JP2000016880A - 化粧模様付き軽量気泡コンクリートパネルとその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 パネル強度を低下させることなく、パネル表
面に凹凸化粧模様を有し、かつ、裏面にパネル内の水分
を速やかに壁外へ排出するための通気溝を有する軽量気
泡コンクリートパネルを提供する。さらに、このパネル
の生産において、生産性が低下しない製造方法を提供す
る。 【解決手段】 片面に凹凸化粧模様１を有し、それと相
対する他面に通気溝２が設けられており、少なくとも凹
凸化粧模様１の凹部および通気溝２の底部から、パネル
内部途中まで重質部３が形成されている。重質部３以外
のパネル内部は、通常の軽量気泡コンクリートパネル内
部と同様な多孔質４と補強材５で構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、化粧模様と通気溝
を有した軽量気泡コンクリートパネルとその製造方法に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】軽量気泡コンクリートパネルは軽量で断
熱性、耐火性、遮音性に優れているため、広く外壁材と
して使用されている。しかし、寒冷地においては、結露
水、屋内からの湿気等による吸水によって氷結が生じ、
凍害の危険性がある。これを防止するためには、軽量気
泡コンクリートパネルで構成された壁体内部にある水分
を、速やかに壁体外へ排出することが必要である。

【０００３】そのために、壁面を構成した際に上下方向
に連通する通気溝を内壁面に有する軽量気泡コンクリー
トパネルとする方法（特開平５−２９５８４８）が提案
されている。しかしながら、上記の軽量気泡コンクリー
トパネルでは、市販パネルの裏面を切削加工等により削
り、通気溝を設けるため、パネル強度が低下する。特
に、壁体内の水分を壁体系外へ円滑に排除するために
は、通気溝を十分に大きくとる必要があり、それだけ、
パネル強度が低下しやすくなる問題があった。

【０００４】また、近年、表面に凹凸化粧模様を付与し
た意匠性に優れる軽量気泡コンクリートパネルの需要が
増大している。この表面に化粧模様を付与した軽量気泡
コンクリートパネルに、前記通気溝を設けると、さらに
パネル強度が低下する恐れが増大する。また、上記の化
粧模様と通気溝を併せ持つパネルを生産する場合、表面
模様の付与行程と、裏面への通気溝を設ける行程の２段
階となり、生産性が大きく低下する問題も新たに生ず
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題に
鑑み、軽量気泡コンクリートパネルのパネル強度を低下
させることなく、凹凸化粧模様と通気溝を併せ持つ軽量
気泡コンクリートパネル、並びに、生産性を大きく損な
うことのないその製造方法を提供するものである。

【０００６】

【発明を解決するための手段】すなわち、本発明の第１
は、凹凸化粧模様付きの軽量気泡コンクリートパネルに
おいて、片面に凹凸化粧模様、他面に通気溝が設けら
れ、少なくとも凹凸化粧模様の凹部における底部および
通気溝における底部からパネル内部途中まで重質部がそ
れぞれ形成されていることを特徴とする軽量気泡コンク
リートパネルである。

【０００７】さらに、本発明の第２は、第１の発明の軽
量気泡コンクリートパネルを製造する方法であって、半
硬化状の気泡性パネルを型枠の凹凸化粧模様形成面と通
気溝形成面で挟んでプレスすることにより、片面に凹凸
化粧模様、他面に通気溝を同時に形成することを特徴と
する軽量気泡コンクリートパネルの製造方法である。ま
た、本発明に第３は、第１の発明の軽量気泡コンクリー
トを製造するための型枠装置であって、半硬化状の気泡
性パネルの側面を周囲から支持する側枠部と、凹凸化粧
模様形成面を有する一方の押圧型部と、通気溝形成面を
有する他方の押圧型部を備えていることを特徴とする軽
量気泡コンクリートパネル製造用の型枠装置である。

【０００８】本発明における軽量気泡コンクリートパネ
ルは、例えば、ＪＩＳ Ａ ５４１６に記載のＡＬＣな
どをあげることができる。例えば、セメント、生石灰、
珪石、水を主原料として、内部に多量の気泡が混入され
た、かさ比重０．１〜１．０程度の硬化体と、内部に埋
設された補強材とから構成されている軽量気泡コンクリ
ートパネルをあげることができる。

【０００９】本発明の軽量気泡コンクリートパネルの表
面に有する凹凸模様は、建築物の外壁として一般的に用
いられる意匠性を有していれば特に限定されるものでは
なく、石調、レンガ調、あるいは各々を組み合わせた模
様などがある。本発明では、図１に示すように片面に凹
凸化粧模様１を有し、それと相対する他面に通気溝２が
設けられており、少なくとも凹凸化粧模様１の凹部およ
び通気溝２の底部から、パネル内部途中まで重質部３が
形成されている。重質部３以外のパネル内部は、通常の
軽量気泡コンクリートパネルの内部と同様な多孔質４と
補強材５とで構成されている。このように、パネル強度
を最も低下させる凹凸化粧模様凹部と通気溝の底部内部
に、重質部が形成され、この部分の強度が増すため、凹
凸化粧模様および通気溝があってもパネル曲げ強度の低
下を防ぐことができる。

【００１０】凹凸化粧模様および通気溝内部に形成され
る重質部３は、気泡がない以外は、その周囲の多孔質４
と同質の材料で形成され、かつ、一体物に形成されてい
る。そのため、収縮挙動の違いによる、亀裂、剥離の発
生の恐れはない。さらに、重質部３が形成される深さ
は、パネル強度の低下を防ぐ効果を発揮できる深さであ
れば特に限定されるものではないが、補強材５と接する
とさらに補強効果がたかまるので好ましい。

【００１１】

【本発明の実施の形態】以上のような軽量気泡コンクリ
ートパネルの製造方法を次に説明する。本発明で使用す
る軽量気泡コンクリートの組成は、一般に軽量気泡コン
クリートとして用いられるものであれば、特に限定され
るものではない。例えば、セメント、生石灰、珪石、水
を主原料として、石膏、気泡材、混和材などを必要に応
じて添加することができる。

【００１２】気泡の混入方法としては、モルタルスラリ
ーにアルミニウム粉などの気泡材を混入して発泡させる
方法でも良く、あらかじめ発泡させた気泡をモルタルス
ラリーに混入する方法でも良い。こうして得た気泡性モ
ルタルスラリーを、あらかじめ補強材を配置した型枠に
注入、養生し、切断するのに適した硬度に達したとき、
型枠から外し、半硬化状の気泡性ブロックを得る。次に
この半硬化状の気泡性ブロックを緊張配線したピアノ線
などで所定の寸法に切断し、半硬化状の気泡性パネルを
得る。

【００１３】本発明の軽量気泡コンクリートパネルの製
造方法においては、半硬化状の気泡性パネルを凹凸化粧
模様形成面と通気溝形成面を有した型枠ではさんでプレ
スし、凹凸化粧模様面とそれと相対する他面の通気溝を
同時に形成する。模様面と通気溝を同時に形成するの
で、各々の付与行程が一段階で済み、通気溝を設けるこ
とで生じる生産性の大幅な低下を防ぐことができる。

【００１４】本発明における凹凸模様形成面は、プレス
により半硬化状の気泡性パネルに凹凸化粧模様を付与す
るものであり、例えば、凹凸模様を有する化粧型などが
ある。また、通気溝形成面も同様に、プレスにより半硬
化状の気泡性パネルに凹凸溝を付与するものであり、例
えば、設けようとする通気溝の形状の凸部分を有した平
板などがある。凹凸模様形成面および通気溝形成面の材
質は、半硬化状の気泡性パネルに模様および通気溝を転
写できる強度を有するものであれば特に限定されるもの
ではなく、例えば、硬質ウレタンゴム、硬質プラスチッ
ク、発泡スチロール、鉄鋼、ステンレス、アルミ、チタ
ンなど、あるいはこれらの組み合わせを用いることがで
きる。転写によって得られる模様および通気溝の精度の
点から、硬質ウレタンゴム、硬質プラスチック、金属が
特に好ましい。

【００１５】本発明の軽量気泡コンクリートパネルを製
造するための型枠装置は、半硬化状の気泡性パネルの側
面を周囲から支持する側枠部と、凹凸化粧模様形成面を
有する一方の押圧型部と、通気溝形成面を有する他方の
押圧型部を備えている。半硬化状の気泡性パネルは、非
常に脆いため、本発明におけるパネルの側面を周囲から
支持する側枠部がない場合は、プレスにより半硬化状の
パネルに凹凸化粧模様と通気溝を形成する際、その他の
面が崩れたり、気泡性パネルの隅部亀裂に発生しやすく
なる。

【００１６】側枠部は、生産のしやすさから可動部を有
していることが好ましく、さらに、可動部から生ずる力
により、半硬化状の気泡性パネルの側枠部があたる面
を、より強く拘束できるので、凹凸化粧模様および通気
溝を形成する面以外の面の崩れや亀裂を防ぎやすくなり
さらに好ましい。半発明の型枠装置における凹凸化粧模
様形成面を有する押圧型部と、通気溝形成面を有する押
圧型部は、各々の形成面を半硬化状の軽量気泡コンクリ
ートパネルに付与できれば特に制限されるものではない
が、押圧型部の交換の利便性から、押圧型部の表面のみ
を型枠から取り外すような構成であることが好ましい。

【００１７】以上のような本発明の軽量気泡コンクリー
トパネルの、製造方法の一例を図２に示しさらに説明す
る。半硬化状の気泡性パネル６を、鋼製平板で鋼製され
た側枠７を周囲に有し、底面にパネルに凹凸模様を付与
できる凹凸化粧模様型８がある型枠装置内に静置する。
次に、パネル６が圧縮破壊されない程度の力で、エアー
シリンダー１１により側枠７を半硬化状の気泡性パネル
６に押し当てる。さらに上面から、パネルに付与する通
気溝に該当する線状の凹凸を有した通気溝型９が固定さ
れた天板１０を押しつける。凹凸化粧模様面と通気溝を
付与した前記半硬化状の気泡性パネルを、例えば、蒸気
養生、オートクレーブ養生などの方法により完全に硬化
させる。このようにして、本発明の凹凸化粧模様付きの
軽量気泡コンクリートパネルを得る。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
説明する。なお、曲げ試験はＪＩＳ Ａ ５４１６で規
定される方法でおこなった。

【００１９】

【実施例１】珪石５３重量部、生石灰７．５重量部、セ
メント３７重量部、乾燥石膏２．５重量部、これら固形
分１００に対し、水７２重量部、アルミ粉末０．０６６
重量部を有する軽量気泡コンクリートモルタルを、あら
かじめ５６０×１７８０ｍｍのメタルラス（目開き１６
ｍｍ×３２ｍｍ、太さ０．８ｍｍ）を５０ｍｍピッチで
均等に配置した型枠に注入し、養生後、半硬化状の気泡
モルタルブロックを得た。このモルタルブロックを緊張
配線したピアノ線で切断し、メタルラスが中央に配置さ
れた５０ｍｍ×６００ｍｍ×１８００ｍｍの試験体を得
た。

【００２０】この試験体をあらかじめ凹凸模様の意匠型
を敷いた７０ｍｍ×６００ｍｍ×１８００の鋼製型枠内
に載置し、その上から、パネルに通気溝を設けるため
の、切断面が上底１５ｍｍ、下底２０ｍｍ、深さ１０ｍ
ｍの台形で、長さ６００ｍｍの凸部をパネル長手方向に
４等分する位置に３本設けた厚さ１０ｍｍ×６００ｍｍ
×１８００ｍｍの鋼製平板を載せ、さらに、その上から
油圧式加圧機で１４ｍｍ押圧した。意匠型は、最小厚さ
１０ｍｍ、幅６０ｍｍ、長さ１８００ｍｍで、その表面
全体が最大凹凸深さ４ｍｍの砂岩調の凹型で鋼製されて
おり、材質はウレタンゴム製を使用した。

【００２１】凹凸の付いた試験体をオートクレーブ養生
して、表面に凹凸化粧模様面と通気溝の付いた軽量気泡
コンクリートパネルを得た。得られた軽量気泡コンクリ
ートパネルの表面には意匠性に優れる砂岩調の模様が刻
まれ、外観上好ましいものとなった。また、その裏面に
は、パネルを横貼りに施工した時に、壁体下端から上端
まで連通する通気溝があり、軽量気泡コンクリートパネ
ル内の蓄積水分を速やかに、壁体系外へ放出されること
が見込まれた。さらに、パネル切断面からは、凹凸化粧
模様凹部と通気溝底部のパネル内部のみ気泡がつぶれて
できた重質部が形成されており、その他の部分は通常の
軽量気泡コンクリートと同様な多孔質でることが観察さ
れた。パネル曲げ強度試験の結果を表１に示す。曲げ強
度試験において、裏面通気溝が中央になるように配置し
て試験をした。本実施例で得られたパネルは、切削によ
り通気溝を形成した比較例１のパネルよりも高い曲げ強
度であった。

【００２２】

【比較例】実施例１と同様の方法で作製した半硬化状軽
量気泡コンクリートブロックをピアノ線で切断し、メタ
ルラス網が中央に配置された５０×６００×１８００ｍ
ｍの試験体を得た。この試験体を実施例１と同じ条件で
オートクレーブ養生し、硬化させた。その後、パネル長
手方向に４等分する位置に、表面幅２０ｍｍ、深さ１０
ｍｍ、底面１５ｍｍの切断面が台形状で、長さ６００ｍ
ｍの溝を３本、切削により設け、実施例１と同様の形状
の通気溝を得た。このパネルの曲げ強度試験の結果を表
１に示す。曲げ強度試験において、裏面通気溝が中央に
なるように配置して試験をした。

【００２３】

【表１】

【００２４】

【発明の効果】本発明の凹凸化粧模様付きの軽量気泡コ
ンクリートパネルは、従来の裏面に通気溝を有した軽量
気泡コンクリートパネルよりも、高いパネル強度を有す
る。さらに、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの製
造方法によれば、表面に凹凸化粧模様と、裏面に通気溝
を有する軽量気泡コンクリートパネルを、生産性を低下
させることなく、効率的に製造することが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の軽量気泡コンクリートパネルの１例で
ある断面概略図である。

【図２】本発明の軽量気泡コンクリートパネルの製造方
法を示す正面断面図である。

【符号の説明】

１ 凹凸化粧模様 ２ 通気溝 ３ 重質部 ４ 多孔質 ５ 補強材 ６ 半硬化状の気泡性パネル ７ 側枠 ８ 凹凸化粧模様型 ９ 通気溝型 １０ 天板 １１ エアーシリンダー

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 凹凸化粧模様付きの軽量気泡コンクリー
   トパネルにおいて、片面に凹凸化粧模様、他面に通気溝
   が設けられ、少なくとも凹凸化粧模様の凹部における底
   部および通気溝における底部からパネル内部途中まで重
   質部がそれぞれ形成されていることを特徴とする軽量気
   泡コンクリートパネル。
2. 【請求項２】 請求項に記載の軽量気泡コンクリートパ
   ネルを製造する方法であって、半硬化状の気泡性パネル
   を型枠の凹凸化粧模様形成面と通気溝形成面で挟んでプ
   レスすることにより、片面に凹凸化粧模様、他面に通気
   溝を同時に形成することを特徴とする軽量気泡コンクリ
   ートパネルの製造方法。
3. 【請求項３】 請求項１に記載の軽量気泡コンクリート
   パネルを製造するための型枠装置であって、半硬化状の
   気泡性パネルの側面を周囲から支持する側枠部と、凹凸
   化粧模様形成面を有する一方の押圧型部と、通気溝形成
   面を有する他方の押圧型部を備えていることを特徴とす
   る軽量気泡コンクリートパネル製造用の型枠装置。