WO2021117398A1

WO2021117398A1 - 電子部材固定用粘着シート

Info

Publication number: WO2021117398A1
Application number: PCT/JP2020/041731
Authority: WO
Inventors: 和典鹿野; 佑基比舎; 優誠菊地; 真生岸
Original assignee: デンカ株式会社
Priority date: 2019-12-13
Filing date: 2020-11-09
Publication date: 2021-06-17
Also published as: JPWO2021117398A1; TW202134376A; KR20220115581A

Abstract

基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に形成された粘着剤層とを有し、さらに前記基材フィルムの片面側又は両面側に帯電防止材を含む帯電防止層、を有する電子部材固定用粘着シートであって、前記帯電防止層として前記基材フィルムの他方の面側に、帯電防止材を含む外側帯電防止層と、外側保護層と、をこの順で有する電子部材固定用粘着シート。

Description

電子部材固定用粘着シート

　本発明は、電子部材の製造方法に用いられる電子部材固定用粘着シートに関する。

　半導体ウエハ又はパッケージ基板などの電子部材（以下、単に「電子部材」と称することがある。）は、回路を形成した後に、電子部材固定用粘着シートに貼合、素子小片に切断（ダイシング）、粘着シートの延伸（エキスパンディング）、粘着シートからの素子小片の剥離（ピックアップ）などの各工程に移される。これらの工程で使用される粘着シート（ダイシングテープ）は、ダイシング時には切断される素子小片（チップ）に対して充分な粘着力を有し、かつピックアップ時には糊残りしない程度に粘着力が減少していることが望まれる。

　近年、電子部品の小型化、薄型化に伴い、チップサイズの小型化が進んでおり、半導体ウエハ又は基板のダイシング工程において、チップ飛びやチッピング（チップの欠け）が発生しやすくなり、歩留まり低下の要因の一つとなっている。またピックアップ工程において、ニードルピンの突き上げにより粘着シートの粘着剤層に割れが発生することがある。粘着剤層に割れが生じると、割れた粘着剤層がチップに付着（糊残り）し、汚染やマウンティング工程の不良の原因となる。

　上述のような課題を解決するため、ダイシング工程でのチップ飛び及びチッピング抑制を向上させた粘着テープが種々開発されている（例えば、下記特許文献１参照）。

国際公開ＷＯ２０１７／１８２７０号公報

　ところで、電子部材固定用粘着シートに求められる性能としては帯電防止効果に優れることが挙げられる。電子部材固定用粘着シートに静電気が帯電してしまうと、半導体ウエハ等の電子部材に悪影響が及ぶだけではなく、粘着シートが、周辺に存在する粉塵やダイシングの際に発生する切削粉等を吸着して電子部材を汚染してしまう。このため、電子部材に対する静電気の影響を抑制すべく、電子部材固定用粘着シートには様々な処理が施されている。このような処理としては、例えば、シート表面の表面抵抗値を低下させるために粘着シートの基材フィルムに帯電処理を施したり、帯電防止材を含む帯電防止層の付与などが挙げられる。

　しかし、基材フィルムに帯電防止層を設けた場合、ダイシング時、エキスパンディング時、又は、ピックアップ時の際の振動やシートの形状変化など様々な要因によって、帯電防止層の一部が欠損する場合がある。帯電防止層が欠損すると所望の表面抵抗値低減効果を発揮できなかったり、脱落した帯電防止層の欠片が屑となりコンタミの原因となることもある。

　特に粘着シートの取り扱いの際に帯電防止層が他の部材等に接触してダメージ等を受けると、取り扱い時やダイシング時などに帯電防止層の脱落が発生する可能性が高まることが推測される。

　上述の課題を解決すべく、本発明は、電子部品の汚染が少なく表面抵抗値の低減効果に優れた電子部材固定用粘着シートを提供することを目的する。

　本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
　＜１＞　基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に形成された粘着剤層と、を有し、さらに前記基材フィルムの片面側又は両面側に帯電防止材を含む帯電防止層を有する電子部材固定用粘着シートであって、
　前記基材フィルムの他方の面側に、前記帯電防止層として外側帯電防止層と、外側保護層と、をこの順で有する電子部材固定用粘着シート。
　＜２＞　少なくとも一方の表面の表面抵抗値が１×１０⁷Ω／□以下である前記＜１＞に記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜３＞　前記外側帯電防止層に含まれる前記帯電防止材が、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくとも１種である前記＜１＞又は＜２＞に記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜４＞　さらに、前記基材フィルムと前記粘着剤層との間に、前記帯電防止層として内側帯電防止層を有する前記＜１＞～前記＜３＞のいずれかに記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜５＞　前記内側帯電防止層に含まれる前記帯電防止材が、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくとも１種である前記＜４＞に記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜６＞　さらに、前記粘着剤層と前記内側帯電防止層との間に、内側保護層を有する前記＜４＞又は＜５＞に記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜７＞　前記基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも１種を含む前記＜１＞～前記＜６＞のいずれか一項に記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜８＞　前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤を含む前記＜１＞～前記＜７＞のいずれかに記載の電子部材固定用粘着シート。
　＜９＞　前記粘着剤層が、紫外線硬化樹脂組成物を含む前記＜１＞～前記＜８＞のいずれかに記載の電子部材固定用粘着シート。

　本発明によれば、電子部材の汚染が少なく表面抵抗値の低減効果に優れた電子部材固定用粘着シートを提供することができる。

本実施形態の粘着シートの構成例を示す断面図である。

　以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

《電子部材固定用粘着シート》
　本実施形態の電子部材固定用粘着シート（以下、単に「粘着シート」と称することがある）は、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側（以下、「粘着面側」）と称することがある。）に形成された粘着剤層と、を有し、さらに前記基材フィルムの片面側又は両面側に帯電防止材を含む帯電防止層を有し、前記基材フィルムの他方の面側（以下、「外側」と称することがある）に、前記帯電防止層として外側帯電防止層と、外側保護層と、をこの順で有する。また、本実施形態においては、後述するように、基材フィルムの一方の面側（粘着面側）において基材フィルムと粘着剤層との間に設けられる層（例えば、保護層、帯電防止層）を、各々「内側保護層」、及び「内側帯電防止層」と称する。
　なお、以下において、外側帯電防止層及び内側帯電防止層を総じて、単に「帯電防止層」と称することがある。同様に、外側保護層及び内側保護層を総じて、単に「保護層」と称することがある。

＜構成＞
　図１を用いて本実施形態の粘着シートの層構成について説明する。図１は、本実施形態の粘着シートの構成例を示す断面図である。各構成において共通する部材については共通の番号を用いて説明する。

　上述のように、本実施形態の粘着シートは、基材フィルムの粘着面側に少なくとも粘着剤層を有し、基材フィルムの他方の面側（外側）に、少なくとも、外側帯電防止層と、外側保護層と、をこの順で有する。即ち、図１（Ａ）に示すように、粘着シート１００は、基材フィルム２０を備え、一方の面側（粘着面側：紙面上方）に、粘着剤層３０が設けられており、他方の面側（外側：紙面下方）には、外側帯電防止層４０と、外側保護層５０とが設けられている。
　本実施形態の粘着シートによれば、基材フィルムに外側帯電防止層が設けられているため、粘着シート表面、特に、外側最表面の表面抵抗値を低くすることができる。

　一方、外側帯電防止層は、基材フィルムや粘着シートの取り扱い時における接触や、ダイシング工程時の振動による物理的な衝撃や基板ピッキング時のシートの形状変化によって受ける力等によってクラックなどの欠損が生じやすい。特に、帯電防止材としてカーボンナノチューブや金属酸化物等を含む場合に帯電防止層のクラックが生じやすい。さらに、基材フィルムや粘着シートの取り扱いの際に、帯電防止層が他の部材等に接触してダメージ等を受けると、帯電防止層の欠損が発生する可能性が高まる。このように、帯電防止層に欠損が生じると、所望の表面抵抗値低減効果を発揮できなかったり、脱落した帯電防止層の欠片が屑となりコンタミの原因となることがある。

　これに対し、本実施形態の粘着シートの外側帯電防止層は、基材フィルム外側に外側保護層が設けられている。このため、本実施形態の粘着シートは、基材フィルム等の取り扱いの際に帯電防止層が他の部材等に接触してダメージ等を受けるのを防止できるのに加え、ダイシング時、エキスパンディング時、又は、ピックアップ時の際の振動やシートの形状変化の際に、帯電防止層にクラックなどが生じた場合であっても、帯電防止層が脱落するのを防止することができる。

　本実施形態の粘着シートは、基材フィルムと粘着剤層との間に、帯電防止材を含む内側帯電防止層を有していてもよい。この場合、図１（Ｂ）に示すように、粘着シート２００は、基材フィルム２０を備え、一方の面側（粘着面側：紙面上方）に、内側帯電防止層４２と、粘着剤層３０とがこの順で設けられており、他方の面側（外側：紙面下方）には、外側帯電防止層４０と、外側保護層５０とが設けられている。

　例えば、ダイシング工程におけるチップ飛びやチッピング発生の一要因としては、粘着面の表面抵抗値［Ω／□］も関係していると推測される。粘着剤層表面の表面抵抗値が高くなると、粘着剤層が所望の粘着力を発揮できないことがあり、これがチップ飛びなどの原因となることがある。しかし、基材フィルムと粘着剤層との間に内側帯電防止層が設けられていると、外側最表面に加えて、粘着シートの粘着面における表面抵抗値をも効果的に低下させることができ、ダイシング工程時のチップ飛びやチッピング発生を抑制することができる。
　さらに、粘着シートの粘着面における表面抵抗値を低減させると、従来の帯電防止性を与えた粘着剤及び粘着シートに比して、チップ剥離時における帯電（剥離帯電）の抑制効果が向上し、粘着力の安定化に優れ、電子部品の汚染（電子部品を貼り付けてから剥離した際の粘着剤の移行）が少ない粘着シートを作製することができる。

　また、特に限定されるものではないが、粘着シート２００のように内側帯電防止層を有する粘着シートを作製する場合、予め両面に帯電防止層が設けられた基材フィルムを用いることができる。この場合、取り扱い時における帯電防止層へのダメージを防ぐ観点から、外側帯電防止層のみならず内側帯電防止層に対応する帯電防止層上にも保護層が形成されていることが好ましい。
　例えば、両面に帯電防止層と保護層とを有する基材フィルムを用いて粘着シート２００を作製する場合には、片側の保護層のみを基材フィルムから除去し、当該除去面に粘着剤層を設けることで、粘着シート２００を作製することができる。

　一方、両面に帯電防止層と保護層とを有する基材フィルムを用いて粘着シートを作製する場合、製造効率の向上等の観点から、粘着剤層が設けられる側（内側）の保護層を除去せずその上に粘着剤層を設けてもよい。即ち、本実施形態の粘着シートは、内側帯電防止層に加え、粘着剤層と内側帯電防止層との間に、内側保護層を有していてもよい。
　この場合、図１（Ｃ）に示すように、粘着シート３００は、基材フィルム２０を備え、一方の面側（粘着面側：紙面上方）に、内側帯電防止層４２と、内側保護層５２と、粘着剤層３０と、がこの順で設けられており、他方の面側（外側：紙面下方）には、外側帯電防止層４０と、外側保護層５０とが設けられている。

　なお、各粘着シートには、図示を省略するが、取り扱い時において粘着剤層の粘着面を保護するために剥離可能な保護フィルムなどを有していてもよい。
　さらに、上述の各層構成においては帯電防止層と保護層とが別々に作製される例について説明されているが、帯電防止層と保護層とは、各層の境界が必ずしも明確でなくてもよい。例えば、帯電防止層と保護層とが一体的に形成されていてもよい。この場合、当該層の厚み方向における帯電防止材の分布濃度を調整して基板側における帯電防止材の含有量をリッチにし、外側表面付近の帯電防止層の含有量を少なく（好ましくは０）とすることで、帯電防止層と保護層との機能を備えた層を形成することができる。
　以下、各層を構成する材料等について説明する。

＜基材フィルム＞
　基材フィルムとしては、特に限定はないが、電子部材作製用途に用いられる各種合成樹脂製のシートを使用することができる。基材フィルムの素材としては、特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも１種を用いることができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン－酢酸ビニル共重合体、エチレン－アクリル酸－アクリル酸エステルフィルム、エチレン－エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、エチレン－アクリル酸共重合体、及び、エチレン－（メタ）アクリル酸共重合体やエチレン－（メタ）アクリル酸－（メタ）アクリル酸エステル共重合体等に金属イオンが結合したアイオノマ樹脂などが挙げられる。基材フィルムは、これら樹脂の混合物又は共重合体であってもよい。

　前記アイオノマ樹脂としては、ダイシング時の切削屑の抑制の点から、エチレン単位、（メタ）メタアクリル酸単位及び（メタ）アクリル酸アルキルエステル単位を有する共重合体にＮａ⁺、Ｋ⁺、Ｚｎ²⁺等の金属イオンが結合したアイオノマ樹脂を好適に用いることができる。

　基材フィルムの成型方法は特に限定されず、例えばカレンダー、Ｔダイ押出し、インフレーション、及びキャスティング等が挙げられる。

　基材フィルムは、上述の材料を含む単層又は多層のフィルム或いはシートであってよく、異なる材料からなるフィルム等を積層したものであってもよい。基材フィルムの厚さは５０～２００μｍが好ましく、７０～１５０μｍがさらに好ましい。

　基材フィルムは、帯電防止処理が施されていてもよい。帯電防止処理としては、基材フィルムに帯電防止材を配合する処理、コロナ放電による処理等が挙げられる。

＜粘着剤層＞
　粘着剤層は、ダイシング工程等の際に、導体ウエハ又はパッケージ基板などの電子部材が貼合され、電子部材を固定する役割を有する層である。粘着剤層に含まれる粘着剤は、特に限定されないが、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。本実施形態では紫外線硬化型粘着剤層が好ましいため、アクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。ＵＶ硬化型の粘着剤層は、ＵＶ光照射によって硬化する。粘着剤層が硬化すると、当該層の弾性率が高くなるためその粘着力が低下するとともに、粘着剤層自体が形状変化（収縮）する。このため、ダイシング後に紫外線を粘着剤層に照射すると、粘着力の低下等によって、チップの剥離が容易となる。アクリル系粘着剤を用いた紫外線硬化樹脂組成物としては、例えば（メタ）アクリル酸エステル共重合体と、光重合性化合物と、硬化剤と、光重合開始剤とを含むものが挙げられる。

－アクリル系粘着剤－
　アクリル系粘着剤としては、特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステル重合体が挙げられる。ここで、本明細書において、（メタ）アクリル酸のように（メタ）を含む化合物は名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。

　（メタ）アクリル酸エステル共重合体としては、（メタ）アクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマー及びそれらのエステルモノマーを重合させたポリマー、これらモノマーと共重合可能な不飽和単量体（例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル）を共重合させたコポリマーが挙げられる。

　カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、アクリルアミドＮ－グリコール酸、及びケイ皮酸等が挙げられ、メタクリル酸が好ましい。アクリル酸は、硬化剤を含有することによって、粘着力をより精密に調整することができるので特に好ましい。
　（メタ）アクリル重合体のエステルモノマーとしては、例えば、ブチル（メタ）アクリレート、２－ブチル（メタ）アクリレート、ｔ－ブチル（メタ）アクリレート、ペンチル（メタ）アクリレート、オクチル（メタ）アクリレート、２－エチルヘキシル（メタ）アクリレート、ノニル（メタ）アクリレート、デシル（メタ）アクリレート、ラウリル（メタ）アクリレート、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、イソプロピル（メタ）アクリレート、トリデシル（メタ）アクリレート、ミリスチル（メタ）アクリレート、セチル（メタ）アクリレート、ステアリル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレート、ベンジル（メタ）アクリレート等が挙げられる。

　（メタ）アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、弾性率が過剰に低下及び高くなるのを抑制して、ダイシング時チッピングの発生を防止する観点から、２０万～２００万が好ましい。

（光重合性化合物）
　光重合性化合物としては、特に限定はないが、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることができる。ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えばアクリロイルオキシ基若しくはメタクリロイルオキシ基をもつ多価イソシアネートに、ヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートを反応させて得られる。

　多価イソシアネート化合物には、例えば、２，４－トリレンジイソシアネート、２，６－トリレンジイソシアネート、１，３－キシレンジイソシアネート、１，４－キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン４，４－ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが用いられる。

　また、ヒドロキシ基を有する（メタ）アクリレートには、例えば、２－ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート、ポリエチレングリコール（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリシドールジ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートなどが用いられる。

　粘着剤層における光重合性化合物の含有量は、特に限定はないが、光照射後の粘着シートの剥離性の低下による半導体チップのピックアップ不良の発生や光照射工程において粘着剤の弾性率が過剰に高くなりピックアップ工程で糊割れが生じるのを回避する観点から、（メタ）アクリル酸エステル共重合体１００質量部に対して２０～１５０質量部が好ましく、５０～１２０質量部がさらに好ましい。

　光重合性化合物は、特に限定はないが、ダイシング時に粘着剤が掻き上げられることによるチップに糊残りの発生や、紫外線等を照射後における粘着剤の硬化の観点から、重量平均分子量が５００～１００，０００であることが好ましく、アクリロイル基とメタクリロイル基のいずれかを少なくとも１つ以上、かつ合計４～１０個有することが好ましい。

（硬化剤）
　硬化剤としては、多官能イソシアネート硬化剤、多官能エポキシ硬化剤、アジリン化合物、メラミン化合物等が挙げられる。
　多官能イソシアネート硬化剤としては、例えば芳香族ポリイソシアネート硬化剤、脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、脂環族ポリイソシアネート硬化剤があり、一般的にはアダクト型として二量体以上で使用される。

　芳香族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば１，３－フェニレンジイソシアネート、４，４’－ジフェニルジイソシアネート、１，４－フェニレンジイソシアネート、４，４’－ジフェニルメタンジイソシアネート、２，４－トリレンジイソシアネート、２，６－トリレンジイソシアネート、４，４’－トルイジンジイソシアネート、２，４，６－トリイソシアネートトルエン、１，３，５－トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、４，４’－ジフェニルエーテルジイソシアネート、４，４’，４’－トリフェニルメタントリイソシアネート、ω，ω’－ジイソシアネート－１，３－ジメチルベンゼン、ω，ω’－ジイソシアネート－１，４－ジメチルベンゼン、ω，ω’－ジイソシアネート－１，４－ジエチルベンゼン、１，４－テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び１，３－テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。

　脂肪族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、１，２－プロピレンジイソシアネート、２，３－ブチレンジイソシアネート、１，３－ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び２，４，４－トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。

　脂環族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば３－イソシアネートメチル－３，５，５－トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、１，３－シクロペンタンジイソシアネート、１，３－シクロヘキサンジイソシアネート、１，４－シクロヘキサンジイソシアネート、メチル－２，４－シクロヘキサンジイソシアネート、メチル－２，６－シクロヘキサンジイソシアネート、４，４’－メチレンビス（シクロヘキシルイソシアネート）、１，４－ビス（イソシアネートメチル）シクロヘキサン、及び１，４－ビス（イソシアネートメチル）シクロヘキサンがある。

　ポリイソシアネートのうち、１，３－フェニレンジイソシアネート、４，４’－ジフェニルジイソシアネート、１，４－フェニレンジイソシアネート、４，４’－ジフェニルメタンジイソシアネート、２，４－トリレンジイソシアネート、２，６－トリレンジイソシアネート、４，４’－トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好適に用いられる。

　多官能エポキシ硬化剤は、主にエポキシ基を２個以上、第３級窒素原子を１個以上有する化合物をいい、Ｎ・Ｎ－グリシジルアニリン、Ｎ・Ｎ－グリシジルトルイジン、ｍ－Ｎ・Ｎ－グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、ｐ－Ｎ・Ｎ－グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、Ｎ・Ｎ・Ｎ’・Ｎ’－テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、Ｎ・Ｎ・Ｎ’・Ｎ’－テトラグリシジル－ｍ－キシリレンジアミン、Ｎ・Ｎ・Ｎ’・Ｎ’・Ｎ’’－ペンタグリシジルジエチレントリアミンなどが挙げられる。

　粘着剤層における硬化剤の含有量は、糊残りの発生や粘着力の不足を抑制する観点から、（メタ）アクリル酸エステル共重合体１００質量部に対して、１～２０質量部であることが好ましく、１．５～１５質量部であることがさらに好ましい。

（光重合開始剤）
　光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類又はキサントン類などが用いられる。
　ベンゾインとしては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等が挙げられる。
　アセトフェノン類としては、例えばベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、２，２－ジメトキシ－２－アセトフェノン、２，２―ジエトキシ－２－アセトフェノン、１，１－ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。
　アントラキノン類としては、２－メチルアントラキノン、２－エチルアントラキノン、２－ターシャリブチルアントラキノン、１－クロロアントラキノン等が挙げられる。
　チオキサントン類としては、例えば２，４－ジメチルチオキサントン、２，４－ジイソプロピルチオキサントン、２－クロロチオキサントン、２，４－ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。

　ケタール類としては、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルメタール、ベンジルジフエニルサルフアイド、テトラメチルチウラムモノサルフアイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β－クロールアンスラキノン等が挙げられる。

　粘着剤層における光重合開始剤の含有量は、光照射後の粘着シートからの剥離性や光重合開始剤の粘着剤層表面へブリードアウトを抑制する観点から、（メタ）アクリル酸エステル重合体１００質量部に対して１～１５質量部であり、１．５～１０質量部がさらに好ましい。

　光重合開始剤には、必要に応じて従来公知の光重合促進剤を１種又は２種以上を組合せて併用してもよい。光重合促進剤としては、安息香酸系や第三級アミンなどを用いることができる。第三級アミンとしては、トリエチルアミン、テトラエチルペンタアミン、ジメチルアミノエーテルなどが挙げられる。

　粘着剤層には、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂を完全又は部分水添されたテルペンフェノール樹脂を添加してもよい。
　さらに、粘着剤層には、例えば、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、充填剤、導電剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。

　粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、粘着力の確保によるダイシング時におけるチップ保持性や、粘着剤層の厚さに起因するチッピングの発生防止の観点から、１～５０μｍが好ましく、５～３０μｍがさらに好ましい。
　また、粘着剤層と直下の部材との密着力、例えば、粘着剤層／基材フィルム間、粘着剤層／内側帯電防止層間、粘着剤層／内側保護層間の密着力（アンカー性〔単位：Ｎ／２０ｍｍ〕）は、特に限定されるものではないが、テープ剥離後の糊残りの観点から、１Ｎ／２０ｍｍ以上であることが好ましく、６Ｎ／２０ｍｍ以上であることが更に好ましい。当該アンカー性は実施例に記載の方法にて測定することができる。

＜帯電防止層＞
　帯電防止層は帯電防止材を含む層である。本実施形態においては、上述のように、外側帯電防止層に加えて、内側帯電防止層を形成することもできる。
　帯電防止材としては、特に限定はないが、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくとも１種が好ましい。前記カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールとしては、帯電防止材（導電材料）として用いられるものであれば、特に制限なく、公知のものを適宜選定して用いることができる。また、これら帯電防止材としては、帯電防止効果の観点から、カーボンナノチューブが特に好ましい。
　外側帯電防止層及び内側帯電防止層には同様の帯電防止材を用いることができ、両層は同一の材料で形成される層であってもよいし、異なる材料を用いて形成されていてもよい。

　カーボンナノチューブ（以下、単に「ＣＮＴ」と称することがある。）は、単層カーボンナノチューブ（ＳＷＣＮＴ）及び多層カーボンナノチューブ（ＭＷＣＮＴ）のいずれであってもよい。

　ＭＷＣＮＴは、直径が異なる複数の円筒状カーボン壁からなるチューブが中心軸線の周りに多層に重なって構成されており、カーボン壁が、カーボンの六角網目構造や渦巻き状に多層に形成されている。ＭＷＣＮＴとしては、カーボン壁が２～３０層重なったものが好ましく、２～１５層重なったものが更に好ましい。
　また、カーボンナノチューブは、帯電防止層中において、１本ずつ分離した状態で分散していてもよいし、複数本が束になった状態で分散していてもよい。

　帯電防止層は、カーボンナノチューブ等の帯電防止材と共に、バインダーを用いてもよい。
　バインダーは、特に限定されないが、例えば、（メタ）アクリル酸エステル系重合体、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、エポキシ系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、メラニン系重合体、ポリイミド系重合体、及びシリコーン系重合体等が挙げられ、（メタ）アクリル酸エステル系重合体が好ましい。（メタ）アクリル酸エステル系重合体としては、上述の粘着剤層に用いられる（メタ）アクリル酸エステル系重合体と同様のものを挙げることができる。

　バインダーを用いる場合、帯電防止層中のカーボンナノチューブ等の含有量は特に限定されないが、帯電防止層の強度（例えばクラック耐性等）、基材フィルムとの密着性、十分な帯電防止効果を発揮する観点から、例えば、乾燥後の帯電防止層中のカーボンナノチューブの含有量を、５～２０ｍｇ／ｍ²程度、好ましくは７～１１ｍｇ／ｍ²とすることができる。

　帯電防止層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の帯電防止材（例えば、ジメチルアミノエチル（メタ）アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル（メタ）アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル（メタ）アクリレート四級塩化物、ｐ－ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びｐ－ジエチルアミノスチレン四級塩化物等）を含んでいてもよい。
　帯電防止層には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、その他、各種添加剤、例えば硬化剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤等を適宜添加してもよい。

　帯電防止層を形成する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで、基材フィルム上に直接塗布する方法や、凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で印刷する方法等が挙げられる。

　外側帯電防止層の厚みは特に限定されるものではないが、帯電防止層の強度（例えばクラック耐性等）、基材フィルムとの密着性、十分な帯電防止効果を発揮する観点から、０．０１～１μｍが好ましく、０．０２～０．２μｍがさらに好ましい。
　また、内側帯電防止層の厚みは特に限定されるものではないが、帯電防止層の強度（例えばクラック耐性等）、基材フィルムとの密着性、十分な帯電防止効果を発揮する観点から、０．０１～１μｍが好ましく、０．０２～０．２μｍがさらに好ましい。

＜保護層＞
　保護層は、帯電防止材を保護するために設けられる層である。本実施形態においては、上述のように、外側保護層に加えて、内側保護層を形成することができる。また、外側保護層は、ダイシング工程時において、帯電防止層の脱落を防ぐことを主な目的とする層である。さらに、内層及び外側保護層は双方ともに、基材フィルムの取り扱い時に例えば、接触時における物理的な衝撃等のダメージを抑制し、さらに、帯電防止層の脱落を防ぐことができる。さらに、内側保護層を備えた電子部材用粘着シートは、比較的温度の高い状況下に一定時間保存された場合であっても、粘着剤層の粘着力維持率に優れる。
　なお、保護層は、タック性を有さないことが好ましい。ここで「タック性を有さない」とは、プローブタック（ＡＳＴＭ　Ｄ　２９７９に準拠）が０．１Ｎ／２０ｍｍ²以下であることが好ましい。
　外側保護層及び内側保護層は、両層同一の材料で形成される層であってもよいし、異なる材料を用いて形成された層であってもよい。内側保護層と外側保護層とを異なる材料で形成する場合、少なくとも外側保護層がタック性を有さないことが好ましい。

　外側保護層を構成する材料（バインダー）としては特に限定はないが、例えば、（メタ）アクリル酸エステル系重合体、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、エポキシ系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、メラニン系重合体、ポリイミド系重合体、及びシリコーン系重合体等が挙げられ、（メタ）アクリル酸エステル系重合体が好ましい。（メタ）アクリル酸エステル系重合体としては、上述の粘着剤層に用いられる（メタ）アクリル酸エステル系重合体を用いることができる。

　内側保護層を構成する材料（バインダー）も特に限定はないが、アクリル系粘着剤を含む紫外線硬化樹脂で形成された粘着剤層との密着性を考慮すると、水系オレフィン樹脂、アクリル系重合体を用いることが好ましい。これら樹脂を内側保護層に用いることで粘着剤層との密着力が向上する理由は明確ではないが、内側保護層表面の官能基（水酸基、カルボン酸基、エポキシ基、イソシアネート基など）と、粘着剤に含まれる官能基（水酸基、カルボン酸基）との相互作用や、粘着剤に含まれるイソシアネート基と水酸基やカルボン酸基との化学結合によるものと推測される。

　前記アクリル系重合体としては、特に限定はないが、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミドが挙げられ、具体的には、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。

　また、保護層（特に、外側保護層）には、摩擦低減剤を用いることができる。摩擦低減剤を用いると、粘着シートとエキスパンド装置との摩擦係数を低下させることができる。摩擦低減剤としては、例えば、シリコーン樹脂や（変性）シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック、及び二硫化モリブデン等が挙げられ、帯電防止層との相溶性が良く、帯電防止性とエキスパンド性のバランスとの観点から、シリコーン系グラフト共重合体が好ましい。

　シリコーン系グラフト共重合体としては、シリコーン分子鎖の末端に（メタ）アクリロイル基又はスチリル基等のビニル基を有する単量体（以下、「シリコーン系単量体」という）と、（メタ）アクリル系単量体、スチレン等のビニル基を有する単量体等を重合してなるビニル重合体等が挙げられる（例えば、特開２０００－０８０１３５号公報等参照）。

　外側保護層中における摩擦低減剤の配合量は特に限定されないが、粘着シートを十分にエキスパンドし、帯電防止効果を阻害しない観点から、バインダー１００質量部に対して、０．００５～１０質量部とすることが好ましい。

　保護層には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、その他、各種添加剤、例えば硬化剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤等を適宜添加してもよい。

　保護層を形成する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで、基材フィルム上に直接塗布する方法や、凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で印刷する方法等が挙げられる。保護層の形成方法としては、特に、グラビアコーターを用いた方法が好ましい。

　外側保護層の厚みは特に限定されるものではないが、保護層の強度、帯電防止効果の観点から、０．１～５μｍが好ましく、０．５～２μｍがさらに好ましい。
　また、内側保護層の厚みは特に限定されるものではないが、保護層の強度、帯電防止効果の観点から、０．１～５μｍが好ましく、０．５～２μｍがさらに好ましい。

　外側保護層は、粘着シート外側の最外層であることが好ましい。粘着シートの最外層表面にはエンボス加工を施してもよい。当該エンボス加工を施すことで、外側保護層表面を、例えば、平均表面粗さ（Ｒａ）が０．３～１．５μｍのエンボス面とすることが可能である。粘着シートの最外層表面にエンボス加工を施した場合、エキスパンド装置の機械テーブル側に粘着シートのエンボス面を設置することによって、ダイシング後のエキスパンド工程で基材フィルムを容易に拡張することができる。

＜表面抵抗値＞
　本実施形態の粘着シートの表面抵抗値は、例えば、ＪＩＳ－Ｋ６９１１に準じて、エレクトロメーター等を用いて測定することができる。本実施形態の粘着シートは、少なくとも一方の表面の表面抵抗値が１×１０⁷Ω／□以下であることが好ましい。
　具体的には、粘着シートの外側最外面の表面抵抗値は、特に限定はないが、テープの剥離帯電を抑制する観点から、１×１０⁷Ω／□以下が好ましい。
　また、粘着シートの粘着面側（粘着剤層）表面の表面抵抗値は、特に限定はないが、テープの剥離帯電を抑制する観点から、１×１０¹⁰Ω／□以下が好ましい。

《粘着シートの製造方法》
　本実施形態の粘着シートの製造方法は特に限定されるものではなく、基材フィルム上に各層を上述の方法を用いて作製することができる。例えば、図１（Ａ）における粘着シート１００の場合、基材フィルム上の片面のみに帯電防止層及び保護層をこの順で形成し、逆側の面に粘着剤層を設けることで作製することができる。
　また、当該基材フィルムを用いる場合、粘着剤層を設ける前に内側帯電防止層を形成し、その上に粘着剤層を設けることで、図１（Ｂ）における粘着シート２００を作製することができる。
　また、粘着シート２００は、両面に帯電防止層と保護層とを有する基材フィルムを用い、片側のみ保護層を除去して、当該除去面に粘着剤層を設けることでも作製することができる。
　さらに、両面に帯電防止層と保護層とを有する基材フィルムを用い、一方の保護層上に粘着剤層を設けることで、図１（Ｃ）における粘着シート３００を作製することができる。

　上述のように、本実施形態の粘着シートは、粘着剤層上に剥離可能な保護フィルムを有するものであってもよい。また、本実施形態の粘着シートは、本発明の効果を阻害しない限り各層の間に他の層を有するものであってもよいが、各層の密着性の観点から、図１（Ａ）～（Ｃ）に示される各粘着シートであって、各層が直接接するように積層された粘着シートであることが好ましい。

《電子部材の製造方法》
　本実施形態の粘着シートを使用した電子部材の製造方法は特に限定されないが、例えば下記の手順を含む製造方法が挙げられる。

（１）貼付工程
　貼付工程において、粘着シートを半導体ウエハ又はパッケージ基板等の電子部材と、リングフレームとに貼り付ける。半導体ウエハは、シリコンウエハ、ガリウムナイトライドウエハ、炭化ケイ素ウエハ或いはサファイアウエハなどの従来汎用のウエハであってよい。パッケージ基板は樹脂でチップを封止したパッケージ基板、ＬＥＤパッケージ基板、セラミック基板などの汎用の基板であってよい。

（２）ダイシング工程
　ダイシング工程において、シリコンウエハ等電子部材をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にする。

（３）光照射工程
　光照射工程において、基材フィルム側から光硬化型の粘着剤層に紫外線等の活性光線を照射する。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ブラックライトを用いることができる。また、紫外線に代えて電子線を用いてもよく、電子線の光源としてはα線、β線、γ線を用いることができる。
　光照射により粘着剤層は三次元網状化して硬化し、粘着剤層の粘着力が低下する。

（４）エキスパンド・ピックアップ工程
　エキスパンド・ピックアップ工程において、半導体チップ同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばし、チップ又は部品をニードルピン等で突き上げる。その後、チップ又は部品を真空コレット又はエアピンセット等で吸着し、粘着シートの粘着剤層から剥離してピックアップする。

　以下に実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。

《電子部材固定用粘着シートの製造》
　実施例、比較例における電子部材固定用粘着シートを以下の処方で製造した。
　具体的には、下記アクリル系ＵＶ粘着剤を溶媒（トルエン）で稀釈した溶液を剥離フィルム（製品名：Ｅ７００２（東洋紡株式会社製））に塗布し、乾燥炉で溶剤を乾燥させた後、両面に下記帯電防止層及び保護層がこの順で設けられた下記基材フィルムと張り合わせて実施例の電子部材固定用粘着シートを作製した。なお、比較例においては保護層が設けられていない基材フィルムを用いた。
　また、実施例、比較例における電子部材固定用粘着シートについて各測定をおこなった。

　表中の各層の処方及び測定方法は以下の通りである。

（粘着剤層）
・粘着剤層Ａ（乾燥膜厚１０μｍ）：アクリル系ＵＶ粘着剤Ａ（主成分　アクリル酸２エチルヘキシル（２―ＥＨＡ）、アクリル酸メチル（ＭＡ）、アクリル酸２－ヒドロキシエチル（２－ＨＥＡ）、アクリル酸（ＡＡ）、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソホロンジイソシアネート（ＩＰＤＩ）、トリメチロールプロパン（ＴＭＰ）、トルエンジイソシアネート（ＴＤＩ））
・粘着剤層Ｂ（乾燥膜厚１０μｍ）：アクリル系ＵＶ粘着剤Ｂ（主成分　ジメチルアクリルアミド（その他、メタクリル酸２－ヒドロキシエチル（２－ＨＥＭＡ）、アクリル酸エチル（ＥＡ）、アクリル酸ブチル（ＢＡ）、アクリル酸２エチルヘキシル（２―ＥＨＡ）、グリシジルメタクリラート（ＧＭＡ），ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート（ＰＥＴＡ）を含む）

（基材フィルム）
・基材Ａ（膜厚１５０μｍ）：アイオノマフィルム（製品名ハイミラン（登録商標）（三井・デュポンポリケミカル株式会社製））
・基材Ｂ（膜厚１５０μｍ）：ＰＯ系フィルム（ポリプロピレン（１０μｍ）／ポリエチレン（１３０μｍ）／ポリプロピレン（１０μｍ）の３層構造フィルム）

（保護層）
　内側及び外側保護層共に乾燥膜厚：１μｍ（グラビア塗工で作製）
・保護層Ａ：ポリエステル＋ＷＡＸ
・保護層Ｂ：溶剤系アクリル
・保護層Ｃ：水系アクリル
・保護層Ｄ：水系オレフィン
・保護層Ｅ：アクリル系重合体（ポリメタクリル酸メチル樹脂）

（帯電防止層）
　内側及び外側帯電防止層共に乾燥膜厚：１μｍ未満
・帯電防止層Ａ：
　カーボンナノチューブ（乾燥膜厚中の含有量：８～１０ｇ／ｍ²）：単層カーボンナノ
チューブ
　バインダー：ポリメタクリル酸メチル樹脂
・帯電防止層Ｂ：
　４級アンモニウム（帯電防止材）
　バインダー：ポリメタクリル酸メチル樹脂
・帯電防止層Ｃ
　ＰＥＤＯＴ：ポリ（３，４－エチレンジオキシチオフェン）

（表面抵抗値の測定）
　微少電流計（製品名：５４５１（株式会社エーディーシー製）、測定方法：二重リング法、印加電圧：１０Ｖ、測定環境：２３℃・湿度５０％）を用いて、各用粘着シートの粘着剤層表面及び外側保護層表面について、表面抵抗値を測定した。
　具体的には、電子部材固定用粘着シートの表面に電極（プローブ）を押し当て、印加電圧を１０Ｖとして、表面を流れてくる電流を検出した。この際、測定面を上側とし、電子部材固定用粘着シートの下側にガード電極を置くことによって、試料の厚み方向に回り込んだ電流をグランドに流し、純粋に測定面を流れる電流のみを測定した。結果を表に示す。

（内側保護層があることによる効果：粘着力の維持性）
　粘着シートの加熱促進試験（６０℃×１２日）後、粘着シートの粘着力（Ｘ₁〔単位：Ｎ／１０ｍｍ〕；ＪＩＳ　Ｚ　０２３７に準拠）を測定し、初期値（加熱促進試験前：Ｘ₀〔単位：Ｎ／１０ｍｍ〕）に対する変動（｜（Ｘ₀－Ｘ₁）÷Ｘ₀｜）×１００〔単位：％〕を評価した。結果を表に示す。
Ａ：０％以上５％未満
Ｂ：５％以上１０％未満
Ｃ：１０％以上

（外側保護層のプローブタック）
　外側保護層のプローブタックは、室温２３±２℃湿度５０±２％の室内にて、株式会社ユービーエム製のプローブタックテスターＴＡ５００を使用して測定した。測定条件は、押し付け時間を１秒、荷重４００ｇｆ／ｃｍ²、プローブの剥離速度は１０ｍｍ／秒とした。結果を表に示す。

（外側保護層があることによる効果：外側に位置する最表面層の欠落）
　粘着シートのテープ粘着剤面に対する他方の面側（外側）に対し、２ｋｇのローラーにて１往復させた後、ローラー表面を目視により観察した。帯電防止材又は保護層の脱落によってローラー表面が黒く変色したか否かに基づき、粘着シートの外側に位置する最表面層の欠落の程度を下記の基準に従って評価した。結果を表に示す。
Ａ：変色なし
Ｂ：ローラーが部分的に変色
Ｃ：ローラー全面が変色

（アンカー性）
　電子部材固定用粘着シートの粘着剤層に厚さ方向に切れ目を入れた。切れ目を入れた粘着剤層に強粘着テープを貼り合わせ、紫外線を照射（照射源：高圧水銀灯、照射量：２５０ｍＪ／ｃｍ²）して粘着剤層を硬化させた。
　その後、粘着剤層が切れ目から内側帯電防止層又は内側保護層との界面から剥がれるように、テンシロン万能材料試験機（株式会社オリエンテック製「ＲＴＣ－１２１０」）を用いて、シート表面と平行となる方向に荷重をかけ（引張速度３００ｍｍ／分、室温２３±２℃）、粘着剤層が完全に剥離した際の強度又は強粘着テープと粘着剤との間で剥離した際の強度を測定し、粘着剤層／内側保護層（又は内側帯電防止層若しくは基材フィルム）間のアンカー性を評価した。

　上述の評価の結果、実施例４及び５の電子部材固定用粘着シートの粘着剤層／内側保護層のアンカー性は、いずれも、内側保護層を有さない比較例のシートの粘着剤層／内側帯電防止層若しくは基材フィルム間のアンカー性と同等以上の評価となった。

　２０１９年１２月１３日に出願された日本国特許出願２０１９－２２５６８２号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
　また、明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

１００，２００，３００…粘着シート、２０…基材フィルム、３０…粘着剤層、４０…外側帯電防止層、４２…内側帯電防止層、５０…外側保護層、５２…内側保護層

Claims

　基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に形成された粘着剤層と、を有し、さらに前記基材フィルムの片面側又は両面側に帯電防止材を含む帯電防止層を有する電子部材固定用粘着シートであって、
　前記基材フィルムの他方の面側に、前記帯電防止層として外側帯電防止層と、外側保護層と、をこの順で有する電子部材固定用粘着シート。
　少なくとも一方の表面の表面抵抗値が１×１０⁷Ω／□以下である請求項１に記載の電子部材固定用粘着シート。
　前記外側帯電防止層に含まれる前記帯電防止材が、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくとも１種である請求項１又は２に記載の電子部材固定用粘着シート。
　さらに、前記基材フィルムと前記粘着剤層との間に、前記帯電防止層として内側帯電防止層を有する請求項１～請求項３のいずれか一項に記載の電子部材固定用粘着シート。
　前記内側帯電防止層に含まれる前記帯電防止材が、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくとも１種である請求項４に記載の電子部材固定用粘着シート。
　さらに、前記粘着剤層と前記内側帯電防止層との間に、内側保護層を有する請求項４又は５に記載の電子部材固定用粘着シート。
　前記基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも１種を含む請求項１～請求項６のいずれか一項に記載の電子部材固定用粘着シート。
　前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤を含む請求項１～請求項７のいずれか一項に記載の電子部材固定用粘着シート。
　前記粘着剤層が、紫外線硬化樹脂組成物を含む請求項１～請求項８のいずれか一項に記載の電子部材固定用粘着シート。