(g)/W
(g) フィルムは23℃、65%RHで24時間調湿する。
【0028】(4)フィルム中の粒子の平均粒径、含有
量 粒子の平均粒径は、フィルム断面を透過型電子顕微鏡
(TEM)を用い、10万倍以上の倍率で観察する。T
EMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて10
0視野以上測定する。凝集粒子は凝集体について、単分
散粒子の粒径は単分散粒子について、それぞれ等価円相
当径の平均値である。粒子の含有量は、ポリエステルは
溶解し、粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子をポリ
エステルから遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率
(重量%)をもって粒子含有量とする。場合によっては
赤外分光法の併用も有効である。
【0029】(5)易滑層中の単分散粒子の粒径、含有
量、球形比 フィルムの易滑層積層面を走査型電子顕微鏡(SEM)
で撮影し、粒子ごとに最大径と最小径を測定し、個々の
粒子の粒径を最大径と最小径の平均として求めた。10
0個以上の粒子の粒径を測定し、それらの平均値を単分
散粒子の粒径とした。また、SEM撮影写真から粒子の
個数を数え、単位面積当りの粒子数を算出して含有量と
した。個々の粒子の最大径/最小径の比を100個以上
の粒子について求め、それらの平均を球形比とした。
【0030】(6)寸法変化率熱風オーブンまたは恒温
高湿糟で試料を80℃、30分間、または80℃、80
%RHにおいて30分間の処理を行い、その処理前後の
寸法差から寸法変化率を測定した。寸法測定には分解能
1μmの読み取り機を備えた万能投影機等が利用でき
る。 寸法変化率=(処理前長−処理後長)/処理前長×10
0 (%)
【0031】(7)熱膨張係数 超音波音速測定器(SST)によってフィルム面内各方
向の音速(即ちヤング率)を求めてポリマ配向分布を求
め、音速の最大方向(長軸)と最小方向(短軸)につい
て熱膨張係数を測定し、その差を異方性とする。熱機械
分析装置(TMA)により20℃から40℃の温度変化
を試料に与え、25℃〜35℃の間の寸法変化を温度変
化で除して熱膨張係数を求めた。
【0032】(8)フィルム表面傷の評価 ブロッキング評価で問題なくスムーズにフィルムを巻出
せたものについて、透過光、反射光の下で目視でフィル
ム表面を検査した。確認された傷については、3次元粗
さ計で傷高さ(または深さ)を測定した。
【0033】(9)トラッキングずれテスト(温度変
化) 磁気記録層を形成してディスク状に打ち抜いたフロッピ
ーディスクを、温度15℃、相対湿度60%の雰囲気で
リングヘッドを用いて磁気記録し、その時の最大出力と
出力エンベロープを測定する。次に温度40℃、湿度6
0%RHに保持して同様に最大出力と出力エンベロープ
を測定し、15℃60%RHの時と40℃、60%RH
の時の出力エンベロープを比較してトラッキングの状態
を判定する。この差が小さいほどトラッキング特性が良
好で、差が3dBを超えるものではトラッキングが悪く
評価としては不良(×)であり、3dB以内のものは優
(○)として評価した。
【0034】(10)トラッキングずれテスト(湿度変
化) 前項と同様に温度25℃、湿度20%RHの雰囲気で記
録し、更に温度25℃、湿度70%RHに保持し、25
℃、20%RHの時と25℃、70%RHの時の出力エ
ンベロープを比較してトラッキングの状態を判定する。
判定の基準は前項と同様である。
【0035】
【実施例】次に実施例に基づき、本発明の実施態様を説
明する。また、表1には実施例、比較例の結果をまとめ
た。
【0036】実施例1 フィルムベース用として、常法により重合したポリエチ
レンテレフタレート(重合触媒:酢酸マグネシウム0.
1重量%、三酸化アンチモン0.03重量%、リン化合
物としてジメチルフェニルホスホネート0.35重量%
使用)を用い、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ
を0.3重量%となるよう添加混合した原料ペレット
を、180℃で3時間真空乾燥(5Torr)した後、
押出機に供給して285℃で溶融した。
【0037】溶融ポリマを高精度濾過した後、口金から
シート状に押出し静電印加キャスト法を用いて表面温度
25℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化
し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを8
5℃で長手方向に3.4倍延伸した。次にフィルムの両
面をコロナ放電処理し、水溶性のスルホン酸塩基含有ポ
リエステル樹脂から成る水性塗剤をメイヤバーコート法
で両面に同じ塗布量となるよう塗布した。続いて、ステ
ンタを用いて105℃で幅方向に3.75倍延伸し、さ
らに定長下215℃で10秒間熱固定を行ない、150
℃で幅方向に6.0%弛緩処理した。ステンタから出た
フィルムは雰囲気温度25℃で長手方向に0.05%弛
緩を行ない、厚さ62μmの二軸配向ポリエステルフィ
ルムを得た。80℃、30分、および80℃、80%R
H下における30分の寸法変化率(長手方向/幅方向)
はそれぞれ0.04/0.04%、0.07/0.11
%、熱膨張係数は長軸8×10-6(1/℃)、短軸19
×10-6(1/℃)であった。また、フィルムの表面傷
について評価したところ、目視で確認できる傷は皆無で
あった。
【0038】得られた二軸延伸ポリエステルフィルムに
下記組成の磁性塗剤を1μmの厚さに塗布した後、カレ
ンダー処理を行い、ディスク状に打ち抜いてフロッピー
ディスクを作成した。 γ−酸化鉄 200部 ポリウレタン 30部 酢酸ビニル樹脂 30部 イソシアネート化合物 40部 カーボンブラック 4部 溶剤 200部 (トルエン/MEK/シクロヘキサノン=1/1/1) 得られたフロッピーディスクの特性を測定したところ優
れた耐トラッキング性を有していた。
【0039】実施例2、比較例1〜3 未延伸フィルムの熱処理条件、延伸温度、延伸倍率を変
更する以外は、実施例1と同様にして厚さ62μmの二
軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム
の磁性層塗布後のフロッピーディスクとしての特性を評
価したところ、本発明で特定した範囲内のものは優れた
耐トラッキング特性を有していた。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により、フ
ィルムが薄く表面平滑な高密度磁気記録ディスク用フィ
ルムにおいて、とくに高温、高湿下における寸法変化
率、面内異方性を特定することにより、望ましい表面形
態を有し、かつ、高温、高湿下においてもトラッキング
ずれの良好な磁気記録ディスクを得ることができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 80℃、30分間の寸法変化率が0.1
    %以下で面内異方性が0.05%以下、80℃、80%
    RH下における30分間の寸法変化率が0.2%以下で
    面内異方性が0.1%以下であることを特徴とする磁気
    記録ディスク用ポリエステルフィルム。
  2. 【請求項2】 平均粒径0.04μm以上0.3μm未
    満の粒子を0.2〜0.4重量%含有するとともに、平
    均粒径0.5μm以上の粒子は実質的に含有しないポリ
    エステル樹脂からなり、厚さが25〜70μm、フィル
    ム表面の中心線平均表面粗さ(Ra)が4〜7nmであ
    ることを特徴とする、請求項1の磁気記録ディスク用ポ
    リエステルフィルム。
  3. 【請求項3】 フィルム同士の静摩擦係数が0.4〜
    0.6、動摩擦係数が0.3〜0.5である、請求項1
    または2の磁気記録ディスク用ポリエステルフィルム。
  4. 【請求項4】 二軸配向フィルムからなる、請求項1な
    いし3のいずれかに記載の磁気記録ディスク用ポリエス
    テルフィルム。
  5. 【請求項5】 フィルム表面の中心面平均粗さ(SR
    a)が6〜10nmの範囲にある、請求項1ないし4の
    いずれかに記載の磁気記録ディスク用ポリエステルフィ
    ルム。
  6. 【請求項6】 フィルム表面の突起最大高さ(SRma
    x)が150nm以下である、請求項1ないし5のいず
    れかに記載の磁気記録ディスク用ポリエステルフィル
    ム。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の磁
    気記録ディスク用ポリエステルフィルムフィルムを用い
    て製造された100MB以上の容量を有する磁気記録デ
    ィスク。
  8. 【請求項8】 3.5インチサイズである、請求項7の
    磁気記録ディスク。
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