JP2015057081A - 潤滑コート剤および当該潤滑コート剤で被覆されてなる医療デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な潤滑維持性を有する潤滑性被膜を形成できる潤滑コート剤を提供する。【解決手段】繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有するブロックコポリマーを含有する、潤滑コート剤。【選択図】なし
Description
本発明は、潤滑コート剤および当該潤滑コート剤で被覆されてなる医療デバイスに関する。
カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等生体内に挿入される医療デバイスは、血管などの組織損傷を低減させ、かつ術者の操作性を向上させるため、優れた潤滑性を示すことが要求される。このため、潤滑性を有する親水性高分子を基材層表面に被覆する方法が開発され実用化されている。このような医療デバイスにおいて、親水性高分子が基材層表面から溶出・剥離してしまうことは、安全性や操作性の維持といった点で問題である。また、親水性高分子によるコーティングには、優れた潤滑性のみならず磨耗や擦過等の負荷に対する耐久性も要求される。さらに、特に血管内に挿入される医療デバイスにおいては、血液凝固反応を誘起しないよう血液適合性も併せ持つ必要がある。
これらの要求を満たすべく、特許文献1には、水溶性または水膨潤性重合体を医療デバイスの基材層が膨潤する溶媒に溶解して重合体溶液を作製し、この重合体溶液に医療デバイスの基材層を浸漬して膨潤させ、さらに基材層表面でこの重合体を架橋または高分子化させることによって、基材層表面に表面潤滑層を形成した医療デバイスが開示されている。
上記特許文献1に記載の方法でも、比較的良好な潤滑性・血液適合性を示す表面潤滑層を、ある程度強固に基材層に固定することができる。しかしながら、近年の医療デバイスの小型化・細径化の進歩は著しく、生体内のより屈曲性が高く、狭い病変部位へと医療デバイスをアプローチする医療手技が広まりつつある。複雑な病変部位でもデバイスの操作性を良好に保つためには、従来よりもさらにデバイス表面の潤滑性を高める技術が要求されている。加えて、心臓血管系手術などの長時間に渡る手技であってもデバイス表面へ血栓が付着しないよう、血液適合性のさらなる向上も望まれている。
一方、近年の潤滑性表面の研究からは、これまでより優れた低摩擦性を実現できる表面設計が報告されている。例えば、非特許文献1では、semi−IPN構造を有するハイドロゲル表面が顕著な低摩擦性を発現することが報告されている。しかしながら、上記非特許文献1では、バルクのハイドロゲルで低摩擦性を実現できてはいるものの、予め第1のネットワークを形成するハイドロゲルを形成させた後に第2のネットワークであるポリマーを重合する工程が必要であることから、複雑な形状のデバイスへは適応しにくく、工程も煩雑になるため、医療デバイスへ実用化するには未だハードルがある。
また、特許文献2には、表面開始リビングラジカル重合法などによりデバイス表面に高密度なポリマーブラシ層を形成させることで、優れた低摩擦性を発現することが報告されている。しかしながら、上記特許文献2に記載されるような表面開始リビングラジカル重合法でデバイス表面に直接ポリマーをグラフトする方法は、複雑なポリマーの重合制御技術を必要とするばかりでなく、形成されるポリマー層がごく薄く基材層の影響を強く受けるため、複雑な医療デバイスへ実用化するには依然としてハードルが存在している。
上記特許文献2では、デバイス表面に存在するポリマー密度を高めることで従来技術以上の潤滑性を発現する可能性が示唆されているが、このような観点から、リビングラジカル重合法により作製された高密度なポリマーグラフト鎖を有する直鎖上ポリマーによりコーティングを施し、その後ポリマー鎖同士を架橋させることで高密度ポリマーブラシ様の表面特性を有するハイドロゲルを実現する研究も報告されている(例えば、非特許文献2参照)。上記非特許文献2で作製されたハイドロゲル表面は、表面開始リビングラジカル重合法で形成された濃厚ポリマーブラシ表面と同等の低摩擦性を発現することから、簡便なコーティング操作により様々なデバイスへ優れた潤滑性を付与できる可能性を示している。
Gong et al.,ADVANCED MATERIALS,17,535(2005)
辻井敬亘ら、Polymer Preprints,Japan,59,No.1(2010)
しかしながら、上記非特許文献2で形成されるハイドロゲルはその強度が弱く、潤滑性を十分維持できず、実用化にはやはり課題が残る。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、十分な潤滑維持性を有する潤滑性被膜を形成できる潤滑コート剤を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、安全で簡便な手法により医療デバイスへ固定できる潤滑性・血液適合性に優れる潤滑コート剤を提供し、複雑高度化する医療手技をサポートすることである。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有するブロックコポリマーを潤滑コート剤に使用することによって、上記目的を達成できることを知得して、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記諸目的は、繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有するブロックコポリマーを含有する、潤滑コート剤によって達成できる。
本発明の潤滑コート剤を用いると、潤滑維持性に優れる潤滑性被膜を形成できる。
本発明の第一は、繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有するブロックコポリマーを含有する、潤滑コート剤を提供する。
本発明は、親水性ドメインとして、親水性側鎖の分子量が100以上になるように繰り返し単位の鎖長が制御された高密度グラフト鎖を使用することを特徴とする。このように、高密度グラフト鎖を有する親水性ドメインを使用することにより、従来の直鎖上ブロックコポリマーよりも優れた潤滑性(湿潤時の潤滑性;以下、特記しない限り、「潤滑性」は「湿潤時の潤滑性」を意図する)、潤滑維持性及び血液適合性を発現する表面潤滑層を形成することができる。ゆえに、本発明に係るブロックコポリマーは、コーティングと加熱のみの簡便な工程で濃厚ポリマーブラシに匹敵する潤滑性、潤滑維持性を発現できる。また、本発明は、反応性ドメインとしてエポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有することをも特徴とする。これにより、ブロックコポリマー同士がエポキシ基を介して架橋するため、強固な被膜を形成できる。また、本発明の潤滑コート剤で基材層を被覆し、基材層上に本発明の潤滑コート剤からなる表面潤滑層を形成して医療デバイスを作製する場合には、潤滑コート剤被膜(表面潤滑層)をエポキシ基を介して基材層に強固に結合(固定化)でき、基材層からの剥離を抑制・防止できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るブロックコポリマーは、繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有する。
親水性ドメインは、繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する少なくとも1つの親水性単量体が繰り返し結合した構造からなる。ここで、親水性側鎖は、少なくとも一つの親水性単量体を構成要素としたポリマー(オリゴマー)ユニットを有する、式:−(繰り返し単位)n−Rで表わされる分子量が100以上の側鎖を意図する。また、親水性単量体は、上記親水性側鎖を有する単量体である。ここで、上記親水性側鎖は一つの構成要素が連なったホモポリマー型であってもよく、二つ以上の構成要素がランダムあるいはブロックに連なったコポリマー型であってもよい。親水性側鎖の分子量の下限は、100以上であり、150以上が好ましく、200以上がより好ましく、250以上が特に好ましい。また、親水性側鎖の分子量の上限は特に制限されないが、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらにより好ましく、1500以下であることがさらに好ましく、1000以下であることが特に好ましい。このような範囲であれば、親水性側鎖による立体障害が少ないため、反応性ドメイン(エポキシ基)を介してブロックコポリマーからなる表面潤滑層が基材層(基材層)に強固に結合(固定化)できる。なお、親水性側鎖の分子量が5000を超える場合には、親水性ドメインが大きくなりすぎて、親水性側鎖による立体障害により反応性ドメインが基材層に結合(固定化)することが難しい場合がある。加えて、親水性側鎖の分子量が大きくなりすぎると、後述するエポキシ基の反応性が低下し、結果として表面潤滑層の耐久性が悪化する場合がある。通常、分子量の測定はNMRによる算出やGPCによる測定が一般的であるが、本明細書においては、親水性側鎖の分子量(重量平均分子量)は、標準物質としてポリスチレン、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPCにより測定している。なお、親水性側鎖の分子量は、繰り返し単位の種類およびその繰り返し単位数により算出することもできる。
親水性側鎖の分子量は、比較的揃っていることが好ましい。これにより、潤滑コート剤による被膜表面にわたって、湿潤時に潤滑性や血液適合性を均一に発揮できる。具体的には、分子量分布が1.5以下、より好ましくは1.3以下であることが望ましい。分子量分布が大きすぎると、潤滑コート剤による被膜最表層に存在する親水性側鎖の密度が低下し、潤滑性、潤滑維持性、血液適合性が低減する場合がある。なお、本明細書において、分子量分布は、標準物質としてポリスチレン、移動相としてTHFを用いたGPCにより測定している。
親水性側鎖を構成する繰り返し単位は、親水性ドメインが湿潤時の潤滑性、潤滑維持性、血液適合性を発揮できるものであれば特に制限されない。具体的には、繰り返し単位としては、エチレンオキサイド(−CH2CH2O−)、プロピレンオキサイド(−CH2CH2CH2O−)及びイソプロピレンオキサイド(−CH(CH3)CH2O−または−CH2CH(CH3)O−)等の、アルキレンオキサイド、アクリル酸、メタクリル酸やその塩、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピロリドン、2−メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルメチルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルイミダゾールなどが挙げられる。これらのうち、繰り返し単位が、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドであることが好ましく、エチレンオキサイドであることがより好ましい。また、上記繰り返し単位の繰り返し単位数(上記式:−(繰り返し単位)n−R中のn)は、親水性側鎖の分子量が100以上であれば特に制限されないが、親水性側鎖の分子量が5,000以下となるような数であることが好ましい。具体的には、繰り返し単位の繰り返し単位数(上記式:−(繰り返し単位)n−R中のn)は、2以上であり、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。また、繰り返し単位の繰り返し単位数(上記式:−(繰り返し単位)n−R中のn)は、110以下、85以下、50以下、30以下、20以下の順で好ましい。このような範囲であれば、親水性側鎖による立体障害が少ないため、反応性ドメイン(エポキシ基)を介してブロックコポリマーからなる表面潤滑層が基材層に強固に結合(固定化)できる。すなわち、親水性側鎖は、繰り返し単位としてエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを2〜20個有することが好ましい。なお、親水性側鎖における繰り返し単位の数が20を超える場合には、親水性ドメインが大きくなりすぎて、親水性側鎖による立体障害により反応性ドメインが基材層に結合(固定化)することが難しい場合がある。また、親水性側鎖の分子量が大きくなりすぎると、後述するエポキシ基の反応性が低下し、結果として表面潤滑層の耐久性が悪化する場合がある。
さらに、親水性側鎖を表す式:−(繰り返し単位)n−R中のRは、特に制限されないが、水素原子、炭素原子数1〜30の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、炭素原子数1〜30の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基などが挙げられる。ここで、炭素原子数1〜30の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−トリアコンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。また、炭素原子数1〜30の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基としては、特に制限はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。
親水性ドメインは、繰り返し単位を有する分子量が100以上の側鎖を有する少なくとも1つの親水性単量体が繰り返し結合した構造を有する。親水性ドメインを構成する主鎖部分(親水性単量体の側鎖以外の部分)としては、親水性ドメインが体液や水系溶媒と接触する際に潤滑性、さらには必要であれば潤滑維持性、血液適合性を発現すれば、特に制限されない。具体的には、親水性ドメインを構成する主鎖部分としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等が挙げられる。これらのうち、合成の容易性や操作性、潤滑性の観点から、アクリル酸またはメタクリル酸がより好ましい。すなわち、親水性単量体は、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートあるいはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(PEGMA)等のポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、親水性ドメインは、上記親水性単量体1種単独から構成されるホモポリマー型であっても、あるいは上記親水性単量体2種以上から構成されるコポリマー型であってもよい。後者の場合、親水性ドメインを構成する各構成単位は、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
親水性ドメインの製造方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、側鎖に繰り返し単位を有する分子量が100以上のマクロモノマーを重合することによって作製することができる。ここで、マクロモノマー(側鎖に繰り返し単位を有する分子量が100以上のマクロモノマー)は、例えば、末端に反応性官能基を有するポリマーと、二重結合を有して上記反応性官能基と反応できる官能基を有する化合物とを反応させることで形成することができる。末端に反応性官能基を有するポリマーは反応性官能基を有する重合開始剤を用いて親水性単量体を重合したり、反応性官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合を行うことで作製することができる。側鎖の分子量を制御するためには、リビング重合法によりポリマーを重合した後、二重結合性を付与することが好ましい。あるいは、重合開始基を有するモノマーを重合して重合開始基を有するポリマーを作製した後、その重合開始基を基点として親水性側鎖を重合する方法でも作製することができる。この方法では後から形成される親水性側鎖の分子量を制御するために、親水性側鎖を重合する手法としてリビング重合を選択することが望ましい。一般的なラジカル重合法では一部の重合開始基から分子量の大きな側鎖が生成してしまい、高密度な側鎖を形成させることが困難な場合がある。
なお、本発明において、親水性ドメインは、繰り返し単位を有する分子量が100以上の側鎖を有する親水性単量体単一の構成要素から形成されてもよいが、当該親水性単量体以外の他の単量体を含んでいてもよい。この場合、他の単量体は、本発明に係る親水性ドメインによる効果(特に湿潤時の潤滑性、潤滑維持性、血液適合性)を阻害しないものであれば特に制限されない。例えば、アクリルアミドやその誘導体、ビニルピロリドン、アクリル酸やメタクリル酸及びそれらの誘導体、糖、リン脂質を側鎖に有する単量体を例示できる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピロリドン、2−メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルメチルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレートなどが例示できる。また、ここで、他の単量体の含有量は、本発明に係る親水性ドメインによる効果(特に湿潤時の潤滑性、潤滑維持性、血液適合性)を阻害しないものであれば特に制限されないが、ブロックコポリマー(特に親水性ドメイン)に存在する側鎖の密度をある程度維持することを考慮すると、繰り返し単位を有する分子量が100以上の側鎖を有する親水性単量体の割合が、親水性ドメインを構成する単量体全体の、50モル%以上であることが好ましく、80%モル以上であることがより好ましい。
本発明において、親水性ドメインの大きさは、特に制限されない。潤滑性、潤滑維持性、血液適合性などを考慮すると、親水性ドメインの分子量(重量平均分子量または数平均分子量)は、10,000〜100,000,000であることが好ましく、50,000〜50,000,000であることがより好ましい。このような分子量であれば、本発明に係るブロックコポリマーは、その親水性ドメインにより、優れた潤滑性、潤滑維持性、血液適合性を発揮できる。
本発明において、反応性ドメインは、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する。このように反応性ドメインをブロックコポリマー中に導入することにより、ブロックコポリマー同士がエポキシ基を介して架橋するため、強固な被膜を形成し、また、エポキシ基を介して表面潤滑層を基材層に強固に結合(固定化)でき、基材層からの剥離を抑制・防止できる。また、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインを有するブロックコポリマーは、加熱操作(加熱処理)等により反応させる際の反応速度が穏やか(適切な速度)である。そのため、加熱操作等によりエポキシ基同士を架橋反応させる際に、すぐに反応してゲル化したり、固まって潤滑コート剤による被覆層(表面潤滑層)の架橋密度が上昇し潤滑性、潤滑維持性、血液適合性が低下するのを抑制・制御することができる程度に反応速度が穏やか(適切な速度)であることから、取り扱い性が良好である。
上記したようなエポキシ基を有する単量体は、エポキシ基を有するものであれば特に制限されない。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。上記単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、反応性ドメインは、エポキシ基を有する単量体単一の構成要素から形成されてもよいが、当該単量体以外の他の単量体を含んでいてもよい。この場合、他の単量体は、本発明に係る反応性ドメインによる効果(特に被膜の強度や基材層との強固な結合性)を阻害しないものであれば特に制限されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(n−又はiso−)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、sec−又はtert−)ブチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレンなどが例示できる。また、ここで、他の単量体の含有量は、本発明に係る反応性ドメインによる効果(特に被膜の強度や基材層との強固な結合性)を阻害しないものであれば特に制限されないが、これらの効果を考慮すると、エポキシ基を有する単量体の割合が、反応性ドメインを構成する単量体全体の、50モル%以上であることが好ましく、80%モル以上であることがより好ましい。
本発明において、反応性ドメインの大きさは、特に制限されない。被膜の強度、基材層との強固な結合性などを考慮すると、反応性ドメインの分子量(重量平均分子量または数平均分子量)は、1,000〜10,000,000であることが好ましく、2,000〜5,000,000であることがより好ましい。このような分子量であれば、本発明に係るブロックコポリマーは、その反応性ドメインにより、被膜の強度、基材層との強固な結合性を発揮できる。
本発明に係るブロックコポリマーは、上記親水性ドメイン及び反応性ドメインを有する。ここで、親水性ドメインと反応性ドメインの比率は、上記効果を奏する限り特に制限されない。良好な潤滑性、潤滑維持性及び血液適合性の発現、被膜の強度、基材層との強固な結合性などを考慮すると、親水性ドメインと反応性ドメインの比率(親水性ドメイン:反応性ドメインのモル比)は、50:1〜1:1であることが好ましく、20:1〜2:1であることがより好ましい。このような範囲であれば、潤滑コート剤による被膜は、親水性ドメインにより潤滑性、潤滑維持性、血液適合性を十分発揮でき、また、反応性ドメインにより十分な被膜強度、基材層との強固な結合性および耐久性を発揮できる。
本発明に係るブロックコポリマーの製造方法は、特に制限されず、親水性ドメインを構成する単量体、オリゴマーまたはポリマーと反応性ドメインを構成する単量体、オリゴマーまたはポリマーとを重合する公知の重合法が使用できる。例えば、リビングラジカル重合法、マクロ開始剤を用いた重合法、重縮合法など、従来公知の重合法を適用して作製可能である。これらのうち、親水性ドメイン、反応性ドメインやブロックコポリマーの分子量および親水性ドメインの分子量分布のコントロールがしやすい、多様な共重合体(例、ランダム共重合体、ブロック共重合体、組成傾斜型共重合体など)が作製しやすいという点で、リビングラジカル重合法またはマクロ開始剤を用いた重合法が好ましく使用される。リビングラジカル重合法としては、特に制限されないが、例えば特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報、特開2006−316169号公報等に記載される方法、ならびにJ. Am. Chem. Soc., 117, 5614 (1995);Macromolecules, 28, 7901 (1995);Science, 272, 866 (1996);Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)等に記載される原子移動ラジカル重合(ATRP)法などが、同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。また、マクロ開始剤を用いた重合法では、例えば、エポキシ基を有する反応性ドメインと、パーオキサイド基等のラジカル重合成基を有するマクロ開始剤を作成した後、そのマクロ開始剤と親水性ドメインを形成するための単量体を重合させることで親水性ドメインと反応性ドメインとを有するブロックコポリマーを作製することができる。
また、本発明に係る潤滑コート剤を用いて形成される被膜は、湿潤時の潤滑性、潤滑維持性、血液適合性に優れ、また、十分な被膜強度、基材層との強固な結合性および耐久性を発揮できる。ゆえに、本発明に係る潤滑コート剤は、医療デバイスの被膜の形成に好適に使用できる。したがって、本発明の第二は、本発明の潤滑コート剤で被覆されてなる医療デバイスを提供する。
以下、添付した図面を参照して本発明の医療デバイスの好ましい実施形態を説明する。
図10は、本発明に係る医療デバイス(以下、単に医療デバイスとも略記する)の代表的な実施形態の表面の積層構造を模式的に表した部分断面図である。図11は、本実施形態の応用例として、表面の積層構造の異なる構成例を模式的に表した部分断面図である。なお、図10及び図11中の各付号は、それぞれ、下記を表わす。1は、基材層を;1aは、基材層コア部を;1bは、基材表面層を;2は、表面潤滑層を;および10は、本発明に係る医療デバイスを、それぞれ、表わす。
図10、図11に示されるように、本実施形態の医療デバイス10では、基材層1と、基材層1の少なくとも一部に固定化された(図中では、図面内の基材層1表面の全体(全面)に固定化された例を示す)ブロックコポリマーを含む表面潤滑層2と、を備える。表面潤滑層2は、ブロックコポリマーの反応性ドメインのエポキシ基を介して基材層1に結合している。
以下、本実施形態の医療デバイスを各構成部材ごとに詳しく説明する。
(基材層(基材))
本実施形態で用いられる基材層としては、いずれの材料から構成されてもよく、その材料は特に制限されない。具体的には、基材層1を構成(形成)する材料は、金属材料、高分子材料、およびセラミックス等が挙げられる。ここで、基材層1は、基材層1全体(全部)が上記いずれかの材料で構成(形成)されても、または、図1Bに示されるように、上記いずれかの材料で構成(形成)された基材層コア部1aの表面に他の上記いずれかの材料を適当な方法で被覆(コーティング)して、基材表面層1bを構成(形成)した構造を有していてもよい。後者の場合の例としては、樹脂材料等で形成された基材層コア部1aの表面に金属材料が適当な方法(メッキ、金属蒸着、スパッタ等従来公知の方法)で被覆(コーティング)されて、基材表面層1bを形成してなるもの;金属材料やセラミックス材料等の硬い補強材料で形成された基材層コア部1aの表面に、金属材料等の補強材料に比して柔軟な高分子材料が適当な方法(浸漬(ディッピング)、噴霧(スプレー)、塗布・印刷等の従来公知の方法)で被覆(コーティング)あるいは基材層コア部1aの補強材料と基材表面層1bの高分子材料とが複合化(適当な反応処理)されて、基材表面層1bを形成してなるものなどが挙げられる。よって、基材層コア部1aが、異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療デバイスの部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。また、基材層コア部1aと基材表面層1bとの間に、さらに別のミドル層(図示せず)が形成されていてもよい。さらに、基材表面層1bに関しても異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療デバイスの部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。
本実施形態で用いられる基材層としては、いずれの材料から構成されてもよく、その材料は特に制限されない。具体的には、基材層1を構成(形成)する材料は、金属材料、高分子材料、およびセラミックス等が挙げられる。ここで、基材層1は、基材層1全体(全部)が上記いずれかの材料で構成(形成)されても、または、図1Bに示されるように、上記いずれかの材料で構成(形成)された基材層コア部1aの表面に他の上記いずれかの材料を適当な方法で被覆(コーティング)して、基材表面層1bを構成(形成)した構造を有していてもよい。後者の場合の例としては、樹脂材料等で形成された基材層コア部1aの表面に金属材料が適当な方法(メッキ、金属蒸着、スパッタ等従来公知の方法)で被覆(コーティング)されて、基材表面層1bを形成してなるもの;金属材料やセラミックス材料等の硬い補強材料で形成された基材層コア部1aの表面に、金属材料等の補強材料に比して柔軟な高分子材料が適当な方法(浸漬(ディッピング)、噴霧(スプレー)、塗布・印刷等の従来公知の方法)で被覆(コーティング)あるいは基材層コア部1aの補強材料と基材表面層1bの高分子材料とが複合化(適当な反応処理)されて、基材表面層1bを形成してなるものなどが挙げられる。よって、基材層コア部1aが、異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療デバイスの部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。また、基材層コア部1aと基材表面層1bとの間に、さらに別のミドル層(図示せず)が形成されていてもよい。さらに、基材表面層1bに関しても異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療デバイスの部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。
上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、金属材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の医療デバイスに一般的に使用される金属材料が使用される。具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS630などの各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミニウム、スズあるいはニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、ニッケル−コバルト(Ni−Co)合金、コバルト−クロム(Co−Cr)合金、亜鉛−タングステン(Zn−W)合金等の各種合金などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記金属材料には、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の基材層として最適な金属材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、高分子材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の医療デバイスに一般的に使用される高分子材料が使用される。具体的には、ポリアミド樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、ポリエステル樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記高分子材料には、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の基材層として最適な高分子材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層の形状は、特に制限されることはなく、シート状、線状(ワイヤ)、管状など使用態様により適宜選択される。
(基材層への潤滑コート剤による被膜(表面潤滑層)の形成方法)
本発明の医療デバイスの作製方法(基材層への潤滑コート剤による被膜(表面潤滑層)の形成方法)は、本発明に係るブロックコポリマーを使用する以外は特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、本発明に係るブロックコポリマーを溶媒へ溶解してコート液を調製し、このコート液を医療デバイスの基材層へコーティングする方法が使用できる。このような方法により、医療デバイス表面に潤滑性、潤滑維持性及び血液適合性を付与することができる。
本発明の医療デバイスの作製方法(基材層への潤滑コート剤による被膜(表面潤滑層)の形成方法)は、本発明に係るブロックコポリマーを使用する以外は特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、本発明に係るブロックコポリマーを溶媒へ溶解してコート液を調製し、このコート液を医療デバイスの基材層へコーティングする方法が使用できる。このような方法により、医療デバイス表面に潤滑性、潤滑維持性及び血液適合性を付与することができる。
上記方法において、本発明に係るブロックコポリマーを溶解するのに使用される溶媒としては、本発明に係るブロックコポリマーを溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等のハロゲン化物、ヘキサン等のオレフィン類、テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などを例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、コート液中の本発明に係るブロックコポリマーの濃度は、特に限定されない。塗布性、所望の効果(潤滑性、潤滑維持性、血液適合性、十分な被膜強度、基材層との強固な結合性)が得られるなどの観点からは、コート液中の本発明に係るブロックコポリマーの濃度は、0.01〜20wt%、より好ましくは0.05〜15wt%、さらに好ましくは0.1〜10wt%である。ブロックコポリマーの濃度が上記範囲であれば、得られる表面潤滑層の潤滑性、潤滑維持性、血液適合性、十分な被膜強度、基材層との強固な結合性が十分発揮されうる。また、1回のコーティングで所望の厚みの均一な表面潤滑層を容易に得ることができ、操作性(例えば、コーティングのしやすさ)、生産効率の点で好ましい。なお、ブロックコポリマーの濃度が0.001wt%未満の場合、基材層表面に十分な量のブロックコポリマーを結合(固定化)することができない場合がある。また、ブロックコポリマーの濃度が20wt%を超える場合、コート液の粘度が高くなりすぎて、均一な厚さのブロックコポリマーを基材層に結合(固定化)できない場合や基材層表面に素早く被覆するのが困難な場合がある。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲であれば、十分に利用可能である。
基材層表面にコート液を塗布する方法としては、特に制限されるものではなく、塗布・印刷法、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用することができる。これらのうち、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)を用いるのが好ましい。
なお、カテーテル、ガイドワイヤ、注射針等の細く狭い内面に表面潤滑層を形成させる場合、コート液中に基材層を浸漬して、系内を減圧にして脱泡させてもよい。減圧にして脱泡させることにより、細く狭い内面に素早く溶液を浸透させ、表面潤滑層の形成を促進できる。
また、基材層の一部にのみ表面潤滑層を形成させる場合には、基材層の一部のみをコート液中に浸漬して、コート液を基材層の一部にコーティングすることで、基材層の所望の表面部位に、表面潤滑層を形成することができる。
基材層の一部のみをコート液中に浸漬するのが困難な場合には、予め表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分を着脱(装脱着)可能な適当な部材や材料で保護(被覆等)した上で、基材層をコート液中に浸漬して、コート液を基材層にコーティングした後、表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分の保護部材(材料)を取り外し、その後、加熱操作等により反応させることで、基材層の所望の表面部位に表面潤滑層を形成することができる。ただし、本発明では、これらの形成法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用して、表面潤滑層を形成することができる。例えば、基材層の一部のみを混合溶液中に浸漬するのが困難な場合には、浸漬法に代えて、他のコーティング手法(例えば、医療デバイスの所定の表面部分に、コート液を、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いて、塗布する方法など)を適用してもよい。なお、医療用具の構造上、円筒状の用具の外表面と内表面の双方が、表面潤滑層を有する必要があるような場合には、一度に外表面と内表面の双方をコーティングすることができる点で、浸漬法(ディッピング法)が好ましく使用される。
このようにブロックコポリマーを含むコート液中に基材層を浸漬した後は、コート液から基材層を取り出して、乾燥する。ここで、コート液の乾燥条件は、基材層上にブロックコポリマーを含む表面潤滑層が形成できる条件であれば、特に制限されない。具体的には、コート液による被膜の乾燥温度は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。また、コート液による被膜の乾燥時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。このような条件であれば、基材層表面に本発明に係るブロックコポリマーの被膜を形成し、また、被膜中のブロックコポリマーの反応性ドメインを介した架橋反応および基材層との結合(固定化)が起こることで基材層から容易に剥離することのない、強固な潤滑コート層を形成させることができる。なお、エポキシ基は加熱することで自己架橋しうるが、架橋反応を促進するためにエポキシ反応触媒や、エポキシ基と反応しうる多官能架橋剤をコート溶液に含ませてもよい。
また、乾燥時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。
乾燥手段(装置)としては、例えば、オーブン、減圧乾燥機などを利用することができるが、自然乾燥の場合には、特に乾燥手段(装置)は不要である。
上記方法により、基材層表面に本発明に係るブロックコポリマーの被膜を形成した後、エポキシ基を架橋させることで基材層から容易に剥離することのない、強固な潤滑コート層を形成させることができる。また、本発明による医療デバイスは、本発明に係るブロックコポリマーによる被膜が表面に形成される。このため、本発明による医療デバイスは、優れた潤滑性、潤滑維持性、血液適合性を発揮できる。
(本発明の医療デバイス10の用途)
本発明の医療デバイス10は、体液や血液などと接触して用いるデバイスのことであり、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減が可能なものである。具体的には、血管内で使用されるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等が挙げられるが、その他にも以下の医療デバイスが示される。
本発明の医療デバイス10は、体液や血液などと接触して用いるデバイスのことであり、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減が可能なものである。具体的には、血管内で使用されるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等が挙げられるが、その他にも以下の医療デバイスが示される。
(4a)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(4b)酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブのチューブやカフ、気管切開チューブのチューブやカフ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(4c)尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(4d)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類。
(4e)留置針、IVHカテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に挿入ないし留置されるカテーテル類、あるいは、これらのカテーテル用のガイドワイヤ、スタイレットなど。
(4f)人工気管、人工気管支など。
(4g)体外循環治療用の医療デバイス(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)やその回路類。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間塩酸を減圧除去して、オリゴエステルを得た。次に、得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、これを、水酸化ナトリウム5g、31%過酸化水素6.93g、界面活性剤としてのジオクチルホスフェート0.44g及び水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて、分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間塩酸を減圧除去して、オリゴエステルを得た。次に、得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、これを、水酸化ナトリウム5g、31%過酸化水素6.93g、界面活性剤としてのジオクチルホスフェート0.44g及び水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて、分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。
続いて、このPPOを0.5g、グリシジルメタクリレート(GMA)を9.5g、さらにベンゼンを溶媒として、65℃で2時間、減圧下で撹拌しながら重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して、分子内にパーオキサイド基を有するポリGMA(PPO−GMA)を得た。
続いて、得られたPPO−GMA0.48g(GMA 3.38mmol相当)を重合開始剤として、分子量300のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Aldrich製、PEGMA300)10.1g(33.7mmol)をジオキサンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、ポリエチレングリコール鎖を側鎖に有するPEGMA300を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA300:GMA=10:1(モル比))(ブロックコポリマー(1))を得た。
得られたブロックコポリマー(1)を5wt%の濃度になるようにテトラヒドロフラン中に溶解して、コート液を調製した。ナイロンエラストマー(ELG5660、EMS社製)15mm×50mm×1mmのプレスシートを、上記で調製したコート液にディップコートし、130℃で3時間加熱することにより、ナイロンエラストマーシート上に作製したブロックポリマーを固定化した。
実施例2
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.96g(GMA 6.75mmol相当)を重合開始剤として、PEGMA300 10.1g(33.7mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA300を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA300:GMA=5:1(モル比))(ブロックコポリマー(2))を得た。得られたブロックコポリマー(2)を、実施例1と同様にして、ナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.96g(GMA 6.75mmol相当)を重合開始剤として、PEGMA300 10.1g(33.7mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA300を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA300:GMA=5:1(モル比))(ブロックコポリマー(2))を得た。得られたブロックコポリマー(2)を、実施例1と同様にして、ナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例3
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.30g(GMA 2.11mmol相当)を重合開始剤として、分子量475のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Aldrich製、PEGMA475)10g(21.1mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA475を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA475:GMA=10:1(モル比))(ブロックコポリマー(3))を得た。得られたブロックコポリマー(3)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.30g(GMA 2.11mmol相当)を重合開始剤として、分子量475のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Aldrich製、PEGMA475)10g(21.1mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA475を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA475:GMA=10:1(モル比))(ブロックコポリマー(3))を得た。得られたブロックコポリマー(3)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例4
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.15g(GMA 1.06mmol相当)を重合開始剤として、分子量950のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Aldrich製、PEGMA950)10g(10.5mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA950を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA950:GMA=10:1(モル比))(ブロックコポリマー(4))を得た。なお、PEGMA950はヘキサンへの溶解性が低いため、再沈殿溶媒にはヘキサンの代わりにジエチルエーテルを用いた。得られたブロックコポリマー(4)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.15g(GMA 1.06mmol相当)を重合開始剤として、分子量950のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Aldrich製、PEGMA950)10g(10.5mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA950を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA950:GMA=10:1(モル比))(ブロックコポリマー(4))を得た。なお、PEGMA950はヘキサンへの溶解性が低いため、再沈殿溶媒にはヘキサンの代わりにジエチルエーテルを用いた。得られたブロックコポリマー(4)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例5
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.30g(GMA 2.11mmol)を重合開始剤として、PEGMA300 3.2g(10.7mmol)及びPEGMA950 10g(10.5mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA300とPEGMA950とを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA300:PEGMA950:GMA=5:5:1(モル比))(ブロックコポリマー(5))を得た。なお、再沈殿溶媒にはヘキサンの代わりにジエチルエーテルを用いた。得られたブロックコポリマー(5)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA0.30g(GMA 2.11mmol)を重合開始剤として、PEGMA300 3.2g(10.7mmol)及びPEGMA950 10g(10.5mmol)をジオキサンに溶解し、実施例1と同様に重合を行うことで、PEGMA300とPEGMA950とを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(PEGMA300:PEGMA950:GMA=5:5:1(モル比))(ブロックコポリマー(5))を得た。なお、再沈殿溶媒にはヘキサンの代わりにジエチルエーテルを用いた。得られたブロックコポリマー(5)を、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
比較例1
両末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール(Aldrich製、分子量3350)を5wt%の濃度になるように塩化メチレンに溶解し、両末端にイソシアネート基を有する架橋剤4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニルを0.4wt%の濃度になるよう添加したコート液を作製した。実施例1と同様のナイロンエラストマーシートを、このようにして調製されたコート液にディップコートした。その後、ナイロンエラストマーシートを130℃で3時間加熱することにより、直鎖状ポリエチレングリコールをナイロンエラストマーシート上に固定化した。
両末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール(Aldrich製、分子量3350)を5wt%の濃度になるように塩化メチレンに溶解し、両末端にイソシアネート基を有する架橋剤4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニルを0.4wt%の濃度になるよう添加したコート液を作製した。実施例1と同様のナイロンエラストマーシートを、このようにして調製されたコート液にディップコートした。その後、ナイロンエラストマーシートを130℃で3時間加熱することにより、直鎖状ポリエチレングリコールをナイロンエラストマーシート上に固定化した。
比較例2
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.035g(0.21mmol)を重合開始剤として、PEGMA950 10g(10.5mmol)およびグリシジルメタクリレート0.15g(GMA1.06mmol)をジメチルスルホキシドに溶解し、80℃で7時間、窒素雰囲気下で重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して回収し、PEGMA950とグリシジルメタクリレートとを構成単位とするランダムコポリマー(PEGMA950:GMA=10:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマーを、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.035g(0.21mmol)を重合開始剤として、PEGMA950 10g(10.5mmol)およびグリシジルメタクリレート0.15g(GMA1.06mmol)をジメチルスルホキシドに溶解し、80℃で7時間、窒素雰囲気下で重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して回収し、PEGMA950とグリシジルメタクリレートとを構成単位とするランダムコポリマー(PEGMA950:GMA=10:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマーを、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
比較例3
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA1.4g(GMA 9.85mmol)を重合開始剤として、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)9.2g(98.9mmol)をジメチルスルホキシドに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して回収し、N,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(DMAA:GMA=10:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマーを、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
実施例1と同様にして得られたPPO−GMA1.4g(GMA 9.85mmol)を重合開始剤として、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)9.2g(98.9mmol)をジメチルスルホキシドに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して回収し、N,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(DMAA:GMA=10:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマーを、実施例1と同様にナイロンエラストマーシート上に固定化した。
[表面潤滑維持性評価]
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたナイロンエラストマーシートについて、下記方法にしたがって、図9に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20を用いて、表面潤滑維持性を評価した。
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたナイロンエラストマーシートについて、下記方法にしたがって、図9に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20を用いて、表面潤滑維持性を評価した。
すなわち、上記各ナイロンエラストマーシート16をシャーレ12中に固定し、ナイロンエラストマーシート16全体が浸る高さの水17中に浸漬した。このシャーレ12を、図9に示される摩擦測定機20の移動テーブル15に載置した。円柱状ゴム端子(φ10mm、R1mm)13をシートに接触させ、端子上に200gの荷重14をかけた。速度100cm/min、移動距離2cmの設定で、移動テーブル15を水平に100回往復移動させた際の摺動抵抗値(gf)を測定した。1往復目から100往復目までの往路時における摺動抵抗値を往復回数毎に平均し、試験力としてグラフにプロットすることにより、100回の繰り返し摺動に対する潤滑耐久性を評価した。実施例1〜5および比較例1〜3にて作製した潤滑コートサンプルの評価結果を図1〜8に示す。
図1〜8から、実施例1〜5のサンプルではすべて初回から良好な潤滑性を示し、100回往復後においても良好な潤滑性を維持した。一方、比較例1の直鎖状親水性ポリマーコートサンプル及び比較例2の分子量100以上の親水性側鎖を有する単量体とエポキシ基を有する単量体のランダムコポリマーコートサンプルは、どちらも初回は比較的良好な潤滑性を示したものの、摺動を繰り返すうちに試験力は増大した。試験力の増大はコーティングが剥離していることを示し、比較例1および2は実施例1〜5と比較して耐久性に劣っていることが確認された。また、比較例3の直鎖状親水性ブロックコポリマーコートサンプルは初回から比較的良好な潤滑性を示し、100回往復後においてもその潤滑性を維持したが、実施例1〜5に比べてその潤滑性は劣っていた。
実施例6
実施例1と同様にしてポリエチレングリコール鎖を側鎖に有するPEGMA300を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(1)(PEGMA300:GMA=10:1(モル比))を作製した。このブロックコポリマー(1)のコート液(5wt%濃度)を、内径6mm、外径9mmの軟質塩化ビニル(PVC)チューブ(長さ300mm)の内側に通液した後、80℃5時間、加熱することで軟質塩化ビニルチューブ内面にブロックコポリマーを固定化した。
実施例1と同様にしてポリエチレングリコール鎖を側鎖に有するPEGMA300を構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(1)(PEGMA300:GMA=10:1(モル比))を作製した。このブロックコポリマー(1)のコート液(5wt%濃度)を、内径6mm、外径9mmの軟質塩化ビニル(PVC)チューブ(長さ300mm)の内側に通液した後、80℃5時間、加熱することで軟質塩化ビニルチューブ内面にブロックコポリマーを固定化した。
比較例4
比較例3と同様にしてN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(DMAA:GMA=10:1(モル比))を作製した。このブロックコポリマーのコート液(5wt%濃度)を用い、実施例6と同様にPVCチューブ内面にブロックコポリマーを固定化した。
比較例3と同様にしてN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(DMAA:GMA=10:1(モル比))を作製した。このブロックコポリマーのコート液(5wt%濃度)を用い、実施例6と同様にPVCチューブ内面にブロックコポリマーを固定化した。
[血液適合性評価]
実施例6及び比較例4で作製した各PVCチューブに、ヘパリン濃度0.2U/mLに調製したヒト血液を8mL充填し、ポリカーボネート製のコネクターでチューブ両端を接続しループ状とした。次に、円筒型の回転装置にこのPVCループを設置し、40回転/分の速度で、120分間回転した。その後、ループ内の血液を回収し、血球測定装置(シスメックス社製)により白血球数、血小板数を測定した。試験前の白血球数、血小板数に対する試験後の各血球数の割合を下記表1に示す。なお、測定は各サンプルについて2連(n=2)で実施した。
実施例6及び比較例4で作製した各PVCチューブに、ヘパリン濃度0.2U/mLに調製したヒト血液を8mL充填し、ポリカーボネート製のコネクターでチューブ両端を接続しループ状とした。次に、円筒型の回転装置にこのPVCループを設置し、40回転/分の速度で、120分間回転した。その後、ループ内の血液を回収し、血球測定装置(シスメックス社製)により白血球数、血小板数を測定した。試験前の白血球数、血小板数に対する試験後の各血球数の割合を下記表1に示す。なお、測定は各サンプルについて2連(n=2)で実施した。
上記表1の結果から、実施例6では120分間の回転(循環)後も血液中の血小板・白血球数が維持されていたのに対し、比較例4では血小板・白血球数の低下が著しく、血液適合性が劣っていたことがわかる。
以上の結果より、本発明に係るブロックコポリマーを含有する潤滑コート剤は、安全かつ簡便な方法でありながらデバイス表面に従来技術に比べて優れた潤滑性・血液適合性を付与でき、さらに容易に剥離することがない医療用コーティングを提供することが可能であると、考察される。
1 基材層、
1a 基材層コア部、
1b 基材表面層、
2 表面潤滑層、
10 医療デバイス、
12 シャーレ、
13 円柱状ゴム端子、
14 荷重、
15 移動テーブル、
16 ナイロンエラストマーシート(サンプル)、
17 水、
20 摩擦測定機。
1a 基材層コア部、
1b 基材表面層、
2 表面潤滑層、
10 医療デバイス、
12 シャーレ、
13 円柱状ゴム端子、
14 荷重、
15 移動テーブル、
16 ナイロンエラストマーシート(サンプル)、
17 水、
20 摩擦測定機。
Claims (5)
- 繰り返し単位を有する分子量が100以上の親水性側鎖を有する親水性単量体由来の構成単位を有する親水性ドメインと、エポキシ基を有する単量体由来の構成単位を有する反応性ドメインと、を有するブロックコポリマーを含有する、潤滑コート剤。
- 前記親水性単量体の親水性側鎖の分子量が5000以下である、請求項1に記載の潤滑コート剤。
- 前記親水性側鎖は、繰り返し単位としてエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを2〜20個有する、請求項1または2に記載の潤滑コート剤。
- 前記親水性単量体が、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑コート剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑コート剤で被覆されてなる医療デバイス。
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- 2012-01-13 JP JP2012005564A patent/JP2015057081A/ja active Pending
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