JP2000017391A - 耐ころがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト系レール - Google Patents

耐ころがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト系レール

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JP2000017391A
JP2000017391A JP18631898A JP18631898A JP2000017391A JP 2000017391 A JP2000017391 A JP 2000017391A JP 18631898 A JP18631898 A JP 18631898A JP 18631898 A JP18631898 A JP 18631898A JP 2000017391 A JP2000017391 A JP 2000017391A
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rail
electric resistance
steel
resistance
bainite
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JP18631898A
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Masaharu Ueda
正治 上田
Koichi Uchino
耕一 内野
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 旅客鉄道の高速運転区間に要求される耐ころ
がり疲労損傷性と電気伝導性を同時に向上させる。 【解決手段】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さ
Hv240以上のベイナイト組織の鋼からなり、それ以
外の部分が式1または式2による電気抵抗値が24μΩ
・cm以下の鋼からなることを特徴とする耐ころがり疲
労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト系レー
ル。 *電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.
2[P]+11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[M
o] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+1
7.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti]+2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3
[Mo] ・・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に旅客鉄道の高
速運転区間に要求されるレール頭表部の耐ころがり疲労
損傷性と電気伝導性を兼ね傭えたレールに関するもので
ある、
【0002】
【従来の技術】近年、旅客鉄道では、輸送効率の向上を
目的として、列車の高速化が進められている。これにと
もない主に高速運転が行われる直線区間のレールにおい
ては、レールと車輪の繰り返し接触にともなう、ダーク
スポット損傷と呼ばれるレール頭表面のき裂損傷等の、
ころがり疲労損傷が発生しやすくなる。このダークスポ
ット損傷は、従来からのパーライト組織を呈したレール
が使用されている旅客鉄道の高遠運転区間のレールで発
生しやすいものである。
【0003】本発明者らは、レールと車輪の繰り返し接
触によって生成する疲労層(疲労ダメージ層、集合組
織)の形成と金属組織の関係を研究した、その結果、フ
ェライト相とセメンタイト相の層状構造を成しているパ
ーライト組織では、疲労ダメージ層が蓄積し易く、さら
に、集合組織が発達し易いの対して、柔らかなフェライ
ト組織地に粒状の硬い炭化物が分散したベイナイト組織
は、疲労ダメージ層が蓄積し難く、さらに、表面疲労損
傷の引き金となる集合組織が発達し難く、結果としてダ
ークスポット損傷が発生しにくいことが明らかとなっ
た。
【0004】そこで、ベイナイト組織を呈したレールと
して下記に示すような製品および製造法が開発された。 低炭素成分でMn,Cr,Moなどの合金元素を多
量に添加して圧延ままでベイナイト組織を呈する高強度
レール(特開平5−271871号公報)。 低炭素成分でMn,Cr,Moなどの合金元素を添
加し、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、ある
いは高温に加熱されたレールの頭部を加速冷却する高強
度ベイナイトレールの製造法(特開平6−248347
号公報)。
【0005】これらのレールの特徴は、耐ころがり疲労
損傷性に優れたベイナイト組織を安定に生成させるた
め、従来の普通炭素鋼レールと比較して炭素量を低減さ
せると同時に、Mn,Cr,Moなどの合金元素を多く
添加し、さらに、強度を確保するため適切な熱処理を施
したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記発明レー
ルのようにベイナイト組織を得るためレール鋼の合金添
加量を増加させると、一般的にレールの電気抵抗値が増
加する。その結果、電車や電気機関車の動力源である軌
道電流が低下し、列車の運行が密な線区では、電流低下
により列車走行速度が低下するなどの運行上の問題が予
想された。この対策として、電流損失を補い、軌道電流
を確保するため、変電所間隔を短くする、軌道電圧を増
加するなどの軌道電化システムの対応が考えられるが、
これらの軌道電気設備の改造には多くの費用が必要とな
り、不経済であるという問題があった。
【0007】そこで、ベイナイト組織を呈したレールの
電気抵抗を低減する方法として、下記に示す向うな製品
が開発された。 Mn,Cr,Moの合金元素を適度に押さえ、電気
抵抗値を23.7μΩ・cm以下にしたベイナイト組織
を呈するレール(特開平7−305144号公報)。 ベイナイト組織の生成に有効なMnの添加量を増加
させ、さらに、Cr,Moの合金添加量の適正化を図
り、電気抵抗の低減を図ったベイナイト組織を呈するレ
ールおよびその製造法(特開平9−13144号公
報)。
【0008】これらのレールの特徴は、電気抵抗値を抑
えるため合金添加量を押さえ、ある一定レベルの強度を
有するベイナイト組織のレールを提供するものである。
しかし、電気抵抗を抑えるため合金添加量を抑えると、
成分系の選択に向ってはレール頭部において安定してベ
イナイト組織を得ることが困難となることや、ベイナイ
ト組織が得られたとしても、合金添加重が少ないため、
ある一定レベル以上に高硬度(強度)化を図ることが困
難になるといった問題があった。
【0009】このような問題を解決するため、レール断
面内部に高電導性材料を配置した下記に示すレールが開
発された。 レール断面内部に高電導性材料を配置し、レール頭
表部に高炭素のパーライト組織を呈する材料を配置した
二層構造を特徴とする高電導・耐摩耗レール(特許第2
717721号)。
【0010】このレールの特徴は、電気抵抗値を抑える
ためレール内部に高伝導性材料を配置し、レール頭表部
に高炭素のパーライト組織を呈する材料を配置すること
により、電気伝導性と耐摩耗性をレールに付与するもの
であり、ダークスポット損傷に代表されるようなころが
り疲労損傷の防止を狙ったものではなかった。
【0011】そこで、本発明者らは上記ような問題点を
解決するため、レール頭表部の耐ころがり疲労損傷性と
レール全体の電気伝導性を兼ね傭えたレールの検討を行
った。その結果、レール頭部コーナー部および頭頂部の
該頭部表面を、耐ころがり疲労損傷性に優れたMn,C
rなどの合金を適度に添加したベイナイト組織を呈した
鋼とし、その他の部分を電気抵抗の低い鋼とした、二層
構造とすることで、レール頭表部の耐ころがり疲労損傷
性とレール全体の電気伝導性を同時に確保できることを
知見した。
【0012】また、このような電気抵抗の低い鋼との二
層あるいはそれ以上の構造とすることで、ベイナイト組
織単相のレールで問題となっていた電気抵抗の増加によ
る合金添加量の制限が緩和され、合金添加量の増加によ
りレール使用環境に適合したレール頭部のベイナイト組
織の高硬度(強度)化が達成できることを知見した。す
なわち、本発明はレール頭部コーナー部および頭頂部
と、その他の部分との特性が異なる鋼であるこを特徴と
した耐ころがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたレ
ールの提供を目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは、「レール
頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として少なく
とも深さ15mmの範囲が、硬さHv240以上のベイ
ナイト組織の鋼からなり、それ以外の部分が式1または
式2による電気抵抗値が24μΩ・cm以下の鋼からな
ることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性および電気伝
導性に優れたベイナイト系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。」である。
【0014】さらに、「レール頭部コーナー部および頭
頂部の表面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲
が、望ましくは、重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜2.00%、 Mn:0.20〜3.00%、 Cr:0.20〜3.00% を含有し、さらに必要に応じて、 Mo:0.01〜1.00%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜4.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 B :0.0001〜0.0040% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
的不純物であり、かつ硬さがHv240以上のベイナイ
ト組織の鋼からなり、それ以外の部分が、望ましくは、
重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.30%、 Mn:0.05〜1.20%、 P ≦0.030%、 S ≦0.030% を含有し、さらに必要に応じて、 Cr:0.01〜1.20%、 Mo:0.01〜2.00%、 Cu:0.01〜0.50%、 Ni:0.05〜2.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 N :0.010〜0.025%、 B :0.0001〜0.0040%、 の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
的不純物からなり、式1または式2による電気抵抗値が
24μΩ・cm以下の鋼からなることを特徴とする耐こ
ろがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト
系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。」である。
【0015】
【発明の実施の系形態】以下に本発明について図面を用
いながら説明する。図1は本発明のレール軸断面であっ
て、aは頭頂部であり、bは頭部コーナー部(頭側部の
ほぼ半分あるいは全部を含んだ総称として用いる)、c
は柱部、dは底部、eは頭部(頭頂部aと、頭部コーナ
ー部bを含む)である。また、斜線部1は耐ころがり疲
労損傷性に優れたベイナイト組織を呈し、かつ、硬さが
Hv240以上である鋼の最小範囲を示しており、非斜
線部2は電気抵抗値が24μΩ・cm以下である鋼を配
置する部分を示している。
【0016】図2(a)、(b)、(c)は、本発明の
実施例をレール軸断面で示したものである。図2におい
て斜線部分1の鋼は、望ましくは、C:0.15〜0.
45%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.20
〜3.00%、Cr:0.20〜3.00%を含有し、
さらに必要に応じて、Mo:0.01〜1.00%、C
u:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜4.00
%、Ti:0.005〜0.05%、V:0.01〜
0.30%、Nb:0.005〜0.05%、B:0.
0001〜0.0040%の1種または2種以上を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ硬さ
がHv240以上のベイナイト組織の鋼である。
【0017】図2(a)に示すように、ベイナイト組織
を呈した硬さHv240以上の鋼をレール頭頂部a、頭
部コーナー部b(頭側部全体を含む)に配置させるか、
あるいは、図2(b)に示すように、レール頭頂部a、
頭部コーナー部bから柱部cおよび底部dのレール表面
全体をベイナイト組織を呈した硬さHv240以上の材
料で覆う、また、非斜線部2の材料強度が低い場合は、
レールとしての全体の強度(実物曲げ強度等)を確保す
るため、図2(c)に示すようにレール頭頂部a、頭部
コーナー部bの表面、柱部cおよび底部dの全体をベイ
ナイト組織を呈した硬さHv240以上の鋼で覆うなど
様々な形態をとりうる。
【0018】すなわち、ベイナイト組織を呈した硬さH
v240以上の鋼1は、レール軸断面において、少なく
とも車輪とレールが接触するレール頭頂部aおよび頭部
コーナー部bに存在し、その被覆厚さは、レール頭部コ
ーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として少なく
とも深さ15mmの範囲であればよい。
【0019】まず、本発明において、レール頭部コーナ
ー部および頭頂部の該頭部表面を起点として少なくとも
深さ15mmの範囲に配置する材料をベイナイト組織に
限定した理由を説明する。ベイナイト組織は現行のパー
ライト組織と比べて、レールと車輪の繰り返し接触によ
って、レール頭表部において、疲労ダメージ層の蓄積、
ころがり疲労損傷の発生に有害な集合組織の発達が少な
く、ダークスポット損傷などのころがり疲労損傷が発生
し難くいためである。
【0020】次に、ベイナイト組織の硬さをHv240
以上に限定した理由について説明する。硬さがHv24
0未満では、レール頭部の耐摩耗性を確保することが困
難であり、さらに、緩曲線区間では、G.C.(ゲージ
コーナー)部にレールと車輪の強い接触によるメタルフ
ローが生成し、これにともないきしみ割れやフレーキン
グなどの表面損傷が発生しやすくなることや、レールと
しての全体の強度(実物曲げ強度等)を確保することが
困難となるため、ベイナイト組織の硬さをHv240以
上に限定した。
【0021】さらに、本発明において、ベイナイト組織
を呈したHv240以上の鋼1の範囲を、レール頭部コ
ーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として少なく
とも深さ15mmの範囲に限定した理由について説明す
る。レール頭部については、高速鉄道の直線区間で使用
されるレールの摩耗寿命が15mmであり、したがっ
て、硬さをHv240以上のベイナイト組織を有する範
囲が15mm未満ではレール頭部に必要とされているこ
ろがり疲労損傷を防止する領域としては小さく、摩耗寿
命に達する前にダークスポット損傷やフレーキング損傷
などの表面損傷が発生し、十分な寿命改善効果が期待で
きないため、ベイナイト組織を有する範囲を少なくとも
15mmに限定した。
【0022】鋼1の金属組織としては、ベイナイト組織
であることが望ましいが、成分系の組み合わせ、レール
の冷却方法、素材の偏析状態によってはベイナイト組織
中に微量にパーライト組織、マルテンサイト組織、初析
フェライト組織が生成する場合がある。しかし、これら
の組織がベイナイト組織中に微量に生成してもレールの
耐ころがり疲労損傷性、耐摩耗性および強度に大きな影
響をおよぼさないため、本ベイナイト系レールの組織と
しては若干の異組織の混在も含んでいてもよい。
【0023】この部分における各成分の望ましい範囲を
限定した理由は以下の通りである。Cはベイナイト組織
の強度と耐摩耗性を確保するための必須元素であるが、
0.15%未満では、ベイナイトレールに必要とされる
強度や耐摩耗性を確保することが難しくなる。また、
0.45%を超えると、ベイナイト組織中にころがり疲
労損傷の発生に有害なパーライト組織が多く生成し易く
なることや、ベイナイト変態速度が低下し、レールの靭
性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなるた
め、C量を0.15〜0.45%に限定した。
【0024】Siはベイナイト組織中のフェライト素地
への固溶体硬化により強度を向上させる元素であるが、
0.10%未満ではその効果が期待できない。また、
2.00%を超えるとレール熱間圧延時に表面疵が発生
し易くなることや、ベイナイト組織中に島状マルテンサ
イト組織が生成し、レールの靭性を劣化させるため、S
i量を0.10〜2.00%に限定した。
【0025】Mnはベイナイト組織を安定的に生成さ
せ、ベイナイト変態温度を下げることにより高強度化に
寄与する元素であるが、0.20%未満ではその効果が
少なく、ベイナイトレールに必要とされる強度を確保す
ることが難しくなる。また、3.00%を超えると、ベ
イナイト変態速度が低下し、レールの靭性に有害なマル
テンサイト組織が生成しやすくなるため、Mn量を0.
20〜3.00%に限定した。
【0026】Crはベイナイト組織中のセメンタイトを
微細に分散させる効果があり、強度を確保するために重
要な元素であるが、0.20%未満ではその効果が少な
く、ベイナイトレールに必要とされる強度を確保するこ
とが難しくなる、また、3.00%を超えると、ベイナ
イト変態速度が低下し、Mnと同様にレールの靭性に有
害なマルテンサイト組織が生成しやすくなることや、ミ
クロ偏析が助長され、偏析部にマルテンサイト組織を生
成し易くするため、Cr量を0.20〜3.00%に限
定した。
【0027】また、上記の成分組成で製造されるレール
は強度、延性、靭性、さらには溶接時の材料劣化を防止
する目的で以下の元素を必要に応じて1種または2種以
上を添加する。Mo:0.01〜1.00%、Cu:
0.05〜0.50%、Ni:0.05〜4.00%、
Ti:0.005〜0.05%、V :0.01〜0.
30%、Nb:0.005〜0.05%、B :0.0
001〜0.0040%
【0028】次に、これらの化学成分の上記の向うに定
めた理由について説明する。MoはMnあるいはCrと
同様に、ベイナイト変態温度を下げ、ベイナイト組織の
強化および安定に寄与する元素であり、同時に、溶接時
の焼戻し領域の軟化防止に欠くことが出来ない元素であ
るが、0.01%未満ではその効果が十分でなく、1.
00%を超えると、ベイナイト変態速度が大きく低下
し、レールの靭性に有害なマルテンサイト組織が生成し
やすくなることや、Crと同様にミクロ偏析が助長さ
れ、偏析部にマルテンサイト組織を生成し易くするた
め、Mo量を0.01〜1.00%に限定した。
【0029】Cuは鋼の靭性を損なわず強度を向上させ
る元素やあり、その効果は0.05〜0.50%の範囲
で最も大きく、また、0.50%を超えると赤熱脆化を
生じることから、Cu量を0.05〜0.50%に限定
した。
【0030】Niはオーステナイトを安定化させる元素
であり、ベイナイト変態温度を下げ、ベイナイト組織を
微細化し、延性や靭性を向上させる効果を有するが、
0.05%未満ではその効果が著しく小さく、また、
4.00%を超える添加を行ってもその効果が飽和して
しまうため、Ni量を0.05〜4.00%に限定し
た。
【0031】Tiは溶解・凝固時に析出したTi炭化
物、Ti窒化物がレール圧延の再加熱においても溶解し
ないことを利用して、圧延加熱時のオーステナイト結晶
粒の微細化を図り、ベイナイト組織の延性や靭性を向上
させるのに有効な成分である。しかし、0.005%未
満ではその効果が少なく、0.05%を超えて添加する
と、粗大なTi炭化物、Ti窒化物が生成して、レール
使用中の疲労損傷の起点となり、き製を発生させるた
め、Ti量を0.005〜0.05%に限定した。
【0032】Vは熱間圧延時の冷却課程で生成したV炭
化物、V窒化物による析出硬化で強度を高め、さらに、
高温度に加熱する熱処理が行われる際に結晶粒の成長を
抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、ベ
イナイト組織の強度、靭性を向上させるのに有効な成分
であるが、0.01%未満ではその効果が十分に期待で
きず、0.30%を超えて添加しぞもそれ以上の効果が
期待できないことから、V量を0.01〜0.30%に
限定した。
【0033】NbはVと同様にNb炭・窒化物を形成し
てオーステナイト粒を細粒化する有効な元素であり、そ
のオーステナイト粒成長抑制効果はVよりも高温度域
(1200℃近傍)まで作用し、ベイナイト組織の靱性
を改善する。その効果は、0.005%未満では期待で
きず、また、0.05%を超える過剰な添加を行うと、
Nbの金属間化合物や粗大析出物が生成して靭性を低下
させることから、Nb量を0.005〜0.050%に
限定した。
【0034】Bは、旧オーステナイト粒界から生成する
初析フェライト組織の生成を抑制し、ベイナイト組織を
安定的に生成させる元素である。しかし、0.0001
%未満ではその効果は弱く、0.0040%を超えて添
加するとBの粗大化合物が生成してレール材質を劣化さ
せるため、B量を0.0001〜0.0040%に限定
した。なお、Bは0.0020%以下が添加量も少なく
かつ焼入れ性も確保できる経済的な範囲である。
【0035】また、図2において2の非斜線部分は、望
ましくは、C:0.01〜0.45%、Si:0.01
〜0.30%、Mn:0.05〜1.20%、P≦0.
030%、S≦0.030%を含有し、さらに必要に応
じて、Cr:0.01〜1.20%、Mo:0.01〜
2.00%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.
05〜2.00%、Ti:0.005〜0.05%、
V:0.01〜0.30%、Nb:0.005〜0.0
5%、N:0.010〜0.025%、B:0.000
1〜0.0040%の1種または2種以上を含有し、残
部が鉄および不可避的不純物からなり、電気抵抗値が2
4μΩ・cm以下の鋼である。
【0036】まず、本発明において、電気抵抗の低い材
料2をレール頭部コーナー部および頭頂部の該頭部の表
面以外の部分に配置した理由について説明する。レール
内部に電気伝導性に優れた材料を配置することにより、
レール全体としての電気抵抗を低減させ、同時に、ベイ
ナイト組織単相のレールで問題となっていた合金添加量
の制限が緩和され、合金添加量の増加により、レール使
用環境に適合したレール頭部のベイナイト組織の高硬度
(強度)化が達成できるからである。
【0037】なお、電気伝導性に優れた鋼2の金属組織
は特に限定しないが、延性や靱性に非常に富むフェライ
ト組織や現行のレール鋼で用いられいるパーライト組
織、または、合金添加量の少ないベイナイト組織である
ことが望ましい。
【0038】この部分における各成分の望ましい範囲を
限定した理由は以下の通りである。Cは一定の強度を確
保するための必須元素であり、0.01%未満ではその
効果が小さく、レール全体としての最低限度の強度(実
物曲げ強度等)を確保することが難しくなり、また、
0.45%を超えて添加すると、電気抵抗が過剰に増加
するため、C量を0.01〜0.45%に限定した。
【0039】Siはフェライト組織やベイナイト組織中
のフェライト地への固溶体硬化により強度を向上させる
と同時に、電気抵抗を大幅に増加させる元素であるが、
0.01%未満ではその効果が小さく、レール全体とし
ての最低限度の強度を確保することが困難となり、ま
た、0.30%を超えて添加すると、電気抵抗が過剰に
増加するため、Si量を0.01〜0.30%に限定し
た。
【0040】Mnは鋼の焼入れ性を高めフェライト粒を
微細化し、Crとの相互作用でベイナイト変態を促進さ
せ、強度を向上させる効果を持つが、0.05%未満で
はその効果が小さく、レール全体としての最低限度強度
を確保することが困難となり、また、1.20%を超え
て添加すると、電気抵抗が過剰に増加するため、Mn量
を0.05〜1.20%に限定した。
【0041】P,Sはあえて添加する元素ではないが、
それぞれ0.030%を超えて含有すると、電気抵抗が
過剰に増加し、さらに、偏析帯を形成し、靱性を低下さ
せるマルテサイトなどを生成しやすくするため、それぞ
れ0.030%以下に限定した。
【0042】また、上記の成分組成で製造されるレール
は強度、延性、靭性を向上させる目的で、さらに、以下
の元素を必要に応じて1種または2種以上を添加する。
Cr:0.01〜1.20%、 Mo:0.01〜
2.00%、Cu:0.01〜0.50%、 Ni:
0.05〜2.00%、Ti:0.005〜0.05
%、 V :0.01〜0.30%、Nb:0.005
〜0.05%、 N :0.010〜0.025%、B
:0.0001〜0.0040%
【0043】Crは鋼の焼入れ性を高め、Mnとの相互
作用でベイナイト変態を促進させ、さらに、パーライト
組織のラメラ間隔を微細化し、強度を向上させる元素で
あるが、0.01%未満ではその効果が著しく小さく、
また、1.20%を超えて添加すると、ミクロ偏析帯を
形成し、靱性を低下させるマルテサイトなどを生成しや
すくすることや、電気抵抗が過剰に増加するため、Cr
量を0.01〜1.20%に限定した。
【0044】MoはCrと同様に、ベイナイト変態を促
進させ、ベイナイト組織の微細化により、強度を向上さ
せる元素であるが、0.01%未満ではその効果が著し
く小さく、また、2.00%を超えて添加すると、Cr
と同様にミクロ偏析帯を形成し、靱性を低下させるマル
テサイトなどを生成しやすくすることや、電気抵抗が過
剰に増加するため、Mo量を0.01〜2.00%に限
定した。
【0045】Cuは鋼の靭性を損なわず強度を向上させ
る元素であるが、0.01%未満ではその効果が著しく
小さく、また、0.50%を超えて添加すると、赤熱脆
性を生じることや、電気抵抗が過剰に増加するため、C
u量を0.01〜0.50%に限定した。
【0046】Niはオーステナイトを安定化する元素で
あり、ベイナイト変態温度を下げ、ベイナイト組織を微
細化し、強度と靭性を向上させる元素であるが、0.0
5%未満ではその効果が著しく小さく、また、2.00
%を超えて添加すると、電気抵抗が過剰に増加するた
め、Ni量を0.05〜2.00%に限定した。
【0047】Tiは溶解・凝固時に析出したTi炭化
物、Ti窒化物がレール圧延の再加熱においても溶解し
ないことを利用して、圧延加熱時のオーステナイト結晶
粒の微細化を図り、ベイナイト組織の延性や靱性を向上
させるのに有効な成分である。しかし、0.005%未
満ではその効果が少なく、0.05%を超えて添加する
と、粗大なTi炭化物、Ti窒化物が生成して、レール
使用中の疲労損傷の起点となりき製を発生させること
や、電気抵抗が過剰に増加するため、Ti量を0.00
5〜0.05%に限定した。
【0048】Vは熱間圧延時の冷却課程で生成したV炭
化物、V窒化物による析出硬化で強度を高め、さらに、
高温度に加熱する熱処理が行われる際に結晶粒の成長を
抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化させ、組
織の強度、靱性を向上させるのに有効な成分であるが、
0.01%未満ではその効果が十分に期待できず、0.
30%を超えて添加すると、電気抵抗が過剰に増加する
ため、V量を0.01〜0.30%に限定した。
【0049】NbはVと同様にNb炭・窒化物を形成し
てオーステナイト粒を細粒化する有効な元素であり、そ
のオーステナイト粒成長抑制効果はVよりも高温度域
(1200℃近傍)まで作用し、ベイナイト組織の靭性
を改善する。その効果は、0.005%未満では期待で
きず、また、0.05%を超える過剰な添加を行うと、
Nbの金属間化合物や粗大析出物が生成して靭性を低下
させることから、Nb量を0.005〜0.050%に
限定した。
【0050】NはVと結合してVNの窒化物を生成する
ことにより、圧延および再加熱時のγ粒を細かくし、さ
らに、析出硬化によりベイナイト組織の靭性や強度を向
上させる元素であるが0.010%未満では、窒化物の
生成が困難になり、また、0.025%を超えると、溶
鋼溶製時に、Nによるブローホールなどの内部欠陥を生
成させ易いため、N量を0.010〜0.025%以下
に限定した。
【0051】Bは旧オーステナイト粒界から生成するフ
ェライトの生成を抑制し、高強度を達成するのに有効な
元素であるが、0.0001%未満ではその効果が弱
く、0.0040%を超えて添加するとBの粗大な炭ほ
う化物が生成し、レール靭性を低下させるため0.00
01〜0.0040%に限定した。なお、Bは0.00
20%以下が添加量も少なくかつ焼入れ性も確保できる
経済的な範囲である。
【0052】最後に、図2で示す非斜線部2に配置され
た鋼の電気抵抗値(μΩ・cm)を計算値で24μΩ・
cm以下に定めた理由について説明する。表1に代表的
な旅客鉄道用レールの化学成分、式2による電気抵抗計
算値および実測値の一例を示す。
【0053】
【表1】
【0054】 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。なお、上記電気抵抗計算式
で、該当する鋼成分を含有しない場合はその成分の項を
零とし、計算式に示される以外の成分を含有しても計算
に含めない。
【0055】表1に示すように、レールの電気抵抗実測
値は、式2による計算値と非常によい相関が認められ
る。したがって、現在使用されている旅客鉄道用のレー
ル程度に電気抵抗を抑えるには、電気抵抗の上限は計算
値で26.9μΩ・cm以下にする必要がある。しか
し、斜線部1に配置されたMn,Crなどの合金を添加
したベイナイト組織の鋼の電気抵抗が現行レール鋼と比
較して高いため、非斜線部2に配置された材料の電気抵
抗値は計算値で上限の26.9μΩ・cmよりもかなり
低い値にしなければなにない。
【0056】また、このような複層状態では、電釘抵抗
は必ずしもそれぞれの鋼の軸断面積の比率の和とはなに
ず、実際のレールでの測定が必要となる。そこで、斜線
部1に電気抵抗が最も低いと考えられる硬さHv240
のベイナイト組織の材料を配置し、非斜線部2に電気抵
抗の異なる鋼を配置し、実測においてレールの電気抵抗
値を測定した。その結果、非斜線部2の鋼の電気抵抗値
を計算値で24μΩ・cm以下にすると、レールの実測
における電気抵抗値が現行レールレベル(23.7μΩ
・cm以下)に収まることが確認されたため、非斜線部
2の鋼の電気抵抗値を計算値で24μΩ・cm以下に限
定した。
【0057】なお、図2で示す斜線部1に配置された耐
ころがり疲労損傷性に優れたベイナイト組織を呈する鋼
と図2で示す非斜線部2に配置された低電気抵抗材料の
レール軸断面内での占有面積については、特に限定をし
ないが、レール頭部に必要とされるころがり疲労損傷を
防止する領域を確保し、電気抵抗を現在使用されている
旅客鉄道用レールレベル以下に押さえ、さらに、レール
としての全体の強度を確保出来うる範囲であれば任意に
設定することが可能である。
【0058】以上のように、本願発明の構成によって、
レール頭部の耐ころがり疲労損傷性とレール全体の電気
伝導性を同時に確保することが可能となり、また、この
ような電気抵抗の低い鋼との二層構造とすることで、ベ
イナイト組織単相のレールで問題となっていた合金添加
量の制限が緩和され、合金添加量の増加によりレール使
用環境に適合したレール頭部のベイナイト組織の高硬度
(強度)化が達成できる。
【0059】また、レール軸断面において異種金属の二
層構造からなる本願発明は、爆着圧延、クラッド法、鋳
ぐるみ鋳違法、積層分散鋳造法、複層連続鋳造法など任
意の方法でブルームあるいはスラブを製造したのち、通
常の熱間成型圧延法によってレールに製造される。さら
に、必要によっては、本レールの頭部および底部などの
材質を改善するために熱処理が施される。
【0060】このようにして製造された本レールは、旅
客鉄道め高速運転区間に要求されるレール頭表部の耐こ
ろがり疲労損傷性と電気伝導性を兼ね傭えている。
【0061】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
2、3には、本発明レール鋼の化学成分(耐ころがり疲
労損傷性の鋼:部位1、低電気抵抗の鋼:部位2)、軸
断面形状、熱処理の有無を示す。さらに、表2には耐こ
ろがり疲労損傷性の鋼(部位1)と低電気抵抗の鋼(部
位2)のミクロ組織、硬さ、電気抵抗計算値、および、
図3に示すころがり疲労損傷試験機による部位1の鋼の
水潤滑ころがり疲労試験結果、図4に示すレール電気抵
抗の実測結果を併記した。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】また、表4には比較レール鋼の化学成分、
熱処理の有無、ミクロ組織、硬さ、電気抵抗計算値、お
よび、図3に示すころがり疲労損傷試験機による水潤滑
ころがり疲労試験結果、図4に示す電気抵抗の実測結果
を併記した。
【0065】
【表4】
【0066】なお、レールの構成は以下のとおりであ
る。 ・本発明レール鋼(9本)符号:A〜I 上記成分範囲で、レール頭部コーナー部および頭頂部の
該頭部表面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲
の部分の金属組織が硬さがHv240以上のベイナイト
組織を呈し、前記ベイナイト組織以外の部分は、本願発
明の請求項に記載の式1または式2による電気抵抗値が
24μΩ・cm以下である鋼との二層構造のベイナイト
系レール。 ・比較レール鋼(5本)符号:J〜N 符号J,K:パーライト組織の比較レール鋼。 符号L〜N:ベイナイト組織の比較レール鋼。 ころがり疲労試験は下記条件で実施した。 ・試験機:ころがり疲労試験機 ・試験片形状:円盤状試験片 (レール 外径:200mm、レール材断面形状:60K
レールの1/4モデル) (車輪 外径:200mm、車輪材断面形状 :円弧踏
面車輪の1/4モデル) ・試験荷重:1.0トン(ラジアル荷重) ・雰囲気:乾燥+水潤滑(60 /min) ・回転数:乾燥;100rpm、水潤滑;300rpm ・繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、
水潤滑により損傷発生まで。(損傷が発生しない場合は
200万回で試験を中止)
【0067】なお、レール電気抵抗の測定(実測)につ
いては下記の要領で実施した。図4に示すレールの電気
抵抗の測定方法としては電圧降下法を用いた。測定方法
としてはレール端部両側の柱部に電流端子を取り付け、
基準電流25Aを流し、電圧端子を電流端子の内側約1
mの位置にレール足部にセットする。
【0068】このようにして測定された電流値、電圧値
から電気抵抗を次式により求めた。 ρ(μΩ・cm)=(ρ20×A)×10-1/L A;測定レールの断面積(mm2 )、L;電圧端子間距離
(mm) ただし、ρ20は20℃のときの値に換算された測定材の
抵抗値(μΩ)で、次式を用いた。
【0069】ρ20=ρt /{1+α(t−20)} ρt ;温度tで測定された電気抵抗、αは温度補正係数
で実際にレール温度を変えて実測した抵抗値の変化から
求めた。
【0070】表2、3、4に示したように、本発明レー
ル鋼は比較レール鋼と比べて、合金元素の適切な選択お
よび添加量の調整をすることにより、レール頭部コーナ
ー部および頭頂部の該頭部表面を、耐ころがり疲労損傷
性に優れたベイナイト組織を呈した材料とし、その他の
部分を電気抵抗値が24μΩ・cm以下の材料との二層
構造とすることで、レール頭部の耐ころがり疲労損傷性
を改善し、同時に、実測における電気抵抗値を現在旅客
鉄道で使用きれているパーライト組織のレール(符号:
J,K、電気抵抗実測値:21.8〜23.7μΩ・c
m)程度まで低減することが可能となる。
【0071】また、このような電気抵抗の低い材料との
二層構造とすることで、ベイナイト組織単相のレールで
問題となっていた合金添加量の制限が緩和され、合金添
加量の増加によりレール使用環境に適合したレール頭部
のベイナイト組織の高硬度(強度)化が達成可能であ
る。
【0072】
【発明の効果】本願発明によって、高速鉄道、特に旅客
列車の高速運転区間に要求されるレール頭表部の耐ころ
がり疲労損傷性と電気伝導性を兼ね傭えたレールの提供
が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明レール鋼の軸断面における各部の呼称
と、レールの二層状態を軸断面で模式的に示した図。
【図2】(a)、(b)、(c)は共に本発明レール鋼
の実施例であり、各部におけるレール二層状態を模式的
に示した図。
【図3】ころがり疲労試験機の概略図。
【図4】電気抵抗の実測方法を示した概略図。
【符号の説明】
1:ベイナイト組織を呈するHv240以上の材料 2:電気抵抗値が24μΩ・cm以下である材料 a:レール頭頂部 b:レール頭部コーナー部 c:レール柱部 d:レール底部 e:レール頭部(頭頂部aと、頭部コーナー部bを含
む) 3:車輪試験片 4:レール円盤試験片 5:モーター(車輪側) 6:モーター(レール側) 7:水潤滑装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さ
    Hv240以上のベイナイト組織の鋼からなり、それ以
    外の部分が式1または式2による電気抵抗値が24μΩ
    ・cm以下の鋼からなることを特徴とする耐ころがり疲
    労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト系レー
    ル。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。
  2. 【請求項2】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、重量
    %で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜2.00%、 Mn:0.20〜3.00%、 Cr:0.20〜3.00% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、かつ
    硬さがHv240以上のベイナイト組織の鋼からなり、 それ以外の部分が、重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.30%、 Mn:0.05〜1.20%、 P ≦0.030%、 S ≦0.030% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、式
    1または式2による電気抵抗値が24μΩ.cm以下の
    鋼からなることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性およ
    び電気伝導性に優れたベイナイト系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。
  3. 【請求項3】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、重量
    %で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜2.00%、 Mn:0.20〜3.00%、 Cr:0.20〜3.00% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、かつ
    硬さがHv240以上のベイナイト組織の鋼からなり、 それ以外の部分が、重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.30%、 Mn:0.05〜1.20%、 P ≦0.030%、 S ≦0.030% を含有し、さらに、 Cr:0.01〜1.20%、 Mo:0.01〜2.00%、 Cu:0.01〜0.50%、 Ni:0.05〜2.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 N :0.010〜0.025%、 B :0.0001〜0.0040% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    的不純物からなり、式1または式2による電気抵抗値が
    24μΩ・cm以下の鋼からなることを特徴とする耐こ
    ろがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト
    系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。
  4. 【請求項4】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、重量
    %で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜2.00% Mn:0.20〜3.00%、 Cr:0.20〜3.00% を含有し、さらに、 Mo:0.01〜1.00%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜4.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 B :0.0001〜0.0040% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    的不純物であり、かつ硬さがHv240以上のベイナイ
    ト組織の鋼からなり、それ以外の部分が、重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.30%、 Mn:0.05〜1.20%、 P ≦0.030%、 S ≦0.030% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、式
    1または式2による電気抵抗値が24μΩ・cm以下の
    鋼からなることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性およ
    び電気伝導性に優れたベイナイト系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。
  5. 【請求項5】 レール頭部コーナー部および頭頂部の表
    面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲が、 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜2.00%、 Mn:0.20〜3.00%、 Cr:0.20〜3.00% を含有し、さらに、 Mo:0.01〜1.00%、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜4.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 B :0.0001〜0.0040% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    的不純物であり、かつ硬さがHv240以上のベイナイ
    ト組織の鋼からなり、それ以外の部分が、重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.30%、 Mn:0.05〜1.20%、 P ≦0.030%、 S ≦0.030% を含有し、さらに、 Cr:0.01〜1.20%、 Mo:0.01〜2.00%、 Cu:0.01〜0.50%、 Ni:0.05〜2.00%、 Ti:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.05%、 N :0.010〜0.025%、 B :0.0001〜0.0040% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
    的不純物からなり、式1または式2による電気抵抗値が
    24μΩ・cm以下の鋼からなることを特徴とする耐こ
    ろがり疲労損傷性および電気伝導性に優れたベイナイト
    系レール。 電気抵抗計算式(μΩ・cm) C量≦0.02%の場合 電気抵抗値=9.7+27[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式1 C量>0.02%の場合 電気抵抗値=10.1+6.1[C]+13.8[Si]+6.3[Mn]+5.2[Cr]+17.2[P]+11.2[S]+2.9[Ti] +2.5[Ni]+6.O[Cu]+5.5[V]+3.3[Mo] ・・・・・・式2 但し、[元素]は重量%。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008514840A (ja) * 2004-09-29 2008-05-08 フエーストアルピーネ・シーネン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング レール溝用走行レール
CN102454138A (zh) * 2010-10-20 2012-05-16 赵文杰 一种新型铁路钢轨
RU2669665C2 (ru) * 2012-12-20 2018-10-12 Сандвик Интеллекчуал Проперти Аб Бейнитная сталь для компонентов для бурения породы

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CN102454138A (zh) * 2010-10-20 2012-05-16 赵文杰 一种新型铁路钢轨
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