WO2023153395A1 - 二次電池 - Google Patents

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祐太 西森
吉宣 佐藤
隆志 佐々木
真帆 原田
貴仁 中山
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Definitions

  • Patent Document 1 when controlling the conductivity of the powder compact as in Patent Document 1, the battery as a whole becomes highly resistant, leading to a decrease in battery performance. Furthermore, Patent Document 1 is a countermeasure specialized for composite oxides containing lithium and nickel as main components, and lacks versatility.
  • One object of the present disclosure is to provide a positive electrode material that can maintain a high resistance even in a heat-generating environment such as a short circuit, regardless of the type and characteristics of the positive electrode active material.
  • the thickness of the positive electrode active material layer is not particularly limited.
  • a plurality of layers having different compositions may form one positive electrode active material layer.
  • two or more layers containing active material particles having different average particle sizes may be laminated, or two or more layers having different types of positive electrode active materials or different compositions of positive electrode active materials may be laminated.
  • Film formation step (S2) A laminate (positive electrode precursor) of the positive electrode current collector and the precursor layer is placed in a predetermined reaction chamber, and the active layer in the precursor layer is coated with a coating containing the second metal oxide by ALD according to the following procedure. A portion of the surface of the material particles was coated.

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Abstract

正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の電解質を具備し、正極は、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質層と、を備え、正極活物質層は、正極活物質である第1金属酸化物と、第1金属酸化物とは異なる第2金属酸化物と、を備え、第1金属酸化物は、リチウム含有遷移金属酸化物を含み、第2金属酸化物に含まれる金属元素Mは、互いに異なる価数の原子m1と原子m2を含み、原子m1と原子m2とは同一元素であり、金属元素Mは、Al、Ti、Si、Zr、Mg、Nb、Ta、Sn、Ni、VおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、原子m1の酸化物および原子m2の酸化物は、電気抵抗の温度依存性が異なる、二次電池。

Description

二次電池
 本開示は、二次電池に関し、より詳しくは二次電池の正極の改良に関する。
 二次電池のエネルギー密度が高くなるほど、安全性を向上させることが求められる。中でも内部短絡による発熱を低減することは重要である。電池が内部短絡した場合、短絡部が微小でも、短絡電流によるジュール熱によりセパレータが溶融して、より大きな短絡部が形成される。短絡部が拡大し、短絡電流が増大すると、電池温度が加速度的に上昇する。二次電池のエネルギー密度が高くなるほど、短絡電流によるジュール熱は増加する。
 特許文献1は、層状結晶構造を有するリチウムとニッケルを主成分とする複合酸化物において、一般式:LiaNi1-b-cM1bM2c2、0.95≦a≦1.05、0.01≦b≦0.10、0.10≦c≦0.20(但し、M1はAl、B、Y、Ce、Ti、Sn、V、Ta、Nb、W、Moから選ばれる1種以上の元素、M2はCo、Mn、Feから選ばれる1種以上の元素)で表される元素組成を有する粉末であり、かつ、該粉末を加圧成形した時の圧縮密度が4.0g/cm3における圧粉体の25℃における導電率:σが5×10-2≧σ≧5×10-4[S/cm]の範囲内であることを特徴とする正極活物質を提案している。
特開2000-315502号公報
 特許文献1は、上記正極活物質によれば、充電状態における熱的安定性が向上し、電池が内部短絡を生じた状況下においても短絡電流によるジュール発熱が抑制され、安全性の確保が容易になると述べている。
 しかし、特許文献1のように圧粉体の導電率を制御する場合、電池が全体として高抵抗になるため、電池性能の低下につながる。さらに、特許文献1は、リチウムとニッケルを主成分とする複合酸化物に特化した対策であり、汎用性も乏しい。本開示は、正極活物質の種類や特性にかかわらず、短絡時等の発熱環境下でも高い抵抗を維持できる正極材料を提供することを目的の1つとする。
 本開示の一側面は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の電解質を具備し、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質層と、を備え、前記正極活物質層は、正極活物質である第1金属酸化物と、前記第1金属酸化物とは異なる第2金属酸化物と、を備え、前記第1金属酸化物は、リチウム含有遷移金属酸化物を含み、前記第2金属酸化物に含まれる金属元素Mは、互いに異なる価数の原子m1と原子m2を含み、前記原子m1と前記原子m2とは同一元素であり、前記金属元素Mは、Al、Ti、Si、Zr、Mg、Nb、Ta、Sn、Ni、VおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、前記原子m1の酸化物および前記原子m2の酸化物は、電気抵抗の温度依存性が異なる、二次電池に関する。
 本開示によれば、短絡時等の発熱環境下でも高い抵抗を維持し得る正極材料を提供することができる。
 本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
本開示の一実施形態に係る二次電池の内部構造を概略的に示す縦断面図である。 本開示の一実施形態に係る正極の要部を模式的に示す断面図である。 図2に示す正極の要部を拡大して示す断面図である。
 以下では、本開示に係る二次電池の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかを任意に組み合わせることができる。複数の材料が例示される場合、その中から1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 本開示の実施形態に係る二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の電解質を具備する。
 正極は、正極集電体と、正極集電体に担持された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質である第1金属酸化物と、第1金属酸化物とは異なる第2金属酸化物とを備える。第1金属酸化物は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む。第2金属酸化物に含まれる金属元素Mは、互いに異なる価数の原子m1と原子m2を含む。原子m1と原子m2とは同一元素である。金属元素Mは、Al、Ti、Si、Zr、Mg、Nb、Ta、Sn、Ni、VおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。原子m1の酸化物および原子m2の酸化物は、電気抵抗の温度依存性が互いに異なる。すなわち、原子m1の酸化物および原子m2の酸化物の温度上昇に伴う電気抵抗の変化は互いに相違する。
 第2金属酸化物は、電池が発熱したときの安全性を高める作用を有する。第2金属酸化物は、原子m1の酸化物および原子m2の酸化物を含むため、単一の価数の金属元素Mのみを含む酸化物よりも、電気抵抗の温度依存性が小さくなる。第2金属酸化物の電気抵抗の温度依存性が小さくなる場合、広い温度範囲で電気抵抗が大きく変化しなくなるため、短絡時等の発熱環境下でも高い電気抵抗が維持される。その結果、電流が抑制され、短絡部位の温度上昇が抑制される。第2金属酸化物は、第1金属酸化物のように電気化学的容量を発現する正極活物質である必要はない。つまり第2金属酸化物は、実質的に電気化学的に不活性であってもよい。
 例えば、金属元素MがTiであるとき、金属元素Mの酸化物は、互いに価数の異なる3価のTi原子(Ti3+)および4価のTi原子(Ti4+)の酸化物、すなわち、TiおよびTiOを含んでもよい。TiおよびTiOを含む正極活物質層は、短絡等により電池の温度が上昇した場合に、TiおよびTiOが抵抗成分として作用するため、短絡電流が抑制され、ジュール熱の発生による温度上昇が抑制される。ここで、Tiは、TiOと比較して高温環境下であっても高い電気抵抗を維持する。このため、TiOのみが正極活物質層に含まれる場合と比較して、短絡時等の電池温度の上昇をより効果的に抑制することができる。
 本開示の実施形態に係る二次電池は、非水電解質として電解液を含む液式二次電池でもよく、非水電解質として固体電解質を含む全固体二次電池でもよい。以下、リチウムイオン二次電池を例に挙げて、これらの構成を具体的に説明する。
<正極>
 正極は、正極集電体と、正極集電体に担持された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質である第1金属酸化物と、第1金属酸化物とは異なる第2金属酸化物とを備える。
[正極集電体]
 正極集電体は、シート状の導電性材料で構成される。正極集電体としては、無孔の導電性基板(金属箔など)、多孔性の導電性基板(メッシュ、ネット、パンチングシートなど)が使用される。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなどが例示できる。正極集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば、1~50μmであり、5~30μmであってもよい。
[正極活物質層]
 正極活物質層は、正極集電体の一方または両方の表面に担持されている。正極活物質層は、通常、正極合剤で構成された正極合剤層であり、正極集電体上に配置された層状もしくはフィルム状である。正極合剤は、正極活物質の粒子を必須成分として含み、任意成分として、結着剤、増粘剤、導電剤などを含み得る。正極活物質層は、例えば、正極合剤を分散媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。
 正極活物質層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上200μm以下でもよく、30μm以上100μm以下でもよい。互いに異なる組成を有する複数の層で1つの正極活物質層を形成してもよい。例えば、互いに平均粒子径の異なる活物質粒子を含む2層以上を積層してもよく、互いに正極活物質の種類もしくは正極活物質の組成が異なる2層以上を積層してもよい。
(第1金属酸化物)
 正極活物質である第1金属酸化物は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む。高容量化の観点から、少なくとも遷移金属としてNiを含むリチウムニッケル複合酸化物(複合酸化物N)を含んでもよい。複合酸化物Nは、LiとNiとを含み、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物であってよい。正極活物質に占める複合酸化物Nの割合は、例えば、50質量%以上であり、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。
 複合酸化物Nは、Niを含むとともに、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。Co、MnおよびAlは、複合酸化物Nの結晶構造の安定化に寄与する。
 複合酸化物Nは、例えば、式:LiαNi(1-x1-x2-y-z)Cox1Mnx2AlMe2+βで表される。元素Meは、Li、Ni、Co、Mn、AlおよびO以外の元素である。Liの原子数比を示すαは、例えば、0.95≦α≦1.05であり、充放電により増減する。Oの原子数比を示す(2+β)において、βは、-0.05≦β≦0.05を満たす。Niの原子数比を示す1-x1-x2-y-z(=v)は、例えば0.50以上であり、0.80以上でもよく、0.90以上もしくは0.95以上でもよい。また、Niの原子数比を示すvは、0.98以下でもよく、0.95以下でもよい。
 Coの原子数比を示すx1は、例えば、0.1以下(0≦x1≦0.1)であり、0.08以下でもよく、0.05以下でもよく、0.01以下でもよい。x1が0の場合には、Coが検出限界以下である場合が包含される。
 Mnの原子数比を示すx2は、例えば、0.1以下(0≦x2≦0.1)であり、0.08以下でもよく、0.05以下でもよく、0.03以下でもよい。x2は、0.01以上でもよく、0.03以上でもよい。
 Alの原子数比を示すyは、例えば、0.1以下(0≦y≦0.1)であり、0.08以下でもよく、0.05以下でもよく、0.03以下でもよい。yは、0.01以上でもよく、0.03以上でもよい。
 元素Meの原子数比を示すzは、例えば、0≦z≦0.10であり、0<z≦0.05でもよく、0.001≦z≦0.01でもよい。
 元素Meは、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Fe、Zn、B、Si、Mg、Ca、Sr、ScおよびYからなる群より選択された少なくとも1種の元素であってもよい。なお、元素Meとして第1金属酸化物に微量に含まれるTiなどの元素は、第1金属酸化物を構成する元素であって、第2金属酸化物のように抵抗成分として作用する元素ではない。
 正極活物質の粒子の平均粒子径は、例えば、3μm以上30μm以下であり、5μm以上25μm以下でもよい。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で得られる体積基準の粒度分布において積算体積が50%となるメディアン径(D50)である。活物質粒子は、正極から分離回収すればよい。測定装置には、例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA)製「LA-750」を用いることができる。
 平均粒子径は、正極合剤層と正極集電体とを同時に切断した厚さ方向の断面から測定してもよい。断面は、クロスセクションポリッシャ(CP)を用いて形成してもよい。その際、正極合剤層に熱硬化性樹脂を充填して硬化させてもよい。次に、断面の走査電子顕微鏡写真(以下、SEM像)を撮影する。SEM像は、正極活物質粒子が10個以上観測されるように撮影する。画像処理により、10個以上の正極活物質粒子の断面の円相当径を求め、それらの平均値を平均粒子径として求める。ここで、円相当径とは、粒子の断面の面積(正極合剤層の断面に観測される粒子の面積)と同じ面積を有する円の直径をいう。
(第2金属酸化物)
 第2金属酸化物に含まれる金属元素Mは、互いに異なる価数の原子m1と原子m2を含む。原子m1と原子m2とは同一の元素である。金属元素Mは、Al、Ti、Si、Zr、Mg、Nb、Ta、Sn、Ni、VおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、原子m1の酸化物および原子m2の酸化物は、電気抵抗の温度依存性が異なる。
 正極活物質層において、第2金属酸化物に含まれる金属元素Mの量は、第1金属酸化物のLiを除く金属元素の総量に対して0.03モル%以上10モル%以下でもよく、0.05モル%以上1モル%以下でもよい。このような元素のバランスを有することで、第2金属酸化物による二次電池の安全性を高める効果が大きくなる。
 金属元素Mは、少なくともTiを含むことが好ましい。金属元素Mは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 金属元素MがTiであるとき、金属元素Mの酸化物は、互いに価数の異なる3価のTi原子(Ti3+)および4価のTi原子(Ti4+)の酸化物、すなわち、TiおよびTiOを含んでもよく、さらに、2価のTi原子を含む酸化物を含んでもよい。電気抵抗の温度依存性が異なるTiおよびTiOを正極活物質層に存在させて、発熱環境下で高い抵抗を維持させるためには、Ti3+とTi4+との原子数比:Ti3+/Ti4+は、1.3以上3以下であることが好ましく、1.3以上2以下であることがより好ましい。そのため、正極活物質層における金属元素Mの酸化物は、TiO(x=1.5以上2未満、好ましくは1.5以上1.8未満)で表される酸化物であることが好ましい。
 金属元素MがVであるとき、金属元素Mの酸化物は、互いに価数の異なる3価のV原子(V3+)および4価のV原子(V4+)の酸化物、すなわち、VおよびVOを含んでもよく、さらに、2価および/または5価のV原子を含む酸化物を含んでいてもよい。電気抵抗の温度依存性が異なるVおよびVOを正極活物質層に存在させて、発熱環境下で高い抵抗を維持させるためには、V3+とV4+との原子数比:V3+/V4+は、1.3以上3以下であることが好ましく、1.3以上2以下であることがより好ましい。そのため、正極活物質層における金属元素Mの酸化物は、VO(x=1.5以上2未満、好ましくは1.5以上1.8未満)で表される酸化物であることが好ましい。
 金属元素Mの酸化物は、結晶状態であってもよく、非晶質状態であってもよく、さらにそれらの混合状態であってもよい。
 金属元素Mに含まれる原子m1と原子m2との原子数比(例えば、Ti3+とTi4+との原子数比:Ti3+/Ti4+)は、X線吸収微細構造(XAFS)測定、X線光電子分光(XPS)などにより求めることができる。
 電気化学デバイスを解体して電極を取り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の活物質層の薄片試料(厚み100nm程度)を得る。TEMにより当該試料中の活物質粒子を観察する。当該活物質粒子についてエネルギー分散型X線分光分析(TEM-EDS分析)による元素マッピングを行い、活物質粒子の表面に第2金属酸化物が存在することを確認する。
 第2金属酸化物の形態は、特に限定されない。第2金属酸化物は、正極活物質(第1金属酸化物)の表面の少なくとも一部を被覆する被膜に含まれていてもよく、第1金属酸化物の表面に粒子状で付着してもよく、粒子状で正極活物質層内に第1金属酸化物と混在していてもよい。例えば、第2金属酸化物は、第1金属酸化物の粒子間の隙間に充填されていてもよい。
 第2金属酸化物を正極活物質の表面に付着させる方法としては、例えば、固相合成法、液相合成法、化学気相成長法(CVD法)、原子層堆積法(ALD法)、物理気相成長法(PVD法)などが挙げられる。特に、正極活物質層内の正極活物質に対して比較的低温で第2金属酸化物を付着させることができる点で、ALD法が好ましい。ALD法によれば、170℃以下の雰囲気で第2金属酸化物を正極活物質に付着させることができるため、製造された正極の正極活物質層に対してALD法を適用しても、正極合剤の構成成分が熱で変性することが抑制される。例えば、上記のTiOおよびVOは、100℃以上170℃以下、例えば、約150℃の雰囲気下、適当な条件で有機Ti化合物または有機V化合物を正極活物質に吸着させ、分解または酸化させることにより生成させることができる。ただし、正極合剤に配合する前の正極活物質に対して第2金属酸化物を付着させてもよい。その場合、予め第2金属酸化物を付着させた正極活物質を含む正極スラリーを集電体に塗布して正極活物質層を形成すればよい。
 第2金属酸化物は、第1金属酸化物の表面の少なくとも一部を被覆する被膜に含まれることが好ましい。ただし、第1金属酸化物は、通常、凝集状態の粒子であり、複数の一次粒子が寄せ集まって形成された二次粒子である。第2金属酸化物は、二次粒子の表面の少なくとも一部に付着していればよい。金属元素Mを2種以上用いる場合、金属元素Mの酸化物は混在していてもよいし、それぞれ層状に配置されていてもよい。
 第1金属酸化物(具体的には二次粒子)の表面の少なくとも一部に付着するように形成された第2金属酸化物を含む被膜の厚みは、30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。第2金属酸化物を含む被膜の厚みを上記の範囲とすることで、二次電池の通常の使用時には第2金属酸化物を含む被膜がリチウムイオンの拡散性を阻害せず、短絡時等の発熱時には第2金属酸化物が高い抵抗を維持して電流を抑制する。被膜の厚みは、SEMまたはTEMを用いた活物質粒子の断面観察により計測できる。
 例えば、正極活物質層32の正極集電体31の表面から任意の位置にある活物質粒子33を被覆する第2金属酸化物を含む被膜37の厚みTの算出法を、図2および図3を参照しながら説明する。便宜上、図3では、第2金属酸化物を含む被膜37を有する第1金属酸化物(活物質粒子)30を2個だけ示している。
 正極活物質層の厚みをTAとしたとき、正極活物質層の正極集電体の表面から0.25TAの位置から0.75TAの位置までの領域内の任意の位置に引いた直線に一部が重複し、最大径が5μm以上の活物質粒子(二次粒子)30を10個選び出す。それぞれの粒子について、上記直線と活物質粒子33の外縁との1つまたは2つの交点における第2金属酸化物を含む被膜の厚み(T11、T12、T13、T14、・・)を測定する。これら最大20点における厚みの平均値を求める。この平均値を算出した後、得られた平均値と20%以上異なるデータを除き、再び平均値を算出する。この修正された平均値を、被膜の厚みTとする。
(結着剤)
 正極の結着剤としては、例えば、樹脂材料が用いられる。結着剤としては、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂などが挙げられる。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(導電剤)
 導電剤としては、カーボンナノチューブ(CNT)、CNT以外の炭素繊維、導電性粒子(例えば、カーボンブラック、黒鉛)などが挙げられる。
<負極>
 負極は、例えば、負極集電体を含み、負極活物質層を含んでもよい。負極活物質層は、負極集電体の一方または両方の表面に担持されている。
[負極集電体]
 負極集電体としては、無孔の導電性基板(金属箔など)、多孔性の導電性基板(メッシュ、ネット、パンチングシートなど)が使用される。負極集電体の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などが例示できる。
[負極活物質層]
 負極活物質層は、負極合剤で構成された負極合剤層であってもよい。負極合剤層は、層状もしくはフィルム状である。負極合剤は、負極活物質の粒子を必須成分として含み、任意成分として結着剤、導電剤、増粘剤などを含み得る。また、リチウム金属箔あるいはリチウム合金箔を負極活物質層として負極集電体に貼り付けてもよい。
 負極合剤層は、例えば、負極活物質の粒子、結着剤などを含む負極合剤を分散媒に分散させた負極スラリーを、負極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。
(負極活物質)
 負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料、リチウム金属、リチウム合金などを含む。電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料としては、炭素材料、合金系材料などが用いられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)などが例示できる。中でも、充放電の安定性に優れ、不可逆容量も少ない黒鉛が好ましい。合金系材料としては、リチウムと合金形成可能な金属を少なくとも1種類含むものが挙げられ、具体的には、ケイ素、スズ、ケイ素合金、スズ合金、ケイ素化合物、スズ化合物などが挙げられる。
(結着剤)
 結着剤としては、例えば、スチレンーブタジエンゴムを用いることができるが、特に限定されない。
(導電剤)
 導電剤としては、カーボンナノチューブ(CNT)、CNT以外の炭素繊維、導電性粒子(例えば、カーボンブラック、黒鉛)などが挙げられる。
(増粘剤)
 増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその変性体(Na塩などの塩も含む)、メチルセルロースなどのセルロース誘導体(セルロースエーテルなど);ポリビニルアルコールなどの酢酸ビニルユニットを有するポリマーのケン化物;ポリエーテル(ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイドなど)などが挙げられる。
<セパレータ>
 セパレータは、正極と負極との間に介在する。セパレータは、イオン透過度が高く、適度な機械的強度および絶縁性を備えている。セパレータとしては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータの材質には、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが用いられる。セパレータは、少なくとも一方の表層部に耐熱絶縁層を有してもよい。耐熱絶縁層は、無機酸化物フィラーを主成分(例えば80質量%以上)として含んでもよく、耐熱性樹脂を主成分(例えば40質量%以上)として含んでもよい。耐熱性樹脂には、芳香族ポリアミド(アラミド)などのポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などを用いてもよい。
<電解質>
 電解質は、液状電解質(電解液)でもよく、ゲル状電解質でもよく、固体電解質でもよい。液状電解質(電解液)としては、例えば、リチウムイオン伝導性の非水電解質が用いられる。非水電解質は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩を含む。非水電解質におけるリチウム塩の濃度は、例えば、0.5mol/L以上2mol/L以下である。非水電解質は、公知の添加剤を含有してもよい。
 ゲル状電解質は、リチウム塩とマトリックスポリマー、あるいは、リチウム塩と非水溶媒とマトリックスポリマーとを含む。マトリックスポリマーとしては、例えば、非水溶媒を吸収してゲル化するポリマー材料が使用される。ポリマー材料としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。
 固体電解質は、無機固体電解質でもよい。無機固体電解質としては、例えば、全固体リチウムイオン二次電池などで公知の材料(例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質など)が使用される。
 非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 リチウム塩としては、例えば、塩素含有酸のリチウム塩(LiClO4、LiAlCl4、LiB10Cl10など)、フッ素含有酸のリチウム塩(LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2など)、フッ素含有酸イミドのリチウム塩(LiN(SOF)、LiN(CF3SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiN(C25SO22など)、リチウムハライド(LiCl、LiBr、LiIなど)などが挙げられる。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<二次電池の構造>
 リチウムイオン二次電池の構造の一例としては、正極および負極がセパレータを介して巻回されてなる電極群が非水電解質と共に外装体に収容された構造が挙げられる。ただし、これに限られず、他の形態の電極群が適用されてもよい。例えば、正極と負極とがセパレータを介して積層された積層型の電極群でもよい。電池の形態も限定されず、例えば、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型などであればよい。
 以下、二次電池の構造を、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の一例である円筒形の非水系二次電池10の縦断面図である。ただし、本開示は以下の構成に限定されるものではない。
 二次電池10は、電極群18と、電解液(図示せず)と、これらを収容する有底円筒形の電池缶22とを具備する。電池缶22の開口部にガスケット21を介して封口体11がかしめ固定されている。これにより電池内部が密閉されている。封口体11は、弁体12と、金属板13と、弁体12と金属板13との間に介在する環状の絶縁部材14と、を具備する。弁体12と金属板13は、それぞれの中心部において、互いに接続されている。正極板15から導出された正極リード15aは、金属板13に接続されている。よって、弁体12は、正極の外部端子として機能する。負極板16から導出された負極リード16aは、電池缶22の底部内面に接続されている。電池缶22の開口端の近傍には環状溝部22aが形成されている。電極群18の一方の端面と環状溝部22aとの間には、第1絶縁板23が配置されている。電極群18の他方の端面と電池缶22の底部との間には、第2絶縁板24が配置されている。電極群18は、正極板15と負極板16とをセパレータ17を介して捲回して形成されている。
<正極の製造方法>
 本開示の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の正極は、以下のようにして製造される。当該電池において、第2金属酸化物は、第1金属酸化物の表面の少なくとも一部に付着している。
 正極活物質層を形成する工程は、正極集電体の表面に第1金属酸化物(活物質粒子)を担持させて前駆体層を形成する担持工程と、前駆体層を圧延する圧延工程と、第2金属酸化物に含まれる金属元素Mを含む気相に活物質粒子を曝して、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆するように第2金属酸化物を含む被膜を形成する被膜形成工程と、を具備する。圧延工程と被膜形成工程の順序は特に限定されない。圧延工程を行ってから被膜形成工程を行ってもよく、被膜形成工程を行ってから圧延工程を行ってもよい。以下では正極活物質層を形成する工程について、後者の例により更に説明する。
(I)担持工程(S1)
 前駆体層は、正極合剤の構成成分を分散媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。正極合剤は、必須成分として、正極活物質の粒子を含み、任意成分として、結着剤、増粘剤などを含み得る。
 分散媒としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、またはこれらの混合溶媒などが例示できる。
(II)被膜形成工程(S2)
 次に、正極集電体に担持された活物質粒子、すなわち前駆体層を、金属元素Mを含む気相に曝す。これにより、活物質粒子の表面の少なくとも一部に、金属元素Mの酸化物(第2金属酸化物)を含む被膜が形成される。第2金属酸化物を含む被膜を形成するとき、前駆体層の正極活物質の密度は2.2g/cm以上3.2g/cm以下が好ましく、2.5g/cm以上3.0g/cm以下がより好ましい。
 気相法としては、例えば、CVD法、ALD法、PVD法などが挙げられる。特に、比較的低温で酸化物被膜を形成できる点で、ALD法が好ましい。ALD法によれば、200℃以下(更には170℃以下もしくは150℃以下)の雰囲気で第2金属酸化物を含む被膜を形成することができる。
 ALD法では、対象物(ここでは前駆体層)が配置された反応室に、気化されたプリカーサ(原料ガス)と酸化剤とが交互に供給される。これにより、活物質粒子の表面に第2金属酸化物を含む被膜が形成される。
 ALD法では、自己停止(Self-limiting)作用が機能するため、金属元素Mは原子層単位で対象物の表面に堆積する。ALD法では、原料ガスの供給(パルス)→原料ガスの排気(パージ)→酸化剤の供給(パルス)→酸化剤の排気(パージ)を1サイクルとしたサイクル数により、第2金属酸化物を含む被膜の全体的な厚みは制御される。
 プリカーサは、金属元素Mを含む有機金属化合物である。プリカーサとしては、従来、ALD法で用いられている各種の有機金属化合物を使用することができる。
 金属元素MがTiであるとき、Tiを含むプリカーサとしては、例えば、ビス(t-ブチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)ジクロライド(C1826l2Ti)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(IV)([(CHN]Ti、TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(IV)([(CN]Ti)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(IV)(Ti[N(C)(CH)])、チタン(IV)(ジイソプロポキサイドービス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート(Ti[OCC(CHCHCOC(CH](OC)、四塩化チタン(TiCl)、チタン(IV)イソプロポキシド(Ti[OCH(CH)、チタン(IV)エトキシド(Ti[O(C)])が挙げられる。Alを含むプリカーサとしては、例えば、トリメチルアルミニウム((CHAl、TMA)が挙げられる。
 原料ガスは、複数種のプリカーサを含んでいてもよい。反応室には、異なる種類のプリカーサが同時にあるいは順に供給されてもよい。あるいは、原料ガスに含まれるプリカーサの種類をサイクルごとに変えてもよい。
 酸化剤としては、従来、ALD法で用いられている酸化剤を使用することができ、例えば、水、酸素、オゾンなどが挙げられる。酸化剤は、酸化剤を原料とするプラズマとして反応室に供給されてもよい。
 第2金属酸化物を含む被膜が形成される限り、ALD法の条件は特に限定されない。プリカーサまたは酸化剤を含む雰囲気の温度は、10℃以上200℃以下であってよく、25℃以上200℃以下であってよく、100℃以上200℃以下であってよく、120℃以上200℃以下であってよく、120℃以上170℃以下でもよく、120℃以上150℃以下でもよい。同様の観点から、処理中の反応室の圧力は、1×10-5Pa以上1×10Pa以下であってよく、1×10-4Pa以上1×10Pa以下であってよい。
 反応室内のプリカーサまたは酸化剤を含む雰囲気の温度が10℃以上200℃以下(例えば、120℃以上200℃以下もしくは120℃以上170℃以下)であり、処理中の反応室の圧力が1×10-5Pa以上1×10Pa以下であるとき、原料ガスのパルス時間は、0.01秒以上であってよく、0.05秒以上であってよい。原料ガスのパルス時間は、5秒以下であってよく、3秒以下であってもよい。
 上記の担持工程S1と被膜形成工程S2を行った後、更に、担持工程S1を行ってもよい。例えば、第2金属酸化物を含む被膜を有する活物質粒子を含む第1正極合剤層を正極集電体に近接するように配置し、第2金属酸化物を含む被膜を有さない活物質粒子を含む第2正極合剤層を第1正極合剤層上に配置した正極活物質層を形成してもよい。また、その後、さらに、被膜形成工程S2を行ってもよい。
(III)圧延工程(S3)
 第2金属酸化物を含む被膜が活物質粒子の表面に形成された前駆体層(すなわち、正極活物質層)を圧延してもよい。圧延の条件は特に限定されず、正極活物質層が所定の厚みあるいは密度になるように適宜設定すればよい。正極活物質層の正極活物質の密度は、例えば2.5g/cm以上4.0g/cm以下が好ましく、3.3g/cm以上3.7g/cm以下でもよい。
 なお、上記では正極集電体に担持された活物質粒子に対して第2金属酸化物を含む被膜を形成する方法を説明したが、第2金属酸化物を含む被膜が形成された活物質粒子を含む正極スラリーを正極集電体の表面に塗布等することによっても、本開示に係る正極材料を有する二次電池用正極を得ることができる。
 第2金属酸化物を含む被膜で被覆された活物質粒子は、固相合成法、液相合成法、化学気相成長法(CVD法)、原子層堆積法(ALD法)、物理気相成長法(PVD法)などにより作製することができる。
 以下、本開示を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
[正極の作製]
 活物質粒子を構成する正極活物質(第1金属酸化物)には、層状岩塩型の結晶構造を有し、かつリチウムとNiとを含む複合酸化物N(LiNi0.85Co0.10Al0.052)を用いた。レーザー回折散乱法により測定した活物質粒子の体積基準の粒度分布におけるメディアン径D1は、13μmであった。正極集電体として、厚み15μmのアルミニウム箔を準備した。
 活物質粒子(D1=13μm)と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、95:2.5:2.5の質量比で含む正極合剤にNMPを添加して攪拌し、正極スラリーを調製した。
(I)担持工程(S1)
 正極集電体であるアルミニウム箔の表面に正極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の両面に正極活物質層の前駆体層を形成した。
(II)被膜形成工程(S2)
 正極集電体と前駆体層との積層体(正極前駆体)を所定の反応室に収容し、ALD法により、下記手順に従って、第2金属酸化物を含む被膜で、前駆体層内の活物質粒子の表面の一部を被覆した。
 正極前駆体が収容されている反応室に、Tiの供給源となるプリカーサであるテトラキス(ジメチルアミノ)チタン(IV)(TDMAT)を気化させて供給した。パルス時間は、0.1秒とした。反応室におけるプリカーサを含む雰囲気の温度は150℃、圧力は260Paに制御した。30秒後、正極前駆体の表面がプリカーサの単分子層で覆われたものとして、余分なプリカーサを窒素ガスでパージした。
 次に、正極前駆体が収容されている反応室に、酸化剤(HO)を気化させて供給した。パルス時間は、0.015秒とした。酸化剤を含む雰囲気の温度は150℃、圧力は260Paに制御した。30秒後、余分な酸化剤を窒素ガスでパージした。
 プリカーサの供給、パージ、酸化剤の供給、パージからなる一連の操作(ALDサイクル)を60回繰り返すことにより、第2金属酸化物を含む被膜として、Tiを含む酸化物被膜を形成した。
 酸化物被膜を、SEM、XAFSおよびXPSを用いて分析した。酸化物被膜の平均の厚みは、3nmであった。酸化物被膜はTiを含んでおり、Ti3+とTi4+との原子数比:Ti3+/Ti4+は1.34であった。また、酸化物TiOのxは1.71であった。XPS解析は、表面汚染炭素の内殻1sスペクトルのピークを284.6eVと決め、帯電補正した上で酸素1sスペクトルを用いて行った。フィッティング関数としてガウス関数を用いたピークフィッティングにおいて、530.4eV、530.8eVを中心とするピークがそれぞれ4価のチタン、3価のチタンに対応するとし、その面積比を用いて平均チタン価数を算出した。
(III)圧延工程(S3)
 次に、活物質粒子の表面に第2金属酸化物を含む被膜を形成した前駆体層(すなわち正極活物質層)を圧延して、圧延後の正極活物質層の正極活物質の密度を3.6g/cmとなるように調整した。圧延後の正極全体の厚みは160μmであった。
[負極の作製]
 負極活物質である黒鉛と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)とを、96:2:2の質量比で含む負極合剤に水を添加して攪拌し、負極スラリーを調製した。次に、負極集電体である銅箔の表面に負極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して、銅箔の両面に負極活物質層を形成した。負極活物質層の負極活物質の密度は1.6g/cmとなるように調整した。負極全体の厚みは170μmであった。
[非水電解質の調製]
 エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒にLiPF6を1.0mol/L濃度で溶解させて非水電解質を調製した。
[二次電池の作製]
 各電極にタブをそれぞれ取り付け、タブが最外周部に位置するように、セパレータを介して正極および負極を渦巻き状に巻回することにより電極群を作製した。電極群をアルミニウムラミネートフィルム製の外装体内に挿入し、105℃で2時間真空乾燥した後、電解液を注入し、外装体の開口部を封止して二次電池A1を得た。
《比較例1》
 酸化物被膜の形成を行わなかったこと以外、実施例1と同様にして正極と二次電池B1を作製した。
《比較例2》
 被膜形成工程S2において、ALDサイクルを200℃で20回繰り返したこと以外、実施例1と同様にして正極と二次電池B2を作製した。酸化物被膜の平均の厚みは、1nmであった。酸化物被膜はTiを含んでおり、被膜を形成する酸化物TiOのxは2であった。TiはTi4+のみを含み、Ti3+は含まなかった。
《比較例3》
 被膜形成工程S2において、ALDサイクルを200℃で60回繰り返したこと以外、実施例1と同様にして正極と二次電池B3を作製した。酸化物被膜の平均の厚みは、3nmであった。酸化物被膜はTiを含んでおり、被膜を形成する酸化物TiOのxは2であった。TiはTi4+のみを含み、Ti3+は含まなかった。
《比較例4》
 被膜形成工程S2において、ALDサイクルを200℃で100回繰り返したこと以外、実施例1と同様にして正極と二次電池B4を作製した。酸化物被膜の平均の厚みは、5nmであった。酸化物被膜はTiを含んでおり、被膜を形成する酸化物TiOのxは2であった。TiはTi4+のみを含み、Ti3+は含まなかった。
[評価]
 実施例および比較例で得られた二次電池について、下記のようにして釘刺し試験を行い、評価を行った。結果を表1に示す。
(釘刺し試験)
(a)25℃の環境下で、0.3Cの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで電池を充電し、その後、引き続き、電流値が0.05Cになるまで定電圧充電した。
(b)25℃の環境下で、(a)で充電した電池の中央部に、丸釘(直径2.7mm)の先端を接触させ、1mm/秒の速度で突き刺し、内部短絡による電池電圧降下(Δ50mV)を検出した直後に、丸釘の突き刺しを停止した。電池が短絡して1分後の電池の表面温度を測定した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1より、150℃で酸化物被膜を形成した電池A1では、酸化物被膜を形成していない電池B1と比較して、表面温度が1/2以下にまで低下した。また、200℃で酸化物被膜を形成した電池B2~B4では、電池A1と比較して到達表面温度が高くなっていた。
 電池B2~B4は、酸化物被膜中にTiが含まれずTiOのみが存在していた。電池A1は、TiOよりも高温で電気抵抗の高いTiを酸化物被膜中に多く含んでいたため、他の電池と比較して表面温度が低下したと考えられる。電気抵抗の異なるTiOおよびTiを含む酸化物被膜によって、発熱後にも、活物質粒子の電気抵抗が維持されたことがわかる。
 本開示に係る二次電池用正極およびこれを含む二次電池は、移動体通信機器、携帯電子機器、電気自動車などの主電源に有用である。
 本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
 10 二次電池
 11 封口体
 12 弁体
 13 金属板
 14 絶縁部材
 15 正極板
 15a 正極リード
 16 負極板
 16a 負極リード
 17 セパレータ
 18 電極群
 21 ガスケット
 22 電池缶
 22a 溝部
 23 第1絶縁板
 24 第2絶縁板
 31 正極集電体
 32 正極活物質層
 30 酸化物被膜を有する活物質粒子
 33 活物質粒子
 37 酸化物被膜
 
 
 

Claims (8)

  1.  正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の電解質を具備し、
     前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極活物質層と、を備え、
     前記正極活物質層は、正極活物質である第1金属酸化物と、前記第1金属酸化物とは異なる第2金属酸化物と、を備え、
     前記第1金属酸化物は、リチウム含有遷移金属酸化物を含み、
     前記第2金属酸化物に含まれる金属元素Mは、互いに異なる価数の原子m1と原子m2を含み、
     前記原子m1と前記原子m2とは同一元素であり、
     前記金属元素Mは、Al、Ti、Si、Zr、Mg、Nb、Ta、Sn、Ni、VおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、
     前記原子m1の酸化物および前記原子m2の酸化物は、電気抵抗の温度依存性が異なる、二次電池。
  2.  前記金属元素Mが、少なくともTiを含む、請求項1に記載の二次電池。
  3.  前記金属元素Mが、3価のTi原子(Ti3+)および4価のTi原子(Ti4+)を含み、
     前記Ti3+と前記Ti4+との原子数比:Ti3+/Ti4+が、1.3以上3以下である、請求項1または2に記載の二次電池。
  4.  前記第2金属酸化物が、TiO(x=1.5以上2未満)で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
  5.  前記第2金属酸化物が、前記第1金属酸化物の表面の少なくとも一部を被覆する被膜を形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
  6.  前記被膜の厚みが、30nm以下である、請求項5に記載の二次電池。
  7.  前記被膜の厚みが、10nm以下である、請求項5または6に記載の二次電池。
  8.  前記第2金属酸化物に含まれる金属元素Mの量が、前記第1金属酸化物に含まれるLiを除く金属元素の総量に対して0.03モル%以上10モル%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
     
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