WO2024128024A1

WO2024128024A1 - 水中油型乳化化粧料

Info

Publication number: WO2024128024A1
Application number: PCT/JP2023/043055
Authority: WO
Inventors: 礼奈松井
Original assignee: 株式会社資生堂
Priority date: 2022-12-15
Filing date: 2023-12-01
Publication date: 2024-06-20

Abstract

本発明は、多層型カプセルを含有する水中油型乳化化粧料であって、配合した多層型カプセルが適度な力で壊れて内包された顔料を露出できる化粧料を提供することを目的とする。本発明は、（Ａ）顔料を含む多層型カプセル；（Ｂ）分子量１０００以下の塩；及び（Ｃ）多価アルコール、を含む水中油型乳化化粧料であって、前記（Ａ）顔料を含む多層型カプセルに対する、前記（Ｂ）分子量１０００以下の塩の配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］が、０．００３以上であることを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。

Description

水中油型乳化化粧料

　本発明は水中油型乳化化粧料に関する。より詳細には、顔料を含む多層型カプセルを安定に配合し、なおかつ当該多層型カプセルが適度な力でつぶれてカプセルに内包された顔料が露出することにより色調を変化させることができる水中油型乳化化粧料に関する。

　顔料を含む多層型カプセル（multilayer-type encapsulations containing pigments）を含有する化粧料は、例えば、化粧料を皮膚に塗布する際に作用する力でカプセルが壊れ、内包された顔料が露出されるため、化粧料自体と化粧料を塗布した皮膚とで色調が異なる。このような独特の効果を持つ多層型カプセルを様々な化粧料に配合する試みがなされている。

　例えば、特許文献１には、紫外線散乱剤である酸化チタンや酸化亜鉛と、顔料を含む多層型カプセル（以下、単に「多層型カプセル」ともいう）とを含む油中水型乳化型日焼け止め製品が記載されている。この日焼け止め製品は、比較的多量の紫外線散乱剤を含んでいても、多層型カプセルによる色調変化によって過度の白さが抑制される。
　特許文献２に記載された油性化粧料は、多層型カプセルと特定粒子径の水溶性スクラブ剤を配合し、化粧料の塗布時に限らず、所望のタイミングで化粧膜を塗擦することにより色調変化を生じさせることができる。

　しかし、多層型カプセルを配合した従来の化粧料は、油性または油中水型乳化化粧料であり、多層型カプセルを油相に配合していた。多層型カプセルの表面の性質や粒子径に起因して、水中油型乳化化粧料の油相に配合することが困難だったからである。

　近年、多層型カプセルと同等の粒子径を持つ疎水化処理された粒子を水中油型乳化化粧料に安定に配合する技術が開発された。例えば、特許文献３には、分散媒（水相）に、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、及び平均粒子径３００ｎｍ以上の顔料級疎水化処理粒子を配合した水中油型乳化化粧料が開示され、肌表面に疎水化処理粒子を均一に適用して良好なトーンアップ効果等を発揮できるとされている。

特許第６４３４９９３号公報ＷＯ２０２１／０２０３５１号公報ＷＯ２０２１／１３２２７３号公報

　本発明者は、特許文献３の技術を応用することで、多層型カプセルを水中油型乳化化粧料に安定に配合することに成功した。しかしながら、そのように調製された化粧料では、配合された多層型カプセルは壊れにくくなるという問題が生じることが判明した。
　本発明は、上述した技術の現状に鑑みて、多層型カプセルを含有する水中油型乳化化粧料であって、なおかつ配合した多層型カプセルが適度な力で壊れて内包された顔料を露出させることができる化粧料を提供することを課題とする。

　本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水中油型乳化化粧料の水相（外相）に、多層型カプセルと多価アルコールとを配合し、さらに特定の分子量を持つ塩を配合するとともに、前記多層型カプセルと前記塩との配合量比率を調整することにより、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。

　すなわち本発明は、
（Ａ）顔料を含む多層型カプセル；
（Ｂ）分子量１０００以下の塩；及び、
（Ｃ）多価アルコール、
を含む水中油型乳化化粧料であって、
前記（Ａ）顔料を含む多層型カプセルに対する、前記（Ｂ）分子量１０００以下の塩の配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］が、０．００３以上であることを特徴とする、水中油型乳化化粧料を提供する。

　本発明の水中油型乳化化粧料は、顔料を含む多層型カプセルを安定に含有することができ、なおかつ適度な力での塗擦によって多層型カプセルが壊れて内包された顔料を露出させることができる。よって、本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料のみずみずしい使用性と、多層型カプセルによる色調変化の実感の両方を得ることが可能である。

　本発明の水中油型乳化化粧料（以下、単に「化粧料」ともいう）は、（Ａ）顔料を含む多層型カプセル、（Ｂ）分子量１０００以下の塩、及び、（Ｃ）多価アルコールを必須成分として含有する。

（Ａ）顔料を含む多層型カプセル
　顔料を含む多層型カプセル（以下、単に「多層型カプセル」または「Ａ成分」ともいう）は、内部層（コア）と１又は複数の外部層（シェル）とを具備する構造を有する。内部層には、赤色無機顔料、黄色無機顔料等の着色顔料が内包され、ポリマーを母材とした第１の外部層が内部層を被覆している。ポリマーを母材とした第１の外部層はさらに別の材料からなる第２の外部層によって被覆されてもよい。ポリマーを母材とした第１の外部層と別の材料からなる第２の外部層を被覆する順序は任意であり、各々が単層であっても複数層であってもよい。内部層、第１及び第２の外部層には任意で他の無機粉末（顔料を含む）が含まれ得る。

　第１及び／又は第２の外部層の母材となるポリマーとしては、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等の（メタ）アクリル系樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、セルロース等の有機系ポリマーが挙げられる。

　本発明における「多層型カプセル」は市販品を用いてもよく、例えば、Ｂｉｏｇｅｎｉｃｓ，Ｉｎｃ．によって販売されているＭＡＧＩＣＯＬＯＲ（マジカラー）（登録商標）、大東化成工業株式会社によって販売されているＳｕｇａｒｃａｐｓｕｌｅ　Ｍａｇｉｃ　ＳＰ　Ｓｅｒｉｅｓ、Ｔａｇｒａ　Ｂｉｏｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ　Ｌｔｄ．によって販売されているＴａｇｒａＣａｐ（商標）、およびＳａｌｖｏｎａ　Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ　ＬＬＣによって販売されているＭｉｃｒｏＢｅａｄｓ（商標）が挙げられる。

　典型的な多層型カプセルは、例えば、米国特許出願公開公報第２０１１／０１６５２０８号（または対応する特表２０１１－５２９１０４号公報）に記載されているように、第１の顔料、可塑剤およびポリマーの溶液を調製し；この溶液を噴霧乾燥して、顔料がポリマーによって被覆されているコア粒子を形成し；これらのコア粒子を、第２の顔料を含む溶液中に分散させ；この分散液を噴霧乾燥して、第２の顔料がポリマーにコーティングされたカプセル粒子を形成することによって製造できる。

　多層型カプセルが示す特性の１つを「顕色技術（ｃｏｌｏｒ　ｒｅｖｅａｌ　ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ）」と称することもある。通常の条件下では、カプセルは、顔料を内部に保持するのに充分な安定性を有するので、内包された顔料自体と同じ視覚的色彩効果は発揮しない。しかし、カプセルに適度な力を加えると、例えば、化粧料を手で皮膚に塗擦すると、カプセルが壊れて顔料が放出され、色彩が変化する。

　多層型カプセルの直径は３００μｍ未満であることが好ましく、好ましくは２８０μｍ以下、より好ましくは２５０μｍ以下、さらに好ましくは１５０μｍ以下、さらに好ましくは１００μｍ以下、最も好ましくは６０μｍ以下である。ここで、直径は数平均径を指す。多層型カプセルの直径が３００μｍ未満であることで、肌への塗布時にざらざらした感触を与えることがなく使用性に優れた化粧料となる。

　多層型カプセルの量は、皮膚への塗布時に意図した視覚効果を達成することができれば特に限定されない。通常は、化粧料全量に対し０．１～３質量％であることが好ましく、より好ましくは０．３～２．５質量％、さらに好ましくは０．５～２質量％、最も好ましくは０．８～１．８質量％の範囲である。多層型カプセルの量が０．１質量％以上であることで、充分な色調変化や肌色補正効果を与えることができ、３％質量以下であることで、自然で使用者に魅力的な仕上がりとすることができる。

　本発明の化粧料に配合する多層型カプセルに含まれる顔料の色は、化粧料の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。多層型カプセルは、１種類を配合しても２種類以上を組み合わせて配合してもよい。例えば、赤色顔料を内包する多層型カプセルと、黄色顔料を内包する多層型カプセルとを組み合わせて配合することができ、それらの配合割合は任意に設定することができる。

（Ｂ）分子量１０００以下の塩
　本発明の化粧料に配合される（Ｂ）分子量１０００以下の塩（以下、単に「塩」または「Ｂ成分」ともいう）は、酸に含まれる１以上の解離しうる水素イオンを金属イオンやアンモニウムイオン等の陽イオン（カチオン）で置換した化合物であって、その分子量が１０００以下のものである。「塩」（Ｂ成分）の分子量が１０００を超えると、本発明で意図する効果（多層型カプセルを壊れ易くする効果；以下、「カプセル易破壊効果」ともいう）が得られない。

　「塩」を形成する「酸」は、広義には、分子内に水素を有し、水に溶解すると水素イオンと陰イオン（アニオン）とに解離する物質と定義できる（「アレニウスの酸」と同義）。本発明における「酸」は、分子量が１０００以下であれば特に限定されず、一塩基酸でも二塩基酸以上の多塩基酸であってもよい。例えば、塩酸、メタリン酸等の無機酸、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等の有機酸が例示される。さらに、アスコルビン酸（Ｌ－アスコルビン酸）、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、ニコチン酸、コウジ酸、エラグ酸、１－ピペリジンプロピオン酸、３－Ｏ－エチル－Ｌ－アスコルビン酸、及びアルコキシサリチル酸（例えば４－メトキシサリチル酸）等の美白作用を有する薬剤（本明細書では「塩型薬剤」と呼称する）も例示できる。

　上記で例示したものを含む「酸」を中和して「塩」を形成する物質（塩基）としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属；カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属；亜鉛；鉄；アンモニウム；アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸；モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、２－アミノ－２－メチル－１，３－プロパンジオール（ＡＭＰＤ）等のアミン類が挙げられる。本発明では、ナトリウム塩（Ｎａ塩）を用いるのが特に好ましい。

　本発明の化粧料における「塩」（Ｂ成分）の配合量は、意図した効果（カプセル易破壊効果）が得られる量であれば特に限定されない。通常は、化粧料全量に対し０．０１～３質量％であることが好ましく、より好ましくは０．０５～２．５質量％、さらに好ましくは０．１～２質量％の範囲である。
　但し、上記の好ましい配合量範囲内であっても、「塩」（Ｂ成分）の配合量の「多層型カプセル（Ａ成分）の配合量に対する比率（質量比：Ｂ／Ａ）を、０．００３以上とすることが必要である。この比率（Ｂ／Ａ）は、例えば、０．０１以上、０．３以上、０．６以上、１．０以上等とすることができる。しかし、この比率（Ｂ／Ａ）が０．００３未満であると、カプセル易破壊効果が得られない。配合量の比率（Ｂ／Ａ）の上限値は特に限定されないが、通常は１０以下、好ましくは５以下である。

（Ｃ）多価アルコール
　本発明の化粧料は、（Ｃ）多価アルコール（以下、「Ｃ成分」ともいう）を含有することにより、「多層型カプセル」（Ａ成分）を水相（外相）に安定に分散させることができる。

　本発明で用いられる「多価アルコール」（Ｃ成分）は、化粧料に配合可能な多価アルコールであれば特に限定されない。好ましく使用される多価アルコールの具体例には、２価アルコール（エチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－ブチレングリコール（ＢＧ）、プロパンジオール等）；３価アルコール（グリセリン等）；４価アルコール（１，２，６－ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等）；５価アルコール（キシリトール等）；多価アルコール重合体（ジグリセリン、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等）；糖アルコール（ソルビトール、マンニトール等）等が含まれる。

　本発明の化粧料における多価アルコール（Ｃ成分）の配合量は、特に限定されないが、通常は、化粧料全量に対し１～２５質量％であることが好ましく、より好ましくは３～２０質量％、さらに好ましくは５～１５質量％の範囲である。多価アルコールの配合量が１質量％未満であると、多層型カプセルを安定に分散させることが難しく、２５質量％を超えて配合すると、べたついた使用感になる場合がある。

　本発明の化粧料は、水を含む分散媒（水相）を外相（連続相）とし、その中に油滴（油相または内相）が分散した水中油型乳化化粧料である。
　本発明の化粧料には、水中油型乳化化粧料に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。

（Ｄ）シリコーン系の非イオン性界面活性剤
　本発明の化粧料の水相（外相）に、シリコーン系の非イオン性界面活性剤（以下、「Ｄ成分」ともいう）を配合することにより、乳化安定性及び多層型カプセル（Ａ成分）の分散安定性を更に向上させることができる。
　シリコーン系の界面活性剤とは、分子内にシロキサン構造を有する界面活性剤である。本発明のＤ成分としては、ＨＬＢが１４～１６の非イオン性界面活性剤が好ましい。なお、「ＨＬＢ」は、「Ｈｙｄｒｏｐｈｉｌｉｃ－Ｌｉｐｏｐｈｉｌｉｃ　Ｂａｌａｎｃｅ」の略であり、ＨＬＢ値は、親水基と親油基とを持つ分子（界面活性剤）の水及び油への親和性の程度を表す指標の一つである。ＨＬＢ値は、例えば、以下の数式に基づいて算出することができる。
　ＨＬＢ＝７＋１１．７・ｌｏｇ（ＭＷ／ＭＯ）
（ただし、ＭＷは親水基部の分子量を表し、ＭＯは親油基部の分子量を表す。）

　シリコーン系の非イオン性界面活性剤（成分Ｄ）としては、ポリエーテル変性シリコーンを用いるのが好ましい。具体例としては、ＰＥＧ－３ジメチコン、ＰＥＧ－７ジメチコン、ＰＥＧ－９ジメチコン、ＰＥＧ－１０ジメチコン、ＰＥＧ－１２ジメチコン、ＰＥＧ－９メチルエーテルジメチコン、ＰＥＧ－１０メチルエーテルジメチコン、ＰＥＧ－１１メチルエーテルジメチコン、ＰＥＧ－３２メチルエーテルジメチコン、ＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等を挙げることができる。

　本発明の化粧料におけるシリコーン系の非イオン性界面活性剤（Ｄ成分）の配合量は、特に限定されないが、通常は、化粧料全量に対し０．０５～３質量％であることが好ましく、より好ましくは０．１５～２．５質量％、さらに好ましくは０．２５～２質量％の範囲である。

（Ｅ）両親媒性物質
　本発明の化粧料の水相（外相）に、両親媒性物質（以下、「Ｅ成分」ともいう）を配合することにより、乳化安定性及び多層型カプセル（Ａ成分）の分散安定性を更に向上させることができる。

　両親媒性物質（Ｅ成分）としては、低級アルコール及びその誘導体、及び、ＨＬＢが８～１５の非シリコーン系の非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。

　低級アルコールは、炭素数３以下のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールを含み、低級アルコール誘導体は、例えば、フェノキシエタノール、炭素数３以下のアルコキシ基で置換された低級アルコール等を含む。これらの中でも、エタノール及びフェノキシエタノールが好ましい。

　ＨＬＢが８～１５の非シリコーン系の非イオン性界面活性剤としては、分子内にシロキサン構造を有さず、ＨＬＢ値が８～１５であれば特に制限はない。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ＰＯＥ硬化ヒマシ油誘導体、ＰＯＥアルキルエーテル、ＰＥＧ・ＰＰＧアルキルエーテル、ＰＥＧ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ＰＯＥグリセリン脂肪酸エステル、イソステアリン酸ＰＥＧグリセリル等を挙げることができる。

　ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等を挙げることができる。
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等を挙げることができる。

　ＰＯＥ硬化ヒマシ油誘導体（ＰＥＧ水添ヒマシ油）としては、例えば、ＰＯＥ（２０～１００）硬化ヒマシ油誘導体を挙げることができる。具体的には、ＰＯＥ（２０）硬化ヒマシ油誘導体、ＰＯＥ（４０）硬化ヒマシ油誘導体、ＰＯＥ（６０）硬化ヒマシ油誘導体、及びＰＯＥ（１００）硬化ヒマシ油誘導体を挙げることができる。

　ＰＯＥアルキルエーテルとしては、例えば、ＰＯＥ（２）ラウリルエーテル、ＰＯＥ（４．２）ラウリルエーテル、ＰＯＥ（９）ラウリルエーテル、ＰＯＥ（５．５）セチルエーテル、ＰＯＥ（７）セチルエーテル、ＰＯＥ（１０）セチルエーテル、ＰＯＥ（１５）セチルエーテル、ＰＯＥ（２０）セチルエーテル、ＰＯＥ（２３）セチルエーテル、ＰＯＥ（４）ステアリルエーテル、ＰＯＥ（２０）ステアリルエーテル、ＰＯＥ（７）オレイルエーテル、ＰＯＥ（１０）オレイルエーテル、ＰＯＥ（１５）オレイルエーテル、ＰＯＥ（２０）オレイルエーテル、ＰＯＥ（５０）オレイルエーテル、ＰＯＥ（１０）ベヘニルエーテル、ＰＯＥ（２０）ベヘニルエーテル、ＰＯＥ（３０）ベヘニルエーテル、ＰＯＥ（２）（Ｃ１２－１５）アルキルエーテル、ＰＯＥ（４）（Ｃ１２－１５）アルキルエーテル、ＰＯＥ（１０）（Ｃ１２－１５）アルキルエーテル、ＰＯＥ（５）ジアルキルエーテル、ＰＯＥ（７）ジアルキルエーテル、ＰＯＥ（９）アルキルエーテル、ＰＯＥ（１２）アルキルエーテル等を挙げることができる。

　ＰＥＧ（ポリエチレングリコール）・ＰＰＧ（ポリプロピレングリコール）アルキルエーテルとしては、例えば、ＰＥＧ／ＰＰＧ－１７／７ジエチルエーテル、ＰＥＧ／ＰＰＧ－１／４セチルエーテル、ＰＥＧ／ＰＰＧ－１０／４セチルエーテル、ＰＥＧ／ＰＰＧ－２０／８セチルエーテル、ＰＥＧ／ＰＰＧ－２０／６デシルテトラデシルエーテル、ＰＥＧ／ＰＰＧ－３０／６デシルテトラデシルエーテル等を挙げることができる。

　ＰＥＧ脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール（以下、ＰＥＧと略す）（１０）、モノステアリン酸ＰＥＧ（１０）、モノステアリン酸ＰＥＧ（２５）、モノステアリン酸ＰＥＧ（４０）、モノステアリン酸ＰＥＧ（４５）、モノステアリン酸ＰＥＧ（５５）、モノステアリン酸ＰＥＧ（１００）、モノオレイン酸ＰＥＧ（１０）、ジステアリン酸ＰＥＧ、ジイソステアリン酸ＰＥＧ等を挙げることができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル等を挙げることができる。

　ＰＯＥグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン（ＰＯＥ）（５）グリセリル、モノステアリン酸ＰＯＥ（１５）グリセリル、モノオレイン酸ＰＯＥ（５）グリセリル、モノオレイン酸ＰＯＥ（１５）グリセリル等を挙げることができる。

　イソステアリン酸ＰＥＧグリセリルとしては、例えば、イソステアリン酸ＰＥＧ（８）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（１０）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（１５）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（２０）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（２５）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧグリセリル（３０）、イソステアリン酸ＰＥＧ（４０）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（５０）グリセリル、イソステアリン酸ＰＥＧ（６０）グリセリル等を挙げることができる。

　本発明の化粧料における両親媒性物質（Ｅ成分）の配合量は、特に限定されないが、通常は、化粧料全量に対し０．５～１０質量％であることが好ましく、より好ましくは１～８質量％、さらに好ましくは２～７質量％の範囲である。

　本発明の化粧料の水相（外相）に配合し得る他の任意成分として、水相増粘剤、緩衝剤、キレート剤、水溶性薬剤（但し、（Ｅ成分）に該当するものは除く）、水溶性紫外線吸収剤などが挙げられるが、これらに限定されない。

　本発明の化粧料の水相（外相）に、水相増粘剤を配合することで、乳化安定性を更に向上させることができる。例えば、キサンタンガム、セルロース誘導体等の多糖類系増粘剤、（ジメチルアクリルアミド／アクリロイルジメチルタウリンＮａ）クロスポリマー等のアクリルアミド系増粘剤、疎水変性ポリエーテルウレタン等の会合性増粘剤などが例示されるが、これらに限定されない。但し、水相内に「塩」（Ｂ成分）が共存するため、カルボキシビニルポリマー等の耐塩性の低い水相増粘剤の配合量は極力少なくする（例えば、０．１質量％未満にする）のが好ましい。

　本発明の化粧料の油相（内相）を構成する油分は、化粧料に配合可能なものであれば特に限定されず、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、シリコーン油、極性油、高級アルコール、高級脂肪酸等を挙げることができる。

　液体油脂としては、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。

　固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。

　ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、コメヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ＰＯＥラノリンアルコールエーテル、ＰＯＥラノリンアルコールアセテート、ＰＯＥコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、ＰＯＥ水添ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。

　炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オレフィンオリゴマ一等の不揮発性炭化水素油；へプタン、イソドデカン、イソヘキサデカン、及びイソデカン等の揮発性炭化水素油が挙げられる。「揮発性」とは、大気圧下、１０５℃で３時間放置したときの揮発分が５％を超える性質を有するものとする。

　シリコーン油としては、粘度６ｃＳｔ以上のジメチルポリシロキサン（ジメチコン）、メチルフェニルポリシロキサン（ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン）、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の直鎖状シリコーン油；粘度２ｃＳｔ以下のジメチルポリシロキサン（ジメチコン）等の低分子量の直鎖状または分岐鎖状ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油を含む揮発性シリコーン油が挙げられる。

　極性油の代表例として、エステル油及び油性の紫外線吸収剤が例示できる。中でも、ＩＯＢ値が０．１０を超える油分が好ましい。ＩＯＢ値とは、Ｉｎｏｒｇａｎｉｃ／Ｏｒｇａｎｉｃ　Ｂａｌａｎｃｅ（無機性／有機性比）の略であり、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。ＩＯＢ値は、具体的には、ＩＯＢ値＝無機性値／有機性値として表される。「無機性値」及び「有機性値」の各々については、例えば、分子中の炭素原子１個について「有機性値」が２０、水酸基１個について「無機性値」が１００といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のＩＯＢ値を算出することができる（例えば、甲田善生著、「有機概念図一基礎と応用一」、ｐ．１１～１７、三共出版、１９８４年発行参照）。

　エステル油の具体例には、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、エチルヘキサン酸セチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸ジエチルヘキシル、コハク酸ジオクチル、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル（トリエチルヘキサノイン）、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジイソブチル、Ｎ－ラウロイル－Ｌ－グルタミン酸－２－オクチルドデシル、アジピン酸２－ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸２－エチルヘキシル、エチルヘキサン酸２－エチルヘキシル、トリイソステアリン、ジピバリン酸ＰＰＧ－３、トリ(カプリル酸／カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。

　極性油に該当する紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン－１５、ｔ－ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン－３、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル等の有機系の紫外線吸収剤を挙げることができる。

　本発明の化粧料における油分の配合量は、安定な水中油型乳化化粧料が得られる範囲であれば特に限定されない。通常は、化粧料全量に対して５～４０質量％、好ましくは１０～３５質量％、より好ましくは２０～３０質量％である。

　本発明の化粧料に配合する油分が揮発性油分（揮発性炭化水素油及び／または揮発性シリコーン油）を含有すると、当該揮発性油分が蒸発した後に残る化粧膜における粉末成分や（不揮発性）油分の均一分散性が維持される傾向がある。従って、油分には揮発性油分を含めるのが好ましい。例えば、油分全量の１０質量％以上の揮発性油分を含めるのが好適である。

　本発明の化粧料の水相（外相）または油相（内相）に配合し得る更なる任意成分としては、防腐剤（エチルパラベン、ブチルパラベン等）；酸化防止剤（ジブチルヒドロキシトルエン（ＢＨＴ）、ブチルヒドロキシアニソール（ＢＨＡ）等）；粉末成分（例えば、無機粉末（例えば、タルク、カオリン、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、金属酸化物等）；有機粉末（例えば、セルロース粉末等））；紫外線散乱剤（微粒子酸化チタン、微粒子酸化塩等）；香料；各種薬剤等が挙げられる。

　本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料に汎用されている方法に準じて製造することができる。例えば、水相（外相）を構成する成分を必要に応じて加熱しながら撹拌混合し、油相（内相）を構成する成分を必要に応じて加熱しながら別途撹拌混合し、前記水相に前記油相を撹拌しながら混合乳化させて製造できる。

　本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料が元来有する、みずみずしい使用感触を持ちながら、顔料を含む多層型カプセルを含有し、なおかつ当該多層型カプセルが適度な塗擦によって破壊されて内包された顔料が露出して色調が変化する。したがって、当該色調変化による隠蔽効果を有するスキンケア化粧料として提供できる他、色調変化を楽しむことのできるメーキャップ化粧料としても有用である。

　以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特記しない限り質量％を示す。

　下記の表１～表３に掲げた処方で、水中油型乳化化粧料を調製した。具体的には、表１に掲載した各例の化粧料は、Ｎｏ．１～４の成分を混合して混合物（１）とし、Ｎｏ．５～９の成分を混合して混合物（２）とし、混合物（１）と（２）とを混合して混合物（３）とする。次いで、Ｎｏ．１０～１３の成分を混合して混合物（４）とし、混合物（４）を混合物（３）と混合して水相混合物を得る。さらに、Ｎｏ．１４～２４の成分を混合して油相混合物を得て、油相混合物を水相混合物に添加して乳化することにより水中油型乳化化粧料を得た。表２及び表３の化粧料も同様の方法で調製した。

　表１～表３の各例の化粧料の特性を、以下の方法で測定、評価した。
・「塗布試験」
　調製した各例の水中油型乳化化粧料を、プレート上に所定量塗布し、形成された化粧膜を同じ力で塗擦し、化粧膜の色が変化するまでの塗擦回数（多層型カプセルが潰れて内包された顔料が露出するまでの塗擦回数）を専門パネラーによる目視観察で計測した。

　色が変化するまでの塗擦回数に基づいて、以下の基準で評価した。その結果を表１～３に併せて示す。
＜評価基準＞
　Ａ：色が変化するまでの塗擦回数：３往復以内
　Ｂ：色が変化するまでの塗擦回数：４～６往復
　Ｃ：色が変化するまでの塗擦回数：７～９往復
　Ｄ：色が変化するまでの塗擦回数：１０往復以上

　表１に示した結果から、（Ａ）顔料を含む多層型カプセル；（Ｂ）分子量１０００以下の塩；及び（Ｃ）多価アルコールを含み、配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］を０．００３以上とした本発明の水中油型乳化化粧料（実施例１～４）は、使用者に負担のない塗擦回数で多層型カプセルが壊れて（潰れて）色の変化が生じることが確認された。なお、「（Ｂ）塩」として塩化Ｎａ（食塩）を用いた実施例３は、他の塩を用いた実施例１及び２より塗擦回数が少し多くなった。一方、実施例４は、実施例３と同量の塩化Ｎａを用いているが、（Ｄ）両親媒性物質（ＰＥＧ／ＰＰＧ－１４／７ジメチルエーテル）を更に添加することにより、実施例１及び２と同等の塗擦回数になった。

　表２は、配合する「（Ｂ）塩」の種類や配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］を変化させても、［（Ｂ）／（Ａ）］が０．００３以上という条件を満たしていれば同等の効果が得られることを示している。

　表３に記載した実施例９は、実施例４に配合した（Ｅ）両親媒性物質（ＰＥＧ／ＰＰＧ－１４／７ジメチルエーテル）を別の物質（フェノキシエタノール）に置換しても同等の効果が得られることを示している。一方、（Ｂ成分）以外は実施例９と同じ組成を持つ比較例１～３において、配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］が０．００３未満となる比較例１は、多層型カプセルが潰れにくく、７往復以上の塗擦で漸く色の変化が観察された。また、（Ｂ成分）を配合しない比較例２、分子量が１０００を超える塩（ヒアルロン酸Ｎａ（分子量２０００以上）を配合した比較例３では、多層型カプセルが潰れるまでに１０往復以上の塗擦が必要であった。

Claims

（Ａ）顔料を含む多層型カプセル；
（Ｂ）分子量１０００以下の塩；及び、
（Ｃ）多価アルコール、
を含む水中油型乳化化粧料であって、
前記（Ａ）顔料を含む多層型カプセルに対する、前記（Ｂ）分子量１０００以下の塩の配合量比率［（Ｂ）／（Ａ）］が、０．００３以上であることを特徴とする、水中油型乳化化粧料。
（Ｄ）シリコーン系の非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項１に記載の化粧料。
前記（Ｄ）非イオン性界面活性剤が、ポリエーテル変性シリコーンである、請求項２に記載の化粧料。
（Ｅ）両親媒性物質を更に含む、請求項１に記載の化粧料。
前記（Ｅ）両親媒性物質が、低級アルコール及びその誘導体、及び、ＨＬＢが８～１５の非シリコーン系の非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも１種である、請求項４に記載の化粧料。
前記（Ｂ）分子量１０００以下の塩が、塩化Ｎａ、メタリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸塩、２－アミノ－２－メチル－１，３－プロパンジオール塩、塩型薬剤からなる群から選択される少なくとも１種である、請求項１に記載の化粧料。
前記（Ｂ）分子量１０００以下の塩が、ナトリウム塩である、請求項１に記載の化粧料。