WO2022038864A1 - ポリアミド樹脂 - Google Patents

ポリアミド樹脂 Download PDF

Info

Publication number
WO2022038864A1
WO2022038864A1 PCT/JP2021/021854 JP2021021854W WO2022038864A1 WO 2022038864 A1 WO2022038864 A1 WO 2022038864A1 JP 2021021854 W JP2021021854 W JP 2021021854W WO 2022038864 A1 WO2022038864 A1 WO 2022038864A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
polyamide resin
group
derived
mol
acid
Prior art date
Application number
PCT/JP2021/021854
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
浩介 大塚
裕矢 岡島
Original Assignee
三菱瓦斯化学株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 三菱瓦斯化学株式会社 filed Critical 三菱瓦斯化学株式会社
Priority to JP2021559340A priority Critical patent/JP7021724B1/ja
Priority to KR1020237008444A priority patent/KR102564274B1/ko
Priority to CN202180050415.8A priority patent/CN115956097B/zh
Priority to EP21858015.7A priority patent/EP4201978A4/en
Priority to US18/021,796 priority patent/US20230227608A1/en
Publication of WO2022038864A1 publication Critical patent/WO2022038864A1/ja

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G69/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carboxylic amide link in the main chain of the macromolecule
    • C08G69/02Polyamides derived from amino-carboxylic acids or from polyamines and polycarboxylic acids
    • C08G69/26Polyamides derived from amino-carboxylic acids or from polyamines and polycarboxylic acids derived from polyamines and polycarboxylic acids
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G69/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carboxylic amide link in the main chain of the macromolecule
    • C08G69/02Polyamides derived from amino-carboxylic acids or from polyamines and polycarboxylic acids
    • C08G69/26Polyamides derived from amino-carboxylic acids or from polyamines and polycarboxylic acids derived from polyamines and polycarboxylic acids
    • C08G69/265Polyamides derived from amino-carboxylic acids or from polyamines and polycarboxylic acids derived from polyamines and polycarboxylic acids from at least two different diamines or at least two different dicarboxylic acids

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Polyamides (AREA)

Abstract

融点よりやや高い温度での質量減少率が低いポリアミド樹脂の提供。ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70~97モル%が、p-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が、式(1)で表されるジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、芳香族ジカルボン酸に由来する、ポリアミド樹脂。

Description

ポリアミド樹脂
 本発明は、ポリアミド樹脂に関する。
 ポリアミド樹脂は、その優れた加工性、耐久性、耐熱性、ガスバリヤ性、耐薬品性等の観点から、各種工業材料として幅広く用いられている。
 そのようなポリアミド樹脂としては、古くから、ポリアミド6やポリアミド66に代表される脂肪族ポリアミド樹脂が用いられてきた。さらに、ポリアミド樹脂の原料に芳香族ジカルボン酸および/または芳香族ジアミンを用いた芳香族ポリアミド樹脂も用いられるようになってきている。このような芳香族ポリアミド樹脂は、例えば、特許文献1、2等に記載がある。
特開昭62-054725号公報 特開平08-003312号公報
 上述のとおり、ポリアミド樹脂は、幅広く様々な分野で用いられている。
 ここで、ポリアミド樹脂は、射出成形等によって成形する場合、融点以上の温度に加熱して行われる。そのため、融点よりやや高い温度での安定性が高いことが求められ、すなわち、融点よりやや高い温度での質量減少率が低いことが求められる場合がある。
 本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、融点よりやや高い温度での質量減少率が低いポリアミド樹脂を提供することを目的とする。
 上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアミド樹脂の原料モノマーとして、p-ベンゼンジエタンアミン、芳香族ジカルボン酸に加え、後述する式(1)で表されるジアミンを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
 具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70~97モル%が、p-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が、式(1)で表されるジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、芳香族ジカルボン酸に由来する、ポリアミド樹脂。
式(1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5の脂肪族基を表し、R~Rの少なくとも1つおよびR~Rの少なくとも1つは炭素数1~5の脂肪族基である。)
<2>前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%以上が、イソフタル酸、テレフタル酸、および、フェニレン二酢酸から選択される芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である、<1>に記載のポリアミド樹脂。
<3>前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%以上が、イソフタル酸由来の構成単位である、<1>に記載のポリアミド樹脂。
<4>前記ジカルボン酸由来の構成単位の95モル%超が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
<5>式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
<6>式(1)中、R、R、RおよびRは、水素原子であり、R、R、RおよびRは、メチル基である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
<7>前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定に従った融点が270~314℃である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
<8>前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定により評価した融解時のエンタルピー変化(ΔH)が5~80J/gである、<1>~<7>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
<9>前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定に従った融点+25℃における質量減少率が4.5%以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂。
 本発明により、融点よりやや高い温度での質量減少率が低いポリアミド樹脂を提供可能になった。
 以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
 なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
 本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70~97モル%が、p-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が、式(1)で表されるジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、芳香族ジカルボン酸に由来することを特徴とする。
式(1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5の脂肪族基を表し、R~Rの少なくとも1つおよびR~Rの少なくとも1つは炭素数1~5の脂肪族基である。)
 このような構成とすることにより、融点よりやや高い温度での質量減少率を低くすることができる。この理由は、式(1)で表されるジアミンを用いることにより、融点をある程度低くでき、融点よりやや高い温度での質量減少率を低くできると推定される。また、融点をある程度低くできるため、射出成形などの金型成形に適したポリアミド樹脂が得られる。さらに、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れたポリアミド樹脂が得られる。
<ジアミン由来の構成単位>
 本実施形態のポリアミド樹脂においては、ジアミン由来の構成単位の70~97モル%が、p-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が、式(1)で表されるジアミンに由来する。このように、原料モノマーであるジアミンとして、p-ベンゼンジエタンアミンを主成分とし、一部を式(1)で表されるジアミンで置換することにより、適度な融点Tmおよび高いガラス転移温度Tgを保ちつつ、融解時のエンタルピー変化(ΔH)を適度な範囲にすることが可能になる。
式(1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
(式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5の脂肪族基を表し、R~Rの少なくとも1つおよびR~Rの少なくとも1つは炭素数1~5の脂肪族基である。)
 また、本実施形態において、ジアミン由来の構成単位は、その70~97モル%がp-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が式(1)で表されるジアミンに由来するが、p-ベンゼンジエタンアミンと式(1)で表されるジアミンの合計は100モル%を超えることはなく、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、さらに好ましくは99~100モル%である。
 本実施形態において、ジアミン由来の構成単位におけるp-ベンゼンジエタンアミン由来の構成単位の割合は、70モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、84モル%以上であることがさらに好ましく、88モル%以上であることが一層好ましく、91モル%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、高温での機械物性がより優れる傾向にある。また、本実施形態において、ジアミン由来の構成単位におけるp-ベンゼンジエタンアミン由来の構成単位の割合は、97モル%以下であり、96モル%以下であることが好ましく、94モル%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、融点よりやや高い温度での質量減少率が低くなり、成形時の熱安定性が向上する傾向にある。
 本実施形態において、ジアミン由来の構成単位における式(1)で表されるジアミン由来の構成単位の割合は、3モル%以上であり、4モル%以上であることが好ましく、6モル%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、融点よりやや高い温度での質量減少率が低くなり、成形時の熱安定性が向上する傾向にある。本実施形態において、ジアミン由来の構成単位における式(1)で表されるジアミン由来の構成単位の割合は、30モル%以下であり、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、16モル%以下であることがさらに好ましく、12モル%以下であることが一層好ましく、9モル%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、高温での機械物性がより優れる傾向にある。
 本実施形態において、ジアミン由来の構成単位における式(1)で表されるジアミンは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
 次に、式(1)で表されるジアミンについて説明する。本実施形態において、式(1)で表されるジアミンは、p-ベンゼンジエタンアミンのエチレン鎖の部分に炭素数1~5の脂肪族基が少なくとも1つ置換している。このような脂肪族基を有することにより、分子鎖中のアミド基の間の距離を大きく変えることなく、アミド基同士の水素結合や芳香環のスタッキングを阻害することにより、融点をある程度低くでき、融点よりやや高い温度での質量減少率を低くできると推定される。この結果、成形加工時の熱安定性を向上させるという効果がより効果的に発揮されると推定される。
 式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5の脂肪族基を表し、R~Rの少なくとも1つおよびR~Rの少なくとも1つは炭素数1~5の脂肪族基である。炭素数1~5の脂肪族基は、炭素数1~3の脂肪族基であることが好ましく、炭素数1または2の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示され、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基が挙げられ、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
 式(1)において、R~Rの少なくとも2つおよびR~Rの少なくとも2つは炭素数1~5の脂肪族基であることが好ましく、R~Rの2つおよびR~Rの2つが炭素数1~5の脂肪族基であることがより好ましい。
 また、式(1)において、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表すことが好ましい。より好ましくは、Rおよび/またはR、ならびに、Rおよび/またはRは、水素原子であり、R、R、RおよびRのうち、水素原子でないものは、メチル基であり、R、R、RおよびRは、水素原子またはメチル基(好ましくはメチル基)である。さらに好ましくは、R、R、RおよびRは、水素原子であり、R、R、RおよびRは、水素原子またはメチル基(好ましくはメチル基)である。このような化合物を用いることで、式(1)で表されるジアミンにおけるアミノ基の反応性が高くなり、それによって重合が進行しやすくなり、生産性が高くなる傾向にある。
 さらにまた、本実施形態においては、式(1)において、R~Rの少なくとも2つ(好ましくは2つ)およびR~Rの少なくとも2つ(好ましくは2つ)が炭素数1~5の脂肪族基である化合物(化合物1-1)と、式(1)において、R~Rの1つおよびR~Rの1つが炭素数1~5の脂肪族基である化合物(化合物1-2)との混合物であってもよい。混合物の場合、前記化合物1-1と化合物1-2の質量比率は、1:0.1~1であることが好ましい。
 本実施形態においては、ジアミン由来の構成単位は、上記以外の他の構成単位を含んでいてもよい。このような他の構成単位としては、m-ベンゼンジエタンアミン、o-ベンゼンジエタンアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびベンゼンジエタンアミンおよび式(1)で表されるジアミン以外の他の芳香族ジアミン由来の構成単位が例示される。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、他のジアミン由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
 脂肪族ジアミンとしては、公知の脂肪族ジアミンを広く採用でき、炭素数が6~12の脂肪族ジアミンが好ましく、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンの直鎖状脂肪族ジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミンが例示される。
 脂環式ジアミンとしては、公知の脂環式ジアミンを広く採用でき、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1-アミン)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1-アミン)等が例示される。
 他の芳香族ジアミンについては、国際公開第2017/126409号の段落0052の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
<ジカルボン酸由来の構成単位>
 本実施形態のポリアミド樹脂においては、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、芳香族ジカルボン酸に由来する。芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含むことにより、融点がより高く、かつ、ガラス転移温度がより高いポリアミド樹脂が得られる傾向にある。
 本実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位における芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の割合は、50モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%超であることが一層好ましく、99モル%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂の結晶性が向上する傾向にあり、成形品の結晶化度および高温成形したときの強度が向上する傾向にある。本実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位における芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の割合の上限は、100モル%以下である。
 本実施形態における芳香族ジカルボン酸の好ましい一例は、フェニレンジカルボン酸である。
 本実施形態における芳香族ジカルボン酸の好ましい例の他の一例は、式(FC)で表される芳香族ジカルボン酸である。
式(FC)
HOOC-(CH-芳香環構造-(CH-COOH
(式(FC)中、mは0、1または2を示す。)
 mは、0または1が好ましく、0がさらに好ましい。
 式(FC)において、芳香環構造は、芳香環を含む構造であり、芳香環のみからなる構造、または、芳香環とその置換基のみからなる構造であることが好ましく、芳香環のみからなる構造がより好ましい。芳香環が有していてもよい置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはハロゲン原子が例示される。
 芳香環構造は、単環または縮合環のいずれであってもよく、単環が好ましい。また、芳香環を構成する炭素数も特に定めるものではないが、6~15員環が好ましい。
 前記芳香環構造は、より具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、置換基を有するベンゼン環、置換基を有するナフタレン環が好ましく、ベンゼン環、または、置換基を有するベンゼン環がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。
 より具体的には、本実施形態において、芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、フェニレン二酢酸(o-フェニレン二酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸)、ナフタレンジカルボン酸(1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および2,7-ナフタレンジカルボン酸)が例示される。
 この中でも、イソフタル酸、テレフタル酸、および、フェニレン二酢酸(好ましくはp-フェニレン二酢酸)から選択されることが好ましく、イソフタル酸およびフェニレン二酢酸がより好ましく、イソフタル酸がさらに好ましい。イソフタル酸を用いることにより、サイクリックモノマーがより形成されにくくなり、アウトガスの発生量が減少する傾向にある。アウトガスの発生量が減少することで、射出成形時の金型汚れが減少し、金型の清掃頻度が減少して生産性が向上する傾向にある。
 本実施形態のポリアミド樹脂においては、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%以上(好ましくは95モル%超、より好ましくは99モル%以上)が、イソフタル酸、テレフタル酸、および、フェニレン二酢酸から選択される芳香族ジカルボン酸由来の構成単位であることが好ましく、イソフタル酸由来の構成単位であることがより好ましい。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸由来の構成単位を含んでいてもよい。芳香族ジカルボン酸由来の構成単位以外のジカルボン酸由来の構成単位を構成するジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸が例示される。前記脂肪族ジカルボン酸としては、公知の脂肪族ジカルボン酸を採用でき、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびドデカンジカルボン酸が例示される。
 また、本実施形態のポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、ジカルボン酸由来の構成単位中、脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の割合が、5モル%以下であることをいい、3モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましい。
 また、本実施形態のポリアミド樹脂においては、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の95モル%超(好ましくは96モル%以上、より好ましくは98モル%以上、また、100モル%以下)が、環状構造を有する構成単位であることが好ましい。このような構成とすることにより、融点が高く、かつ、ガラス転移温度がより高いポリアミド樹脂が得られる。また、質量減少率を低くすることができる。さらに、融解時のエンタルピー変化(ΔH)を小さくでき、成形性がより向上する傾向にある。加えて、アウトガスの量を減らすことができる。環状構造を有する構成単位とは、構成単位が芳香環、脂環等の環状構造を含むことを言う。1つの環状構造を有する構成単位には、芳香環および脂環のいずれか一方を含むことが好ましい。
 本実施形態のポリアミド樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる。本実施形態のポリアミド樹脂が以下のものに限定されるものでないことは言うまでもない。
(1)ジアミン由来の構成単位の80~97モル%(好ましくは84~97モル%)がp-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~20モル%(好ましくは3~16モル%)が式(1)で表されるジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の90~100モル%(好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%)がイソフタル酸に由来するポリアミド樹脂
(2)ジアミン由来の構成単位の70~80モル%がp-ベンゼンジエタンアミンに由来し、20~30モル%が式(1)で表されるジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の90~100モル%(好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%)が、テレフタル酸に由来し、0~10モル%が(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸)に由来するポリアミド樹脂
 上記(1)および(2)において、p-ベンゼンジエタンアミン由来の構成単位と式(1)で表されるジアミンの由来構成単位の合計は100モル%以下であり、95~100モル%であることが好ましく、98~100モル%であることがより好ましい。
 なお、本実施形態のポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε-カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、本実施形態のポリアミド樹脂には、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる場合もあろう。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上が、さらに好ましくは90質量%以上が、一層好ましくは95質量%以上が、より一層好ましくは98質量%以上がジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位からなる。
<ポリアミド樹脂の物性>
 次に、本実施形態のポリアミド樹脂の物性について述べる。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、結晶性ポリアミド樹脂であり、融点を有する。本実施形態のポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定に従った融点(Tm)が270℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましく、285℃以上であることがさらに好ましく、290℃以上であることが一層好ましく、293℃以上であることがより一層好ましく、296℃以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂を用いた成形品に、鉛低減および/または鉛フリーのはんだ付けを行うときの成形品の変形および/または表面荒れを効果的に低減できる傾向にある。前記融点は、また、314℃以下であることが好ましく、312℃以下であることがより好ましく、310℃以下であることがさらに好ましく、308℃以下であることが一層好ましく、306℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、質量減少率をより低くすることができ、成形時の熱安定性をより向上できる傾向にある。
 融点は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度(Tg)が90℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが一層好ましく、140℃以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、高温の環境でも高い弾性率をより効果的に維持できる。前記ガラス転移温度は、また、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、170℃以下であることがさらに好ましく、160℃以下であることが一層好ましく、155℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、溶融時の流動性が高くなり、成形性がより向上する傾向にある。
 ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定に従った冷却時結晶化温度(Tcc)が180℃以上であることが好ましく、195℃以上であることがより好ましく、205℃以上であることがさらに好ましく、215℃以上であることが一層好ましく、225℃以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂の結晶性が向上する傾向にあり、成形品の結晶化度および高温での強度が向上する傾向にある。前記冷却時結晶化温度は、また、310℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、290℃以下であることがさらに好ましく、280℃以下であることが一層好ましく、270℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形収縮率が小さくなる傾向にある。
 冷却時結晶化温度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、融点と冷却時結晶化温度の温度差(Tm-Tcc)が、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、32℃以上であることがさらに好ましく、35℃以上であることが一層好ましく、40℃以上であることがより一層好ましく、45℃以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形収縮率が小さくなる傾向にある。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、また、融点と冷却時結晶化温度の温度差(Tm-Tcc)の上限値が、120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましく、90℃以下であることが一層好ましく、80℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂の結晶性が向上する傾向にあり、成形品の結晶化度および高温での強度が向上する傾向にある。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定により評価した融解時のエンタルピー変化(ΔH)が、5J/g以上であることが好ましく、10J/g以上であることがより好ましく、15J/g以上であることがさらに好ましく、20J/g以上であることが一層好ましく、25J/g以上であることがより一層好ましく、30J/g以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂の結晶性が向上する傾向にあり、成形品の結晶化度および高温での強度がより向上する傾向にある。また、前記ΔHは、80J/g以下であることが好ましく、70J/g以下であることがより好ましく、60J/g以下であることがさらに好ましく、55J/g以下であることが一層好ましく、50J/g以下であることがより一層好ましく、49J/g以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形収縮率が小さくなる傾向にある。
 融解時のエンタルピー変化(ΔH)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
 本実施形態のポリアミド樹脂は、示差走査熱量測定に従った融点+25℃の温度で30分間加熱した後の質量減少率が低いことが好ましい。具体的には、前記質量減少率は、4.5%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが一層好ましく、2.0%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形時の熱安定性がより向上し、成形性がより向上する傾向にある。前記質量減少率の下限値は、0%が望ましいが、0.01%以上、さらには0.1%以上が実際的である。
 質量減少率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
<ポリアミド樹脂の製造方法>
 本実施形態のポリアミド樹脂は、好ましくは、触媒としてリン原子含有化合物を用いて溶融重縮合(溶融重合)法、もしくは加圧塩法により製造され、加圧塩法により製造されることがさらに好ましい。溶融重縮合法としては、溶融させた原料ジカルボン酸に原料ジアミンを滴下しつつ加圧下で昇温し、縮合水を除きながら重合させる方法が好ましい。加圧塩法としては、原料ジアミンと原料ジカルボン酸から構成される塩を水の存在下で、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。
 リン原子含有化合物としては、具体的には、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等の次亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられ、ジ亜リン酸ナトリウムとジ亜リン酸カルシウムが好ましく、次亜リン酸カルシウムがさらに好ましい。次亜リン酸カルシウムを用いると得られるポリアミド樹脂の耐熱性がより向上する傾向にある、
 これらのリン原子含有化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
 リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度が0.001~0.1質量%となる量であることが好ましい。このような範囲にすることでポリアミド樹脂の耐熱性が向上し、融点より少し高い温度での質量減少率が低くなる傾向にある。
 本実施形態においては、リン原子含有化合物に加えて重合速度調整剤を添加してもよい。重合速度調整剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩が挙げられ、アルカリ金属酢酸塩が好ましい。
 アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが例示され、ナトリウムが好ましい。アルカリ土類金属原子としては、カルシウムおよびマグネシウムが例示される。
 重合速度調整剤の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよび酢酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムおよび酢酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酢酸ナトリウムがさらに好ましい。
 これらの重合速度調整剤は、1種のみ、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
 重合速度調整剤の添加量は、原料ジアミンとジカルボン酸の合計量の0.001~0.5質量%であることが好ましい。
<用途>
 本実施形態のポリアミド樹脂は、本実施形態のポリアミド樹脂を含む組成物(以下、「本実施形態の樹脂組成物」ということがある)、さらには、前記組成物を成形してなる成形品として用いることができる。前記組成物は、本実施形態のポリアミド樹脂を1種または2種以上のみ含んでいてもよいし、他の成分を含んでいてもよい。
 他の成分としては、本実施形態のポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
 他の成分としては、本実施形態のポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、強化材(充填剤)、耐熱安定剤および耐候安定剤等の酸化防止剤(特に耐熱安定剤)、難燃剤、難燃助剤、離型剤、滴下防止剤、艶消剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
<<他のポリアミド樹脂>>
 本実施形態の樹脂組成物が含みうる他のポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよい。
 脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6/66(ポリアミド6成分およびポリアミド66成分からなる共重合体)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド410、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド9C(1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンからなる混合ジアミンと1,4-シクロヘキサンジカルボン酸からなるポリアミド)が例示される。
 半芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド9N(1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンからなる混合ジアミンと2,6-ナフタレンジカルボン酸からなるポリアミド)などが例示される。
 また、半芳香族ポリアミド樹脂としては、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が例示される。具体的には、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合物であるMXD6、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とイソフタル酸の重縮合物であるMXD6I、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合物であるMP6、メタキシリレンジアミンとセバシン酸の重縮合物であるMXD10、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとセバシン酸の重縮合物であるMP10、パラキシリレンジアミンとセバシン酸の重縮合物であるPXD10などが例示される。
 さらに、半芳香族ポリアミド樹脂としては、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、および、1,10-デカンジアミンのうち少なくとも1種とテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸の重縮合物であるポリアミド樹脂も例示される。特に、1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンとナフタレンジカルボン酸の重縮合物であるポリアミド樹脂が好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物が、他のポリアミド樹脂を含む場合、その含有量は、本実施形態のポリアミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であってもよく、また、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、他のポリアミド樹脂を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂>>
 ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を例示できる。これらのポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
<<酸化防止剤>>
 本実施形態の樹脂組成物はさらに、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことにより、耐熱性に優れた成形品が得られる。
 酸化防止剤としては、有機酸化防止剤を含む態様が例示され、より具体的には一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を含む態様が例示される。また、酸化防止剤としては、無機酸化防止剤を含む態様が例示される。さらに、有機酸化防止剤と無機酸化防止剤の両方を含んでいてもよい。
 一次酸化防止剤は、いわゆるラジカル捕捉剤として働くものであり、例えば、自動酸化で生成する各種ラジカルを捕捉して、ヒドロペルオキシドを生成させる役割を果たす。一次酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)、アミン系酸化防止剤が例示される。
 二次酸化防止剤は、いわゆる過酸化物分解剤として働くものであり、例えば、発生したヒドロペルオキシドを分解し、安定なアルコール化合物へと変化させる役割を果たす。二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が例示される。
 上記一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を併用することにより、酸化防止機能が連鎖して作用することになり、より効果的に酸化防止効果を発現させることができる。特に、フェノール系酸化防止剤(好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)とリン系酸化防止剤を併用することが好ましい。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を併用するとき、その比率は、1:0.1~1:10(質量比)の混合物であることが好ましく、1:0.5~1:2の混合物であることがさらに好ましい。
 フェノール系酸化防止剤は、具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。ここで、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、例えば、フェニル基のOH基が結合している炭素原子の両隣の炭素原子の少なくとも一方に、嵩高い置換基を有するヒンダードフェノール構造を有する化合物であり、嵩高い置換基としては、t-ブチル基が一般的である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、通常、ヒンダード型とレスヒンダード型に区分され、ヒンダード型が好ましい。ヒンダード型は、フェニル基のOH基が結合している炭素原子の両隣の炭素原子それぞれに、嵩高い置換基を有する化合物である。一方、レスヒンダード型とは、フェニル基のOH基が結合している炭素原子の両隣の炭素原子の一方のみに、嵩高い置換基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤あるいは両端の炭素原子の両方に嵩高い置換基が存在しないヒンダードフェノール系酸化防止剤である。特に本実施形態では、ヒンダードフェノール構造を2~6つ有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール構造を2つ有するヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
 また、本実施形態では、アミド結合を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、アミド結合を有するヒンダード型ヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましく、2~6つのアミド結合と、2~6つのヒンダード型ヒンダードフェノール構造を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましく、2~6つのジ-tert-ブチル-4ヒドロキシフェニルアルキルカルボニルアミド基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(アルキル鎖部分の炭素数は1~5が好ましく、2~4がより好ましい)がさらに好ましく、N、N’-ヘキサン-1,6ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]であることが特に好ましい。
 ヒンダード型のヒンダードフェノール系酸化防止剤の市販品としては、BASFから、Irganoxシリーズとして販売されている酸化防止剤やADEKAからアデカスタブシリーズ(例えば、AO-20、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-330)として販売されている酸化防止剤が好ましく、Irganox1098が好ましい。
 以下に本実施形態で好ましく用いられる酸化防止剤を例示するが、本実施形態がこれらに限定されるものでは無いことは言うまでもない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 アミン系酸化防止剤としては、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジフェニルエチレンジアミン、N,N-ジフェニルアセトアミジン、N,N-ジフェニルホルムアミジン、N-フェニルピペリジン、ジベンジルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、フェノチアジン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、4,4’-テトラメチル-ジアミノジフェニルメタン、P,P’-ジオクチル-ジフェニルアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチル-ペンチル)-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチル-ベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン等のアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン等のアミン類およびその誘導体やアミンとアルデヒドの反応生成物、アミンとケトンの反応生成物等が挙げられる。
 本実施形態では特に、芳香環を含むアミン系酸化防止剤が好ましく、ベンゼン環を2つ以上(好ましくは2~5つ)含むアミン系酸化防止剤がより好ましい。
 下記式(A)で表されるアミン系酸化防止剤および式(B)で表されるアミン系酸化防止剤が好ましい。
式(A)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
(式(A)中、RA1およびRA2は、それぞれ独立に、炭化水素基である。)
 RA1およびRA2は、アルキル基またはアリール基であることが好ましく、RA1およびRA2の少なくとも一方がアリール基であることがより好ましい。アルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基はフェニル基およびナフチル基が例示される。
 式(B)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
(式(B)中、RB1およびRB2は、それぞれ独立に、芳香環を含む炭化水素基である。)
 RB1およびRB2は、芳香環を2つ以上含む炭化水素基であることが好ましく、芳香環を2つ含む炭化水素基であることがより好ましく、ベンゼン環を2つ含む炭化水素基であることがさらに好ましく、2つのベンゼン環が炭素数1~4のアルキレン基で連結した炭化水素基であることが一層好ましい。
 式(A)で表されるアミン系酸化防止剤および式(B)で表されるアミン系酸化防止剤は、分子量が200~1200であることが好ましく、300~600であることがより好ましい。
 式(A)で表される酸化防止剤は、活性部位であるアミンが2ヶ所あり、本実施形態の効果が効果的に発揮されると考えられる。さらに、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の化合物が共重合されていてもよい。
 リン系酸化防止剤としては、亜リン酸エステルおよびリン酸エステルが例示され、亜リン酸エステルがより好ましい。
 リン系酸化防止剤は、具体的には、例えばリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル-テトラトリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12~C15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1~C15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル))・1,6-ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4,4’-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3-ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(3-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
 本実施形態では特に、下記式(P)で表されるリン系酸化防止剤が好ましい。
式(P)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式(P)中、RP1およびRP2は、それぞれ独立に、炭化水素基である。)
 RP1およびRP2は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭化水素基が例示され、アルキル基が好ましい。前記置換基はさらに、炭化水素基等の置換基を有していてもよい。
 式(P)で表される化合物は、分子量が400~1200であることが好ましく、500~800であることがより好ましい。
 硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられ、例えば、DSTP「ヨシトミ」、DLTP「ヨシトミ」、DLTOIB、DMTP「ヨシトミ」(以上、株式会社エーピーアイコーポレーション製)、Seenox 412S(シプロ化成株式会社製)、Cyanox 1212(サイアナミド社製)、SUMILIZER TP-D(住友化学株式会社製)等の市販品を使用することができる(いずれも商品名)。
 無機系酸化防止剤としては、銅化合物およびハロゲン化アルカリが例示される。
 本実施形態で用いられる銅化合物としては、ハロゲン化銅(例えば、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅)および酢酸銅が例示され、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、酢酸第一銅および酢酸第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅の中から好ましく選択され、ヨウ化銅、酢酸銅および塩化第一銅から選択されることがより好ましい。
 本実施形態で用いるハロゲン化アルカリとは、アルカリ金属のハロゲン化物をいう。アルカリ金属としては、カリウムおよびナトリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。また、ハロゲン原子としては、ヨウ素、臭素、塩素が好ましく、ヨウ素がより好ましい。本実施形態で用いるハロゲン化アルカリの具体例としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムが例示される。
 また、銅化合物とハロゲン化アルカリとは組み合わせて用いることが好ましい。銅化合物と、ハロゲン化アルカリを組み合わせた場合、銅化合物:ハロゲン化アルカリの1:3~1:15(質量比)の混合物であることが好ましく、1:4~1:8の混合物であることがさらに好ましい。
 銅化合物と、ハロゲン化アルカリを組み合わせる場合については、特表2013-513681号公報の段落0046~0048の記載も参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
 また、上記以外の酸化防止剤として、銅錯体とハロゲン含有ホスフェートの混合物を用いることもでき、この銅錯体とハロゲン含有ホスフェートの混合物と上記の酸化防止剤の混合物も用いることができ、特表2019-532168号公報の段落0025~0039に記載の酸化防止剤を採用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 また、上記以外の酸化防止剤として多価アルコールも用いることもでき、この多価アルコールと上記の酸化防止剤との混合物も用いることもでき、特表2013-538927号公報の段落0039~0045および特表2014-525506号公報の段落0083~0085に記載の酸化防止剤を採用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 また、上記以外の酸化防止剤として金属シアン化物塩も用いることもでき、この金属シアン化物塩と上記の酸化防止剤との混合物も用いることもでき、WO2018/101163号公報の段落0018~0019に記載の酸化防止剤を採用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 上記の他、酸化防止剤としては、特許6466632号公報の段落0025~0030に記載の酸化防止剤、特開2016-074804号公報の段落0017~0020に記載の酸化防止剤、特開2021-038370号公報の段落0044~0048に記載の酸化防止剤、特開2012-179911号公報の段落0043~0056の記載の酸化防止剤、特開2020-033539号公報の段落0045~0056の記載の酸化防止剤、国際公開第2010/143638号の段落0030~0038に記載の酸化防止剤を採用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 本実施形態の樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.2質量部以上であることが一層好ましく、0.4質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱老化後の重量平均分子量の保持率が向上し、機械強度の保持率が向上する傾向にある。また、前記含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましく、2.0質量部以下であることが一層好ましく、1.5質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形時のアウトガスが少なくなり、従って金型の汚染が少なくなり、連続生産性が向上する傾向にある。
 本実施形態の樹脂組成物は、酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<難燃剤>>
 本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤を含むことにより、難燃性を向上させることができる。
 難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤が例示され、リン系難燃剤およびハロゲン系難燃剤が好ましく、リン系難燃剤がより好ましい。
 リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸金属塩、ジエチルホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物等が挙げられ、中でも、縮合リン酸エステルまたはホスファゼンが好ましい。また、成形時のガスやモールドデポジットの発生、難燃剤のブリードアウトを抑制するために、リン系難燃剤との相溶性に優れる熱可塑性樹脂を配合してもよい。このような熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂である。
 縮合リン酸エステルは、下記の式(FP1)で表される化合物が好ましい。
式(FP1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式(FP1)中、Rf1、Rf2、Rf3およびRf4は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。ただし、Rf1、Rf2、Rf3およびRf4が全て水素原子の場合を除く。Xは2価の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数、rは0または1以上の整数を表す。)
 上記式(FP1)において、有機基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられる。また、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基等の置換基を有していてもよい。またこれらの置換基を組み合わせた基、あるいはこれらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子などにより結合して組み合わせた基などでもよい。また2価の有機基とは、上記の有機基から炭素原子1個を除いてできる2価以上の基をいう。例えば、アルキレン基、フェニレン基、置換フェニレン基、ビスフェノール類から誘導されるような多核フェニレン基などが挙げられる。これらの各基の式量は15~300であることが好ましく、15~200であることがより好ましく、15~100であることがさらに好ましい。
 上記式(FP1)で示される縮合リン酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリクレジルフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロルエチル)ホスフェート、トリス(ジクロルプロピル)ホスフェート、トリス(クロルプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロルフォスフェート、ビス(クロルプロピル)モノオクチルフォスフェート、ビスフェノールAテトラフェニルフォスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジフォスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルフォスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジフォスフェート等の種々のものが例示される。
 また、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、大八化学工業(株)より「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、「PX-200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「アデカスタブFP-700」(2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン・トリクロロホスフィンオキシド重縮合物(重合度1~3)のフェノール縮合物)といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
 ホスファゼン化合物は、分子中に-P=N-結合を有する有機化合物であり、好ましくは、式(FP2)で表される環状ホスファゼン化合物、式(FP3)で表される鎖状ホスファゼン化合物、ならびに、式(FP2)および式(FP3)からなる群より選択される少なくとも1種のホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
式(FP2)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
(式(FP2)中、aは3~25の整数であり、Rf5およびRf6は、同一または異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリール基またはアルキルアリール基を表す。)
 式(FP3)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
(式(FP3)中、bは3~10000の整数であり、Rf7およびRf8は、同一または異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリール基またはアルキルアリール基を表す。)
 Rf9は、-N=P(ORf7基、-N=P(ORf8基、-N=P(O)ORf7基、-N=P(O)ORf8基から選ばれる少なくとも1種を表し、Rf10は、-P(ORf7基、-P(ORf8基、-P(O)(ORf7基、-P(O)(ORf8基から選ばれる少なくとも1種を示す。
 式(FP2)および式(FP3)中、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
 シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~14のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。
 アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等の炭素数2~8のアルケニル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~12のシクロアルケニル基が挙げられる。
 アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~8のアルキニル基やエチニルベンゼン基等のアリール基を置換基として有するアルキニル基等も挙げられる。
 アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル(即ち、トリル)基、ジメチルフェニル(即ち、キシリル)基、トリメチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基が挙げられるが、なかでも炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
 アルキルアリール基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数6~20のアラルキル基が挙げられるが、なかでも炭素数7~10のアラルキル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
 なかでも、式(FP2)におけるRf5およびRf6、式(FP3)におけるRf7およびRf8が、アリール基、アリールアルキル基であるものが好ましく、アリール基であることがより好ましく、フェニル基であることがさらに好ましい。このような芳香族ホスファゼンを用いることで、得られる樹脂組成物の熱安定性を効果的に高めることができる。
 式(FP2)および式(FP3)で表される環状および/または鎖状ホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、o-トリルオキシホスファゼン、m-トリルオキシホスファゼン、p-トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)トリルオキシホスファゼン、o,m-キシリルオキシホスファゼン、o,p-キシリルオキシホスファゼン、m,p-キシリルオキシホスファゼン等の(ポリ)キシリルオキシホスファゼン、o,m,p-トリメチルフェニルオキシホスファゼン、フェノキシo-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm-トリルオキシホスファゼン、フェノキシp-トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m-キシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p-キシリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p-キシリルオキシホスファゼン等(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p-トリメチルフェニルオキシホスファゼン等が例示でき、好ましくは環状および/または鎖状フェノキシホスファゼン等である。
 式(FP2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、Rf5およびRf6がフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状および直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。また、前記環状フェノキシホスファゼン化合物は、式(FP2)中のaが3~8の整数である化合物が好ましく、aの異なる化合物の混合物であってもよい。
 上記aの平均は、3~5であることが好ましく、3~4であることがより好ましい。また、なかでも、a=3のものが50質量%以上、a=4のものが10~40質量%、a=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
 式(FP3)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、Rf7およびRf8がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3~10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。前記直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の、式(FP3)中のbは、好ましくは3~1000、より好ましくは3~100、さらに好ましくは3~25である。
 架橋ホスファゼン化合物としては、例えば、4,4’-スルホニルジフェニレン(すなわち、ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4’-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
 また、架橋ホスファゼン化合物としては、式(FP3)においてRf7、Rf8がフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、または、式(FP3)においてRf7、Rf8がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
 また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、式(FP2)で表される環状ホスファゼン化合物および/または式(FP3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基およびフェニレン基数を基準として、通常50~99.9%、好ましくは70~90%である。また、前記架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
 本実施形態においては、ホスファゼン化合物は、式(FP2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、および、上記式(FP2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、樹脂組成物の難燃性および機械的特性の点から好ましい。
 ホスファゼン化合物の市販品としては、FP-110、伏見製薬社製が例示される。
 ハロゲン系難燃剤は、臭素系難燃剤および塩素系難燃剤が好ましく、臭素系難燃剤がより好ましい。
 臭素系難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAカーボネート、エチレン(ビステトラブロモフタル)イミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS、臭素化ポリフェニレンエーテル(ポリ(ジ)ブロモフェニレンエーテルなどを含む)、臭素化ポリスチレン(ポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート等が例示される。
 有機金属塩系難燃剤としては、有機アルカリ金属塩化合物、有機アルカリ土類金属塩化合物が好ましい(以下、アルカリ金属とアルカリ土類金属を「アルカリ(土類)金属」と称する。)。また、有機金属塩系難燃剤としては、スルホン酸金属塩、カルボン酸金属塩、ホウ酸金属塩、リン酸金属塩等が挙げられるが、芳香族ポリカーボネート樹脂へ添加した場合の熱安定性の点からスルホン酸金属塩が好ましく、特にパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が好ましい。
 スルホン酸金属塩としては、スルホン酸リチウム(Li)塩、スルホン酸ナトリウム(Na)塩、スルホン酸カリウム(K)塩、スルホン酸ルビジウム(Rb)塩、スルホン酸セシウム(Cs)塩、スルホン酸マグネシウム(Mg)塩、スルホン酸カルシウム(Ca)塩、スルホン酸ストロンチウム(Sr)塩、スルホン酸バリウム(Ba)塩等が挙げられ、この中でも特に、スルホン酸ナトリウム(Na)塩、スルホン酸カリウム(K)塩が好ましい。
 このような、スルホン酸金属塩としては、例えばジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等の芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩化合物、パ-フルオロブタンスルホン酸カリウム等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩(アルカンの炭素数は好ましくは2~6)が挙げられる。この中でも特に、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが透明性、難燃性のバランスに優れるため、好ましく、特に、パ-フルオロブタンスルホン酸カリウム等のパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、6質量部以上であることが特に好ましく、7質量部以上であることが一層好ましい。また、前記難燃剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましく、35質量部以下であることが特に好ましく、30質量部以下であることが一層好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<難燃助剤>>
 本実施形態の樹脂組成物は、また、難燃助剤を配合してもよい。
 難燃助剤としては、アンチモン系化合物、錫酸亜鉛、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられ、アンチモン系化合物、錫酸亜鉛が好ましい。特に、リン系難燃剤を用いる場合は錫酸亜鉛が、ハロゲン系難燃剤を用いる場合はアンチモン系化合物が好ましい。
 錫酸亜鉛としては、三酸化スズ亜鉛(ZnSnO)および六水酸化スズ亜鉛(ZnSn(OH))の少なくともいずれか1種が好ましい。
 アンチモン系化合物は、アンチモンを含む化合物であって、難燃性に寄与する化合物である。具体的には、三酸化アンチモン(Sb23)、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン(Sb25)等の酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、燐酸アンチモンなどが挙げられる。中でも酸化アンチモンが耐湿熱性に優れるため好ましい。さらに好ましくは三酸化アンチモンが用いられる。
 難燃助剤の含有量については、難燃剤:難燃助剤が1:0.05~2.0(質量比)の割合で用いることが好ましく、1:0.2~1.0の割合で用いることがより好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<強化材(充填剤)>>
 本実施形態の樹脂組成物は、強化材を含んでいてもよく、強化材を樹脂組成物中、5.0~60.0質量%の割合で含むことが好ましい。
 本実施形態で用いることができる強化材は、その種類等、特に定めるものではなく、繊維、フィラー、フレーク、ビーズ等のいずれであってもよいが、繊維が好ましい。
 強化材が繊維である場合、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
 強化材が短繊維やフィラー、ビーズ等の場合、本実施形態の樹脂組成物は、ペレット、前記ペレットを粉末化したもの、および前記ペレットから成形されるフィルム等が例示される。
 強化材が長繊維の場合、強化材は、いわゆる、UD材(Uni-Directional)用の長繊維、織物および編み物等のシート状の長繊維などが例示される。これらの長繊維を用いる場合、本実施形態の樹脂組成物の強化材以外の成分を、前記シート状の長繊維である強化材に含浸させて、シート状の樹脂組成物(例えば、プリプレグ)とすることができる。
 強化材の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)、アスベスト、クレー、ゼオライト、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機物、および、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン等の有機物などが挙げられ、ガラスが好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物は、強化材として、ガラス繊維を含むことが好ましい。
 ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
 ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる成形体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
 ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
 また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
 ガラス繊維は、本実施形態の樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
 本実施形態に用いる強化材は、導電性を有する強化材であってもよい。具体的には、金属、金属酸化物、導電性炭素化合物および導電性ポリマーが例示され、導電性炭素化合物が好ましい。
 金属としては、銅、ニッケル、銀、ステンレスからなるものが例示され、金属フィラーやステンレス繊維、磁性フィラーが好ましい。金属酸化物としては、アルミナ、酸化亜鉛が例示され、アルミナ繊維、酸化亜鉛ナノチューブが好ましい。導電性炭素化合物としては、カーボンブラック、ケッチェンカーボン、グラフェン、黒鉛、フラーレン、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーが好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。
 また、金属や金属酸化物、導電性炭素化合物で被覆された繊維なども好ましい。例えば、カーボンでコートされたチタン酸カリウムウィスカー、金属被覆繊維などが例示される。
 その他、強化材としては、特開2021-031633号公報の段落0033~0041の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
 本実施形態の樹脂組成物は、強化材(好ましくはガラス繊維)を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記強化材(好ましくはガラス繊維)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがさらに好ましく、80質量部以下であることが一層好ましく、75質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形体外観が向上し、かつ、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
 本実施形態の樹脂組成物は強化材(好ましくはガラス繊維)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<核剤>>
 本実施形態の樹脂組成物は、核剤を含んでいてもよい。核剤を含むことにより、結晶化速度を速くすることができる。
 核剤は、溶融加工時に未溶融であり、冷却過程において結晶の核となり得るものであれば、特に限定されず、有機核剤でも、無機核剤でもよく、無機核剤であることが好ましい。
 無機核剤としては、グラファイト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、燐酸ソーダ、マイカおよびカオリンが例示され、タルクおよび炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、タルクがさらに好ましい。
 有機核剤としては、特に限定されるものではなく、公知の核剤を使用できるが、例えば核剤はジベンジリデンソルビトール系核剤、ノニトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤等から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 核剤の数平均粒子径は、下限値が、0.1μm以上であることが好ましい。核剤の数平均粒子径は、上限値が、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、28μm以下であることが一層好ましく、15μm以下であることがより一層好ましく、10μm以下であることがさらに一層好ましい。数平均粒子径を40μm以下とすることにより、核剤の配合量に比して、核となる核剤の数が多くなるため、結晶構造がより安定化する傾向にある。
 本実施形態の樹脂組成物における核剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01質量部超であり、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.7質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の結晶状態をより十分に安定させることができる。また、本実施形態の樹脂組成物における核剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であってもよい。
 本実施形態の樹脂組成物が核剤を含む場合、核剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<離型剤>>
 本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
 離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
 離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
 本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましく、0.2~0.6質量%であることがさらに好ましい。
 本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
 本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
 また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本実施形態の樹脂組成物を製造することもできる。さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本実施形態の樹脂組成物を製造することもできる。
<成形品>
 本実施形態のポリアミド樹脂または本実施形態の樹脂組成物から、成形品が形成される。
 成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法、延伸、真空成形等が挙げられる。
 本実施形態の組成物から形成される成形品としては、射出成形品、薄肉成形品、中空成形品、フィルム(板状、シートを含む)、円筒状(ホース、チューブ等)、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状押出成形品、繊維等が例示される。
 本実施形態のポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物はさらに、以下の材料として好ましく用いられる。
 本実施形態のポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を上述の強化材(特に強化繊維、好ましくは炭素繊維またはガラス繊維)に含浸させたプリプレグ;繊維成分として、本実施形態のポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を含む連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維を含む混繊糸、組み紐または撚り紐;本実施形態のポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を含む連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維を用いた織物または編み物;ならびに、本実施形態のポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を含む熱可塑性樹脂繊維と強化繊維から構成される不織布などが例示される。
 成形品としては、フィルム、シート、チューブ、パイプ、ギア、カム、各種ハウジング、ローラー、インペラー、ベアリングリテーナー、スプリングホルダー、クラッチパーツ、チェインテンショナー、タンク、ホイール、コネクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ハードディスク部品、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICハウジング、LEDリフレクタ、インテークパイプ、ブローバイチューブ、3Dプリンタ用基材、自動車の内外装部品、エンジンルーム内の部品、冷却系部品、摺動部品、電装部品などの自動車用品、電気部品・電子部品、表面実装型のコネクタ、ソケット、カメラモジュール、電源部品、スイッチ、センサー、コンデンサー座板、ハードディスク部品、リレー、抵抗器、ヒューズホルダー、コイルボビン、ICハウジング等の表面実装部品、フューエルキャップ、燃料タンク、フューエルセンダー・モジュール、フューエルカットオフ・バルブ、キャニスター、燃料配管等の燃料系部品に用いることができる。燃料系部品は、具体的には、自動車、トラクター、耕運機、刈り払い機、芝刈り機、チェーンソー等のガソリン、軽油等の燃料を用いるエンジンを備えた各種機器などに好適に使用することができる。燃料系部品の詳細は、国際公開第2012/098840号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
 実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
<原料>
p-BDEA:p-ベンゼンジエタンアミン、下記合成例に従って合成した。
<<p-BDEAの合成例>>
 p-キシリレンジシアニド(製造元:東京化成工業)を水素雰囲気下で還元し、得られた生成物を蒸留精製することで、p-ベンゼンジエタンアミンを得た。ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、純度は99.7%であった。
p-BDEA-4Me:特表2004-503527号公報の実施例3の記載に従って有機合成を行い、得られたp-BDEA-4Meの塩酸塩を中和したのちにp-BDEA-4Meを抽出し、得られた抽出物を蒸留精製することで下記化合物を得た。ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、純度は99.7%であった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
p-BDEA-2Me:特表2004-503527号公報の実施例1の記載に従って有機合成を行い、得られたp-BDEA-2Meの塩酸塩を中和したのちにp-BDEA-2Meを抽出し、得られた抽出物を蒸留精製することでp-BDEA-2Me(下記化合物)を得た。ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、純度は94.6%であった。また、希塩酸を用いて中和滴定によって分析した結果、アミノ基の濃度は10.35mmol/gであった。得られたp-BDEA-2Meを表1に記載の配合量となるように調整して用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
イソフタル酸:製造元:東京化成工業
p-PDAA:p-フェニレン二酢酸、製造元:東京化成工業
次亜リン酸カルシウム:製造元:富士フイルム和光純薬
酢酸ナトリウム:製造元:富士フイルム和光純薬
<実施例1>
<<ポリアミド樹脂の合成>>
 平底試験管にp-BDEA 0.00323mol(0.5305g)、p-BDEA-4Me 0.00017mol(0.0375g)、イソフタル酸 0.00340mol(0.5648g)、純水 7.0gを加え、その試験管を温度計、圧力計および圧力調整弁を備えた容積20mLの反応缶に仕込んだ。続いて十分に窒素置換し、反応缶内を常圧に戻したのち、圧力調整弁を閉じた。反応缶をアルミブロックヒーターで加熱し、反応缶の内圧を1.9MPa、210℃で20分間保持し、続いて2.8MPa、230℃で40分間保持した。続いて、260℃まで昇温しながら、圧力調整弁を微開し、30分かけて圧力を常圧まで下げながら圧力調整弁から水を抜いた。その後、圧力調整弁から適宜水分を抜きながら、反応缶を融点+10℃まで昇温し、10分間保持した。反応缶を室温まで冷却したのち、試験管を取り出し、ポリアミド樹脂を得た。
<<融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、冷却時結晶化温度(Tcc)および融解時のエンタルピー変化(ΔH)の測定>>
 合成したポリアミド樹脂の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、冷却時結晶化温度(Tcc)および融解エンタルピー変化(ΔH)の測定は、示差走査熱量の測定(DSC)で測定した。DSCの測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。具体的には、示差走査熱量計を用い、合成されたポリアミド樹脂を砕いて示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で融点と想定される温度+20℃まで昇温し、昇温が完了した直後に、測定パンを取り出してドライアイスに押し当てて急冷した。その後に測定を行った。融点、ガラス転移温度(Tg)および冷却時結晶化温度(Tcc)について、昇温速度10℃/分で、想定される融点+20℃程度まで昇温して5分保持した後、降温速度-5℃/分で100℃まで降温し、測定を行った。
 示差走査熱量計としては、島津製作所社製「DSC-60」を用いた。
 融点(Tm)の単位は℃、ガラス転移温度(Tg)の単位は℃、冷却時結晶化温度(Tcc)の単位は℃、融解時のエンタルピー変化(ΔH)の単位はJ/gで示した。
<<質量減少率>>
 得られたポリアミド樹脂(粉末状態のもの)の質量減少率は、熱質量分析で測定した。
 得られたポリアミド樹脂を熱質量分析装置の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で融点+25℃まで昇温し、続いて30分間加熱した。以下の式より、質量減少率を測定した。
質量減少率={[(融点-50℃まで昇温時のポリアミド樹脂の質量)-(融点+25℃で30分間加熱時のポリアミド樹脂の質量)]/(融点-50℃まで昇温時のポリアミド樹脂の質量)}×100
 質量減少率の単位は%で示した。
 熱質量分析装置としては、島津製作所社製「DTG-60」を用いた。
<<アウトガス性>>
 得られたポリアミド樹脂に含まれる成分のなかで、分子量が低い成分、特にジアミンとジカルボン酸が1分子ずつで形成された環状化合物(サイクリックモノマー)が成形時に揮発しやすく、アウトガスになりやすい傾向にある。そこで、ポリアミド樹脂のアウトガス性の評価として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でサイクリックモノマー量を測定した。
 GPC分析装置としては、東ソー社製「HLC-8320GPC」を用いた。カラムはTSKgelSuperHM-H(東ソー社製)、溶媒はヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウム 2mmol/L溶液)、標準物質はPMMAを用いた。
 得られたポリアミド樹脂について、温度40℃、試料濃度0.3g/LでGPCを測定し、得られたポリアミド樹脂のGPCチャートから、サイクリックモノマーとより高分子量成分のピークについて面積を測定した。
アウトガス性={(サイクリックモノマーの面積)/(サイクリックモノマーの面積+サイクリックモノマーよりも高分子量成分の面積)}×100
 アウトガス性の単位は(%)で示した。アウトガス性の値が低いほど、アウトガスが発生しにくい傾向であることを意味する。
<実施例2~4、6および7、比較例1>
 実施例1において、ジアミンおよびジカルボン酸の種類を表1に示すように変更し、他は同様に行った。
<実施例5>
 実施例1において、ジアミンおよびジカルボン酸の種類を表1に示すように変更し、ジアミンとジカルボン酸に加えて、次亜リン酸カルシウム0.6mg(ポリアミド樹脂中のリン濃度として0.02質量%)、酢酸ナトリウム0.4mgを加え、他は同様に行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 上記結果から明らかなとおり、本発明のポリアミド樹脂は融点が十分に高く、耐熱性に優れていた。また、融点+25℃の温度において質量減少率が低く、射出成形などの成形時の熱安定性に優れていた。さらに、ガラス転移温度が高かった。また、適度なΔHを有していた。さらに、アウトガス性にも優れていた。

Claims (9)

  1. ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
    前記ジアミン由来の構成単位の70~97モル%が、p-ベンゼンジエタンアミンに由来し、3~30モル%が、式(1)で表されるジアミンに由来し、
    前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、芳香族ジカルボン酸に由来する、ポリアミド樹脂。
    式(1)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5の脂肪族基を表し、R~Rの少なくとも1つおよびR~Rの少なくとも1つは炭素数1~5の脂肪族基である。)
  2. 前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%以上が、イソフタル酸、テレフタル酸、および、フェニレン二酢酸から選択される芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項1に記載のポリアミド樹脂。
  3. 前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の90モル%以上が、イソフタル酸由来の構成単位である、請求項1に記載のポリアミド樹脂。
  4. 前記ジカルボン酸由来の構成単位の95モル%超が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
  5. 式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
  6. 式(1)中、R、R、RおよびRは、水素原子であり、R、R、RおよびRは、メチル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
  7. 前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定に従った融点が270~314℃である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
  8. 前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定により評価した融解時のエンタルピー変化(ΔH)が5~80J/gである、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
  9. 前記ポリアミド樹脂の示差走査熱量測定に従った融点+25℃における質量減少率が4.5%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
PCT/JP2021/021854 2020-08-20 2021-06-09 ポリアミド樹脂 WO2022038864A1 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021559340A JP7021724B1 (ja) 2020-08-20 2021-06-09 ポリアミド樹脂
KR1020237008444A KR102564274B1 (ko) 2020-08-20 2021-06-09 폴리아미드 수지
CN202180050415.8A CN115956097B (zh) 2020-08-20 2021-06-09 聚酰胺树脂
EP21858015.7A EP4201978A4 (en) 2020-08-20 2021-06-09 POLYAMIDE RESIN
US18/021,796 US20230227608A1 (en) 2020-08-20 2021-06-09 Polyamide resin

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020139069 2020-08-20
JP2020-139069 2020-08-20

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2022038864A1 true WO2022038864A1 (ja) 2022-02-24

Family

ID=80322844

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2021/021854 WO2022038864A1 (ja) 2020-08-20 2021-06-09 ポリアミド樹脂

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20230227608A1 (ja)
EP (1) EP4201978A4 (ja)
JP (1) JP7021724B1 (ja)
KR (1) KR102564274B1 (ja)
CN (1) CN115956097B (ja)
WO (1) WO2022038864A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102564276B1 (ko) * 2020-08-20 2023-08-07 미쯔비시 가스 케미칼 컴파니, 인코포레이티드 폴리아미드 수지
WO2023089941A1 (ja) * 2021-11-18 2023-05-25 三菱瓦斯化学株式会社 ポリアミド樹脂の製造方法、および、樹脂組成物

Citations (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4419268B1 (ja) * 1965-03-01 1969-08-21
JPS6254725A (ja) 1985-05-29 1987-03-10 Teijin Ltd 芳香族ポリアミド及びその製造方法
JPH083312A (ja) 1994-06-23 1996-01-09 Toray Ind Inc ポリアミド、その製造方法および樹脂組成物
JP2004503527A (ja) 2000-06-13 2004-02-05 イーライ・リリー・アンド・カンパニー スルホンアミド誘導体
WO2010143638A1 (ja) 2009-06-08 2010-12-16 三菱瓦斯化学株式会社 ポリアミド樹脂組成物及び成形品
WO2012098840A1 (ja) 2011-01-17 2012-07-26 株式会社クラレ 樹脂組成物およびそれを含む成形品
JP2012179911A (ja) 2006-01-06 2012-09-20 Mitsubishi Engineering Plastics Corp 導光板の製造方法
JP2013513681A (ja) 2009-12-09 2013-04-22 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 部分芳香性で部分結晶性のコポリアミド
JP2013538927A (ja) 2010-10-05 2013-10-17 ロディア オペレーションズ 熱安定化ポリアミド組成物
JP2014525506A (ja) 2011-08-31 2014-09-29 インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル 多価アルコールとポリアミドからなる組成物
JP2016074804A (ja) 2014-10-06 2016-05-12 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリアミド樹脂組成物、成形品、および、成形品の製造方法
CN106279905A (zh) * 2016-08-18 2017-01-04 苏州泰斯拓伟机电设备有限公司 一种无卤阻燃聚乙烯‑尼龙热缩管及其制备方法
WO2017126409A1 (ja) 2016-01-20 2017-07-27 Jxエネルギー株式会社 ポリイミドフィルムの製造方法、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸溶液及び感光性組成物
WO2018101163A1 (ja) 2016-12-01 2018-06-07 東洋紡株式会社 ポリアミド樹脂組成物
JP2018095706A (ja) 2016-12-09 2018-06-21 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリアミド樹脂組成物および成形品
JP6466632B1 (ja) 2017-08-03 2019-02-06 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 樹脂組成物および成形品
JP2019532168A (ja) 2016-10-17 2019-11-07 エル. ブルッゲマン ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー 長期使用特性が改善されたポリアミド材料の製造方法
JP2020033539A (ja) 2018-08-24 2020-03-05 株式会社クラレ ポリアミド組成物
JP2021031633A (ja) 2019-08-28 2021-03-01 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 レーザー吸収用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
JP2021038370A (ja) 2019-08-28 2021-03-11 株式会社クラレ 押出成形用組成物、そのフィルム、及び、フィルムの製造方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US2464693A (en) * 1945-04-03 1949-03-15 Du Pont Synthetic linear polycarbonamides
US3335114A (en) * 1963-09-13 1967-08-08 Monsanto Co Polycarbonamides from p-phenylenebis(dimethylacetic acid) and its derivatives
US3645983A (en) * 1968-11-29 1972-02-29 Monsanto Co Copolyamides from 3-(4-carboxyphenyl)-1 1 3-trimethyl-5-indan carboxylic acid and bis(beta - aminoethyl)benzene ordurene
US4451642A (en) * 1981-05-21 1984-05-29 E. I. Du Pont De Nemours And Company Bis(aminoneopentyl) aromatics and polyamides derived therefrom
JP4419268B2 (ja) 2000-04-17 2010-02-24 株式会社デンソー 側圧による工作物の切断装置および切断方法
CN102702510A (zh) * 2012-05-23 2012-10-03 上海臻威复合材料有限公司 醇溶尼龙及其制备方法
CN106810690B (zh) * 2017-01-12 2019-09-10 苏州大学 一种芳香族聚酯酰胺及其制备方法
US11254818B2 (en) * 2017-09-22 2022-02-22 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Resin composition, formed article, and film
EP4159788A4 (en) * 2020-05-29 2023-11-08 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. POLYAMIDE RESIN, POLYAMIDE RESIN COMPOSITION AND MOLDED BODY

Patent Citations (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4419268B1 (ja) * 1965-03-01 1969-08-21
JPS6254725A (ja) 1985-05-29 1987-03-10 Teijin Ltd 芳香族ポリアミド及びその製造方法
JPH083312A (ja) 1994-06-23 1996-01-09 Toray Ind Inc ポリアミド、その製造方法および樹脂組成物
JP2004503527A (ja) 2000-06-13 2004-02-05 イーライ・リリー・アンド・カンパニー スルホンアミド誘導体
JP2012179911A (ja) 2006-01-06 2012-09-20 Mitsubishi Engineering Plastics Corp 導光板の製造方法
WO2010143638A1 (ja) 2009-06-08 2010-12-16 三菱瓦斯化学株式会社 ポリアミド樹脂組成物及び成形品
JP2013513681A (ja) 2009-12-09 2013-04-22 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 部分芳香性で部分結晶性のコポリアミド
JP2013538927A (ja) 2010-10-05 2013-10-17 ロディア オペレーションズ 熱安定化ポリアミド組成物
WO2012098840A1 (ja) 2011-01-17 2012-07-26 株式会社クラレ 樹脂組成物およびそれを含む成形品
JP2014525506A (ja) 2011-08-31 2014-09-29 インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル 多価アルコールとポリアミドからなる組成物
JP2016074804A (ja) 2014-10-06 2016-05-12 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリアミド樹脂組成物、成形品、および、成形品の製造方法
WO2017126409A1 (ja) 2016-01-20 2017-07-27 Jxエネルギー株式会社 ポリイミドフィルムの製造方法、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸溶液及び感光性組成物
CN106279905A (zh) * 2016-08-18 2017-01-04 苏州泰斯拓伟机电设备有限公司 一种无卤阻燃聚乙烯‑尼龙热缩管及其制备方法
JP2019532168A (ja) 2016-10-17 2019-11-07 エル. ブルッゲマン ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー 長期使用特性が改善されたポリアミド材料の製造方法
WO2018101163A1 (ja) 2016-12-01 2018-06-07 東洋紡株式会社 ポリアミド樹脂組成物
JP2018095706A (ja) 2016-12-09 2018-06-21 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリアミド樹脂組成物および成形品
JP6466632B1 (ja) 2017-08-03 2019-02-06 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 樹脂組成物および成形品
JP2020033539A (ja) 2018-08-24 2020-03-05 株式会社クラレ ポリアミド組成物
JP2021031633A (ja) 2019-08-28 2021-03-01 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 レーザー吸収用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
JP2021038370A (ja) 2019-08-28 2021-03-11 株式会社クラレ 押出成形用組成物、そのフィルム、及び、フィルムの製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
See also references of EP4201978A4

Also Published As

Publication number Publication date
KR20230038815A (ko) 2023-03-21
US20230227608A1 (en) 2023-07-20
JPWO2022038864A1 (ja) 2022-02-24
EP4201978A4 (en) 2024-02-14
CN115956097B (zh) 2023-12-15
EP4201978A1 (en) 2023-06-28
CN115956097A (zh) 2023-04-11
KR102564274B1 (ko) 2023-08-07
JP7021724B1 (ja) 2022-02-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5243006B2 (ja) 難燃性ポリアミド樹脂組成物および成形品
JP7021724B1 (ja) ポリアミド樹脂
KR101745977B1 (ko) 반방향족 폴리아미드 및 그것으로 이루어지는 성형체
KR20210048486A (ko) 폴리아미드 및 폴리아미드 조성물
JP6226704B2 (ja) ポリアミド樹脂組成物
TW201422671A (zh) 聚醯胺、聚醯胺組成物及聚醯胺之製造方法
TWI435906B (zh) 難燃性聚醯胺組成物
JP7141017B2 (ja) ポリアミド組成物
JP7021725B1 (ja) ポリアミド樹脂
WO2021241471A1 (ja) ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂組成物および成形品
JP2013082824A (ja) 難燃性樹脂組成物
WO2021241472A1 (ja) ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂組成物および成形品
WO2022195979A1 (ja) ポリアミド樹脂
US20160304671A1 (en) Xylylene diamine composition, and method for producing polyamide resin
JP2020172579A (ja) 樹脂組成物および成形品
US11970612B2 (en) Polyamide composition and molded product composed of said polyamide composition
JP2021050323A (ja) ポリアミド組成物及びその製造方法、並びに、成形品

Legal Events

Date Code Title Description
ENP Entry into the national phase

Ref document number: 2021559340

Country of ref document: JP

Kind code of ref document: A

121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 21858015

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

ENP Entry into the national phase

Ref document number: 20237008444

Country of ref document: KR

Kind code of ref document: A

NENP Non-entry into the national phase

Ref country code: DE

ENP Entry into the national phase

Ref document number: 2021858015

Country of ref document: EP

Effective date: 20230320