WO2021192652A1 - シリンジ用外筒、シリンジおよびプレフィルドシリンジ - Google Patents

Abstract

本発明の熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒１は、筒状の外筒本体１１を備え、外筒本体１１は、側壁部に設けられた数字１６および目盛線１７を有する目盛表示１２を備える。目盛線１７は、外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。

Description

シリンジ用外筒、シリンジおよびプレフィルドシリンジ

　本発明は、シリンジ用外筒、シリンジおよびプレフィルドシリンジに関する。

　従来、シリンジを構成する外筒には、外筒内に充填される薬剤の量や、薬剤の投与量を確認するために、目盛表示部が設けられている（特許文献１等参照）。

　このような目盛表示部は、外筒の外表面に、オフセット印刷やスクリーン印刷等の手法で直接印刷したり、ホットスタンプで印字したり、目盛が印刷された樹脂フィルムを外筒の外表面に貼付したり、外筒の成形時に凹凸により一体成形したりする等して形成されている。

特開２０１４－２００３０１号公報

　上述したような外筒の外表面に形成された目盛表示部は、シリンジの外部から、確認対象となる外筒の内容物（薬剤の液面やガスケットの所定の部分）を真正面から視認すること（目盛と確認対象とを、外筒の軸方向に直交する一の平面上において、同時に視認すること）を前提に設けられている。しかし、外筒の外表面に形成された目盛表示部は、シリンジの外部の広い範囲から視認できるため、例えば、図１に示されるように、真正面から視認される正確な目盛Ｘではなく、真正面ではない方向（斜め方向）から誤った目盛Ｙが認識される可能性があり、薬剤の充填量や投与量を誤認するおそれがある。

　そこで、本発明は、目盛表示部を真正面から視認することで、外筒の内容物の状態を正確に認識し、薬剤の充填量や投与量の誤認を抑制できるシリンジ用外筒およびそのようなシリンジ用外筒を備えるシリンジならびにプレフィルドシリンジを提供するものである。

　上記目的を達成するものは、以下のものである。
　筒状の外筒本体を備える熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒であって、
　前記外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、
　前記目盛線は、前記外筒本体の前記側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されているシリンジ用外筒。

　また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
　上記のシリンジ用外筒と、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されるプランジャーとを備えるシリンジ。

　また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
　上記のシリンジと、前記シリンジ用外筒の先端部もしくは前記シリンジ用外筒の先端部に固着された穿刺針を封止する封止部材と、前記シリンジ用外筒内に充填された薬剤とを備えるプレフィルドシリンジ。

図１は、本発明の実施例のシリンジ用外筒の正面図である。 図２は、図１に示したシリンジ用外筒の背面図である。 図３は、図１におけるＡ－Ａ線断面図である。 図４は、図１におけるＢ－Ｂ断面拡大説明図である。 図５は、図１のシリンジ用外筒の部分拡大正面図である。 図６は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒の部分拡大正面図である。 図７は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒の背面図である。 図８は、図７におけるＣ－Ｃ線断面図である。図１のシリンジに用いられている注射器バレル用グリップの左側面図である。 図９は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒の正面図である。 図１０は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒の正面図である。 図１１は、図１０に示したシリンジ用外筒の背面図である。 図１２は、図１０におけるＤ－Ｄ線断面図である。 図１３は、本発明の実施例のシリンジの正面図である。 図１４は、図１３におけるＥ－Ｅ線断面図である。 図１５は、本発明の実施例のプレフィルドシリンジの縦断面図である。

　本発明のシリンジ用外筒、シリンジおよびプレフィルドシリンジを図面に示した実施例を用いて説明する。
　本発明の熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒１は、筒状の外筒本体１１を備え、外筒本体１１は、側壁部に設けられた数字１６および目盛線１７を有する目盛表示１２を備える。目盛線１７は、外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。

　また、本発明のシリンジ１０は、上記のシリンジ用外筒１と、外筒１内に収納された摺動可能なガスケット３と、ガスケット３の後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャ４とを備える。
　また、本発明のプレフィルドシリンジ２０は、上記シリンジ１０と、外筒１のノズル部１４を封止する封止部材５と、外筒１とガスケット３と封止部材５により形成される空間内に充填された薬液６とからなる。この実施例では、封止部材５は、シールキャップ５により形成されている。

　シリンジ用外筒１は、透明もしくは半透明の熱可塑性樹脂であり、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
　外筒１は、外筒本体１１と、外筒本体１１の先端側に設けられたノズル部１４と、外筒本体１１の後端側に設けられたフランジ１５を備える。
　外筒本体１１は、ガスケット３を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分であり、ノズル部１４は、外筒本体１１より小径の筒状部となっている。

　フランジ１５は、図１ないし図５に示すように外筒本体１１の後端全周より垂直方向に突出するように形成された円弧状外縁を有するものとなっている。言い換えれば、フランジは、内部が欠損したドーナツ盤状のものとなっている。

　外筒１は、図３、図１３および図１４に示すように、ノズル部１４と同心的に形成されたカラー１３を備えている。ノズル部１４は、外筒１の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。

　カラー１３は、ノズル部１４を取り囲むようにノズル部１４と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー１３は、先端が開口しており、カラー１３の内径および外径は基端から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー１３の先端開口からはノズル部１４の先端部が突出しており、ノズル本体部およびカラー１３の先端部は、ノズル部１４およびカラー１３を封止部材（シールキャップ）５内に収納しやすくするため面取り加工されている。

　カラー１３の内周面には、後述する封止部材（シールキャップ）５のノズル収納部に形成されたリブおよび使用時に接続される注射針のハブ（図示せず）と係合するためのネジ溝（外筒側螺合部）が形成されている。これにより、外筒１とシールキャップ５はカラー内周面とノズル収納部外周面との間で係合する。また、ネジ溝（外筒側螺合部）は、シールキャップ５を外筒から取り外した後注射針（注射針のハブ）を取り付ける部分となる。

　外筒１の形成材料としては、熱可塑性樹脂でありある程度の透明性を有するものが用いられる。外筒１の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ－（４－メチルペンテン－１）、アクリル樹脂、アクリロニトリル－ブタジエン－スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような樹脂が好ましい。なお、内部に充填された薬液を外側から目視にて確認できるように透明性が高く、オートクレーブ滅菌に耐えられる耐熱性を有する環状ポリオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーが、外筒１の形成材料として特に好ましい。

 　図１および図５に示すように、外筒本体１１は、側壁部に設けられた数字１６と、数字１６の横に位置する目盛線１７を有する目盛表示１２を備える。また、目盛表示１２は、複数の数字１６（この実施例では、等間隔に３つ：５，１０，１５）とそれぞれの横に目盛線１７を有している。さらに、この実施例では、目盛表示１２は、各目盛線１７間に等間隔に配置された複数の補助目盛線１８を備えている。

　目盛線１７は、外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。また、この実施例では、補助目盛線１８も外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。目盛線１７（補助目盛線１８）の形成部における外筒の物性は、目盛線１７（補助目盛線１８）の非形成部における物性と有意的な相違はなく、実質的に同じものとなっている。

　そして、目盛線１７（補助目盛線１８）は、正面から見た場合、形成された幅かつ所定濃度の細い帯状に見え、斜めから見た場合、形成された幅より広くかつ所定濃度より薄い帯状に見えるものとなっているこのため、目盛線を真正面から視認することとなり、外筒の内容物の状態を正確に認識し、薬剤の充填量や投与量の誤認を抑制できる。
　本願発明は、外筒の屈曲率が高いもの、言い換えれば、ある程度の肉厚を有するものに有効である。具体的には、外筒１の外筒本体１１の肉厚が、肉厚が１ｍｍ以上、特に、１．５～２．５ｍｍのものに有効である。

　この実施例では、図５に示すように、目盛線１７（補助目盛線１８）は、外筒本体１１の中心軸に直交する方向に延び、かつ、所定幅を有する帯状となっている。目盛線１７は、数字１６の横に位置している。そして、図１および図５に示すように、数字１６の横に、短めの目盛線１７が形成されている。また、この実施例では、補助目盛線１８は、目盛線１７より短く、幅も細いものとなっている。

　なお、目盛線１７（補助目盛線１８）は、外筒本体１１の中心より、外筒本体１１の中心軸に直交する方向に、５～３６０度延びるものであることが好ましく、特に、３０～３６０度延びるものであることが好ましい。

　目盛線１７（補助目盛線１８）は、外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部、具体的には、ドット状の有色熱変性部、炭化部、可視光線難透過部であることが好ましく、特に、ドット状の炭化部であることが好ましい。ドット状の熱変性部は、レーザー光照射により形成することができる。

　シリンジの壁内部にレーザー加工を行うことにより、シリンジの側壁部の内部にドット状の炭化した部分が生成され、そのドットを目盛りとして認識が可能である。炭化部は厚さ(深さ)方向に形成されるため、真正面から見ると単一線に見えるが、角度をつけて見るとぼやけた線に見える。この機能により、意図せずとも目盛りを真正面から見ることが可能となり、投与調整量の誤差が著しく低減される。

　ドット状の熱変性部は、図３および図４に示すように、側壁部の外表面１１ａおよび内表面１１ｂに形成されていない、言い換えれば、側壁部の内部のみに設けられていることが好ましい。さらに、ドット状の熱変性部の厚さ（ｓ）は、側壁部の厚さ（ｔ）の５０％以上であることが好ましく、特に、５０～９５％であることが好ましい。また、ドット状の熱変性部におけるドットの大きさは、１０～５００μｍであることが好ましく、特に、５０～３００μｍであることが好ましい。

　外筒本体１１の目盛線部分以外における全光線透過率は、５０～１００％であることが好ましく、特に、７０～１００％であることが好ましい。そして、目盛線１７部分（補助目盛線１８部分）における外筒本体１１の全光線透過率は、０～２０％であることが好ましく、特に、０～１０％であることが好ましい。また、目盛線１７部分（補助目盛線１８部分）における外筒本体１１の可視光線透過率は、０～５０％であることが好ましく、特に、０～４０％であることが好ましい。また、外筒本体１１の目盛線部分以外における可視光線透過率は、６０～１００％あることが好ましく、特に、７０～１００％であることが好ましい。
　そして、この実施例では、目盛表示１２における数字１６は、通常のシリンジ用外筒に付される印刷により形成されている。

　また、図６に示す実施例のシリンジ用外筒１ａのように、目盛表示１２ａにおける数字１６ａも外筒本体１１の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されているものであってもよい。数字１６ａ部分を形成するドット状の熱変性部の厚さは、側壁部の厚さの５０％以上であることが好ましく、特に、６０～９５％であることが好ましい。また、数字１６ａ部分における外筒本体１１の全光線透過率および可視光線透過率は、上述した目盛線と同様であることが好ましい。

　また、図７および図８に示す実施例のシリンジ用外筒１ｂのように、シリンジ外筒の背面に目盛線表示２２を備えるものであってもよい。この実施例のシリンジ用外筒１ｂでは、正面側には、図１に示したシリンジ用外筒１と同じ目盛表示１２を有する。そして、図７および図８に示すように、背面には、目盛表示１２の目盛線１７（補助目盛線１８）と外筒１ｂの中心軸に対して向かい合う位置に設けられた背面側目盛線表示２２を備えている。

　そして、この実施例の外筒１ｂでは、図８に示すように、目盛線１７（補助目盛線１８）を正面から見た場合、背面側目盛線表示２２の目盛線２７（補助目盛線２８）が重なるものとなっている。このため、重なった状態を見る真正面視における目盛線と、斜視における目盛線の違いがより明確なものとなる。なお、背面側目盛線表示２２は、数字表示を持たないものとなっているが、設けてもよい。

　そして、背面側目盛線表示２２の目盛線２７（補助目盛線２８）の長さ、幅、ドット状の熱変性部の側壁部における厚さ、外筒本体１１の全光線透過率、ヘイズ値は、上述した目盛線１７（補助目盛線１８）と同様であることが好ましい。

　また、図９に示す実施例のシリンジ用外筒１ｃの目盛表示１２ｂのように、目盛表示１２ｂは、数字１６の両側に目盛線表示を備えるものであってもよい。この実施例のシリンジ用外筒１ｃでは、目盛表示１２ｂは、図１に示したシリンジ用外筒１と同様に、目盛線１７を数字１６の右側に備え、さらに、数字１６の左側にも目盛線１７ａを備えている。さらに、目盛線１７ａ間には、補助目盛線１８に対応するように、補助目盛線１８ａが設けられている。

　このため、この実施例の外筒１ｃでは、外筒１ｃの目盛表示の数字１６の両側において、目盛線を真正面視することができ、目盛線の確認領域が広くなる。
　そして、目盛線１７ａ（補助目盛線１８ａ）の長さ、幅、ドット状の熱変性部の側壁部における厚さ、外筒本体１１の全光線透過率、ヘイズ値は、上述した目盛線１７（補助目盛線１８）と同様であることが好ましい。

　また、図１０ないし図１２に示す実施例のシリンジ用外筒１ｄの目盛表示１２ｃのように、目盛線１７ｂは、数字１６部分を除き、ほぼ環状となっているものであってもよい。言い換えれば、目盛線１７ｂは、数字１６の一方側に始端を有し、他方側に他端を有する略環状のものとなっている。なお、補助目盛線も同様に環状のものとしてもよい。

　そして、この実施例の外筒１ｄでは、図１２に示すように、目盛線１７ｂを正面から見た場合、背面側に位置する目盛線１７ｂが重なるものとなっている。このため、重なった状態を見る真正面視における目盛線と、斜視における目盛線の違いがより明確なものとなる。さらに、この実施例の外筒１ｄでは、外筒１ｄの目盛表示の数字１６の両側において、目盛線を真正面視することができ、目盛線の確認領域が広くなる。
　そして、目盛線１７ｂの幅、ドット状の熱変性部の側壁部における厚さ、外筒本体１１の全光線透過率、ヘイズ値は、上述した目盛線１７と同様であることが好ましい。

　そして、ドット状の熱変性部は、例えば、以下のようにして形成することができる。
　例えば、外筒１の側壁部の内部に、パルス幅が短い短パルスのレーザーを照射することにより、側壁を形成するプラスチックの内部に、ドット状の有色熱変性部、炭化部、可視光線難透過部などの光透過性変調部もしくは屈折率変調部を形成することができる。

　外筒１の側壁部に向けて、外筒の中心軸を直交する向きにて、レンズを用いて焦点を絞って、レーザー照射を行い、部分的に熱変性（炭化）させる。照射における焦点は、外筒１の側壁部の内部となるように設定される。外筒の側壁部の厚さによっても相違するが、焦点は、側壁部の中心付近であることが好ましい。

　さらに、外筒１を保持し、かつ、中心軸を回転軸として、ゆっくり回転させながら、レーザー照射を行う。これにより、外筒の中心軸と直交するのドット状の第１の熱変性部群を形成することができる。
　さらに、外筒１の側壁部に向けて、外筒の中心軸を直交する向きにて、焦点距離を変え、かつ、レンズを用いて焦点を絞り、レーザー照射を行うとともに、上記の外筒の回転を行う。これにより、第１の熱変性部群と深さが異なるドット状の第２の熱変性部群を形成することができる。そして、焦点距離および軸方向位置を変えたレーザー照射を行うことにより、目盛線となるドット状の熱変性部群を形成することができる。

　レーザー光の照射装置としては、一般的なレーザー印字用装置等を用いることができる。レーザー印字用装置の具体例としては、例えば、キーエンス社製レーザー印字システム：ＭＤ－Ｕ１０００Ｃ型が挙げられる。

　レーザー光の照射方法としては特に限定されず、スキャン方式及びマスク方式のいずれであってもよい。また、ビームモードとしては特に限定されず、シングルモードでもマルチモードでもよい。シングルモードは、集光性がよく、ビームの形状も円形なので、微細印字に適している。一方、マルチモードは、大出力が可能なため、生産性を向上させる印字に適している。

　レーザー光の波長は、３００ｎｍ以上８００ｎｍ未満とする必要があるが、３５０ｎｍ以上７００ｎｍ以下とすることが好ましい。このような範囲の波長のレーザー光を照射することで、印字部のレーザー光照射による褪色が鮮明となり、印字部の視認性を良好なものとすることができる。

　レーザー光エネルギーの具体例としては、波長が３００ｎｍ以上８００ｎｍ未満のレーザー光であれば特に限定されないが、Ｈｅ－Ｎｅレーザー（６３２．８ｎｍ）、Ａｒレーザー（４８８～５１４ｎｍ）、エキシマＸｅＦレーザー（４００ｎｍ）、エキシマＸｅＣｌ（３５０ｎｍ）、エキシマＫｒＦレーザー（３０８ｎｍ）等の気体レーザー；ＹＡＧまたはＹＶＯ４の第二高調波レーザー（５３２ｎｍ）及び第三高調波レーザー（３５５ｎｍ）等の固体レーザー；ＧａＩｎＮ（４００～５３０ｎｍ）、ＡｌＧａＩｎＰ（６３５～６８０ｎｍ）等の半導体レーザーが挙げられる。

　レーザー光の出力は、目盛線部分に要求される光透過性や厚みにより適宜制御すればよいが、例えばＹＡＧまたはＹＶＯ４の第二高調波レーザー（５３２ｎｍ）を用いる場合には、出力０．１～６Ｗ程度で、スキャン速度０．０１～１２ｍ／ｓ、周波数０（連続照射）～４００ｋＨｚの条件でレーザー光を照射することが考えられる。

（実施例１）
　形成材料として、ポリカーボネートを用いて、射出成形により、図１ないし図３に示す形態のシリンジ用外筒を作製した。このシリンジ用外筒における外筒本体部の外径は、９．５ｍｍであり、肉厚は、２ｍｍであった。
　そして、外筒表面に外筒の軸方向長（幅）が、０．５ｍｍ、外筒本体の中心軸に直交する方向に所定長延びる目盛線を下記条件のレーザー照射により形成し、本発明のシリンジ用外筒（実施例１）を作成した。

（１）使用レーザー照射機：　株式会社キーエンス製 ＭＤ－Ｕ１０００Ｖ　ＶＫ－２５０
　なお、上記のレーザー照射機のスペックは、下記の通りである。
　印字方式：ＸＹＺ３軸同時スキャニング方式
　印字レーザー（種類）：ＹＶＯ４レーザー（クラス４レーザー製品）
　印字レーザー（波長）：３５５ｎｍ
　印字レーザー（出力）：２．５Ｗ（４０ｋＨｚ時）
　Ｑスイッチ周波数：（ＣＷ連続発振）、４０～４００ｋＨｚ
　ガイドレーザー／ワークディスタンスポインタ：
　　半導体レーザー波長６５５ｎｍ出力：１．０　ｍＷ（クラス２レーザー製品）
　マーキングスペース：１２５×１２５×４２ｍｍ
　基準ワークディスタンス（±可変幅）：１８９ｍｍ（±２１ｍｍ）
　印字分解能：２μｍ
　スキャンスピード：最大１２０００ｍｍ／ｓ

（２）照射条件
　レザーパワー：４５％
　スキャンスピード：２０００ｍｍ／ｓ
　パルス周波数：４０ｋＨｚ
　スポット可変：－２０
　照射回数：１０回
　塗りつぶし間隔：０．１ｍｍ
　ワークディスタンス：１６８ｍｍ
　Ｚ座標：＋２１ｍｍ

（３）考察
　上記　実施例１のシリンジ用外筒では、真正面から目盛線を視認した場合、目盛線を形成する多数のドット状の熱変性部が側壁部の厚さ方向に重なって単一かつ明瞭に認識できた。斜め上方方向から目盛表示部を視認した場合、目盛線がぼやけて見えた。

　次に、本発明のシリンジ１０およびプレフィルドシリンジ２０について説明する。
　図１３および図１４に示すように、本発明のシリンジ１０は、上記のシリンジ用外筒１と、外筒１内に収納された摺動可能なガスケット３と、ガスケット３の後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャ４とを備える。
　また、図１５に示すように、本発明のプレフィルドシリンジ２０は、上記シリンジ１０と、外筒１のノズル部１４を封止する封止部材５と、外筒１とガスケット３と封止部材５により形成される空間内に充填された薬液６とからなる。この実施例では、封止部材５は、シールキャップ５により形成されている。

　ガスケット３は、図１４に示すようにほぼ同一外径にて延びる筒状本体部と、本体部より先端方向に延びるテーパー状閉塞部とを備える。そして、本体部の外側面には、複数の環状リブ（この実施例では、２つ）が形成されている。これらのリブは、外筒１の内面に液密に接触する。

　そして、ガスケット３は、筒状本体部の内部であり、かつ、後端開口部より先端方向に延びる凹部を備える。この凹部は、プランジャ４の先端部４２を収納可能である。
　ガスケット３の形成材料としては、弾性を有するゴム（例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど）、合成樹脂（例えば、ＳＢＳエラストマー、ＳＥＢＳエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン－αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど）等を使用することが好ましい。

　プランジャ４は、図１３ないし図１５に示すように、プランジャ本体部４１と、プランジャ本体部４１より先端方向に突出し、ガスケット３内に進入する先端部４２とを備える。プランジャ本体部４１は、先端にガスケットの後端面に当接する先端当接部を備え、後端に押圧部を備えている。
　プランジャ４の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。

　封止部材（シールキャップ）３は、図１３ないし図１５に示すように、内部閉塞端を有する筒状本体部５１と、筒状本体部５１の下部内部に形成されたノズル収納部５３を有している。ノズル収納部５３は、内部にノズル部１４の先端部を収納する。ノズル収納部５３の外面には、外筒のカラー部１３の内面に形成されたねじ溝と螺合するキャップ側螺合部を備えている。
　また、キャップ５内には、シール部材５２が収納されている。シール部材５２は、ノズル部１４の先端面に液密状態にて当接している。

　封止部材（シールキャップ）の形成材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等の弾性材料が好ましい。
　外筒１とガスケット３と封止部材により形成される空間内に充填される薬液６としては、例えば、造影剤、高濃度塩化ナトリウム注射液、ミネラル類、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ビタミン剤（総合ビタミン剤）、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インスリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウイルス剤、免疫賦活剤等が挙げられる。

　本発明のシリンジ用外筒は、以下のものである。
　（１）　筒状の外筒本体を備える熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒であって、
　前記外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、
　前記目盛線は、前記外筒本体の前記側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されているシリンジ用外筒。

　本発明のシリンジ用外筒は、筒状の外筒本体を備える熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒であって、外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、目盛線は、外筒本体の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。このため、真正面から目盛線を視認した場合、目盛線を形成する多数のドット状の熱変性部が側壁部の厚さ方向に重なって単一かつ明瞭に認識できる一方、斜め方向から目盛表示部を視認した場合、目盛線がぼやけて見える（幅をもって見えたり、薄く見えたりする）ため、目盛を認識することが困難になる。したがって、必然的に、目盛線を真正面から視認することとなり、外筒の内容物の状態を正確に認識し、薬剤の充填量や投与量の誤認を抑制できる。

　また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
　（２）　前記目盛線は、前記外筒本体の中心軸に直交する方向に延び、かつ、所定幅を有する帯状となっている上記（１）に記載のシリンジ用外筒。
　（３）　前記目盛線は、正面から見た場合、形成された幅かつ所定濃度の細い帯状に見え、斜めから見た場合、形成された幅より広くかつ前記所定濃度より薄い帯状に見えるものとなっている上記（１）または（２）に記載のシリンジ用外筒。
　（４）　前記目盛線は、前記数字の横に位置している上記（１）ないし（３）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（５）　前記ドット状の熱変性部は、ドット状の有色熱変性部である上記（１）ないし（４）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（６）　前記ドット状の熱変性部は、ドット状の炭化部である上記（１）ないし（４）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（７）　前記ドット状の熱変性部は、ドット状の可視光線難透過部である上記（１）ないし（４）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（８）　前記ドット状の熱変性部は、レーザー光照射により形成されたものである上記（１）ないし（７）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（９）　前記目盛線は、前記外筒本体の中心より、前記外筒本体の中心軸に直交する方向に、５～３６０度延びるものである上記（１）ないし（８）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（１０）　前記目盛線の幅は、０．３～２ｍｍである上記（１）ないし（９）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（１１）　前記目盛線における可視光線透過率は、０～５０％である上記（１）ないし（１０）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（１２）　前記ドット状の熱変性部は、前記側壁部の外表面および内表面に形成されていない上記（１）ないし（１１）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
　（１３）　前記ドット状の熱変性部は、前記側壁部の厚さの５０％以上に亘って存在している上記（１）ないし（１２）のいずれかに記載のシリンジ用外筒。

　本発明のシリンジは、以下のものである。
　（１４）　上記（１）ないし（１３）のいずれかに記載のシリンジ用外筒と、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されるプランジャーとを備えるシリンジ。

　本発明のシリンジにおいては、シリンジ用外筒の外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、目盛線は、外筒本体の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。このため、真正面から目盛線を視認した場合、目盛線を形成する多数のドット状の熱変性部が側壁部の厚さ方向に重なって単一かつ明瞭に認識できる一方、斜め方向から目盛表示部を視認した場合、目盛線がぼやけて見える（幅をもって見えたり、薄く見えたりする）ため、目盛を認識することが困難になる。したがって、必然的に、目盛線を真正面から視認することとなり、外筒の内容物の状態を正確に認識し、薬剤の充填量や投与量の誤認を抑制できる。

　本発明のプレフィルドシリンジは、以下のものである。
　（１５）　上記（１４）に記載のシリンジと、前記シリンジ用外筒の先端部もしくは前記シリンジ用外筒の先端部に固着された穿刺針を封止する封止部材と、前記シリンジ用外筒内に充填された薬剤とを備えるプレフィルドシリンジ。

　本発明のプレフィルドシリンジにおいては、シリンジ用外筒の外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、目盛線は、外筒本体の側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されている。このため、真正面から目盛線を視認した場合、目盛線を形成する多数のドット状の熱変性部が側壁部の厚さ方向に重なって単一かつ明瞭に認識できる一方、斜め方向から目盛表示部を視認した場合、目盛線がぼやけて見える（幅をもって見えたり、薄く見えたりする）ため、目盛を認識することが困難になる。したがって、必然的に、目盛線を真正面から視認することとなり、外筒の内容物の状態を正確に認識し、薬剤の充填量や投与量の誤認を抑制できる。

Claims (15)

1. 筒状の外筒本体を備える熱可塑性樹脂製シリンジ用外筒であって、
   　前記外筒本体は、側壁部に設けられた数字および目盛線を有する目盛表示を備え、
   　前記目盛線は、前記外筒本体の前記側壁部内に形成された多数のドット状の熱変性部により形成されていることを特徴とするシリンジ用外筒。
2. 前記目盛線は、前記外筒本体の中心軸に直交する方向に延び、かつ、所定幅を有する帯状となっている請求項１に記載のシリンジ用外筒。
3. 前記目盛線は、正面から見た場合、形成された幅かつ所定濃度の細い帯状に見え、斜めから見た場合、形成された幅より広くかつ前記所定濃度より薄い帯状に見えるものとなっている請求項１または２に記載のシリンジ用外筒。
4. 前記目盛線は、前記数字の横に位置している請求項１ないし３のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
5. 前記ドット状の熱変性部は、ドット状の有色熱変性部である請求項１ないし４のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
6. 前記ドット状の熱変性部は、ドット状の炭化部である請求項１ないし４のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
7. 前記ドット状の熱変性部は、ドット状の可視光線難透過部である請求項１ないし４のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
8. 前記ドット状の熱変性部は、レーザー光照射により形成されたものである請求項１ないし７のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
9. 前記目盛線は、前記外筒本体の中心より、前記外筒本体の中心軸に直交する方向に、５～３６０度延びるものである請求項１ないし８のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
10. 前記目盛線の幅は、０．３～２ｍｍである請求項１ないし９のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
11. 前記目盛線における可視光線透過率は、０～５０％である請求項１ないし１０のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
12. 前記ドット状の熱変性部は、前記側壁部の外表面および内表面に形成されていない請求項１ないし１１のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
13. 前記ドット状の熱変性部は、前記側壁部の厚さの５０％以上に亘って存在している請求項１ないし１２のいずれかに記載のシリンジ用外筒。
14. 請求項１ないし１３のいずれかに記載のシリンジ用外筒と、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されるプランジャーとを備えるシリンジ。
15. 請求項１４に記載のシリンジと、前記シリンジ用外筒の先端部もしくは前記シリンジ用外筒の先端部に固着された穿刺針を封止する封止部材と、前記シリンジ用外筒内に充填された薬剤とを備えるプレフィルドシリンジ。

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