WO2021095583A1

WO2021095583A1 - アイマスク型の温熱具

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Publication number: WO2021095583A1
Application number: PCT/JP2020/041045
Authority: WO
Inventors: 嘉員松村
Original assignee: 小林製薬株式会社
Priority date: 2019-11-13
Filing date: 2020-11-02
Publication date: 2021-05-20
Also published as: TW202123909A; CN114007560A; JP7362437B2; JP2021074433A

Abstract

目（眼球）や目の周囲を適切な温度で温めるアイマスク型の温熱具を提供する。　温熱具１は、空気との接触により発熱する発熱材料３と、発熱材料３を収容しかつ装着時にユーザの顔の左右の目及び各目の周囲を覆う本体部２と、装着時にユーザの耳に掛ける一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒとを備える。本体部２は、装着時に目に当たる部分である目被覆部８Ｌ，８Ｒが目の周囲に当たる部分である周囲被覆部９と区画されており、目被覆部８Ｌ，８Ｒは、周囲被覆部９よりも発熱材料３の充填率が低い。

Description

アイマスク型の温熱具

　本発明は、ユーザの顔に装着して使用されるアイマスク型の温熱具に関し、特に空気との接触に起因して発熱材料から発生する熱によりに温熱を与えるアイマスク型の温熱具に関する。

　従来より、ユーザの顔に装着され、左右の目及び各目の周囲に温熱を与えることのできるアイマスク型の温熱具が知られている（例えば特許文献１を参照）。特許文献１の温熱具は、空気との接触により熱を発生する発熱材料と、発熱材料を収容する本体部とを備えており、本体部を顔に載せた状態で、発熱材料から熱が発生することにより、ユーザの左右の目及び各目の周囲に温熱を与えることができる。

特開２０１４－８２６９号公報

　ユーザの左右の目及び各目の周囲に温熱を与えることで、目の疲れを癒したり、目の周囲の筋肉の凝りをほぐしたり、リラックス効果を付与することができる。しかし、特許文献１の温熱具では、本体部の温度分布を見ると、本体部は局所的に温度が高くなるうえ、全体的な温度も高くなる傾向がある。この本体部の局所的に高温となる部分には目に当たる目被覆部が含まれており、目（眼球）を高温の熱で温めすぎると、熱により角膜の蛋白質の変性が生じるおそれがある。また、本体部の全体的な温度が高くなり過ぎると、温熱具を顔に長時間装着した際に低温やけどのリスクもある。そのため、温熱具は、目（眼球）やその周囲をそれぞれ適切な温度で温めるように設計する必要がある。

　本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、目（眼球）や目の周囲を適切な温度で温めるアイマスク型の温熱具を提供することを目的とする。

　本発明は、ユーザの顔に装着して使用されるアイマスク型の温熱具に関する。本発明の温熱具は、空気との接触により発熱する発熱材料と、前記発熱材料を収容しかつ装着時に目及び目の周囲を覆う本体部と、を備え、前記本体部は、装着時に目に当たる部分である目被覆部が目の周囲に当たる部分である周囲被覆部と区画されており、前記目被覆部は、前記周囲被覆部よりも前記発熱材料の充填率が低いことを特徴としている。

　本発明の温熱具においては、前記目被覆部は、前記発熱材料が収容されないように構成することができる。

　本発明の温熱具においては、装着時に耳に掛ける一対の耳掛け部をさらに備えるように構成することができる。

　本発明の温熱具では、本体部の目被覆部は、発熱材料の充填率が周囲被覆部よりも低いため、発熱材料による発熱が弱い又は発熱がない。また、本体部の目被覆部は周囲被覆部と区画されていて、周囲被覆部から目被覆部に向かう熱の伝導が抑制される。よって、本体部の目被覆部において温度が高くなるのが抑えられる。よって、温熱具の顔への装着時に目（眼球）を高温で温めず、適切な温度で温めることができる。

　加えて、本体部は、周囲被覆部の内側に発熱材料の充填率の低い目被覆部が区画されているので、本体部の最高温度を下げ、かつ本体部の局所的な高い温度上昇が抑えられる。さらに、低下させた最高温度を含む高温域の面積を増加させて温度分布の均一性が向上する。よって、温熱具の顔への装着時に左右の目の周囲を広く均一に適切な温度で温めることができる。

（Ａ）は本実施形態の温熱具の正面図であり、（Ｂ）は本実施形態の温熱具の背面図である。本実施形態の温熱具の斜視図である。本実施形態の温熱具において、一対の耳掛け部を展開した状態の背面図である。図３のＸ１－Ｘ１断面図である。本体部の背面図である。本実施形態の温熱具において、一対の耳掛け部を本体部の横方向外側に引っ張った際の本体部の背面図である。（Ａ）は本実施形態の温熱具の本体部と耳掛け部との関係を示す概略断面図であり、（Ｂ）は変形例の温熱具の本体部と耳掛け部との関係を示す概略断面図である。（Ａ）は変形例の温熱具の正面図であり、（Ｂ）は変形例の温熱具の背面図である。実施例及び比較例に係る本体部の温度分布を示す図である。参考例に係る本体部の温度分布を示す図である。

　以下、本発明に係るアイマスク型の温熱具（以下、単に「温熱具」という。）の実施形態について図面を参照しつつ説明する。温熱具は、ユーザの顔に装着して使用され、左右の目及び各目の周囲に温熱を与えることで、目の疲れを癒したり、目の周囲の筋肉の凝りをほぐしたり、リラックス効果を付与することができる。なお、目の周囲とは、顔の上下方向では、上まぶたから下まぶたまでの範囲、好ましくは眉毛から鼻までの範囲を指し、顔の横方向では、目の端から目と耳との間までの範囲を指す。

　図１～図５に示すように、本実施形態の温熱具１は、発熱材料３と、発熱材料３を収容した本体部２と、本体部２の左右の端部に設けられた一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒと、を備えている。温熱具１は、各耳掛け部４Ｌ，４Ｒを左右の耳の対応する側の耳に掛けることで、本体部２が左右の目及び各目の周囲を覆うようにして、顔に装着される。そして、温熱具１は、本体部２に収容された発熱材料３が発熱することで、本体部２と接触する左右の目及び各目の周囲に対して温熱を与える。温熱具１は、例えば使い捨てカイロと同様、発熱材料３に酸化反応に伴って生じる反応熱を熱源としたものを用いたものである。

　まず、発熱材料３は、空気との接触により発熱する粉状の材料が用いられる。この種の発熱材料３としては、例えば、被酸化性金属、活性炭、カーボンブラック、保水剤（例えば木粉、バーミキュライト、けい藻土、パーライト、シリカゲル、アルミナ、吸水性樹脂等）、金属塩（例えば食塩等）及び水をそれぞれ適宜の含有量含んでいる組成物を挙げることができる。被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる１種又は２種以上の粉末や繊維が挙げられる。この中でも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選ばれる１種又は２種以上が挙げられる。上述した組成物としては、従来から使い捨てカイロに用いられている公知の組成物を使用することができる。

　次に、本体部２は、温熱具１の顔への装着時に左右の目及び各目の周囲を覆う。本体部２は、扁平かつ平面視で横長に形成されており、左右の目及び各目の周囲を覆うに足るサイズに形成されている。本体部２は、平面視において、横方向に沿う上縁２０及び下縁２１と、縦方向に沿う左右の側縁２２，２３とを有しており、横方向の中央位置を縦方向に平行に延びる縦中心線２４において左右対称形状を呈している。

　なお、本開示において、「横方向」とは、本体部２において、温熱具１の顔への装着時に顔の左右方向（左右の耳を結ぶ方向）と平行となる方向を指し、「縦方向」とは、横方向と直交する方向であり、本体部２において、温熱具１の顔への装着時に顔の上下方向（おでこ、鼻、顎を結ぶ方向）と平行となる方向を指す。本実施形態では、本体部２の長手方向が横方向である。「内側」は、本体部２の横方向において縦中心線２４側を指し、「外側」は、本体部２の横方向において縦中心線２４とは反対側の左右の側縁２２，２３側を指す。「左右方向」は、ユーザが温熱具１を顔に装着して前に向いたときを基準に左右方向を定義する。これらの方向の定義は、温熱具１の使用態様を限定する趣旨ではない。

　上縁２０は、直線状又は凹凸のある曲線状を呈しているのに対して、下縁２１は、温熱具１の顔への装着時に目の下に位置するので、鼻の形状に沿うように横方向中央部が凹状に括れた形状を呈している。また、下縁２１は、凹状に括れた部分の下端から左右の端に向かって、横方向に対して斜め下向きに延びており、本体部２の下側の左右の角部２５，２６は下側に大きく膨らんでいる。これにより、本体部２の下側の左右の角部２５，２６は、温熱具１の顔への装着時に目の下の頬骨のあたりまでを覆う。本体部２の下側の左右の角部２５，２６は、本実施形態では丸みを帯びているが、必ずしも丸みを帯びている必要はない。左右の側縁２２，２３は、本実施形態では直線状を呈しているが、外側に向けて凸状に湾曲した曲線状を呈していてもよい。

　本体部２は、袋状に形成されており、内部に発熱材料３を密封可能に収容する収容空間を有している。本体部２は、表裏面をなす同形状の２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂを備え、２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂの外周縁に沿った部分を全周にわたって接合することで、袋状に形成されている。２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂの接合は、本実施形態では熱溶着（ヒートシール）を用いているが、熱溶着以外に、例えば公知の接着剤を用いた圧着、超音波溶着などの公知の手段を用いてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。

　２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂの外周縁を接合した第１接合部２８の幅寸法は、特に限定されるものではなく、適切な幅寸法とすればよい。また、第１接合部２８の幅寸法は、本体部２の外周縁の全周にわたって略同じであってもよいし、本実施形態のように異なっていてもよい。本実施形態では、第１接合部２８は、本体部２の上縁２０及び下縁２１に沿う横縁部分の幅寸法よりも、本体部２の左右の側縁２２，２３に沿う縦縁部分の幅寸法の方が広くなるよう形成されている。また、第１接合部２８は、本体部２の左右の側縁２２，２３に沿う縦縁部分の幅寸法について上側及び下側に向かって広くなるよう形成されており、さらに、本体部２の下側の左右の角部２５，２６に当たる部分で幅寸法が最も広くなるよう形成されている。

　本体部２を構成する２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂは、温熱具１の顔への装着時に顔の表面形状に沿うように可撓性を有している。２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂの素材は、特に限定されるものではないが、強度や発熱材料３の発熱に対する耐久性などを考慮すると樹脂フィルムを用いることが好ましい。

　上述した樹脂フィルムに用いられる樹脂は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン－酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどを例示することができる。その中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレートを好ましく例示することができる。これらの樹脂は単独で用いられてもよいし、２種以上を組み合わせて用いられてもよい。

　また、２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂは、温熱具１の肌触りを良好にする観点から、樹脂フィルムの発熱材料３と向かい合う側とは反対側に通気性を有する織布又は不織布を積層させた積層体により構成することが好ましい。

　上述した織布又は不織布の繊維素材としては、例えば、コットン、麻、絹、紙などの天然繊維；レーヨン、アセテートなどの半合成繊維；ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの合成繊維；これらの繊維の混合繊維などを例示することができる。その中でも、肌触りを良好とする観点から、繊維素材としてはナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンを好ましく例示することができ、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートをより好ましく例示することができる。これらの繊維素材は単独で用いられてもよいし、２種以上を組み合わせて用いられてもよい。織布又は不織布の目付は、発熱材料３の本体部２の外側への漏出を防止できる程度の目付であれば特に制限されないが、例えば２０ｇ／ｍ^２以上９０ｇ／ｍ^２以下程度であることが好ましい。

　２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂのうち、温熱具１の顔への装着時に顔と向かい合う側とは反対側の第１シート材２７Ａは、通気性を有している。第１シート材２７Ａを構成する樹脂フィルムは、通気性を確保するために、例えば多孔質の樹脂フィルム、又は針で複数の穿孔（不図示）が形成された樹脂フィルムが用いられ、複数の小孔を通して空気が本体部２の内外を連通する。複数の小孔は、樹脂フィルムの全域に形成されていてもよいし、一部の領域に形成されていてもよい。各小孔の大きさは、発熱材料３が小孔を通って本体部２の外側に漏出するのを抑制できる大きさであれは特に制限されず、一例として、０．１μｍ以上３０μｍ以下が例示される。各小孔の形状及び数も特に制限されず、各小孔の大きさ、形状、数は、本体部２の通気度に応じた使用時の発熱材料３の発熱温度を考慮して、適宜設定される。

　なお、温熱具１は、左右の目及び各目の周囲を温める目的で使用する場合には、その発熱温度が２０℃環境下で３０℃以上７０℃以下、好ましくは３５℃以上６０℃以下（測温方法は、日本工業規格Ｓ４１００に準拠）に設定されるように、設計することが好ましい。

　２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂのうち、温熱具１の顔への装着時に顔と向かい合う側の第２シート材２７Ｂは、第１シート材２７Ａと同程度の通気度の通気性を有していてもよいし、第１シート材２７Ａよりも通気に対する抵抗が大きい難通気性を有していてもよいし、空気を実質的に通さない非通気性であってもよい。第２シート材２７Ｂを構成する樹脂フィルムは、非通気性である場合には、多孔質フィルムでもなく、また穿孔（不図示）も形成されていない非通気性の樹脂フィルムが用いられる。

　２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂの厚みは、特に制限されるものではないが、０．１ｍｍ以上２．０ｍｍ以下程度であることが好ましい。これにより、本体部２を柔らかくかつ顔にフィットしやすくできる一方で、本体部２に一定の強度を保持することができる。

　なお、２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂは、必ずしも樹脂フィルムと織布又は不織布との積層体で構成する必要はなく、単独の樹脂フィルムで構成されていてもよいし、単独の織布又は不織布で構成されていてもよい。

　本体部２は、第１接合部２８の他、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒにおいても２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂが接合されている。一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは、本体部２において、温熱具１の顔への装着時に左右の目に対応する位置に配置されている。一方の第２接合部２９Ｌは温熱具１の顔への装着時に左目に当たってこれを覆い、他方の第２接合部２９Ｒは温熱具１の顔への装着時に右目に当たってこれを覆い、それぞれが本体部２の中で左右の目被覆部８Ｌ，８Ｒに相当している。各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒで構成されていることから、本体部２の厚み方向に非貫通である。

　各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、発熱材料３が収容されておらず、発熱材料３の存在しない部分となる。また、各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒにより、本体部２の中で目の周囲を覆う部分（周囲被覆部）９と区画されており、隣接する周囲被覆部９に収容された発熱材料３が各目被覆部８Ｌ，８Ｒに移動することが規制されている。一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは、外形が横長の長円形状（楕円形状を含む）を呈しているが、対応する目を覆うことができればその形状は特に限定されるものではなく、例えば横長の長方形状や菱形形状などを呈していてもよい。

　なお、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは、本実施形態では、各目被覆部８Ｌ，８Ｒの全域で本体部２を構成する２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂを接合することで形成している。ただし、これに限らず、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは、各目被覆部８Ｌ，８Ｒを囲む枠状に本体部２を構成する２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂを接合することで形成してもよい。この場合には、各目被覆部８Ｌ，８Ｒの外周縁が一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒをなし、一対の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒに囲まれた各目被覆部８Ｌ，８は、本体部２の厚み方向に非貫通であり、２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂが接合されていないが、発熱材料３は収容されず、発熱材料３の存在しない部分である。

　本体部２は、各目被覆部８Ｌ，８Ｒに発熱材料３が存在しないため、各目被覆部８Ｌ，８Ｒでは発熱材料３の発熱がなく、温熱具１の顔への装着時に左右の目を発熱材料３からの熱で直接温めない。また、本体部２は、各目被覆部８Ｌ，８Ｒがその周りの周囲被覆部９と区画されているため、周囲被覆部９から各目被覆部８Ｌ，８Ｒに向かう熱の伝導が抑制される。これによりに、本体部２は、各目被覆部８Ｌ，８Ｒで温度が高くなるのが抑えられており、温熱具１の顔への装着時に左右の目（眼球）を高い温度で温めず、適切な温度で温めるように設計されている。

　加えて、本体部２は、周囲被覆部の内側に発熱材料３が存在しない各目被覆部８Ｌ，８Ｒが区画されているので、最高温度が下がり、かつ局所的に温度が高くなるのが抑えられる。さらに、低下させた最高温度を含む高温域の面積を増加させて温度分布の均一性が向上する。これにより、本体部２は、温熱具１の顔への装着時に左右の目の周囲を広く均一に適切な温度で温めるように設計されている。

　本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、必ずしも発熱材料３を収容していない必要はなく、周囲被覆部９よりも発熱材料３の充填率が低ければ、発熱材料３を収容していてもよい。各目被覆部８Ｌ，８Ｒの発熱材料３の充填率が低いと、各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、発熱材料による発熱が弱くなるため目被覆部８Ｌ，８Ｒの温度が高くなるのを抑えられる。よって、温熱具１の顔への装着時に左右の目（眼球）を高温で温めるのを抑えて、適切な温度で温めることができる。また、各目被覆部８Ｌ，８Ｒに発熱材料３が存在しない場合と同様、本体部２は、最高温度が下がり、かつ局所的に温度が高くなるのが抑えられるうえ、低下させた最高温度を含む高温域の面積を増加させて温度分布の均一性が向上する。よって、温熱具１の顔への装着時に左右の目の周囲を広く均一に適切な温度で温めることができる。

　なお、各目被覆部８Ｌ，８Ｒに発熱材料３を収容する場合、各目被覆部８Ｌ，８Ｒの発熱材料３の充填率は、各目被覆部８Ｌ，８Ｒの温度が５０℃以下となる充填率にすることが好ましく、４２℃以下となる充填率にすることがより好ましい。例えば、各目被覆部８Ｌ，８Ｒの発熱材料３の充填率は、周囲被覆部９の発熱材料３の充填率の３０％以下とすることが好ましく、１０％以下とすることがより好ましい。なお、左右の目（眼球）を高い温度で温めないとの観点からは、本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒに発熱材料３を収容しないことが好ましい。

　本体部２は、温熱具１の顔への装着時に左右の目（眼球）を高温で温めないとの観点からは、各目被覆部８Ｌ，８Ｒを貫通孔とすることも考えられる。しかし、各目被覆部８Ｌ，８Ｒを貫通孔とすると、温熱具１を就寝時のアイマスクとして使用した場合に、本体部２により外部の光を遮ることができないため、アイマスクの効果が失われる。さらに、温熱具１の顔への装着時に左右の目が外気に触れた状態に晒され、左右の目に温熱を与えることができないうえ、温熱が与えられる各目の周囲との温度差が大きくなる。よって、不快さを感じるおそれがある。加えて、温熱具１の顔への装着時に、本体部２の周囲被覆部９の発熱材料３から発生する熱が貫通孔を通って外気に逃げるため、左右の目の周囲にも効果的に温熱を与えることができないおそれがある。よって、本実施形態の温熱具１のように、本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒが左右の目を覆うように構成されていることで、各目被覆部８Ｌ，８Ｒが貫通孔で左右の目を覆わない場合と比べて、アイマスクの効果を奏するうえ、温熱具１の顔への装着時に左右の目に程よい温熱を与えて不快さをなくすことができ、かつ、左右の目の周囲に与えられる熱の温度が低下するのを抑えられる点で効果を奏する。

　次に、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、温熱具１の顔への装着時に左右の耳に掛けられる。一対の耳掛部４Ｌ，４Ｒは、一方の耳掛け部４Ｌが本体部２の左側の端部に設けられ、他方の耳掛け部４Ｒが本体部２の右側の端部に設けられている。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、１枚のシート材からなり、伸縮性を有している。この伸縮性としては、本体部２の横方向外側、つまりは、温熱具１を装着する際に本体部２から離間して耳に向かう方向の伸長度が、本体部２の縦方向、つまりは、前記本体部２から離間する方向と直交する方向の伸長度よりも高いことが好ましい。一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒが伸縮性を有していると、温熱具１の顔への装着の際に一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを耳に掛けるのを容易にすることができる。なお、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは必ずしも伸縮性を有している必要はなく、伸長するが収縮の弱い又は収縮しない性質であってもよいし、伸長も収縮もしない性質であってもよい。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの素材は、特に限定されるものではないが、織布、不織布、樹脂フィルム等を挙げることができ、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒはこれらを単独で用いてもよいし、これらのうちの複数を組み合わせた積層体を用いてもよい。織布又は不織布の繊維素材としては、例えば、コットン、麻、絹、紙などの天然繊維；レーヨン、アセテートなどの半合成繊維；ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートなどの合成繊維；これらの繊維の混合繊維などを例示することができる。これらの繊維素材は単独で用いられてもよいし、２種以上を組み合わせて用いられてもよい。樹脂フィルムに用いられる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン－酢酸ビニル共重合体などを例示することができる。これらの樹脂は単独で用いられてもよいし、２種以上を組み合わせて用いられてもよい。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、図１（Ｂ）に示す温熱具１を顔へ装着する前の閉じた状態では、本体部２上に重ねられている。一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、それぞれ本体部２の縦中心線２４を境界とした左半部及び右半部と同じ外形を呈しており、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの上縁及び下縁は、本体部２の上縁２０及び下縁２１上に位置（重複）し、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの一方側の側縁は、本体部２の左右の側縁２２，２３上に位置（重複）し、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの他方側の側縁は、本体部２の縦中心線２４上に位置（重複）する。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、本体部２の横方向の対応する端部にその一部がそれぞれ接合されることにより、本体部２の横方向の各端部にそれぞれ取り付けられる。一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、図１（Ｂ）に示す閉じた状態においてそれぞれ外側の端部（基端部）が、本体部２の温熱具１の顔への装着時に顔と向かい合う側の面（第２シート材２７Ｂの表面）に接合されている。本体部２と一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒとの接合は、本実施形態では熱溶着（ヒートシール）を用いているが、熱溶着以外に、例えば公知の接着剤を用いた圧着、超音波溶着などの公知の手段を用いてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、図１（Ｂ）に示す本体部２上に重ねられた状態から、図３、図５及び図７（Ａ）に示すように、本体部２との各接合部５で折り返して展開することで、耳に取り付け可能な状態となる。

　各接合部５は、図１（Ｂ）及び図５に示すように、本体部２の左右の端部において、所定の横幅をもって本体部２の縦方向に沿って延びている。本実施形態では、各接合部５は、本体部２の左右の側縁２２，２３から所定の横幅をもって本体部２の縦方向に沿って延びている。そのため、各接合部５の本体部２の横方向における外側の側縁５０は、本体部２の左右の側縁２２，２３上に位置（重複）している。

　各接合部５の本体部２の横方向における内側の側縁５１は、本体部２の縦方向に平行に延びているが、中途で内側に曲がって本体部２の下縁２１に達している。具体的に本実施形態では、各接合部５の内側の側縁５１は、本体部２の上縁２０から本体部２の縦方向に平行に下側へ延びた後、内側に向かって直角（本体部２の横方向に平行）に折れ曲がって、更に下側に延びている。これにより、各接合部５は、所定の横幅をもって本体部２の縦方向に平行に延びる主部６と、主部６の下端で内側に一続きに曲がって内側に突き出る突出部７とを含んでいる。各接合部５の主部６は、本体部２と各耳掛け部４Ｌ，４Ｒとの接合強度を確保する観点から、横幅が３ｍｍ以上であることが好ましく、５ｍｍ以上であることがより好ましい。

　各接合部５は、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの閉じた状態からの展開方向を決める。本実施形態では、各接合部５は、上端側よりも下端側が内側に突き出ている。そのため、図３及び図５に示すように、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、図１（Ｂ）に示す閉じた状態から各接合部５で折り返して展開させた際に、本体部２の横方向に対して斜め下向きに延びる形で展開する。耳は目よりも位置が若干低いため、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒが斜め下向きに展開することにより、温熱具１をユーザの顔に違和感なく装着することができる。

　一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒには、図１（Ｂ）及び図３に示すように、開口４０が形成されている。開口４０は、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒをユーザの耳に掛ける際に耳を入れる部分である。開口４０は、横長に形成されており、これにより、開口４０に耳を容易に挿入できる。また、開口４０は、基端側から先端側に向かって、つまりは、温熱具１を装着する際に本体部２から離間して耳に向かう方向に向かって上下幅（長手方向と直交する方向の長さ）が次第に広がるように形成されている。これにより、開口４０に耳を容易に挿入できるうえ、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒの耳に対するフィット性を向上することができる。なお、開口４０の形状や大きさは、開口４０に耳を挿入可能であれば、特に限定されるものではない。

次に、上述した温熱具１の使用方法について説明する。温熱具１は、発熱材料３が空気の存在下で発熱するため、使用前においては空気との接触を防ぐ必要があり、空気を通さない気密性を有する包装袋（不図示）に収納されている。使用に際し、包装袋を開封して温熱具１を取り出す。そして、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを閉じた状態から展開し、本体部２の各第２接合部２９Ｌ，２９Ｒ（目被覆部）がユーザの左右の目に当たるように、本体部２をユーザの顔に接触させ、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを外側に引っ張りながら耳に掛ける。これにより、発熱材料３から発せられる熱により、左右の目及び各目の周囲に温熱が与えられる。

　本実施形態の温熱具１によれば、顔へ装着した際、本体部２の下縁２１の横方向中央部が凹状に湾曲して大きく括れているため、本体部２は横方向中央位置の縦中心線２４で容易に二つに折れて、顔の形状に沿って変形する。よって、本体部２がユーザの顔にフィット性よく密着する。

　加えて、本実施形態の温熱具１によれば、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、本体部２との接合部５が上端側よりも下端側が内側に突き出た略Ｌ字型を呈している。そのため、図６に示すように、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを耳に掛けるために本体部２に対して横方向外側に引っ張った際に、本体部２の左右の端部の下側の領域（本体部２の下側の左右の角部２５，２６あたり）が強く引っ張られ、本体部２の縦方向に湾曲してユーザの顔側（図６では図の手前側）に曲がるように変形する。本体部２の下側の左右の角部２５，２６は、温熱具１の顔への装着時に目の下の頬骨のあたりに当たるが、頬骨が出っ張っていても、その表面形状に沿って曲がることで、頬骨のあたりに覆い被さり、顔から浮き上がることなく顔にフィットする。よって、本体部２をユーザの顔にさらにフィット性よく密着させることができ、発熱材料３から発生した熱が外部に逃げることを抑制することができる。

加えて、本実施形態の温熱具１によれば、本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒは、発熱材料３の充填率が周囲被覆部９よりも低い、好ましくは発熱材料３を収容しないため、発熱材料３による発熱が弱い又は発熱がない。また、本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒは周囲被覆部９と区画されていて、周囲被覆部９から各目被覆部８Ｌ，８Ｒに向かう熱の伝導が抑制される。よって、本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒにおいて温度が高くなるのが抑えられる。よって、温熱具１の顔への装着時に左右の目（眼球）を高温で温めすぎず、適切な温度で温めることができる。

　加えて、本実施形態の温熱具１によれば、本体部２は、周囲被覆部９の内側に発熱材料３の充填率の低い各目被覆部８Ｌ，８Ｒが区画されているので、本体部２の最高温度を下げ、かつ本体部２の局所的な高い温度上昇を抑制することができる。さらに、低下させた最高温度を含む高温域の面積を増加させて温度分布の均一性を向上することができる。よって、温熱具１の顔への装着時に左右の目の周囲を広く均一に適切な温度で温めることができる。

　加えて、本実施形態の温熱具１によれば、顔への装着時に左右の目が本体部２の各目被覆部８Ｌ，８Ｒで覆われるので、就寝時のアイマスクとして使用しても十分に効果を発揮することができるうえ、顔への装着時に左右の目が外気に触れた状態に晒されないので、不快さを感じることも少ない。さらに、温熱具１の顔への装着時に、本体部２の周囲被覆部９の発熱材料３から発生する熱が外気に逃げるのを抑制できるため、左右の目の周囲に効果的に温熱を与えることができる。

　加えて、本実施形態の温熱具１によれば、発熱材料３が空気との接触により発熱するものであるため、例えばあずきなどの電子レンジなどでマイクロ波の照射を受けることで発熱する材料を用いた温熱具と比べて、容易に使用することができ、さらに長時間発熱を持続することができる。このように、本実施形態の温熱具１は、空気との接触により発熱する発熱材料３を用いているため、長時間にわたり温熱効果を目（眼球）に与えるため、その分、目（眼球）への影響も強くなるが、目（眼球）を高温で温めすぎず、適切な温度で温めるので、長時間にわたり温熱効果を目（眼球）に与えても、目（眼球）への悪影響を抑制することができる。

　加えて、本実施形態の温熱具１によれば、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを備えているので、顔への装着時に本体部２が顔の装着部位から位置ずれすることを防止することができ、ユーザが立っている状態、座っている状態、寝ている状態でも、本体部２を顔の装着部位にしっかりフィットさせることができる。よって、左右の目及び各目の周囲に温熱効果を効率的に与えることができる。例えば発熱材料にあずきなどを用いた温熱具では、あずきは重量が重いので、あずきの重さで本体部を顔の装着部位にしっかりフィットさせることができるが、本実施形態の発熱材料３、例えば鉄粉を主成分とする発熱材料３は重量が軽く、発熱材料３の重さで本体部２を顔の装着部位にしっかりフィットさせることができない。そのため、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを備えていることで、ユーザが動いても本体部２が顔の装着部位から位置ずれすることがなく、特に就寝時に装着した場合にユーザが寝返りしても本体部２を顔の装着部位から外れることなくしっかりフィットさせることができる。

　以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。

　一変形例として、上記実施形態では、各接合部５の形状は、上端側よりも下端側が内側に突き出た略Ｌ字型を呈しているが、これに限定されるものではなく、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを本体部２に接合できれば、種々の形状とすることができる。また、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、展開した状態で必ずしも本体部２の横方向に対して斜め下向きに延びる形で展開する必要はなく、本体部２の横方向に平行に延びる形で展開してもよい。

　他の変形例として、上記実施形態においては、図３、図５及び図７（Ａ）に示すように、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒは、各接合部５で折り返して展開することで、耳に取り付け可能な状態となるが、図７（Ｂ）に示すように、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを、通常状態で本体部２の横方向に展開する形で、その端部を本体部２の左右の端部に接合してもよい。

　他の変形例として、上記実施形態においては、図１に示すように、左右の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは別れているが、左右の第２接合部２９Ｌ，２９Ｒは本体部２の左右方向で繋がっていてもよい。

　他の変形例として、上記実施形態においては、図１に示すように、本体部２において発熱材料３を収容する収容領域が左右の目被覆部２９Ｌ，２９Ｒの間で繋がっているが、図８に示すように、左右の目被覆部２９Ｌ，２９Ｒの間に縦中心線２４に沿って本体部２の縦方向に平行に延びる第３接合部３０を設けてもよい。第３接合部３０は、第１接合部２８及び第２接合部２９Ｌ，２９Ｒと同様、本体部２を構成する２枚のシート材２７Ａ，２７Ｂを、熱溶着（ヒートシール）、公知の接着剤を用いた圧着、超音波溶着などの公知の手段、又はこれらの組み合わせにより接合した部分である。

　他の変形例として、上記実施形態においては、温熱具１は一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを備えているが、一対の耳掛け部４Ｌ，４Ｒを必ずしも備えている必要はない。

　以下、実施例を挙げて本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。

　実施例として、本体部の各目被覆部において２枚のシート材をヒートシールして周囲被覆部と区画するとともに各目被覆部に発熱材料を収容しない温熱具を製造した。比較例１として、本体部の各目被覆部において２枚のシート材を接合せずに各目被覆部を周囲被覆部と一続きにして各目被覆部に発熱材料を収容した温熱具を製造した。比較例２として、本体部の各目被覆部を貫通孔にした温熱具を製造した。各例の温熱具は、図１（Ａ）に示すように、本体部を扁平かつ平面視で横長に形成し、本体部の横幅を２０５ｍｍ、縦幅を１１０ｍｍとした。各目被覆部を平面視で横長の略楕円形状に形成し、各目被覆部の横幅を３０ｍｍ、縦幅を１５ｍｍとした。第１接合部の幅寸法は、最も広い箇所で３０ｍｍ、最も狭い箇所で７ｍｍとした。実施例及び各比較例１，２において、発熱材料及び本体部の素材は全て共通したものを使用した。本体部は、ポリエチレンテレフタレート不織布とポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとを積層させた２枚のシート材で形成した。発熱材料は、鉄粉５５％、活性炭１１％、バーミキュライト２％、吸水性樹脂３％、食塩１．５％及び水２７．５％を含み、全ての例で２０ｇの発熱材料を本体部に収容した。

　実施例及び各比較例１，２について、温度２０℃の室内で、サーモグラフィーを用いて本体部の発熱時の温度を撮影して温度分布を比較した結果を図９に示す。また、実施例及び各比較例１，２について、本体部の最高温度と平均温度を算出した。なお、実施例及び比較例２については、最高温度及び平均温度は、本体部のうち、各目被覆部を除いた周囲被覆部における温度である。その結果を表１に示す。

　図９を参照すると、比較例１では本体部の各目被覆部は白色で濃くはっきりと表されており、かなり温度が高いのに対して、実施例では本体部の各目被覆部は黄色ないしは黄緑色で表されており、温度が低いことが分かる。また、本体部の周囲被覆部について、比較例１では各目被覆部の近傍部位は白色で濃くはっきりと表されていて、各目被覆部から離れた部位は赤色で表されており、局所的に温度上昇しているのに対して、実施例ではほぼ均一に赤色で表されており、局所的に温度上昇することなく均一に温度分布していることが分かる。表１を参照しても、最高温度及び平均温度ともに実施例よりも比較例１のほうが高いことが分かる。このように、実施例では、比較例１に比べて、本体部の各目被覆部について高温になることなく程よい温度にすることができることが確認できる。さらに、実施例では、比較例１に比べて、本体部の最高温度を下げて局所的な高い温度上昇を抑えることができるうえ、低下させた最高温度を含む高温域の面積が増加することで温度分布の均一性を高められることが確認できる。

　一方、図９を参照すると、比較例２では本体部の各目被覆部は緑色で表されており、実施例よりも温度が低下していることが分かる。また、本体部の周囲被覆部について、比較例２では実施例と同様に本体部の最高温度を下げて局所的な高い温度上昇を抑えることができているものの、実施例よりも全体的に温度が低く、また温度分布の均一性も劣っていることが分かる。表１を参照しても、最高温度及び平均温度ともに実施例よりも比較例２のほうが少ないことが分かり、さらに目被覆部及び周囲被覆部の温度差も実施例のほうが小さいことが分かる。このように、実施例では、比較例２に比べて、本体部の各目被覆部の温度を高くして左右の目を適切に温めることができるうえ、各目被覆部と周囲被覆部との温度差を小さくして装着時の不快さを少なくできることが確認できる。さらに、実施例では、比較例２に比べて、本体部の周囲被覆部において最高温度が高く、最高温度を含む高温域の面積が均一に広がっていることで、左右の目の周囲に効果的に温熱を与えられることが確認できる。

　なお、参考例として、本体部に、上述した実施例等で用いた空気との接触により発熱する発熱材料の代わりに、電子レンジ等でマイクロ波の照射を受けることで発熱するあずきを収容した温熱具を製造し、温度２０℃の室内で、サーモグラフィーを用いて本体部の発熱時の温度を撮影した。参考例１は、本体部の各目被覆部にあずきを収容しない温熱具であり、参考例２は、本体部の各目被覆部が周囲被覆部と一続きであって各目被覆部に発熱材料を収容した温熱具である。各参考例１，２の温度分布を比較した結果を図１０に示す。

　図１０を参照すると、参考例１においては比較例１のように、本体部の各目被覆部の周りの周囲被覆部において局所的に温度上昇しているということは確認できなかった。また、参考例２においても実施例のように、本体部の各目被覆部の周りの周囲被覆部において高温域の面積が増加し、温度分布の均一性が高められるということは確認できなかった。

　参考例１，２に基づくと、あずきを用いた温熱具は、本発明の発熱材料を用いた温熱具とは異なり、電子レンジ等でマイクロ波の照射を受けることであずき内の水分が熱されることで発熱するため、本体部の温度分布は、本体部内でのあずきの偏りに依存し、本体部にあずきが均一に収容されていれば温度分布も均一になり、局所的に温度上昇することはない。これに対して、空気との接触により発熱する発熱材料は、本体部に均一に収容されていても、比較例１のように本体部の周囲被覆部において局所的に温度上昇する。このように、本体部の周囲被覆部において局所的に温度上昇し、これにより本体部の温度分布にムラができるとの課題は、本発明のように空気との接触により発熱する発熱材料を用いた温熱具に特有の課題であり、あずきを用いた温熱具では何ら関係のない課題であり、よって、本体部の目被覆部の発熱材料の充填率を周囲被覆部よりも低くすることで、本体部での局所的な温度上昇を抑制し、かつ高温域の面積を増加させて温度分布の均一性を高めるとの効果は、あずきを用いた温熱具から予測することが到底できない異質な効果である。

　１　　温熱具
　２　　本体部
　３　　発熱材料
　４Ｌ　耳掛け部
　４Ｒ　耳掛け部
　５　　接合部
　８Ｌ　目被覆部
　８Ｒ　目被覆部
　９　　周囲被覆部

Claims

　ユーザの顔に装着して使用されるアイマスク型の温熱具であって、
　空気との接触により発熱する発熱材料と、前記発熱材料を収容しかつ装着時に左右の目及び各目の周囲を覆う本体部と、を備え、
　前記本体部は、装着時に目に当たる部分である目被覆部が目の周囲に当たる部分である周囲被覆部と区画されており、
　前記目被覆部は、前記周囲被覆部よりも前記発熱材料の充填率が低い、温熱具。
　前記目被覆部は、前記発熱材料が収容されていない、請求項１に記載の温熱具。
　装着時に耳に掛ける一対の耳掛け部をさらに備える、請求項１又は２に記載の温熱具。