本願発明は、スクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機、特に薄型化を可能としたスクロール型遠心送風機の構造に関するものである。
例えば図16および図17に示すように、後板41および前板43を有し、前板43側にベルマウス構造の空気吸込口6、後板41と前板43との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、該渦形通路7の延長方向下流端に空気吹出口8を形成したスクロール構造のファンケーシング4を備えてなる遠心送風機1の場合、一般にその羽根車2は、主板11とシュラウド(側板)12との間に多数枚の羽根13,13・・・を配設して構成されており、同羽根13,13・・・両側からの空気流の洩れをなくすために、羽根13,13・・・の両側は、上記シュラウド12および主板11によって閉塞されている。
そして、このような構成の羽根車2が、上記ベルマウス構造の空気吸込口6、羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、渦形通路7の延長方向に開口した空気吹出口8等を有するスクロール構造のファンケーシング4内に羽根車駆動モータ14のモータ軸14aを介して回転可能に収納されており、同羽根車駆動モータ14によって矢印方向に回転駆動されると、上記空気吸込口6から吸込んだ空気を羽根13,13・・・間を介してスクロール構造のファンケーシング4内の渦形通路7内に吹出し、その後、空気吹出口8部分から外部に吹き出すようになっている(特許文献1の図9〜図11参照)。
このように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設された構造の遠心送風機1にあっては、例えば図17中の矢印に示すように主流流れA1が上記主板11に沿って流れるので、該主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅(スパン方向の長さ)の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したものでは、特に上記流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
このような空力騒音増大の原因となる主板11内面部の境界層の発達を抑制するためには、羽根13,13・・・の主板11との対応部(主板11側端部)を開放することが有効であり、羽根幅/羽根外径比の大きな遠心送風機などの場合には、例えば図18および図19に示すように、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部をファンケーシング4の後板41側に開放させて主板11の内面における境界層の影響を排除するとともに、羽根13,13・・・の主板側端部外周部に補強用の環状部材16を設けた遠心送風機が提案されている(特許文献1の図3を参照)。
ところが、そのような構成の遠心送風機の場合、たしかに主板11の表面における境界層の影響を排除することができるものの、羽根13,13・・・の主板側端部が開放されていることから、例えば図19に示すように、主流流れA1の一部が上記環状部材16の表面のコアンダ効果によって、上記環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れA2を生じる。この場合、上記羽根13,13・・・の主板11側が広く開口しているので、同逆流流れA2が上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って羽根車2の中心方向に深く流入し、上記主板11側に開放された上記羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の内面側へ再流入し、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れA1と干渉してその流れを乱し、結果的に送風騒音が増大することになり、折角の主板11の内面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、本願発明では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、同逆流流れが上記主板側に開放された羽根端部から上記主板の内面側へ再流入することを防止することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしたスクロール型の遠心送風機を提供することを目的とするものである。
本願発明では、上述の問題を解決するために、次のような課題解決手段を採用している。
(1) 請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、ファンモータ、該ファンモータによって回転駆動される円形の主板、該主板の外周部に対して、周方向に所定の間隔を保ち、かつ該主板側の端部を開放させた状態で配設された多数枚の羽根、該多数枚の羽根の上記主板側端部の外周面に設けられた環状部材よりなる遠心羽根車と、該遠心羽根車を回転可能に収納し、該遠心羽根車の上記主板側に後板、反主板側に空気吸込口を有するスクロール型のファンケーシングとを備えてなる遠心送風機であって、上記ファンケーシングの後板内側には、上記遠心羽根車の主板側に開放され、かつ上記環状部材の外周を包囲する円形の凹部空間が設けられていることを特徴としている。
したがって、上記構成の場合、上記環状部材外表面のコアンダ効果により当該環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から羽根間へ再流入する逆流流れは、当該環状部材の外側を包囲する上記円形の凹部空間の内周壁面によって上記環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上記羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、同逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
また、上記のようにファンケーシング後板の上記円形の凹部空間によって上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減され、上記該逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(2) 請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹部空間は、ファンケーシング後板の板厚内に設けられた円形の凹溝部により形成されていることを特徴としている。
したがって、このような構成の場合、環状部材外表面のコアンダ効果により、環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れは、ファンケーシング後板の板厚内に設けられ、同環状部材の外側を包囲する上記円形の凹溝部の内周壁面によって同環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上記羽根車の中心側へ大きく流れることなく、当該環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、当該逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のように、ファンケーシング後板の板厚内に形成された円形の凹溝部によって上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が効果的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(3) 請求項3の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項2の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹溝部の開口縁部外周は、スクロール通路の後板側通路壁面に連続していることを特徴としている。
このような構成では、上記ファンケーシング後板のスクロール通路側側壁面と上記主板の内側面を、上記羽根車の軸方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それら両者の対向隙間を通って上記環状部材の周りを循環する逆流流れの流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
(4) 請求項4の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹部空間は、ファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合、上記請求項1および2の発明の場合と同様に、環状部材外表面のコアンダ効果により環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れは、環状部材の外側を包囲するようにファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁内側の円形の凹部空間の内周壁面によって、上記環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁内側の円形の凹部空間によって上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減され、上記逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が効果的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(5) 請求項5の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項4の発明の課題解決手段の構成において、環状の筒状壁の外周面部は、主板側からファンケーシング後板方向にかけて径が拡大する傾斜面となっていることを特徴としている。
このように筒状壁の外周面が主板側からファンケーシング後板方向にかけて径が拡大する傾傾斜面になっていると、上述した主流が同傾斜面に沿って一層スムーズに吹き出されるようになる。
(6) 請求項6の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記1,2,3,4又は5の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていることを特徴としている。
以上の各発明の構成は、上記遠心羽根車が、上記各羽根の先端側端面にシュラウドが設けられた構成であっても、このシュラウドの存在に影響されることなく、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウド付の羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(7) 請求項7の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記1,2,3,4又は5の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていないことを特徴としている。
以上の構成は、上記遠心羽根車が、上記羽根の先端側端面にシュラウドが設けられていない構成であっても、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウドのない羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(8) 請求項8の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、ファンケーシングの空気吸込口側又は空気吹出口側に空気調和手段を配置し、空気調和機用の送風機として構成したことを特徴としている。
以上の請求項1〜7の各発明の課題解決手段の構成によると、それらの各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた空気調和機を提供することができるようになる。
以上の結果、本願発明の構成および作用によると、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができる。
以下、本願発明の構成および作用効果を、いくつかの好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
<第1の実施形態>
先ず図1〜図3には、本願発明の第1の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。この遠心送風機1は、主板11の外周とシュラウド(側板)12との間に所定の間隔で多数枚の羽根13,13・・・を配設した遠心羽根車(以下、単に羽根車という)2と、該羽根車2を羽根車駆動モータ14およびその駆動軸14aを介して回転可能に収納したスクロール構造のファンケーシング4とを備えて構成されている。
上記羽根車2の主板11は、所定径の円板体の中心部分を一方の側面側へ断面台形状に膨出させるとともに、この膨出部の中心部分にボス15を設けて構成されている。なお、この膨出部裏面側(反膨出面側)の空室部分は、後述するファンケーシング4の後板41に取付けられる羽根車駆動モータ14の配置スペースとなっており、その中心部分には羽根車駆動モータ14が設けられている。
上記主板11の端部外周面11bには、多数枚の羽根13,13・・・が、その内周側縁部13aの基端部(図示上方側端部)13c部分を同外周面11bに対して連結することにより一体化され、同内周側縁部13aから外周側縁部13bにかけて回転方向後方側へ傾斜した状態で取り付けられている。
そして、この実施の形態の場合、これら各羽根13,13・・・の基端部13cは、その外周縁部13b部分に設けられた略矩形の断面形状をもつ環状部材16によって周方向に順次連結されている。また、上記各羽根13,13・・・の先端部(図示下方側端部)13dの端面13fの外周縁部13b寄り部位には入口側の径が小さく、出口側の径が大きい環状のシュラウド12が一体に取り付けられている。これら環状部材16とシュラウド12によって、上記各羽根13,13・・・が補強されており、それによって羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eがファンケーシング後板41側に開放された特有の構成でありながら、高い強度性能が確保されるようになっている。
また、上記羽根13,13・・・は、その基端部13c側端面13eが、上記主板11の外側面11cと面一となるように主板11に対する取付位置が設定されている。また、上記環状部材16は、その羽根幅方向の一方の面(上面)16aが上記羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eおよび主板11の外周部側外壁面11cと略面一となるように、該羽根13,13・・・に対する取付位置が設定されているとともに、その羽根幅方向の他方の面(下面)16bが次に述べるファンケーシング後板41の外周部側内壁面41aおよび主板11の外周部内壁面11aと略面一となるように寸法設定されている。
ファンケーシング4は、前述の図16〜図19に示したものと同様に、前板43側スクロール中心位置にベルマウス構造の空気吸込口6、前板43と後板41との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形の送風通路7、該渦形の送風通路7の延長方向終端側に舌部4aを介してホーン状に開口した空気吹出口8をそれぞれ有して構成されており、上記渦形の送風通路7の渦中心部分に上記羽根車駆動モータ14の駆動軸14aが位置する状態で、上記羽根車2が回転可能に設けられている。
一方、ファンケーシング4の後板41は、その他の部分(前板43や周壁板44)よりも板厚を大きくして構成されており、その羽根車2との外径対応部には主板側に向けて開放されるとともに所定の深さ背面側に凹まされて、内周壁面42aと底壁面42bとを備え、上記羽根車2の環状部材16の外周囲を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42が設けられている。そして、この円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の開口部外周縁の外側部分は、上記渦形の送風通路7の背面壁を構成する後板内壁面41aに連続して空気吹出口8方向へ延出されている。
そして、上記羽根車駆動モータ14によって上記羽根車2が回転駆動されると、上記ベルマウス構造の空気吸込口6から吸込んだ空気を、羽根13,13・・・間を介して、上記ファンケーシング4の渦形の送風通路7内に吹出し、その後、同渦形の送風通路7を介して減速しながら空気吹出口8から均一に外部に吹き出するようになっている。
ところで、すでに述べたように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設され、羽根13,13・・・の主板11側端部が主板11によって閉塞されている構造の遠心送風機1(前述の図16、図17のものを参照)にあっては、主流流れA1が主板11に沿って流れるので、主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する(前述の図17の説明を参照)。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したようなものでは、その流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
そこで、先ず、この実施の形態では、そのような空力騒音増大の原因となる上記主板11内面部の境界層の発達を抑制するために、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部を、図示のように上記ファンケーシング4の後板41側に開放させて、上記主板11の表面における境界層の影響を排除するようにしているとともに、上記羽根13,13・・・の主板11側端部外周部に補強用の環状部材16を設けている。
このような構成にすると、上記主板11の表面における境界層の影響は排除することができる。しかし、今度は上記羽根13,13・・・の主板11側端部13c,13cが開放されていることから、主流流れA1の一部が上記環状部材16表面のコアンダ効果によって同環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れ(図19のA2を参照)を生じ、この逆流流れが上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って深く流入、すなわち上記主板11側に開放された羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の中心部近くへ再流入することになり、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れ(図19のA1参照)と干渉してその流れを乱し、送風騒音が増大することになり、折角の主板11の表面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、さらに、この実施の形態では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、しかも同逆流流れが上記主板11側に開放された羽根13,13・・・の主板側端部13c,13c・・・から上記主板11の内面側へ再流入するのを防止する構成を採用することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしている。
すなわち、本実施の形態では、上述のようにファンケーシング4の後板41の内側には、上記遠心羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板側環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が設けられている。
したがって、このような構成の場合、上記環状部材16の外表面のコアンダ効果により当該環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から羽根13,13・・・間へ再流入しようとする逆流流れA2は、図3に示すように当該環状部材16の外側を包囲する上記円形の凹部空間42の内周壁面42aによって上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上述した逆流流れA2は、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、同逆流流れA2が本来の主流流れA1と干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
また、上記のようにファンケーシング4の後板41の上記円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ上記逆流流れA2の流量そのものが低減することができるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が、さらに有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
しかも、この実施の形態における上記円形の凹部空間42は、上述のようにファンケーシング4の後板41の板厚をその他の部分に比べて所定値以上に大きくし、同板厚内に円形の所定の深さの凹溝部を形成することにより形成されている。
このような構成の場合、上記環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、ファンケーシング4の後板41の板厚内に設けられ、同環状部材16の外側を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の内周壁面42aによって同環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用の相乗的な働きによって、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、当該環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小径の循環流A2となり、当該逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、そのように、ファンケーシング4の後板41の板厚を利用して円形の凹溝部を形成し、同円形の凹溝部により円形の凹部空間42を形成するようにした場合、同円形の凹部空間42の開口部外周縁から半径方向外方に広がる面がファンケーシング4の後板41の内壁面41aに連続し、渦形通路7方向下流側へ延びる通路側壁面となる。
したがって、このような構成の場合、上記ファンケーシング4の後板41の内壁面41aと上記主板11の内側面11aおよび環状部材16の他方面16bの各々を、上記羽根車2の軸直交方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それらの対向隙間を通って上記環状部材16の周りを循環する逆流流れA2の流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
この場合において、上記環状部材16の外周部後板41側のコーナー部が、図3のようにアール面になっていると、よりスムーズに循環流が形成される。
<第2の実施形態>
次に図4および図5には、本願発明の第2の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なるのは、上記第1の実施形態の遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・の外周の環状部材16を略矩形の断面形状をもつように構成していたのに対して、この実施形態の遠心送風機1では、該環状部材16の断面形状を、図5に拡大して示すように、外周側が円弧面で、内周側がフラットな略半球状のもに構成した点である。
このように、上記環状部材16の断面形状を外周側が凸の略半球状のものとした場合には、図示の如く上述した逆流流れA2の上記環状部材16周りへの回り込みが、より一層スムーズになり、それだけコアンダ効果が促進され、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合よりもさらに高い静粛性能が実現される。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図4及び図5の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第3の実施形態>
次に図6及び図7には、本願発明の第3の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この遠心送風機1も、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なる点は、次のような羽根車2の構成のみにある。
すなわち、第1の相違点は、上記第1の実施形態における遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・を上記主板11の外周側端面11bに対してのみ取付けていたのに対して、この実施の形態の遠心送風機1では、上記主板11の外径寸法を拡大して、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eの略半分の位置まで延設させた点である。
このように構成すると、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eを主板11側において開放させて逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果と、上記主板11と各羽根13,13・・・との結合強度を高めることによる上記羽根車2の強度向上、耐久性、信頼性向上の各効果との両立が実現される。
第2の相違点は、上記第1の実施の形態における羽根車2は、シュラウド12を備えた構成(所謂、シュラウド付タイプ)であったのに対して、この実施形態の遠心送風機1は上記のような漏斗形状のシュラウド12を備えない構成(所謂、シュラウドレスタイプ)とした点である。
このような構成にすると、シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高め、可及的に送風騒音の低減効果を得ることができるようになるので、本願発明の遠心送風機1への適用性が向上することになる。
第3の相違点は、羽根13,13・・・先端部13d,13d・・・の補強用として羽根13,13・・・の反主板側端部13d,13d・・・の外周縁部13b,13b・・・部分に断面円形の補強リング18を取付けた点である。
このような構成にすると、上記シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果を確保しつつ、有効に上記羽根車2の強度、耐久性を向上し、その信頼性を高めることができる。
なお、その他の構成及び作用効果は上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同一であるので、図6及び図7の構成部材を、図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、第1の実施形態における該当説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第4の実施形態>
次に図8および図9には、本願発明の第4の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第1の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第4の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外にあって主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第1の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、該環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図8及び図9の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第5の実施形態>
次に図10および図11には、本願発明の第5の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第2の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第2の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第5の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第2の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れA2の流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第2の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図10及び図11の各構成部材を、上述した図4および図5の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第2の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第6の実施形態>
次に図12および図13には、本願発明の第6の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第3の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第3の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第6の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第3の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第3の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図12及び図13の各構成部材を、上述した図6および図7の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第3の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第7の実施形態>
次に図14には、本願発明の第7の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第6又は第7の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第6又は第7の実施形態のものが、ファンケーシング後板41の内面側に設けられた環状の筒状壁43の外周面が等径のものであるのに対し、この実施形態のものでは、同筒状壁43の外径が等径のものではなく主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾斜面に形成されていることを特徴としている。
このように筒状壁43の外周面が主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾傾斜面になっていると、上述した循環流Aにより境界層が解消され、空気吹出口8側斜流方向に吹出されて行く主流A1が後板41側でも可及的にスムーズに流れるようになる。
その結果、騒音低減効果が、より一層向上する。
<実施例>
今例えば上述の第1の実施の形態の構成の遠心送風機を試作(本実施例)し、前述の第1の従来例(1)(図16および図17)、第2の従来例(2)(図18および図19)のものとの比騒音レベルの測定データ差を各風量域において比較した結果が図15のグラフである。
この結果を見ると、本実施例の場合、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合でも従来形状に比べ、比騒音レベルが良好である。
また、従来形状に比べ、最高静圧効率はほぼ同等であるが、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合ではファン効率が良好である(主板側羽根部包囲→スクロール流路断面積が小→少風量域に好適化→所要軸動力が低減)。
つまり、同構成の遠心送風機によると、軸方向に2分割の金型成形が可能な形状で良好な騒音特性(比騒音レベル低減)を有する送風機を得ることができる。
そして、低風量域ではファン静圧効率が比較的有利(スクロール流路断面積が小→循環風量が小→所要軸動力小)であり、羽根出口幅が小さい扁平な遠心送風機において良好な性能を示すことがわかる。
これらの結果、本願発明では、例えば上記各実施の形態のスクロール型ファンケーシング4の空気吸込口側又は空気吹出口側に、例えば加湿ユニットや熱交換器等の所望の空気調和手段を配置すれば、所望の空気調和機を構成することができる。
したがって、以上の本願発明の各種実施の形態の構成によると、それら各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた所望の空気調和機を提供することができるようになる。
なお、本効果は、羽根内周側が羽根外周側にかけて回転方向前方側に傾斜したものでも、全く同様の効果が得られる。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の分解斜視図である。
同遠心送風機の要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第2の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第3の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第4の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第5の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第6の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第7の実施の形態に係る遠心送風機要部の構成と作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係るシュラウド付遠心送風機の最低比騒音レベルを、シュラウド付の2つの従来例(主板部を遮蔽した従来例1と主板部を開放した従来例2)と対比して示したグラフである。
第1の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
第2の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
符号の説明
1は遠心送風機、2は羽根車、4はファンケーシング、41はファンケーシング後板、6は空気吸込口、7は渦形通路、8は空気吹出口、11は主板、12はシュラウド、13は羽根、14は羽根車駆動モータ、42は円形の凹部空間、42aは内周面壁、43はファンケーシング前板、44は環状の筒状壁である。
本願発明は、スクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機、特に薄型化を可能としたスクロール型遠心送風機の構造に関するものである。
例えば図16および図17に示すように、後板41および前板43を有し、前板43側にベルマウス構造の空気吸込口6、後板41と前板43との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、該渦形通路7の延長方向下流端に空気吹出口8を形成したスクロール構造のファンケーシング4を備えてなる遠心送風機1の場合、一般にその羽根車2は、主板11とシュラウド(側板)12との間に多数枚の羽根13,13・・・を配設して構成されており、同羽根13,13・・・両側からの空気流の洩れをなくすために、羽根13,13・・・の両側は、上記シュラウド12および主板11によって閉塞されている。
そして、このような構成の羽根車2が、上記ベルマウス構造の空気吸込口6、羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、渦形通路7の延長方向に開口した空気吹出口8等を有するスクロール構造のファンケーシング4内に羽根車駆動モータ14のモータ軸14aを介して回転可能に収納されており、同羽根車駆動モータ14によって矢印方向に回転駆動されると、上記空気吸込口6から吸込んだ空気を羽根13,13・・・間を介してスクロール構造のファンケーシング4内の渦形通路7内に吹出し、その後、空気吹出口8部分から外部に吹き出すようになっている(特許文献1の図9〜図11参照)。
このように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設された構造の遠心送風機1にあっては、例えば図17中の矢印に示すように主流流れA1が上記主板11に沿って流れるので、該主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅(スパン方向の長さ)の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したものでは、特に上記流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
このような空力騒音増大の原因となる主板11内面部の境界層の発達を抑制するためには、羽根13,13・・・の主板11との対応部(主板11側端部)を開放することが有効であり、羽根幅/羽根外径比の大きな遠心送風機などの場合には、例えば図18および図19に示すように、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部をファンケーシング4の後板41側に開放させて主板11の内面における境界層の影響を排除するとともに、羽根13,13・・・の主板側端部外周部に補強用の環状部材16を設けた遠心送風機が提案されている(特許文献1の図3を参照)。
ところが、そのような構成の遠心送風機の場合、たしかに主板11の表面における境界層の影響を排除することができるものの、羽根13,13・・・の主板側端部が開放されていることから、例えば図19に示すように、主流流れA1の一部が上記環状部材16の表面のコアンダ効果によって、上記環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れA2を生じる。この場合、上記羽根13,13・・・の主板11側が広く開口しているので、同逆流流れA2が上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って羽根車2の中心方向に深く流入し、上記主板11側に開放された上記羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の内面側へ再流入し、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れA1と干渉してその流れを乱し、結果的に送風騒音が増大することになり、折角の主板11の内面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、本願発明では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、同逆流流れが上記主板側に開放された羽根端部から上記主板の内面側へ再流入することを防止することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしたスクロール型の遠心送風機を提供することを目的とするものである。
本願発明では、上述の問題を解決するために、次のような課題解決手段を採用している。
(1) 請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、ファンモータ、該ファンモータによって回転駆動される円形の主板、該主板の端部外周面部に対して、周方向に所定の間隔を保ち、かつ該主板側の端部外方を開放させた状態で配設された複数枚の羽根、該複数枚の羽根の上記主板側の端部の後縁側外周面部分に設けられた環状部材よりなる遠心羽根車と、該遠心羽根車を回転可能に収納し、該遠心羽根車の上記主板側に後板、反主板側に空気吸込口を有するスクロール型のファンケーシングとを備え、上記ファンケーシングの後板内側には、上記遠心羽根車の主板側に開放され、かつ上記環状部材の外周を包囲する円形の凹部空間が設けられていることを特徴としている。
したがって、上記構成の場合、上記複数枚の羽根の上記主板側の端部の後縁側外周面部分に設けられた環状部材外表面のコアンダ効果により、主板に沿って吹き出された後、当該環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から羽根間へ再流入しようとする逆流流れは、当該環状部材の外側を包囲する上記円形の凹部空間の内周壁面によって上記環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上記羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、同逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
また、上記のように、ファンケーシング後板の上記遠心羽根車の主板側に開放された円形の凹部空間によって、上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ羽根の開放端側から主板外周側の羽根間へ再流入しようとする逆流流れの流量そのものが低減される。その結果、上記該逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が、より有効に抑制される。
そして、それら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(2) 請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹部空間は、ファンケーシング後板の板厚内に設けられた円形の凹溝部により形成されていることを特徴としている。
したがって、このような構成の場合、環状部材外表面のコアンダ効果により、環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れは、ファンケーシング後板の板厚内に設けられ、同環状部材の外側を包囲する上記円形の凹溝部の内周壁面によって同環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上記羽根車の中心側へ大きく流れることなく、当該環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、当該逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のように、ファンケーシング後板の板厚内に形成された円形の凹溝部によって上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が効果的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(3) 請求項3の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項2の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹溝部の開口縁部外周は、スクロール通路の後板側通路壁面に連続していることを特徴としている。
このような構成では、上記ファンケーシング後板のスクロール通路側側壁面と上記主板の内側面を、上記羽根車の軸方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それら両者の対向隙間を通って上記環状部材の周りを循環する逆流流れの流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
(4) 請求項4の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹部空間は、ファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合、上記請求項1および2の発明の場合と同様に、環状部材外表面のコアンダ効果により環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れは、環状部材の外側を包囲するようにファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁内側の円形の凹部空間の内周壁面によって、上記環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板の板厚外に主板方向に突出して設けられた環状の筒状壁内側の円形の凹部空間によって上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減され、上記逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が効果的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
(5) 請求項5の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項4の発明の課題解決手段の構成において、環状の筒状壁の外周面部は、主板側からファンケーシング後板方向にかけて径が拡大する傾斜面となっていることを特徴としている。
このように筒状壁の外周面が主板側からファンケーシング後板方向にかけて径が拡大する傾傾斜面になっていると、上述した主流が同傾斜面に沿って一層スムーズに吹き出されるようになる。
(6) 請求項6の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記1,2,3,4又は5の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていることを特徴としている。
以上の各発明の構成は、上記遠心羽根車が、上記各羽根の先端側端面にシュラウドが設けられた構成であっても、このシュラウドの存在に影響されることなく、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウド付の羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(7) 請求項7の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記1,2,3,4又は5の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていないことを特徴としている。
以上の構成は、上記遠心羽根車が、上記羽根の先端側端面にシュラウドが設けられていない構成であっても、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウドのない羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(8) 請求項8の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、ファンケーシングの空気吸込口側又は空気吹出口側に空気調和手段を配置し、空気調和機用の送風機として構成したことを特徴としている。
以上の請求項1〜7の各発明の課題解決手段の構成によると、それらの各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた空気調和機を提供することができるようになる。
以上の結果、本願発明の構成および作用によると、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができる。
以下、本願発明の構成および作用効果を、いくつかの好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
<第1の実施形態>
先ず図1〜図3には、本願発明の第1の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。この遠心送風機1は、主板11の外周とシュラウド(側板)12との間に所定の間隔で多数枚の羽根13,13・・・を配設した遠心羽根車(以下、単に羽根車という)2と、該羽根車2を羽根車駆動モータ14およびその駆動軸14aを介して回転可能に収納したスクロール構造のファンケーシング4とを備えて構成されている。
上記羽根車2の主板11は、所定径の円板体の中心部分を一方の側面側へ断面台形状に膨出させるとともに、この膨出部の中心部分にボス15を設けて構成されている。なお、この膨出部裏面側(反膨出面側)の空室部分は、後述するファンケーシング4の後板41に取付けられる羽根車駆動モータ14の配置スペースとなっており、その中心部分には羽根車駆動モータ14が設けられている。
上記主板11の端部外周面11bには、多数枚の羽根13,13・・・が、その内周側縁部13aの基端部(図示上方側端部)13c部分を同外周面11bに対して連結することにより一体化され、同内周側縁部13aから外周側縁部13bにかけて回転方向後方側へ傾斜した状態で取り付けられている。
そして、この実施の形態の場合、これら各羽根13,13・・・の基端部13cは、その外周縁部13b部分に設けられた略矩形の断面形状をもつ環状部材16によって周方向に順次連結されている。また、上記各羽根13,13・・・の先端部(図示下方側端部)13dの端面13fの外周縁部13b寄り部位には入口側の径が小さく、出口側の径が大きい環状のシュラウド12が一体に取り付けられている。これら環状部材16とシュラウド12によって、上記各羽根13,13・・・が補強されており、それによって羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eがファンケーシング後板41側に開放された特有の構成でありながら、高い強度性能が確保されるようになっている。
また、上記羽根13,13・・・は、その基端部13c側端面13eが、上記主板11の外側面11cと面一となるように主板11に対する取付位置が設定されている。また、上記環状部材16は、その羽根幅方向の一方の面(上面)16aが上記羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eおよび主板11の外周部側外壁面11cと略面一となるように、該羽根13,13・・・に対する取付位置が設定されているとともに、その羽根幅方向の他方の面(下面)16bが次に述べるファンケーシング後板41の外周部側内壁面41aおよび主板11の外周部内壁面11aと略面一となるように寸法設定されている。
ファンケーシング4は、前述の図16〜図19に示したものと同様に、前板43側スクロール中心位置にベルマウス構造の空気吸込口6、前板43と後板41との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形の送風通路7、該渦形の送風通路7の延長方向終端側に舌部4aを介してホーン状に開口した空気吹出口8をそれぞれ有して構成されており、上記渦形の送風通路7の渦中心部分に上記羽根車駆動モータ14の駆動軸14aが位置する状態で、上記羽根車2が回転可能に設けられている。
一方、ファンケーシング4の後板41は、その他の部分(前板43や周壁板44)よりも板厚を大きくして構成されており、その羽根車2との外径対応部には主板側に向けて開放されるとともに所定の深さ背面側に凹まされて、内周壁面42aと底壁面42bとを備え、上記羽根車2の環状部材16の外周囲を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42が設けられている。そして、この円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の開口部外周縁の外側部分は、上記渦形の送風通路7の背面壁を構成する後板内壁面41aに連続して空気吹出口8方向へ延出されている。
そして、上記羽根車駆動モータ14によって上記羽根車2が回転駆動されると、上記ベルマウス構造の空気吸込口6から吸込んだ空気を、羽根13,13・・・間を介して、上記ファンケーシング4の渦形の送風通路7内に吹出し、その後、同渦形の送風通路7を介して減速しながら空気吹出口8から均一に外部に吹き出するようになっている。
ところで、すでに述べたように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設され、羽根13,13・・・の主板11側端部が主板11によって閉塞されている構造の遠心送風機1(前述の図16、図17のものを参照)にあっては、主流流れA1が主板11に沿って流れるので、主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する(前述の図17の説明を参照)。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したようなものでは、その流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
そこで、先ず、この実施の形態では、そのような空力騒音増大の原因となる上記主板11内面部の境界層の発達を抑制するために、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部を、図示のように上記ファンケーシング4の後板41側に開放させて、上記主板11の表面における境界層の影響を排除するようにしているとともに、上記羽根13,13・・・の主板11側端部外周部に補強用の環状部材16を設けている。
このような構成にすると、上記主板11の表面における境界層の影響は排除することができる。しかし、今度は上記羽根13,13・・・の主板11側端部13c,13cが開放されていることから、主流流れA1の一部が上記環状部材16表面のコアンダ効果によって同環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れ(図19のA2を参照)を生じ、この逆流流れが上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って深く流入、すなわち上記主板11側に開放された羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の中心部近くへ再流入することになり、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れ(図19のA1参照)と干渉してその流れを乱し、送風騒音が増大することになり、折角の主板11の表面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、さらに、この実施の形態では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、しかも同逆流流れが上記主板11側に開放された羽根13,13・・・の主板側端部13c,13c・・・から上記主板11の内面側へ再流入するのを防止する構成を採用することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしている。
すなわち、本実施の形態では、上述のようにファンケーシング4の後板41の内側には、上記遠心羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板側環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が設けられている。
したがって、このような構成の場合、上記環状部材16の外表面のコアンダ効果により当該環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から羽根13,13・・・間へ再流入しようとする逆流流れA2は、図3に示すように当該環状部材16の外側を包囲する上記円形の凹部空間42の内周壁面42aによって上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上述した逆流流れA2は、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、同逆流流れA2が本来の主流流れA1と干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
また、上記のようにファンケーシング4の後板41の上記円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ上記逆流流れA2の流量そのものが低減することができるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が、さらに有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
しかも、この実施の形態における上記円形の凹部空間42は、上述のようにファンケーシング4の後板41の板厚をその他の部分に比べて所定値以上に大きくし、同板厚内に円形の所定の深さの凹溝部を形成することにより形成されている。
このような構成の場合、上記環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、ファンケーシング4の後板41の板厚内に設けられ、同環状部材16の外側を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の内周壁面42aによって同環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用の相乗的な働きによって、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、当該環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小径の循環流A2となり、当該逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、そのように、ファンケーシング4の後板41の板厚を利用して円形の凹溝部を形成し、同円形の凹溝部により円形の凹部空間42を形成するようにした場合、同円形の凹部空間42の開口部外周縁から半径方向外方に広がる面がファンケーシング4の後板41の内壁面41aに連続し、渦形通路7方向下流側へ延びる通路側壁面となる。
したがって、このような構成の場合、上記ファンケーシング4の後板41の内壁面41aと上記主板11の内側面11aおよび環状部材16の他方面16bの各々を、上記羽根車2の軸直交方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それらの対向隙間を通って上記環状部材16の周りを循環する逆流流れA2の流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
この場合において、上記環状部材16の外周部後板41側のコーナー部が、図3のようにアール面になっていると、よりスムーズに循環流が形成される。
<第2の実施形態>
次に図4および図5には、本願発明の第2の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なるのは、上記第1の実施形態の遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・の外周の環状部材16を略矩形の断面形状をもつように構成していたのに対して、この実施形態の遠心送風機1では、該環状部材16の断面形状を、図5に拡大して示すように、外周側が円弧面で、内周側がフラットな略半球状のもに構成した点である。
このように、上記環状部材16の断面形状を外周側が凸の略半球状のものとした場合には、図示の如く上述した逆流流れA2の上記環状部材16周りへの回り込みが、より一層スムーズになり、それだけコアンダ効果が促進され、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合よりもさらに高い静粛性能が実現される。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図4及び図5の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第3の実施形態>
次に図6及び図7には、本願発明の第3の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この遠心送風機1も、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なる点は、次のような羽根車2の構成のみにある。
すなわち、第1の相違点は、上記第1の実施形態における遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・を上記主板11の外周側端面11bに対してのみ取付けていたのに対して、この実施の形態の遠心送風機1では、上記主板11の外径寸法を拡大して、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eの略半分の位置まで延設させた点である。
このように構成すると、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eを主板11側において開放させて逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果と、上記主板11と各羽根13,13・・・との結合強度を高めることによる上記羽根車2の強度向上、耐久性、信頼性向上の各効果との両立が実現される。
第2の相違点は、上記第1の実施の形態における羽根車2は、シュラウド12を備えた構成(所謂、シュラウド付タイプ)であったのに対して、この実施形態の遠心送風機1は上記のような漏斗形状のシュラウド12を備えない構成(所謂、シュラウドレスタイプ)とした点である。
このような構成にすると、シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高め、可及的に送風騒音の低減効果を得ることができるようになるので、本願発明の遠心送風機1への適用性が向上することになる。
第3の相違点は、羽根13,13・・・先端部13d,13d・・・の補強用として羽根13,13・・・の反主板側端部13d,13d・・・の外周縁部13b,13b・・・部分に断面円形の補強リング18を取付けた点である。
このような構成にすると、上記シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果を確保しつつ、有効に上記羽根車2の強度、耐久性を向上し、その信頼性を高めることができる。
なお、その他の構成及び作用効果は上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同一であるので、図6及び図7の構成部材を、図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、第1の実施形態における該当説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第4の実施形態>
次に図8および図9には、本願発明の第4の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第1の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第4の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外にあって主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第1の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、該環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図8及び図9の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第5の実施形態>
次に図10および図11には、本願発明の第5の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第2の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第2の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第5の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第2の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れA2の流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第2の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図10及び図11の各構成部材を、上述した図4および図5の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第2の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第6の実施形態>
次に図12および図13には、本願発明の第6の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第3の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第3の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第6の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第3の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第3の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図12及び図13の各構成部材を、上述した図6および図7の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第3の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第7の実施形態>
次に図14には、本願発明の第7の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第6又は第7の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第6又は第7の実施形態のものが、ファンケーシング後板41の内面側に設けられた環状の筒状壁43の外周面が等径のものであるのに対し、この実施形態のものでは、同筒状壁43の外径が等径のものではなく主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾斜面に形成されていることを特徴としている。
このように筒状壁43の外周面が主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾傾斜面になっていると、上述した循環流Aにより境界層が解消され、空気吹出口8側斜流方向に吹出されて行く主流A1が後板41側でも可及的にスムーズに流れるようになる。
その結果、騒音低減効果が、より一層向上する。
<実施例>
今例えば上述の第1の実施の形態の構成の遠心送風機を試作(本実施例)し、前述の第1の従来例(1)(図16および図17)、第2の従来例(2)(図18および図19)のものとの比騒音レベルの測定データ差を各風量域において比較した結果が図15のグラフである。
この結果を見ると、本実施例の場合、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合でも従来形状に比べ、比騒音レベルが良好である。
また、従来形状に比べ、最高静圧効率はほぼ同等であるが、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合ではファン効率が良好である(主板側羽根部包囲→スクロール流路断面積が小→少風量域に好適化→所要軸動力が低減)。
つまり、同構成の遠心送風機によると、軸方向に2分割の金型成形が可能な形状で良好な騒音特性(比騒音レベル低減)を有する送風機を得ることができる。
そして、低風量域ではファン静圧効率が比較的有利(スクロール流路断面積が小→循環風量が小→所要軸動力小)であり、羽根出口幅が小さい扁平な遠心送風機において良好な性能を示すことがわかる。
これらの結果、本願発明では、例えば上記各実施の形態のスクロール型ファンケーシング4の空気吸込口側又は空気吹出口側に、例えば加湿ユニットや熱交換器等の所望の空気調和手段を配置すれば、所望の空気調和機を構成することができる。
したがって、以上の本願発明の各種実施の形態の構成によると、それら各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた所望の空気調和機を提供することができるようになる。
なお、本効果は、羽根内周側が羽根外周側にかけて回転方向前方側に傾斜したものでも、全く同様の効果が得られる。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の分解斜視図である。
同遠心送風機の要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第2の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第3の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第4の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第5の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第6の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第7の実施の形態に係る遠心送風機要部の構成と作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係るシュラウド付遠心送風機の最低比騒音レベルを、シュラウド付の2つの従来例(主板部を遮蔽した従来例1と主板部を開放した従来例2)と対比して示したグラフである。
第1の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
第2の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
1は遠心送風機、2は羽根車、4はファンケーシング、41はファンケーシング後板、6は空気吸込口、7は渦形通路、8は空気吹出口、11は主板、12はシュラウド、13は羽根、14は羽根車駆動モータ、42は円形の凹部空間、42aは内周面壁、43はファンケーシング前板、44は環状の筒状壁である。
本願発明は、スクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機、特に薄型化を可能としたスクロール型遠心送風機の構造に関するものである。
例えば図16および図17に示すように、後板41および前板43を有し、前板43側にベルマウス構造の空気吸込口6、後板41と前板43との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、該渦形通路7の延長方向下流端に空気吹出口8を形成したスクロール構造のファンケーシング4を備えてなる遠心送風機1の場合、一般にその羽根車2は、主板11とシュラウド(側板)12との間に多数枚の羽根13,13・・・を配設して構成されており、同羽根13,13・・・両側からの空気流の洩れをなくすために、羽根13,13・・・の両側は、上記シュラウド12および主板11によって閉塞されている。
そして、このような構成の羽根車2が、上記ベルマウス構造の空気吸込口6、羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形通路7、渦形通路7の延長方向に開口した空気吹出口8等を有するスクロール構造のファンケーシング4内に羽根車駆動モータ14のモータ軸14aを介して回転可能に収納されており、同羽根車駆動モータ14によって矢印方向に回転駆動されると、上記空気吸込口6から吸込んだ空気を羽根13,13・・・間を介してスクロール構造のファンケーシング4内の渦形通路7内に吹出し、その後、空気吹出口8部分から外部に吹き出すようになっている(特許文献1の図9〜図11参照)。
このように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設された構造の遠心送風機1にあっては、例えば図17中の矢印に示すように主流流れA1が上記主板11に沿って流れるので、該主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅(スパン方向の長さ)の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したものでは、特に上記流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
このような空力騒音増大の原因となる主板11内面部の境界層の発達を抑制するためには、羽根13,13・・・の主板11との対応部(主板11側端部)を開放することが有効であり、羽根幅/羽根外径比の大きな遠心送風機などの場合には、例えば図18および図19に示すように、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部をファンケーシング4の後板41側に開放させて主板11の内面における境界層の影響を排除するとともに、羽根13,13・・・の主板側端部外周部に補強用の環状部材16を設けた遠心送風機が提案されている(特許文献1の図3を参照)。
ところが、そのような構成の遠心送風機の場合、たしかに主板11の表面における境界層の影響を排除することができるものの、羽根13,13・・・の主板側端部が開放されていることから、例えば図19に示すように、主流流れA1の一部が上記環状部材16の表面のコアンダ効果によって、上記環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れA2を生じる。この場合、上記羽根13,13・・・の主板11側が広く開口しているので、同逆流流れA2が上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って羽根車2の中心方向に深く流入し、上記主板11側に開放された上記羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の内面側へ再流入し、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れA1と干渉してその流れを乱し、結果的に送風騒音が増大することになり、折角の主板11の内面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、本願発明では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、同逆流流れが上記主板側に開放された羽根端部から上記主板の内面側へ再流入することを防止することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしたスクロール型の遠心送風機を提供することを目的とするものである。
本願発明では、上述の問題を解決するために、次のような課題解決手段を採用している。
(1) 請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、ファンモータ、該ファンモータによって回転駆動される円形の主板、該主板の端部外周面部に対して、周方向に所定の間隔を保ち、かつ該主板側の端部外方を後板側に開放させた状態で配設された複数枚の羽根、該複数枚の羽根の上記主板側の端部の後縁側外周面部分に設けられた環状部材よりなる遠心羽根車と、該遠心羽根車を回転可能に収納し、該遠心羽根車の上記主板側に後板、反主板側に空気吸込口を有するスクロール型のファンケーシングとを備え、上記環状部材は、上記主板の延長線上に位置し、かつ羽根車回転軸方向の寸法が上記主板の厚さと略等しい寸法に形成されているとともに、上記ファンケーシングの後板内側には、上記遠心羽根車の主板側に開放され、かつ上記環状部材の羽根車回転軸方向の寸法に対応した深さを有して、上記環状部材の外周を包囲する円形の凹部空間が設けられていることを特徴としている。
したがって、上記構成の場合、上記複数枚の羽根の上記主板側の端部の後縁側外周面部分に設けられた環状部材外表面のコアンダ効果により、主板に沿って吹き出された後、当該環状部材の裏面側へ回り込んで上記羽根の開放端側から羽根間へ再流入しようとする逆流流れは、当該環状部材の外側を包囲する上記円形の凹部空間の内周壁面によって上記環状部材の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上記羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな循環流となり、同逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
そして、上記のように、ファンケーシング後板の上記遠心羽根車の主板側に開放された円形の凹部空間によって、上記環状部材の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ羽根の開放端側から主板外周側の羽根間へ再流入しようとする逆流流れの流量そのものが低減される。その結果、上記該逆流流れが主流流れと干渉してその流れを乱す現象が、より有効に抑制される。
そして、それら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
しかも、上記構成の場合、上記環状部材は、上記主板の延長線上に位置し、かつ上記羽根車の回転軸方向の寸法が上記主板の厚さと略等しい寸法に形成されており、上記後板内側の円形の凹部空間も当該環状部材の羽根車回転軸方向の厚さに対応したものとなっているので、ファンケーシングの羽根車回転軸方向の寸法を大きくしなくて済む。
(2) 請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、円形の凹部空間が円形の凹溝部よりなり、同円形の凹溝部の開口縁部外周は、スクロール通路の後板側通路壁面に連続していることを特徴としている。
このような構成では、ファンケーシングの羽根車回転軸方向の寸法を大きくしなくて済むことはもちろん、上記ファンケーシング後板のスクロール通路側側壁面と上記主板の内側面を、上記羽根車の軸方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それら両者の対向隙間を通って上記環状部材の周りを循環する逆流流れの流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
(3) 請求項3の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は2の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていることを特徴としている。
以上の各発明の構成は、上記遠心羽根車が、上記各羽根の先端側端面にシュラウドが設けられた構成であっても、このシュラウドの存在に影響されることなく、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウド付の羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(4) 請求項4の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は2の発明の課題解決手段の構成において、羽根の反主板側端面にはシュラウドが設けられていないことを特徴としている。
以上の構成は、上記遠心羽根車が、上記羽根の先端側端面にシュラウドが設けられていない構成であっても、環状部材周りを循環する逆流流れに基づく騒音低減効果が得られ、シュラウドのない羽根車を備えてなる遠心送風機においても、その低騒音化が図られる。
(5) 請求項5の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1,2,3又は4の発明の課題解決手段の構成において、ファンケーシングの空気吸込口側又は空気吹出口側に空気調和手段を配置し、空気調和機用の送風機として構成したことを特徴としている。
以上の請求項1,2,3又は4の各発明の課題解決手段の構成によると、それらの各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた空気調和機を提供することができるようになる。
以上の結果、本願発明の構成および作用によると、上述した主流流れの乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができる。
以下、本願発明の構成および作用効果を、いくつかの好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
<第1の実施形態>
先ず図1〜図3には、本願発明の第1の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。この遠心送風機1は、主板11の外周とシュラウド(側板)12との間に所定の間隔で多数枚の羽根13,13・・・を配設した遠心羽根車(以下、単に羽根車という)2と、該羽根車2を羽根車駆動モータ14およびその駆動軸14aを介して回転可能に収納したスクロール構造のファンケーシング4とを備えて構成されている。
上記羽根車2の主板11は、所定径の円板体の中心部分を一方の側面側へ断面台形状に膨出させるとともに、この膨出部の中心部分にボス15を設けて構成されている。なお、この膨出部裏面側(反膨出面側)の空室部分は、後述するファンケーシング4の後板41に取付けられる羽根車駆動モータ14の配置スペースとなっており、その中心部分には羽根車駆動モータ14が設けられている。
上記主板11の端部外周面11bには、多数枚の羽根13,13・・・が、その内周側縁部13aの基端部(図示上方側端部)13c部分を同外周面11bに対して連結することにより一体化され、同内周側縁部13aから外周側縁部13bにかけて回転方向後方側へ傾斜した状態で取り付けられている。
そして、この実施の形態の場合、これら各羽根13,13・・・の基端部13cは、その外周縁部13b部分に設けられた略矩形の断面形状をもつ環状部材16によって周方向に順次連結されている。また、上記各羽根13,13・・・の先端部(図示下方側端部)13dの端面13fの外周縁部13b寄り部位には入口側の径が小さく、出口側の径が大きい環状のシュラウド12が一体に取り付けられている。これら環状部材16とシュラウド12によって、上記各羽根13,13・・・が補強されており、それによって羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eがファンケーシング後板41側に開放された特有の構成でありながら、高い強度性能が確保されるようになっている。
また、上記羽根13,13・・・は、その基端部13c側端面13eが、上記主板11の外側面11cと面一となるように主板11に対する取付位置が設定されている。また、上記環状部材16は、その羽根幅方向の一方の面(上面)16aが上記羽根13,13・・・の基端部13c側端面13eおよび主板11の外周部側外壁面11cと略面一となるように、該羽根13,13・・・に対する取付位置が設定されているとともに、その羽根幅方向の他方の面(下面)16bが次に述べるファンケーシング後板41の外周部側内壁面41aおよび主板11の外周部内壁面11aと略面一となるように寸法設定されている。
つまり、上記環状部材16は、上記主板11の半径方向外方の延長線上に位置し、かつ上記羽根車2回転軸方向の寸法が上記主板11の厚さと略等しい寸法に形成されている。
ファンケーシング4は、前述の図16〜図19に示したものと同様に、前板43側スクロール中心位置にベルマウス構造の空気吸込口6、前板43と後板41との間に羽根車2の回転方向に沿って次第に断面積が拡大する渦形の送風通路7、該渦形の送風通路7の延長方向終端側に舌部4aを介してホーン状に開口した空気吹出口8をそれぞれ有して構成されており、上記渦形の送風通路7の渦中心部分に上記羽根車駆動モータ14の駆動軸14aが位置する状態で、上記羽根車2が回転可能に設けられている。
一方、ファンケーシング4の後板41は、その他の部分(前板43や周壁板44)よりも板厚を大きくして構成されており、その羽根車2との外径対応部には主板11側に向けて開放されるとともに、上記環状部材16の羽根車2の回転軸方向の寸法に対応した所定の深さ背面側に凹まされて、内周壁面42aと底壁面42bとを備え、上記羽根車2の環状部材16の外周囲を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42が設けられている。そして、この円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の開口部外周縁の外側部分は、上記渦形の送風通路7の背面壁を構成する後板内壁面41aに連続して空気吹出口8方向へ延出されている。
そして、上記羽根車駆動モータ14によって上記羽根車2が回転駆動されると、上記ベルマウス構造の空気吸込口6から吸込んだ空気を、羽根13,13・・・間を介して、上記ファンケーシング4の渦形の送風通路7内に吹出し、その後、同渦形の送風通路7を介して減速しながら空気吹出口8から均一に外部に吹き出するようになっている。
ところで、すでに述べたように、主板11が羽根13,13・・・の外周まで延設され、羽根13,13・・・の主板11側端部が主板11によって閉塞されている構造の遠心送風機1(前述の図16、図17のものを参照)にあっては、主流流れA1が主板11に沿って流れるので、主板11の表面に境界層が発達し、主流流れA1の流路幅が減少して、送風性能が低下する(前述の図17の説明を参照)。中でも、上記羽根車2の羽根13,13・・・の羽根外径に対する羽根幅の比が所定値以下となるような薄型の構造に形成したようなものでは、その流路幅の減少が送風性能に及ぼす影響が大であり、羽根13,13・・・の出口部における吹出気流の相対速度が大きくなって、空力騒音が大きくなる問題があった。
そこで、先ず、この実施の形態では、そのような空力騒音増大の原因となる上記主板11内面部の境界層の発達を抑制するために、上記羽根13,13・・・の主板11との対応部を、図示のように上記ファンケーシング4の後板41側に開放させて、上記主板11の表面における境界層の影響を排除するようにしているとともに、上記羽根13,13・・・の主板11側端部の後縁側外周面部に、主板11の延長線上に位置し、かつ羽根車回転軸方向の寸法が上記主板11の厚さと略等しい補強用の環状部材16を設けている。
このような構成にすると、上記主板11の表面における境界層の影響は排除することができる。しかし、今度は上記羽根13,13・・・の主板11側端部13c,13cが開放されていることから、主流流れA1の一部が上記環状部材16表面のコアンダ効果によって同環状部材16の外側からファンケーシング4の後板41側に回り込む逆流流れ(図19のA2を参照)を生じ、この逆流流れが上記羽根車2の中心側へ向けてファンケーシング4の後板41に沿って深く流入、すなわち上記主板11側に開放された羽根13,13・・・端部の広い範囲から上記主板11の中心部近くへ再流入することになり、これが羽根13,13・・・間を流れる主流流れ(図19のA1参照)と干渉してその流れを乱し、送風騒音が増大することになり、折角の主板11の表面における境界層の影響を排除した効果が減殺されてしまう新たな問題が生じる。
そこで、さらに、この実施の形態では、上述した逆流流れによる境界層の抑制効果を維持しつつ、しかも同逆流流れが上記主板11側に開放された羽根13,13・・・の主板11側端部13c,13c・・・から上記主板11の内面側へ再流入するのを防止する構成を採用することにより、より確実に騒音特性の改善が図られるようにしている。
すなわち、本実施の形態では、上述のようにファンケーシング4の後板41の内側には、上記遠心羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の上記主板11側環状部材16の羽根車回転軸方向の寸法に対応した深さを有して当該環状部材16の外周を包囲する円形の凹部空間42が設けられている。
したがって、このような構成の場合、上記環状部材16の外表面のコアンダ効果により当該環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から羽根13,13・・・間へ再流入しようとする逆流流れA2は、図3に示すように当該環状部材16の外側を包囲する上記円形の凹部空間42の内周壁面42aによって上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、上述した逆流流れA2は、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、同逆流流れA2が本来の主流流れA1と干渉してその流れを乱すのを可及的に抑制することができる。
また、上記のように、ファンケーシング4の後板41内側に設けられた、上記環状部材16の羽根車回転軸方向の寸法に対応した深さを有する上記円形の凹部空間42によって、上記環状部材16の外周側を包囲した場合、そのようにしないものに比較して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ上記逆流流れA2の流量そのものが低減することができるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が、さらに有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
しかも、この実施の形態における上記円形の凹部空間42は、上述のようにファンケーシング4の後板41の板厚をその他の部分に比べて所定値以上に大きくし、同板厚内に円形の所定の深さの凹溝部を形成することにより形成されている。
このような構成の場合、上記環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで上記羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、ファンケーシング4の後板41の板厚内に設けられ、上記環状部材16の羽根車回転軸方向の寸法に対応した深さを有する同環状部材16の外側を包囲する円形の凹溝部よりなる円形の凹部空間42の内周壁面42aによって同環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用の相乗的な働きによって、上記羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、当該環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小径の循環流A2となり、当該逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、そのように、ファンケーシング4の後板41の板厚を利用して円形の凹溝部を形成し、同円形の凹溝部により円形の凹部空間42を形成するようにした場合、ファンケーシング4の羽根車回転軸方向の寸法を大きくしなくて済むことはもちろん、同円形の凹部空間42の開口部外周縁から半径方向外方に広がる面がファンケーシング4の後板41の内壁面41aに連続し、渦形通路7方向下流側へ延びる通路側壁面となる。
したがって、このような構成の場合、上記ファンケーシング4の後板41の内壁面41aと上記主板11の内側面11aおよび環状部材16の他方面16bの各々を、上記羽根車2の軸直交方向において略同一面状に位置させるようにすることができるので、それらの対向隙間を通って上記環状部材16の周りを循環する逆流流れA2の流れ状態が、より円滑、かつ安定したものとなり、上記送風騒音の抑制効果がより一層促進される。
この場合において、上記環状部材16の外周部後板41側のコーナー部が、図3のようにアール面になっていると、よりスムーズに循環流が形成される。
<第2の実施形態>
次に図4および図5には、本願発明の第2の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なるのは、上記第1の実施形態の遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・の外周の環状部材16を略矩形の断面形状をもつように構成していたのに対して、この実施形態の遠心送風機1では、該環状部材16の断面形状を、図5に拡大して示すように、外周側が円弧面で、内周側がフラットな略半球状のもに構成した点である。
このように、上記環状部材16の断面形状を外周側が凸の略半球状のものとした場合には、図示の如く上述した逆流流れA2の上記環状部材16周りへの回り込みが、より一層スムーズになり、それだけコアンダ効果が促進され、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合よりもさらに高い静粛性能が実現される。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図4及び図5の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第3の実施形態>
次に図6及び図7には、本願発明の第3の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この遠心送風機1も、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであって、異なる点は、次のような羽根車2の構成のみにある。
すなわち、第1の相違点は、上記第1の実施形態における遠心送風機1では、上記羽根13,13・・・を上記主板11の外周側端面11bに対してのみ取付けていたのに対して、この実施の形態の遠心送風機1では、上記主板11の外径寸法を拡大して、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eの略半分の位置まで延設させた点である。
このように構成すると、上記羽根13,13・・・の主板側端面13eを主板11側において開放させて逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果と、上記主板11と各羽根13,13・・・との結合強度を高めることによる上記羽根車2の強度向上、耐久性、信頼性向上の各効果との両立が実現される。
第2の相違点は、上記第1の実施の形態における羽根車2は、シュラウド12を備えた構成(所謂、シュラウド付タイプ)であったのに対して、この実施形態の遠心送風機1は上記のような漏斗形状のシュラウド12を備えない構成(所謂、シュラウドレスタイプ)とした点である。
このような構成にすると、シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高め、可及的に送風騒音の低減効果を得ることができるようになるので、本願発明の遠心送風機1への適用性が向上することになる。
第3の相違点は、羽根13,13・・・先端部13d,13d・・・の補強用として羽根13,13・・・の反主板側端部13d,13d・・・の外周縁部13b,13b・・・部分に断面円形の補強リング18を取付けた点である。
このような構成にすると、上記シュラウドレスタイプの羽根車2を備えた遠心送風機1において、上記環状部材16部分における逆流流れA2の循環性を高めることによる送風騒音の低減効果を確保しつつ、有効に上記羽根車2の強度、耐久性を向上し、その信頼性を高めることができる。
なお、その他の構成及び作用効果は上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同一であるので、図6及び図7の構成部材を、図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、第1の実施形態における該当説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第4の実施形態>
次に図8および図9には、本願発明の第4の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第1の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第1の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第4の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外にあって主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第1の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、該環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が有効に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図8及び図9の各構成部材を、上述した図1〜図3の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第1の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第5の実施形態>
次に図10および図11には、本願発明の第5の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第2の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第2の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第5の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第2の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れA2の流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第2の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図10及び図11の各構成部材を、上述した図4および図5の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第2の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第6の実施形態>
次に図12および図13には、本願発明の第6の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第3の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第3の実施の形態のものが、ファンケーシング後板41の板厚内に形成された円形の凹溝部によって、上記羽根車2の主板11側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42を形成しているのに対し、この第6の実施の形態のものでは、同ファンケーシング4の後板41の内面側において、上記羽根車2の主板11側に開放され、かつ上記羽根車2の主板1側外周に設けられた環状部材16の外周を包囲する所定の深さの円形の凹部空間42が、ファンケーシング4の後板41の板厚内に凹んだ円形の凹溝部によってではなく、同ファンケーシング4の後板41の板厚外に主板11側に突出して設けられた所定の高さの環状の筒状壁43により形成されていることを特徴としている。
このような構成の場合にも、上記第3の実施の形態の場合と同様に、環状部材16外表面のコアンダ効果により、環状部材16の裏面側へ回り込んで羽根13,13・・・の開放端側から翼間へ再流入する逆流流れA2は、環状部材16の外側を包囲するようにファンケーシング後板41の板厚外に所定の高さ突出して設けられた環状の筒状壁43内側の円形の凹部空間42の内周壁面42aによって、上記環状部材16の外表面形状に沿うように偏向作用を受け、上記コアンダ効果と該偏向作用との相乗的な働きによって、羽根車2の中心側へ大きく流れることなく、上記環状部材16の周囲の狭い範囲内でのみ循環する小さな径の循環流A2となり、逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱すのが可及的に抑制される。
また、上記のようにファンケーシング後板41の板厚外に設けられた筒状壁43内側の円形の凹部空間42によって上記環状部材16の外周側を包囲した場合にも、そのようにしないものに比して、上記環状部材16の外周側へ流入する空気の通路面積が絞られ、それだけ逆流流れの流量そのものが低減されるので、上記逆流流れA2が主流流れA1と干渉してその流れを乱す現象が可及的に抑制される。
そして、これら2つの作用の相乗効果として、上述した主流流れA1の乱れに起因する送風騒音が効果的に低減され、可及的に静粛性に優れた遠心送風機を提供することができるようになる。
その他の構成及び作用効果は、上記第3の実施形態の遠心送風機1の場合と全く同様であるので、図12及び図13の各構成部材を、上述した図6および図7の各構成部材に対応させて同一の符号を付すことにより、同第3の実施形態における説明を援用し、その詳細な説明を省略する。
<第7の実施形態>
次に図14には、本願発明の第7の実施形態に係るスクロール構造のファンケーシングを備えた遠心送風機1の構成が示されている。
この実施の形態の遠心送風機1は、上記第6又は第7の実施形態に係る遠心送風機1と主たる構造を同一にするものであるが、上記第6又は第7の実施形態のものが、ファンケーシング後板41の内面側に設けられた環状の筒状壁43の外周面が等径のものであるのに対し、この実施形態のものでは、同筒状壁43の外径が等径のものではなく主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾斜面に形成されていることを特徴としている。
このように筒状壁43の外周面が主板11側からファンケーシング4の後板41方向にかけて径が拡大する傾傾斜面になっていると、上述した循環流Aにより境界層が解消され、空気吹出口8側斜流方向に吹出されて行く主流A1が後板41側でも可及的にスムーズに流れるようになる。
その結果、騒音低減効果が、より一層向上する。
<実施例>
今例えば上述の第1の実施の形態の構成の遠心送風機を試作(本実施例)し、前述の第1の従来例(1)(図16および図17)、第2の従来例(2)(図18および図19)のものとの比騒音レベルの測定データ差を各風量域において比較した結果が図15のグラフである。
この結果を見ると、本実施例の場合、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合でも従来形状に比べ、比騒音レベルが良好である。
また、従来形状に比べ、最高静圧効率はほぼ同等であるが、ファン使用点が締切り点に近い少風量域の場合ではファン効率が良好である(主板側羽根部包囲→スクロール流路断面積が小→少風量域に好適化→所要軸動力が低減)。
つまり、同構成の遠心送風機によると、軸方向に2分割の金型成形が可能な形状で良好な騒音特性(比騒音レベル低減)を有する送風機を得ることができる。
そして、低風量域ではファン静圧効率が比較的有利(スクロール流路断面積が小→循環風量が小→所要軸動力小)であり、羽根出口幅が小さい扁平な遠心送風機において良好な性能を示すことがわかる。
これらの結果、本願発明では、例えば上記各実施の形態のスクロール型ファンケーシング4の空気吸込口側又は空気吹出口側に、例えば加湿ユニットや熱交換器等の所望の空気調和手段を配置すれば、所望の空気調和機を構成することができる。
したがって、以上の本願発明の各種実施の形態の構成によると、それら各遠心送風機の特性、すなわち、上述した各低騒音性が生かされ、運転騒音の低い可及的に静粛性に優れた所望の空気調和機を提供することができるようになる。
なお、本効果は、羽根内周側が羽根外周側にかけて回転方向前方側に傾斜したものでも、全く同様の効果が得られる。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の分解斜視図である。
同遠心送風機の要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第2の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第3の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第4の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第5の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第6の実施の形態に係る遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
同遠心送風機の構成を示す要部の作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第7の実施の形態に係る遠心送風機要部の構成と作用を示す拡大縦断面図である。
本願発明の最良の第1の実施の形態に係るシュラウド付遠心送風機の最低比騒音レベルを、シュラウド付の2つの従来例(主板部を遮蔽した従来例1と主板部を開放した従来例2)と対比して示したグラフである。
第1の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
第2の従来例に係る遠心送風機の構成を示す水平断面図である。
同遠心送風機の構成を示す縦断面図である。
1は遠心送風機、2は羽根車、4はファンケーシング、41はファンケーシング後板、6は空気吸込口、7は渦形通路、8は空気吹出口、11は主板、12はシュラウド、13は羽根、14は羽根車駆動モータ、42は円形の凹部空間、42aは内周面壁、43はファンケーシング前板、44は環状の筒状壁である。