WO2023100750A1 - 試料調製システム、試料調製方法、及び試料解析システム - Google Patents

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Abstract

試料調製システム(100)は、複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する、分散のプロセスにおいて、細胞群をなす個々の細胞と、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行う位置同定部(34)を備えている。これにより、細胞を採取すると共に、採取した細胞の元の細胞群における位置を特定する技術を実現する。

Description

試料調製システム、試料調製方法、及び試料解析システム
 本発明は、試料調製システム、試料調製方法、及び試料解析システムに関する。
 培養細胞塊や組織のような細胞群に含まれる細胞の個々の性質を解析する場合、細胞群の中から目的の単一細胞をピッキングし、解析に供する。細胞群から目的の単一細胞を採取する技術として、特許文献1に記載された細胞搬送システムが知られている。
 特許文献1に記載されたシステムにおいては、シャーレ内を顕微鏡により観察しながら、細胞群から単一細胞を採取し、PCRチューブ内へ吐出する。
日本国特開2018-68169号公報
 癌細胞のように隣接する細胞と組織的に機能するような細胞の解析や、隣接細胞間の相互作用を解析するような場合には、個々の細胞の性質だけでなく、これらの細胞の細胞群内における位置に関する位置情報も重要である。したがって、細胞解析において、個々の細胞の性質と共に、細胞の位置情報も得られることが望ましい。
 特許文献1に記載されたシステムでは、顕微鏡で観察しながら細胞を採取するが、このとき、各細胞は容易に採取可能なように分散又は分離している。したがって、細胞群内における各細胞の元の位置情報が失われており、採取した細胞の位置情報を得ることは困難である。特に、細胞塊や組織の一部のような三次元サンプルにおいては、サンプル中における三次元位置情報を保持したまま細胞を採取することは困難である。
 本発明の上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、細胞群をなす個々の細胞の位置を追跡しながら、細胞解析を行う細胞を含む試料を調製する技術を実現することを目的とする。
 本発明の一態様に係る試料調製システムは、複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する、分散のプロセスにおいて、前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行う追跡部を備えている。
 本発明の一態様に係る試料解析システムは、本発明の一態様に係る試料調製システムと、前記試料調製システムにより調製した試料を解析する解析装置とを備えている。
 本発明の一態様に係る試料調製方法は、複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する工程であって、前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行いながら、前記細胞群を分散する工程を包含する。
 本発明の一態様によれば、細胞群をなす個々の細胞の位置を追跡しながら、細胞解析を行う細胞を含む試料を調製することができる。
本発明の一実施形態に係る試料調製システムの概略を示す断面矢視図である。 図1に示した試料調製システムの要部構成を示すブロック図である。 図1に示した試料調製システムを用いた試料採取処理の流れを説明する図である。 実施例1における、染色直後の細胞塊の三次元蛍光画像である。 実施例1における、細胞分散酵素処理時間の経過に沿った細胞核の位置変化を示す図である。 実施例1における、凸レンズによる細胞分散の過程における細胞核の位置変化を示す図である。 実施例1における、凸レンズの移動に伴う細胞核の位置変化を示す図である。 実施例1における、ガラスニードルを用いて細胞塊から一細胞を分離する様子を示す図である。 実施例1における、採取した細胞について、分散、分離、及び採取過程における三次元位置及び移動軌跡を示す図である。 実施例2における、染色直後の細胞核の三次元蛍光画像である。 実施例2における、細胞分散溶液処理時間の経過に沿った細胞核の位置の変化を示す図である。 実施例2における、レンズによる細胞分散の過程における細胞核の位置の変化を示す図である。 実施例2における、二次元平面上における細胞分散前後の細胞位置を示す図である。
 以下、本発明の一実施形態に係る試料調製システム100ついて、図1~3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る試料調製システム100の概略を示す断面矢視図である。図2は、図1に示した試料調製システム100の要部構成を示すブロック図である。図3は、図1に示した試料調製システム100を用いた試料採取処理の流れを説明する図である。
 〔試料調製システム100〕
 試料調製システム100は、複数の細胞が互いに接着した細胞群から、解析の対象となる試料を調製するシステムである。解析の対象となる「試料」の例として、細胞群よりも細胞数の少ないクラスタ、小細胞群、単一細胞、細胞を構成する構成要素の一部、細胞中に含まれる成分の一部等が挙げられる。また、「試料の調製」には、試料を解析できる状態にすることが意図される。一例として、「試料の調製」には、細胞群から単一細胞を採取(ピッキング)し、細胞解析に供するプレート上に搬送することや、細胞群が含まれる溶液中において解析の対象となる細胞塊部分を分離し、その溶液中にて解析できるようにすること等も含まれる。本実施形態においては、試料として、主に、単一細胞を採取する場合を例として説明する。試料調製システム100は、解析装置200と共に、試料解析システム1を構成している。試料解析システム1においては、試料調製システム100によりピッキングした細胞を、解析装置200へ搬送し、試料解析に供する。
 試料調製システム100は、試料調製ロボット10、顕微鏡20、制御部30、及び記憶装置300を備えている。試料調製システム100は、シャーレ(容器)14内の細胞群Mの少なくとも一部を採取するために用いられる。試料調製システム100により採取される細胞群Mを収容する容器は、シャーレ14に限定されず、チューブやプレートのように、細胞群Mを保持可能なものであればよい。このような容器は、顕微鏡20の観察光に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製、樹脂製等であることが好ましい。
 試料調製システム100において、採取される細胞が含まれる細胞群は、複数の細胞が互いに接着した細胞群である。このような細胞群は、シート状の細胞クラスタのような二次元構造体であっても、細胞塊、組織、オルガノイドのような三次元構造体であってもよい。
 試料調製システム100において、細胞群Mは、ビーズ状の固体粒子を含む溶液と共にシャーレ14内に収容されていることが好ましい。溶液に含まれる固体粒子は、一例として、樹脂ビーズである。また、溶液には培地が含まれていてもよい。
 (試料調製ロボット10)
 試料調製ロボット10は、吸引アーム(採取アーム)11、分散アーム12、及び分離アーム13の3つのロボットアームを備えている。
 <吸引アーム11>
 吸引アーム11は、シャーレ14内の細胞群Mから対象となる細胞を吸引し、解析装置200のプレート202に吐出するために用いられる。なお、吸引アーム11の替わりに、対象となる細胞を細胞群Mから採取可能な他の採取アームを用いてもよい。他のアームの例として、細胞に差し込んで細胞を採取するニードルが挙げられる。本実施形態では、採取アームとして、吸引アーム11を用いる場合を例として説明する。
 吸引アーム11は、シャーレ14内の二次元平面(xy平面)上、すなわち、シャーレ14の底面上に分散した細胞群Mから対象となる細胞の少なくとも一部を吸引する。一例として、吸引アーム11は、シャーレ14内に分散した細胞群Mにおいて、細胞間接合が分離され、切り離された細胞を吸引する。
 吸引アーム11の先端には、ニードル11aが取り付けられている。吸引アーム11は、図1のx軸方向に回転可能に構成されている。これにより、吸引アーム11のニードル11aが、隣接して載置された、試料調製システム100のシャーレ14と解析装置200のプレート202との両方にアクセス可能となっている。
 また、吸引アーム11は複数のジョイントを有しており、ジョイントの動きを制御することにより、ニードル11aの先端の位置を、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の各方向に調節可能に構成されている。特に、ニードルの先端の位置をz軸方向に上下動させることによって、顕微鏡ステージ22を動かすことなく、ニードル11aの先端をシャーレ14内に挿入させたり、退避させたりすることができ、かつ、ニードル11aの先端をプレート202内に挿入させたり、退避させたりすることができる。
 吸引アーム11は、手動及び電動のいずれの方法でもニードル11aの位置を調整できるように構成されている。なお、電動で吸引アーム11を駆動するために、吸引アーム11は、複数のモータ(図示せず)を備えている。電動で吸引アーム11を駆動する場合、吸引アーム11は、試料調製システム100の制御部30が備えているアーム制御部31により制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
 ニードル11aは、両端が開放された管状部材であり、その端部の一方が、ポンプ(図示せず)に接続されている配管に気密された状態で接続されている。なお、ポンプについての詳細な説明を省略するが、微小な体積の流体(気体又は液体)を吸引及び吐出可能なように構成されている。ポンプとニードル11aとが気密された状態で接続されているので、ニードル11aは、ポンプが行う流体の吸引又は吐出に応じて、細胞を吸引又は吐出することができる。
 ニードル11aは、先端に向かって先細りするテーパ形状であり得る。ニードル11aの開口径及び内径は、細胞を吸引又は吐出可能な大きさであればよく、対象となる細胞の大きさに応じて適宜設定され得る。ニードル11aは、顕微鏡20からの観察光に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製、樹脂製等であればよい。
 <分散アーム12>
 分散アーム12は、シャーレ14内の細胞群Mにその先端を押し付けて、細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散するために用いられる。この分散のプロセスは、一例として、細胞群をより小さなクラスタに分散させることを意図している。ここで、「細胞群をより小さなクラスタに分散させる」とは、細胞群を、構成する細胞の数が細胞群より少ない小細胞集団(クラスタ)に分割することが意図される。他の例として、「細胞群をより小さなクラスタに分散させる」には、1つの細胞群を2以上のクラスタに分割すること、細胞群に含まれる細胞の少なくとも一部が隣接する細胞から離れること等が含まれる。
 また、後述するように、上述した分散のプロセスにおいて、細胞群をなす個々の細胞と、クラスタをなす個々の細胞との対応付けを行う。そのため、「細胞群をより小さなクラスタに分散させる」とは、この対応付けが可能な程度に各細胞や細胞塊を分散させることであり得る。さらに、細胞群が三次元構造体である場合には、上述した分散のプロセスには、三次元構造体を二次元平面上に広げることも含まれ得る。また、上述した分散のプロセスには、細胞群をなす個々の細胞を上下に積み上げ、細胞を三次元的に分散させることも含まれ得る。
 分散アーム12の先端を押し付ける細胞群Mは、予めシャーレ14内において分散酵素で処理し、細胞群Mが分散しやすい状態になっていてもよい。なお、細胞群Mを分散させる方法としては、分散アーム12を用いる構成に限定されず、後述するように、従来公知の他の細胞分散方法を用いてもよい。他の細胞分散方法を用いる場合には、試料調製システム100は、分散アーム12を備えていなくてもよい。
 分散アーム12は、その先端部に、細胞群Mの上部からシャーレ14の底面の方向に細胞群Mを押し付ける面を有する。本実施形態においては、分散アーム12の先端部に凸レンズ12aが取り付けられている構成を例として説明する。分散アーム12は、凸レンズ12aをz軸方向に移動させることにより、細胞群Mの上部からシャーレ14の底面の方向に細胞群Mを押し付け、細胞群Mを分散させる。細胞群Mが、細胞塊、オルガノイド、又は組織の一部のような三次元構造体である場合、凸レンズ12aを押し付けることにより、細胞群Mを二次元平面上に分散させることができる。
 凸レンズ12aは凸状の曲面(凸部)を有しているので、シャーレ14に対する凸レンズ12aの姿勢が平行な状態からずれた場合であっても、凸レンズ12aの端部がシャーレ14に干渉せず、細胞群Mに適切に押し付けることができる。また、凸レンズ12aは、凸部の位置に基づき、細胞群Mに対して容易に位置合わせすることができる。凸レンズ12aは、その凸部の先端(凸レンズ12aの最下点)が最初に細胞群Mに接するように、細胞群Mに押し付けられることが好ましい。
 分散アーム12を、凸レンズ12aをx軸方向又はy軸方向に移動させることで、細胞群Mに適切に押し付け可能なように凸レンズ12aを位置合わせしてもよい。また、凸レンズ12aのx軸方向又はy軸方向の大きさが細胞群Mに対して小さい場合に、細胞群Mの全体を押し付け可能なように細胞群M上で凸レンズ12aをx軸方向又はy軸方向に移動させてもよい。
 また、シャーレ14内には、細胞群Mと共にビーズ状の固体粒子を含む溶液が収容されているので、凸レンズ12aを溶液中においてz軸方向に動かすことにより、溶液に流れが生じ、固体粒子が動く。そのため、固体粒子の動きを観察することで、細胞群Mに対して凸レンズ12aを位置合わせすることができる。一例として、溶液内で凸レンズ12aをz軸方向に動かすと、シャーレ14の底面近くのxy平面において、凸レンズ12aの最下点を中心として求心的又は遠心的な方向に固体粒子が動く。そして、この固体粒子の動き(溶液の流れ)を観察することにより、凸レンズ12aの最下点を同定することができる。また、凸レンズ12aが容器の底面に近接したときに観察されるニュートンリング様の像を指標として、凸レンズ12aを位置合わせしてもよい。
 分散アーム12は、手動及び電動のいずれの方法でも凸レンズ12aの位置を調整できるように構成されている。なお、電動で分散アーム12を駆動するために、分散アーム12は、複数のモータ(図示せず)を備えている。電動で分散アーム12を駆動する場合、分散アーム12は、試料調製システム100の制御部30が備えているアーム制御部31により制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
 凸レンズ12aは、細胞群Mを押し付ける方向に突出する凸部を有するものであればよく、レンズとして機能するものでなくてもよく、また、凸状の曲面を有していれば、その形状、大きさ及び材質は特に限定されない。凸レンズ12aの替わりに、ガラス基板や樹脂基板を用いることもできる。凸レンズ12aは、顕微鏡20からの観察光に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製、樹脂製等であればよい。凸レンズ12aのx軸方向及びy軸方向の大きさは、細胞群Mの全体をカバーする大きさである(細胞群Mよりも大きい)ことが好ましいが、凸レンズ12aをx軸方向及びy軸方向に移動させて押し付けることもできるため、細胞群Mより小さくてもよい。
 凸レンズ12aの形状は、細胞群Mに押し付けた場合に、細胞群Mが平行移動しないような形状であることが好ましい。凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けた場合に細胞群Mが平行移動してしまうと、細胞群Mが顕微鏡20の視野から外れて追跡(トラッキング)できなくなったり、細胞群Mを適切に分散させることができなくなったりし、好ましくない。
 凸レンズ12aは、細胞群Mを適切に分散させることができるように、シャーレ14の底面に平行な状態でz軸方向に移動し、細胞群Mに押し付けることが好ましいが、凸レンズ12aが適切な形状であれば、平行度からのずれが許容される。すなわち、凸レンズ12aは、平行ではない状態で細胞群Mに押し付けた場合でも、細胞群Mが顕微鏡20の視野から外れず、適切に細胞群Mを分散可能なように構成されていることが好ましい。このような凸レンズ12aの形状を検討すると、以下の通りである。
 シャーレ14の底面からの凸レンズ12aの平行度のずれ(θ)を許容可能な凸レンズ12aの曲率半径Rは、凸レンズ12aの半径rとしたとき、
  R≦r/sinθ・・・(式1)
を満たすことが好ましい。なお、凸レンズ12aの半径rの上限は、凸レンズ12aの周囲の空間(シャーレ14の大きさ等)に依存する。
 凸レンズ12aの半径rは、細胞群Mの長軸半径Lよりも大きいことが好ましく、したがって、
  L≦r≦R・・・(式2)
を満たすことが好ましい。そして、凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けた場合に細胞群Mが平行移動することを防ぐためには、半径rが一定の値L(≧L)よりも大きい必要がある(Lの値は、細胞群Mの変形や、細胞群Mと凸レンズ12a又はシャーレ14の底面との摩擦等の影響により変化する)。そのため、半径rは、
  L≦L≦r≦R・・・(式3)
を満たすことが好ましい。
 また、凸レンズ12aを細胞群Mの端部にも適切に押し付け可能な凸レンズ12aの形状について検討する。凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けた場合の細胞群Mの長軸半径Lとした場合、曲率半径Rの凸レンズ12aの最下点と、最下点から長軸半径L分だけずれた位置のレンズ表面との間の距離dは、
  d=R-sqrt(R^2-L^2)・・・(式4)
を満たすことが好ましい。ここで、細胞1個分の高さをdと仮定すると、凸レンズ12aの端部であっても細胞に押し付け可能とするためには、dはdより小さくすることが好ましい。したがって、式4において、例えば、L=0.1mm、d=0.01mmのとき、曲率半径Rは0.5mmより大きければよい。
 <分離アーム13>
 分離アーム13は、シャーレ14内に分散した細胞群Mにおいて、細胞間接着を分離するために用いられる。分離アーム13は、シャーレ14内の二次元平面上、すなわち、シャーレ14の底面上に分散した細胞群Mにおいて、細胞間接着を分離する。
 分離アーム13の先端には、ニードル13aが取り付けられている。分離アーム13は、図1のx軸方向に回転可能に構成されている。また、分離アーム13は複数のジョイントを有しており、ジョイントの動きを制御することにより、ニードル13aの先端の位置を、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の各方向に調節可能に構成されている。特に、ニードルの先端の位置をz軸方向に上下動させることによって、顕微鏡ステージ22を動かすことなく、ニードル13aの先端をシャーレ14内に挿入させたり、退避させたりすることができる。
 分離アーム13は、手動及び電動のいずれの方法でもニードル13aの位置を調整できるように構成されている。手動で分離アーム13を駆動する場合、一例として、油圧マニピュレータを用いる。電動で分離アーム13を駆動するために、分離アーム13は、複数のモータ(図示せず)を備えている。電動で分離アーム13を駆動する場合、分離アーム13は、試料調製システム100の制御部30が備えているアーム制御部31により制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
 ニードル13aは、先端に向かって先細りするテーパ形状であり、その先端の外径は細胞間に挿入して細胞間接着を分離させることが可能な大きさであればよく、対象となる細胞群の接着状態に応じて適宜設定され得る。ニードル13aは、顕微鏡20からの観察光に対して透光性を有する(本実施形態においては透明な)ガラス製、樹脂製等であればよい。
 (顕微鏡20)
 顕微鏡20は、撮像素子21、顕微鏡ステージ22、ステージ機構23、光源24、及びレンズ25を備えている。顕微鏡20は、除振台(図示せず)上に載置されている。
 撮像素子21は、レンズ25により結像されたシャーレ14内の画像を撮像し、該画像を表す画像データを生成する。顕微鏡20は、細胞の詳細な観察及び解析に好適なスペックを有する顕微鏡であることが好ましい。撮像素子21により生成された画像データは、記憶装置300に送られ、格納される。
 撮像素子21は、細胞群Mを分散させるときから、細胞を吸引するまで、シャーレ14内の画像(顕微鏡画像)を撮像する。撮像素子21は、細胞群Mの分散前、又は、分散を開始すると同時に、シャーレ14内の画像を撮像してもよい。撮像素子21は、シャーレ14内の画像を所定の時間間隔でタイムラプス撮像する。タイムラプス撮像の時間間隔は、シャーレ14内の細胞群Mの位置や状態の変化を追跡可能な値とすればよい。また、撮像素子21は、シャーレ14内を動画撮影してもよい。動画のフレームレートは、シャーレ14内の細胞群Mの位置や状態の変化を追跡可能な値とすればよい。撮像素子21は、シャーレ14内の画像の二次元画像データ又は三次元画像データを生成する。
 顕微鏡ステージ22は、シャーレ14を載置するためのステージである。顕微鏡ステージ22は、プレート22a及び外枠22bを備えている。また、顕微鏡ステージ22には、顕微鏡ステージ22の位置を調整するためのステージ機構23が設けられている。
 プレート22aは、シャーレ14を載置するための板状部材であり、光源24からの観察光に対して透光性を有するガラス製であり得る。
 外枠22bは、プレート22aを支持するための枠状部材であって、プレート22aの外縁を取り囲む形状に整形されている。外枠22bは、図1に模式的に示したステージ機構23により支持されている。外枠22bの位置は、ステージ機構23を用いることにより調整することができる。
 ステージ機構23は、外枠22bをx軸方向、y軸方向、及びz軸方向の各々に並進させることができ、かつ、外枠22bの主面(プレート22aの主面)をxy平面に対して傾斜させることができるように構成されている。
 ステージ機構23は、手動及び電動のいずれの方法でも外枠22bの位置を調整できるように構成されている。なお、電動でステージ機構23を駆動するために、ステージ機構23は、複数のモータを備えている。電動でステージ機構23を駆動する場合、ステージ機構23は、試料調製システム100の制御部30が備えているステージ制御部32により制御される。なお、複数のモータの態様は限定されるものではなく、例えば、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよい。
 顕微鏡ステージ22が上述したように構成されていることによって、顕微鏡ステージ22上のシャーレ14内にフォーカスが合うように顕微鏡20を調整した状態において、シャーレ14内と顕微鏡20との相対関係を変化させることなく(すなわちフォーカスが合った状態のまま)、シャーレ14内の細胞群Mから対象となる細胞を採取することができる。また、試料調製ロボット10を用いて所望の細胞を採取する間、シャーレ14内にフォーカスがあった状態のまま、所望の細胞をトラッキングすることができる。
 光源24は、シャーレ14に対して観察光(照明光、励起光等)を照射する光源である。シャーレ14内の明視野像を得るためには、対物レンズ26及び撮像素子21が顕微鏡ステージ22の下方に配置されていることに伴い、光源24は顕微鏡ステージ22の上方に配置される。この場合、顕微鏡ステージ22、シャーレ14、ニードル11a、凸レンズ12a、及びニードル13aは、光源24からの光に対して透光性を有することが好ましい。なお、上述した構成とは反対に、光源24を顕微鏡ステージ22の下方に配置し、対物レンズ26及び撮像素子21を顕微鏡ステージ22の上方に配置してもよい。
 シャーレ14内の蛍光画像を得る場合、一例として、対物レンズ26及び撮像素子21を顕微鏡ステージ22の下方に配置し、光源24からの励起光をシャーレ14内の細胞群Mの下方又は側方から照射するように構成し得る。また、他の例として、対物レンズ26及び撮像素子21を顕微鏡ステージ22の上方に配置し、光源24からの励起光をシャーレ14内の細胞群Mの上方又は側方から照射するように構成してもよい。なお、光源24、対物レンズ26、及び撮像素子21を含む光学系の構成はこれらの構成に限定されない。すなわち、上述した励起光の照射方向を実現できる限り、光源24の位置は限定されない。また、対物レンズ26が通過した光が撮像素子21に入射するようになっていれば、撮像素子21の位置は限定されない。
 レンズ25は、複数のレンズにより構成されており、そのうち一部のレンズは対物レンズ26を構成する。レンズ25は、シャーレ14内の画像を撮像素子21の受光面に結像する。
 (制御部30)
 制御部30は、アーム制御部(調節機構)31、ステージ制御部32、画像データ取得部33、及び位置同定部(追跡部)34を備えている。
 アーム制御部31は、試料調製ロボット10が備える3つのアームの駆動を制御し、各アームの先端の位置を調整する。特に、アーム制御部31は、分散アーム12の凸レンズ12aの最下点が、細胞群Mの中心近傍に対向する位置になるように、分散アーム12を駆動して凸レンズ12aの位置合わせをしてもよい。また、アーム制御部31は、凸レンズ12aの最下点がシャーレ14の底面に接触する位置(レンズ高さ0)を表す情報(基準位置)に基づき、凸レンズ12aのz軸方向の移動を制御してもよい。
 アーム制御部31は、凸レンズ12aをz軸方向に移動させて細胞群Mに押し付けた後、凸レンズ12aをx軸方向及びy軸方向に移動させてもよい。また、アーム制御部31は、凸レンズ12aをz軸方向に振動させてもよいし、x軸方向又はy軸方向に振動させてもよい。細胞群Mが三次元構造体である場合、アーム制御部31は、細胞群Mがシャーレ14内の二次元平面上に分散するまで、凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けるように制御することが好ましい。
 アーム制御部31は、凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けて、細胞群Mを分散させた後、凸レンズ12aをz軸方向に細胞群Mから離れる方向に移動させる。このとき、アーム制御部31は、凸レンズ12aをx軸方向又はy軸方向に細胞群Mから離れる方向に移動した後、z軸方向に細胞群Mから離れる方向に移動させてもよい。その後、アーム制御部31は、分離アーム13を駆動して細胞間接着を分離し、吸引アーム11を駆動して対象の細胞を吸引する。また、アーム制御部31は、凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けて、細胞群Mを分散させた後、分散した細胞群Mにさらに凸レンズ12aを押し付け、細胞群Mをより細胞数の小さいクラスタに分割するように制御してもよい。
 アーム制御部31は、凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けた場合や凸レンズ12aを細胞群Mから離れる方向に移動させた場合に、凸レンズ12aの移動に伴い細胞群Mが平行移動し、顕微鏡20の視野から外れてしまわないように制御することが好ましい。すなわち、アーム制御部31は、細胞群Mが平行移動して顕微鏡20の視野から外れてしまわないような速度で、凸レンズ12aを移動させることが好ましい。
 なお、撮像素子21により細胞群M中の細胞の追跡画像を取得する観点から、凸レンズ12aの移動速度は、撮像素子21のタイムラプス撮像の間隔又は動画のフレームレートより遅くすることが好ましい。アーム制御部31は、一例として、凸レンズ12aをz軸方向に、1秒間に数1μm程度移動させる。
 ステージ制御部32は、顕微鏡ステージ22のステージ機構23を制御することによって、プレート22a及び外枠22bの位置、すなわち、シャーレ14の位置を調整する。ステージ制御部32は、ステージ機構23を制御することにより、撮像素子21に対するシャーレ14の位置を調整することが可能であると共に、試料調製ロボット10が備える3つのアームに対するシャーレ14の位置を調整してもよい。
 なお、試料調製ロボット10が備える3つのアームの先端と、シャーレ14との相対位置は、アーム制御部31及びステージ制御部32のいずれかにより調整してもよいし、両方により調整してもよい。すなわち、アーム制御部31が各アームを駆動してシャーレ14に対する位置を調整してもよいし、ステージ制御部32が顕微鏡ステージ22を駆動してシャーレ14の各アームに対する位置を調整してもよいし、その両方であってもよい。したがって、アーム制御部31及びステージ制御部32の両方が、試料調製システム100の調整機構として機能し得る。
 画像データ取得部33は、撮像素子21が生成した画像データを取得し、位置同定部34及び記憶装置300へ送る。画像データ取得部33は、撮像素子21が画像データを生成する度毎に画像データを取得してもよいし、所定のタイミングで画像データを取得してもよい。
 位置同定部34は、分散のプロセスにおいて、細胞群Mをなす個々の細胞と、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行う。一例として、位置同定部34は、画像データ取得部33が取得した画像データを参照して、細胞群Mを分散させる前から細胞が採取されるまでの、細胞群M中の各細胞の位置を同定する。位置同定部34は、吸引アーム11により採取された細胞について、細胞群M中の元の位置を同定し得る。位置同定部34は、取得した画像データから、細胞群Mを分散させるときから細胞群の少なくとも一部を吸引するまでの時系列画像を生成し、画像間において各細胞を対応付け、各時点における各細胞の位置を追跡する。一例として、位置同定部34は、共焦点顕微鏡から得られる各ピクセル(x、y、z)をスキャンした結果を三次元画像として再構成することにより、各時点における各細胞の位置を追跡する。これにより、各細胞の細胞群Mにおける元の位置を同定してもよい。位置同定部34は、同定した各細胞の位置を表す位置データを記憶装置300へ送る。
 なお、位置同定部34は、上述したように分散のプロセス中に撮影された画像を参照する態様以外にも、各細胞の位置を検出するためのシグナルを取得する装置により、分散のプロセス前後の各細胞の位置を対応付けしてもよい。一例として、位置同定部34は、共焦点顕微鏡から得られる各ピクセルの情報を画像化するのではなく、各ピクセルの情報から各時点における各細胞の位置を算出する。
 (記憶装置300)
 記憶装置300は、撮像素子21により撮像した画像を記憶する。記憶装置300は、撮像素子21により生成した、細胞群Mを分散させる前から細胞群の少なくとも一部を吸引するまで撮像したシャーレ14内の画像データを格納する。また、記憶装置300は、位置同定部34が同定した位置データを格納してもよい。さらに、記憶装置300は、アーム制御部31による調整前の各アームの先端の位置、各アームの先端の移動距離や移動速度等の各アームを制御するための情報を格納してもよい。
 (試料調製方法)
 試料調製方法について説明する。試料調製方法は、一例として、試料調製システム100を用いた試料調製処理である。図3に示すように、試料調製方法においては、(1)細胞ラベリング、(2)細胞分散酵素処理(分散させる工程)、(3)細胞分散(分散させる工程)、及び(4)一細胞の分離及び採取(採取する工程)を、実行する。試料調製方法においては、上記(2)から(4)までの処理の間、処理を行うシャーレ14内の画像を取得し(撮像する工程)、取得した画像を参照して、上記(2)から(4)までの、各細胞の位置を同定する。
 (1)細胞ラベリング
 処理の対象となる細胞群Mの画像撮影及び追跡を可能とするために、細胞をラベリングする。細胞のラベリング方法としては、細胞の核、細胞膜、細胞内小器官、核膜、細胞質、DNA等を染色する方法、細胞質内の酵素の機能を利用して発光させる方法、細胞の自家蛍光を利用する方法、蛍光レポーター遺伝子を導入する方法等が挙げられる。
 図3に示す例では、培地中の細胞群Mを取り出し、染色液が入った容器中に移して核及び細胞膜を染色し、洗浄用の培地が入った容器に移して洗浄する。これにより、細胞をラベリングする。
 (2)細胞分散酵素処理
 細胞群Mにおける細胞間の接着を弱めるために、細胞分散酵素により細胞群を処理する。細胞分散酵素処理に用いられる酵素として、従来公知の細胞分散酵素を用いることが可能であり、一例として、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、プロテアーゼ、プロナーゼ、アキュターゼ等が挙げられる。また、細胞分散酵素に替えて、キレート剤、細胞間結合を阻害するなどの抗体や低分子化合物等を用いてもよい。キレート剤の例として、Ca2+に選択的に結合するEDTAが挙げられる。
 なお、元の細胞群Mにおける細胞間接着が弱い場合には、(2)の細胞分散酵素処理は行わず、(3)の細胞分散処理に進んでもよい。また、(2)の細胞分散酵素処理と(3)の細胞分散処理との順を入れ替えて、細胞分散処理された後の細胞群Mを細胞分散酵素により処理してもよい。
 図3に示す例では、分散酵素を含む溶液が入ったシャーレ14内に、染色された細胞群Mを移し、所定時間放置して酵素処理する。細胞分散酵素処理中のシャーレ14内を、撮像素子21により撮像し、酵素処理中の細胞群Mの画像データを取得する。なお、撮像素子21は、酵素処理の前から細胞群Mを撮像することが好ましい。
 (3)細胞分散
 細胞分散酵素により処理した細胞群Mを、分散アーム12の凸レンズ12aを用いて分散させる。凸レンズ12aを細胞群Mの上部に移動させ、シャーレ14の底面の方向に移動させて、細胞群Mに押し付ける。
 図3に示す例では、細胞群Mがオルガノイドのような三次元構造体であるため、当該細胞群Mが二次元平面上に分散するまで凸レンズ12aを押し付ける。細胞群Mが二次元平面上に分散した後、凸レンズ12aをシャーレ14の底面に平行な方向にずらしてから、当該底面から離れる方向に移動させる。細胞分散処理中のシャーレ14内を、撮像素子21により撮像し、分散処理中の細胞群Mの画像データを取得する。
 (4)一細胞の分離及び採取
 分散した細胞群Mから、対象となる一細胞を分離し、分離した細胞を採取する。図3に示す例では、二次元平面上に分散した細胞群Mから、分離アーム13のニードル13aにより対象となる一つの細胞を切り離して分離する。そして、分離した細胞を吸引アーム11のニードル11aにより吸引することで、対象となる細胞を採取する。一細胞の分離及び採取処理中のシャーレ14内を、撮像素子21により撮像し、一細胞の分離及び採取処理中の細胞群Mの画像データを取得する。
 試料調製方法によれば、上記(1)~(4)の工程のうち、(2)細胞分散酵素処理、(3)細胞分散、及び(4)一細胞の分離及び採取の処理の間、処理を行うシャーレ14内の画像を取得し、シャーレ14内の細胞を追跡する。試料調製方法においては、取得した画像に基づき、細胞群Mを分散させるときから一細胞を吸引するまでの時系列画像を生成し、各時点における各細胞の位置を抽出及び追跡することで、各細胞の位置を同定することができる。また、シャーレ14内の細胞を上記(2)~(4)の処理の間追跡することにより、細胞の形態や時間変化に関する情報を取得することもできる。
 (他の細胞分散処理の例)
 試料調製方法において、細胞分散処理は、分散アーム12を用いる方法に限定されず、他の細胞分散方法を用いてもよい。他の細胞分散方法としては、従来公知の細胞分散方法を用いることが可能であり、一例として、細胞に振動を与える方法、細胞を加温する方法、分散酵素溶液中に細胞を放置する方法、せん断応力のような溶液の流れを発生させる方法、電場や超音波を発生させる方法等が挙げられる。
 細胞に振動を与える方法の例として、超音波を利用する方法が挙げられる。細胞を加温する方法の例として、細胞膜に熱吸収しやすい材料(金粒子等)を付着させ、電磁波を照射する方法が挙げられる。分散酵素溶液中に細胞を放置する方法について、分散酵素処理した細胞は、時間の経過に伴って酵素反応が進行して細胞の分散が進むため、所望の状態に分散するまで細胞を放置することによって、細胞分散処理することができる。その結果、細胞毎の解析だけでなく、隣接する細胞と組織的に機能するような細胞の解析や、隣接細胞間の相互作用の解析等を行うことができる。
 〔解析装置200〕
 解析装置200は、試料調製システム100において採取した試料を解析する装置である。解析装置200としては、従来公知の細胞解析装置を用いることができる。解析装置200における試料解析は、一例として、RNA解析、ゲノム解析、タンパク質解析、代謝物解析、増殖能のような機能解析等が挙げられる。試料調製システム100は、細胞を壊すことなく採取することも可能であるため、解析装置200において細胞単位の機能解析を行うこともできる。また、試料調製システム100は、細胞のトラッキングに蛍光タンパク質を用いなくてもよいので、解析装置200においてヒトの検体の解析も可能である。また、解析装置200を用いた解析には、細胞群Mを分散させた溶液中において、細胞や細胞塊をそのまま継続して観察することが含まれ得る。このような解析には、一例として、細胞や細胞塊の分裂能、成長スピード、運動能、浸潤能等の解析や、ELISpot assay及びcomet assayが含まれる。さらに、解析装置200においては、細胞単位の解析だけではなく、膵島のような細胞塊で1つの機能単位とされている試料の解析(細胞塊単位の解析)も行う。
 図1に示す例では、顕微鏡ステージ201上に設けられたプレート202の各ウエルに、試料調製システム100の吸引アーム11により吸引した細胞を吐出することによって、細胞を解析装置200に搬送する。そして、解析装置200は、搬送された細胞を各種試料解析に供する。吸引アーム11からプレート202への細胞の搬送は、対物レンズ203を有する顕微鏡により観察しながら実行することができる。
 解析装置200は、試料調製システム100から解析の対象となる細胞を取得する共に、試料調製システム100において同定された、細胞群Mにおける対象細胞の元の位置に関する情報を取得して、試料解析に利用することができる。そのため、細胞毎の解析だけでなく、隣接する細胞と組織的に機能するような細胞の解析や、隣接細胞間の相互作用の解析等を行うことができる。
 (ソフトウェアによる実現例)
 試料調製システム100の制御部30の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
 後者の場合、試料調製システム100の制御部30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
 〔まとめ〕
 試料調製システム100は、複数の細胞が互いに接着した細胞群Mを収容し、当該細胞群Mを分散させるシャーレ(容器)14が載置された顕微鏡ステージ22と、分散した細胞群Mから試料を採取する吸引アーム(採取アーム)11と、細胞群Mを分散させるときから試料を採取するまで、シャーレ14内の顕微鏡画像を撮像する撮像素子21と、顕微鏡画像を参照して、細胞群Mを分散させる前から試料を採取するまでの、前記試料の位置を同定する位置同定部34を備えている。
 上記の構成によれば、細胞群Mを分散させるときから細胞群Mから試料を採取するまで、シャーレ14内の画像を撮像するので、当該画像に基づき細胞群Mを分散させるときから試料を採取するまでの時系列画像を生成することができる。そして、生成した時系列画像により、各時点における試料の位置を抽出及び追跡することで、細胞群Mにおける試料の元の位置を同定することができる。したがって、細胞群Mに含まれる試料の位置情報を取得すると共に、試料を採取することができる。
 また、試料調製システム100において、細胞群Mは三次元構造体であり、吸引アーム11は、シャーレ14内の二次元平面上に分散した細胞群Mから試料を採取することが好ましい。
 上記の構成によれば、三次元構造体である細胞群Mをシャーレ14内の二次元平面上に分散させて、細胞を採取するので、対象となる細胞を容易に採取することができる。また、三次元構造体の細胞群Mを二次元平面上に分散させる間の画像も取得するので、細胞群Mの三次元構造における対象細胞の三次元位置情報を取得することができる。
 また、試料調製システム100は、細胞群Mの上部からシャーレ14の底面の方向に細胞群Mを押し付ける面を、その先端に有する分散アーム12をさらに備えていることが好ましい。
 上記の構成によれば、分散アーム12の先端の凸レンズ12aを細胞群Mに押し付けることで、細胞群Mをシャーレ14内に分散させることができる。また、細胞群Mが三次元構造体であっても、凸レンズ12aを押し付けることで、シャーレ14内の二次元平面上に分散させることができる。
 また、試料調製システム100において、分散アーム12は、その先端に、細胞群Mを押し付ける方向に突出する凸部を有していることが好ましい。
 上記の構成によれば、分散アーム12の先端の凸レンズ12aは、凸部を有することにより、適切に細胞群Mを押し付けることが可能であり、また、細胞群Mに対する位置合わせが容易である。
 また、試料調製システム100は、細胞群Mに対する分散アーム12の先端の凸レンズ12aの位置を調整するアーム制御部(調整機構)31をさらに備えていることが好ましい。
 上記の構成によれば、アーム制御部31により細胞群Mに対する凸レンズ12aの位置を調整することにより、細胞群Mに対する凸レンズ12aの位置の調整が容易であり、凸レンズ12aを適切に細胞群Mに押し付けることができる。これにより、細胞群Mを適切に分散させることができる。
 また、試料調製システム100において、細胞群Mは、ビーズ状の固体粒子と共にシャーレ14内に収容されることが好ましい。
 上記の構成によれば、固体粒子の動きによりシャーレ14内の溶液の流れを観察することができ、溶液の流れを参照することで凸レンズ12aを適切に位置合わせすることができる。
 また、試料調製システム100は、撮像素子21により撮像した画像を記憶する記憶装置300をさらに備えていることが好ましい。
 上記の構成によれば、記憶装置300に格納された画像データから時系列画像を生成して、各時点における各細胞の位置を抽出及び追跡することで、各細胞の位置を同定するために用いることができる。
 また、試料調製システム100は、分散した細胞群Mから試料を分離する分離アーム13をさらに備え、吸引アーム11は、分離アーム13により分離した試料を吸引することが好ましい。
 上記の構成によれば、シャーレ14内に分散させた細胞群Mの細胞間接着が強い場合であっても、分離アーム13により切り離された細胞を吸引アーム11により吸引するので、対象となる細胞の採取が容易である。
 試料解析システム1は、上述した何れかの試料調製システム100と、試料調製システム100により採取した試料を解析する解析装置200とを備えている。
 試料解析システム1は、試料調製システム100において採取した試料を解析装置200において解析することで、RNA解析等の細胞から得られる成分の解析だけでなく、壊すことなく採取された細胞を用いて細胞単位の機能解析も可能である。また、試料調製システム100において同定された、細胞群Mにおける対象細胞の元の位置に関する情報を、解析装置200における試料解析において参照することもできる。
 試料調製方法は、複数の細胞が互いに接着した細胞群Mを分散させる工程と、分散した細胞群Mから試料を採取する工程と、分散させる工程から試料を採取する工程までの間の画像を撮像する工程と、撮像した画像を参照して、分散させる工程から試料を採取する工程までの、試料の位置を同定する工程とを包含する。これにより、上述した試料調製システム100と同様の効果を奏する。
 本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
 〔付記事項〕
 本発明を以下のように表現することもできる。
 (付記1)
 本発明の一態様にかかる複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する、分散のプロセスにおいて、前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行う追跡部を備えた、試料調製システム。
 (付記2)
 前記細胞群は三次元構造体である、付記1に記載の試料調製システム。
 (付記3)
 前記細胞群に押し付ける面を有する先端部が設けられた分散アームを備えている、付記1又は2に記載の試料調製システム。
 (付記4)
 前記分散アームは、前記細胞に押し付ける面に凸部を有する、付記3に記載の試料調製システム。
 (付記5)
 前記細胞群に対する前記分散アームの先端部の位置を調整する調整機構をさらに備えた、付記3又は4に記載の試料調製システム。
 (付記6)
 前記分散のプロセスにおける前記細胞群を観察する顕微鏡をさらに備えた、付記1から5の何れか1項に記載の試料調製システム。
 (付記7)
 前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群から、その一部を採取する採取アームをさらに備えた、付記1から6の何れかに記載の試料調製システム。
 (付記8)
 前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群から、その一部を分離する分離アームをさらに備えた、付記1から7の何れかに記載の試料調製システム。
 (付記9)
 付記1から8の何れかに記載の試料調製システムと、前記試料調製システムにより調製した試料を解析する解析装置とを備えた、試料解析システム。
 (付記10)
 複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する工程であって、前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行いながら、前記細胞群を分散する工程を包含する、試料調製方法。
 〔実施例1〕
 三次元サンプル(オルガノイド)の各細胞の位置情報を記録しながら、細胞を分散、追跡、及び採取した。
 (1-1.サンプルの操作に使用する3つのアーム)
 顕微鏡ステージ周囲に3軸(x軸、y軸、及びz軸)方向に移動制御可能なアームを3組設置した(吸引アーム、分散アーム、及び分離アーム)。各アームの先端には、(i)吸引・吐出用ポンプ付きガラス管(内径150μm、ヨダカ技研株式会社、A150S7522-6)、(ii)直径2mm、曲率半径1mmの凸レンズ(アズワン株式会社、3-6932-01)、及び(iii)細胞分離用ガラスニードル(外径10μm、ヨダカ技研株式会社、A06S7522-6)を取り付けた。
 (1-2.溶液の準備)
 表1に示す各溶液(サンプル液、染色液、洗浄液、細胞分散液)の入った容器(松浪硝子、D11140H)をそれぞれ、顕微鏡ステージ上に配置した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 (1-3.凸レンズの基準位置決め)
 顕微鏡ステージを動かして、細胞分散液の入った容器の中心を視野中心に移動し、凸レンズを細胞分散液に浸した。溶液内で凸レンズを上又は下に動かすと、溶液内ポリスチレンビーズが、容器の底面近くのxy平面においてレンズの最下点を中心として求心的又は遠心的な方向に動く。このことから、このビーズの動き(溶液の流れ)の観察により凸レンズの最下点を同定し、凸レンズの最下点が顕微鏡視野の中心にくるようにx軸方向及びy軸方向の位置を調整した。その後、凸レンズが容器の底に(近)接したときに観察されるニュートンリング様の像を指標とし、凸レンズのx軸方向、y軸方向、及びz軸方向の位置を微調整した。
 具体的には、溶液中で凸レンズの高さを少しずつ下げていき、ニュートンリング様の像が初めて明瞭に観察される位置(凸レンズの最下点が容器の底に接して、凸レンズの振動等がおさまる位置)を決めた。さらに、観察された像の中心が顕微鏡視野中心にくるように微調整して、凸レンズのx軸方向及びy軸方向の位置を決めた。このときの凸レンズのx軸方向、y軸方向、及びz軸方向の位置を凸レンズの基準位置とした。基準位置の決定後に凸レンズを容器外に動かし、サンプルの吸引及び吐出操作や、顕微鏡ステージ移動の妨げにならない待機位置に保持した。
 (1-4.サンプルの染色)
 顕微鏡ステージを動かし、サンプル液内を観察しながら、ガラス管を用いて目的のサンプルを吸引し、染色液の入った容器にサンプルを吐出した後、15分間室温で染色した。染色後、再度ガラス管を用いてサンプルを吸引し、洗浄液の入った容器にサンプルを吐出して余剰染色液を除いた。その後、共焦点レーザー顕微鏡システム(倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E、共焦点ユニットA1R HD25、Nikon)を用いて、染色したサンプルの三次元蛍光画像を取得した。取得した、染色直後の細胞核の三次元蛍光画像(z軸間隔:5μm、スライス枚数:20枚)を図4に示す。
 (1-5.細胞分散酵素処理)
 染色したサンプルをガラス管により吸引し、細胞分散液を入れた容器にサンプルを吐出した後、サンプルが視野中心にくるように顕微鏡ステージを移動した。同時に凸レンズを待機位置から動かし、上記1-3.において決定した基準位置から高さ200μmの点に静置した。凸レンズの移動完了後すぐに、三次元蛍光タイムラプス撮影を開始し、最初の5分間は1分おきに画像を取得した。その後、さらに28分後及び42分後に画像を取得した。取得した、細胞分散酵素処理時間の経過に伴う細胞核の位置変化を図5に示す。
 (1-6.凸レンズによる細胞分散)
 細胞分散酵素処理後、サンプルを明視野観察しながら凸レンズを少しずつ下げ、凸レンズがサンプルに近づき、サンプルの形が変わり始めた位置(高さ60μm)で三次元蛍光画像を取得した。その後、電動マニピュレータのプログラム機能を用いて、「速度10μm/secでz方向に+2μm移動し、-3μm移動する上下運動を計5回繰り返すことで、元の位置より5μm下方に移動させる」操作を繰り返してレンズ位置を少しずつ下げた。このとき、高さ50、40、30、25、及び20μmの位置において、それぞれ三次元蛍光画像を取得した。これにより、三次元サンプル(オルガノイド)を構成する各細胞が、凸レンズの動きにより分散し、二次元平面上に配置されていく様子を記録した。凸レンズによる細胞分散の過程における細胞の位置変化を図6に示す。
 (1-7.凸レンズの移動及び除去)
 分散したサンプル上にある凸レンズを溶液外へ移動した。凸レンズの移動中は、CMOSカメラ(Zyla、Andor)により明視野観察像を動画として撮影し、凸レンズの移動に伴う細胞の移動を記録した。このとき、細胞の移動(距離、速度等)が動画で追跡可能な範囲にとどまるよう、凸レンズの移動方向及び移動速度を制御した。具体的には、レンズをz軸方向に0.4μm/secで100μm上方移動させた後、y軸方向に20μm/secで約2mm平行移動させ、その後再度z軸方向に20μm/secで上方移動させて液面から引きあげた。レンズの移動に伴う細胞位置の変化を図7に示す。
 (1-8.一細胞の分離及び採取)
 細胞分離用ガラスニードルを操作し、二次元平面に分散したサンプルの細胞塊において、細胞間接着を切断し、各細胞を分離した(図8)。分離した細胞をガラス管により吸引し、PCRチューブに吐出及び回収した。細胞の分離及び回収の様子は、CMOSカメラ(Zyla、Andor)により明視野観察像を動画として撮影及び記録した。細胞分離用ガラスニードルを用いて、サンプルの細胞塊から一細胞を分離する様子を図8に示す。
 (1-9.細胞の追跡)
 上記1-5.~1-8.で取得した時系列画像(動画)の解析を行った。画像統合ソフトウェアNIS-Elements C(Nikon)を使用して、画像処理(Denoise.AIによるノイズ除去)を行った後、三次元再構成した時系列画像を生成した。生成した時系列画像を逆再生しながら、回収した細胞の各時点における位置を抽出及び追跡し、分散前のサンプルにおける三次元位置を同定した。単離及び採取した細胞の分散過程における三次元位置及び移動軌跡を、図9に示す。図9においては、上記1-5.及び1-6.において記録された各細胞の細胞核(中心付近)のピクセル座標(x、y)及び撮影時のz軸方向のスライス番号(z)を、三次元プロットで示した。図9中の各マーカーは、同じと思われる細胞(12個)の移動点を示し、例として3つの細胞の移動軌跡を実線で示した。
 図9に示すように、サンプルである細胞集団における各細胞について、細胞分散、分離、及び採取する間の各時点の位置情報を取得し、細胞の移動軌跡を追跡可能であることが示された。また、三次元サンプルにおける各細胞の三次元位置についても、好適に同定及び追跡可能であった。
 〔実施例2〕
 三次元サンプル(オルガノイド)の各細胞の位置情報を記録しながら、細胞を分散し、二次元平面上に配置した。本実施例においては、後述するように、吸引アーム及び分散アームを用いて、細胞分散までの処理を実行した。
 (2-1.サンプルの操作に使用する2つのアーム)
 顕微鏡ステージ周囲に3軸(x軸、y軸、及びz軸)方向に移動制御可能なアームを2組設置した(吸引アーム、分散アーム)。各アームの先端には、(i)吸引・吐出用ポンプ付きガラス管(内径150μm、ヨダカ技研株式会社、A150S7522-6)、(ii)直径2mm、曲率半径1mmの凸レンズ(アズワン株式会社、3-6932-01)を取り付けた。
 (2-2.容器の準備)
 本実施例においては、サンプルの染色用容器及び分散用容器(松浪硝子、D141400)を、それぞれ、ポリ-L-リシン(Sigma-Aldrich, P8920)でコーティングして用いた。サンプル用容器(松浪硝子、D11140H)と合わせて、3つの容器を顕微鏡ステージ上に配置した。
 (2-3.凸レンズの基準位置決め)
 顕微鏡ステージを動かして、分散用容器のウエル中心部を視野中心に移動した。本実施例においては。分散アームを動かし、凸レンズの最下点が顕微鏡視野の中心にくるようにx軸方向及びy軸方向の位置を調整した。その後、凸レンズが容器の底に(近)接したときに観察されるニュートンリング様の像を指標とし、凸レンズのx軸方向、y軸方向、及びz軸方向の位置を微調整した。具体的には、分散用容器中に分散液を入れずに凸レンズの位置合わせを行う点以外は、実施例1と同様に凸レンズの位置合わせを行い、基準位置を決定した。
 (2-4.溶液の準備)
 下記の表2に示す各溶液(サンプル液、染色液、洗浄液、細胞分散液A、細胞分散液B、希釈液)を準備した。サンプル液をサンプル用容器に、染色液と洗浄液を染色用容器のそれぞれ別のウエルに、細胞分散液Aを分散用容器に入れた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 (2-5.サンプルの染色)
 顕微鏡ステージを動かし、サンプル液内を観察しながら、ガラス管を用いて目的のサンプルを吸引し、染色用容器の染色液の入ったウエルにサンプルを吐出した後、20分間室温で染色した。染色後、再度ガラス管を用いてサンプルを吸引し、洗浄液の入ったウエルにサンプルを吐出して余剰染色液を除いた。その後、共焦点レーザー顕微鏡システム(倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E、共焦点ユニットA1R HD25、Nikon)を用いて、染色したサンプルの三次元蛍光画像を取得した。取得した、染色直後の細胞核の三次元蛍光画像(z軸間隔:2μm、スライス枚数:60枚、Denoise.aiによるノイズ除去処理済)を図10に示す。
 (2-6.細胞分散溶液処理)
 本実施例においては、細胞分散液B及び希釈液を分散用容器に追加しながら、細胞の分散液による処理中の画像を取得した。具体的には、染色したサンプルをガラス管により吸引し、細胞分散液Aを入れた分散用容器にサンプルを吐出した後、サンプルが視野中心にくるように顕微鏡ステージを移動し、0、10、及び25分後に三次元蛍光画像を取得した。25分後の画像取得の後すぐに、マイクロピペットを用いて、サンプルが動かないよう静かに細胞分散液Bを注ぎ入れた。細胞分散液Bの追加後、10、20、30、及び40分経過した時点で三次元蛍光画像を取得した。撮影完了後、マイクロピペットを用いて希釈液を静かに注ぎ入れ、30分静置した。取得した、細胞分散溶液処理時間の経過に沿った細胞核の位置変化を図11に示す。
 (2-7.凸レンズによる細胞分散)
 本実施例においては、細胞を二次元平面上に配置させた後、さらに凸レンズにより二次元平面上において細胞を分散させた。
 具体的には、希釈液を追加し静置した後、凸レンズを待機位置から動かし、上記2-3.において決定した基準位置から高さ200μmの点に移動させた。サンプルを明視野観察しながら凸レンズを少しずつ下げ、凸レンズがサンプルに近づき、サンプル上部に触れ始めた位置(高さ75μm)で三次元蛍光画像を取得した。その後、電動マニピュレータのプログラム機能を用いて、「速度10μm/secでz軸方向に+2μm移動し、-3μm移動する上下運動を計5回繰り返すことで、元の位置より5μm下方に移動させる」操作を繰り返してレンズ位置を少しずつ下げた。このとき、高さ60、50、40、及び35μmの位置において、それぞれ三次元蛍光画像を取得した。
 これにより、三次元サンプル(オルガノイド)を構成する各細胞が、凸レンズの動きにより分散し、二次元平面上に配置されていく様子を記録した。この記録により3次元空間内の位置から2次元平面内の位置に移動中の個々の細胞を追跡した。凸レンズによる細胞分散の過程における細胞の位置変化を図12に示す。
 さらに、二次元平面内に配置された後における細胞の位置を明視野画像で記録しながら、電動マニピュレータのプログラム機能を用いて、「速度8μm/secでz軸方向に2μmの幅で上下運動を繰り返す」操作を行った。この操作と同時に、顕微鏡ステージを動かして、細胞を二次元平面上でさらに分散させた。二次元平面上における分散前後の細胞位置の変化を図13に示す。
 本発明は、細胞解析に用いることにより、医薬分野等に利用することができる。
 1   試料解析システム
 M   細胞群
 10  試料調製ロボット
 11  吸引アーム(採取アーム)
 12  分散アーム
 12a 凸レンズ
 13  分離アーム
 14  シャーレ(容器)
 21  撮像素子
 22  顕微鏡ステージ
 31  アーム制御部(調節機構)
 34  位置同定部(追跡部)
 100 試料調製システム
 200 解析装置
 300 記憶装置

 

Claims (10)

  1.  複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する、分散のプロセスにおいて、
     前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行う追跡部
    を備えた、試料調製システム。
  2.  前記細胞群は三次元構造体である、請求項1に記載の試料調製システム。
  3.  前記細胞群に押し付ける面を有する先端部が設けられた分散アームを備えている、請求項1又は2に記載の試料調製システム。
  4.  前記分散アームは、前記細胞に押し付ける面に凸部を有する、請求項3に記載の試料調製システム。
  5.  前記細胞群に対する前記分散アームの先端部の位置を調整する調整機構をさらに備えた、請求項3に記載の試料調製システム。
  6.  前記分散のプロセスにおける前記細胞群を観察する顕微鏡をさらに備えた、
    請求項1又は2に記載の試料調製システム。
  7.  前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群から、その一部を採取する採取アームをさらに備えた、請求項1又は2に記載の試料調製システム。
  8.  前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群から、その一部を分離する分離アームをさらに備えた、請求項1又は2に記載の試料調製システム。
  9.  請求項1又は2に記載の試料調製システムと、
     前記試料調製システムにより調製した試料を解析する解析装置と
    を備えた、試料解析システム。
  10.  複数の細胞が互いに接着した細胞群において、隣接する細胞間の接着の少なくとも一部を切り離して分散する工程であって、
     前記細胞群をなす個々の細胞と、前記隣接する細胞間の接着の少なくとも一部が切り離された細胞群をなす個々の細胞との対応付けを行いながら、前記細胞群を分散する工程
    を包含する、試料調製方法。
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