JP2000009930A - 位相差板及びその製造方法 - Google Patents

位相差板及びその製造方法

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JP2000009930A
JP2000009930A JP10171543A JP17154398A JP2000009930A JP 2000009930 A JP2000009930 A JP 2000009930A JP 10171543 A JP10171543 A JP 10171543A JP 17154398 A JP17154398 A JP 17154398A JP 2000009930 A JP2000009930 A JP 2000009930A
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stretching
resin film
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Akihisa Miura
明久 三浦
Yasumasa Okada
安正 岡田
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 視野角を更に拡大すると同時に、位相差の均
一性を更に高めた位相差板及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 フィルム表面の面内方向の屈折率差
〔(nx −ny s 〕が、該フィルムの厚み方向に対す
る中心部における面内方向の屈折率差〔(nx −ny
c 〕より大であり、且つ、厚み方向屈折率(nz )との
関係が、nx >nz >ny なる関係にあることを特徴と
する位相差板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、位相差板及びその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】位相差板は液晶ディスプレイに組み込ま
れて液晶層の屈折率の差で発生する位相差を補償するも
のである。位相差板の正面から見る場合の位相差は、面
内のx方向及びy方向の屈折率差で発現するが、斜め方
向から見る場合の位相差は、位相差板の厚み方向の屈折
率が影響するため、正面から見る場合の位相差と異なっ
た位相差を示す。上記斜め方向から見る場合の位相差値
が、正面から見る場合の位相差値の±10%以内にある
位相差板の法線方向からの角度を視野角と称し、位相差
板の性能を表す指標とされている。
【0003】上記位相差板としては、通常、一軸延伸熱
可塑性樹脂フィルムが用いられるが、これらの一軸延伸
熱可塑性樹脂フィルムからなる位相差板の視野角は、大
きくても42〜43°程度のものである。近時、液晶デ
ィスプレイの画面が大きくなるにつれ、斜め方向から画
面を見る場合が増え、上記視野角では狭過ぎるという問
題が生じている。
【0004】上記視野角を拡張する試みとして、例え
ば、特開平5−157911号公報には、一軸配向させ
た樹脂フィルム1(配向方向:x)に、該樹脂フィルム
1の配向方向(x)に直交する方向(y)に配向させた
樹脂フィルム2を貼り合わせた後、加熱して収縮させた
位相差板が開示されている。
【0005】特開平5−157911号公報に開示され
た位相差板の位相差の発現機作は、次のようである。上
記一軸配向させた樹脂フィルム1が、貼合された樹脂フ
ィルム2の配向方向(y)への収縮に追従して収縮す
る。加熱収縮前は、配向方向(x)に直交する方向
(y)の屈折率(ny )は、厚み方向(z)の屈折率
(nz )は等しいが、この場合、樹脂フィルム1は一軸
配向しているので、樹脂フィルム1のy方向の収縮が樹
脂フィルム2のy方向の収縮より更に収縮し、見掛け
上、厚み方向(z)に配向(膨張)するので、結果的に
樹脂フィルム1の厚み方向の屈折率(nz)がy方向の
屈折率(ny )よりも大きくなり、視野角特性が向上す
るとしている。
【0006】上記位相差板の構成は、フィルムの平面方
向に配向した分子群と、厚さ方向に配向した分子群が混
在してなるものであるとしているが、このような単に、
フィルムの平面方向に配向した分子群と、厚さ方向に配
向した分子群が混在しているだけの位相差板では、視野
角特性は十分に向上するものではなく、却って位相差の
バラツキが大きく現れ、着色等の位相差の不均一性に起
因するトラブルが発生し易いという問題を有するもので
あった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実に
鑑みなされたものであって、その目的とするところは、
視野角を更に拡大すると同時に、位相差の均一性を更に
高めた位相差板及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明の位
相差板は、フィルム表面の面内方向の屈折率差〔(n x
−ny s 〕が、該フィルムの厚み方向に対する中心部
における面内方向の屈折率差〔(nx −ny c 〕より
大であり、且つ、厚み方向屈折率(nz )との関係が、
x >nz >ny なる関係にあることを特徴とする。
【0009】本発明で用いられる位相差板は、フィルム
表面の面内方向(直交座標のx軸方向及びy軸方向)の
屈折率差〔(nx −ny s 〕が、該フィルムの厚み方
向に対する中心部における面内方向の屈折率差〔(nx
−ny c 〕より大である(但し、nx >ny )。即
ち、位相差板の厚み方向にスライスして現れるフィルム
表面の面内方向の屈折率差(nx −ny )がフィルム表
面(S)付近では大きく、厚み方向に中心部(C)に向
かって急激に減少し中心部(C)付近で緩やかな減少に
転じるシグモイド曲線を描く勾配を有するものである。
又、本発明で用いられる位相差板は、厚み方向(z軸方
向)の屈折率(nz )が、x軸方向の屈折率(nx )よ
り小さく、y軸方向の屈折率(ny )より大きいもので
ある。
【0010】請求項2記載の発明の位相差板の製造方法
は、揮発性成分を含有する熱可塑性樹脂フィルムの揮発
性成分を揮散させ、一軸延伸し、得られた熱可塑性樹脂
一軸延伸フィルムに、上記一軸延伸方向に直交する方向
に収縮する熱収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱収縮
させ、然る後、貼り合わせた上記熱収縮性フィルムを除
去することを特徴とする。
【0011】本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルム
は、光学的に実質的に均一であれば特に限定されるもの
ではないが、例えば、トリアセチルセルロース樹脂、部
分ケン化トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系
樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ア
クリロニトリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレ
ン系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリアリレート系
樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹
脂、ポリビニルアルコール系樹脂等からなるフィルムが
挙げられる。中でも、液晶ディスプレイに用いられる液
晶の波長分散性に近い特性を有するポリサルホン系樹
脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系
樹脂等が好適に用いられる。
【0012】上記熱可塑性樹脂フィルムが含有する揮発
性成分としては、一軸延伸工程の前で揮散されるが、上
記熱可塑性樹脂フィルムを可塑化し得るものであって、
且つ、その揮散に際して、熱可塑性樹脂フィルムを発泡
させることなく系外に除去し得るものであれば特に限定
されるものではないが、例えば、アジピン酸エステル、
アゼライン酸エステル、安息香酸エステル、イソ酪酸エ
ステル、チオ酪酸エステル、ブラシル酸エステル、クエ
ン酸エステル、グリコール酸エステル、イタコン酸エス
テル、オレイン酸エステル、リン酸エステル、ホスフィ
ン酸エステル、フタル酸エステル、フタル酸異性体エス
テル、テトラヒドロフタル酸エステル、ヘキサヒドロフ
タル酸エステル、ピロメリット酸エステル、リシノール
酸エステル、セバシン酸エステル、コハク酸エステル、
スルホンアミド、トリアセチレン、トリメリット酸エス
テル等の可塑剤等の揮発性成分が挙げられる。中でも、
用いられる熱可塑性樹脂フィルムとの相溶性や熱可塑性
樹脂フィルムの発泡を誘発し難い沸点を有するフタル酸
系エステル類が好適に用いられる。
【0013】上記熱可塑性樹脂フィルムへ揮発性成分を
含有させる手段は、特に限定されるものではないが、例
えば、熱可塑性樹脂フィルムの溶融キャスティングに際
して、熱可塑性樹脂に揮発性成分を雷潰機やヘンシェル
ミキサー等を用いて混合し、熱可塑性樹脂に揮発性成分
を付着させ、含浸させる方法、熱可塑性樹脂フィルムの
製膜に際して、熱可塑性樹脂組成物を加熱捏和する押出
機のシリンダー途中から中に揮発性成分を圧入する方
法、溶液キャスティングに際して、熱可塑性樹脂組成物
溶液を作製する際に、揮発性成分を配合し、攪拌機を用
いて攪拌し、含浸させる方法等が挙げられる。
【0014】又、上記熱可塑性樹脂フィルムの揮発性成
分の含有量は、用いられる熱可塑性樹脂、揮発性成分及
び得られる位相差板の用途等によって決められるもので
あって、特に限定されるものではないが、例えば、熱可
塑性樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部程度
が好ましい。上記含有量が0.2重量部未満では、得ら
れる位相差板の位相差の均一性が十分に得られ難く、2
0重量部を超えると、残留する揮発性成分によって十分
な配向がなされず、必要な位相差が得られないおそれが
ある。
【0015】揮発性成分を含有する熱可塑性樹脂フィル
ムを作製する手段は、特に限定されるものではないが、
例えば、Tダイ法等の溶融キャスト法、コンマコーター
等のコーターを用いる溶液キャスト法等が挙げられる。
【0016】このようにして作製された揮発性成分を含
有する熱可塑性樹脂フィルムは、一軸延伸されるが、こ
の一軸延伸までに揮発性成分は、揮散され、系外に除去
される。上記揮発性成分の揮散手段は、特に限定される
ものではないが、例えば、加熱されたオーブン中を通過
させる乾燥方法等が挙げられる。又、揮発性成分の揮散
工程は、溶融キャスト法にあっては、押出直後に行われ
てもよく、押出直後から冷却工程終了までの間、養生工
程、延伸予熱工程及び延伸工程の少なくとも1工程にお
いて行わればよい。又、溶液キャスト法にあっては、成
膜乾燥工程、養生工程、延伸予熱工程及び延伸工程の少
なくとも1工程において行わればよい。
【0017】上記揮発性成分の揮散の程度は、配合した
総ての揮発性成分を揮散され、系外に除去されるもので
はなく、若干は、熱可塑性樹脂フィルム内に残留する。
上記熱可塑性樹脂フィルム内に残留した揮発性成分は、
該熱可塑性樹脂フィルムの厚み方向に、中心部において
相対的に高濃度であり、表面部分では殆ど揮散され、極
く低濃度で存在する。特に、溶液キャスト法で成膜され
た熱可塑性樹脂フィルム内には、揮発性成分として、用
いられた溶剤が混在していてもい。
【0018】次いで、揮発性成分が揮散された熱可塑性
樹脂フィルムは、延伸されるが、実質的に一軸延伸され
る手段であれば、延伸手段は、特に限定されるものでは
ないが、例えば、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横不
整同時二軸延伸法、縦横不整逐次二軸延伸法等が挙げら
れ、上記各延伸法における熱可塑性樹脂フィルムの掴み
及び引張手段、加熱ないしは冷却手段は、特に限定され
るものではないが、例えば、気体やオイルバス等の加熱
ないしは冷却媒体中もしくは表面に浮遊させた熱可塑性
樹脂フィルムに延伸応力を負荷する方法、ロール延伸
法、テンター延伸法等が挙げられる。
【0019】延伸温度は、好ましくは、用いられる熱可
塑性樹脂フィルムのガラス転移点温度(Tg)から(T
g+80℃)、より好ましくは、Tg〜(Tg+40
℃)である。延伸温度がTg未満では、ネッキングが起
こり、均一な延伸が行い難くなるおそれがあり、(Tg
+80℃)を超えると、十分な延伸が行えないおそれが
ある。又、上記延伸は、上記延伸温度より高温に予熱さ
れた熱可塑性樹脂フィルムを冷却しながら延伸されても
よい。上記予熱温度は、延伸温度より好ましくは20℃
以上高温、より好ましくは40℃以上高温である。
【0020】延伸倍率は、用いられる熱可塑性樹脂フィ
ルム、揮発性成分等の種類、揮発性成分等の残留量、得
られる位相差板の用途等から決められるものであって、
特に限定されるものではないが、例えば、1.05〜2
倍が好適に用いられる。又、延伸時の送り速度は、延伸
装置の機械精度、安定性等から好ましくは0.5m/分
以上、より好ましくは1m/分以上である。
【0021】得られた熱可塑性樹脂一軸延伸フィルム
は、該熱可塑性樹脂一軸延伸フィルムの延伸方向に直交
する方向に収縮する熱収縮性フィルムが貼合わされる。
上記熱収縮性フィルムは、上記熱可塑性樹脂一軸延伸フ
ィルムの延伸方向に直交する方向に収縮するものであれ
ば特に限定されるものではないが、上記熱可塑性樹脂一
軸延伸フィルムのTgより低いTgを有する熱可塑性樹
脂からなる熱収縮性フィルムであることが好ましい。上
記熱収縮性フィルムのTgが熱可塑性樹脂一軸延伸フィ
ルムのTg以上であると、熱収縮性フィルムが収縮する
前に、熱可塑性樹脂一軸延伸フィルムが緩和され、所望
の位相差が得られないおそれがあるからである。
【0022】上記熱可塑性樹脂一軸延伸フィルムと熱収
縮性フィルムの貼合わせ手段は、次工程の加熱収縮時
に、剥離されず、冷却時に上記熱可塑性樹脂一軸延伸フ
ィルムを損傷することなく熱収縮性フィルムを容易に剥
離し得るものであれば、どのような方法が用いられても
よいが、例えば、耐熱性に富んだアクリル系粘着剤、シ
リコーン系粘着剤等の粘着剤を用いる方法等が挙げられ
る。これらの粘着剤は、熱収縮性フィルムを剥離除去す
る際に、熱可塑性樹脂一軸延伸フィルム側に所謂“糊残
り”を起こさないよう、上記熱可塑性樹脂一軸延伸フィ
ルムに対する粘着力より熱収縮性フィルムに対する粘着
力が強くなるように、必要に応じて熱収縮性フィルムの
表面にコロナ放電処理、化学処理等の表面活性化処理が
施されてもよい。
【0023】熱収縮性フィルムが貼合わされた熱可塑性
樹脂一軸延伸フィルムは、加熱され、熱収縮性フィルム
の収縮に随伴して収縮される。上記加熱温度は、上記熱
可塑性樹脂一軸延伸フィルム及び熱収縮性フィルムの性
状に応じて定められるが、上記熱可塑性樹脂一軸延伸フ
ィルムを所定量だけ収縮させるためには、上記熱収縮性
フィルムのTgより高い温度で行われ、又、Tgより余
り高過ぎると、熱収縮性フィルムが粘性状態に近くなっ
て、却って収縮応力が小さく成るので、好ましくは(T
g+50℃)以内で行われる。
【0024】上記熱可塑性樹脂一軸延伸フィルムは、x
軸方向a倍延伸されたとき、y軸方向は、1/√aに収
縮し、z軸方向は、1/√aに収縮されるが、該熱可塑
性樹脂一軸延伸フィルムを、その一軸延伸方向に直交す
る方向(y)に収縮する熱収縮性フィルムの収縮に随伴
して収縮させると、x軸方向は変化なく、y軸方向の収
縮は、1/√aより小さくなり、z軸方向の収縮は、1
/√aより大きくなって屈折率を増減する方向に作用す
る。又、厚みの厚い部分は可塑化度が相対的に高いので
圧縮応力は負荷され難く、薄い部分の圧縮応力は相対的
に高く負荷され、これに対応して厚みの厚い部分の屈折
率が相対的に低くなり、薄い部分の屈折率が相対的に高
くなって、(厚み)×(屈折率)で表される位相差のバ
ラツキは更に小さくなる。
【0025】上記加熱により、熱収縮性フィルムの収縮
に随伴して収縮した熱可塑性樹脂一軸延伸フィルムは、
冷却後、貼り合わされた熱収縮性フィルムを貼り合わせ
に用いた粘着剤類と共に剥離して除去され、位相差板が
作製される。
【0026】請求項1記載の発明の位相差板は、叙上の
ように、フィルム表面の面内方向の屈折率差〔(nx
y s 〕が、該フィルムの厚み方向に対する中心部に
おける面内方向の屈折率差〔(nx −ny c 〕より大
であり、且つ、厚み方向屈折率(nz )との関係が、n
x >nz >ny なる関係にあり、一軸延伸フィルムに見
られるnx =nz の関係が、nx >nz となることによ
って視野角は改善されるが、更に、この傾向は、フィル
ム表面の面内方向の屈折率差〔(nx −ny s 〕が、
該フィルムの厚み方向に対する中心部における面内方向
の屈折率差〔(nx −ny c 〕より大であるという特
性を付加することによって著しく視野角が拡大される。
【0027】即ち、視野角についての屈折率楕円体を想
定して説明すると、z軸(厚み方向)の屈折率をx軸の
屈折率とy軸の屈折率(フィルム表面の面内方向の屈折
率)の中位に置くと、上記屈折率楕円体の中心に向かう
斜め方向(観察方向)からの入射光路を法線とし、これ
に直交する平面における2軸の屈折率差と、前記nx
y で表される面内方向屈折率差との差は、従来品に見
られるny >nz の位相差フィルムの上記屈折率差の差
より一層小さくなり、視野角が拡大されるのである。
【0028】更に、本発明の位相差板は、視野角の顕著
な改善と共に、着色等のトラブルが著しく改善され、位
相差の均一化が図られていることを示す。上記位相差の
均一化の実現は、nx >nz >ny なる関係から、フィ
ルムの厚薄を示す表面層において大きな延伸効果が現出
し、フィルムの厚みの大部分を占める中心部において延
伸効果が余り現出せず、厚みのバラツキを平準化する方
向で作用しているものと推定される。
【0029】請求項2記載の発明の位相差板の製造方法
は、叙上のように、揮発性成分を含有する熱可塑性樹脂
フィルムの揮発性成分を揮散させ、一軸延伸するもので
あるので、延伸時の熱可塑性樹脂フィルム内の上記揮発
性成分は、表面部分においては殆ど存在せず、厚み方向
に中心部に向かって大きい濃度勾配をもって揮発性成分
濃度が上昇し、中心部の相当厚い層では再び緩やかな濃
度勾配で揮発性成分濃度が上昇するシグモイド曲線を描
く分布を示している。尚、上記シグモイド曲線の勾配
は、残留揮発性成分量によって表面層に偏ったり、中心
部に偏ったりするが、上記厚み方向に中心部に向かう濃
度勾配を有する限り問題ではない。
【0030】従って、延伸工程において、熱可塑性樹脂
フィルムは、厚みの厚薄を示す表面層において延伸応力
が大きくなり、大きな延伸効果を付与し、厚みの大部分
を占める中心部においては可塑性が大きいので上記延伸
を円滑に遂行させ得るものである。このように揮発性成
分が厚み方向にシグモイド曲線を描いて上昇する濃度勾
配をもった分布で含有する熱可塑性樹脂フィルムを延伸
することによって、得られる熱可塑性樹脂延伸フィルム
の微小部分の屈折率のバラツキは、通常延伸によって減
少する以上に極めて大きな減少を示す。
【0031】上記熱可塑性樹脂延伸フィルムの微小部分
の屈折率のバラツキの顕著な減少は、以下に示す理由に
よるものと推定される。即ち、熱可塑性樹脂延伸フィル
ム内の揮発性成分は、表面層より揮散するため、表面層
よりの揮発性成分の揮散量は、用いられた熱可塑性樹脂
及び揮発性成分の系で定まる境膜移動係数によって一義
的に決まり、厚みの厚薄に拘らず全表面同一である。そ
のため揮発性成分の揮散工程の終了時、熱可塑性樹脂フ
ィルム内に残存する揮発性成分の面内方向の分布は、厚
みの厚い微小部分において相対的に高濃度であり、可塑
化度も大きい。これに対し厚みの薄い微小部分において
相対的に低濃度であり、可塑化度は前者に比して小さな
ものとなる。
【0032】上記面内方向の可塑化度の分布を有する熱
可塑性樹脂フィルムを延伸すると、厚みの厚い微小部分
においては延伸応力が小さく配向度が低下し、厚みの薄
い微小部分において延伸応力が小さく配向度が大きくな
って、(位相差)=(厚み)×(配向度)の関係から、
得られる熱可塑性樹脂延伸フィルムの位相差のバラツキ
は、顕著な減少を示し、均一化される。上記位相差の均
一化効果は、得られた熱可塑性樹脂延伸フィルムを厚み
方向にスライスし、屈折計を用いて、厚みの厚い微小部
分と厚みの薄い微小部分の各層の各々について面内方向
の屈折率を測定することによって確認することができ
る。
【0033】熱可塑性樹脂固有の屈折率をn0 、x軸方
向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムの同方向の屈折率
をnx で表した場合、表面における屈折率(nx
0 sと厚み方向の中心部における屈折率(nx −n
0 c の比{(nx −n0 s /(nx −n0 c
は、1以上、好ましくは1.1以上である。上記屈折率
比が1.1以上であると、位相差のバラツキは、厚みの
バラツキの1/2となる。得られる熱可塑性樹脂フィル
ムの厚みのバラツキが、例えば、±1%である場合、本
発明においては、位相差のバラツキは、±0.5%が実
現できる。
【0034】更に、上記揮発性成分が厚み方向にシグモ
イド曲線を描いて上昇する濃度勾配をもった分布で含有
する熱可塑性樹脂フィルムは、一般に、熱可塑性樹脂延
伸フィルムの極表面層に形成される通称スキン層の形成
がない。即ち、従来の熱可塑性樹脂延伸フィルムのスキ
ン層は、厚み0.1〜0.2μmの極表面層に、屈折率
が極端に変化する攪乱層として存在し、位相差のバラツ
キを大きなものにするに留まらず、着色その他のトラブ
ルの原因となっていたが、本発明においては、上記厚み
範囲において同一であり、上記屈折率が極端に変化する
攪乱層としてのスキン層の形成はない。但し、上記厚み
範囲の極表面層の屈折率とこれに連なる中心部の屈折率
とは、前記揮発性成分の厚み方向の濃度分布同様、急激
に減少して行く。上記の攪乱層不形成の要因として厚み
方向の揮発性成分の上記濃度勾配が大いに関与している
ものと推定される。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を参照しなが
ら説明するが、本発明は、これらの実施例に限定される
ものではない。
【0036】(実施例)ポリサルホン樹脂100重量部
に対し、フタル酸ジエチル(沸点298℃)5重量部
を、プランジャーポンプにて一軸押出機を用い、290
℃に加熱されたTダイより溶融押出し、表面温度を14
0℃に冷却された冷却ロールで冷却し、平均厚み75μ
mのポリサルホン樹脂フィルムを作製した。得られたポ
リサルホン樹脂フィルムを縦一軸延伸機を用いて、予熱
ゾーン温度185℃、延伸ゾーン温度185℃、延伸倍
率1.5倍で縦一軸延伸し、平均厚み65μmのポリサ
ルホン樹脂延伸フィルムを作製した。得られたポリサル
ホン樹脂延伸フィルムを、ナトリウムD線(測定波長5
89nm)を用いて位相差及び視野角を測定した。測定
結果は、位相差の平均値427nm、1cm離れた2点
間の位相差のバラツキの最大値0.9nm、視野角±4
1°であった。
【0037】得られたポリサルホン樹脂延伸フィルムに
アクリル系粘着剤を塗工し、厚み100μmのポリカー
ボネート樹脂フィルムをその延伸方向を上記ポリサルホ
ン樹脂延伸フィルムの延伸方向に直交して貼り合わせ、
この状態で165℃で2分間加熱し、ポリカーボネート
樹脂フィルムの延伸方向に収縮させた。冷却後、ポリサ
ルホン樹脂延伸フィルムからポリカーボネート樹脂フィ
ルムを剥離して除去し、厚み67μmの位相差板を作製
した。得られた位相差板を、ナトリウムD線(測定波長
589nm)を用いて位相差及び視野角を測定した。測
定結果は、位相差の平均値453nm、1cm離れた2
点間の位相差のバラツキの最大値は0.8nm、視野角
は±56°であった。
【0038】尚、位相差及び視野角測定の試料の作成及
び測定法は、以下に示す通りである。
【0039】(試料の作成)得られたポリサルホン樹脂
フィルム及びポリサルホン樹脂延伸フィルムの中央部か
ら幅500mm、長さ1000mmを切り出し試料を作
成した。
【0040】次いで、ポリサルホン樹脂延伸フィルム
は、別途ポリサルホン樹脂で作成された厚み5mmの支
持ブロックに溶剤を用いて溶着され、十分乾燥した後、
ミクロトーム(ライヘルト社製、商品名「ウルトラカッ
トE」)で厚みを約半分になるようにスライスする。ス
ライスされたポリサルホン樹脂延伸フィルムは、その両
側を、屈折計(アタゴ社製、商品名「アッベ屈折計1
T」)を用いて、ヨウ化メチレンで密着させ、屈折率を
測定した。測定結果は、nx =1.637nm、ny
1.6307nm、nz =1.6312nmであり、先
述する(nx −no s /(nx −no c として算出
された表面層と中心部の屈折率比は1.2であり、3軸
方向の屈折率の大きさは、nx >nz >ny の関係にあ
った。
【0041】(比較例1)実施例のフタル酸ジエチルを
用いなかったこと並びに延伸工程における予熱ゾーン及
び延伸ゾーンの温度を195℃に変更したこと以外、実
施例と同様にして位相差板を作製した。得られた位相差
板は、実施例と同様にして評価され、ポリサルホン樹脂
フィルムの位相差の平均値557nm、1cm離れた2
点間の位相差のバラツキの最大値は2nm、視野角は±
42°であり、ポリサルホン樹脂延伸フィルムの位相差
の平均値555nm、1cm離れた2点間の位相差のバ
ラツキの最大値は2nm、視野角は±42°と未延伸の
ポリサルホン樹脂フィルムと同程度の値を示したに過ぎ
なかった。又、表面層と中心部の屈折率比は1であり、
3軸方向の屈折率の大きさは、n x (1.6387)>
y (1.6301)=nz (1.6301)の関係に
あった。
【0042】(比較例2)実施例のポリサルホン樹脂フ
ィルムの両面に比較例のポリサルホン樹脂フィルムが各
々25μmで多層フィルムとして実施例と同一成形温度
で製膜されたこと及び延伸倍率は同じであったが、多層
とすることによる剛性のアップによって横方向の配向が
生じ、ポリサルホン樹脂延伸フィルムの厚みが66μm
となったこと以外、実施例と同様にして位相差板を作製
した。得られた位相差板は、実施例と同様にして評価さ
れ、ポリサルホン樹脂多層フィルムの位相差の平均値5
02nm、1cm離れた2点間の位相差のバラツキの最
大値は2.3nm、視野角は±41°であり、ポリサル
ホン樹脂延伸フィルムの位相差の平均値453nm、1
cm離れた2点間の位相差のバラツキの最大値は2.3
nm、視野角は±45°であり、ポリサルホン樹脂延伸
フィルムの収縮は不完全であり、収縮しないところも混
在する等不均一な収縮しかせず、位相差のバラツキも大
きいものであった。又、3軸方向の屈折率の大きさの順
も比較例1と同様であった。
【0043】
【発明の効果】本発明の位相差板は、叙上の如く構成さ
れているので、従来の一軸延伸法では到底得られない大
きい視野角と均一な面内方向位相差を有するものであ
る。又、本発明の位相差板の製造方法は、叙上の如く構
成されているので、熱可塑性樹脂フィルムに揮発性成分
を含有させるという極めて工数の掛からない手段を用い
るだけで、前記する大きい視野角と均一な面内方向位相
差を有する位相差板を安定して高生産性で製造すること
ができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィルム表面の面内方向の屈折率差
    〔(nx −ny s 〕が、該フィルムの厚み方向に対す
    る中心部における面内方向の屈折率差〔(nx −ny
    c 〕より大であり、且つ、厚み方向屈折率(nz )との
    関係が、nx >n z >ny なる関係にあることを特徴と
    する位相差板。
  2. 【請求項2】 揮発性成分を含有する熱可塑性樹脂フィ
    ルムの揮発性成分を揮散させ、一軸延伸し、得られた熱
    可塑性樹脂一軸延伸フィルムに、上記一軸延伸方向に直
    交する方向に収縮する熱収縮性フィルムを貼り合わせ
    て、加熱収縮させ、然る後、貼り合わせた上記熱収縮性
    フィルムを除去することを特徴とする位相差板の製造方
    法。
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