WO2023106298A1

WO2023106298A1 - ポンプの渦抑制部材、ポンプ、およびポンプ設備

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Publication number: WO2023106298A1
Application number: PCT/JP2022/044956
Authority: WO
Inventors: 領太繁原; ▲キン▼ 辛
Original assignee: 株式会社クボタ
Priority date: 2021-12-06
Filing date: 2022-12-06
Publication date: 2023-06-15
Also published as: JP2023083629A

Abstract

ポンプのベルマウスに取付けられる渦抑制部材１２である。渦抑制部材１２は、ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延びる、横断面円弧状に湾曲した湾曲壁３０と、湾曲壁３０に設けられた仕切壁３２，３３と、湾曲壁３０と仕切壁３２とで囲まれ且つ上下両方向が開放された中空体とを有する。仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａが湾曲壁３０の上端部３０ａよりも下位にある。

Description

ポンプの渦抑制部材、ポンプ、およびポンプ設備

　本発明は、ポンプの吸込み口における渦の発生を抑制する、ポンプの渦抑制部材と、渦抑制部材を備えたポンプと、このポンプを吸水槽に備えたポンプ設備とに関する。

　図２７に示すように、例えば雨水等の水２０１は、ポンプ場の吸水槽２０２に流入し、立軸ポンプ２０３によって吸い上げられたうえで、吸水槽２０２から下流側の処理施設に送られる。標準的な吸水槽２０２は一対の側壁面と後壁面２０５と底面２０６とを有する。ポンプ２０３の吸込口２０８は、吸水槽２０２内に設けられて後壁面２０５の手前側に位置する。

　ポンプ２０３を運転することにより、吸水槽２０２内の水２０１は、吸込口２０８からポンプ２０３内に流入し、ポンプ２０３内を通って下流側の処理施設に送られる。ポンプ２０３を運転しているとき、吸水槽２０２内に水中渦２１１と空気吸込渦２１２とが発生することがある。

　水中渦２１１は、吸水槽２０２の底面２０６や側壁面から発生した渦流の圧力が蒸気圧以下に低下した状態で吸込口２０８に吸い込まれる渦である。空気吸込渦２１２は、水面から吸込口２０８に向かって発生した渦流が水面上の空気を連行して吸込口２０８に吸い込まれる渦である。

　このような水中渦２１１や空気吸込渦２１２が吸込口２０８からポンプ２０３内に吸い込まれると、ポンプ２０３の運転中に、激しい振動や大きな騒音が発生する虞がある。

　水中渦２１１や空気吸込渦２１２の発生を抑制するために、吸水槽２０２の後壁面２０５や底面２０６に渦流防止板（図示省略）を設置する一般的な技術がある。このような技術以外に、例えば図２８，図２９に示すように、立軸ポンプ２０３のベルマウス２２１に渦抑制部材２２０を取り付けることがある。

　渦抑制部材２２０は、下向きに開口したベルマウス２２１の下端部に接合される取付フランジ２２２と、取付フランジ２２２から下方に延び、横断面がベルマウスと同心状の円弧状に湾曲した湾曲壁２２３と、湾曲壁２２３の周方向における両端部間に設けられた、下方へ延びる平板状のバッフル板２２４とを有している。湾曲壁２２３とバッフル板２２４とで上下両方向に開口する中空体２２５が形成されている。

　ポンプ２０３を運転している際、流れＦ１，Ｆ１´が発生する。流れＦ１，Ｆ１´は、水面付近の上流側からポンプ２０３の側方を通過し、ポンプ２０３の背後から吸水槽２０２の後壁面２０５に沿って下降した後、吸込口２０８に吸い込まれる。渦抑制部材２２０の湾曲壁２２３は、流れＦ１，Ｆ１´に対する抵抗となる。

　この抵抗のため、水面付近の水２０１の流れＦ１の速度Ｖ１が遅くなり、ポンプ２０３のケーシング２２６の背後から後壁面２０５に沿って下降する下降流Ｆ１´の速度が低下する。それにより、吸込口２０８付近の渦度が小さくなるため、水中渦の発生が抑制される。

　吸水槽２０２の底面２０６付近の流れＦ２は、手前上流側２１４からポンプ２０３に接近して吸込口２０８に流れ込む。この際、吸込口２０８に流れ込む直前の水２０１がバッフル板２２４にぶつかることにより、旋回流の発生が妨げられて、水中渦の発生が効果的に抑制される。

　上記のように、渦抑制部材２２０の湾曲壁２２３が、ケーシング２２６の背後から後壁面２０５に沿って下降する下降流Ｆ１´に対する抵抗となる。これにより、ケーシング２２６の手前上流側２１４の水面付近から下降して吸込口２０８に吸い込まれる流れＦ３が増加し、またケーシング２２６の背後から後壁面２０５に沿って下降する下降流Ｆ１´が弱まる。このため、空気吸込渦の発生も抑制される。

　これらにより、運転中のポンプ１から激しい振動や大きな騒音が発生するのを防止することができる。

　上記のような渦抑制部材２２０は例えば、ＪＰ２０１９－１５７８０８Ａに記載されている。

　上記の公知の構成では、立軸ポンプ２０３の運転時の流量は、所定流量に定められている。しかし、例えば、立軸ポンプ２０３の径を変更せずに流量を所定流量より増やして運転した場合、水中渦や空気吸込渦の発生を十分に抑制することは難しくなる。その結果、水中渦や空気吸込渦が発生してしまう虞がある。

　本発明は、水中渦や空気吸込渦の発生を十分に抑制することができる、ポンプの渦抑制部材、ポンプ、およびポンプ設備を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するために、本発明の一局面は、ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁と、
　湾曲壁と仕切壁とで囲まれ且つ上下両方向が開放された中空体とを有し、
　仕切壁の上端部が湾曲壁の上端部よりも下位にある。

　これによると、渦抑制部材がベルマウスに取り付けられ、渦抑制部材の湾曲壁が吸水槽の後壁面に対向された状態で、ポンプが運転される。ポンプが運転されると、湾曲壁は、手前上流側からポンプの側方を通過し、ポンプの背後から後壁面に沿って下降した後、吸込口に吸い込まれる流れ（水面付近の流れ）に対する抵抗となる。このため、吸水槽の後壁面側から吸込口に吸い込まれる水量が、吸水槽の手前上流側から吸込口に吸い込まれる水量よりも少なくなる。このように、湾曲壁が、ポンプの背後から後壁面に沿って下降する流れに対する抵抗となることで、ポンプの手前上流側の水面付近から下降して吸込口に吸い込まれる流れが増加して、上記ポンプの背後から後壁面に沿って下降する流れが弱まる。このため、空気吸込渦の発生が抑制される。

　仕切壁の上端部が湾曲壁の上端部よりも下位にあるため、ポンプの手前上流側から仕切壁の上方を通って中空体の内側に流れ込む流量が増加し、その増加の分だけ、ポンプの背後から吸水槽の後壁面に沿って下降する流れがさらに弱まる。これによって、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　吸水槽の底面付近の流れが手前上流側からポンプに接近して仕切壁にぶつかることにより、旋回流の発生が妨げられ、水中渦の発生が抑制される。

　本発明の他の局面は、ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁とを有し、
　湾曲壁と仕切壁とによって、上下両方向が開放された中空体が形成され、
　仕切壁の下端部が湾曲壁の下端部よりも上位にある。

　これによると、仕切壁の下端部が湾曲壁の下端部よりも上位にあるため、ポンプの手前上流側から仕切壁の下方を通って中空体の内側に流れ込む流量が増加し、その増加の分だけ、ポンプの背後から吸水槽の後壁面に沿って下降する流れがさらに弱まる。これによって、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　本発明のさらに他の局面は、ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁とを有し、
　湾曲壁と仕切壁とによって、上下両方向が開放された中空体が形成され、
　仕切壁に、中空体の内外両側に開通する開口又は切欠が形成されている。

　これによると、中空体の内外両側に開通する開口又は切欠が仕切壁に形成されているため、ポンプの手前上流側から仕切壁の開口又は切欠を通って中空体の内側に流れ込む流量が増加し、その増加の分だけ、ポンプの背後から吸水槽の後壁面に沿って下降する流れがさらに弱まる。これによって、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　また、吸水槽の底面付近の流れが手前上流側からポンプに接近して仕切壁にぶつかることにより、旋回流の発生が妨げられ、水中渦の発生が抑制される。

　本発明の渦抑制部材によれば、吸込口の下方に対向する底板が仕切壁に取り付けられ、底板はベルマウスの軸心の延長線上に配置されていることが好適である。

　これによると、水中渦はベルマウスの軸心の延長線付近に発生し易いので、底板をベルマウスの軸心の延長線上に配置することによって、水中渦の発生を十分に抑制することができる。

　本発明の渦抑制部材によれば、湾曲壁の下端部に、中空体の内側へ張り出した下部張り出し部材が設けられていることが好適である。

　これによると、吸水槽の水の一部が水面からポンプの背後の後壁面に沿って下降した後、渦抑制部材の中空体の内側を通って吸込口に吸い込まれるまでの流れの距離は、下部張り出し部材を設けていない場合と比べて、下部張り出し部材の張り出し幅に相当する距離分だけ余分に長くなる。これにより、水が吸水槽の後壁面側から渦抑制部材の中空体の内側を通って吸込口へ流れるときの抵抗が増加し、後壁面側から吸込口に吸い込まれる流量がさらに減少して、ポンプの背後から後壁面に沿って下降する流れがさらに弱まる。このため、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　本発明のポンプは、上記した渦抑制部材を備えたポンプであって、渦抑制部材がベルマウスに取り付けられている。

　本発明のポンプ設備は、上記ポンプを吸水槽に備えたポンプ設備である。このポンプ設備は、ベルマウスの吸込口が吸水槽内に設けられて吸水槽の後壁面の手前側にあり、渦抑制部材の湾曲壁が吸水槽の後壁面に対向している。

　本発明によると、水中渦や空気吸込渦の発生を十分に抑制することができる。

本発明の第１の実施の形態におけるポンプの側面図である。図１におけるＸ－Ｘ断面図である。図１におけるポンプのベルマウスと渦抑制部材との接合部分の拡大断面図である。図１におけるポンプの渦抑制部材を斜め上から見た図である。図１におけるポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図１におけるポンプの渦抑制部材の平面図である。図６におけるＸ－Ｘ断面図である。図６におけるポンプの渦抑制部材の底面図である。図７におけるＸ－Ｘ矢視図である。ポンプを運転しているときの吸水槽における水流と近寄流速分布とを示す図である。本発明の第２の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図１１のポンプの渦抑制部材の断面図である。本発明の第３の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め上から見た図である。図１３のポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図１３のポンプの渦抑制部材の断面図である。本発明の第４の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め上から見た図である。図１６のポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図１６のポンプの渦抑制部材の断面図である。本発明の第５の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め上から見た図である。図１９のポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図１９のポンプの渦抑制部材の平面図である。図２１におけるＸ－Ｘ断面図である。図２１のポンプの渦抑制部材の底面図である。本発明の第６の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。図２４のポンプの渦抑制部材の断面図である。本発明の第７の実施の形態におけるポンプの渦抑制部材を斜め下から見た図である。公知のポンプと吸水槽の概略図である。公知の渦抑制部材を備えたポンプを運転しているときの吸水槽における水流と近寄流速分布とを示す図である。公知の渦抑制部材を斜め下から見た図である。

　（第１の実施の形態）
　第１の実施の形態では、図１，図２に示すように、ポンプ場に設置されたポンプ設備１は、吸水槽２と、吸水槽２に流入した雨水等の水３を吸い上げて下流側の処理施設に送るポンプ１０とを有している。

　吸水槽２は、標準流速オープン形であり、左右一対の側壁面５と後壁面７と底面８とを有する。水３は、ポンプ１０の手前上流側９からポンプ１０に流入する。

　ポンプ１０は、立軸ポンプであり、ポンプ本体１１と渦抑制部材１２とを有している。

　ポンプ本体１１は、鉛直方向に延びるケーシング１４と、ケーシング１４内に挿通された回転自在な主軸１５と、主軸１５と共に回転する羽根車１６と、主軸１５を回転させる回転駆動装置１７とを有している。

　ケーシング１４は、直管状の揚水管１９と、揚水管１９の下端に連結されたポンプケース２０と、ポンプケース２０の下端に連結されたベルマウス２１と、揚水管１９の上端に連結された吐出エルボ２２とを有している。図１，図３に示すように、ベルマウス２１は、下端に、吸込口２３とフランジ２４とを有している。吸込口２３は、吸水槽２内に設けられて、後壁面７の手前側（上流側）に位置する。

　図４～図９に示すように、渦抑制部材１２は、ベルマウス２１の下端部に対して着脱自在に接続されている。渦抑制部材１２は、ベルマウス２１の吸込口２３の周縁部の一部から下方に延び、横断面が吸込口２３と同心状の円弧状に湾曲した湾曲壁３０と、湾曲壁３０の上端部に設けられた円環状の取付フランジ３１（取付部材の一例）と、湾曲壁３０の内側を仕切る２枚（複数枚）の仕切壁３２，３３と、仕切壁３２，３３を介して湾曲壁３０に支持される底板３４と、湾曲壁３０の下端部に設けられた下部張り出し部材４１とを有している。

　図１，図２に示すように、湾曲壁３０は吸水槽２の後壁面７に対向している。また、図３に示すように、取付フランジ３１は、複数本のボルト３６によって、着脱自在にベルマウス２１のフランジ２４に接合されている。

　両仕切壁３２，３３はそれぞれ平行に配列された平板状の部材であり、このうち、第１仕切壁３２は湾曲壁３０の周方向３７における両端部間に設けられている。これにより、湾曲壁３０と第１仕切壁３２とで囲まれ且つ上下両方向が開放された中空体３８が形成されている。第２仕切壁３３は、中空体３８の内側に設けられて、湾曲壁３０に取り付けられている。

　図７に示すように、第１および第２仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａがそれぞれ湾曲壁３０の上端部３０ａよりも下位になるとともに、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂがそれぞれ湾曲壁３０の下端部３０ｂと同じ高さになるように、これら仕切壁３２，３３の高さが設定されている。

　底板３４は、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂ間に取り付けられた四角形状の平板である。底板３４は、ベルマウス２１の吸込口２３の下方に対向し、ベルマウス２１の軸心４０の延長線上に配置されている。

　下部張り出し部材４１は、湾曲壁３０の径方向における内側（すなわち中空体３８の内側）へ張り出している。下部張り出し部材４１は、ベルマウス２１の軸心方向（上下方向）から見て、Ｃ字形状に形成されている。

　底板３４は、ベルマウス２１の軸心方向から見て、ベルマウス２１の吸込口２３の輪郭よりも内側にある。これらによって、湾曲壁３０よりも下方から湾曲壁３０と底板３４との間を通って湾曲壁３０の上方へ抜ける流通路４２ａ，４２ｂ，４２ｃが形成されている。

　以下、上記構成にもとづく機能を説明する。

　ポンプ１０を運転することにより、羽根車１６（図１参照）が回転する。すると、吸水槽２内の水３が、ベルマウス２１の吸込口２３からケーシング１４内に吸い込まれ、吐出エルボ２２を通って下流側の処理施設に送られる。この際、図１０に示すように、渦抑制部材１２の湾曲壁３０は流れＦ１，Ｆ１´に対する抵抗となるため、水面付近の水３の流れＦ１の速度Ｖ１が遅くなり、ケーシング１４の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´の速度が低下する。これにより、吸込口２３付近の渦度が小さくなり、水中渦の発生が抑制される。

　吸水槽２の底面８付近の流れＦ２は、手前上流側９からポンプ１０に接近して吸込口２３に流れ込む。この際、吸込口２３に流れ込む直前の水３が第１および第２仕切壁３２，３３の少なくともいずれかにぶつかることにより、旋回流の発生が妨げられて、水中渦の発生がより一層効果的に抑制される。

　水中渦はベルマウス２１の軸心４０の延長線付近に発生し易い。このため、底板３４をベルマウス２１の軸心４０の延長線上に配置することによって、水中渦の発生を十分に抑制することができる。

　上述したように渦抑制部材１２の湾曲壁３０が下降流Ｆ１´に対する抵抗となることで、図１０に示すように、ケーシング１４の手前上流側９の水面付近から下降して吸込口２３に吸い込まれる流れＦ３が増加し、上記ケーシング１４の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´が弱まる。このため、空気吸込渦の発生も抑制される。

　吸水槽２の水３の一部は、水面からポンプ１０の背後の後壁面７に沿って下降した後、図４，図５に示すように、渦抑制部材１２の中空体３８の内側（すなわち流通路４２ａ，４２ｂ，４２ｃ）を通って、ベルマウス２１の吸込口２３に吸い込まれる。この際、図７に示すように、流通路４２ａを通って吸込口２３に吸い込まれるまでの流れの距離は、下部張り出し部材４１を設けていない場合（後述する第２の実施の形態の図１２を参照）と比べて、湾曲壁３０の径方向における下部張り出し部材４１の張り出し幅Ｗに相当する距離だけ余分に長くなる。これにより、水３が後壁面７側から中空体３８の内側を通って吸込口２３へ流入するときの抵抗が増加する。その結果、後壁面７側から吸込口２３に吸い込まれる流量がさらに減少し、ポンプ１０の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まるため、空気吸込渦の発生がより一層抑制される。

　図７に示すように、渦抑制部材１２の第１および第２仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａを湾曲壁３０の上端部３０ａよりも下位にしている。このため、ポンプ１０の手前上流側９から第１又は第２仕切壁３２，３３の上方を通って中空体３８の内側に流れ込む水の流量が増加する。その増加の分だけ、ポンプ１０の背後から吸水槽２の後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。これにより、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　吸水槽２の水３の一部は、渦抑制部材１２の湾曲壁３０の下方から流通路４２ａ，４２ｂ，４２ｃを通ってポンプ１０の吸込口２３に流入する際、湾曲壁３０と底板３４との間を下から上へ通過する。これにより、ポンプ１０の吸込口２３の下方を渦抑制部材１２の底板３４で覆い過ぎて圧力損失が過大になる（すなわちポンプ効率が低下する）のを防ぐことができる。或いは、渦抑制部材１２の手前上流側９の局所の流速が上がり過ぎて別の箇所に渦が発生するのを防ぐことができる。

　これにより、例えばポンプ１０の径を変更せずに流量を所定流量より増やして運転した場合であっても、水中渦や空気吸込渦の発生を十分に抑制することができる。その結果、運転中のポンプ１０から激しい振動や大きな騒音が発生するのを防止することができる。

　（第２の実施の形態）
　先述した第１の実施の形態では、図７に示すように、下部張り出し部材４１を湾曲壁３０の下端部に設けている。これに対し、第２の実施の形態では、図１１，図１２に示すように、下部張り出し部材４１を設けていない。

　これによると、下部張り出し部材４１を設けたことによる作用および効果を除いて、先述した第１の実施の形態と同様の作用および効果が得られる。

　（第３の実施の形態）
　先述した第１の実施の形態では、図７，図８に示すように底板３４と下部張り出し部材４１とは分離している。これに対し、第３の実施の形態では、図１３～図１５に示すように、底板３４と下部張り出し部材４１とは一体に繋がっている。下部張り出し部材４１は、ベルマウス２１の軸心方向（上下方向）から見て、扇形状に形成されている。湾曲壁３０の下端部と第２仕切壁３３の下端部とで囲まれた扇形状の領域は下部張り出し部材４１によって閉鎖されている。

　第１および第２仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａがそれぞれ湾曲壁３０の上端部３０ａよりも下位になっているとともに、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂがそれぞれ湾曲壁３０の下端部３０ｂと同じ高さになっている。

　湾曲壁３０の下方から湾曲壁３０と底板３４との間を通って湾曲壁３０の上方へ抜ける流通路４２ｂ，４２ｃが形成されている。

　これによると、第１の実施の形態の図４で示した流通路４２ａは、下部張り出し部材４１によって閉鎖されている。このため、吸水槽２の水３の一部は、水面からポンプ１０の背後の後壁面７に沿って下降した後、渦抑制部材１２の流通路４２ａではなく、図１３～図１５に示すように流通路４２ｂ，４２ｃを通ってベルマウス２１の吸込口２３に吸い込まれる。従って、中空体３８の内側を通って吸込口２３に吸い込まれるまでの流れの距離は、下部張り出し部材４１を設けていない場合（上述した第２の実施の形態の図１２を参照）と比べて、前後方向における下部張り出し部材４１の張り出し幅Ｗに相当する距離だけ余分に長くなる。

　これにより、水３が後壁面７側から中空体３８の内側を通って吸込口２３へ流入するときの抵抗が増加し、後壁面７側から吸込口２３に吸い込まれる流量がさらに減少し、ポンプ１０の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。このため、空気吸込渦の発生がより一層抑制される。

　先述した第１の実施の形態と同様に、水中渦の発生もより一層抑制される。

　（第４の実施の形態）
　図１６～図１８に示すように、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂがそれぞれ湾曲壁３０の下端部３０ｂよりも上位になっている。第１および第２仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａは、それぞれ湾曲壁３０の上端部３０ａとほぼ同じ高さになっている。底板３４は、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂどうしの間に設けられている。

　湾曲壁３０の下方から湾曲壁３０と底板３４との間を通って湾曲壁３０の上方へ抜ける流通路４２ａ，４２ｂ，４２ｃが形成されている。底板３４は、下部張り出し部材４１よりも高い位置に設けられている。

　これによると、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂを湾曲壁３０の下端部３０ｂよりも上位にしているため、ポンプ１０の手前上流側９から第１又は第２仕切壁３２，３３の下方を通って中空体３８の内側に流れ込む流量が増加する。その増加した分、ポンプ１０の背後から吸水槽２の後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。これにより、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　吸水槽２の水３の一部は、水面からポンプ１０の背後の後壁面７に沿って下降した後、渦抑制部材１２の流通路４２ａ，４２ｂ，４２ｃを通ってベルマウス２１の吸込口２３に吸い込まれる。この際、図１８に示すように、流通路４２ａを通って吸込口２３に吸い込まれるまでの流れの距離は、下部張り出し部材４１を設けていない場合（上述した第２の実施の形態の図１２を参照）と比べて、前後方向における下部張り出し部材４１の張り出し幅Ｗに相当する距離だけ余分に長くなる。これにより、水３が後壁面７側から中空体３８の内側を通って吸込口２３へ流入するときの抵抗が増加する。このため、後壁面７側から吸込口２３に吸い込まれる流量がさらに減少して、ポンプ１０の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。その結果、空気吸込渦の発生がより一層抑制される。

　（第５の実施の形態）
　図１９～図２３に示すように、湾曲壁３０の内側を仕切る１枚（単数枚）の仕切壁６０が湾曲壁３０に設けられている。これにより、湾曲壁３０と仕切壁６０とで囲まれ且つ上下両方向が開放された中空体３８が形成されている。

　底板３４は略長方形の平板である。底板３４の両短辺縁３４ａは湾曲壁３０の内側に取り付けられている。底板３４の片方の長辺縁３４ｂは、仕切壁６０の下端部６０ｂに取り付けられている。

　底板３４は下部張り出し部材４１よりも高い位置に設けられている。仕切壁６０の上端部６０ａは湾曲壁３０の上端部３０ａとほぼ同じ高さになっている。仕切壁６０の下端部６０ｂは湾曲壁３０の下端部３０ｂよりも上位になっている。

　湾曲壁３０の下方から湾曲壁３０と底板３４との間を通って湾曲壁３０の上方へ抜ける流通路４２が形成されている。

　これによると、仕切壁６０の下端部６０ｂを湾曲壁３０の下端部３０ｂよりも上位にしているため、吸水槽２の手前上流側９から底板３４の下方および仕切壁６０の下方を通って中空体３８の内側に流れ込む流量が増加し、その分、ポンプ１０の背後から吸水槽２の後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。これにより、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　図２２に示すように、吸水槽２の水３の一部が水面からポンプ１０の背後の後壁面７に沿って下降した後、渦抑制部材１２の流通路４２を通ってベルマウス２１の吸込口２３に吸い込まれるまでの流れの距離は、下部張り出し部材４１を設けていない場合（上述した第２の実施の形態の図１２を参照）と比べて、前後方向における下部張り出し部材４１の張り出し幅Ｗに相当する距離だけ余分に長くなる。これにより、水３が後壁面７側から中空体３８の内側を通って吸込口２３へ流入するときの抵抗が増加する。このため、後壁面７側から吸込口２３に吸い込まれる流量がさらに減少して、ポンプ１０の背後から後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。その結果、空気吸込渦の発生がより一層抑制される。

　（第６の実施の形態）
　図２４，図２５に示すように、第１および第２仕切壁３２，３３の上端部３２ａ，３３ａがそれぞれ湾曲壁３０の上端部３０ａとほぼ同じ高さであり、第１および第２仕切壁３２，３３の下端部３２ｂ，３３ｂがそれぞれ湾曲壁３０の下端部３０ｂと同じ高さである。第１および第２仕切壁３２，３３には、それぞれ、中空体３８の内外両側に開通する開口６１が形成されている。

　これによると、ポンプ１０の手前上流側９から第１および第２仕切壁３２，３３の各開口６１を通って中空体３８の内側に流れ込む流量が増加する。その増加の分、ポンプ１０の背後から吸水槽２の後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。これにより、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。

　上記においては、第１および第２仕切壁３２，３３にそれぞれ開口６１を形成している。しかし、開口６１を第１仕切壁３２のみに形成してもよい。

　（第７の実施の形態）
　先述した第６の実施の形態では、図２４に示すように、第１および第２仕切壁３２，３３に開口６１を形成している。第７の実施の形態では、開口６１の代わりに、図２６に示すように、第１および第２仕切壁３２，３３に切欠６２を形成している。

　これによると、吸水槽２の手前上流側９から第１および第２仕切壁３２，３３の各切欠６２を通って中空体３８の内側に流れ込む流量が増加する。その増加の分だけ、ポンプ１０の背後から吸水槽２の後壁面７に沿って下降する下降流Ｆ１´がさらに弱まる。これにより、空気吸込渦の発生が十分に抑制される。
　上記においては、第１および第２仕切壁３２，３３にそれぞれ切欠６２を形成している。しかし、切欠６２は、第１仕切壁３２のみに形成してもよい。

　上記各実施の形態では、図３に示すように、ボルト３６を用いて渦抑制部材１２をベルマウス２１の下端部に着脱自在に装着している。しかし、渦抑制部材１２を溶接等によってベルマウス２１の下端部に一体的に取り付けてもよい。この場合、渦抑制部材１２の湾曲壁３０に取付フランジ３１を設けずに、渦抑制部材１２の湾曲壁３０の上端部をベルマウス２１の下端部に溶接してもよい。

　上記各実施の形態では、底板３４は矩形状である。しかし、底板３４は、円形、楕円形、四角形以外の多角形等の形状であってもよい。

　上記各実施の形態では、底板３４は、湾曲壁３０の下端部３０ｂの位置に対して同一又は下端部３０ｂよりも上方位置に設けられている。しかし、底板３４は、下端部３０ｂよりも下方の位置に設けられていてもよい。

　上記各実施の形態では、ポンプ１０に渦抑制部材１２を取り付けた状態で仕切壁３２，３３，６０が鉛直姿勢となっている。しかし、吸水槽２の手前上流側９からの流れをポンプ１０の吸込口２３に導くように、仕切壁３２，３３，６０の全体又は一部が傾斜していてもよい。

　上記各実施の形態では、仕切壁３２，３３，６０が平板状である。しかし、仕切壁３２，３３，６０は、その全体又は一部に湾曲部や屈曲部を備えていてもよい。

Claims

ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁と、
　湾曲壁と仕切壁とで囲まれ且つ上下両方向が開放された中空体とを有し、
　仕切壁の上端部が湾曲壁の上端部よりも下位にあることを特徴とする渦抑制部材。
ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁とを有し、
　湾曲壁と仕切壁とによって、上下両方向が開放された中空体が形成され、
　仕切壁の下端部が湾曲壁の下端部よりも上位にあることを特徴とする渦抑制部材。
ポンプにおける下向きに開口したベルマウスに取付られる渦抑制部材であって、
　前記渦抑制部材は、
　ベルマウスの吸込口の周縁部における周方向の一部から下方に延び横断面円弧状に湾曲した湾曲壁と、
　湾曲壁に設けられた仕切壁とを有し、
　湾曲壁と仕切壁とによって、上下両方向が開放された中空体が形成され、
　仕切壁に、中空体の内外両側に開通する開口又は切欠が形成されていることを特徴とする渦抑制部材。
吸込口の下方に対向する底板が仕切壁に取り付けられ、底板はベルマウスの軸心の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の渦抑制部材。
湾曲壁の下端部に、中空体の内側へ張り出した下部張り出し部材が設けられていることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の渦抑制部材。
上記請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の渦抑制部材を備えたポンプであって、渦抑制部材がベルマウスに取り付けられていることを特徴とするポンプ。
上記請求項６に記載のポンプを吸水槽に備えたポンプ設備であって、ベルマウスの吸込口が吸水槽内に設けられて吸水槽の後壁面の手前側にあり、渦抑制部材の湾曲壁が吸水槽の後壁面に対向していることを特徴とするポンプ設備。