WO2023026352A1 - 回転機の制御装置 - Google Patents

回転機の制御装置 Download PDF

Info

Publication number
WO2023026352A1
WO2023026352A1 PCT/JP2021/030936 JP2021030936W WO2023026352A1 WO 2023026352 A1 WO2023026352 A1 WO 2023026352A1 JP 2021030936 W JP2021030936 W JP 2021030936W WO 2023026352 A1 WO2023026352 A1 WO 2023026352A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
rotating machine
voltage
stator
phase
rotor position
Prior art date
Application number
PCT/JP2021/030936
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
晃大 寺本
鉄也 小島
Original Assignee
三菱電機株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 三菱電機株式会社 filed Critical 三菱電機株式会社
Priority to JP2023543513A priority Critical patent/JP7362004B2/ja
Priority to PCT/JP2021/030936 priority patent/WO2023026352A1/ja
Publication of WO2023026352A1 publication Critical patent/WO2023026352A1/ja

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H02GENERATION; CONVERSION OR DISTRIBUTION OF ELECTRIC POWER
    • H02PCONTROL OR REGULATION OF ELECTRIC MOTORS, ELECTRIC GENERATORS OR DYNAMO-ELECTRIC CONVERTERS; CONTROLLING TRANSFORMERS, REACTORS OR CHOKE COILS
    • H02P21/00Arrangements or methods for the control of electric machines by vector control, e.g. by control of field orientation
    • H02P21/14Estimation or adaptation of machine parameters, e.g. flux, current or voltage
    • H02P21/18Estimation of position or speed

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Control Of Ac Motors In General (AREA)

Abstract

制御装置(100)は、電圧印加器(3)と回転機(2)の固定子巻線との間に流れる固定子電流を検出する電流検出器(4)と、固定子電流及び回転機(2)の回転子(2b)の位置情報である回転子位置に基づいて固定子巻線に印加する固定子電圧の指令値である電圧指令値を演算する制御器(5)と、固定子電圧を平滑化した値が電圧指令値と一致するように、電圧印加器(3)に具備されるスイッチング素子のオン及びオフを制御するPWM変調器(6)と、電圧指令値及び固定子電流に基づいて、回転機(2)の回転速度の基本波周波数の周波数成分を除去するフィルタを通して回転子位置を推定する位置推定器(7)と、を備える。

Description

回転機の制御装置
 本開示は、回転子位置を検出する位置センサを用いることなく回転子位置情報を得て制御する、回転機の制御装置に関する。
 回転機の性能を十分に引き出して駆動するには、回転子の位置情報が必要である。そのため、回転機に取付けられた位置センサで検出された位置情報を用いて、回転機を駆動することが行われてきた。一方、近年においては、回転機の製造コストのより一層の低減、回転機の小型化、及び回転機の信頼性の向上といった観点から、位置センサレスで回転機を駆動する技術が開発されてきた。
 回転機の位置センサレス制御方法の1つに、高周波信号を回転機に印加する手法がある。この手法では、まず、高周波電圧を回転機に印加したときの固定子電流を検出し、高周波電圧と同じ周波数成分の高周波電流を抽出する。そして、回転機のインダクタンス、つまり、高周波電流の振幅が回転子位置の電気角周波数の2倍の周波数で変化することを利用して、回転子位置を推定する。このような高周波信号を利用する方式は、回転機が零速又は低速域でも良好に回転子位置を推定できるという利点がある一方で、重畳される高周波電圧によってトルク脈動及び騒音を発生するという欠点がある。
 また、他の手法も存在する。例えば、下記特許文献1には、高周波信号を印加せずに、回転機の固定子電圧及び固定子電流から回転子位置を推定する手法が開示されている。この特許文献1では、まず、固定子電圧及び固定子電流がオブザーバに入力される。そして、オブザーバは、鎖交磁束の成分から回転子位置に同期して回転する成分を推定し、その推定値の位相から回転子位置を演算して出力する。
特開2006-230174号公報
 特許文献1に代表される従来技術では、回転子位置を推定するために利用する固定子電圧は、実際の電圧ではなくその指令値である固定子電圧指令値が用いられる。固定子電圧と固定子電圧指令値との間には、必然的に誤差が存在する。また、回転子電流の検出においても検出誤差が発生する。従って、従来手法では、これらの電圧誤差及び電流誤差に起因して、回転子位置の推定値に誤差が存在し、場合によっては、脈動成分も発生する。このような推定誤差を有する回転子位置の推定値を用いて回転機を制御した場合、トルク又は電力に脈動が発生し、接続されている機械系又は電力系統に悪影響を及ぼす場合がある。
 本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、回転子位置の推定値に含まれ得る推定誤差に起因するトルク脈動及び電力脈動を低減可能な回転機の制御装置を得ることを目的とする。
 上述した課題を解決し、目的を達成するため、本開示に係る回転機の制御装置は、電圧印加器と、電流検出器と、制御器と、パルス幅変調器と、位置推定器とを備える。電圧印加器は、直流電源と回転機との間に接続され、各相に具備される複数のスイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで回転機へ矩形状の固定子電圧を印加する。電流検出器は、電圧印加器と回転機の固定子巻線との間に流れる固定子電流を検出する。制御器は、固定子電流及び回転機の回転子の位置情報である回転子位置に基づいて、固定子巻線に印加する電圧である固定子電圧の指令値である電圧指令値を演算する。パルス幅変調器は、固定子電圧を平滑化した値が電圧指令値と一致するように、スイッチング素子のオン及びオフを制御する。位置推定器は、電圧指令値及び固定子電流に基づいて、回転機の回転速度の基本波周波数の周波数成分を除去するフィルタを通して、回転子位置を推定する。
 本開示に係る回転機の制御装置によれば、回転子位置の推定値に含まれ得る推定誤差に起因するトルク脈動及び電力脈動を低減できるという効果を奏する。
実施の形態1に係る回転機の制御装置の構成例を示す図 図1の電圧印加器として利用する三相インバータの主回路の構成例を示す図 図1に示すパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM変調器)の動作説明に供する図 図1に示す位置推定器の構成例を示す図 実施の形態1におけるスイッチング周期と制御演算周期との関係の説明に供する第1の図 実施の形態1におけるスイッチング周期と制御演算周期との関係の説明に供する第2の図 実施の形態1における相電流の検出タイミングの説明に供する図 実施の形態1における応答周波数の説明に供する図 実施の形態2に係る回転機の制御装置の構成例を示す図 図9に示す位置推定器の構成例を示す図 実施の形態3に係る回転機の制御装置の構成例を示す図 図11に示す位置推定器の構成例を示す図 実施の形態1から3に係る制御装置の各機能を実現する第1のハードウェア構成例を示す図 実施の形態1から3に係る制御装置の各機能を実現する第2のハードウェア構成例を示す図
 以下に添付図面を参照し、本開示の実施の形態に係る回転機の制御装置について詳細に説明する。
実施の形態1.
 図1は、実施の形態1に係る回転機の制御装置(以下、適宜「制御装置」と略す)100の構成例を示す図である。実施の形態1に係る制御装置100は、電圧印加器3と、電流検出器4と、制御器5と、PWM変調器6と、位置推定器7とを備えて構成される。
 電圧印加器3は、直流電源1と回転機2の間に接続されている。直流電源1は、回転機2への駆動電力を与える電力供給源である。
 回転機2は、インダクタンスが回転子位置によって変化する三相電動機である。回転機2は、u相、v相及びw相の固定子巻線を有する固定子2aと、固定子2aの内側に配置される回転子2bとを有する。回転機2は、動作態様によって、三相発電機としても動作する。本稿では、回転機2の一例として同期リラクタンスモータを想定するが、同期リラクタンスモータ以外のモータでもよい。なお、本稿では、インダクタンスが最大となる回転子の方向をd軸、最小となる方向をq軸と定義し、回転子位置は、d軸を基準とする。
 電流検出器4は、直流電源1と回転機2の間に配置される。電流検出器4は、電圧印加器3と回転機2の固定子巻線との間に流れる固定子電流isu,isv,iswを検出する。
 電圧印加器3は、各相に具備される複数のスイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで回転機2へ矩形状の固定子電圧を印加する。固定子電圧は、回転機2の固定子巻線に印加する電圧である。本稿において、電圧印加器3は、三相インバータを想定する。
 制御器5は、電流検出器4で検出された固定子電流isu,isv,isw及び回転子2bの位置情報である回転子位置に基づいて電圧指令値vsu ,vsv ,vsw を演算する。電圧指令値vsu ,vsv ,vsw は、回転機2を駆動するための固定子電圧の指令値である。電圧印加器3が出力する固定子電圧は、電圧指令値vsu ,vsv ,vsw によって制御される。
 PWM変調器6は、電圧印加器3が出力する矩形状の固定子電圧を平滑化した値が電圧指令値vsu ,vsv ,vsw と一致するように、スイッチング素子のオン及びオフを制御するゲート信号g,g,gを発生する。
 位置推定器7は、電圧指令値vsu ,vsv ,vsw 、及び固定子電流isu,isv,iswに基づいて、推定回転子位置θ を演算する。推定回転子位置θ は、回転子2bの位置情報である回転子位置の推定値である。なお、本稿において、推定回転子位置θ は、電気角に換算した値とする。
 図2は、図1の電圧印加器3として利用する三相インバータの主回路の構成例を示す図である。図2において、スイッチング素子31はu相正側のスイッチング素子であり、スイッチング素子32はu相負側のスイッチング素子である。同様に、スイッチング素子33,34は、それぞれv相の正側及び負側のスイッチング素子であり、スイッチング素子35,36は、それぞれw相の正側及び負側のスイッチング素子である。スイッチング素子31~36の一例は図示のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、IGBT以外のスイッチング素子を用いてもよい。IGBT以外のスイッチング素子の一例は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。各スイッチング素子の両端には、逆並列に接続されるダイオードが設けられている。逆並列とは、ダイオードのアノードがIGBTのエミッタに接続され、ダイオードのカソードがIGBTのコレクタに接続される接続形態である。
 次に、制御器5の動作を具体的に説明する。制御器5は、電流指令値演算器501と、三相-二相変換器502と、回転座標変換器503と、d-q電流制御器504と、回転座標逆変換器505と、二相-三相変換器506とを備えて構成される。制御器5にはトルク指令値Tが入力される。制御器5は、回転機2がトルク指令値Tに応じたトルクを出力するように、電圧指令値vsu ,vsv ,vsw を演算する。
 電流指令値演算器501は、回転機2がトルク指令値Tに応じたトルクを出力するのに必要な固定子電流の指令値である電流指令値isd ,isq を演算する。電流指令値isd ,isq は、回転機2の回転速度に同期して回転する回転座標上での演算値である。なお、電流指令値isd ,isq は、トルクに対する電流実効値が最小、即ちトルクに対する回転機2の銅損が最小になるように演算される。
 三相-二相変換器502は、三相座標上の固定子電流isu,isv,iswを三相-二相変換によって、静止座標である二相座標上の固定子電流isα,isβへ変換する。なお、本稿において、この変換処理には、以下の(1)式に示される変換行列C32を利用する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 回転座標変換器503は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の固定子電流isα,isβを回転座標変換によって、回転座標上の固定子電流isd,isqへ変換する。なお、本稿において、この変換処理には、以下の(2)式に示される変換行列Cdq(θ)を利用する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 d-q電流制御器504は、固定子電流isd,isqが電流指令値isd ,isq に一致するように制御を行い、回転座標上の電圧指令値vsd ,vsq を演算する。この制御には、比例積分制御を利用できる。なお、比例積分制御以外の制御を利用してもよい。
 回転座標逆変換器505は、推定回転子位置θ を使用し、回転座標上の電圧指令値vsd ,vsq を回転座標逆変換によって、二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ へ変換する。なお、本稿において、この逆変換処理には、以下の(3)式に示される逆変換行列Cdq -1(θ )を利用する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
 二相-三相変換器506は、二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ を二相-三相変換によって、三相座標上の電圧指令値vsu ,vsv ,vsw に変換する。なお、本稿において、この変換処理には、以下の(4)式に示される変換行列C23を利用する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 図3は、図1に示すPWM変調器6の動作説明に供する図である。図3には、1相分の波形例としてu相の波形が示されている。
 図3において、上段部にはu相における電圧指令値であるu相電圧指令値vsu 及び三角波のキャリア信号cの波形が示され、中上段部にはu相上側におけるゲート信号であるu相上側ゲート信号gupの波形が示され、中下段部にはu相下側におけるゲート信号であるu相下側ゲート信号gunの波形が示され、下段部にはu相における固定子電圧であるu相電圧vsuの波形が示されている。vdcは、直流電源1の電圧である電源電圧である。この場合、図3に示されるように、電源電圧vdcの半分であるvdc/2が、相電圧のステップ幅となり、u相電圧指令値vsu 及びu相電圧vsuは、±vdc/2の範囲で変化する。
 PWM変調器6は、u相上側電圧指令値vsu をキャリア信号cと比較し、u相上側電圧指令値vsu がキャリア信号cの値よりも大きければ、u相上側ゲート信号gupをH、u相下側ゲート信号gunをLにする。また、PWM変調器6は、u相上側電圧指令値vsu がキャリア信号cの値以下であれば、u相上側ゲート信号gupをL、u相下側ゲート信号gunをHにする。ここで、Hは“High”、Lは“Low”を意味する。u相上側ゲート信号gup=H、u相下側ゲート信号gun=Lの場合、電圧印加器3におけるu相正側のスイッチング素子31をオンにし、u相負側のスイッチング素子32をオフにする。また、u相上側ゲート信号gup=L、u相下側ゲート信号gun=Hの場合、電圧印加器3におけるu相正側のスイッチング素子31をオフにし、u相負側のスイッチング素子32をオンにする。v相及びw相の動作も、u相と同様である。
 実際に出力されるu相電圧vsuは、u相上側電圧指令値vsu をスイッチング周期Tswで平均した値の電圧となる。なお、スイッチング周期Tswは、キャリア信号cの周期であるキャリア周期に等しい。一般的に、正側及び負側のスイッチング素子のオンとオフとを切り替えるとき、両者の同時オンを防止するため、両者を共にオフにする時間であるデッドタイムを設けるが、図3では図示を省略している。また、説明の簡略化のため、図3に示すu相電圧vsuの波形では、三相電圧の平均値である中性点電圧を無視している。
 また、実施の形態1において、スイッチング周波数は、回転機2の回転速度の基本波周波数fの整数倍に同期させる手法を採る。スイッチング周波数は、スイッチング周期Tswの逆数である。この同期手法によって、スイッチング周波数が基本波周波数fに対して十分に高くない場合でも、低次の高調波成分が少なくなる。これにより、歪みが小さい固定子電圧、及び歪みが小さい固定子電流を回転機2に供給できる。なお、ここで言う、スイッチング周波数が十分に高くない場合とは、例えばスイッチング周波数が基本波周波数fの1~27倍である場合がこれに該当する。
 次に、位置推定器7によって回転子位置及び回転速度を推定する原理について説明する。まず、回転機2の特性を数式化した回転機モデルは二相座標上において、以下の(5)、(6)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
 ここで、v αβは固定子電圧、i αβは固定子電流、ψ αβは鎖交磁束、Rは巻線抵抗である。上付き文字の“αβ”は二相座標上の値であることを示している。
 また、回転機2のインダクタンスは回転子位置によって変化する。上記(6)式では、インダクタンスが回転子位置によって変化しないインダクタンス平均成分Lsavgと、インダクタンスが回転子位置の電気角周波数の2倍の周波数で変化するインダクタンス変動成分Lsvarとを用いて表されている。これらのインダクタンス平均成分Lsavg及びインダクタンス変動成分Lsvarは、d軸方向のインダクタンスLsdと、q軸方向のインダクタンスLsqとを用いて、以下の(7)、(8)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 上記(5)、(6)式で表される回転機モデルより、鎖交磁束ψ αβからq軸方向のインダクタンスLsqと固定子電流i αβとの積を減算することで、以下の(9)式のように、d軸基準のアクティブ・フラックス(Active Flux)ψafd αβを抽出できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
 d軸基準のアクティブ・フラックスψafd αβは、鎖交磁束ψ αβのうちの回転子位置に同期して回転する成分である。
 また、固定子電流i αβは、その電流実効値Iphと、回転子位置との角度差である通電角度φを用いて、以下の(10)式で表せる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 上記(6)、(10)式を、上記(9)式の右辺へ代入すると、二相座標上におけるd軸基準のアクティブ・フラックスψafd αβを表す式として、以下の(11)式が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
 上記(11)式に示されるように、アクティブ・フラックスψafd αβは、インダクタンス変動成分Lsvarと、固定子電流isdとの積によって生成される成分である。また、上記(11)式のアクティブ・フラックスψafd αβはd軸方向を基準としているので、これを公知のオブザーバに入力することで、回転子位置を推定することができる。
 なお、上記(9)式に代え、鎖交磁束ψ αβからd軸方向のインダクタンスLsdと固定子電流i αβとの積を減算した、以下の(12)式で表される、q軸基準のアクティブ・フラックスψafq αβを利用することもできる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
 d軸基準の場合と同様に、上記(6)、(10)式を上記(12)式の右辺に、代入すると、二相座標上におけるq軸基準のアクティブ・フラックスψafq αβを表す式として、以下の(13)式が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 上記(13)式で表されるq軸基準のアクティブ・フラックスψafq αβは、q軸方向を基準としているので、これを公知のオブザーバに入力することで、回転子位置を推定できる。
 なお、本実施の形態では、d軸基準のアクティブ・フラックスψafdを、上述の特許文献1に開示されているオブザーバに入力することで、回転子位置を推定する。なお、特許文献1に開示されているオブザーバ以外のものを用いて、回転子位置を推定してもよい。
 特許文献1中の(14)式で表されるオブザーバは、本稿で用いる変数を用いて、以下の(14)式で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000014
 上記(14)式において、ψ safd dqはd軸基準のアクティブ・フラックスの推定値である。このオブザーバは、推定した回転子位置に同期する回転座標上で表されており、上付き文字の“dq”は回転座標上の値であることを示している。また、上記(14)式中のωは回転角速度、ωは回転座標上の回転角速度を示している。また、上記(14)式中の記号Jは、以下の(15)式で表される変換行列である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000015
 上記(14)式で表されるオブザーバにおいて、特許文献1に従ってオブザーバゲインを設定すれば、d軸基準のアクティブ・フラックスψafdの推定値が得られる。また、d軸基準のアクティブ・フラックスψafdは、上記(11)式に示されるように、回転子位置θに同期しているので、上記(11)式の2つの成分の逆正接を演算すれば、回転子位置を推定できる。
 なお、上記(14)式はオブザーバを利用して表した式ではあるものの、基本的には固定子電圧v dqと、固定子電流i dqとを含む項を積分して表現したものである。ここで、積分を利用した鎖交磁束ψの演算において、巻線抵抗R dqと固定子電流i dqとの積の項は回転機2が高速回転している場合は固定子電圧v dqと比較して小さくなるので、この積の項は無視することもできる。なお、固定子電圧v dqとしては電圧指令値v dq*を利用し、固定子電流i dqは検出値を利用することができる。
 図4は、図1に示す位置推定器7の構成例を示す図である。位置推定器7は、三相-二相変換器701,703と、回転座標変換器702,704と、オブザーバ705と、可変周波数ノッチフィルタ706とを含む構成とすることができる。
 三相-二相変換器701は、三相座標上の固定子電圧vの各相の指令値である電圧指令値vsu ,vsv ,vsw を三相-二相変換によって二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ へ変換する。回転座標変換器702は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ を回転座標変換によって、回転座標上の電圧指令値vsd ,vsq へ変換する。なお、推定回転子位置θ は、可変周波数ノッチフィルタ706の出力、即ち位置推定器7の出力である推定回転子位置θ をフィードバックして使用する。
 同様に、三相-二相変換器703は、三相座標上の固定子電流isu,isv,iswを三相-二相変換によって二相座標上の固定子電流isα,isβへ変換する。回転座標変換器704は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の固定子電流isα,isβを回転座標変換によって、回転座標上の固定子電流isd,isqへ変換する。
 オブザーバ705は、前述のオブザーバを用いて推定回転子位置θ と、回転角速度の推定値である推定回転角速度ω を演算する。推定回転子位置θ は、フィルタ処理前の推定回転子位置である。なお、特許文献1ではオブザーバの他に位相同期器を通して、回転子位置及び回転角速度を推定しており、本稿におけるオブザーバ705も位相同期器の機能を含むものとする。また、位置推定器7は、簡易的に三相座標上の値を入力としているが、これに限定されない。図1に示すように、制御器5も三相-二相変換器502及び回転座標変換器503を有しており、回転座標上の値を制御器5から入力してもよい。
 オブザーバ705によって演算された推定回転子位置θ は、可変周波数ノッチフィルタ706に入力される。また、オブザーバ705によって演算された推定回転角速度ω は、回転機2の回転速度の基本波周波数成分を表す情報として、可変周波数ノッチフィルタ706に入力される。可変周波数ノッチフィルタ706は、推定回転子位置θ 及び推定回転角速度ω に基づいて推定回転子位置θ を演算する。推定回転子位置θ は、フィルタ処理後の推定回転子位置である。
 ここで、実施の形態1における演算処理について補足する。まず、オブザーバを用いた鎖交磁束ψの演算処理の演算周期をTpsi1とすると、この演算周期Tpsi1は、スイッチング周期Tswの半分の整数倍ではないとする。また、鎖交磁束ψの演算処理の後に行う推定回転子位置θ の演算処理の演算周期をTpsi2とすると、この演算周期Tpsi2も、スイッチング周期Tswの半分の整数倍ではないとする。
 次に、実施の形態1における可変周波数ノッチフィルタ706によるフィルタ処理の原理について説明する。まず、可変周波数ノッチフィルタ706を実現するノッチフィルタの伝達関数は、アナログ領域にて、以下の(16)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000016
 上記(16)式において、ζは減衰比である。また、ωは可変周波数ノッチフィルタ706において除去したい共振角周波数である。本稿の処理では、基本波周波数fに対応する基本波角周波数ωを設定する。基本波角周波数ωと基本波周波数fとの関係は、以下の(17)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000017
 上記(16)式を双一次変換してディジタルフィルタの形式で表すと、以下の(18)式が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000018
 上記(18)式中の係数a11,a12,b10,b11,b12は、それぞれ以下の(19)~(23)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000019
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000020
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000021
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000022
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000023
 なお、上記(19)、(21)式中のTsmpは、フィルタ処理における演算周期である。これらの式から、ディジタルフィルタの差分方程式は、以下の(24)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000024
 上記(24)式において、xはディジタルフィルタへの入力信号であり、yはディジタルフィルタの出力信号である。この(24)式による処理を実装することで、実施の形態1における可変周波数ノッチフィルタ706の機能を実現できる。なお、上記(24)式により、可変周波数ノッチフィルタ706の機能は、少なくとも2つの係数k,kを用いて実現できることが分かる。2つの係数k,kは、フィルタ係数であり、可変周波数ノッチフィルタ706における変数となる。
 実施の形態1において、上記(24)式における2つの変数を、共振角周波数ωごと、即ち回転機2の基本波周波数fごとに、予め演算してテーブルに保存しておく。また、共振角周波数ωは、基本的に回転機2の基本波周波数fに対応する値に設定するが、下限値を設ける。その理由は、共振角周波数ωを位置推定の応答周波数よりも下に設定すると、可変周波数ノッチフィルタ706によるフィルタ処理と、位置推定器7による位置推定処理とが干渉して、推定回転子位置θ の応答が低下したり、振動が発生したりするためである。ここでは、共振角周波数ωの下限値は、推定回転子位置θ を演算する位置推定処理の応答周波数と等しいかそれ以上であるとする。共振角周波数ωの下限値が、位置推定処理の応答周波数以上に設定されていれば、上述の問題が発生することなく動作する。
 次に、スイッチング周期Tswと制御演算周期Tpsiとの関係について、図5から図7の図面を参照して説明する。図5は、実施の形態1におけるスイッチング周期Tswと制御演算周期Tpsiとの関係の説明に供する第1の図である。図6は、実施の形態1におけるスイッチング周期Tswと制御演算周期Tpsiとの関係の説明に供する第2の図である。図7は、実施の形態1における相電流の検出タイミングの説明に供する図である。なお、ここでは、鎖交磁束ψの演算周期Tpsi1と、推定回転子位置θ の演算周期Tpsi2とは等しいとし、また、制御演算周期Tpsiも、鎖交磁束ψの演算周期Tpsi1及び推定回転子位置θ の演算周期Tpsi2のそれぞれに等しいとする。
 一般的に、回転機の制御では、固定子電圧の値として、検出値の代わりに指令値を利用する。制御演算周期Tpsiをスイッチング周期Tswの半分の整数倍とすると、制御演算周期Tpsiごとに電圧指令値と実際の電圧を平滑化した値とは等しくなる。なお、平滑化として、実際の電圧の平均値を用いる場合でも、電圧指令値と平均値とは概ね等しくなる。
 スイッチング周期Tswと制御演算周期Tpsiとに関し、図5には、Tpsi=1×(Tsw/2)である場合が示され、図6には、Tpsi=3×(Tsw/2)である場合が示されている。それぞれの上段部にはu相電圧指令値vsu 及びキャリア信号cの波形が示され、それぞれの下段部にはu相電圧vsuの波形が示されている。u相電圧指令値vsu は、正弦波の波形である。
 図5及び図6の何れの場合も、u相電圧vsuを制御演算周期Tpsiで平均すると、u相電圧指令値vsu と概ね等しくなることが確認できる。同時に、制御演算周期TpsiをTsw/2の整数倍にしない場合は、各々の制御演算周期Tpsiで平滑化したu相電圧vsuが、u相電圧指令値vsu と一致しないことが分かる。
 図7には、キャリア信号cの山及び谷で相電流を検出する場合の、三相各相の相電圧とu相電流との関係が示されている。上段部には各相の電圧指令値vsu ,vsv ,vsw 及びキャリア信号cの波形が示され、中段部には上から順に、u相電圧vsu、v相電圧vsv及びw相電圧vswの波形が示され、下段部には固定子電流isuの波形が示されている。また、図7には、キャリア信号cの山及び谷の位置に電流検出タイミングを同期させる様子が示されている。電流検出タイミングは、制御タイミングと等価と考えてよい。
 キャリア信号cの山及び谷では、三相各相の相電圧の値が全て同じである。従って、キャリア信号cの山及び谷では、固定子2aの線間に印加される線間電圧は、ほぼゼロとなる。従って、キャリア信号の山及び谷では、固定子電流の変化は小さく、三相各相の相電流の変化が緩やかで、リプル電流の影響なく電流を検出できる。このように、キャリア信号cの山及び谷では、スイッチング周期Tswの半分の期間で、リプル電流の影響を除いた固定子電流の検出が可能となる。
 前述したように、スイッチング周波数は基本波周波数fの整数倍に設定されている。ここで、回転機2の基本波周波数fは、一定ではなく時々刻々と変化している。このため、スイッチング周波数と等価であるキャリア周波数は、基本波周波数fの変化に応じて、リアルタイムに変更する必要がある。ここで、一般的な回転機の制御に倣って、制御演算周期Tpsiをスイッチング周期Tswの半分の整数倍にするためには、逐次リアルタイムで制御演算周期Tpsiを変更する必要がある。これを実現するには、制御演算周期Tpsiを変更しながら可変周期で演算しようとすると、制御演算量が多くなる他、制御設計が複雑になる。
 そこで、実施の形態1では、制御演算周期Tpsiは固定値とし、スイッチング周期Tswの半分の整数倍に逐次調整しないこととする。このようにすれば、制御演算における演算量も少なくなり、高価なマイクロプロセッサなどの計算機が不要となり、制御設計も比較的簡単となる。この場合、電圧指令値v と実際の電圧を平滑化した値とは一致しない。その結果、電圧指令値v には実際の電圧に対して誤差が含まれる。また、制御演算周期Tpsiがスイッチング周期Tswの半分の整数倍に調整されない場合、電流検出のタイミングもキャリア信号cの山及び谷に同期しない。従って、電流検出器4によって検出される電流も、実際の電流に対して誤差が含まれる。
 上述したように、制御演算周期Tpsiがスイッチング周期Tswの半分の整数倍に調整されない場合、固定子電圧及び固定子電流に誤差が含まれ得る。固定子電圧及び固定子電流に誤差がある場合、これらを用いて演算した鎖交磁束ψにも誤差が発生する。また、鎖交磁束ψの演算は、基本的に積分処理であるので、直流から低周波成分を含む直流近傍成分の影響が特に大きい。そして、固定子電圧及び固定子電流における直流近傍成分の誤差は、回転子位置に同期して基本波周波数fで回転する回転座標に変換されると、基本波周波数f近傍の誤差になる。位置推定の演算は、回転座標上の鎖交磁束ψ、より正確にはd軸基準のアクティブ・フラックスψafdを用いて行うので、推定回転子位置θ にも基本波周波数f近傍の誤差が発生する。そして、脈動する誤差を持つ推定回転子位置θ を回転機2の制御に利用すると、トルク及び電力が脈動する。これに対し、実施の形態1の位置推定器7は、オブザーバ705の演算出力を可変周波数ノッチフィルタ706を通し、可変周波数ノッチフィルタ706の出力を推定回転子位置θ として用いるので、基本波周波数f近傍の誤差に起因するトルク及び電力の脈動を除去して位置推定することができる。
 次に、上述した実施の形態1に係る制御演算による効果について要約する。まず、実施の形態1では、スイッチング周波数を回転機2の基本波周波数fの整数倍に同期させる。これにより、低いスイッチング周波数でも歪みの小さい固定子電圧及び固定子電流を回転機2へ供給できる。また、実施の形態1では、オブザーバ705による鎖交磁束ψの演算周期Tpsi1及び推定回転子位置θ の演算周期Tpsi2をスイッチング周期Tswの半分の整数倍に逐次調整することは行わない。これにより、制御演算における演算量も少なくなり、高価なマイクロプロセッサなどの計算機が不要となり、制御設計も比較的簡単となる。このような構成でも、基本波周波数f近傍の誤差及び脈動を可変周波数ノッチフィルタ706で低減して、回転子位置を推定できる。従って、高価なマイクロプロセッサを必要とすることなく、位置センサレスであり、且つ、トルク脈動及び電力脈動の少ない制御装置100を構成できるといった、従来にない顕著な効果を奏する。
 以上説明したように、実施の形態1に係る回転機の制御装置によれば、位置推定器は、電圧指令値及び固定子電流に基づいて、回転機の回転速度の基本波周波数の周波数成分を除去するための可変周波数ノッチフィルタを通して、回転子位置を推定する。これにより、回転子位置の推定値に含まれ得る推定誤差に起因するトルク脈動及び電力脈動を低減することが可能となる。
 なお、回転子位置の推定値は、鎖交磁束の成分から回転子位置に同期して回転する成分を推定し、その推定値の位相から演算することができる。この演算に用いる鎖交磁束は、少なくとも固定子電圧指令を積分演算することで得られる。鎖交磁束を積分演算する場合、オフセット成分が生じて推定値に誤差及び脈動が発生する場合があるが、実施の形態1の手法を用いれば、推定値に含まれ得る誤差及び脈動を小さくすることが可能となる。
 また、実施の形態1に係る回転機の制御装置によれば、PWM変調器は、スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるスイッチング周波数を、回転機の回転速度の基本波周波数の整数倍に同期させる。これにより、歪みが小さい固定子電圧、及び歪みが小さい固定子電流を回転機に供給することが可能となる。また、鎖交磁束を積分演算する場合、オフセット成分が生じて推定値に誤差及び脈動が発生する場合があるが、この手法を用いれば、当該オフセット成分を低減して、推定値に含まれ得る誤差及び脈動を小さくすることが可能となる。
 なお、実施の形態1に係る回転機の制御装置は、回転子位置を推定する演算周期がスイッチング周期の半分の整数倍になっていない場合に、その効果を享受できる。回転子位置を推定する演算周期がスイッチング周期の半分の整数倍に調整されない場合、回転子位置の推定値に誤差が含まれ得るが、実施の形態1の手法を用いれば、当該誤差の低減が可能となる。
 また、実施の形態1に係る回転機の制御装置は、鎖交磁束を演算する演算周期がスイッチング周期の半分の整数倍になっていない場合に、その効果を享受できる。鎖交磁束を演算する演算周期がスイッチング周期の半分の整数倍に調整されない場合、固定子電圧及び固定子電流に誤差が含まれ得るが、実施の形態1の手法を用いれば、当該誤差の低減が可能となる。
 なお、実施の形態1に係る回転機の制御装置においては、フィルタが除去する周波数成分には下限値を設けることが望ましい。また、当該下限値は、回転子位置を推定する応答周波数と等しいかそれ以上とすることが望ましい。応答周波数は、その周波数以下では、制御が追従する周波数である。位置推定の応答が一般的な一次遅れ系において、その応答角周波数をωとすると、位置推定応答のゲインの周波数特性は、例えば、図8のように表される。図8の縦軸はゲインを表している。図8において、応答角周波数ω以下の角周波数では、ゲインはほぼ1であり、位置推定系が十分に収束することが確認できる。上述した共振角周波数を位置推定の応答周波数よりも下に設定すると、フィルタ処理と位置推定とが干渉して、回転子位置の推定値を得るための処理において、応答が低下したり、振動が発生したりすることが想定される。これに対し、フィルタが除去する周波数成分に下限値を設け、その下限値が位置推定処理の応答周波数と等しいかそれ以上に設定されていれば、このような問題の発生を回避することが可能となる。
実施の形態2.
 図9は、実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aの構成例を示す図である。実施の形態2に係る制御装置100Aと、図1に示す制御装置100とを比較すると、図9では、位置推定器7が位置推定器8に置き替えられている。その他の構成は、制御装置100と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。
 図10は、図9に示す位置推定器8の構成例を示す図である。位置推定器8は、三相-二相変換器801,802と、回転座標変換器803と、第1の演算器804と、第1の推定器805と、第2の演算器806と、可変周波数ノッチフィルタ807と、第3の演算器808と、を含む構成とすることができる。
 三相-二相変換器801は、三相座標上の固定子電圧vの各相の指令値である電圧指令値vsu ,vsv ,vsw を三相-二相変換によって二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ へ変換する。同様に、三相-二相変換器802は、三相座標上の固定子電流isu,isv,iswを三相-二相変換によって二相座標上の固定子電流isα,isβへ変換する。回転座標変換器803は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の固定子電流isα,isβを回転座標変換によって、回転座標上の固定子電流isd,isqへ変換する。
 次に、第1の演算器804及び第1の推定器805による処理内容について説明する。第1の演算器804は鎖交磁束インダクタンス変動分を演算し、第1の推定器805は鎖交磁束インダクタンス変動分を推定する。
 まず、二相座標上における回転機2の鎖交磁束ψ αβは、以下の(25)式で求められる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000025
 また、上記(25)式の積分演算分は、以下の(26)式に示す伝達関数で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000026
 一般的に、鎖交磁束を積分で演算する場合、通常は初期値が不明である。そこで、静止座標である三相座標及び二相座標で鎖交磁束を演算する場合は、カットオフ周波数が基本波周波数成分に対して十分に低いハイパスフィルタ(High-Pass Filter:HPF)を利用することが行われる。この手法、即ち積分及びHPFを利用して静止座標で鎖交磁束を演算する手法を、本稿では「不完全積分」と呼ぶ。この不完全積分で使用されるハイパスフィルタの伝達関数は、カットオフ周波数をωhpfとして、以下の(27)式で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000027
 上記(27)式で示されるHPFを上記(26)式に適用すると、以下の(28)式が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000028
 上記(28)式は、HPFを適用した場合の鎖交磁束ψshpf αβを表す式である。また、上記(28)式を変形すると、以下の(29)式が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000029
 同期リラクタンスモータの位置センサレス制御においては、鎖交磁束の演算に不完全積分を利用する手法を用いることが可能である。不完全積分を利用する手法は、オブザーバを用いる場合と比べて計算負荷が小さいので、より安価なマイクロプロセッサなどの計算機を利用することができる。また、実施の形態1と同様に、回転機2が高速回転している場合、上記(28)式における、巻線抵抗Rと固定子電流i αβとの積の項は電圧指令値v αβ*と比較して小さいので、この積の項は無視することができる。また、上記(29)式の鎖交磁束ψshpf αβの演算において、固定子電圧としては指令値v αβ*を利用し、固定子電流i αβは検出値を利用する。更に、実施の形態2において、不完全積分を用いた鎖交磁束の演算周期Tpsi1はスイッチング周期Tswの半分の整数倍になっていないとし、その後の推定回転子位置θ の演算周期Tpsi2もスイッチング周期Tswの半分の整数倍ではないとする。
 回転機2の鎖交磁束ψ αβは、二相座標上にて上記(6)式で表される。この鎖交磁束ψ αβを推定回転子位置θ を用いて回転座標変換すると、以下の(30)式のように表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000030
 上記(30)式において、第1項は、回転子位置によって変化しないインダクタンス平均成分Lsavgを含む項であり、第2項は回転子位置の2倍の周波数で変化するインダクタンス変動成分Lsvarを含む項である。
 第1の演算器804は、上記(30)式の第2項に相当する成分を計算によって求める。具体的には、上記(30)式を変形した、以下の(31)式に従って演算する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000031
 上記(31)式の右辺第1項は、上記(29)式に示される鎖交磁束ψshpf αβを回転座標変換して求めたものである。また、上記(31)式の右辺第2項は、上記(30)式の第1項を表している。図10には、第1の演算器804の構成例が示されているが、この例に限定されるものではない。
 一方、第1の推定器805は、上記(30)式の第2項に相当する成分を直接的に推定する。図10には、第1の推定器805の構成例が示されているが、このように簡易に構成できる理由について説明する。
 まず、上記(30)式の第2項が回転座標上での鎖交磁束インダクタンス変動分の推定値であるとして、この推定値をψ svar dqで表すと、以下の(32)式のように表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000032
 上記(32)式において、回転子位置の推定値θ と、回転子位置の真値θとが凡そ等しいと近似すると、上記(32)式は、以下の(33)式のように簡略化される。なお、図10には、この(33)式を表す制御器の構成が示されている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000033
 次に、第2の演算器806、可変周波数ノッチフィルタ807及び第3の演算器808による処理内容について説明する。
 まず、鎖交磁束インダクタンス変動分の推定値ψ svar dqと、演算値ψsvar,calc dqとの外積は、以下の(34)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000034
 上記(34)式において、回転子位置の推定値θ と、回転子位置の真値θとが凡そ等しい、即ちθ ≒θと近似すると、回転子位置の推定誤差“-(θ -θ)”は、以下の(35)式で演算できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000035
 以上のように、第2の演算器806は、上記(31)式による演算値と、上記(33)式による推定値とに基づいて、回転子位置の推定誤差“-(θ -θ)”を演算する。
 第2の演算器806によって演算された回転子位置の推定誤差“-(θ -θ)”は、可変周波数ノッチフィルタ807に入力されてフィルタ処理が行われた後に第3の演算器808に入力される。第3の演算器808は、回転子位置の推定誤差“-(θ -θ)”を比例積分(PI)制御した後に積分してゼロに収束させることで、推定回転子位置θ を演算する。また、第3の演算器808は、回転子位置の推定誤差“-(θ -θ)”をゼロに収束させる過程で、推定回転速度ω を演算する。可変周波数ノッチフィルタ807は、実施の形態1で説明した可変周波数ノッチフィルタ706と同一又は同等のものを使用できる。
 以上のように、実施の形態2に係る回転機の制御装置は、回転機の回転速度の基本波周波数の周波数成分を除去するための可変周波数ノッチフィルタを用いて回転子位置を推定する手法を、静止座標で鎖交磁束を演算する構成に適用可能である。回転機が同期リラクタンスモータである場合の位置センサレス制御では、静止座標にて鎖交磁束を積分演算するので、オフセット成分が生じて推定値に誤差及び脈動が生じ易い。従って、実施の形態2の手法は、同期リラクタンスモータを位置センサレスで制御する場合に好適に用いることが可能である。
 次に、上述した実施の形態2に係る制御演算による効果について要約する。まず、実施の形態2においては、不完全積分を利用した上記(29)式を用いた鎖交磁束ψの演算周期Tpsi1と、推定回転子位置θ の演算周期Tpsi2とは、共にスイッチング周期Tswの半分の整数倍にはなっていない。このとき、電圧指令値v と実際の電圧を平滑化した値とは一致しない。その結果、電圧指令値v には実際の電圧に対して誤差が含まれる。また、電流検出のタイミングもキャリア信号cの山及び谷に同期していないので、検出した電流には実際の電流に対して誤差が含まれる。従って、これらを用いて演算した鎖交磁束ψにも誤差が発生する。更に、実施の形態2では、鎖交磁束ψを真値に収束させるためのオブザーバを利用せずに、不完全積分を利用して演算しているので、鎖交磁束ψの誤差が大きくなり、真値への収束も比較的遅い。また、鎖交磁束の演算は積分処理に基づいて実施しているので、その誤差は、直流から低周波成分にかけて大きくなる。その結果、回転座標上においては、基本波周波数f近傍の誤差が大きくなり、推定回転子位置θ にも基本波周波数f近傍に大きな誤差が発生する。この問題に対して、実施の形態2の位置推定器8は、第2の演算器806の出力を可変周波数ノッチフィルタ807で低減させてから、第3の演算器808に入力しているので、基本波周波数近傍の誤差及び脈動を低減して、回転子位置を推定することができる。また、実施の形態2の位置推定器8は、オブザーバを利用せずに不完全積分によって鎖交磁束を演算するので、実施の形態1よりも計算負荷を小さくできる。従って、実施の形態2の手法を用いれば、高価なマイクロプロセッサを必要とすることなく、位置センサレスであり、且つ、トルク脈動及び電力脈動の少ない制御装置100Aを構成できるといった、従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態3.
 図11は、実施の形態3に係る回転機の制御装置100Bの構成例を示す図である。実施の形態3に係る制御装置100Bと、図1に示す制御装置100とを比較すると、図11では、位置推定器7が位置推定器9に置き替えられている。その他の構成は、制御装置100と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。
 実施の形態3では、積分を利用せずに鎖交磁束を演算して回転子位置及び回転速度を推定する。ここではまず、位置推定器9によって回転子位置及び回転速度を推定する原理について説明する。まず、回転機2の特性を数式化した回転機モデルは回転座標上において、以下の(36)、(37)式で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000036
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000037
 なお、上記(36)式中の記号Jは、上記の(15)式で示した変換行列である。
 また、実施の形態3では、インダクタンス値を計算で求めるので、上記(37)式を以下の(38)式のように表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000038
 上記(38)式において、Lsd,calcは計算で求めたd軸インダクタンスを表し、Lsq,calcは計算で求めたq軸インダクタンスを表している。
 また、上記(36)式の右辺第3項の誘起電圧ωJψ dqを計算で求めるため、これをvemf,calcと表記する。ここで、上記(36)式における微分項、即ち上記(36)式の右辺第2項を無視すると、計算値である誘起電圧vemf,calcは、固定子電圧v dqと、固定子電流i dqとにより、以下の(39)式を用いて演算できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000039
 なお、固定子電圧v dqには電圧指令値v dq*を利用し、固定子電流i dqには検出値を利用する。
 また、上記(38)式によって鎖交磁束ψs,calc dqを演算し、これと推定回転速度ω とから、以下の(40)式を用いて、誘起電圧vemfの推定値である推定誘起電圧v emfを得ることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000040
 以上のように、上記(39)式による演算値と、上記(40)式による推定値とを比較し、その差がゼロに収束するように比例積分制御を行えば、回転速度ωの推定である推定回転速度ω を得ることができる。
 また、上記(39)式にて計算した誘起電圧vemf,calcを推定回転速度ω で除算すると鎖交磁束ψの計算値が得られ、更に固定子電流iで除算するとインダクタンス値の計算値が得られる。
 上記(6)式に示されるように、インダクタンス値は真の回転子位置θに依存して変化する。また、上記(30)式に示されるように、インダクタンス値は真の回転子位置θと、推定回転子位置θ との差に依存して変化する。従って、インダクタンス値の計算値を、これらのインダクタンス変化特性に照らし合わせれば、回転子位置を推定することが可能である。具体的には、インダクタンス変動成分Lsvarと、固定子電流iとの積によって生成される鎖交磁束インダクタンス変動分が含まれた鎖交磁束ψ dqを固定子電流i dqで除算してインダクタンス値を計算して、その回転子位置に依存したインダクタンス変化特性から推定回転子位置θ を得ることができる。
 図12は、図11に示す位置推定器9の構成例を示す図である。位置推定器9は、三相-二相変換器901,903と、回転座標変換器902,904と、可変周波数ノッチフィルタ905,906と、速度角度演算器907と、を含む構成とすることができる。
 三相-二相変換器901は、三相座標上の固定子電圧vの各相の指令値である電圧指令値vsu ,vsv ,vsw を三相-二相変換によって二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ へ変換する。三相-二相変換器903は、三相座標上の固定子電流isu,isv,iswを三相-二相変換によって二相座標上の固定子電流isα,isβへ変換する。回転座標変換器902は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の電圧指令値vsα ,vsβ を回転座標変換によって、回転座標上の電圧指令値vsd ,vsq へ変換する。回転座標変換器904は、推定回転子位置θ を使用し、二相座標上の固定子電流isα,isβを回転座標変換によって、回転座標上の固定子電流isd,isqへ変換する。なお、推定回転子位置θ は、速度角度演算器907の出力の1つである推定回転子位置θ をフィードバックして使用する。
 回転座標変換器902の出力は可変周波数ノッチフィルタ905を通してから速度角度演算器907に入力する。同様に、回転座標変換器904の出力は可変周波数ノッチフィルタ906を通してから速度角度演算器907に入力する。速度角度演算器907は、前述の説明に従って推定回転子位置θ 及び推定回転速度ω を演算する。
 実施の形態3の手法では、鎖交磁束の演算にオブザーバ又は不完全積分を利用していないので、これらと比較して演算周期が長くてもよい。この理由から、計算負荷が小さくなるので、より安価なマイクロプロセッサなどの計算機を利用することができる。また、実施の形態3において、推定回転子位置θ 及び推定回転速度ω を演算する演算周期Tpsi3は、実施の形態1,2と同様に、スイッチング周期Tswの半分の整数倍ではないとする。この場合、電圧指令値v と実際の電圧を平滑化した値とは一致しない。その結果、電圧指令値v には実際の電圧に対して誤差が含まれる。また、電流検出のタイミングもキャリア信号の山及び谷に同期していないので、電流検出器4によって検出される電流も、実際の電流に対して誤差が含まれる。従って、これらを用いて演算した推定回転子位置θ 及び推定回転速度ω にも誤差が発生する。
 回転機2においては、低い周波数の誤差ほど磁束及びトルクに大きな振動成分を発生させる。静止座標において、直流及び周波数が低い直流近傍成分は、回転座標上にて基本波周波数f近傍の誤差になる。これに対し、実施の形態3の位置推定器9は、回転座標変換器902,904の各出力に対し、それぞれ可変周波数ノッチフィルタ905,906を通してから速度角度演算器907に入力しているので、基本波周波数f近傍の誤差に起因するトルク及び電力の脈動を除去して位置推定することができる。
 以上のように、実施の形態3の位置推定器9は、オブザーバ及び不完全積分を利用せずに鎖交磁束を演算するので、実施の形態1,2よりも計算負荷を小さくできる。従って、実施の形態3の手法を用いれば、高価なマイクロプロセッサを必要とすることなく、位置センサレスであり、且つ、トルク脈動及び電力脈動の少ない制御装置100Bを構成できるといった、従来にない顕著な効果を奏する。
 次に、上記で説明した実施の形態1から3に係る制御装置100,100A,100Bにおけるハードウェアの構成について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、実施の形態1から3に係る制御装置100,100A,100Bの各機能を実現する第1のハードウェア構成例を示す図である。図14は、実施の形態1から3に係る制御装置100,100A,100Bの各機能を実現する第2のハードウェア構成例を示す図である。なお、制御装置100,100A,100Bの各機能とは、制御装置100,100A,100Bに含まれる、制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の機能を指している。
 制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の各機能は、処理回路を用いて実現することができる。図13では、実施の形態1から3における制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9が専用処理回路10に置き替えられている。専用のハードウェアを利用する場合、専用処理回路10は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の各機能のそれぞれを処理回路で実現してもよいし、まとめて処理回路で実現してもよい。
 また、図14では、実施の形態1から3の構成における制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9が、プロセッサ11と、記憶装置12とに置き替えられている。プロセッサ11は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、記憶装置12としては、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリを例示することができる。
 プロセッサ11及び記憶装置12を利用する場合は、制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組合せにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、記憶装置12に記憶される。プロセッサ11は記憶装置12に記憶されたプログラムを読みだして実行する。また、これらのプログラムは、制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の各機能の手順及び方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。記憶装置12には、例えば、ROM、EPROM、EEPROMなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリやフレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、DVDなどを利用できる。記憶装置12には、上述した2つの係数k,kを、可変周波数ノッチフィルタ706,807,905,906が除去する周波数ごとに、記憶させることができる。
 制御器5、PWM変調器6、及び位置推定器7,8,9の各機能は、一部をハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、PWM変調器6の機能を専用のハードウェアを用いて実現し、制御器5及び位置推定器7,8,9の機能をプロセッサ11及び記憶装置12を用いて実現してもよい。
 なお、本稿の実施の形態2,3では、回転機2が同期リラクタンスモータである場合を例示して説明したが、回転機2が誘導モータ又は永久磁石モータであってもよい。回転機2が誘導モータの場合は、例えば特開平11-4599号公報に開示された手法を利用できる。また、回転機2が永久磁石モータの場合は、例えば国際公開第2002/091558号に開示された手法を利用できる。なお、実施の形態3における手法の一部は、特開2002-165475号公報に記載されている手法を利用しているので、実施の形態3において説明できなかった部分は、当該公報の内容を参照されたい。
 また、本稿において、電圧印加器3は三相2レベルインバータを用いて説明したが、これに限定されない。他の相数のインバータでもよいし、3レベルインバータ又は5レベルインバータのようなマルチレベルインバータでもよい。これらのインバータを利用しても、本開示に係る回転機の制御装置を実施可能である。
 また、本稿では、スイッチング周波数の例示として、スイッチング周波数が基本波周波数fの1~27倍であると説明した。一般的に、例えば三相で共通のキャリア信号を利用する場合、1倍の他、3倍、6倍、9倍、…、27倍など3の倍数のスイッチング周波数が用いられる。その一方で、キャリア信号を利用せずに固定のスイッチングパターンを利用する場合は、整数倍であればどの倍数も用いることができる。
 また、本稿では、回転機2のトルクに対する固定子電流は、電流実効値が最小になるように設定すると説明したが、これに限定されない。回転機2のトルクに対する固定子電流は、鎖交磁束が最小になるように設定してもよいし、電圧印加器3又は回転機2の効率が最大になるように設定してもよい。
 また、本稿の実施の形態1,2では、回転子位置の推定処理を行う箇所に可変周波数ノッチフィルタ706又は可変周波数ノッチフィルタ807を直列に挿入する例を示した。また、実施の形態3では、固定子電圧及び固定子電流が出力される箇所の両方に、それぞれ可変周波数ノッチフィルタ905,906を直列に挿入する例を示した。これらは一例であり、挿入する箇所は、除去したい誤差が発生する場所に応じて、適宜選択することができる。また、可変周波数ノッチフィルタの数も各箇所に1つである必要はなく、複数の可変周波数ノッチフィルタが挿入されていてもよい。
 また、本稿では、制御演算に使用する固定子電圧は電圧指令値を利用したが、固定子電圧を検出して利用してもよい。
 なお、以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
 1 直流電源、2 回転機、2a 固定子、2b 回転子、3 電圧印加器、4 電流検出器、5 制御器、6 PWM変調器、7,8,9 位置推定器、10 専用処理回路、11 プロセッサ、12 記憶装置、31~36 スイッチング素子、100,100A,100B 制御装置、501 電流指令値演算器、502,701,703,801,802,901,903 三相-二相変換器、503,702,704,803,902,904 回転座標変換器、504 d-q電流制御器、505 回転座標逆変換器、506 二相-三相変換器、705 オブザーバ、706,807,905,906 可変周波数ノッチフィルタ、804 第1の演算器、805 第1の推定器、806 第2の演算器、808 第3の演算器、907 速度角度演算器。

Claims (11)

  1.  直流電源と回転機との間に接続され、各相に具備される複数のスイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで前記回転機へ矩形状の固定子電圧を印加する電圧印加器と、
     前記電圧印加器と前記回転機の固定子巻線との間に流れる固定子電流を検出する電流検出器と、
     前記固定子電流及び前記回転機の回転子の位置情報である回転子位置に基づいて、前記固定子巻線に印加する電圧である固定子電圧の指令値である電圧指令値を演算する制御器と、
     前記固定子電圧を平滑化した値が前記電圧指令値と一致するように、前記スイッチング素子のオン及びオフを制御するパルス幅変調器と、
     前記電圧指令値及び前記固定子電流に基づいて、前記回転機の回転速度の基本波周波数の周波数成分を除去するフィルタを通して、前記回転子位置を推定する位置推定器と、
     を備えたことを特徴とする回転機の制御装置。
  2.  前記パルス幅変調器は、前記スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるスイッチング周波数を、前記回転機の回転速度の基本波周波数の整数倍に同期させる
     ことを特徴とする請求項1に記載の回転機の制御装置。
  3.  前記回転子位置の推定値は、前記回転機の鎖交磁束に基づいて演算され、
     前記鎖交磁束は、少なくとも前記電圧指令値を積分演算することで得られる
     ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機の制御装置。
  4.  前記回転子位置の推定値は、前記回転機の鎖交磁束に基づいて演算され、
     前記鎖交磁束は、静止座標において、少なくとも前記電圧指令値を積分演算することで得られる
     ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の回転機の制御装置。
  5.  前記鎖交磁束を演算する演算周期が前記スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期の半分の整数倍になっていない
     ことを特徴とする請求項3又は4に記載の回転機の制御装置。
  6.  前記回転子位置を推定する演算周期が前記スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期の半分の整数倍になっていない
     ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の回転機の制御装置。
  7.  前記フィルタが除去する周波数成分に下限値を設けた
     ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の回転機の制御装置。
  8.  前記下限値は、回転子位置を推定する応答周波数と等しいかそれ以上である
     ことを特徴とする請求項7に記載の回転機の制御装置。
  9.  前記位置推定器は、前記フィルタが除去する周波数ごとに、前記フィルタを実現するフィルタ係数を記憶する記憶装置を備えた
     ことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の回転機の制御装置。
  10.  前記回転機は、インダクタンスが回転子位置によって変化するインダクタンス変動成分を有し、
     前記位置推定器は、前記インダクタンス変動成分と前記固定子電流との積によって生成される鎖交磁束インダクタンス変動分に基づいて前記回転子位置を推定する
     ことを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の回転機の制御装置。
  11.  前記回転機のインダクタンスは、前記回転子位置によって変化しない平均成分と、前記回転子位置の電気角周波数の2倍の周波数で変化する変動成分とを含み、
     前記変動成分と前記固定子電流との積によって前記鎖交磁束インダクタンス変動分を生成する
     ことを特徴とする請求項10に記載の回転機の制御装置。
PCT/JP2021/030936 2021-08-24 2021-08-24 回転機の制御装置 WO2023026352A1 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023543513A JP7362004B2 (ja) 2021-08-24 2021-08-24 回転機の制御装置
PCT/JP2021/030936 WO2023026352A1 (ja) 2021-08-24 2021-08-24 回転機の制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2021/030936 WO2023026352A1 (ja) 2021-08-24 2021-08-24 回転機の制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2023026352A1 true WO2023026352A1 (ja) 2023-03-02

Family

ID=85321805

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2021/030936 WO2023026352A1 (ja) 2021-08-24 2021-08-24 回転機の制御装置

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7362004B2 (ja)
WO (1) WO2023026352A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20040032231A1 (en) * 1999-11-17 2004-02-19 Scott Ellerthorpe Sensorless stall detection for motors
WO2012014443A1 (ja) * 2010-07-27 2012-02-02 三菱電機株式会社 交流回転機の制御装置
US20140159632A1 (en) * 2012-12-10 2014-06-12 Electronics And Telecommunications Research Institute Motor driving module and brushless dc motor system
JP2017229196A (ja) * 2016-06-24 2017-12-28 株式会社リコー 角度推定装置、モータ制御装置、モータ駆動装置、モータ駆動システム、画像形成装置、及び搬送装置

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4644010B2 (ja) 2005-02-14 2011-03-02 日本電産株式会社 同期リラクタンス電動機のベクトル制御方法及び同装置

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20040032231A1 (en) * 1999-11-17 2004-02-19 Scott Ellerthorpe Sensorless stall detection for motors
WO2012014443A1 (ja) * 2010-07-27 2012-02-02 三菱電機株式会社 交流回転機の制御装置
US20140159632A1 (en) * 2012-12-10 2014-06-12 Electronics And Telecommunications Research Institute Motor driving module and brushless dc motor system
JP2017229196A (ja) * 2016-06-24 2017-12-28 株式会社リコー 角度推定装置、モータ制御装置、モータ駆動装置、モータ駆動システム、画像形成装置、及び搬送装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP7362004B2 (ja) 2023-10-16
JPWO2023026352A1 (ja) 2023-03-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4988374B2 (ja) モータ制御装置
JP5697745B2 (ja) 同期電動機の駆動システム
JP6279151B2 (ja) 交流回転機の制御装置および電動パワーステアリング装置
US10348231B2 (en) Motor control device and motor control method
JP4631672B2 (ja) 磁極位置推定方法、モータ速度推定方法及びモータ制御装置
WO2010109520A1 (ja) 回転電機の制御装置および制御方法
WO2010109522A1 (ja) 回転電機の制御装置
KR101485989B1 (ko) 모터 제어 장치
JP6847268B2 (ja) 回転機の制御装置
JP5561550B2 (ja) 回転電機制御装置
JP2011050178A (ja) モータ制御装置及び発電機制御装置
CN113826317B (zh) 旋转电机的控制装置
JP6641051B1 (ja) 電動機の制御装置
JP7090812B2 (ja) 交流回転電機の制御装置及び電動パワーステアリング装置
US11309817B2 (en) Control device of rotating machine, and control device of electric vehicle
WO2023026352A1 (ja) 回転機の制御装置
WO2023026351A1 (ja) 回転機の制御装置
JP7130143B2 (ja) 推定装置および交流電動機の駆動装置
Fernandes et al. Speed sensorless PMSM motor drive system based on four-switch three-phase converter
CN113078863A (zh) 交流旋转电机的控制装置
JP7196469B2 (ja) 同期リラクタンスモータの制御装置
JP7472397B2 (ja) 電力変換装置、推定器及び推定方法
JP7218700B2 (ja) モータ制御装置
JP7413926B2 (ja) 制御装置及び電力変換装置
WO2023238219A1 (ja) 回転機の制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 21954969

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

WWE Wipo information: entry into national phase

Ref document number: 2023543513

Country of ref document: JP