JP4573020B2 - 吸込ケーシング、吸込流路構造および流体機械 - Google Patents

吸込ケーシング、吸込流路構造および流体機械 Download PDF

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Description

本発明は、回転軸に装着の羽根車の回転により流体を昇圧させる流体機械への流体の吸い込みに用いられる吸込ケーシングないし吸込流路構造、およびそれを用いた例えばポンプや圧縮機あるいは送風機などの流体機械に関する。
流体機械への流体の吸い込みに用いられる吸込流路構造は、大型の場合にはコンクリート構造物などとして形成される吸込流路に流体機械の接続部品などとして形成される吸込ケーシングを接続して形成されるのが一般的である。このような吸込流路構造には、流体機械の回転軸の中心線を通り、吸込流路における流体機械へ向けての流体の流れ方向に沿う線分である第1の基準線に平行な流れで流体が流体機械の吸入口まで導かれるタイプである非予旋回型と、吸込ケーシングに設けられた旋回部により流体機械の回転軸に直交する状態の旋回流、つまり回転軸ないしこの回転軸の延長線の周りを旋回する状態の旋回流を流体に生じさせるタイプである予旋回型がある。
図6に従来における非予旋回型の代表的な構成を示す。非予旋回型の吸込流路構造では、
流体機械へ向けての流れにおける上流側で流体機械の回転軸101に直交するように設置される吸込流路102と吸込ケーシング103の内部における内部流路104がともに第1の基準線C1(これは回転軸101の中心線つまり軸線を通るとともに吸込流路102または内部流路104の高さ方向の中心位置を通り、吸込流路102や内部流路104における流体機械へ向けての流体の流れ方向に沿う線分であり、これに直交する線分が第2の基準線C2となる)に対して対称となるように形成される。すなわち、吸込流路102と内部流路104は、それぞれの中心線が第1の基準線C1に実質的に重なるように設置される。このため吸込流路102を基準線C1に平行な状態で流れてくる流体は吸込流路102と吸込ケーシング103との接続部である吸込ケーシング103の吸込口105を通過した後もそのまま基準線C1に平行な流れで内部流路104を流れ、そして回転軸101に装着の羽根車106へ流体を吸い込ませる吸込口に至ってそこから吸い込まれる。
このような非予旋回型の吸込流路構造で導かれる流体は、内部流路104の最下流部に設置のバッフル部107による干渉を受けながら基準線C1に対して左右両方向から羽根車吸込口に流れ込む状態となり、羽根車吸込口での流体の流入角度と羽根車吸込口の角度に食い違いを発生させる領域が存在する。その結果、キャビテーションの発生領域に偏りを生じ、ひいては大きな振動や騒音を発生し易くなるという問題を伴う。
図7に従来における予旋回型の代表的な構成を示す。予旋回型の吸込流路構造では、吸込ケーシング111の内部流路112に渦巻状に形成の旋回部113が設けられ、この旋回部113により回転軸101に直交する状態の旋回流を流体に生じさせる。このため流体は旋回部113の最下流部に設置のバッフル部114の干渉を受けながら羽根車106の吸込口において一方向から流れ込む状態で吸い込まれる。
このような予旋回型吸込流路構造は、非予旋回型におけるキャビテーション発生領域の偏りという問題を避けることができる。しかし予旋回型吸込流路構造には、非予旋回型におけるように吸込流路と内部流路を第1の基準線C1に対して対称となるように形成することが困難であるという問題がある。すなわち図8に示す例のように、吸込流路102と吸込ケーシング115の内部流路116を対称構造に形成すると、吸込流路102と内部流路116で導かれる流体が抵抗を受けることなく羽根車106の吸入口へと流れ、そのために回転軸101に沿う方向へ急激に曲がる流れAを発生する一方で、回転軸101を横切る状態の流れBも発生する。その流れAは羽根車106の吸入口117で剥離し易く、一方流れBは回転軸101の背面部に後流を生じて吸入口117に二次流れをもたらすこととなり、その結果、吸入口117での流れの一様性が損なわれることになる。
このため従来の予旋回型吸込流路構造にあっては、図7に見られるように、吸込流路102と内部流路112を第1の基準線C1に対して非対称に、つまり偏心させた状態に形成することで羽根車106の吸入口での流れの一様性を得られるのようにするのが一般的であった。このような非対称構造の場合、吸込流路102と内部流路112の接続部105をかなり上流側に設ける必要があり、そのために吸込ケーシング111が大型になるという問題があった。また内部流路112の旋回部113における渦巻形状に複雑な曲線を必要とし、その設計や加工ないし施工が複雑になりコスト増につながるという問題もあった。
また予旋回型吸込流路構造については、図8の流れAや流れBの発生を抑えて流れの一様性を高めるために、内部流路112での流体の流れに対する抵抗として働く要素を内部流路112の下流部分に設ける構造も知られている。例えば特許文献1における「突出部」や特許文献2における「傘型膨出部」などのその例である。しかしこれらの要素だけでは必要な流れの一様性を保つのに必ずしも十分でなく、したがって図7の例のように吸込流路と内部流路を非対称に形成せざるを得ないことになる。
以上のような非予旋回型吸込流路構造や予旋回型吸込流路構造については、特許文献1や特許文献2の他に特許文献3に開示の例なども知られている。
特公昭63−44960号公報 特開平11−148498号公報 特開昭51−142101号公報
上述のように流体機械における吸込流路構造には非予旋回型と予旋回型がある。そして非予旋回型は、吸込流路と吸込ケーシングの内部流路を対称型とすることができ、したがって内部流路の形状を設計や加工ないし施工が容易である単純なもので済ませることができるという利点があるものの、キャビテーション発生領域の偏りが発生し易いという欠点がある。一方、予旋回型は、キャビテーション発生領域の偏りという問題は避けられるものの、羽根車の吸入口での流れの一様性を高めるために吸込流路と内部流路を非対称に形成する必要があり、その結果として内部流路の形状が複雑化して設計や加工ないし施工についてのコスト増をもたらすという問題を残している。
本発明は、このような従来の事情を背景になされたものであり、キャビテーション発生領域の偏りを有効に避けることができるとともに、内部流路の形状の単純化も可能とする吸込ケーシングと吸込流路構造およびそれらを用いた流体機械の提供を目的としている。
上記目的のために本発明では、回転軸に装着の羽根車の回転により流体を昇圧させる流体機械に前記流体を吸い込ませるために設けられており、前記流体の前記流体機械へ向けての流れにおける上流側で前記回転軸に直交するように設置の吸込流路と、前記吸込流路に一端側を接続させ、他端側を前記流体機械に接続させる吸込ケーシングとを有し、前記吸込ケーシングは、前記吸込流路に接続される内部流路を有し、かつこの内部流路は、前記吸込流路から吸い込まれた前記流体に前記流体機械の回転軸の周りの旋回流を生じさせるよう渦巻状に形成されている吸込流路構造において、前記吸込流路と前記内部流路は、前記回転軸の軸線を通るとともに、前記吸込流路における前記流体機械へ向けての流体の流れ方向に沿う線分である第1の基準線(C1)に前記吸込流路と前記内部流路それぞれの中心線が重なる状態にして設けられ前記内部流路に、この内部流路内で旋回する旋回流をこの旋回流の旋回中心側と旋回外周側に配分する機能と、前記内部流路での前記旋回流の旋回方向への転向を前記吸入流路から前記内部流路に流入する流体に生じさせる機能とを有し円弧状の整流面が両面に形成された湾曲形状の整流板と、前記整流板におけるのと同様に前記内部流路での前記旋回流の旋回方向への転向を前記吸込流路から前記内部流路に流入する流体に生じさせる機能とを有し、円弧状の整流面が両面に形成された湾曲形状の補助整流板とを設け、前記整流板はその入口側で前記内部流路の中心線に沿う状態に位置しており、前記補助整流板は、前記回転軸に直交する第2の基準線(C2)と前記第1の基準線とで区画される区間のうちで、前記内部流路の終端に形成されるバッフルと前記整流板との双方が位置する区間であって前記バッフルと前記整流板との間に、前記整流板に平行する状態設けられていることを特徴としている。
また本発明では、上記のような吸込ケーシングについて、前記内部流路は、前記流体に前記旋回流を生じさせる旋回部と、この旋回部で旋回流とされた流体を前記流体機械の吸入口に導く導入部を有するものとし、前記導入部の上流側端に、前記回転軸の軸線方向に向けて突出する状態にしたベルマウス部を設けるようにしている。
また本発明では上記目的のために、前記ベルマウス部は、前記旋回部における流体の流れにおける上流側から下流側に向けて突出高さが徐々に低くなるようにされ、かつ上流側の最高突出部の突出高さと下流側の最低突出部の突出高さは、前記最高突出部にあって前記ベルマウス部の突出方向先端と前記内部流路の壁面で規定される流路幅をbとし、前記最低突出部にあって前記ベルマウス部の突出方向先端と前記内部流路の壁面で規定される流路幅をcとした場合に、前記b:cが1:1.1〜1:1.2の範囲となるような関係にされていることを特徴としている。
また本発明では上記目的のために、回転軸に装着の羽根車の回転により流体を昇圧させる流体機械において、上記のような吸込ケーシングまたは吸込流路構造を備えることを特徴としている。
本発明における整流板は、内部流路の上流側において内部流路での流体の旋回流における流量を旋回中心側と旋回外周側について配分する整流作用を発揮するとともに、内部流路の上流側において内部流路における旋回流の旋回方向へ流体を転向する整流作用を発揮する。そしてこのような整流作用により内部流路において整った旋回流を形成し易くなる。この結果、キャビテーション発生領域の偏りを防止するのに有効な旋回流、すなわち整っており一様性が高い旋回流を得るのに、対称構造にした吸込流路と内部流路を用いることができ、それに伴って内部流路の渦巻形状を比較的単純な形状で済ませることが可能となり、その設計や加工ないし施工が容易になる。
また本発明では、内部流路における導入部の上流側端で突出させて設けられるベルマウス部の突出高さを上流側から下流側に向けて徐々に低くなるようにし、そして上流側の最高突出部の突出高さと下流側の最低突出部の突出高さが一定の関係を満足するように形成している。このため本発明によれば、流体機械の吸入口における流れの一様性を高めてキャビテーション発生領域の偏りを有効に防止できるようになる。
以下、本発明を実施する上で好ましい形態について説明する。図1と図2に第1の実施形態による吸込流路構造の構成を模式化して示す。図1は、吸込流路構造を平面方向で断面した状態の図であり、図2は、図1中の基準線C1に沿って断面した状態の図である。本実施形態における吸込流路構造は、流体機械へ向けての流れにおける上流側で流体機械の回転軸1に直交するように設置される吸込流路2に吸込ケーシング3を組み合わせて形成されている。
吸込ケーシング3にはその内部に内部流路4が設けられている。内部流路4は、吸込流路2で導かれてくる流体に回転軸1と直交する状態の旋回流つまり回転軸1ないしこの回転軸1の延長線の周りを回転する状態の旋回流を生じさせるように渦巻状、つまり上流側から下流側に向けて徐々に流路断面積を縮小させながら湾曲する状態に形成した旋回部5と、この旋回部5で旋回流とされた流体を流体機械の吸込口6(図2)に導く導入部7(図2)を有している。また内部流路4には、バッフル部8(図1のみに現れる)、ベルマウス部9(図2のみに現れる)、センターコーン部11(図2のみに現れる)および整流板12と補助整流板15が設けられている。なお図2中では整流板12と補助整流板15の図示を省略してある。
バッフル部8は、旋回部5を流下する流体に旋回部5の最下流で干渉して流体の旋回量を調整する機能を負っている。そのためにバッフル部8は、内部流路4の壁面の一部を概略楔形にして突出させた状態で形成されている。またバッフル部8は、内部流路4の終端つまり旋回部5の終端付近に設けられており、第1の基準線C1(これは回転軸1の中心線を通るとともに吸込流路2または内部流路4の高さ方向の中心位置を通り、吸込流路2や内部流路4における流体機械へ向けての流体の流れ方向に沿う線分である)と第2の基準線C2(これは第1の基準線C1に直交する線分である)で区切られる4つの空間領域の内で内部流路4の最上流に位置する空間領域に位置させられている。
このようなバッフル部8による旋回量調整機能は、その先端の位置に大きく影響される。すなわち、バッフル部8の先端位置を、バッフル部8の先端と回転軸1の中心を水平方向で結ぶ線分が第2の基準線C2となす角度θで表わすとした場合に、この角度θ小さすぎると流体機械の羽根車13(羽根車13は前縁部13aを有している)への吸入口6全周での旋回量が過大となってしまい、逆に角度θが大きすぎる旋回部5での旋回を十分にとることができなくなってしまう。このことについて解析した結果、バッフル部8の先端は角度θが45度から90度の範囲内の位置にあることが望ましいことが判っている。
ベルマウス部9は、上で説明した図8における流れAや流れBの発生を防止する機能を負っている。そのためにベルマウス部9は、回転軸1の周りをベルマウス形に囲む円環形状を呈するように形成され、本実施形態ではその円環の高さは均一となるようにされている。より具体的にいうと、ベルマウス部9は、回転軸1に沿う状態となる導入部7の最上流の端部において内部流路4の壁面の一部を回転軸1の軸線方向に向けて高さ均一な円環状に突出させた構造で形成されている。
センターコーン部11は、内部流路4での流れを導入部7の方向に向けて上向きに転向させる機能を負っており、回転軸1に沿う状態にして内部流路4の壁面をコーン形状に突出させて形成されている。
内部流路4に整流板12と補助整流板15を設ける構成は本発明の大きな特徴の一つである。整流板12は、内部流路4での流体の旋回流における流量を旋回流の旋回中心側流れ(図1中に示す矢印F1)と旋回外周側流れ(図1中に示す矢印F2)について配分する機能を負うとともに、内部流路4での旋回流の旋回方向への転向を吸込流路2から内部流路4に流入の流体に生じさせる機能を負っている。そのために整流板12は、円弧状の整流面12fを両面に有するよう湾曲形状の板として形成され、内部流路4の入口つまり吸込流路2と内部流路4の接続部である内部流路4の吸込口14の近傍において内部流路4をそこでの流体の流れ方向に沿って分割する状態に設置されている。ここで、図の例では内部流路4をほぼ2分割する状態で整流板12を設置しているが、この設置状態は上記の流量配分における配分割合の設定に応じて変えられることになる。
補助整流板15の主たる機能は、整流板12におけるのと同様な流体転向機能、つまり吸込流路2から内部流路4に流入の流体に内部流路4での旋回流の旋回方向への転向を生じさせる機能である。すなわち補助整流板15は、整流板12による流体転向機能を補完するように機能し、これにより吸込流路2から内部流路4へ流入する流体の旋回流への転向がさらに一層滑らかになされるようになる。この補助整流板15は、整流板12と同様に、円弧状の整流面15fを両面に有するよう湾曲形状の板として形成され、図の例においては、整流板12に平行する状態で設けられているが、この設置状態すなわち設置位置及び湾曲形状は、整流板12及びバッフル8との位置関係及び形状に応じて変更することとなる。
本発明の大きな特徴の他の一つは、吸込流路2と内部流路4がともに対称構造とされていることである。すなわち、吸込流路2と内部流路4をそれぞれの中心線2c、4cが第1の基準線C1に実質的に重なるように設置する構成である。この構成は、後述するように、整流板12と補助整流板15を設ける構成と関連している。
以上のような第1の実施形態による吸込流路構造では、吸込流路2から吸込口14を経て内部流路4に流入する流体は、まず吸込口14の近傍において整流板12により、
内部流路4での流体の旋回流における流量を旋回流の旋回中心側流れと旋回外周側流れについて配分する整流作用を受けるとともに、整流板12と補助整流板15により、内部流路4の旋回部5における旋回流の旋回方向へ転向する整流作用を受ける。そしてこれらの整流作用により旋回部5において整った旋回流を形成し易くなる。このことは以下のような効果をもたらす。すなわちキャビテーション発生領域の偏りを防止するのに有効な旋回流、つまり整っており一様が高い旋回流を得るのに、対称構造にした吸込流路2と内部流路4を用いることができ、これに伴って図1の例のように旋回部5の渦巻形状を比較的単純な形状で済ませることが可能となり、その設計や加工ないし施工が容易となる。
整流板12や補助整流板15による整流作用を受けた流体は、旋回流となって旋回部5を流下しながらセンターコーン部11による上向きの転向を受けつつ導入部7に流入し、流体機械の羽根車13へその吸入口6から吸い込まれる。また流体はこのように流れの間に、ベルマウス部9による干渉で抵抗を受ける。このベルマウス部9が与える抵抗は、図8における流れAや流れBの発生を抑制して吸入口6での流体の流れを一様化するのに働き、これが上記した整流板12や補助整流板15の整流作用による整った旋回流の生成と協働することで、流体の流れの一様化をさらに高めることができるようになる。
図3と図4に第2の実施形態による吸込流路構造の構成を示す。本実施形態の吸込流路構造は、基本的には第1の実施形態におけるそれと同様である。以下では第1の実施形態と相違する構成要素について主に説明する。なお第1の実施形態における吸込流路構造と共通する構成要素については図中に同一の符号で示している。
本実施形態が第1の実施形態と相違する点は、図1におけるバッフル部8に対応する要素としてバッフル部21を設け、図1におけるベルマウス部9に対応する要素としてベルマウス部22を設けていることである。
バッフル部21は、その突出高さがバッフル部8のそれよりも低くされている。具体的には図1のバッフル部8がその先端部を羽根車13の輪郭に若干重ねる高さとされているのに対し、バッフル部21は、その先端部が羽根車13の輪郭から若干離れる高さとされている。またバッフル部21は、その概略楔形形状における先端部をバッフル部8のそれよりも鈍角にされている。具体的にはバッフル部21の先端部の角度は、図3中に点線で示したバッフル部8の鋭角的な先端部を若干カットして得られる角度状態とされている。このようなバッフル部21は、旋回量調整機能における流体に対する干渉を緩やかなものとし、干渉に起因する旋回流の乱れをより少なくすることができる。こうしたバッフル部21の利点をより有効に発揮させるには、バッフル部21を旋回部5の渦巻形状に沿った円弧状に形成し、またその先端部の稜線も円弧状となるようにするのが好ましい。以上のようなバッフル部21についても、バッフル部8と同様に、その先端の位置は角度θが45度から90度の範囲内にあることが望ましい。
ベルマウス部22は、基本的な構成としてはベルマウス部9と同様で、その突出高さが旋回流の上流側から下流側に向けて徐々に低くなる非対称構造とされている点でベルマウス部9と相違している。このようなベルマウス部22によると、旋回部5の上流部分ではベルマウス部22の突出高さの高い部分22aにて大きな抵抗を流体に与えることができ、このことにより図8における流れAや流れBの発生をより効果的に防止できる。そしてその一方で、旋回部5の下流部分ではベルマウス部22の突出高さの低い部分22bにて相対的に小さな抵抗を流体が受けることになり、したがって羽根車13の吸入口6への流体の吸入をよりスムーズに行わせることができるようになる。
以上のような非対称構造のベルマウス部22による効果は、羽根車13の吸入口6の流路面積d(これは実効的には回転軸1が占める部分を除いた部分となる)に対するベルマウス部22の下部における流路面積(ベルマウス部22の先端とこれに対向する内部流路4の壁面で規制される流路幅で与えられる流路面積)の比に影響される。すなわち吸入口流路面積dに対してベルマウス部下部流路面積が狭すぎる場合、具体的には吸入口流路面積dに対するベルマウス部下部流路面積、特に図4中に符号bで示してある流路幅で与えられる流路面積の比が3より小さい場合には、ベルマウス部22の下部における流速が速くなりすぎて損失の増大を招き、逆に吸入口流路面積dに対してベルマウス部下部流路面積が広すぎる場合、具体的には吸入口流路面積dに対するベルマウス部下部流路面積の比が4より大きい場合には、非対称構造のベルマウス部22による効果を得られなくなる。したがって、吸入口流路面積dに対するベルマウス部下部流路面積の比が1:3〜1:4の範囲となるようにベルマウス部22の突出高さ(これは平均の突出高さ)を設定するのが好ましいことになる。
またベルマウス部22における突出高さが最も高い部分22aに対する突出高さが最も低い部分22bの高さの比、つまり突出高さが最も高い部分22aの先端とこれに対向する内部流路4の壁面で規制される流路幅bに対する突出高さが最も低い部分22bの先端とこれに対向する内部流路4の壁面で規制される流路幅cの比も非対称構造のベルマウス部22による効果に影響する。すなわち最高突出部におけるベルマウス部下部流路幅bに対する最低突出部におけるベルマウス部下部流路幅cの比が大きすぎる場合、具体的には1.2より大きい場合には、最高突出部22aでの抵抗が大きくなりすぎ、その一方で最低突出部22bでの吸入口6への流れ込みが相対的に多くなってしまい、吸入口6の全周にわたる一様性が損なわれてしまう。逆にベルマウス部下部流路幅bに対するベルマウス部下部流路幅cの比が小さすぎる場合、具体的には1.1より小さい場合には、最高突出部22aでの抵抗が小さくなりすぎ、その一方で最低突出部22bでの吸入口6への流れ込みが相対的に少なくなってしまい、同じく吸入口6の全周にわたる一様性が損なわれてしまう。したがって、ベルマウス部下部流路幅bに対するベルマウス部下部流路幅cの比が1:1.1〜1:1.2の範囲となるようにベルマウス部22の突出高さを設定するのが好ましいことになる。なお流路幅bや流路幅cは、ベルマウス部下部における当該部分の流路面積を与えることになる。したがって流路幅bや流路幅cは、ベルマウス部下部における当該部分の流路面積と言い換えてもよいことになる。
ここで、以上の各実施形態では片吸込渦巻ポンプに関する例を取り上げ、それについて便宜上、回転軸が吸込ケーシングの内部まで貫通した構造として説明したが、本発明は羽根車の吸込口における流れの一様化が必要となる流体機械であればどのような流体機械であっても適用可能である。
次に第3の実施形態について説明する。本実施形態は第2の実施形態による吸込流路構造を立型片吸込多段ポンプに適用した例である。図5に本実施形態における立型片吸込多段ポンプの要部の構成を示す。立型片吸込多段ポンプは、上下の各端部をラジアル軸受31で支持された回転軸32を備えており、この回転軸32に複数段(図の例では4段)で装着された羽根車33(羽根車33は前縁部33aを有している)の回転で昇圧するようになっている。より具体的には、一つの羽根車33で昇圧された流体はディフューザ34を回転軸32の側から半径方向外向きに通過し、さらにリターン35を通過することで半径方向内向きの流れに転向されて次段の羽根車33の入口へと導かれることを繰り返しながら羽根車33による昇圧を受ける。そして最終段の羽根車33で昇圧された高圧の流体はディフューザ34を経て吐出しケーシング36で回収され吐出し口(図示を省略)へと導かれる。
この立型片吸込多段ポンプには、第2の実施形態による吸込流路構造における吸込ケーシング3が一体的な部品として組み付けられ、この吸込ケーシング3に吸込口14を介して吸込流路2を接続するようにされている。これら吸込ケーシング3と吸込流路2による吸込流路構造の詳細は、第2の実施形態におけるそれと同一であるので上での説明を援用する。
本発明は、流体機械における流体の吸込みに関してキャビテーション発生領域の偏りを抑制し、また予旋回型の吸込ケーシングにおける内部流路の形状を単純化することができる。このような本発明は、流体機械の分野に広く適用することができる。
第1の実施形態による吸込流路構造の構成を平面方向で断面した状態で模式化して示す図である。 図1中の第1の基準線に沿う断面状態を示す図である。 第2の実施形態による吸込流路構造の構成を平面方向で断面した状態で模式化して示す図である。 図3中の第1の基準線に沿う断面状態を示す図である。 第3の実施形態による立型片吸込多段ポンプの要部の構成を示す図である。 従来における非予旋回型の吸込流路構造の構成を平面方向で断面した状態で模式化して示す図である。 従来における予旋回型の吸込流路構造の構成を平面方向で断面した状態で模式化して示す図である。 従来における他の例による予旋回型の吸込流路構造の構成を立面方向で断面した状態で模式化して示す図である。
符号の説明
1 回転軸
2 吸込流路
3 吸込ケーシング
4 内部流路
5 旋回部
6 吸入口
7 導入部
9 ベルマウス部
12 整流板
12f 整流面
13 羽根車
15 補助整流板

Claims (4)

  1. 回転軸に装着の羽根車の回転により流体を昇圧させる流体機械に前記流体を吸い込ませるために設けられており、前記流体の前記流体機械へ向けての流れにおける上流側で前記回転軸に直交するように設置の吸込流路と、前記吸込流路に一端側を接続させ、他端側を前記流体機械に接続させる吸込ケーシングとを有し、前記吸込ケーシングは、前記吸込流路に接続される内部流路を有し、かつこの内部流路は、前記吸込流路から吸い込まれた前記流体に前記流体機械の回転軸の周りの旋回流を生じさせるよう渦巻状に形成されている吸込流路構造において、
    前記吸込流路と前記内部流路は、前記回転軸の軸線を通るとともに、前記吸込流路における前記流体機械へ向けての流体の流れ方向に沿う線分である第1の基準線(C1)に前記吸込流路と前記内部流路それぞれの中心線が重なる状態にして設けられ
    前記内部流路に、この内部流路内で旋回する旋回流をこの旋回流の旋回中心側と旋回外周側に配分する機能と、前記内部流路での前記旋回流の旋回方向への転向を前記吸入流路から前記内部流路に流入する流体に生じさせる機能とを有し円弧状の整流面が両面に形成された湾曲形状の整流板と、前記整流板におけるのと同様に前記内部流路での前記旋回流の旋回方向への転向を前記吸込流路から前記内部流路に流入する流体に生じさせる機能とを有し、円弧状の整流面が両面に形成された湾曲形状の補助整流板とを設け、
    前記整流板はその入口側で前記内部流路の中心線に沿う状態に位置しており、前記補助整流板は、前記回転軸に直交する第2の基準線(C2)と前記第1の基準線とで区画される区間のうちで、前記内部流路の終端に形成されるバッフルと前記整流板との双方が位置する区間であって前記バッフルと前記整流板との間に、前記整流板に平行する状態設けられていることを特徴とする吸込流路構造。
  2. 前記内部流路は、前記流体に前記旋回流を生じさせる旋回部と、この旋回部で旋回流とされた流体を前記流体機械の吸入口に導く導入部を有し、前記導入部の上流側端には、前記回転軸の軸線方向に向けて突出する状態にしたベルマウス部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸込流路構造。
  3. 前記ベルマウス部は、前記旋回部における流体の流れにおける上流側から下流側に向けて突出高さが徐々に低くなるようにされ、かつ上流側の最高突出部の突出高さと下流側の最低突出部の突出高さは、前記最高突出部にあって前記ベルマウス部の突出方向先端と前記内部流路の壁面で規定される流路幅をbとし、前記最低突出部にあって前記ベルマウス部の突出方向先端と前記内部流路の壁面で規定される流路幅をcとした場合に、前記b:cが1:1.1〜1:1.2の範囲となるような関係にされていることを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の吸込流路構造。
  4. 回転軸に装着の羽根車の回転により流体を昇圧させる流体機械において、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸込流路構造を備えたことを特徴とする流体機械
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