WO2023074543A1 - 長尺状医療機器およびその製造方法 - Google Patents

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聡一 二見
佑珠 ▲高▼田
秦平 山本
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Abstract

より簡便な方法によりハイドロゲル膜が形成された長尺状医療機器を提供する。 基材と、基材を被覆する膨潤ゲル膜と、を備える長尺状医療機器において、膨潤ゲル膜は、ベタイン構造を有する重合単位と、カルボキシル基を有する重合単位(但し、前記ベタイン構造を有する重合単位を除く。)と、を含むポリマー(a1)を含む。

Description

長尺状医療機器およびその製造方法
 本明細書に開示される技術は、長尺状医療機器およびその製造方法に関する。
 一般に、血管内等の体内へ挿入される医療機器等には、血管内等への良好な挿入性や、血管内等での良好な操作性が求められる。このため、例えば、長尺状医療機器としてのガイドワイヤやカテーテルでは、その表面に親水性ポリマー等を塗布することにより、ガイドワイヤ表面に良好な潤滑性を付与し、良好な挿入性や操作性を確保している。
 一方、長尺状医療機器上にコーティングするポリマー組成物として、両性イオン性モノマーもしくはポリアルキレングリコールモノマー、シリコーンもしくはフルオロカーボンモノマー、もしくはこれらの組合せ、または、アルキルで置換されたメタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、もしくはビニルモノマー、もしくはこれらの組合せのうちの2種またはそれ超から形成されるオリゴマー性またはポリマー性添加剤を含む、表面改質化添加剤組成物が知られている。上記コーティングは、浸漬コーティング等により表面改質化添加剤組成物を医療機器上に塗布することにより行われている。また、上記両性イオン性モノマーの一種として、カルボキシベタインモノマーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特表2018-524029号公報
 長尺状医療機器等の表面における潤滑性を確保する観点から、その表面に生体適合性の高いハイドロゲル膜を形成することがある。しかしながら、従来では、ハイドロゲル膜を形成するために、例えば、親水性モノマーへ架橋剤等を添加し、架橋された親水性ポリマーを作製する方法や、親水性ポリマーを塗布後にUV照射することにより架橋された親水性ポリマーを作製する方法等、煩雑な工程を含む方法が採用されている。また、上記架橋剤等を利用する方法によれば、例えば、生体適合性等の性能面を維持するために未反応の架橋剤を除去する工程を要することもある。このため、これらの煩雑な工程を経ることなく、より簡便な方法により、長尺状医療機器等の表面にハイドロゲル膜を形成する方法や、当該ハイドロゲル膜が形成された長尺状医療機器を提供することが求められていた。
 なお、より簡便な方法により、長尺状医療機器の表面にハイドロゲル膜を形成する方法や、当該ハイドロゲル膜が形成された長尺状医療機器を提供するという課題は、血管内等の体内へ挿入される医療機器に限らず、潤滑性が要求される医療機器や、他の基材一般に共通の課題である。
 本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
 本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される長尺状医療機器は、基材と、前記基材を被覆する膨潤ゲル膜と、を備える。前記膨潤ゲル膜は、ベタイン構造を有する重合単位と、カルボキシル基を有する重合単位(但し、前記ベタイン構造を有する重合単位を除く。)と、を含むポリマー(a1)を含む。本長尺状医療機器によれば、良好な潤滑性を有しながら、架橋剤を用いずに、加熱だけで膨潤ゲル膜を形成することができる。
(2)上記長尺状医療機器において、前記ベタイン構造を有する重合単位は、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含む構成としてもよい。
(3)上記長尺状医療機器において、前記膨潤ゲル膜は、膨潤度が180%以上、900%以下である構成としてもよい。
(4)上記長尺状医療機器において、前記膨潤ゲル膜は、前記ポリマー(a1)中のベタイン構造を有する重合単位:カルボキシル基を有する重合単位のモル比が、80:20~60:40である構成としてもよい。
(5)上記長尺状医療機器において、前記基材は、ガイドワイヤまたはカテーテルである構成としてもよい。
(6)本明細書に開示される長尺状医療機器の製造方法は、コーティング剤を基材上に塗布する塗布工程と、前記コーティング剤を加熱することにより、膨潤ゲル膜を形成させる形成工程と、を含み、前記コーティング剤は、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含むポリマーと、25℃におけるハンセン溶解度パラメータにおいて、分散項δDが10~24MPa1/2、極性項δPが5~19MPa1/2、水素結合項δHが3~17MPa1/2であり、100℃より高い沸点を有する有機溶媒と、水と、を含み、前記形成工程では、前記ポリマー中のエステル結合が加水分解することにより、前記膨潤ゲル膜が形成される。本長尺状医療機器の製造方法によれば、コーティング剤が、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含むポリマーと、上記ハンセンの溶解度パラメータを満たし、沸点が100℃超の有機溶媒とを含んでいるため、煩雑な工程を経ることなく、基材上に膨潤ゲル膜を良好に形成することができる。
(7)上記長尺状医療機器の製造方法において、前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ダイアセトンアルコール(DAOH)、および、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)から選択される少なくとも一種である構成としてもよい。
(8)上記長尺状医療機器の製造方法において、前記基材は、ガイドワイヤまたはカテーテルであり、前記形成工程において、前記ポリマー中のエステル結合の加水分解率は、20%以上、40%以下である構成としてもよい。本膨潤ゲル膜の形成方法によれば、適度な膨潤度に調整することができるため、ガイドワイヤまたはカテーテルに適した潤滑性を有する膨潤ゲル膜を形成することができる。
本実施形態におけるガイドワイヤ100の縦断面(YZ断面)の構成を概略的に示す説明図 本実施形態における膨潤ゲル膜GMの形成方法を概念的に示す説明図 本実施形態における膨潤ゲル膜GMの形成方法における加水分解反応を示す反応式
A.実施形態:
A-1.コーティング剤CA:
 本実施形態のコーティング剤CAは、下記一般式(1)で表されるポリマーPAと、有機溶媒HSとを含有する。
<ポリマーPA>
 下記式(1)で表されるように、本実施形態のポリマーPAは、エステル結合型ベタイン構造の繰り返し単位(以下、「構成単位a1」とよぶ)を含んでいる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、Yは-COO又は-SO であり、mは1以上の整数である。)ポリマーPAにおける構成単位a1の割合は、例えば、10~100モル%である。
 上記エステル結合型ベタイン構造の繰り返し単位としては、例えば、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(GLBT)、3-{[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ}プロピオナート(CEBMA)、3-{[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ}プロパン-1-スルホネート(SPBMA)等に由来する繰り返し単位である。中でも、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(GLBT)に由来する繰り返し単位であることが好ましい。
 ポリマーPAは、下記一般式(2)で表されるように、上記式(1)で表される構成単位a1に加えて、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する繰り返し単位(以下、「構成単位a2」とよぶ)を含んでいてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である繰り返し単位であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは少なくとも1つの炭素原子に水酸基が結合された炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Yは-COO又は-SO であり、mおよびnはそれぞれ独立に1以上の整数である。)構成単位a2を含むことによって成膜性や基材との密着性が向上する。ポリマーPAにおける構成単位a2の割合は、例えば、0~90モル%である。
 ポリマーPAは、上記式(1)で表される構成単位a1に加えて、エステル結合型以外のベタイン構造の繰り返し単位(以下、「構成単位a4」とよぶ)を有してもよい。構成単位a4としては、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、Yは、-COO又は-SO であり、mは1以上の整数である。)ポリマーPAにおける構成単位a4の割合は、例えば、0~90モル%である。
 上記エステル結合型以外のベタイン構造の繰り返し単位としては、例えば、2-{ジメチル[3-(2-メチルプロプ-2-エンアミド)-プロピル]アンモニオ}アセテート(MAMCMB)、3-[(3-メタクリロイルアミノ-プロピル)-ジメチル-アンモニオ]-プロピオネート(MAMCEB)、3-[(3-アクリロイルアミノ-プロピル)-ジメチル-アンモニオ]プロパン-1-スルホネート(SPBAM)、3-[(3-メタクリロイルアミノ-プロピル)-ジメチル-アンモニオ]プロパン-1-スルホネート(SPBMAM)等のアミド結合型ベタイン構造を有するモノマーに由来する繰り返し単位である。
 すなわち、ポリマーPAは、上記式(1)で表される構成単位a1を単一の繰り返し単位として有するホモポリマーであってもよく、また、構成単位a1と、上記式(2)で表される構成単位a2と、を有するコポリマーであってもよいし、さらに、他の単量体に基づく構成単位を有する重合体であってもよい。ポリマーがコポリマーである場合、ポリマーPAは、構成単位a1と構成単位a2とのランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
 上記ポリマーPAは、形成される膜の親水性及び水膨潤性を向上させやすい観点から、少なくとも1種の親水性構造を有する構成単位をさらに含んでもよい。親水性構造を有する構成単位における親水性構造としては、アミド構造(例えば、(メタ)アクリルアミド構造等)、アルキレンオキシド構造、及びラクタム構造(例えば、α-ラクタム(三員環)、β-ラクタム(四員環)、γ-ラクタム(五員環)、δ-ラクタム(六員環)等)からなる群から選択される少なくとも1種の構造が挙げられる。アミド構造を持つモノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アルキレンオキシド構造を持つモノマーの具体例としては、エチレングリコール、メトキシエチレングリコール等が挙げられる。ラクタム構造を持つモノマーの具体例としては、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドンなどが挙げられる。
 ポリマーPAが親水性構造を有する構成単位をさらに含む場合、親水性構造を有する構成単位の割合は、形成される膜の親水性及び水膨潤性を向上させやすい観点から、ポリマーPAの全構成単位に基づいて、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。また、形成される膜の対水性及び基材に対する密着性を向上させやすい観点から、ポリマーPAの全構成単位に基づいて、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下である。
 本実施形態のコーティング剤CAにおいて、ポリマーPAは、例えば、下記式(4)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
(式(4)中、mおよびnはそれぞれ独立に1以上の整数である。)
 すなわち、本実施形態において、ポリマーPAは、例えば、構成単位a1として、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(CMB)に由来する繰り返し単位を含有し、構成単位a2として、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)に由来する繰り返し単位を含有するランダム共重合体である。本実施形態において、ポリマーPAにおけるCMBとHPMAとのモル比は、例えば、90:10~10:90であり、好ましくは60:40~40:60である。本実施形態において、ポリマーPAの分子量は、例えば、1万以上、200万以下であり、例えば、約10万である。
 なお、本実施形態のコーティング剤CAに含有されるポリマーPAは、上記式(4)において、HPMAに代えて、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含有していてもよく、また、HPMAとHEMAとを含有した三次元共重合体であってもよい。また、ポリマーPAは、構成単位a1,a2に加えて、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシエチルアクリレート(MEA)、n-ブチルメタクリレート(BMA)、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン(BEMA)等が挙げられる。
<有機溶媒HS>
 ポリマーPAを有機溶媒HSに溶解させることにより、高温環境下においてもコーティング剤CA(具体的には、ポリマーPA)の流動性を確保することができ、この結果、後述の膨潤ゲル膜GMを良好に形成することができる。詳しくは、後で説明する。
 本実施形態の有機溶媒HSは、25℃におけるハンセン溶解度パラメータにおいて、分散項δDが10~24MPa1/2、極性項δPが5~19MPa1/2、水素結合項δHが3~17MPa1/2である。例えばハンセン溶解度パラメータの水素結合項δHが17MPa1/2を超える場合、該溶媒のポリマーPAに対する非相溶性が低くなり、場合によっては溶解性になるため、ポリマーPAから形成されるゲル構造が生じにくくなる。その結果、得られる膜の耐水性や膨潤性を高めにくくなる。また、ポリマーPAが、構成単位a1を含むポリマーである場合には、ポリマーPAの後述する加水分解が生じにくくなり、その結果ゲル構造が生じにくくなる。水素結合項δHが3を下回る場合、及び、極性項δPが5を下回る場合、水との適度な混和性を示さなくなり、場合によっては分離するため、ポリマーPAから形成されるゲル構造が生じにくくなる。
 上記分散項δDは、10~24MPa1/2であり、好ましくは12~20MPa1/2であり、より好ましくは15~19MPa1/2である。上記極性項δPは、5~19MPa1/2であり、好ましくは8~17MPa1/2であり、より好ましくは10~15MPa1/2でる。上記水素結合項δHは、3~17MPa1/2、であり、好ましくは5~14MPa1/2であり、より好ましくは7~13MPa1/2である。
 有機溶媒HSのハンセン溶解度パラメータは、計算ソフトHansen Solubility Parameter in Practice(H SPiP、メーカー;Charles M.Hansen)に収録されている値を用いてよい。コーティング剤CAが1種類の有機溶媒を含有する場合、該有機溶媒のハンセン溶解度パラメータが上記の範囲内であればよい。2種類以上の有機溶媒を含有する場合、そのうちの少なくとも1つの有機溶媒が、上記のハンセン溶解度パラメータを満たすものであればよい。
 有機溶媒HSのハンセン溶解度パラメータは、その分散項δD、極性項δP及び水素結合項δHが、以下:
  √((δD-17)+(δP-12)+(δH-10))≦7
の関係を満たすことが好ましい。該式により算出される値は、好ましくは7以下である。上記の式は、分散項δD=17、極性項δP=12、水素結合項δH=10である中心値に対し、相互作用半径R=7.0であるハンセン球内に該有機溶媒が属していることを表す。
 また、本実施形態の有機溶媒HSは、100℃超、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上、さらにより好ましくは150℃以上、特に好ましくは180℃以上、の沸点を有する高沸点有機溶媒である。本実施形態の有機溶媒HSは、より好ましくは、極性溶媒であり、更に好ましくは、非プロトン性極性溶媒である。また、得られる水膨潤性膜の製造性や入手の容易性の観点から、有機溶媒HSの沸点は、好ましくは205℃以下である。なお、コーティング剤CAが複数種の有機溶媒を含有する場合、少なくとも1種の有機溶媒が、上記の沸点を有する有機溶媒であればよい。
 コーティング剤CAは、ポリマーPAおよび有機溶媒HSに加えて、水を含有する。コーティング剤CAが水を含有している構成では、コーティング剤CAは、水と有機溶媒HSとの混合溶媒と、ポリマーPAと、を含み、コーティング剤CAに対して、ポリマーPAの濃度が、例えば、1wt%以上が好ましく、2wt%以上がより好ましく、3wt%以上がさらに好ましい。また、20wt%以下が好ましく、15wt%以下がより好ましく、10wt%以下がさらに好ましい。さらにより好ましくは5wt%程度であればよい。また、上記混合溶媒における有機溶媒HSの割合は、例えば、5wt%以上が好ましく、10wt%以上がより好ましく、15wt%以上がさらに好ましい。また、50wt%以下が好ましく、45wt%以下がより好ましく、40wt%以下がさらに好ましい。さらにより好ましくは、15wt%程度である。
A-2.膨潤ゲル膜GM:
 本実施形態の膨潤ゲル膜GMは、下記一般式(5)で表されるポリマーPBを含有する。より具体的には、膨潤ゲル膜GMは、水を含んで膨潤したハイドロゲル膜であり、その膨潤度は、例えば、膨潤度が180%以上、900%以下であり、好ましくは300%以上、800%以下である。なお、上記膨潤度は、膨潤ゲル膜GMを十分に乾燥(例えば、水含有量を0.1重量%以下に乾燥)した時の膜厚をd1、膨潤ゲル膜GMを十分に膨潤させた時の膜厚をd2としたとき、d2/d1×100(%)として算出される。また、本実施形態において、膨潤ゲル膜GMは、物理架橋ゲルを意味する。
<ポリマーPB>
 下記式(5)で表されるように、本実施形態のポリマーPBは、上述の構成単位a1と、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位(以下、「構成単位a3」とよぶ)とを含んでいることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、Yは-COO又は-SO であり、mおよびoはそれぞれ独立に1以上の整数である。)
 ポリマーPBは、下記一般式(6)に表されるように、上記式(5)で表される構成単位a1および構成単位a3に加えて、上述の構成単位a2を含んでいてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
(式(6)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である繰り返し単位であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは少なくとも1つの炭素原子に水酸基が結合された炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Yは-COO又は-SO であり、m、nおよびoはそれぞれ独立に1以上の整数である。)
 上記ポリマーPBはまた、ベタイン構造を有する重合単位を含んでいれば、構成単位a1を含んでいなくてもよい。例えば、上述した構成単位a4と、構成単位a3とを含むポリマーであってもよい。構成単位a4と構成単位a3との相互作用により膨潤ゲル膜を形成することができる。このようなポリマーPBは、ポリマーPAとして構成単位a1と、構成単位a4と、を含むポリマーを用い、構成単位a1のエステル結合型ベタイン構造を全て加水分解させて構成単位a3にすることで得られる。また、構成単位a1と、構成単位a4と、構成単位a3とを含むポリマーであってもよい。
 上記膨潤ゲル膜に包含されるポリマーPBは、ベタイン構造を有する重合単位と、カルボキシル基を有する重合単位と、を含む。ポリマーPBにおいて、ベタイン構造を有する重合単位:カルボキシル基を有する重合単位は90:10~10:90(モル比)であることが好ましく、80:20~60:40(モル比)であることがより好ましい。
 すなわち、ポリマーPBは、上記式(5)で表されるように、構成単位a1と構成単位a3とのコポリマーであってもよく、また、上記式(6)で表されるように構成単位a1と、構成単位a2と、構成単位a3と、を有するコポリマーであってもよいし、上記式(5)又は式(6)で表される構造に、更に、構成単位a4を含むポリマーであってもよい。また、構成単位a1を含まない、構成単位a4と、構成単位a3とのコポリマー、構成単位a4と、構成単位a2と、構成単位a3とのコポリマー、であってもよい。ポリマーPBは、上記構成単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
 本実施形態の膨潤ゲル膜GMにおいて、ポリマーPBは、例えば、下記式(7)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
(式(7)中、m、nおよびoはそれぞれ独立に1以上の整数である。)
 すなわち、本実施形態において、ポリマーPBは、例えば、構成単位a1として、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(CMB)に由来する繰り返し単位を含有し、構成単位a2として、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)に由来する繰り返し単位を含有し、構成単位a3として、メタクリル酸(MA)に由来する繰り返し単位を含有するランダム共重合体である。本実施形態において、ポリマーPBにおけるCMBとHPMAとMAとのモル比は、例えば、47:50:3~40:50:10であり、より好ましくは、45:50:5~43:50:7である。本実施形態において、ポリマーPBの分子量は、例えば、1万以上、200万以下である。
 なお、本実施形態の膨潤ゲル膜GMに含有されるポリマーPBは、上記式(7)において、HPMAに代えて、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含有していてもよく、また、HPMAとHEMAとを含有した三次元共重合体であってもよい。また、ポリマーPBは、構成単位a1,a2,a3に加えて、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシエチルアクリレート(MEA)、n-ブチルメタクリレート(BMA)、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン(BEMA)等が挙げられる。
 本実施形態において、膨潤ゲル膜GM中のポリマーPBの割合は、例えば、1wt%以上、30wt%以下が好ましく、3wt%以上、20wt%以下がより好ましい。
A-3.ガイドワイヤ100:
 図1は、本実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、ガイドワイヤ100の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。なお、図1では、ガイドワイヤ100の一部分の図示が省略されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の可撓性を有している。
 なお、本明細書では、説明の便宜上、ガイドワイヤ100が図1に示された状態であるものとし、Z軸方向を「ガイドワイヤ100の軸方向」または単に「軸方向」といい、Z軸を中心とする回転方向を「ガイドワイヤ100の周方向」または単に「周方向」という。
 ガイドワイヤ100は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテルを案内するために、血管等に挿入される長尺状の医療用デバイスである。ガイドワイヤ100の全長は、例えば1500mm~3000mm程度であり、ガイドワイヤ100の外径は、例えば0.5~1.2mm程度である。
 ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部32と、基端側接合部34と、上述の膨潤ゲル膜GMからなる樹脂部40とを備えている。コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部32と、基端側接合部34との少なくとも1つは、特許請求の範囲における基材の一例である。
 コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である長尺状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11より径の大きい棒状の太径部13と、細径部11と太径部13との間に位置し、細径部11との境界位置から太径部13との境界位置に向けて径が徐々に大きくなるテーパ部12とから構成されている。コアシャフト10の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、例えば、円形や平板形である。太径部13の外径は、例えば0.2~0.6mm程度である。
 コアシャフト10を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。コアシャフト10は、全体が同じ材料により構成されていてもよいし、部分毎に互いに異なる材料により構成されていてもよい。
 図1に示すように、コイル体20は、素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材であり、コアシャフト10の外周を取り囲むように配置されている。コイル体20を構成する形成材料としては、公知の材料が使用され、例えば金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。
 先端側接合部32は、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とを接合する部材である。すなわち、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とが、先端側接合部32の内部に埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部32の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面)となっている。また、基端側接合部34は、軸方向に沿ってコアシャフト10の基端と先端との間の所定の位置において、コアシャフト10とコイル体20の基端とを接合する部材である。すなわち、コイル体20の基端は、基端側接合部34の内部に埋め込まれるようにして固着されている。
 先端側接合部32および基端側接合部34を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等が使用される。本実施形態では、先端側接合部32および基端側接合部34を構成する材料として、ロウ材が使用されている。
 樹脂部40は、樹脂により形成され、コイル体20、先端側接合部32および基端側接合部34の外周面を覆うコート部材である。樹脂部40は、上述の膨潤ゲル膜GMから構成されている。樹脂部40の厚みは、例えば0.01~0.1mm程度である。樹脂部40は、コイル体20の外周面において、素線の外周面の形状に沿って、略均一に配置されている。
A-4.膨潤ゲル膜GMの形成方法:
 次に、本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法の一例を説明する。図2は、基材上に膨潤ゲル膜GMを形成する方法を概念的に示す説明図である。なお、図2には、基材としてのガイドワイヤの一部分の構成が示されている。また、膨潤ゲル膜GMの形成方法は、ガイドワイヤ100の製造方法の一部である。
 はじめに、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部32と、基端側接合部34と、が組み立てられたガイドワイヤを準備する(図2(A)参照)。次いで、上述のコーティング剤CAを準備する。すなわち、コーティング剤CAは、エステル結合型ベタイン構造の繰り返し単位である構成単位a1と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する繰り返し単位である構成単位a2とを含むポリマーPAと、有機溶媒HSとを含有している。上記準備されたガイドワイヤのコイル体20の外周面と、先端側接合部32および基端側接合部34の外表面(以下、「ガイドワイヤ表面」ともよぶ)とにコーティング剤CAを塗布する(塗布工程、図2(B)参照)。コーティング剤CAを塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、浸漬法(ディップコート法)、噴霧法(スプレー法)等が挙げられる。
 次いで、コーティング剤CAを100℃超の温度で加熱することにより、膨潤ゲル膜GMを形成させる(形成工程、図2(C)参照)。より詳しくは、コーティング剤CAに含まれるポリマーPA中のエステル結合が加水分解することにより、膨潤ゲル膜GMが形成される。より具体的には、例えば、コーティング剤CAが塗布されたガイドワイヤを、熱風循環式乾燥炉にて所定温度で所定時間(例えば、120℃で3時間)乾燥させることにより、ポリマーPA中のエステル結合を加水分解する。形成工程における、ポリマーPA中のエステル結合の加水分解率は、良好な保水性と良好な潤滑性とを兼ね備えた膨潤ゲル膜GMを得る観点から、例えば、20%以上、40%以下である。上記加水分解率を実現すべく、形成工程における、加水分解温度は、例えば、110℃以上、より好ましくは115℃以上、135℃以下、加水分解時間は、例えば、30分以上、5時間以下とすることができる。このような高温での加水分解を実現すべく、コーティング剤CAに含まれる有機溶媒HSを加水分解温度に応じて選択することができる。以上の工程により、ガイドワイヤ表面上に膨潤ゲル膜GM(樹脂部40)を形成することができる(図2(D)参照)。
 このように、本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法では、コーティング剤CAを用いることにより、一般的に加水分解反応において用いられる架橋剤を用いることなく、加熱のみによって加水分解を進行させ、膨潤ゲル膜GMを形成することができる。以下に、コーティング剤CAから膨潤ゲル膜GMを形成する際のメカニズムについて説明する。なお、以下では、コーティング剤CAに含有されるポリマーPAが、上記式(4)で表されるように、構成単位a1としてCMBを、構成単位a2としてHPMAを有している構成について説明するが、以下のメカニズムは、構成単位a1および構成単位a2が、上述のいずれかの繰り返し単位であるポリマーPAや、構成単位a2を有していないポリマーPAについても同様に適用される。
 図3に、上述の形成工程における加水分解反応を示す。このように、形成工程を経ることにより、ポリマーPAを構成するCMBの繰り返し単位の一部が加水分解され、MAの繰り返し単位を有するポリマーPBが生成される。すなわち、ポリマーPAが加水分解されることにより、正電荷を有するCMBの繰り返し単位と、負電荷を有するMAの繰り返し単位とを一分子内に含むポリマーPBを生成することができる。ここで、MAの繰り返し単位におけるカルボキシル基は、高い負電荷を帯びている。このため、正電荷を帯びたベタイン構造と、高い負電荷を帯びたカルボキシル基との間で強い静電相互作用が良好に誘発され、その結果、ポリマーPBは、各分子内においてゲル化を進行させることができたと考えられる。
 また、ベタイン構造部分と、カルボキシル基とは、例えば下記の図に示すような反応により、その少なくとも一部においてアンフォライト化しているとも考えられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 したがって、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含むポリマーを、コーティング剤CAに含まれる特定の有機溶媒HSと水の存在下で、エステル結合部分が加水分解されるような、例えば100℃を超える温度で加熱することによって、下記のような相互作用が生じ、アンフォライトに由来する架橋構造も形成され、水膨潤性の膜が形成されると考えられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 上述したように、本実施形態では、コーティング剤CAが有機溶媒HSを含んでいることにより、コーティング剤CAから膨潤ゲル膜GMを良好に形成することができる。コーティング剤CAに含まれるポリマーPA中のエステル結合は、高温環境下(例えば、110℃以上)で良好に加水分解される。このため、コーティング剤CAでは、有機溶媒HSを含んでいることにより、コーティング剤CA(具体的には、ポリマーPA)の流動性を維持しつつ、ポリマーPA中のエステル結合が良好に加水分解可能な高温環境を実現することができる。この結果、ポリマーPAの分子内外において、均一に加水分解を進行させることができる。また、コーティング剤CAでは、高温環境下でのコーティング剤CAの流動性を維持できることにより、加水分解を経て生成されたポリマーPB中において、ポリマーPBを構成する分子鎖の柔軟性を確保することができる。この結果、ポリマーPB中のベタイン構造とカルボキシル基とが、強い静電相互作用を誘発させることが可能な程度に近づくことができるため、分子内においてゲル化を進行させることができる。従って、コーティング剤CAが有機溶媒HSを含んでいることにより、ポリマーPAの加水分解を均一に進行させることができ、ひいては、潤滑性の良好な膨潤ゲル膜GMを形成することができる。
A-5.性能評価:
 膨潤ゲル膜GM(樹脂部40)を備えたガイドワイヤ100について、以下の項目につき性能評価を行った。まず、サンプルS1~S5の作製方法について説明する。
<サンプルS1>
(ポリマーPAの合成)
 まず、CMB(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:GLBT) 0.014molと、HPMA(富士フィルム和光純薬製、商品名:メタクリル酸ヒドロキシプロピル)0.014molとを、混合溶液(水:エタノール比 50:50) 20gに添加し、溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、過硫酸アンモニウム(東京化成工業株式会社製、商品名:APS) 0.00026molを更に添加し、溶解させた。得られた溶液を60℃の恒温槽で20時間撹拌しつつ反応させることにより、CMB-HPMA共重合体を含むポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、20倍量のアセトン溶液に滴下して再結晶させ、濾過後真空乾燥してポリマー固体(ポリマーPA)を得た。得られたポリマーPAの数平均分子量は、約10万であった。ポリマーPAの数平均分子量は、NMR(核磁気共鳴)およびGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定した。
(コーティング剤CAの調製)
 有機溶媒HS(富士フィルム和光純薬製、商品名:1-メチル-2-ピロリドン(NMP))を含む混合溶液(蒸留水:NMP比 70:30)にポリマーPAを溶解させて、5wt%のポリマー溶液を調製した。本性能評価では、ポリマー溶液の粘度を上げるために、上記ポリマー溶液に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC、Sigma-Aldrich社製、商品名:CMC ultra high viscosity) 0.3wt%を添加し、撹拌してコーティング剤CAを調整した。なお、CMCの添加量は、基材上に形成する膨潤ゲル膜GMの厚みに応じて、適宜調整することができる。より具体的には、CMCを添加しなくてもよく、また、CMCに代えて、低粘剤を添加してもよい。また、CMCに代えて、他の増粘剤を添加してもよい。
(膨潤ゲル膜GMの形成方法)
 コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部32と、基端側接合部34と、を備えたガイドワイヤに対して、ディップコート法により、上述のコーティング剤CAを塗布した。その後、加熱温度120℃、加熱時間3時間で加水分解した。具体的には、120℃の熱風循環乾燥炉内で、3時間乾燥させて、ガイドワイヤ上に膨潤ゲル膜GM(樹脂部40)を形成し、サンプルS1を作製した。
 ポリマーの分解率は、液体クロマトグラフィーにて、エステル結合型ベタイン構造の加水分解により生じるHCMB[2-(2-ヒドロキシエチルジメチルアンモニオ)アセテート]を定量し、HCMB量(mol) およびポリマー中の理論GLBT量(mol,仕込み量)より下記式にあてはめて算出した。
 分解率(%)=HCMB(mol)/ポリマー中の理論GLBT(mol)×100
<サンプルS2~S5>
 調製条件を下記表1に示すように変更した以外は、サンプルS1と同様の条件でサンプルS2~S5を作製した。
<性能評価結果>
 下記表1には、サンプルS1~S5の潤滑性および膜強度についての評価結果が示されている。潤滑性は、サンプルS1~S5をそれぞれ生理食塩水に浸漬し、その後、指先で膨潤ゲル膜GM部分を挟んで擦過させた際の感触により評価した。当該感触において、ヌルヌルしている状態を潤滑性「A」(潤滑性:高)とし、ザラザラしている状態を潤滑性「B」(潤滑性:低)とした。また、膨潤ゲル膜GMの存在が確認されないときを潤滑性「C」(膨潤ゲル膜なし)とした。また、膜強度は、抵抗値の測定により評価した。すなわち、抵抗値が低いほど、膜強度が高いことを意味する。抵抗値の測定は、サンプルS1~S5をそれぞれ、上のウレタンローラー(ミスミ製、AXFM-D25-L15-V8-N)と下のステンレス板(SUS304、30mm×30mm)との間に挟み、ウレタンローラーが100gとなるように重量を調整した状態とし、その上で流水を周辺に流しながら、サンプルを引っ張った際の抵抗荷重をフォースゲージで測定することにより実施した。また、初期抵抗値および50回抵抗値を測定し、両者を比較することにより耐久性を評価した。初期抵抗値は、1回目の測定で得られた抵抗値であり、50回目抵抗値は、同様の測定を連続して50回行った際の50回目の測定で得られた抵抗値である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 潤滑性の評価結果において、サンプルS1~S3は「A」(潤滑性:高)であったのに対して、サンプルS4は「B」(潤滑性:低)であった。上述したように、サンプルS1~S3では、加熱温度が120℃であるのに対して、サンプルS4では、加熱温度が80℃と低い温度である。このように、サンプルS4では、膨潤ゲル膜GMを乾燥する際の加熱温度が低かったため、コーティング剤CAに含まれるポリマーPAの加水分解が十分に行われなかったことに起因するものと考えられた。すなわち、ポリマーPAの加水分解が十分に行われたサンプルS1~S3と比較して、サンプルS4では、加水分解後のポリマーPB中のMAに由来する繰り返し単位(構成単位a3)がなく、この結果、ポリマーPB中においてベタイン構造との静電相互作用が低く、ゲル化が進行しなかったと考えられた。
 サンプルS5の潤滑性の評価結果は、「C」(膨潤ゲル膜なし)であった。すなわち、サンプルS5では、ガイドワイヤ上に膨潤ゲル膜の存在が確認されなかった。これは、サンプルS5では、コーティング剤が有機溶媒HSを含んでいなかったことにより、ポリマーPA中のエステル結合が良好に加水分解可能な高温環境を実現できなかったことに起因するものと考えられた。すなわち、ポリマーPBのゲル化が進行せず、上記生理食塩水に浸漬した際に、コーティング剤が流失したと考えられた。
 膜強度の評価結果において、良好な膨潤ゲル膜GMが形成されたサンプルS1~S3では、サンプルS4,S5と比較して、初期抵抗値および50回目抵抗値ともに低い結果となった。すなわち、サンプルS1~S3は、サンプルS4,S5と比較して高い膜強度を有することが確認できた。また、サンプルS1~S3では、50回目抵抗値においても、初期抵抗値と同等の抵抗値を得ることができた。換言すれば、サンプルS1~S3における膨潤ゲル膜GMは、良好な膜強度および耐久性を有していることを意味する。従って、サンプルS1~S3は、良好な潤滑性を有しつつ、良好な膜強度および耐久性を有することが確認できた。
A-6.本実施形態の効果:
 以上説明したように、本実施形態のコーティング剤CAは、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)を含むポリマーPAと、25℃におけるハンセン溶解度パラメータにおいて、分散項δDが10~24MPa1/2、極性項δPが5~19MPa1/2、水素結合項δHが3~17MPa1/2であり、沸点が100℃超の有機溶媒である有機溶媒HSと、を含んでいる。本実施形態のコーティング剤CAが有機溶媒HSを含んでいることにより、コーティング剤CAから膨潤ゲル膜GMを良好に形成することができる。より具体的には、コーティング剤CAに含まれるポリマーPA中のエステル結合は、高温環境下(例えば、110℃以上)で良好に加水分解される。このため、本実施形態のコーティング剤CAでは、有機溶媒HSを含んでいることにより、コーティング剤CA(具体的には、ポリマーPA)の流動性を維持しつつ、ポリマーPA中のエステル結合が良好に加水分解可能な高温環境を実現することができる。この結果、ポリマーPAの分子内外において、均一に加水分解を進行させることができる。また、本実施形態のコーティング剤CAでは、高温環境下でのコーティング剤CAの流動性を維持できることにより、加水分解を経て生成されたポリマーPB中において、ポリマーPBを構成する分子鎖の柔軟性を確保することができる。ここで、ポリマーPBは、一分子内に、正電荷を有するエステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)と、負電荷を有する(メタ)アクリル酸重合単位(構成単位a3)とを有する。また、(メタ)アクリル酸重合単位(構成単位a3)に含まれるカルボキシル基は、高い負電荷を帯びている。上述の通り、本実施形態のコーティング剤CAでは、ポリマーPBを構成する分子鎖の柔軟性が確保できることにより、ポリマーPB中において、正電荷を帯びたベタイン構造と、高い負電荷を帯びたカルボキシル基とが、強い静電相互作用を誘発させることが可能な程度に近づくことができる。このため、ポリマーPBの分子内においてゲル化を進行させることができる。従って、本実施形態のコーティング剤CAによれば、有機溶媒HSを含んでいることにより、煩雑な工程を経ることなく、換言すれば、単に100℃超の温度で加熱することにより、ポリマーPAの加水分解を均一に進行させることができ、ひいては、潤滑性の良好な膨潤ゲル膜GMを形成することができる。また、本実施形態のコーティング剤CAによれば、比較的粘度の低い状態で基材(ガイドワイヤ100のコイル体20等)の表面に塗布することができるため、ガイドワイヤ100等の複雑な表面形状を有する医療機器の表面においても、当該表面からの離脱が抑制された、膨潤ゲル膜GMを形成することができる。
 本実施形態のコーティング剤CAにおいて、有機溶媒HSは、25℃におけるハンセン溶解度パラメータにおいて、分散項δDが10~24MPa1/2、極性項δPが5~19MPa1/2、水素結合項δHが3~17MPa1/2であり、100℃より高い沸点を有する有機溶媒であり、特にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ダイアセトンアルコール(DAOH)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)から選択される少なくとも一種である。上記有機溶媒HSとして、非プロトン性極性溶媒であり、沸点が比較的高い(例えば、150℃以上)の上記溶媒を用いることにより、上記高温環境下におけるコーティング剤CAの流動性をより良好に維持することができる。従って、本実施形態のコーティング剤CAによれば、より効果的にポリマーPAの加水分解を均一に進行させることができ、ひいては、潤滑性の良好な膨潤ゲル膜GMを形成することができる。
 本実施形態の膨潤ゲル膜GMは、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)と、(メタ)アクリル酸重合単位(構成単位a2)と、を含むポリマーPBを含んでいる。すなわち、本実施形態の膨潤ゲル膜GMによれば、膨潤ゲル膜GMに含まれるポリマーPBが、一分子内に、正電荷を有するエステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)と、負電荷を有する(メタ)アクリル酸重合単位(構成単位a3)とを有する。また、(メタ)アクリル酸重合単位(構成単位a3)に含まれるカルボキシル基は、高い負電荷を帯びている。このため、本実施形態の膨潤ゲル膜GMは、ポリマーPBを構成する各分子内において、正電荷を帯びたベタイン構造と、高い負電荷を帯びたカルボキシル基との間で、強い静電相互作用が良好に誘発され、その結果、各分子内においてゲル化状態を良好に維持することができる。
 本実施形態のガイドワイヤ100には、上述の膨潤ゲル膜GMが被覆されている。このため、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、各分子内において良好なゲル化状態が維持された膨潤ゲル膜GMを備えたガイドワイヤ100を提供することができる。
 本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法は、コーティング剤CAを基材上に塗布する塗布工程と、コーティング剤CAを100℃超の温度で加熱することにより、膨潤ゲル膜GMを形成させる形成工程と、を含んでいる。コーティング剤CAは、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)を含むポリマーPAと、沸点が100℃超の有機溶媒HSと、を含んでいる。形成工程では、ポリマーPA中のエステル結合が加水分解することにより、膨潤ゲル膜GMが形成される。本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法によれば、コーティング剤CAが、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位(構成単位a1)を含むポリマーPAと、沸点が100℃超の有機溶媒HSとを含んでいるため、煩雑な工程を経ることなく、基材上に膨潤ゲル膜GMを良好に形成することができる。
 本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法において、基材は、ガイドワイヤである。また、形成工程において、ポリマーPB中のエステル結合の加水分解率は、20%以上、40%以下である。本実施形態の膨潤ゲル膜GMの形成方法によれば、適度な膨潤度に調整することができるため、ガイドワイヤ100に適した潤滑性を有する膨潤ゲル膜GMを形成することができる。
〔参考例(樹脂組成物1~16)〕
 GLBT、HPMA、MAAをモル比が43:50:7、モノマー総濃度が10%になるように、水に溶解させた以外はポリマーPAの合成と同様に行うことで、ポリマーの溶液を得た。得られたポリマーの粘度平均分子量は100,000であった。このようにして得たポリマーの溶液とNMPとを1:0.15の質量比で混合し、樹脂組成物を得た。樹脂組成物における共重合体、有機溶媒、および水との質量比は、共重合体:有機溶媒:水=8.7:13.0:78.3であった。
 上記で得た共重合体を含む樹脂組成物(表2中、樹脂組成物5-1として示す)において、NMPに代えて、表2に示す各溶媒を用いたこと以外はポリマーPAの合成と同様にして、樹脂組成物5-2~5-16を得た。これらの樹脂組成物の不溶性膜形成性、耐水性、および水膨潤性を上記と同様に測定した。結果を表2に示す。
(不溶性膜形成性)
 樹脂組成物をテフロン(登録商標)コーティングされたトレイに広げた後、市販の温風乾燥機を用いて、85℃で3時間乾燥した。得られた共重合体固形物10部に90部の水を加え、室温で30分間撹拌した後、24時間静置し、溶液の状態を次の基準で評価した。
 A:溶液が透明である
 B:溶液中に溶け残りがある、又は溶液が白濁する
(耐水性 目視評価)
 樹脂組成物2.5部をテフロン(登録商標)コーティングされたトレイ(10cm×10cm)に広げた後、125℃の雰囲気下で3時間放置し、硬化物を得た。硬化物をトレイから剥ぎ取り、剥ぎ取った硬化物2部を容器に入れ、水98部を加えて室温で24時間静置した後、溶液の状態を目視で確認し次の基準で評価した。なお、評価結果をカッコつきで示しているものは予測値を示す。後述の他の評価においても同様である。
 A:硬化物が膨潤した状態で残留している。
 B:硬化物が溶解している、あるいは、膨潤していない状態で残留している。
(水膨潤性 目視評価)
前述した耐水性と同様にして得られた硬化物2部を容器に入れ、水98部を加えて室温で24時間静置した後、溶液の状態を目視で確認し次の基準で評価した。
 A:硬化物が膨潤した状態で残留している。
 B:硬化物が溶解している、あるいは、膨潤していない状態で残留している。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
B.変形例:
 上記実施形態において、膨潤ゲル膜GMを被膜する基材は、ガイドワイヤ100以外の医療機器であってもよく、良好な潤滑性が求められる他の基材であってもよい。
 上記実施形態では、長尺状医療機器として、ガイドワイヤを例に用いて説明したが、本明細書に開示される技術は、例えばカテーテルといった他の長尺状医療機器にも同様に適用可能である。以下、長尺状医療機器について説明する。
 長尺状医療機器:
 本発明の長尺状医療機器は、体内に挿入して用いる医療機器とすることができる。具体的には、本発明の長尺状医療機器は、例えば、外周が金属製の長尺状医療機器や、外周がウレタン等の樹脂で形成された長尺状医療機器を基材として用い、基材の表面に既述した膨潤ゲル膜を形成した長尺状医療機器とすることができる。本発明の長尺状医療機器としては、例えば、ガイドワイヤまたはカテーテルを、特に好適な形態として挙げることができる。具体的には、例えば、外周が金属製のガイドワイヤ、外周がポリウレタン等の樹脂製の中空シャフトを備えるカテーテル等を、基材として用いることができる。
 本開示のカテーテルとしては特に限定されず、例えば、ガイディングカテーテル、貫通カテーテル、マイクロカテーテル、バルーンカテーテル、異物除去カテーテル、造影カテーテル、胆管カテーテル、尿道カテーテル、内視鏡、ダイレータ等の、任意のカテーテルで適用可能である。また、本開示のガイドワイヤとしても特に限定されず、例えば、冠動脈治療用のPCIガイドワイヤ、下肢血管治療用のPTAガイドワイヤ、抹消血管治療用のIVRガイドワイヤ、脳血管治療用のINRガイドワイヤ、造影用のCAGガイドワイヤ等の、任意のガイドワイヤに適用可能である。
 本実施形態の長尺状医療機器は、より具体的には、例えば、以下の(a)~(e)に示すような種々の構成を採用可能である。以下の(a)~(e)における膨潤ゲル膜は、本明細書で述べた、ベタイン構造を有する重合単位と、カルボキシル基を有する重合単位と、を含むポリマー(a1)を含む膨潤ゲル膜である。また、下記の被覆層や管状部材を形成する材料としては、樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド、ポリイミド、変性ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ乳酸、及びそれらを組み合わせた樹脂等が挙げられる。
(a)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に設けられた被覆層と、該被覆層の表面に形成された膨潤ゲル膜と、を備えるガイドワイヤ。
(b)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に線材が螺旋状に巻回されたコイル層と、該コイル層の表面に形成された膨潤ゲル膜と、を備えるガイドワイヤ。
(c)線状のコアワイヤと、該コアワイヤの外周の少なくとも一部に線材が螺旋状に巻回されたコイル層と、該コイル層の外周に設けられた被覆層と、該被覆層の表面に形成されたゲル膜と、を備えるガイドワイヤ。
(d)管状部材と、該管状部材の表面に形成された膨潤ゲル膜と、を備えるカテーテル。
(e)管状部材と、該管状部材の片端に配置されたバルーンと、該バルーンの表面に形成された膨潤ゲル膜と、を備えるカテーテル。
 ただし、本実施形態の長尺状医療機器は、上記した(a)~(e)とは異なる構成であってもよく、ガイドワイヤまたはカテーテル以外の長尺状医療機器としてもよい。長尺状医療機器の少なくとも一部の表面に、上述した膨潤ゲル膜を備えていればよい。
10:コアシャフト 11:細径部 12:テーパ部 13:太径部 20:コイル体 32:先端側接合部 34:基端側接合部 40:樹脂部 100:ガイドワイヤ CA:コーティング剤 GM:膨潤ゲル膜 HS:有機溶媒 PA:ポリマー PB:ポリマー

Claims (8)

  1.  基材と、前記基材を被覆する膨潤ゲル膜と、を備える長尺状医療機器において、
     前記膨潤ゲル膜は、ベタイン構造を有する重合単位と、カルボキシル基を有する重合単位(但し、前記ベタイン構造を有する重合単位を除く。)と、を含むポリマー(a1)を含む、
     長尺状医療機器。
  2.  請求項1に記載の長尺状医療機器であって、
     前記ベタイン構造を有する重合単位は、エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含む、
     長尺状医療機器。
  3.  請求項1または請求項2に記載の長尺状医療機器であって、
     前記膨潤ゲル膜は、膨潤度が180%以上、900%以下である、
     長尺状医療機器。
  4.  請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の長尺状医療機器であって、
     前記膨潤ゲル膜は、前記ポリマー(a1)中のベタイン構造を有する重合単位:カルボキシル基を有する重合単位のモル比が、80:20~60:40である、
     長尺状医療機器。
  5.  請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の長尺状医療機器であって、
     前記基材は、ガイドワイヤまたはカテーテルである、
    長尺状医療機器。
  6.  長尺状医療機器の製造方法であって、
     コーティング剤を基材上に塗布する塗布工程と、
     前記コーティング剤を加熱することにより、膨潤ゲル膜を形成させる形成工程と、を含み、
     前記コーティング剤は、
      エステル結合型ベタイン構造を有する重合単位を含むポリマーと、
      25℃におけるハンセン溶解度パラメータにおいて、分散項δDが10~24MPa1/2、極性項δPが5~19MPa1/2、水素結合項δHが3~17MPa1/2であり、100℃より高い沸点を有する有機溶媒と、
      水と、を含み、
     前記形成工程では、前記ポリマー中のエステル結合が加水分解することにより、前記膨潤ゲル膜が形成される、
     長尺状医療機器の製造方法。
  7.  請求項6に記載の長尺状医療機器の製造方法において、
     前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ダイアセトンアルコール(DAOH)、および、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)から選択される少なくとも一種である、
     長尺状医療機器の製造方法。
  8.  請求項6または請求項7に記載の長尺状医療機器の製造方法であって、
     前記基材は、ガイドワイヤまたはカテーテルであり、
     前記形成工程において、前記ポリマー中のエステル結合の加水分解率は、20%以上、40%以下である、
     長尺状医療機器の製造方法。
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