WO2023162186A1

WO2023162186A1 - スライドファスナー用スライダー

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Publication number: WO2023162186A1
Application number: PCT/JP2022/008087
Authority: WO
Inventors: 陽平宮崎; 一輝細江; 宏次山岸
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2022-02-25
Filing date: 2022-02-25
Publication date: 2023-08-31
Also published as: TW202333600A; TWI825764B

Abstract

スライドファスナー用スライダー（１０）において、上翼板（２１）には、上面（２１ａ）から凹むとともに、後端面（２１ｂ）まで開放された凹み部（３０）が形成される。凹み部（３０）には、前方において段差部（３１）が形成されるとともに、後方において下面（２１ｃ）まで貫通する切り欠き（３２）が形成される。引手取付柱（２４）の後端部（２８）は、全周に亙って上翼板（２１）の上面（２１ａ）よりも下方に位置し、凹み部（３０）と係合する係合部（３５）を有する。係合部（３５）を構成する後端部（２８）の下面（２８ａ）全体が、上翼板（２１）の上面（２１ａ）よりも下方に位置している。

Description

スライドファスナー用スライダー

　本発明は、スライドファスナー用スライダーに関する。

　通常、旅行カバンでは、カバンの開閉にコイル状のファスナーエレメントを備えるスライドファスナーが使用され、また、スライドファスナーのスライダーを操作する引手の一端部を係合させて、スライダーの作動をロックする施錠装置が設けられている。このような旅行カバンに使用されるスライダーは、通常、ロック部材を有さない自由スライダーが使用されている。

　自由スライダーを構成するスライダー胴体は、一端部が上翼板の上面から一体に成形され、他端部が自由端側となる引手取付柱を備え、引手を引手取付柱に支持させた後、他端部が上翼板の上面に当接又は近接するように引手取付柱を加締めることで、引手が組み付けられる。

　特許文献１に記載のスライダーでは、上述した自由スライダーにおいて、引手取付柱の他端部に下方に突出するボス部を設け、引手取付柱を加締めた際に、上翼板に形成された溝にボス部が嵌まり込むように構成されている。また、特許文献２に記載のスライダーにおいても、自由スライダーの引手取付柱の他端部の端面を傾斜面を持った係合部とし、引手取付柱を加締めた際に、上翼板に形成された斜面を持った溝に係合させるようにしている。これにより、特許文献１及び２に記載のスライダーでは、使用時に引手がスライダー胴体から外れるのを防止している。

中国特許第１０６３６０８８９号公報中国実用新案第２０７９４０４２０号公報

　ところで、上述した施錠装置を有する旅行カバンにおいて、一般的な自由スライダーでは、引手取付柱の他端部の下面と上翼板の上面との間の隙間に、マイナスドライバーなどの先の尖った道具を挿入して、引手取付柱を変形させて上記隙間を広げ、スライダー胴体から引手を外されてしまう可能性がある。その結果、スライダー胴体が移動でき、スライドファスナーが開けられて、旅行カバンの中身の盗難が可能となることから、対策が求められていた。
　特許文献１及び２に記載のスライダーは、防犯性を考慮したものでなく、引手取付柱の他端部の下面と上翼板の上面との間の隙間に先の尖った道具が挿入される可能性がある。

　本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、引手取付柱と上翼板との間に先の尖った道具が挿入しやすい隙間が形成されるのを抑制することで、引手取付柱を変形させにくくし、防犯性を高めることができるスライドファスナー用スライダーを提供することにある。

　本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
（１）　上下に対向して配置される上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前端部が前記上翼板の上面に接続され、前記前端部から後方に向かって延びた後、湾曲して下方に向かう後端部を有する、片持ち状の引手取付柱と、を有する胴体と、
　前記胴体に取り付けられる引手と、を備えるスライドファスナー用スライダーであって、
　前記上翼板には、前記上面から凹むとともに、後端面まで開放された凹み部が形成され、
　前記凹み部には、前方において段差部が形成されるとともに、後方において前記上翼板の下面まで貫通する切り欠きが形成され、
　前記引手取付柱の後端部は、全周に亙って前記上翼板の上面よりも下方に位置し、前記凹み部と係合する係合部を有し、
　前記係合部を構成する前記後端部の下面全体が、前記上翼板の上面よりも下方に位置している、
スライドファスナー用スライダー。
（２）　前記係合部には、前方において前記段差部の上面と当接又は近接するように対向する対向面が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部が形成される、（１）に記載のスライドファスナー用スライダー。
（３）　前記突出部は、その下端面が前記上翼板の下面の高さ以上となるように形成される、（２）に記載のスライドファスナー用スライダー。
（４）　前記突出部の前方側面は、前記対向面から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する、（２）又は（３）に記載のスライドファスナー用スライダー。
（５）　前記係合部の後側周面は、前記上翼板の後端面と面一、又は該後端面より前方に位置する、（１）～（４）のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
（６）　前記係合部の左右方向幅は、その後側周面において最も大きい、（１）～（５）のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
（７）　前記係合部の周面と前記凹み部の内壁とは、同じ多角形状に形成され、互いに近接している、（１）～（６）のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
（８）　前記凹み部のうち、前記多角形状の各辺を構成する隣り合う各内壁の交差角、及び、前記係合部のうち、前記隣り合う各内壁に対向する、隣り合う各周面の交差角は、いずれも９０°より大きい、（７）に記載のスライドファスナー用スライダー。
（９）　前記係合部には、前方において前記段差部の上面と当接又は近接するように対向する対向面が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部が形成され、
　前記係合部と前記凹み部は、断面略Ｔ字型に形成されており、
　前記段差部の上面及び前記対向面は、略四角形状に形成される、（７）に記載のスライドファスナー用スライダー。

　本発明のスライドファスナー用スライダーによれば、引手取付柱と上翼板との間に先の尖った道具が挿入しやすい隙間が形成されるのを抑制することで、引手取付柱を変形させにくくし、防犯性を高めることができる。

本発明の第１実施形態に係るスライドファスナー用スライダーが使用されるスライドファスナーの側面図である。第１実施形態に係るスライドファスナー用スライダーを説明する斜視図である。（ａ）は、図２のスライドファスナー用スライダーの上面図であり、（ｂ）は、その側面図である。（ａ）は、図３の（ａ）のＩＶ－ＩＶ線に沿った断面図であり、（ｂ）は、（ａ）のＩＶ´－ＩＶ´線に沿った断面図である。（ａ）は、図４の（ａ）のＶ－Ｖ線に沿った引手取付柱を下方から見た図であり、（ｂ）は、図４の（ａ）のＶ´－Ｖ´線に沿った上翼板を上方から見た図である。図２のスライドファスナー用スライダーの加締め前の斜視図である。図６の加締め前のスライドファスナー用スライダーの側面図である。第２実施形態に係るスライドファスナー用スライダーを説明する斜視図である。（ａ）は、図８のスライドファスナー用スライダーの上面図であり、（ｂ）は、その側面図である。（ａ）は、図９の（ａ）のＸ－Ｘ線に沿った断面図であり、（ｂ）は、（ａ）のＸ´－Ｘ´線に沿った断面図である。（ａ）は、図１０の（ａ）のＸＩ－ＸＩ線に沿った引手取付柱を下方から見た図であり、（ｂ）は、図１０の（ａ）のＸＩ´－ＸＩ´線に沿った上翼板を上方から見た図である。図８のスライドファスナー用スライダーの加締め前の斜視図である。図１２の加締め前のスライドファスナー用スライダーの側面図である。

　以下、本発明の各実施形態に係るスライドファスナー用スライダーについて、図面に基づいて詳細に説明する。
　なお、本実施形態において、スライダーの前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行な方向であり、スライドファスナーにおいて左右のエレメントを噛合させるときに摺動させる方向を前方とし、左右のエレメントを解離させるときに摺動させる方向を後方とする。また、スライダーの左右方向とは、スライドファスナーを構成した際のファスナーテープ面に平行で、且つ、スライダー前後方向に対して直角な方向をいい、スライダーの上下方向とは、スライドファスナーを構成した際のファスナーテープの表裏方向と同じ方向をいう。

（第１実施形態）
　第１実施形態のスライドファスナー用スライダー１０は、図１に示すように、左右一対のファスナーテープのファスナーエレメント５０が挿通される、ダイカスト製の胴体２０と、胴体２０に対して回動可能に設けられる引手４０と、を備える。なお、本実施形態のスライダー１０は、金属製で、ファスナーエレメント列に食い込む爪を有していない自由スライダーである。

　胴体２０は、図２～図７に示すように、上下に平行に対向して配置される上翼板２１及び下翼板２２と、上翼板２１及び下翼板２２を前端部において連結する案内柱２３と、上翼板２１の上面２１ａに設置される門型形状の引手取付柱２４と、上翼板２１と下翼板２２の両側縁から互いに接近する方向に延び、ファスナーエレメント５０をガイドするフランジ２５と、を有する。

　なお、フランジ２５はファスナーエレメントの形態によって、上翼板２１または下翼板２２の一方のみに設置してもよい。例えば、図１では、ファスナーエレメントの形態の一例として、ファスナーテープ５１のテープ側縁部の表側及び裏側に２つのファスナーエレメント列５０Ａ，５０Ｂが縫い付けられるものがスライドファスナーに適用されている。

　また、胴体２０の前部には、案内柱２３により分離された左右の肩口２０ａが形成されると共に、胴体２０の後部には、後口２０ｂが形成される。さらに、上翼板２１と下翼板２２との間には、左右の肩口２０ａと後口２０ｂとを連通するＹ字形状のエレメント挿通路２０ｃが設けられており、このエレメント挿通路２０ｃは、スライドファスナーを構成したときに、左右のファスナーエレメント５０を挿通させる通路となる。

　引手取付柱２４は、上翼板２１の上面２１ａの肩口２０ａ側から後口２０ｂ側へ向かって延びる片持ち状に形成されており、上翼板２１に一体的に固定されている前端部２６と、前端部２６から後方に向かって延びる延在部２７と、延在部２７から湾曲して下方に向かう、自由端側である後端部２８とを有している。引手取付柱２４は、途中で分割されることなく、前端部２６から後端部２８まで連続している。
　前端部２６は、上翼板２１の肩口２０ａ側において、左右方向中間部から突出されている。また、前端部２６の前方には、南京錠のシャッフルを挿入可能な孔２９が形成されている。
　なお、孔２９は、必須な構成ではなく、また、スライダーと他のスライダーとの間、又はスライダーと他の部品との間にロック機構を持たせるために、他の構成を設けてもよい。

　引手４０は、図１にも示すように、板状体であって、掴み部４１と、引手取付柱２４が挿通する貫通孔４３を形成する環部４２と、を有する。

　したがって、スライダー１０は、まず、図６及び図７に示す加締め前の胴体２０に対して、引手４０の貫通孔４３を介して、引手取付柱２４に引手４０を支持させる。その後、引手取付柱２４の後端部２８が上翼板２１の上面２１ａに向かうように、引手取付柱２４を加締める。これにより、胴体２０及び引手４０は、互いに不分離に組み立てられる。

　ここで、本実施形態のスライドファスナー用スライダー１０においては、上翼板２１の左右方向中間部且つ後方には、上面２１ａから凹むとともに、後端面２１ｂまで開放され、引手取付柱２４の後端部２８の先端部分である係合部３５が係合する凹み部３０が形成されている。具体的に、本実施形態の係合部３５は、図６に示すように、後端部２８のうち、一点鎖線より下方の先端部分を指している。

　図５の（ｂ）、図６及び図７に示すように、凹み部３０には、前方において上面視略五角形状の上面３１ａを持った段差部３１が形成されるとともに、後方において下面２１ｃまで貫通する上面視四角形状の切り欠き３２が形成される。即ち、凹み部３０は、全体として上面視で略五角形状に形成されており、図４（ｂ）に示すように、略五角形状の各辺を構成する内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄを有する。したがって、凹み部３０と段差部３１の周辺部は、上翼板２１と一体に成型されている。

　また、図５の（ａ）、図６及び図７に示すように、凹み部３０に係合する引手取付柱２１の後端部２８の係合部３５も略五角形状に形成され、周面３８ａ，３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅが略五角形の各辺を構成する。係合部３５には、前方において、加締め後に段差部３１の上面３１ａと当接又は近接するように対向する対向面３６が形成されるとともに、後方において、対向面３６よりも下方に突出して、切り欠き３２内に配置される突出部３７が形成される。
　なお、本明細書において、略五角形状を含む、略多角形状とは、各辺の頂点が面取りされる場合を含み、且つ、一部の辺が僅かに曲線を有する場合も含む。また、凹み部３０は、内壁３３ａと３３ｂの後端を結んで、多角形状を形成するものとする。

　対向面３６は、係合部３５の前側周面３８ｄ，３８ｅが断面Ｖ字状に形成されることで前方がＶ字状に形成されるが、このＶ字状の係合部３５の前側周面３８ｄ、３８ｅは、係合部３５よりも上方の後端部２８の部分から上下方向に連続するとともに、さらに、同じく断面Ｖ字状の延在部２７の下方側面から連続して形成されている。

　そして、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅは、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ内に近接するように、凹み部３０より僅かに小さな大きさに形成される。即ち、係合部３５が凹み部３０に係合した際、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅと、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄとの間に形成される隙間に、先の尖った道具が入らない程度に、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅと、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄとが近接している。

　そして、引手取付柱２４が加締められて、図４に示すように、引手取付柱２４の対向面３６が上翼板２１の段差部３１の上面に当接または近接した際、係合部３５は、全周に亙って、上翼板２１の上面２１ａよりも下方に位置している。また、係合部３５を構成する、引手取付柱２４の後端部２８の下面２８ａ全体（即ち、本実施形態における対向面３６と、後述する突出部３７の傾斜面３７ａ及び下端面３７ｂ）が、上翼板２１の上面２１ａよりも下方に位置している。
　なお、本実施形態では、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅは、全周に亙って、該係合部３５より上方の後端部２８の部分から上下方向に段差なく連続して形成されている。

　また、突出部３７の前方側面は、対向面３６から後方に向かうにつれて下方に傾斜するＶ字状の傾斜面３７ａによって形成されている。これにより、引手取付柱２４の加締め前、図７に示すように、引手取付柱２４の突出部３７と、上翼板２１の上面２１ａとの間の隙間を大きくすることができ、引手４０を引手取付柱２４に支持させる際の、引手４０の環部４２の挿入性を向上することができる。

　引手取付柱２４の係合部３５を含む後端部２８の左右方向幅Ｗは、左右両側の湾曲部を含んだ後側周面３８ａにおいて最も大きくなるように形成されているので、引手取付柱２４の係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅと、上翼板２１の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄとの間の隙間に、先の尖った道具が後方からアクセスすることが困難となり、スライダーの防犯性を高めることができる。

　また、凹み部３０のうち、五角形状の各辺を構成する隣り合う各内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄの交差角α１，α２，α３、及び、係合部３５のうち、隣り合う各内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄに対向する、隣り合う各周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅの交差角β１，β２，β３は、いずれも９０°より大きい（本実施形態では、α１，α２，α３，β１，β２，β３≧１００°）。この場合、係合部３５の各周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅが凸となって交差するが、これらの稜線部は尖らず、また、面取りを小さくできる。したがって、隣り合う各内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄの凹状の境界部と、隣り合う各周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅの稜線部との間の隙間に、先の尖った道具が入り込むことが防止される。

　また、加締め後、突出部３７は、凹み部３０の切り欠き３２内に配置される。その際、突出部３７の下端面３７ｂは、図４に示すように、段差部３１の上面３１ａより低く、且つ、上翼板２１の下面２１ｃの高さ以上となるように設計される。これにより、突出部３７がエレメント挿通路２０ｃ内を通過するファスナーエレメント５０と干渉することがない。
　なお、本実施形態では、突出部３７の下端面３７ｂは、上翼板２１の下面２１ｃと面一となる高さに形成されており、段差面の上面と対向面との間の隙間に、先の尖った道具が後方からよりアクセスし難い構成となる。

　さらに、本実施形態では、加締め後、引手取付柱２４の係合部３５の後側周面３８ａは、上翼板２１の後端面２１ｂと面一に位置しており、良好な外観性が確保でき、また、引手４０の操作性も良好となる。
　なお、引手取付柱２４の係合部３５の後側周面３８ａは、該後端面２１ｂより前方に位置していても、同様の効果を奏する。

　したがって、本実施形態のスライドファスナー用スライダー１０は、引手取付柱２４と上翼板２１との間に先の尖った道具が挿入しやすい隙間が形成されるのを抑制することで、引手取付柱２４を変形させにくくし、防犯性を高めることができる。

（第２実施形態）
　次に、本発明の第２実施形態に係るスライダーについて、図８～図１３を参照して説明する。なお、本実施形態のスライダー１０は、胴体２０Ａの引手取付柱２４の形状及び上翼板２１の凹み部３０の形状において第１実施形態の胴体２０と異なる。したがって、本実施形態のスライダーにおいても、第１実施形態の引手４０が胴体２０Ａに対して回動可能に設けられるが、図示省略されている。

　即ち、本実施形態の胴体２０Ａでは、引手取付柱２４の延在部２７の下方側面及び係合部３５を含む後端部２８の前方側面が左右方向中間部で四角形状に突出しており、延在部２７及び後端部２８が断面略Ｔ字型に形成されている。したがって、係合部３５は、Ｔ字の左右方向に長い略四角形部分を突出部３７とし、また、Ｔ字の前後方向に長い略四角形部分を対向面３６としている。これにより、係合部３５の周面３８ａ，３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈが略八角形の各辺を構成する。

　また、上翼板２１の上面２１ａに形成される凹み部３０においても、対向面３６が当接する部分が、上面視四角形状の上面３１ａを有する段差部３１となり、突出部３７が嵌まり込む部分が上面視四角形状の切り欠き３２となる。したがって、凹み部３０も、略八角形の各辺を構成する内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇを有する。

　そして、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈは、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇ内に近接するように、凹み部３０より僅かに小さな大きさに形成される。即ち、係合部３５が凹み部３０に係合した際、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈと、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇとの間に形成される隙間に、先の尖った道具が入らない程度に、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈと、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇとが近接している。

　また、係合部３５の周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈと、凹み部３０の内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇとは、いずれも隣り合う各辺が凹または凸を形成して略直角に交差する。

　即ち、凹み部３０のうち、八角形状の各辺を構成する隣り合う各内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇの交差角α１～α６、及び、係合部３５のうち、隣り合う各内壁３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇに対向する、隣り合う各周面３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈの交差角β１～β６は、いずれも略直角となる。
　なお、ここでの「略直角」とは、８５°~９５°の範囲の角度を表す。

　これにより、左右方向に延びる、凹み部３０の各内壁３３ｃ，３３ｄ，３３ｇと係合部３５の各周面３８ｄ，３８ｅ，３８ｈの長さが分割されてそれぞれ短く形成されるので、これら係合部３５の各周面３８ｄ，３８ｅ，３８ｈと凹み部３０の各内壁３３ｃ，３３ｄ，３３ｇとの間の隙間に、先の尖った道具が入り難くなる。
　その他の構成及び作用については、第１実施形態のものと同様である。

　尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。

　引手取付柱の先端部分を含む後端部と凹み部とは、上記実施形態の形状に限らず、同じ多角形状に形成されれば、他の多角形状であってもよい。
　また、上記実施形態では、引手取付柱の先端部分を含む後端部と凹み部とは、多角形状としているが、他の形状であってもよく、例えば、前側周面が曲面形状であってもよい。

　さらに、上記実施形態では、後端部２８の下面２８ａは、対向面３６と、突出部３７の傾斜面３７ａ及び下端面３７ｂとを有するが、本発明では、後端部の下面全体が、上翼板の上面よりも下方に位置しているものであればよく、後端部の下面の構成は、上記実施形態に限定されるものでない。

　以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
（１）　上下に対向して配置される上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前端部が前記上翼板の上面に接続され、前記前端部から後方に向かって延びた後、湾曲して下方に向かう後端部を有する、片持ち状の引手取付柱と、を有する胴体と、
　前記胴体に取り付けられる引手と、を備えるスライドファスナー用スライダーであって、
　前記上翼板には、前記上面から凹むとともに、後端面まで開放された凹み部が形成され、
　前記凹み部には、前方において段差部が形成されるとともに、後方において前記上翼板の下面まで貫通する切り欠きが形成され、
　前記引手取付柱の後端部は、全周に亙って前記上翼板の上面よりも下方に位置し、前記凹み部と係合する係合部を有し、
　前記係合部を構成する前記後端部の下面全体が、前記上翼板の上面よりも下方に位置している、
スライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、引手取付柱と上翼板との間に先の尖った道具が挿入しやすい隙間が形成されるのを抑制することで、引手取付柱を変形させにくくし、スライダーの防犯性を高めることができる。
　特に、凹み部は後端面まで開放されているので、引手取付柱の後方において、引手取付柱と上翼板との間で先の尖った道具が挿入される隙間が形成されることがなく、スライダーの防犯性を高めることができる。

（２）　前記係合部には、前方において前記段差部の上面と当接又は近接するように対向する対向面が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部が形成される、（１）に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、突出部によって段差面の上面と対向面との間に先が尖った道具が後方からアクセスできないので、スライダーの防犯性を高めることができる。

（３）　前記突出部は、その下端面が前記上翼板の下面の高さ以上となるように形成される、（２）に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、突出部がエレメント挿通路内を通過するファスナーエレメントと干渉するのを防止できる。

（４）　前記突出部の前方側面は、前記対向面から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する、（２）又は（３）に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、引手取付柱の加締め前、引手取付柱の突出部と、上翼板の上面との間の隙間を大きくすることができ、引手を引手取付柱に支持させる際の、引手の環部の挿入性を向上することができる。

（５）　前記係合部の後側周面は、前記上翼板の後端面と面一、又は該後端面より前方に位置する、（１）～（４）のいずれか１項に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、良好な外観性が確保でき、また、引手の操作性も良好となる。

（６）　前記係合部の左右方向幅は、その後側周面において最も大きい、（１）～（５）のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、後側周面よりも前方に設けられる、係合部の周面と上翼板の内壁との間の隙間に、先の尖った道具が後方からアクセスすることが困難となり、スライダーの防犯性を高めることができる。

（７）　前記係合部の周面と前記凹み部の内壁とは、同じ多角形状に形成され、互いに近接している、（１）～（６）のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、係合部の周面と凹み部の内壁との間の隙間に、先の尖った道具がアクセスするのを防止できる。

（８）　前記凹み部のうち、前記多角形状の各辺を構成する隣り合う各内壁の交差角、及び、前記係合部のうち、前記隣り合う各内壁に対向する、隣り合う各周面の交差角は、いずれも９０°より大きい、（７）に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、隣り合う各内壁の凹状の境界部と、隣り合う各周面の稜線部との間の隙間に、先の尖った道具が入り込むことが防止される。

（９）　前記係合部には、前方において前記段差部の上面と当接又は近接するように対向する対向面が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部が形成され、
　前記係合部と前記凹み部は、断面略Ｔ字型に形成されており、
　前記段差部の上面及び前記対向面は、略四角形状に形成される、（７）に記載のスライドファスナー用スライダー。
　この構成によれば、左右方向に延びる、凹み部の各内壁と係合部の各周面の長さが分割されてそれぞれ短く形成されるので、これら係合部の各周面と凹み部の各内壁との間の隙間に、先の尖った道具が入り難くなる。

    １０    スライドファスナー用スライダー
    ２０，２０Ａ    胴体
    ２１    上翼板
    ２２    下翼板
    ２３    案内柱
    ２４    引手取付柱
    ２５    フランジ
    ２６    前端部
    ２７    延在部
    ２８    後端部
    ３０    凹み部
    ３１    段差部
    ３２    切り欠き
    ３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇ    内壁
    ３５    係合部
    ３６    対向面
    ３７    突出部
    ３８ａ，３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈ    周面
    ４０    引手
    ４１    掴み部
    ４２    環部
    ４３    貫通孔
    α１，α２，α３，α４，α５，α６，β１，β２，β３，β４，β５，β６    交差角

Claims

　上下に対向して配置される上翼板（２１）及び下翼板（２２）と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱（２３）と、前端部（２６）が前記上翼板の上面（２１ａ）に接続され、前記前端部から後方に向かって延びた後、湾曲して下方に向かう後端部（２８）を有する、片持ち状の引手取付柱（２４）と、を有する胴体（２０）と、
　前記胴体に取り付けられる引手（４０）と、を備えるスライドファスナー用スライダー（１０）であって、
　前記上翼板には、前記上面から凹むとともに、後端面（２１ｂ）まで開放された凹み部（３０）が形成され、
　前記凹み部には、前方において段差部（３１）が形成されるとともに、後方において前記上翼板の下面（２１ｃ）まで貫通する切り欠き（３２）が形成され、
　前記引手取付柱の後端部は、全周に亙って前記上翼板の上面よりも下方に位置し、前記凹み部と係合する係合部（３５）を有し、
　前記係合部を構成する前記後端部の下面（２８ａ）全体が、前記上翼板の上面よりも下方に位置している、
スライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記係合部には、前方において前記段差部の上面（３１ａ）と当接又は近接するように対向する対向面（３６）が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部（３７）が形成される、請求項１に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記突出部は、その下端面（３７ｂ）が前記上翼板の下面の高さ以上となるように形成される、請求項２に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記突出部の前方側面は、前記対向面から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面（３７ａ）を有する、請求項２又は３に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記係合部の後側周面（３８ａ）は、前記上翼板の後端面と面一、又は該後端面より前方に位置する、請求項１～４のいずれか１項に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記係合部の左右方向幅（Ｗ）は、その後側周面（３８ａ）において最も大きい、請求項１～５のいずれか１項に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記係合部の周面（３８ａ，３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ，３８ｆ，３８ｇ，３８ｈ）と前記凹み部の内壁（３３ａ，３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ，３３ｆ，３３ｇ）とは、同じ多角形状に形成され、互いに近接している、請求項１～６のいずれか１項に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記凹み部のうち、前記多角形状の各辺を構成する隣り合う各内壁（３３ｂ，３３ｃ，３３ｄ，３３ｅ）の交差角（α１，α２，α３）、及び、前記係合部のうち、前記隣り合う各内壁に対向する、隣り合う各周面（３８ｂ，３８ｃ，３８ｄ，３８ｅ）の交差角（β１，β２，β３）は、いずれも９０°より大きい、請求項７に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。
　前記係合部には、前方において前記段差部の上面（３１ａ）と当接又は近接するように対向する対向面（３６）が形成されるとともに、後方において前記対向面よりも下方に突出する突出部（３７）が形成され、
　前記係合部と前記凹み部は、断面略Ｔ字型に形成されており、
　前記段差部の上面及び前記対向面は、略四角形状に形成される、請求項７に記載のスライドファスナー用スライダー（１０）。