JP3253852B2 - 耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールおよびその製造法 - Google Patents

耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールおよびその製造法

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JP3253852B2
JP3253852B2 JP10513996A JP10513996A JP3253852B2 JP 3253852 B2 JP3253852 B2 JP 3253852B2 JP 10513996 A JP10513996 A JP 10513996A JP 10513996 A JP10513996 A JP 10513996A JP 3253852 B2 JP3253852 B2 JP 3253852B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、旅客鉄道の高速運
転区間に要求されるレール頭部の耐ころがり疲労損傷性
と電気伝導性を具備したベイナイト組織を呈するレール
およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、旅客鉄道の輸送効率向上の有効な
手段として列車の高速化が図られており、これに伴い主
として高速運転がなされる直線区間のレールにおいて
は、ころがり疲労起因の表面損傷が多発する傾向が顕在
化してきた。このような直線区間のレールは摩耗量がさ
ほど大きくなく、従来から0.6〜0.8%の炭素を含
有するパーライト組織を呈した共析炭素含有の圧延まま
レールが使用されてきた。
【0003】しかし、在来線の直線区画では30年の使
用を経てもレールは約5mm程度しか摩耗せず、摩耗量が
少ないため車輪とのころがり接触によりレール頭表面に
疲労ダメージが蓄積し、一定の経年後(敷設後約5年以
降)にき裂損傷(ダークスポット損傷)が発生し、やが
てレールが折損することが明らかになってきた。
【0004】そこで、本発明者らはレール頭表面の摩耗
を促進させることにより、疲労ダメージ層を自己除去
し、ころがり疲労損傷を防止する方法を研究した。その
結果、ベイナイト組織を呈するレールを用いることによ
って、現在使用されている普通炭素鋼レール程度の強度
を確保しながら摩耗を促進することが可能となり、結果
的にころがり疲労損傷を防止できることを明らかにし
た。
【0005】このような耐ころがり疲労損傷性に優れた
ベイナイト組織を安定に生成させる冶金的な手法として
は、従来の普通炭素鋼レールと比較して炭素量を低減さ
せると同時に、Mn,Cr,Moなどの合金元素を多く
添加する必要があり、ベイナイト組織を呈したレールと
して下記に示すような製品および製造法が開発された。
【0006】低炭素成分でMn,Cr,Moなどの合
金元素を多量に添加して、圧延ままでベイナイト組織を
呈する高強度レール(特開平5−271871号公
報)。 低炭素成分でMn,Cr,Moなどの合金元素を添加
し、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あるい
は高温に加熱されたレールの頭部を加速冷却する高強度
ベイナイトレールの製造法(特開平6−248347号
公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記発明レールのよう
に、ベイナイト組織を得るためレールの合金添加量を増
加させると、軌道電圧の低い直流電化区間が多い在来線
では、レールの電気抵抗の増加にともない軌道電流が低
下し、列車運行が過密な線区では、列車運行本数を削
減する、運行速度を制限するなどの運行上問題が発生
する。そこで、この電流損失をできるだけ低減させて、
現状程度の電車密度を確保できる軌道システムの改善が
必要となってきた。
【0008】この軌道システムの改善としては、軌道電
流を確保するため、変電所間隔を短くする、軌道電
圧をアップするなどの方法が考えられるが、これらの軌
道電気設備の改造には莫大な投資が必要となり、鉄道会
社の電気設備費を大幅に増加させるといった問題点があ
った。
【0009】一方、レール自体の電気抵抗を低減させる
方法もある。この一例として電気抵抗を極限まで低下さ
せた地下鉄あるいはモノレールなどに使用されている導
電レールがある。しかし、このレールは炭素量が0.0
03%以下の給電用であり、実際の電車が走行できるほ
どの耐摩耗性や強度は確保されていない。
【0010】また、曲線区画においてはレールの耐摩耗
性を向上する目的から、近年、従来のレールに微量の合
金元素を添加した高強度熱処理レールが開発された(特
公平1−38853号公報)。この熱処理レールは摩耗
が多い曲線区間の外軌レールとして使用されており、あ
まり摩耗が問題とならない内軌レールでは従来の圧延ま
まの普通炭素鋼レールが使用されてきた。
【0011】しかし、このような区間では内・外軌レー
ルの電気抵抗値が大きく異なるため電気信号のトラブル
が多発し、そこで、これを防止する目的で下記に示すよ
うな電気抵抗を低減させた曲線区間用の高強度低合金熱
処理レールおよびその製造法が開発された。従来レー
ルよりSi添加量を低減させて低電気抵抗化を図った高
強度レール(特開平3−20442号公報)。内軌側
の普通炭素鋼レールの電気抵抗値の10%増以内の電気
抵抗をもつ外軌熱処理レールを組み合わせた鉄道電化曲
線軌道(特開平4−136301号公報)。
【0012】しかし、これらのレールはいずれもパーラ
イト組織を呈した曲線区間用の高強度耐摩耗レールであ
り、直線区間で使用されるベイナイト組織を有する耐こ
ろがり疲労損傷性に優れたレールの低電気抵抗化を検討
したものではなかった。
【0013】そこで本発明者らは耐ころがり疲労損傷性
に優れたベイナイト組織を有するレールの低電気抵抗化
を検討した。表1に代表的な旅客鉄道用レールの化学成
分、(3)式による電気抵抗計算値および実測値の一例
を示す。 *電気抵抗値計算式(高炭素用) 9.7+ 3.0C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V(μΩ・cm)………………(3)
【表1】
【0014】表1に示すように、レールの電気抵抗値に
ついては上記計算式による計算値と実測値には非常によ
い相関が見られ、現在使用されているレールの電気抵抗
値の上限は計算値で約24.2μΩ・cmであることが確
認された。しかし、レールの成分は製造上若干ばらつき
があるため、このばらつきを考慮すると、電気抵抗の上
限は計算値で24.7μΩ・cmが妥当であると考えられ
る。
【0015】そこで、本発明者らは従来の鉄道システム
を改善せず、ベイナイト組織を有するレールを実軌道で
使用する場合には、ベイナイトレールの電気抵抗を現在
使用されているレールの電気抵抗の上限、すなわち、計
算値で24.7μΩ・cm以下に収めることが必要である
と考えた。
【0016】なお、現在広くレールとして使用されてい
る普通炭素鋼レールは、炭素含有量が0.65〜0.8
2%のパーライト組織を呈した鋼であり、本発明の低炭
素ベイナイト鋼とは電気抵抗値への炭素量の寄与が大き
く異なる。そこで、高炭素の現行レールにおいては前記
(3)式の計算式に示したように(2)式のCの係数を
0.6から3.0に変更して計算を行った。
【0017】ベイナイト組織を有するレールの低電気抵
抗化を図るには、下記の(2)式において寄与度(係
数)の大きな元素の添加量をできるだけ少なくすること
が最も有効な手段である。 *電気抵抗値計算式(低炭素用) = 9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V(μΩ・cm)………………(2)
【0018】しかし、Siは精錬時の脱酸元素として、
また、Cについても摩耗寿命や強度を確保するために最
低限の添加は必要であり、P,Sは添加量が少ないこと
から、電気抵抗への寄与度(係数)が大きく、主にベイ
ナイト組織を安定的に生成させるために多く添加されて
いるMn量の最適化が必要であると考えた。
【0019】まず初めに、本発明者らは電気抵抗値をで
きるだけ増加させず、ベイナイト組織を安定的にさせる
ことが可能なMn添加量の検討を行った。図1はC:
0.30%、Si:0.10%、Cr:0.20%、M
o:0.10%、P:0.015%、S:0.015%
とし、Mnを0.00〜2.00%の範囲で変えた鋼に
おいて、Mnの添加量とミクロ組織中のベイナイト生成
比率(ベイナイト変態のしやすさ)の関係を示したもの
である。なお、鋼は通常の圧延ままレールと同様の熱処
理を施したものである。
【0020】Mnの添加量とベイナイト生成比率の関係
を詳細に解説すると、Mn量が0.20%未満では耐こ
ろがり疲労損傷性に有害なパーライトや耐摩耗性に有害
なフェライト組織が生成し、ベイナイト組織の生成比率
が大きく低下し、またMn量が0.20〜0.50%の
範囲では、ベイナイト変態に若干の不安定性が残るもの
の、ベイナイト組織の生成比率は90%以上となり、耐
ころがり疲労損傷性を確保するのに必要な最低限のベイ
ナイト生成量を確保できることがわかった。
【0021】しかし、Mn量が0.50超〜1.50%
の範囲においてはベイナイト変態が極めて安定化し、ベ
イナイト組織の生成率はほぼ100%となり、耐ころが
り疲労損傷性に最も優れたベイナイト組織が得られるこ
とが確認された。
【0022】一方、Mn量がさらに高い1.50超〜
1.80%の範囲では、Mn量0.50超〜1.50%
の範囲と同様に、耐ころがり疲労損傷性を確保するのに
必要なベイナイト生成量の確保は可能であるが、偏析帯
等に微量のマルテンサイト組織が生成しやすい傾向が認
められた。また、Mn量が1.80%を超えた範囲で
は、耐ころがり疲労損傷性を確保するのに必要なベイナ
イト生成量を確保できるものの、電気抵抗を上記限定範
囲に収めるのが困難であることがわかった。
【0023】以上の実験結果から、本発明者らは、耐こ
ろがり疲労損傷性に必要なベイナイト組織を安定的に生
し、電気抵抗を上記限定範囲内に収めるためには
n添加量を0.50超〜1.50%の範囲に限定するこ
とが望ましいことがわかった
【0024】なお、これらのベイナイト変態のしやすさ
は熱処理時の加速冷却速度にも大きく依存しており、図
1に示すように加速冷却速度が5℃/sec以上の領域にお
いては、Mn量が0.50超1.50%の範囲の成分
系においてベイナイト変態が安定化し、耐ころがり疲
労損傷性に優れたベイナイト組織を得ることが可能とな
る。
【0025】次に、本発明者らはベイナイト組織が得ら
れ、レールとしての最低限の強度(硬さ:Hv24
0)、耐摩耗性を確保し、さらに、電気抵抗値24.7
μΩ・cm以下を満たすための必要合金添加量を調査し
た。ベイナイト変態を促進し、硬さ(強度)を向上させ
るには、Mn,Cr,Moの添加が有効である。そこ
で、電気抵抗値24.7μΩ・cm以下の範囲で3元素の
添加量の組み合わせを変えた鋼のミクロ組織とそれぞれ
の添加量の関係を実験により検証した。
【0026】その結果、Mn,Cr,Moの含有量の和
が1.0%以上であれば、圧延まま(熱処理なし)や下
記に説明する高硬度(強度)化のための加速冷却熱処理
を施したレールにおいて、安定したベイナイト組織が得
られ、レールとしての最低限の強度(Hv240)を確
保できることがわかった。すなわち、圧延まま(熱処理
なし)や圧延後加速冷却する熱処理によって電気抵抗の
低いベイナイトレールを安定して製造するには、Mn,
Cr,Moの含有率の和が少なくとも1.0%以上とな
る添加量が必要である。
【0027】さらに、本発明者らは、ベイナイト組織の
硬さを制御する熱処理方法を発明した。電気抵抗値
4.7μΩ・cm以下の合金成分範囲では、ベイナイト組
織の硬さを主に決定しているMn,Cr,Mo等の合金
元素の添加量に限界があり、これらの元素の組み合わせ
方によっては、圧延まま(熱処理なし)レールではベイ
ナイト組織中にフェライトやパーライトなどの異組織が
生成したり、ベイナイト変態が安定せず、ベイナイト組
織が得られたとしてもベイナイト組織の硬さがHv24
0以下となり、強度や耐摩耗性の点でレールの基本特性
を満足できないことがある。
【0028】そこで、本発明者らは硬さの高いベイナイ
ト組織を安定的に生成させる熱処理方法を発明した。ま
ず、本発明者らは連続冷却変態線図(CCT図)により
本発明レール鋼のベイナイト組織変態領域を調査した。
その結果、500〜300℃の範囲に硬さの高いベイナ
イト組織を生成させる変態領域が存在していることを確
認した。これを基に、本発明者らは、フェライトやパー
ライト組織などの異組織の生成を防止し、さらに高温度
で変態する硬さの低いベイナイト組織を生成させないた
め、レール頭部をオーステナイト域温度から加速冷却
し、硬さの高いベイナイト組織が生成しやすい500〜
300℃の範囲でこれを停止する方法を考え、実レール
を用いた加速冷却実験を行った。
【0029】その結果、加速冷却後放冷する、またこれ
に加えて、加速冷却直後に発生するレール内部からの復
熱を抑える冷却や加速冷却を行うことにより、硬さの高
いベイナイト組織の生成を安定化させることがわかっ
た。すなわち本発明は、旅客鉄道の高速運転区間に要求
されるレール頭部の耐ころがり疲労損傷性と電気伝導性
を具備したベイナイト組織を呈するレールを提供するこ
とを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは、次の通り
である。 (1)重量%で、C:0.15〜0.45%、Si:
0.10〜0.50%、Mn:0.50超〜1.50
%、Cr:0.20〜1.80%、Mo:0.01〜
0.60%、P:≦0.025%、S:≦0.025%
を含有し、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜0.
50%、Ni:0.05〜1.00%、Ti:0.01
〜0.05%、V:0.03〜0.30%、Nb:0.
01〜0.05%、B:0.0005〜0.0050%
の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
純物からなり、その電気抵抗値が24.7μΩ・cm以下
である鋼レールにおいて、該鋼レールの頭部コーナー部
および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ15mmの
範囲がベイナイト組織であることを特徴とする耐ころが
り疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レール。
【0031】(2)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50超〜
1.50%、Cr:0.20〜1.80%、Mo:0.
01〜0.60%、P:≦0.025%、S:≦0.0
25%を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の
和が1.0%以上であり、さらに必要に応じて、Cu:
0.05〜0.50%、Ni:0.05〜1.00%、
Ti:0.01〜0.05%、V:0.03〜0.30
%、Nb:0.01〜0.05%、B:0.0005〜
0.0050%の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄
および不可避不純物からなり、その電気抵抗値が24.
μΩ・cm以下である鋼レールにおいて、該鋼レールの
頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくと
も深さ15mmの範囲がベイナイト組織を呈し、前記ベイ
ナイト組織の硬さがHv240以上であることを特徴と
する耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイ
ト系レール。
【0032】(3)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50超
1.50%、Cr:0.20〜1.80%、Mo:0.
01〜0.60%、P:≦0.025%、S:≦0.0
25%を含有し、さらに必要に応じて、Cu:0.05
〜0.50%、Ni:0.05〜1.00%、Ti:
0.01〜0.05%、V:0.03〜0.30%、N
b:0.01〜0.05%、B:0.0005〜0.0
050%の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および
不可避不純物からなる鋼を熱間圧延して形成したレール
の頭部を、オーステナイト域温度から5〜20℃/secの
冷却速度で加速冷却し、該鋼レール温度が500〜30
0℃の間に達した時点で加速冷却を停止し、引き続き常
温まで自然冷却し、(2)式による電気抵抗値が24.
μΩ・cm以下であることを特徴とする耐ころがり疲労
損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの製造方
法。 電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 =9.7 +0.6C+13.3Si+6.7Mn +5.0Cr +16.7P +10.8S +3.3Mo +5.0Cu +2.5Ni +2.9Ti +5.5V …………………………(2)
【0033】(4)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50超〜
1.50%、Cr:0.20〜1.80%、Mo:0.
01〜0.60%、P:≦0.025%、S:≦0.0
25%を含有し、さらに必要に応じて、Cu:0.05
〜0.50%、Ni:0.05〜1.00%、Ti:
0.01〜0.05%、V:0.03〜0.30%、N
b:0.01〜0.05%、B:0.0005〜0.0
050%の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および
不可避不純物からなり、電気抵抗値が24.7μΩ・cm
以下である鋼を熱間圧延して形成した鋼レールであっ
て、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あるい
は高温に加熱された該鋼レールの頭部を、オーステナイ
ト域温度から、1〜20℃/secの冷却速度で加速冷却
し、該鋼レール温度が500〜300℃の間に達した時
点で加速冷却を停止する。さらにこれに加えて、加速冷
却後に、復熱による温度上昇を50℃以下に抑える冷
却、もしくは1〜40℃/minの制御冷却を施し、該鋼
レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として
少なくとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織であるこ
とを特徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵
抗ベイナイト系レールの製造法。
【0034】(5)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.50超〜
1.50%、Cr:0.20〜1.80%、Mo:0.
01〜0.60%、P:≦0.025%、S:≦0.0
25%を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の
和が1.0%以上であり、さらに必要に応じて、Cu:
0.05〜0.50%、Ni:0.05〜1.00%、
Ti:0.01〜0.05%、V:0.03〜0.30
%、Nb:0.01〜0.05%、B:0.0005〜
0.0050%の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄
および不可避不純物からなり、電気抵抗値が24.7μ
Ω・cm以下である鋼を熱間圧延して形成した鋼レールで
あって、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あ
るいは高温に加熱された該鋼レールの頭部を、オーステ
ナイト域温度から、1〜20℃/secの冷却速度で加速
冷却し、該鋼レール温度が500〜300℃の間に達し
た時点で加速冷却を停止する。、さらにこれに加えて、
加速冷却後に、復熱による温度上昇を50℃以下に抑
える冷却、もしくは1〜40℃/minの制御冷却を施
し、該鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起
点として少なくとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織
を呈し、前記ベイナイトの硬さがHv240以上である
ことを特徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気
抵抗ベイナイト系レールの製造法。
【0035】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。まず、レールの化学成分を上記のように定めた理
由について説明する。Cは一定の硬度を確保するために
必要な元素であるが、0.15%未満では、ベイナイト
組織中にフェライトが生成し、レール鋼としての強度の
確保が難しいばかりか、耐摩耗性が著しく損なわれる。
また、0.45%を超えると表面損傷の生成に有害なパ
ーライト組織が多く混入し、耐ころがり疲労損傷性が低
下するため、C量を0.15〜0.45%に限定した。
【0036】Siはベイナイト組織中の素地のフェライ
トに固溶することによって強度を向上させる元素である
が、0.10%未満では強度の向上が期待できない。ま
た、Siは電気抵抗に対して最もその寄与度が高い元素
であるが、0.50%を超えて添加すると強度の向上よ
りもかえって電気抵抗を大幅に上昇させるため、Si量
を0.10〜0.50%に限定した。
【0037】Mnは、C同様に鋼の焼入性を高め低炭素
においてもベイナイト組織を安定的に生成させるために
は欠かせない元素である。しかし、加速冷却速度が5〜
20℃/secの範囲においても、Mn量が0.50%以下
ではその効果が微弱であり、熱処理において加速冷却速
度を速くしてもベイナイト組織を得ることが困難とな
る。また、1.50%を超えると、電気抵抗を現行レー
ル範囲に収めることが非常に困難になるため、耐ころが
り疲労損傷性に優れたベイナイト組織を生成させるに
は、前記図1に示したようにMn添加量を0.50超
1.50%の範囲に限定した。
【0038】また、加速冷却速度が1〜20℃/secの範
囲において、耐ころがり疲労損傷性に優れたベイナイト
組織を生成させるには、焼入性を確保し、ベイナイト組
織を安定的に生成させるため、Mn量を0.50超〜
1.50%の範囲に限定する必要がある。なお、いずれ
の冷却速度範囲においても耐ころがり疲労損傷性に極め
て優れたベイナイト組織を安定的に生成させるには、M
n量を0.50超〜1.50%の範囲とすることが望ま
しい。
【0039】Crは、ベイナイト組織中の炭化物を微細
に分散させ、強度を確保するために重要な元素である
が、0.20%未満ではベイナイト組織中にフェライト
組織が生成し、耐摩耗性を極度に低下させる。また、
1.80%を超えると熱処理後のレール頭表面にマルテ
ンサイトが生成しやすく、レールの靭性や耐摩耗性を向
上させることや、Mn同様に電気抵抗を現行レール範囲
に収めることができないことから、Cr量を0.20〜
1.80%に限定した。なお、耐ころがり疲労損傷性に
極めて優れたベイナイト組織を安定的に生成させるに
は、Cr量を0.20〜1.50%の範囲とすることが
最も望ましい。
【0040】Moは、MnあるいはCrと同様、安定的
にベイナイト組織を生成させ、さらに、MnあるいはC
rのように電気抵抗を極端に増加させることなく強度を
上昇させることができる有望な元素であるが、0.01
%未満では強度への寄与が少なく、0.60%を超えて
添加すると、強度への寄与に比べて電気抵抗を増加させ
る悪影響が非常に大きくなる。また、Moは偏析しやす
く、レール柱部に靭性や耐摩耗性に有害なマルテンサイ
ト組織を生成させやすいことから、Mo量を0.01〜
0.60%に限定した。
【0041】P,Sはあえて添加する元素ではないが、
それぞれ0.025%を超えて含有されると、電気抵抗
を増加させ、さらに、レール柱部に偏析帯を形成し、靭
性を低下させるマルテンサイトなどを生成しやすくする
ため、それぞれ0.025%以下に限定した。
【0042】また、上記の成分組成で製造されるレール
では靭性、延性、強度、さらには溶接時の継手性能を向
上させる目的で、以下の元素を必要に応じて1種又は2
種以上添加する。 Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜1.0
0%、Ti:0.01〜0.05%、V :0.03〜
0.30%、Nb:0.01〜0.05%、B :0.
0005〜0.0050%
【0043】次に、これらの化学成分を上記のように限
定した理由について説明する。Cuは、鋼の靭性を損な
わず強度を向上させる元素であり、その効果は0.05
〜0.50%の範囲で最も大きく、また、0.50%を
超えると赤熱脆化を生じることから、Cu量を0.05
〜0.50%に限定した。
【0044】Niは、オーステナイトを安定化させる元
素であり、ベイナイト変態温度を下げ、ベイナイト組織
を微細化し、靭性を向上させる効果を有するが、0.0
5%未満ではその効果が著しく小さく、また、1.00
%を超えるとベイナイト変態速度を大きく低下し、レー
ルの靭性に有害なマルテンサイト組織を生成しやすくす
るため、Ni量を0.05〜1.00%に限定した。
【0045】Tiは、溶解・凝固時に析出したTi
(C,N)がレール圧延時加熱の高温でも溶解しないこ
とを利用して、レール圧延加熱時のオーステナイト結晶
粒の微細化を図り、また、溶接継手部の靭性改善にも寄
与する。しかし、0.01%未満ではその効果が少な
く、0.05%を超えると粗大なTi(C,N)が生成
して、レール使用中の疲労損傷の起点となり、き裂を発
生させるため、Ti量を0.01〜0.05%に限定し
た。
【0046】Vは、V(C,N)の析出を通して、ベイ
ナイト組織の高強度化に寄与する元素であるが、0.0
3%未満ではその効果が十分ではなく、また、0.30
%を超えると析出部の粗大化により靭性を低下させるた
め、V量を0.03〜0.30%に限定した。
【0047】Nbは、圧延時のγ再結晶を抑制すること
により、オーステナイト粒を微細化し、レールの靭性お
よび延性を改善する元素である。しかし、0.01%未
満ではその効果が小さく、0.05%を超えるとNbの
金属間化合物や粗大析出物が生成して靭性を低下させる
ことから、Nb量を0.01〜0.05%に限定した。
【0048】Bは、オーステナイト粒界から生成するフ
ェライト組織の生成を抑制し、ベイナイト組織を安定的
に生成させる元素である。しかし、0.0005%未満
ではその効果は弱く、0.0050%を超えて添加する
とBの粗大化合物が生成してレール材質を劣化させるた
め、B量を0.0005〜0.0050%に限定した。
【0049】次に、上記成分範囲において、必要に応じ
てMn、Cr、Moの含有率の和を1.0%以上に限定
した理由を説明する。ベイナイト変態を促進し、硬さ
(強度)を向上させるには、Mn,Cr,Moの3元素
の添加が有効である。そこで、本発明者らは、電気抵抗
値25μΩ・cm以下の範囲で3元素の添加量の組合せを
変えた鋼のミクロ組織とそれぞれの添加量の関係を実験
により検証した。
【0050】その結果、Mn,Cr,Moの含有量の和
が1.0%以上であれば圧延まま(熱処理なし)や下記
に説明する高硬度(強度)化のための加速冷却熱処理を
施したレールにおいて、より安定したベイナイト組織が
得られ、しかもレールとしての最低限の強度(硬さ:H
v240)を確保できることが確認された。そこで、M
n,Cr,Moの含有率の和を1.0%以上に限定し
た。
【0051】上記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造法、さ
らに熱間圧延を経てレールとして圧延される。次に、こ
の熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるいは
熱処理する目的で高温に加熱されたレール頭部をオース
テナイト域温度から、5〜20℃/sec、もしくは1〜
20℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼レールの温度
が500〜300℃に達した時点で加速冷却を停止し、
さらに加速冷却後に、復熱による温度上昇を50℃以
下に抑える冷却、1〜40℃/minの制御冷却を施し、
強度の高いベイナイト組織を安定的に生成させることが
可能となる。
【0052】はじめに、ベイナイト組織を有する範囲
を、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点と
して少なくとも深さ15mmの範囲に限定した理由につい
て説明する。高速鉄道の直線区間で使用されるレールの
摩耗寿命が15mmであり、したがって、ベイナイト組織
を有する範囲が15mm未満では、レール頭部に必要とさ
れているころがり疲労損傷を防止する範囲としては小さ
く、摩耗寿命に達する前にダークスポット損傷などの表
面損傷が発生し、十分な寿命改善効果が得られないため
である。
【0053】ここで、図2に本発明の耐ころがり疲労損
傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの頭部断面
表面位置の呼称を示す。レール頭部において1は頭頂
部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一
方は車軸と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部
である。
【0054】さらに、ベイナイト組織の硬さを必要に応
じてHV240以上に限定した理由について説明する
が、硬さがHv240未満では、レールに要求されてい
る基本的な強度(硬さ)や耐摩耗性を確保することが困
難であり、さらに緩曲線区間では、G.C.(ゲージコ
ーナー)部にレールと車輪の強い接触によるメタルフロ
ーが生成し、これにともないきしみ割れやフレーキング
などの表面損傷が発生するため、ベイナイト組織の硬さ
は240以上が望ましい。また、在来線においてころが
り疲労損傷を防止するためのレール頭部の摩耗量を確保
するには、ベイナイト組織の硬さをHv350以上とす
ることが好ましい。
【0055】次に、冷却条件について上記のように定め
た理由について説明する。まず、各加速冷却速度範囲、
冷却停止温度範囲およびその後の制御冷却条件を上記の
ように定めた理由を詳細に説明する。まず、冷却停止温
度までの加速冷却速度を1〜20℃/secの範囲に限定し
た理由について説明する。
【0056】上記成分系において1℃/sec未満で冷却す
ると、成分系によってはフェライトやパーライト組織が
生成し、さらに、冷却途中の高温度域でベイナイト変態
が始まり、粗大なベイナイト組織が生成する。このため
レールの耐ころがり疲労損傷性や強度が低下するため1
℃/sec以上に限定した。また、20℃/secを超えて冷却
すると、加速冷却後の自然冷却時においてレール内部か
らの大きな復熱が発生することや、復熱量が大きいため
加速冷却後の温度上昇を抑える制御冷却を行うことが困
難となり、その温度上昇が50℃を超えてしまう。
【0057】このため、復熱中の高温度域でベイナイト
変態が始まり、ベイナイト組織が粗大化し、結果として
レールの強度が大きく低下する。また、加速冷却後に引
き続き1〜40℃/minの制御冷却を行う場合には、この
冷却中に硬いマルテンサイト組織が多く生成し、レール
の靭性および耐ころがり疲労損傷性が大きく低下する。
【0058】以上の理由から、加速冷却速度範囲を1〜
20℃/secの範囲に限定した。
【0059】次に、オーステナイト域温度からの加速冷
却停止温度を500〜300℃の範囲に限定した理由に
ついて説明する。本成分系において500℃を超えて冷
却を停止すると、加速冷却直後の復熱途中の高温度域や
加速冷却直後の制御冷却領域でベイナイト変態が始ま
り、ベイナイト組織が粗大化し、レールの強度が低下す
る。また、300℃未満まで冷却すると、加速冷却途中
やその後の制御冷却領域でベイナイト組織中に硬いマル
テンサイト組織が生成することや、また、加速冷却直後
にレール内部からの復熱が十分でなく、ベイナイト変態
が完全に終了せず、マルテンサイト組織が多く残留する
ことにより、レールの耐ころがり疲労損傷性および靭性
が著しく低下する。以上の理由から、加速冷却停止温度
範囲を500〜300℃の範囲に限定した。
【0060】次に、加速冷却後の冷却において、復熱に
よるレール頭部表層部の温度上昇を50℃以下、また、
レール頭部の冷却速度を1〜40℃/minの範囲に限定し
た理由について説明する。まず、復熱によるレール頭部
表層部の温度上昇を50℃以下に限定した理由について
説明する。
【0061】本成分系レールの頭部をオーステナイト域
温度から加速冷却し、500〜300℃の温度範囲で加
速冷却を停止した場合、加速冷却速度の選び方によって
はレール頭部表層部において最高150℃の自然復熱に
よる温度上昇が実験により確認されている。しかし、本
冷却停止温度範囲で150℃程度の温度上昇が発生する
と、加速冷却停止後の復熱領域でベイナイト変態が始ま
り、ベイナイト組織が粗大化し、レールの強度が大きく
低下する。
【0062】そこで、本成分系レールの頭部をオーステ
ナイト域温度から加速冷却し、500〜300℃の温度
範囲で加速冷却を停止し、さらに加速冷却停止後レール
頭部表層部においてレール内部からの復熱を抑える冷却
実験を行った結果、本加速冷却速度範囲および加速冷却
停止温度範囲においては、レール内部からの復熱を50
℃以下に抑えることでベイナイト組織の粗大化を防止
し、強度が高いベイナイト組織が得られることを確認し
た。
【0063】これらの結果から、本発明ではレール頭部
表層部の復熱による温度上昇を50℃以下に限定した。
なお、この復熱冷却においては、復熱温度0〜50℃の
範囲での恒温変態的な温度変化や不規則な温度変化も含
んでいる。ここで、レール頭部表層部とはレール頭部表
面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲である。
【0064】次に、加速冷却後のレール頭部の冷却速度
を1〜40℃/minの範囲に限定した理由について説明す
る。1℃/min未満で冷却すると、加速冷却停止温度によ
っては加速冷却直後の高温度域でベイナイト変態が始ま
り、ベイナイト組織が粗大化し、レールの強度が大きく
低下する。このため冷却速度を1℃/min以上に限定し
た。また、40℃/minを超えて冷却すると、加速冷却後
の冷却中にベイナイト変態を完全に終了せずにマルテン
サイト変態を引き起こし、ベイナイト組織中にマルテン
サイトが生成し、レールの耐摩耗性および靭性が著しく
低下する。このため冷却速度を40℃/min以下に限定し
た。
【0065】すなわち、本発明においてオーステナイト
域温度から1〜20℃/secで加速冷却し、加速冷却停止
温度を500〜300℃の範囲にすることによって、低
温度域でベイナイト変態をさせ、場合によっては加速冷
却後に、復熱による温度上昇を抑える冷却、制御冷却を
施し、強度が高いベイナイト組織を安定的に生成させる
ことが可能となる。
【0066】なお、成分系および加速冷却速度の選択に
よっては加速冷却途中の500〜300℃の範囲におい
てベイナイト変態が開始し、その後の自然冷却および制
御冷却領域で変態を完了する場合と、加速冷却直後の自
然冷却および制御冷却領域においてベイナイト変態が開
始し、変態を完了する場合がある。
【0067】しかし本冷却停止温度範囲においては、い
ずれのベイナイト組織も耐ころがり疲労損傷性に優れ、
かつ強度が高いため、本発明鋼のベイナイト組織として
は、加速冷却途中の500〜300℃の冷却停止温度範
囲において生成するベイナイト組織とその後の自然冷却
および制御冷却領域において生成するベイナイト組織の
両方を含んでいる。
【0068】また、この冷却後の金属組成はベイナイト
組織であることが望ましいが、成分、加速冷却速度およ
び冷却停止温度の選択によってはベイナイト組織中に微
量なフェライト、パーライト組織、マルテンサイト組織
が混入することがある。しかし、ベイナイト組織中に微
量なフェライト、パーライト組織、マルテンサイト組織
が混入してもレールの耐ころがり疲労損傷性、強度、靭
性に大きな影響をおよぼさないため、本ベイナイト系レ
ールの組織としてはこれらの組織の若干の混在も含んで
いる。
【0069】なお、これらの組織の混入量としては、ミ
クロ組織観察においてその量が10%を超えるとレール
の耐ころがり疲労損傷性、強度、靭性に大きな影響を与
えるため、ベイナイト組織の生成比率としては90%以
上を確保することが好ましい。また、ベイナイト組織の
生成比率を確認する方法としては、光学顕微鏡を用いて
約200倍以上の倍率で観察することにより、その生成
比率の確認が可能である。
【0070】加速冷却時の冷却媒体としては、所定の冷
却速度を得るため、空気、ミスト冷却、水・空気混合噴
射冷却、あるいはこれらの組み合わせ、および、油、熱
湯、ポリマー+水、ソルトバスへのレール頭部あるいは
全体を浸漬等を用いることが望ましい。また、加速冷却
後の復熱を抑える冷却、制御冷却時の冷却媒体としては
空気あるいは空気を主としたミストなどを用いることが
望ましい。
【0071】最後に、電気抵抗値(μΩ・cm)を計算値
24.7μΩ・cm以下に定めた理由について説明す
る。上記表1に示すように、レールの電気抵抗値につい
ては上記計算式による計算値と実測値には非常によい相
関が見られる。すなわち、レールの化学成分の製造上の
ばらつきを考慮すると、電気抵抗値が計算値で24.7
μΩ・cmを超えると、現在使用されている代表的な高炭
素のパーライト組織を呈した旅客鉄道用レールと比較し
て、実測においても電気抵抗値が大きくなると考えられ
る。
【0072】したがって、電気抵抗の計算値が24.7
μΩ・cmを超えたレールが在来線の直流電化区間で使用
されると、上記のようにレールの電気抵抗の増加により
軌道電流が低下し、列車運行が過密な線区では、列車
運行本数の減少、運行速度の制限などの問題が発生す
る。そこで、レールの電気抵抗値を計算値で24.7μ
Ω・cm以下に限定した。
【0073】
【実施例】
[実施例1](請求項1、2の実施例) 表2に、本発明のレール鋼の化学成分、ミクロ組織、及
び電気抵抗値の計算値、実測値を示す。さらに、表2に
は図3に示す水潤滑条件下におけるころがり疲労損傷性
試験での200万回繰り返し後の表面損傷の有無を併記
した。また、表2に比較レール鋼の化学成分、ミクロ組
織、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示す。さらに、
表2には図3に示す水潤滑条件下におけるころがり疲労
損傷性試験での200万回繰り返し後の表面損傷の有無
を併記した。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール(本) 符号A,C,D,F,G,H:上記成分範囲内のベイナ
イト組織を呈した低電気抵抗の本発明レール。 ・比較レール(9本) 符号I〜O:成分が上記成分範囲を満たさない比較レー
ル。 符号P〜Q:成分は上記成分範囲であるが、電気抵抗値
が上記範囲を満たさない比較レール。 なお、レール電気抵抗の測定については下記の要領で実
施した。レールの電気抵抗の測定方法としては電圧降下
法を用いた。測定方法としてはレール端部両側の柱部に
電流端子を取り付け、基準電流25Aを流し、電圧端子
を電流端子の内側約1mの位置にレール足部にセットす
る。
【0078】このようにして測定された電流値、電圧値
から電気抵抗を次式により求めた。 ρ(μΩ・cm)=(ρ20×A)/L×10-1 A:測定レールの断面積(mm)2 、 L:電圧端子間距
離(mm)
【0079】ただし、ρ20は20℃のときの値に換算さ
れた測定材の抵抗値(μΩ)で、次式を用いた。 ρ20=ρt /{1+α(t−20)} ρt :温度tで測定された電気抵抗、αは温度補正係数
で実際にレール温度を変えて実測した抵抗値の変化から
求めた。
【0080】また、ころがり疲労試験は下記条件で実施
した。 ・試験機:ころがり疲労試験機 ・試験片形状:円盤状試験片 (レール 外径:200mm、レール材断面形状:60K
レールの1/4モデル) (車輪 外径:200mm、車輪材断面形状:円弧踏面
車輪の1/4モデル) ・試験荷重:1.0トン ・雰囲気:乾燥+水潤滑(60cc/min) ・回転数:乾燥;100rpm、水潤滑;300rpm ・繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後水
潤滑により損傷発生まで(損傷が発生しない場合は20
0万回で試験を中止)
【0081】[実施例2](請求項3、4の実施例) 表3に、本発明のレール鋼の化学成分、ミクロ組織、硬
さ、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示す。さらに、
表3には図3に示す水潤滑条件下におけるころがり疲労
損傷性試験での200万回繰り返し後の表面損傷の有無
を併記した。また、表3に比較レール鋼の化学成分、ミ
クロ組織、硬さ、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示
す。さらに、表3には実施例1の図3に示す水潤滑条件
下におけるころがり疲労損傷性試験での200万回繰り
返し後の表面損傷の有無を併記した。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール(本) 符号A,D,F,G,H:上記成分範囲内のベイナイト
組織を呈した低電気抵抗の本発明レール。 ・比較レール(10本) 符号I〜O:成分が上記成分範囲を満たさない比較レー
ル。 符号P :成分は上記成分範囲であるが、電気抵抗値
が上記範囲を満たさない比較レール。 符号Q,R:成分は上記成分範囲であるが、Mn,C
r,Moの含有率の和が上記範囲を満たさない比較レー
ル。 なお、レールの電気抵抗の測定方法は実施例1と同様の
電圧降下法を用いた。また、ころがり疲労試験について
も実施例1と同様の条件で行った。
【0089】[実施例3](請求項5〜8の実施例) 表4に、本発明のレール鋼の化学成分、冷却条件、ミク
ロ組織、硬さ、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示
す。さらに、表4には図3に示す水潤滑条件下における
ころがり疲労損傷性試験での200万回繰り返し後の表
面損傷の有無を併記した。また、表4に比較レール鋼の
化学成分、冷却条件、ミクロ組織、硬さ、及び電気抵抗
値の計算値、実測値を示す。さらに、表4には図3に示
す水潤滑条件下におけるころがり疲労損傷性試験での2
00万回繰り返し後の表面損傷の有無を併記した。
【0090】
【表11】
【0091】
【表12】
【0092】
【表13】
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
【表16】
【0096】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール(本) 符号A〜C,G〜K:請求項5〜8の成分範囲内で、該
鋼レールの頭部を加速冷却し、その後自然冷却する。さ
らに復熱を抑える冷却、制御冷却によって製造されるベ
イナイト組織を呈した低電気抵抗の本発明レール。 ・比較レール(8本) 符号N〜P:成分が上記成分範囲を満たさない比較レー
ル。 符号Q〜U:成分は上記成分範囲であるが、冷却条件が
上記範囲を満たさない比較レール。 なお、レールの電気抵抗の測定方法は実施例1と同様の
電圧降下法を用いた。また、ころがり疲労試験について
も実施例1と同様の条件で行った。
【0097】[実施例4](請求項9,10,13,1
4の実施例) 表5に本発明のレール鋼の化学成分、冷却条件、ミクロ
組織、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示す。さら
に、表5には図3に示す水潤滑条件下におけるころがり
疲労損傷性試験での200万回繰り返し後の表面損傷の
有無を併記した。また、表5には比較レール鋼の化学成
分、冷却条件、ミクロ組織、及び電気抵抗値の計算値、
実測値を示す。さらに、表5には実施例1の図3に示す
水潤滑条件下におけるころがり疲労損傷性試験での20
0万回繰り返し後の表面損傷の有無を併記した。
【0098】
【表17】
【0099】
【表18】
【0100】
【表19】
【0101】
【表20】
【0102】
【表21】
【0103】
【表22】
【0104】
【表23】
【0105】
【表24】
【0106】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール(12本) 符号A〜:上記成分範囲内で、該鋼レールの頭部を加
速冷却し、その後自然冷却する。さらに復熱を抑える冷
却、制御冷却によって製造されるベイナイト組織を呈し
た低電気抵抗の本発明レール。 ・比較レール(10本) 符号N〜P:成分が上記成分範囲を満たさない比較レー
ル。 符号Q :成分は上記成分範囲を満たすが、電気抵抗
値が上記範囲を満たさない比較レール。 符号R〜W:成分は上記成分範囲であるが、冷却条件が
上記範囲を満たさない比較レール。 なお、レールの電気抵抗の測定方法は実施例1と同様の
電圧降下法を用いた。また、ころがり疲労試験について
も実施例1と同様の条件で行った。
【0107】[実施例5](請求項11,12,13,
14の実施例) 表6に、本発明のレール鋼の化学成分、冷却条件、ミク
ロ組織、硬さ、及び電気抵抗値の計算値、実測値を示
す。さらに、表6には図3に示す水潤滑条件下における
ころがり疲労損傷性試験での200万回繰り返し後の表
面損傷の有無を併記した。また、表6には比較レール鋼
の化学成分、冷却条件、ミクロ組織、硬さ、及び電気抵
抗値の計算値、実測値を示す。さらに、表6には実施例
1の図3に示す水潤滑条件下におけるころがり疲労損傷
性試験での200万回繰り返し後の表面損傷の有無を併
記した。
【0108】
【表25】
【0109】
【表26】
【0110】
【表27】
【0111】
【表28】
【0112】
【表29】
【0113】
【表30】
【0114】
【表31】
【0115】
【表32】
【0116】レールの構成は以下のとおりである。 ・本発明レール(12本) 符号A〜:上記成分範囲内で、該鋼レールの頭部を加
速冷却し、その後自然冷却する。さらに復熱を抑える冷
却、制御冷却によって製造されるベイナイト組織を呈し
た低電気抵抗の本発明レール。 ・比較レール(11本) 符号N〜P:成分が上記成分範囲を満たさない比較レー
ル。 符号Q,R:成分は上記成分範囲を満たすが、Mn,C
r,Moの含有率の和が1.0%未満である比較レー
ル。 符号S〜X:成分は上記成分範囲であるが、冷却条件が
上記範囲を満たさない比較レール。 なお、レールの電気抵抗の測定方法は実施例1と同様の
電圧降下法を用いた。また、ころがり疲労試験について
も実施例1と同様の条件で行った。
【0117】
【発明の効果】表2,3に示したように、本発明レール
は比較レールと比べて、合金元素の適切な選択および添
加量を調整することにより、低電気抵抗化を実現し、レ
ール頭表部をベイナイト組織とすることにより、耐ころ
がり疲労損傷性を向上させることができる。また、表4
〜6に示したように、本発明レールは比較レールと比べ
て、合金元素の適切な選択および添加量の調整や適切な
冷却条件の選択により、低電気抵抗化とベイナイト組織
の安定化を実現し、レール頭表部をベイナイト組織とす
ることにより、耐ころがり疲労損傷性を向上させること
ができる。このように本発明によれば、旅客鉄道におい
て要求される電気抵抗の低減と、耐ころがり疲労損傷性
に優れたベイナイト組織を呈する低電気抵抗レールを低
コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MnとCrの添加量とミクロ組織の関係を示し
た図表である。
【図2】レール頭部断面表面位置の呼称を表示した図面
である。
【図3】ころがり疲労試験機の概略図である。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:車輪試験片 4:レール円盤試験片 5:モーター(車輪側) 6:モーター(レール側) 7:水潤滑装置
フロントページの続き (72)発明者 影山 英明 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製 鐵株式会社 八幡製鐵所内 審査官 小川 武 (56)参考文献 特開 平7−305144(JP,A) 特開 平6−316728(JP,A) 特開 平3−20442(JP,A) 特開 平6−248342(JP,A) 特公 昭47−32167(JP,B1) H.ICHINOSE et.al" AN INVESTIGATION O N CONTACT FATIGUE AND WEAR RESISTANC E IN RAIL STEELS” HEAVY AHUL RAILWAY S CONFERENCE SESSI ON307(1978) 上田ら”ベイナイトレール鋼の摩耗・ ころがり疲労損傷特性”材料とプロセス VOL.7(1994)−1814 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/04

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
    (1)式による電気抵抗値が24.7μΩ・cm以下であ
    る鋼レールにおいて、該鋼レールの頭部コーナー部およ
    び頭頂部表面を起点として少なくとも深さ15mmの範囲
    がベイナイト組織であることを特徴とする耐ころがり疲
    労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo…(1)
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.01〜0.05%、 V :0.03〜0.30%、 Nb:0.01〜0.05%、 B :0.0005〜0.0050% の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
    純物からなり、(2)式による電気抵抗値が24.7μ
    Ω・cm以下である鋼レールにおいて、該鋼レールの頭部
    コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深
    さ15mmの範囲がベイナイト組織であることを特徴とす
    る耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト
    系レール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V………………………………(2)
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の和が
    1.0%以上であり、残部が鉄および不可避不純物から
    なり、(1)式による電気抵抗値が24.7μΩ・cm以
    下である鋼レールにおいて、該鋼レールの頭部コーナー
    部および頭頂部表面を起点として少なくとも深さ15mm
    の範囲がベイナイト組織を呈し、前記ベイナイト組織の
    硬さがHv240以上であることを特徴とする耐ころが
    り疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo…(1)
  4. 【請求項4】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の和が
    1.0%以上であり、 さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.01〜0.05%、 V :0.03〜0.30%、 Nb:0.01〜0.05%、 B :0.0005〜0.0050% の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
    純物からなり、(2)式による電気抵抗値が24.7μ
    Ω・cm以下である鋼レールにおいて、該鋼レールの頭部
    コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも深
    さ15mmの範囲がベイナイト組織を呈し、前記ベイナイ
    ト組織の硬さがHv240以上であることを特徴とする
    耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系
    レール。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V………………………………(2)
  5. 【請求項5】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を熱
    間圧延して形成したレールの頭部を、オーステナイト域
    温度から5〜20℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼
    レール温度が500〜300℃の間に達した時点で加速
    冷却を停止し、引き続き常温まで自然冷却し、(1)式
    による電気抵抗値が24.7μΩ・cm以下であることを
    特徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベ
    イナイト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo…(1)
  6. 【請求項6】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.01〜0.05%、 V :0.03〜0.30%、 Nb:0.01〜0.05%、 B :0.0005〜0.0050% の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
    純物からなる鋼を熱間圧延して形成したレールの頭部
    を、オーステナイト域温度から5〜20℃/secの冷却速
    度で加速冷却し、該鋼レール温度が500〜300℃の
    間に達した時点で加速冷却を停止し、引き続き常温まで
    自然冷却し、(2)式による電気抵抗値が24.7μΩ
    ・cm以下であることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性
    に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V………………………………(2)
  7. 【請求項7】 加速冷却後のレール頭部表層部におい
    て、レール内部からの復熱による温度上昇を加速冷却終
    了時の水準より50℃以下にする冷却を行い、復熱によ
    る温度上昇終了後、常温まで自然冷却し、前記(1)式
    もしくは(2)式による電気抵抗値が24.7μΩ・cm
    以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の耐
    ころがり疲労損傷性に優れたベイナイト系レールの製造
    法。
  8. 【請求項8】 加速冷却後のレール頭部において、引き
    続き常温まで1〜40℃/minで制御冷却し、前記(1)
    式もしくは(2)式による電気抵抗値が24.7μΩ・
    cm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の
    耐ころがり疲労損傷性に優れたベイナイト系レールの製
    造法。
  9. 【請求項9】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
    (1)式による電気抵抗値が24.7μΩ・cm以下であ
    る鋼を熱間圧延して形成した鋼レールであって、熱間圧
    延後の高温度の熱を保有するレール、あるいは高温に加
    熱された該鋼レールの頭部を、オーステナイト域温度か
    ら1〜20℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼レール
    温度が500〜300℃の間に達した時点で加速冷却を
    停止し、その後放冷する工程からなり、該鋼レールの頭
    部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくとも
    深さ15mmの範囲がベイナイト組織であることを特徴と
    する耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイ
    ト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo…(1)
  10. 【請求項10】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.01〜0.05%、 V :0.03〜0.30%、 Nb:0.01〜0.05%、 B :0.0005〜0.0050% の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
    純物からなり、(2)式による電気抵抗値が24.7μ
    Ω・cm以下である鋼を熱間圧延して形成した鋼レールで
    あって、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あ
    るいは高温に加熱された該鋼レールの頭部を、オーステ
    ナイト域温度から1〜20℃/secの冷却速度で加速冷却
    し、該鋼レール温度が500〜300℃の間に達した時
    点で加速冷却を停止し、その後放冷する工程からなり、
    該鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点と
    して少なくとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織であ
    ることを特徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電
    気抵抗ベイナイト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V………………………………(2)
  11. 【請求項11】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の和が
    1.0%以上であり、残部が鉄および不可避不純物から
    なり、(1)式による電気抵抗値が24.7μΩ・cm以
    下である鋼を熱間圧延して形成した鋼レールであって、
    熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あるいは高
    温に加熱された該鋼レールの頭部を、オーステナイト域
    温度から1〜20℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼
    レール温度が500〜300℃の間に達した時点で加速
    冷却を停止し、その後放冷する工程からなり、該鋼レー
    ルの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少な
    くとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織を呈し、前記
    ベイナイト組織の硬さがHv240以上であることを特
    徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイ
    ナイト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo…(1)
  12. 【請求項12】 重量%で、 C :0.15〜0.45%、 Si:0.10〜0.50%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Cr:0.20〜1.80%、 Mo:0.01〜0.60%、 P :≦0.025%、 S :≦0.025% を含有し、重量%でMn+Cr+Moの含有率の和が
    1.0%以上であり、さらに、 Cu:0.05〜0.50%、 Ni:0.05〜1.00%、 Ti:0.01〜0.05%、 V :0.03〜0.30%、 Nb:0.01〜0.05%、 B :0.0005〜0.0050% の1種又は2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不
    純物からなり、(2)式による電気抵抗値が24.7μ
    Ω・cm以下である鋼を熱間圧延して形成した鋼レールで
    あって、熱間圧延後の高温度の熱を保有するレール、あ
    るいは高温に加熱された該鋼レールの頭部を、オーステ
    ナイト域温度から1〜20℃/secの冷却速度で加速冷却
    し、該鋼レール温度が500〜300℃の間に達した時
    点で加速冷却を停止し、その後放冷する工程からなり、
    該鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点と
    して少なくとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織を呈
    し、前記ベイナイト組織の硬さがHv240以上である
    ことを特徴とする耐ころがり疲労損傷性に優れた低電気
    抵抗ベイナイト系レールの製造法。 *電気抵抗値(μΩ・cm)計算式 :9.7+ 0.6C+13.3Si+ 6.7Mn+ 5.0Cr+16.7P+10.8S+ 3.3Mo + 5.0Cu+ 2.5Ni+ 2.9Ti+ 5.5V………………………………(2)
  13. 【請求項13】 加速冷却後のレール頭部表層部におい
    て、レール内部からの復熱による温度上昇を加速冷却終
    了時の水準より50℃以下にする冷却を行い、復熱によ
    る温度上昇終了後、常温まで自然冷却し、該鋼レールの
    頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少なくと
    も深さ15mmの範囲がベイナイト組織であることを特徴
    とする請求項9〜12のいずれかに記載の耐ころがり疲
    労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの製造
    法。
  14. 【請求項14】 加速冷却後のレール頭部において、引
    き続き常温まで1〜40℃/minで制御冷却し、該鋼レー
    ルの頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少な
    くとも深さ15mmの範囲がベイナイト組織であることを
    特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の耐ころが
    り疲労損傷性に優れた低電気抵抗ベイナイト系レールの
    製造法。
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