JP2024060627A - 親水性共重合体および医療用具 - Google Patents

親水性共重合体および医療用具 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性(潤滑維持性)を発揮する表面潤滑層を形成できる新たな親水性共重合体を提供する。【解決手段】スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)および亜硫酸基(-OSO2H)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、-Si(R1)a(OR2)3-a基(R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;aは、0~2の整数である)を有する重合性単量体(C)由来の構成単位とを含む、親水性共重合体。【選択図】なし

Description

本発明は、親水性共重合体および当該親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層を有する医療用具に関する。
近年、カテーテルはより末梢の病変へアクセスするために細径化が進んでいる。そのため、カテーテルと生体管腔内面との間のクリアランスが極めて小さくなり、カテーテル表面に高い摩擦抵抗が生じる。そのため、カテーテル表面に潤滑性および耐久性(潤滑維持性)を付与するコーティングが求められている。
また、カテーテル等の基材にコーティングを施す際、生体材料への適用や作業者の安全の面から、溶剤としては水、アルコール、水/アルコール混合溶媒等の毒性の低い溶剤を選択することが好ましい。そのため、コーティングの構成成分は、かような溶剤に溶解あるいは分散すること(溶剤溶解性)が求められている。
上記を目的として、特許文献1には、スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、光反応性基を有する重合性単量体(C)由来の構成単位とを含む、親水性共重合体が開示されている。
国際公開第2018/038063号
本発明は、耐久性(潤滑維持性)を発揮する表面潤滑層を形成できる新たな親水性共重合体を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、溶剤溶解性を有する新たな親水性共重合体を提供することにある。
本発明者は、上記課題をかんがみ、鋭意研究を行った。その結果、スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基/塩等を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、シリルエーテル基(-SiOR)を有する重合性単量体(C)由来の構成単位と、を含む共重合体によって、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、上記目的は、スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、-Si(R(OR3-a基(Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;aは、0~2の整数である)を有する重合性単量体(C)由来の構成単位とを含む、親水性共重合体によって達成できる。
本発明に係る親水性共重合体は、優れた耐久性(潤滑維持性)を発揮する表面潤滑層を形成することができる。また、本発明に係る親水性共重合体は、良好な溶剤溶解性を有する。
本発明に係る医療用具の代表的な実施形態の表面の積層構成を模式的に表した部分断面図である。 図1の実施形態の応用例として、表面の積層構成の異なる構成例を模式的に表した部分断面図である。 実施例1-2および比較例1-2で用いた潤滑性および耐久性試験装置(摩擦測定機)の模式図である。 実施例1-2および比較例1-2における潤滑性および耐久性試験結果を示す図面である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。本明細書において、「Aおよび/またはB」は、AおよびBの少なくとも一方を意味し、AおよびBの両方、または、AもしくはBのいずれか一方を包含する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~60%の条件で測定する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含する。同様に、「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の双方を包含する。
また、本明細書において「置換」とは、特に定義しない限り、C1~C30アルキル基、C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C1~C30アルコキシ基、アルコキシカルボニル基(-COOR、RはC1~C30アルキル基)、ハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI原子)、C6~C30アリール基、C6~C30アリールオキシ基、アミノ基、C1~C30アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、チオール基、C1~C30アルキルチオ基またはヒドロキシル基で置換されていることを指す。なお、ある基が置換される場合、置換された構造がさらに置換される前の定義に含まれるような置換の形態は除外される。例えば、置換基がアルキル基である場合、置換基としてのこのアルキル基はさらにアルキル基で置換されることはない。
また、本明細書において、ある構成単位がある単量体に「由来する」と規定される場合には、当該構成単位が、対応する単量体の有する重合性不飽和二重結合の一方の結合の切断により生じる2価の構成単位であることを意味する。
<親水性共重合体>
本発明の第一の態様によると、スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、-Si(R(OR3-a基(Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;aは、0~2の整数である)を有する重合性単量体(C)由来の構成単位とを含む、親水性共重合体が提供される。当該親水性共重合体を用いて形成された層(表面潤滑層)は、優れた耐久性(潤滑維持性)を発揮することができる。また、当該親水性共重合体を用いて形成された層(表面潤滑層)は、優れた潤滑性を発揮することができる。さらに、当該親水性共重合体は、良好な溶剤溶解性(特に水、アルコール、水/アルコール混合溶媒に対する溶解性)を有する。
本明細書において、「スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)」を、単に「重合性単量体(A)」または「単量体(A)」とも称する。また、「スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位」を、単に「構成単位(A)」とも称する。
本明細書において、「スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基」を、単に「スルホン酸基/塩等」とも称する。また、「スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)」を、単に「重合性単量体(B)」または「単量体(B)」とも称する。また、「スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位」を、単に「構成単位(B)」とも称する。
本明細書において、「-Si(R(OR3-a基(Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;aは、0~2の整数である)」を、単に「-Si(R(OR3-a基」または「本発明に係る-Si(R(OR3-a基」とも称する。また、「本発明に係る-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体(C)」を、単に「重合性単量体(C)」または「単量体(C)」とも称する。また、「本発明に係る-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体(C)由来の構成単位」を、単に「構成単位(C)」とも称する。
本明細書において、「重合性単量体(A)由来の構成単位(A)と、重合性単量体(B)由来の構成単位(B)と、重合性単量体(C)由来の構成単位(C)とを含む親水性共重合体」を、単に「本発明に係る親水性共重合体」または「親水性共重合体」または「共重合体」とも称する。
以下、本発明に係る親水性共重合体を構成する各重合性単量体について説明する。
[重合性単量体]
(単量体(A))
単量体(A)は、スルホベタイン構造を有する重合性単量体である。ここで、「スルホベタイン構造」とは、正電荷と硫黄元素を含む負電荷とが隣り合わない位置に存在し、正電荷を有する原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、電荷の総和がゼロである構造を指す。
単量体(A)由来の構成単位(A)に含まれるスルホベタイン構造は、潤滑性付与効果に優れる。このため、単量体(A)由来の構成単位(A)を有する親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層を備えた医療用具(例えば、ガイドワイヤー)は、吸水すると、表面潤滑層が膨潤する。この医療用具を血管等の生体管腔に挿入し生体管腔壁と接触すると、表面潤滑層の表面に水和水が滲出するが、この水和水により医療用具と生体管腔壁との接触が妨げられる。ゆえに、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成された表面潤滑層は、優れた潤滑性を発揮することができる。当該効果は、カテーテルと生体管腔内面との間のクリアランスが極めて小さい場合に、特に有効に発揮される。
単量体(A)の例としては、特に制限されないが、以下の一般式で表される化合物が挙げられる。
上記一般式中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されてもよい炭素原子数1~30のアルキレン基または置換されてもよい炭素原子数6~30のアリーレン基であってもよく、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されてもよい炭素原子数1~30のアルキル基または置換されてもよい炭素原子数6~30のアリール基であってもよく、Yは、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基であってもよい。但し、上記一般式中、正電荷および負電荷の総和はゼロである。
炭素原子数1~30のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
炭素原子数6~30のアリーレン基の例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基、フルオレニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
炭素原子数1~30のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素原子数6~30のアリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基等が挙げられる。
中でも、耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、単量体(A)は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、重合性単量体(A)は、下記式(1)で表される。
上記式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基である。また、Zは、酸素原子(-O-)または-NH-であり、好ましくは酸素原子(-O-)である。
また、上記式(1)中、R12およびR15は、耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖のアルキレン基(メチレン基、エチレン基またはトリメチレン基)であり、特に好ましくはエチレン基またはトリメチレン基である。
上記式(1)中、R13およびR14は、耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、さらにより好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記式(1)で表される化合物の例としては、{2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジメチル-(2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジエチル-(2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジエチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジメチル-(2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、{3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジエチル-(2-スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、{3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピル}ジエチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、中でも、{2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル}ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシドが好ましい。上記の化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
単量体(A)は、合成品または市販品のいずれを用いてもよい。市販品としては、シグマアルドリッチジャパン合同会社等より入手することができる。また、合成する場合は、A.Laschewsky,polymers,6,1544-1601(2014)等を参照することができる。
また、単量体(A)は、上記一般式で表される化合物以外に限らず、正電荷が末端に存在する形態を有する化合物であってもよい。
本発明の親水性共重合体において、単量体(A)由来の構成単位(A)の含有量は、全単量体由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは0.05~99モル%であり、より好ましくは1~98モル%であり、さらにより好ましくは30モル%を超え95モル%であり、特に好ましくは50~90モル%である。かような範囲であれば、潤滑性および溶剤溶解性のバランスが良好となる。なお、当該モル%は、重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対する単量体(A)の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。
親水性共重合体を構成する各構成単位(A)は、同一(単一の単量体(A)由来)であってもまたは異なるもの(2種以上の単量体(A)由来)であってもよい。
(単量体(B))
単量体(B)は、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体である。これらのスルホン酸基、硫酸基もしくは亜硫酸基またはこれらの塩の基(スルホン酸基/塩等)は、水系溶剤中で容易にアニオン化する。これにより、重合体間で静電反発が生じ、スルホベタイン構造同士の相互作用が低減され、重合体は水系溶剤中に溶解あるいは分散されやすくなる(親水性共重合体の溶剤溶解性を向上する)。ゆえに、本発明に係る親水性共重合体は、構成単位(B)の存在により、優れた溶剤溶解性(特に水、アルコール、水/アルコール混合溶媒に対する優れた溶解性)を発揮できる。
中でも、溶剤溶解性のさらなる向上の観点から、単量体(B)は、下記式(2)、(3)または(4)で表される化合物であることが好ましく、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、重合性単量体(B)は、下記式(2)、(3)または(4)で表される。本発明のより好ましい形態では、重合性単量体(B)は、下記式(2)で表される。
上記式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基である。また、Zは、酸素原子(-O-)または-NH-であり、好ましくは-NH-である。
上記式(2)中、R22は、溶剤溶解性のさらなる向上の観点から、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらにより好ましくは炭素原子数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数3~5の分岐鎖のアルキレン基である。炭素原子数3~5の分岐鎖のアルキレン基は、-CH(CH)-CH-、-C(CH-CH-、-CH(CH)-CH(CH)-、-C(CH-CH-CH-、-CH(CH)-CH(CH)-CH-、-CH(CH)-CH-CH(CH)-、-CH-C(CH-CH-、-C(CH-CH(CH)-等で表される基であり(但し、上記式(2)における上記基の連結順序は特に制限されない)、中でも、-C(CH-CH-で表される基が特に好ましい。
上記式(2)中、Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基である。上記基の塩の形態としては、上記基のナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、好ましくはナトリウム塩である。酸の解離度(すなわちアニオン化のし易さ)ひいては親水性共重合体の溶剤溶解性の観点から、好ましくはスルホン酸基および硫酸基ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基であり、モノマーの入手のし易さという点で、より好ましくはスルホン酸基またはその塩の基(特にスルホン酸ナトリウムの基(-SONa))である。
上記式(2)で表される化合物の例としては、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、1-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]-1-プロパンスルホン酸、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]-2-プロパンスルホン酸、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、3-スルホプロピル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(特にナトリウム塩)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記式(2)で表される化合物は、合成品または市販品のいずれを用いてもよく、市販品としては、シグマアルドリッチジャパン合同会社、東京化成工業株式会社等より入手することができる。
上記式(3)中、R31は、水素原子またはメチル基である。
上記式(3)中、R32は、単結合または炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基である。ここで、アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。R32は、好ましくは単結合または炭素原子数1~12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましくは単結合または炭素原子数1~8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、さらにより好ましくは単結合または炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、特に好ましくは単結合である。
上記式(3)中、Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基であり、酸の解離度(すなわちアニオン化のし易さ)ひいては共重合体の溶剤溶解性の観点から、好ましくはスルホン酸基および硫酸基ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基であり、モノマーの入手のし易さという点で、より好ましくはスルホン酸基またはその塩の基である。
上記式(3)で表される化合物の例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記式(3)で表される化合物は、合成品または市販品のいずれを用いてもよく、市販品としては、旭化成ファインケム株式会社、東京化成工業株式会社等より入手することができる。
上記式(4)中、R41は、水素原子またはメチル基である。
上記式(4)中、R42は、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましく炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらにより好ましくは炭素原子数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。ここで、アルキレン基の具体的な例示は、上記式(3)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記式(4)中、Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基であり、酸の解離度(すなわちアニオン化のし易さ)ひいては共重合体の溶剤溶解性の観点から、好ましくはスルホン酸基および硫酸基ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基であり、モノマーの入手のし易さという点で、より好ましくはスルホン酸基またはその塩の基である。
上記式(4)で表される化合物の例としては、2-スルホキシエチルビニルエーテル、3-スルホキシ-n-プロピルビニルエーテル、2-プロペン-1-スルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記式(4)で表される化合物は、合成品または市販品のいずれを用いてもよい。市販品としては、東京化成工業株式会社製の2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩等を用いることができる。
本発明の親水性共重合体において、単量体(B)由来の構成単位の含有量は、全単量体由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは0.1~99モル%であり、より好ましくは0.2~90モル%であり、さらにより好ましくは0.5~80モル%であり、特に好ましくは1~70モル%であり、中でも好ましくは20~60モル%であり、とりわけ中でも好ましくは25モル%を超え50モル%未満であり、中でも最も好ましくは28モル%以上40モル%未満である。かような範囲であれば、潤滑性および溶剤溶解性のバランスが良好となる。なお、当該モル%は、重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対する単量体(B)の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。
親水性共重合体を構成する各構成単位(B)は、同一(単一の単量体(B)由来)であってもまたは異なるもの(2種以上の単量体(B)由来)であってもよい。
(単量体(C))
単量体(C)は、-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体である。ここで、aは0~2の整数である、即ち、単量体(C)は少なくとも1つのシリルエーテル基(-Si-OR)を有する。シリルエーテル基は、加水分解されるとシラノール基(-Si-OH)を生成する。親水性共重合体のシラノール基(R=水素原子)または親水性共重合体のアルコキシ基(-OR基)が加水分解により変換したシラノール基(以下では、一括して「親水性共重合体のシラノール基等」または「シラノール基等」とも称する)は、基材層表面に存在する水酸基(-OH)と脱水縮合して、化学結合を形成する。これにより、本発明に係る親水性共重合体は、基材(例えば、金属材料、樹脂などの、表面に水酸基を有する材料、特に金属材料)表面に強固に固定化できる。また、親水性共重合体のシラノール基等は、別の構成単位(C)に存在するシラノール基等と脱水縮合して、構成単位(C)間にシロキサン結合(-Si-O-Si-結合)を形成する。これにより、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成される層(表面潤滑層)は、高い膜強度(高い架橋構造強度)を有する。ゆえに、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成される層(本発明に係る親水性共重合体の架橋物を含む表面潤滑層)は、耐久性(潤滑維持性)に優れる。上記効果は、単量体(C)が2以上のシリルエーテル基を有する(aが0または1、特に0である)場合に特に顕著に達成できる。
親水性共重合体の各構成単位(C)中に存在する-Si(R(OR3-a基は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
上記-Si(R(OR3-a基において、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基である。aが2である場合に、各Rは、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素原子数2~21の直鎖または分岐鎖のアシル基は、-C(=O)-Rで示され、この際、Rは、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。また、炭素原子数2~21の直鎖または分岐鎖のエーテル基は、-R-O-Rで示され、この際、Rは、炭素原子数1~11の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Rは、炭素原子数1~10の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。ここで、RおよびRとしてのアルキル基は、上記したのと同様である。また、Rとしてのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、トリエチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。これらのうち、Rは、炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基(例えば、アセチル基(-C(=O)CH)、プロピオニル基(-C(=O)C)、ブチリル基(-C(=O)C)、イソブチリル基(-C(=O)CH(CH)、バレリル基(-C(=O)C)、イソバレリル基(-C(=O)CHCH(CH)、ピバロイル基(-C(=O)C(CH))、または炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基(例えば、-CHOCH、-COCH、-COCH、-CHOC、-COC、-COC)であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、-COCHであることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
上記-Si(R(OR3-a基において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基である。aが0または1である場合に、各Rは、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基は、上記Rと同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、Rは、炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基(例えば、アセチル基(-C(=O)CH)、プロピオニル基(-C(=O)C)、ブチリル基(-C(=O)C)、イソブチリル基(-C(=O)CH(CH)、バレリル基(-C(=O)C)、イソバレリル基(-C(=O)CHCH(CH)、ピバロイル基(-C(=O)C(CH))、または炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基(例えば、-CHOCH、-COCH、-COCH、-CHOC、-COC、-COC)であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、-COCHであることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
上記-Si(R(OR3-a基において、aは、0~2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
本発明の一実施形態では、単量体(C)は、下記式(5)または(6)で表される化合物である。
上記式(5)および(6)において、R51は、水素原子またはメチル基である。
上記式(5)において、Zは、酸素原子または-NH-であり、好ましくは酸素原子(-O-)である。
上記式(5)および(6)において、R52は、単結合または炭素原子数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖のアルキレン基(メチレン基、エチレン基またはトリメチレン基)であり、特に好ましくはトリメチレン基である。
上記式(5)および(6)において、-Si-(R53)(R54)(R55)は、-Si(R(OR3-aである。ここで、耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、上記-Si(R(OR3-a基中のaは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。すなわち、R53は-ORであり、R54およびR55は、それぞれ独立して、-Rまたは-ORであることが好ましく、-ORであることがより好ましい。この際、RおよびRは、それぞれ、上記-Si(R(OR3-a基におけるRおよびRの定義と同様である。耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基(例えば、アセチル基(-C(=O)CH)、プロピオニル基(-C(=O)C)、ブチリル基(-C(=O)C)、イソブチリル基(-C(=O)CH(CH)、バレリル基(-C(=O)C)、イソバレリル基(-C(=O)CHCH(CH)、ピバロイル基(-C(=O)C(CH))、または炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基(例えば、-CHOCH、-COCH、-COCH、-CHOC、-COC、-COC)であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、-COCHであることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
中でも、耐久性(潤滑維持性)(さらには潤滑性)のさらなる向上の観点から、単量体(C)は、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、重合性単量体(C)は、下記式(5)で表される。
上記式(5)中、R51は、水素原子またはメチル基であり;Zは、酸素原子(-O-)または-NH-であり;R52は、炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり;R53は-ORであり、R54およびR55は、それぞれ独立して、-Rまたは-ORであり、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基である。
-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体(C)の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-(メトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(メトキシジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[トリメトキシシリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルアクリレート、3-(エトキシジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(エトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、(トリエトキシシリル)メチルメタクリレート、(トリエトキシシリル)メチルアクリレートなどが挙げられる。-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体(C)は、3-(メトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(メトキシジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[トリメトキシシリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルアクリレート、3-(エトキシジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(エトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、(トリエトキシシリル)メチルメタクリレート、(トリエトキシシリル)メチルアクリレートであることが好ましく、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[トリメトキシシリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルメタクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチルアクリレート、(トリエトキシシリル)メチルメタクリレート、(トリエトキシシリル)メチルアクリレートであることがより好ましく、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)、3-[トリメトキシシリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、(トリエトキシシリル)メチルメタクリレートであることが特に好ましい。上記の化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
単量体(C)は、合成品または市販品のいずれを用いてもよい。市販品としては、東京化成工業株式会社、シグマアルドリッチジャパン合同会社等より入手することができる。
本発明の親水性共重合体において、単量体(C)由来の構成単位の含有量は、全単量体由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、好ましくは0.1~40モル%であり、より好ましくは0.5~30モル%であり、さらにより好ましくは1~25モル%であり、特に好ましくは1.2~20モル%であり、中でも好ましくは1.5~15モル%であり、とりわけ中でも好ましくは1.5モル%を超え10モル%未満であり、中でも最も好ましくは2モル%以上5モル%未満である。かような範囲であれば、親水性共重合体は基材層と十分に結合できるため、当該親水性共重合体を用いて形成れた層(表面潤滑層;以下、同様)は、基材層(例えば、金属材料、樹脂などの、表面に水酸基を有する材料、特に金属材料)表面により強固に固定化されうる。また、かような範囲であれば、当該親水性共重合体を用いて形成れた表面潤滑層は、十分量の構成単位(C)同士がシロキサン結合(-Si-O-Si-結合)する。このため、当該親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層は、より高い膜強度(高い架橋構造強度)を有する。ゆえに、当該親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層は、耐久性をさらに向上できる。また、かような範囲であれば、他の単量体(単量体(A)及びB)が十分量存在できるため、親水性共重合体は、単量体(A)による十分な潤滑性および耐久性、ならびに単量体(B)による溶剤溶解性をより有効に向上することができる。なお、当該モル%は、重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対する単量体(C)の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。
親水性共重合体を構成する各構成単位(C)は、同一(単一の単量体(C)由来)であってもまたは異なるもの(2種以上の単量体(C)由来)であってもよい。
本発明の親水性共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の単量体(A)、単量体(B)および単量体(C)以外の重合性単量体(以下、「その他の単量体」とも称する)に由来する構成単位を含んでもよい。本発明の親水性共重合体において、その他の単量体に由来する構成単位の含有量は、全単量体由来の構成単位の合計量100モル%に対して、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、さらにより好ましくは1モル%未満である(下限値:0モル%超)。好ましくは、本発明の親水性共重合体は、単量体(A)に由来の構成単位(A)、単量体(B)に由来の構成単位(B)および単量体(C)に由来の構成単位(C)から構成される(その他の単量体に由来する構成単位の含有量=0モル%)。なお、当該モル%は、重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対するその他の単量体の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。
本発明に係る親水性共重合体の末端は特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。共重合体の構造も特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
[親水性共重合体の物性]
本発明に係る親水性共重合体は、溶剤溶解性に優れ、特に、水、低級アルコール、または水および低級アルコールの混合溶媒に対する溶解性に優れる。ここで、「低級アルコール」とは、炭素原子数1~3のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノールを指す。これにより、毒性の低い上記溶剤をコート液に適用できるため、作業者の安全を確保することができる。さらに、低級アルコールを含有する溶剤は、蒸発速度が高いため、塗膜から速やかに除去される。ゆえに、医療用具のコーティングにおいて乾燥工程を簡略化でき、コーティング作業を迅速に行うことができる。なお、「溶剤溶解性に優れる」とは、上記の溶剤に対して好ましくは1重量%以上(より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上)溶解または分散することをいう。この際、溶解または分散に要する時間は2時間以内であることが好ましい。
共重合体の重量平均分子量は、好ましくは数千~数百万である。本発明において、「重量平均分子量」は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。
[親水性共重合体の製造方法]
本発明に係る親水性共重合体の製造方法は、特に制限されず、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。
重合方法は、通常、上記の単量体(A)、単量体(B)、単量体(C)、および必要に応じてその他の単量体を、重合溶媒中で重合開始剤と共に撹拌および加熱することにより共重合させる方法が採用される。
重合温度は、特に制限されないが、好ましくは25~100℃であり、より好ましくは30~80℃である。重合時間も、特に制限されないが、好ましくは30分~24時間であり、より好ましくは1~5時間である。
重合溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;などの水性溶媒であることが好ましい。重合に用いる原料を溶解させる観点から、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合性単量体の濃度は、特に制限されないが、重合溶媒(mL)に対する各重合性単量体の合計固形分量(g)として、好ましくは0.05~1g/mLであり、より好ましくは0.1~0.5g/mLである。また、全単量体の合計仕込み量(モル)に対する各単量体の好ましい仕込み量(モル)の割合は、上述したとおりである。
重合性単量体を含む反応溶液は、重合開始剤を添加する前に脱気処理を行ってもよい。脱気処理は、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスにて、反応溶液を0.5~5時間程度バブリングすればよい。脱気処理の際は、反応溶液を30~100℃程度に加温しても良い。
共重合体の製造には、従来公知の重合開始剤を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等の酸化剤に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等が使用できる。
重合開始剤の配合量は、重合性単量体の合計量(モル)に対して、好ましくは0.01~10モル%であり、より好ましくは0.1~5モル%である。
さらに、必要に応じて、連鎖移動剤、重合速度調整剤、界面活性剤、およびその他の添加剤を、重合の際に適宜使用してもよい。
重合反応を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等で行うこともできる。また、重合反応中は、反応液を攪拌しても良い。
共重合体は、重合反応中に析出してもよい。重合後の共重合体は、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することができる。
精製後の共重合体は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、または加熱乾燥等、任意の方法によって乾燥することもできるが、重合体の物性に与える影響が小さいという観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
得られた共重合体における各重合性単量体由来の構成単位の割合は、NMR、IR等の公知の手段を用い、各構成単位に含まれる基のピーク強度を分析することで確認することができる。
得られた共重合体に含まれる未反応単量体は、共重合体全体に対して0.01重量%以下であることが好ましい。未反応単量体は少ないほど好ましい(下限値:0重量%)。残留する単量体の含量は、高速液体クロマトグラフィー等公知の手段で測定できる。
<医療用具>
本発明は、基材層と、前記基材層表面の少なくとも一部に形成され、上記の親水性共重合体の架橋物を含む表面潤滑層と、を有する医療用具をも提供する。本発明に係る親水性共重合体は、スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位(A)を有する。ゆえに、本発明に係る医療用具(表面潤滑層)は、優れた潤滑性を発揮することができる。また、本発明に係る親水性共重合体は、-Si(R(OR3-a基を有する重合性単量体(C)由来の構成単位(C)を有する。このため、表面潤滑層は、基材(例えば、金属材料、樹脂などの、表面に水酸基を有する材料、特に金属材料)表面に強固に固定化できる。また、表面潤滑層は、高い膜強度(高い架橋構造強度)を有する。ゆえに、本発明に係る医療用具(表面潤滑層)は、潤滑性および耐久性(潤滑維持性)に優れる。また、本発明に係る親水性共重合体は、スルホン酸基/塩等を有する重合性単量体(B)由来の構成単位(B)を有する。このため、親水性共重合体は、溶剤(特に水、アルコール、水/アルコール混合溶媒)に対して良好な溶解性を示す。ゆえに、親水性共重合体を含むコート液を基材層に塗布することにより、容易に層(表面潤滑層)を基材層上に形成できる。
本明細書において、「親水性共重合体の架橋物」は、親水性共重合体のシラノール基(R=水素原子)または親水性共重合体のアルコキシ基(-OR基)が加水分解により変換したシラノール基(親水性共重合体のシラノール基等)が他の親水性共重合体のシラノール基等と共有結合(シロキサン結合)して架橋構造を形成する、および基材層(例えば、金属等の無機材料)の反応性基(例えば、水酸基)と共有結合する、の少なくとも一方を満たす構造を有することを意図する。特に、aが0または1である場合には、親水性共重合体のシラノール基等は、他の親水性共重合体のシラノール基等および基材層の反応性基と同時に結合できる。ゆえに、このような親水性共重合体を含む表面潤滑層であれば、膜強度を高めると共に、基材層上に強固に固定化できるため、耐久性(潤滑維持性)をさらに向上できる。
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る医療用具の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る医療用具(以下、単に「医療用具」とも称する)の代表的な実施形態の表面の積層構造を模式的に表した部分断面図である。図2は、本実施形態の応用例として、表面の積層構造の異なる構成例を模式的に表した部分断面図である。なお、図1および図2中、1は基材層を、1aは基材層コア部を、1bは基材表面層を、2は表面潤滑層を、10は医療用具を、それぞれ表す。
図1および図2に示されるように、本実施形態の医療用具10では、基材層1と、基材層1の少なくとも一部に固定化された(図中では、図面内の基材層1表面の全体(全面)に固定化された例を示す)親水性共重合体を含む表面潤滑層2と、を備える。表面潤滑層2は、親水性共重合体のシラノール基等を介して基材層1に結合している。
以下、本実施形態の医療用具の各構成について説明する。
(基材層(基材))
本実施形態で用いられる基材層としては、親水性共重合体のシラノール基等と反応(例えば、脱水縮合)して化学結合を形成しうるものであれば、いずれの材料から構成されてもよい。具体的には、基材層1を構成(形成)する材料は、金属材料、高分子材料、セラミックス等が挙げられる。ここで、基材層1は、図1に示されるように、基材層1全体(全部)が上記いずれかの材料で構成(形成)されても、または、図2に示されるように、上記いずれかの材料で構成(形成)された基材層コア部1aの表面に他の上記いずれかの材料を適当な方法で被覆(コーティング)して、基材表面層1bを構成(形成)した構造を有していてもよい。後者の場合の例としては、樹脂材料等で形成された基材層コア部1aの表面に金属材料が適当な方法(メッキ、金属蒸着、スパッタ等従来公知の方法)で被覆(コーティング)されて、基材表面層1bを形成してなるもの;金属材料やセラミックス材料等の硬い補強材料で形成された基材層コア部1aの表面に、金属材料等の補強材料に比して柔軟な高分子材料が適当な方法(浸漬(ディッピング)、噴霧(スプレー)、塗布・印刷等の従来公知の方法)で被覆(コーティング)あるいは基材層コア部1aの補強材料と基材表面層1bの高分子材料とが複合化(適当な反応処理)されて、基材表面層1bを形成してなるもの等が挙げられる。よって、基材層コア部1aが、異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。また、基材層コア部1aと基材表面層1bとの間に、さらに別のミドル層(図示せず)が形成されていてもよい。さらに、基材表面層1bに関しても異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。
上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、金属材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ステント、ガイドワイヤ等の医療用具に一般的に使用される金属材料が使用される。具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS630等の各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミニウム、スズあるいはニッケル-チタン(Ni-Ti)合金、ニッケル-コバルト(Ni-Co)合金、コバルト-クロム(Co-Cr)合金、亜鉛-タングステン(Zn-W)合金等の各種合金が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記金属材料には、使用用途であるカテーテル、ステント、ガイドワイヤ等の基材層として最適な金属材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層1を構成(形成)する材料のうち、高分子材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ステント、ガイドワイヤ等の医療用具に一般的に使用される高分子材料が使用される。具体的には、ポリアミド樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン等のスチロール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記高分子材料には、使用用途であるカテーテル、ステント、ガイドワイヤ等の基材層として最適な高分子材料を適宜選択すればよい。
また、上記基材層の形状は、特に制限されることはなく、シート状、線状(ワイヤ)、管状など使用態様により適宜選択される。
(潤滑層(表面潤滑層))
潤滑層(表面潤滑層)は、上記基材層(基材)1の少なくとも一部に担持される。ここで、潤滑層2が、基材層1表面の少なくとも一部に担持されているとしたのは、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の医療用具において、必ずしもこれらの医療用具の全ての表面(表面全体)が湿潤時に潤滑性を有する必要はなく、湿潤時に表面が潤滑性を有することが求められる表面部分(一部の場合もあれば全部の場合もある)のみに潤滑層が担持されていればよいためである。このため、上述したように、潤滑層は、図1、図2に示されるような基材層の両面全体を被覆するように形成される形態;基材層の片面全体のみを被覆するように形成される形態;基材層の両面の一部を同じまたは異なる形態で被覆するように形成される形態;基材層の片面の一部を被覆するように形成される形態などを包含する。
潤滑層(表面潤滑層)は、親水性共重合体を必須に含む。潤滑層は、親水性共重合体に加えて、他の成分を含んでもよい。ここで、他の成分としては、特に制限されない。例えば、医療用具がカテーテルなどの体腔や管腔内への挿入を目的とする場合には、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ薬、抗血栓薬、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質等の薬剤(生理活性物質)などが挙げられる。ここで、他の成分の添加量は、特に制限されず、通常使用される量が同様にして適用される。最終的には、他の成分の添加量は、適用される疾患の重篤度、患者の体重等を考慮して適切に選択される。好ましくは、潤滑層は、他の成分を含まない(親水性共重合体のみから構成される)。すなわち、本発明の好ましい形態では、潤滑層は、前記親水性共重合体から構成される。
[医療用具の製造方法]
本発明に係る医療用具の製造方法(基材層上への表面潤滑層の形成方法)は、上記の親水性共重合体を使用すること以外は特に制限されず、公知の方法を同様にしてあるいは適宜改変して適用できる。例えば、本発明に係る親水性共重合体を溶剤に溶解してコート液を調製し、このコート液を医療用具の基材層上にコーティングする方法が好ましい。このような方法により、医療用具表面に潤滑性および耐久性(潤滑維持性)を付与することができる。
(塗布工程)
上記方法において、親水性共重合体を溶解するのに使用される溶剤としては、作業安全性(毒性の低さ)の観点から、上記[親水性共重合体の物性]の項において記載したものが好適である。
また、コート液中の親水性共重合体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01~50重量%であり、より好ましくは0.05~40重量%であり、さらにより好ましくは0.1~30重量%である。かような範囲であれば、コート液の塗工性が良好であり、得られる表面潤滑層は潤滑性および耐久性(潤滑維持性)に優れる。また、1回のコーティングで所望の厚みの均一な表面潤滑層を容易に得ることができ、生産効率の点で好ましい。なお、親水性共重合体の濃度が0.01重量%未満の場合、基材層表面に十分な量の親水性共重合体を固定できない場合がある。また、親水性共重合体の濃度が50重量%を超える場合、コート液の粘度が高くなりすぎて、均一な厚さの表面潤滑層を得られない場合がある。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲であれば、十分に利用可能である。
コート液を塗布する前に、紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、シランカップリング処理、リン酸カップリング処理等により基材層表面を予め処理してもよい。コート液の溶剤が水のみである場合、疎水性の基材層表面に塗布することは困難であるが、基材層表面をプラズマ処理することで基材層表面が親水化する。これにより、コート液の基材層表面への濡れ性が向上し、均一な表面潤滑層を形成することができる。
基材層表面にコート液を塗布する方法としては、特に制限されるものではなく、塗布・印刷法、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用することができる。これらのうち、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)が好ましい。
なお、カテーテル、ステント、ガイドワイヤ等の細く狭い内面に表面潤滑層を形成させる場合、コート液中に基材層を浸漬して、系内を減圧にして脱泡させてもよい。減圧にして脱泡させることにより、細く狭い内面に素早く溶液を浸透させ、表面潤滑層の形成を促進できる。
また、基材層の一部にのみ表面潤滑層を形成させる場合には、基材層の一部のみをコート液中に浸漬して、コート液を基材層の一部にコーティングすることで、基材層の所望の表面部位に、表面潤滑層を形成することができる。
基材層の一部のみをコート液中に浸漬するのが困難な場合には、予め表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分を着脱(装脱着)可能な適当な部材や材料で保護(被覆等)した上で、基材層をコート液中に浸漬して、コート液を基材層にコーティングした後、表面潤滑層を形成する必要のない基材層の表面部分の保護部材(材料)を取り外し、その後、加熱操作等により反応させることで、基材層の所望の表面部位に表面潤滑層を形成することができる。ただし、本発明では、これらの形成法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用して、表面潤滑層を形成することができる。例えば、基材層の一部のみを混合溶液中に浸漬するのが困難な場合には、浸漬法に代えて、他のコーティング手法(例えば、医療用具の所定の表面部分に、コート液を、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いて、塗布する方法など)を適用してもよい。なお、医療用具の構造上、円筒状の用具の外表面と内表面の双方が、表面潤滑層を有する必要があるような場合には、一度に外表面と内表面の双方をコーティングすることができる点で、浸漬法(ディッピング法)が好ましく使用される。
当該工程により、基材層上に、コート液の被膜が形成される。
(固定化工程)
上記にて形成された被膜を固定化工程に供する。これにより、親水性共重合体のシラノール基等が基材層表面に存在する水酸基(-OH)と脱水縮合して、化学結合を形成する。ゆえに、本発明に係る親水性共重合体は、基材層(例えば、金属材料、樹脂などの、表面に水酸基を有する材料、特に金属材料)表面に強固に固定化できる。また、親水性共重合体の構成単位(C)に存在するシラノール基等は、別の構成単位(C)に存在するシラノール基等と脱水縮合して、構成単位(C)間にシロキサン結合(-Si-O-Si-結合)を形成する。これにより、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層は、高い膜強度(高い架橋構造強度)を有する。ゆえに、本発明に係る親水性共重合体を用いることによって、耐久性(潤滑維持性)に優れる表面潤滑層が形成できる。また、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成される表面潤滑層(本発明に係る親水性共重合体の架橋物を含む表面潤滑層)は、優れた潤滑性を発揮できる。
なお、本固定化工程前に、被膜を、必要であれば乾燥させてもよい。乾燥条件は、被膜から溶媒を除去できれば特に制限されず、ドライヤー等を用いて温風処理を行ってもよいし、自然乾燥させてもよい。また、乾燥時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧下または減圧下で行ってもよい。乾燥手段(装置)としては、例えば、オーブン、減圧乾燥機などを利用することができるが、自然乾燥の場合には、特に乾燥手段(装置)は不要である。
親水性共重合体を基材層表面に固定化する方法としては、特に制限されないが、例えば、加熱処理などの方法が使用できる。加熱処理としては、親水性共重合体の脱水縮合反応(基材層との化学結合および/または構成単位(C)間のシロキサン結合の形成)を促進し得るものであればよく、基材層を構成する材料や親水性共重合体に応じて適宜決定すればよい。
かかる加熱処理の条件(反応条件)としては、所望の脱水縮合反応を進行(促進)し得るものであればよい。例えば、加熱処理温度(オーブンなどの加熱装置の設定温度)は、好ましくは25℃以上200℃以下、より好ましくは50℃以上150℃以下である。また、加熱処理時間は、例えば、1時間以上48時間以下、好ましくは3時間以上24時間以下である。このような条件であれば、脱水縮合反応が十分進行し、表面潤滑層を基材層により強固に固定化し、また、表面潤滑層の膜強度をさらに向上できる。加熱処理時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。加熱手段(装置)としては、例えば、オーブン、ドライヤー、マイクロ波加熱装置などを利用することができる。
また、上記加熱処理以外にも、光、電子線、放射線などが例示できるが、これらに何ら制限されるものではない。
上記加熱処理を行った後、溶剤(例えば、コート液調製に用いる溶剤)で基材層表面を洗浄し、未反応の親水性共重合体を除去してもよい。
基材層への被膜(表面潤滑層)の固定化および被膜(表面潤滑層)内のシロキサン結合は、FT-IR、XPS、ラマン分光等の公知の分析手段を用いて確認することができる。例えば、加熱処理後にFT-IR測定を行い、-Si-O-結合、シロキサン構造(-Si-O-Si-)の存在を確認することにより、確認することができる。
上記方法により、本発明に係る医療用具では、本発明の親水性共重合体を用いて表面潤滑層が基材層表面に形成される。これにより、本発明に係る医療用具は、優れた耐久性(潤滑維持性)を発揮することができる。また、本発明に係る医療用具は、優れた潤滑性を発揮することができる。
[医療用具の用途]
本発明に係る医療用具は、体液や血液などと接触して用いられ、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減をなしうる。具体的には、血管内で使用されるカテーテル、ステント、ガイドワイヤ等が挙げられる。すなわち、本発明の一実施形態に係る医療用具は、カテーテル、ステントまたはガイドワイヤである。本発明の一実施形態に係る医療用具は、ステントまたはガイドワイヤである。その他にも以下の医療用具が示される。
(a)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類
(b)酸素カテーテル、酸素カヌラ、気管内チューブのチューブやカフ、気管切開チューブのチューブやカフ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類
(c)尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類
(d)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類
(e)留置針、IVHカテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に挿入ないし留置されるカテーテル類、あるいは、これらのカテーテル用のガイドワイヤ、スタイレットなど
(f)人工気管、人工気管支など
(g)体外循環治療用の医療用具(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)やその回路類。
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下、特に規定のない室温放置条件は全て、23℃/55%RHである。
<共重合体の製造>
[製造例1]
シグマアルドリッチジャパン合同会社製[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(MSPB)1.82g(6.5mmol)、シグマアルドリッチジャパン合同会社製2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS(Na))50wt%水溶液1.46g(3.2mmol)および東京化成工業株式会社製3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(式(5)中、R51=水素原子、Z=酸素原子、R52=トリメチレン基、R53~R55=メトキシ基)(APTMSi)0.070g(0.3mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール/水(9/1 v/v)混合溶媒10mLに溶解させて、反応液を調製した。次に、この反応液を30mLのナス型フラスコに入れ、十分な窒素バブリングによって酸素を除き、重合開始剤2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 3.1mg(0.010mmol)を添加した後、素早く密閉し、40℃の水浴で1時間重合を行った。次に、重合物をアセトン中で沈殿させ、デカンテーションで上澄みを除去することで、組成(構成単位比)(モル比)がMSPB:AMPS(Na):APTMSi=65:32:3である共重合体Aを得た。
[製造例2]
シグマアルドリッチジャパン合同会社製[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(MSPB)2.71g(9.7mmol)および東京化成工業株式会社製3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(式(5)中、R51=水素原子、Z=酸素原子、R52=トリメチレン基、R53~R55=メトキシ基)(APTMSi)0.070g(0.3mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール/水(9/1 v/v)混合溶媒10mLに溶解させて、反応液を調製した。次に、この反応液を30mLのナス型フラスコに入れ、十分な窒素バブリングによって酸素を除き、重合開始剤2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 3.1mg(0.010mmol)を添加した後、素早く密閉し、40℃の水浴で1時間重合を行った。次に、重合物をアセトン中で沈殿させ、デカンテーションで上澄みを除去することで、組成(構成単位比)(モル比)がMSPB:APTMSi=97:3である共重合体Bを得た。
[製造例3]
シグマアルドリッチジャパン合同会社製[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(MSPB)1.87g(6.7mmol)、シグマアルドリッチジャパン合同会社製2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS(Na))50wt%水溶液1.51g(3.3mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール/水(9/1 v/v)混合溶媒10mLに溶解させて、反応液を調製した。次に、この反応液を30mLのナス型フラスコに入れ、十分な窒素バブリングによって酸素を除き、重合開始剤2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 3.1mg(0.010mmol)を添加した後、素早く密閉し、40℃の水浴で1時間重合を行った。次に、重合物をアセトン中で沈殿させ、デカンテーションで上澄みを除去することで、組成(構成単位比)(モル比)がMSPB:AMPS(Na)=67:33である共重合体Cを得た。
<親水性共重合体の溶剤溶解性試験>
[実施例1-1、比較例1-1]
上記製造例1~2で得られた共重合体A~Bについて、水、メタノール、および混合比率の異なる水/メタノール混合溶媒に対する溶解性を評価した。具体的には、各共重合体を、1重量%の濃度となるように、下記表1に記載の溶剤(水、メタノール、または水とメタノールとの混合溶媒(水:メタノールの混合体積比=7:3、5:5、3:7、2:8、1:9))に25℃で添加し、2時間撹拌した後、下記の判定基準に従い、目視にて溶解性を試験した。結果を表1に示す。なお、下記表2中、「A/B」は、水とメタノールとの混合溶媒(水:メタノールの混合体積比=A:B)における各共重合体の溶解性を示す。例えば、「10/0」は、水単独における各共重合体の溶解性を示し、「7/3」は、水とメタノールとの混合溶媒(水:メタノールの混合体積比=7:3)における各共重合体の溶解性を示す。
[溶剤溶解性の判定基準]
○:溶解あるいは分散する
×:溶解も分散もしない
<摺動および耐久性試験>
[実施例1-2]
製造例1で得られた共重合体A(本発明に係る親水性共重合体に相当)を10重量%になるように、メタノール/水(5/5 v/v)に溶解し、コート液を調製した。なお、共重合体Aは、コート液中に均一に溶解・分散していた。
次に、ステンレス(SUS304)製のプレート(15mm×150mm)を上記コート液にディップし、0.1mm/secの速度で引き上げた。次に、このSUSプレートを真空オーブン内に置き、減圧下で130℃で16時間加熱することによって、共重合体Aの架橋物の被膜が形成されたSUSプレート(サンプルA)を得た。
次に、得られたサンプルAについて、下記方法にしたがって、図3に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20を用いて、潤滑性および耐久性(潤滑維持性)を評価した。
すなわち、サンプル16をシャーレ12中に固定し、サンプル16全体が浸る高さの水17中に浸漬した。このシャーレ12を、図3に示される摩擦測定機20の移動テーブル15に載置した。シリコン端子(φ10mm)13をサンプル16に接触させ、端子上に200gの荷重14をかけた。摺動距離20mm、摺動速度16.7mm/secの設定で、移動テーブル15を水平に10回往復移動させた際の摺動抵抗値(gf)を測定した。1往復目から10往復目までの往路時における摺動抵抗値を往復回数毎に平均し、試験力としてグラフにプロットすることにより、10回の繰り返し摺動に対する摺動抵抗値の変化を評価した。
[比較例1-2]
実施例1-2において、共重合体Aの代わりに製造例3で得られた共重合体Cを用いた以外は、実施例1-2と同様にして、被覆サンプル(サンプルB)の作製および摺動抵抗値の測定を行った。
実施例1-2および比較例1-2の結果を図4に示す。実施例1-2のサンプルAは、摺動回数の0~10回にかけて摺動抵抗値がほとんど変化しなかったのに対して、比較例1-2のサンプルBは初期の摺動時に摺動抵抗値が上昇し、表面潤滑層の表面が初期の段階で摩耗した可能性が示唆される。
以上の結果から、本発明に係る親水性共重合体を用いて形成された(親水性共重合体の架橋物を含む)表面潤滑層は、優れた潤滑性および耐久性(潤滑維持性)を発揮できると考察される。上記効果は、本発明に係る親水性共重合体は基材層表面に強固に固定化され、また、構成単位(C)間のシロキサン結合の形成により膜強度を高められたことによると推測される。
1 基材層、
1a 基材層コア部、
1b 基材表面層、
2 表面潤滑層、
10 医療デバイス、
12 シャーレ、
13 シリコン端子、
14 荷重、
15 移動テーブル、
16 サンプル、
17 水、
20 摩擦測定機。

Claims (6)

  1. スルホベタイン構造を有する重合性単量体(A)由来の構成単位と、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する重合性単量体(B)由来の構成単位と、-Si(R(OR3-a基(Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~21の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基であり;aは、0~2の整数である)を有する重合性単量体(C)由来の構成単位とを含む、親水性共重合体。
  2. 前記重合性単量体(A)は、下記式(1)で表される、請求項1に記載の親水性共重合体:

    上記式(1)中、
    11は、水素原子またはメチル基であり、
    は、酸素原子または-NH-であり、
    12およびR15は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、
    13およびR14は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
  3. 前記重合性単量体(B)は、下記式(2)、(3)または(4)で表される、請求項1または2に記載の親水性共重合体:

    上記式(2)中、
    21は、水素原子またはメチル基であり、
    は、酸素原子または-NH-であり、
    22は、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、
    Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基である;

    上記式(3)中、
    31は、水素原子またはメチル基であり、
    32は、単結合または炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、
    Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基である;

    上記式(4)中、
    41は、水素原子またはメチル基であり、
    42は、炭素原子数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、
    Xは、スルホン酸基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)および亜硫酸基(-OSOH)ならびにこれらの塩の基からなる群より選択される基である。
  4. 前記重合性単量体(C)は、下記式(5)で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載に親水性共重合体:

    上記式(5)中、
    51は、水素原子またはメチル基であり、
    は、酸素原子または-NH-であり、
    52は、炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、
    53は-ORであり、R54およびR55は、それぞれ独立して、-Rまたは-ORであり、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のアシル基、または炭素原子数2~5の直鎖もしくは分岐鎖のエーテル基である。
  5. 基材層と、
    前記基材層表面の少なくとも一部に形成され、請求項1~4のいずれか1項に記載の親水性共重合体の架橋物を含む表面潤滑層と、を有する医療用具。
  6. 前記医療用具は、カテーテル、ステントまたはガイドワイヤである、請求項5に記載の医療用具。
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