以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1及び図2は、本実施形態の温熱具1を示している。温熱具1は、着用者の顔の一部(目の下の領域)を被覆可能な覆い部2と、覆い部2の肌側の面に設けられた袋状の収容体3と、収容体3に収容される発熱体4とを含む。
覆い部2は、本実施形態では、平面視で長方形状を呈している。覆い部2は、着用者の顔の目の下を横に延びる上側縁20と、下顎(又は顎下)を横に延びる下側縁21と、上側縁20及び下側縁21を接続する左右の側縁22,23とを有する。覆い部2のサイズとしては、特に限定されるものではなく、左右の側縁22,23が頬を縦断して顔の鼻、口、下顎、頬の一部を覆うサイズであれば、例えば横方向の長さは120mm以上240mm以下とすることができ、縦方向の長さは90mm以上190mm以下とすることができる。ただし、着用者の顔を発熱体4で広範囲に温めるためには、図4に示すように、覆い部2は左右の側縁22,23が頬よりも耳側に位置してより耳の近くまでを覆えるように、少なくも横方向の長さはより大きいことが好ましく、例えば横方向の長さは170mm以上240mm以下とすることが好ましく、縦方向の長さは120mm以上190mm以下とすることが好ましい。
また、本実施形態の覆い部2は、未使用時に平坦状をなす1枚のシート体により構成されている。つまり、2枚のシート体の側縁同士を熱融着などで接合し、未使用時には横方向中央に縦方向に延びる折り畳み部により2枚のシート体が折り重ねられていて、2枚のシート体を展開しても平坦状とはならず、顔への装着時に鼻の下(鼻孔)及び口との間に大きな空間を形成する立体タイプの覆い部とは構造が異なるものである。本実施形態の覆い部2は、顔への装着時に、立体タイプの覆い部よりも顔の表面により密着する。
覆い部2は、単層構造又は2層以上の積層構造とすることができ、各層は、織布や不織布などの通気性を有するシート材を用いて構成することができる。その中でも、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法又はスパンレース法による不織布を好ましく用いることができ、さらに好ましくは、肌触りと保形性の観点からスパンボンド法による不織布を、花粉・ウイルスなどのカット性能の観点からメルトブロー法による不織布を用いることができる。以上の点を考慮して、好適な覆い部2の層構造として、例えば、SMS層(スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドの3層構造)を挙げることができる。なお、その他にも、S層(スパンボンドの単層)又はSS層(スパンボンド−スパンボンドの2層構造)を好ましく挙げることができる。覆い部2を積層構造とする場合には、各層のシート材の外周縁を所定の幅で、例えば縫製、超音波溶着、熱融着などの公知の方法により接合することで覆い部2を形成することができる。
覆い部2の各層を構成する織布及び不織布の繊維素材としては、公知のものを用いることができ、例えば紙、コットンなどの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維を用いることができる。その中でも、生産性の観点からポリプロピレン・ポリエチレンを好ましく用いることができ、保形性の観点からポリプロピレンを用いることができ、肌触りの観点からナイロンを用いることができる。
覆い部2は、縦方向に伸長可能な構造を有する。例えば覆い部2には、横方向に延びる少なくとも2つの折り目によって形成されるプリーツ(襞)5が少なくとも1つ設けられている。このプリーツ5の拡開により、覆い部2は縦方向に伸長可能であり、覆い部2を着用者の顔の大きさに対応して自由にサイズ調整することができる。また、プリーツ5の拡開により、覆い部2は縦方向において外向きに凸状をなすように変形して立体感を有するようになり、顔の鼻の下(鼻孔)あたりに空間を形成することができる。
覆い部2の左右の側縁22,23には、覆い部2を着用者の顔に保持するための保持手段として、耳掛けバンド6が取り付けられている。耳掛けバンド6は、例えば縫製、超音波溶着、熱融着などの公知の方法により覆い部2に取り付けることができる。耳掛けバンド6の素材は特に限定されないが、例えばポリエステルなどの伸縮性のある素材であることが好ましい。なお、覆い部2の保持手段としては、耳掛けバンド6以外の他の種々の手段を用いてもよい。また、覆い部2の上側縁20よりも内側位置には、例えばポリエチレンなどのプラスチック樹脂や生分解性樹脂などからなる線状のノーズピース7が設けられている。ノーズピース7により、着用者の鼻と覆い部2との間に隙間が生じるのが防止されるので、覆い部2を顔にフィットさせることができる。ノーズピース7は、例えば覆い部2に内蔵し、その上下位置で覆い部2を構成する各層のシート材を例えば超音波溶着などで接合することで、所定位置に固定することができる。
覆い部2には、下側の左右の隅の部分に、左右の側縁22,23からそれぞれ下側縁21に延びるようにして、一対の屈曲用ライン8が設けられている。この屈曲用ライン8は、該屈曲用ライン8に沿って覆い部2の折り曲げを容易にするためのものであり、覆い部2の各層のシート材を、例えば縫製、超音波溶着、熱融着などの公知の方法により接合することで覆い部2に形成することができる。なお、覆い部2の下側の左右の隅は、角張っていてもよいし丸みを帯びていてもよい。
覆い部2の下側の左右の隅の部分には、それぞれ耳掛けバンド6の一端部が取り付けられており、耳掛けバンド6の一端部は、覆い部2の左側縁22又は右側縁23と、覆い部2の下側縁21と、屈曲用ライン8とで囲まれた領域T内に存在している。耳掛けバンド6が着用者の耳に掛けられると、覆い部2は顔の表面形状に沿うように、横方向において外向きに凸状をなして湾曲するように変形する。このとき、覆い部2の下側の左右の隅の部分は耳掛けバンド6の一端部が取り付けられていることで内向きかつ耳の方向の斜め上向きに引っ張られるが、覆い部2に当該隅を囲むようにして屈曲用ライン8が設けられていることで、覆い部2の下側の左右の隅の部分は屈曲用ライン8に沿って容易に内側に折れ曲がって着用者の顔に接する。これにより、着用者の顔と覆い部2との間に隙間が生じることを抑制することができ、覆い部2によって顔を良好の覆い包むことができる。覆い部2の横方向の長さが大きいと、覆い部2の左右の側縁22,23、の下の端が顔より浮きやすく、これにより生じる隙間によって発熱体4からの熱が覆い部2の外側に逃げるおそれがある。これに対して、本実施形態の温熱具1では、覆い部2の下側の左右の隅の部分を顔にフィットさせることができるので、上記問題を解消することができる。
屈曲用ライン8は、上述した効果を良好に発揮するためには、覆い部2の左右の側縁22,23からは、下側縁21からの距離hで10mm以上40mm以下離れた位置から延びることが好ましく、覆い部2の下側縁21からは、左右の側縁22,23からの距離lで10mm以上60mm以下離れた位置から延びることが好ましい。また、覆い部2の左側縁22又は右側縁23と、覆い部2の下側縁21と、屈曲用ライン8とで囲まれた領域Tの面積が100mm2以上2400mm2以下であることが好ましい。
屈曲用ライン8は、本実施形態では直角に交差した二本の直線で構成されているが、覆い部2の左右の側縁22,23から下側縁21に延びるのであれば、特に限定されるものではなく、傾斜した直線や曲線で構成されていてもよい。
覆い部2の左右の側縁22,23には、縦方向の中央に凹状の切り欠き10が形成されており、この切り欠き10により、覆い部2は、下側の左右の隅の部分が耳掛けバンド6の一端部により引っ張られることに伴って、左右の側縁22,23の切り欠き10の下方の部分が内向きに折れ曲がって顔から浮くことなく着用者の顔に接する。これにより、着用者の顔と覆い部2との間に隙間が生じることをさらに抑制することができ、覆い部2の左右の側縁22,23を顔により良好にフィットさせることができる。切り欠き10は、本実施形態では平面視で三角形状を呈しているが、矩形状、半円形状、I字状など、種々の形状を呈していてもよい。なお、切り欠き10は、覆い部2の左右の側縁22,23の完全な中央ではなく、完全な中央よりも多少上下にずれた略中央に形成されていてもよく、中央には、完全な中央と略中央とを含む。
また、屈曲用ライン8は、収容体3の下側部分の少なくとも一部と重複する位置まで延びるように、覆い部2に設けられることが好ましい。これにより、覆い部2の下側の左右の隅の部分が、屈曲用ライン8に沿って内側に折れ曲がった際に、収容体3の下側の部分に当たって当該下側の部分を着用者の顔に押し当てる。よって、収容体3が着用者の顔に接しやすくなっている。
覆い部2には、左右一対の伸長抑制ライン9が設けられている。左右一対の伸長抑制ライン9は、覆い部2の縦方向に沿って覆い部2の少なくとも一部分を延びることで、覆い部2の縦方向の伸長を抑制する。つまり、左右一対の伸長抑制ライン9は、覆い部2の縦方向の伸長量を、左右一対の伸長抑制ライン9がない場合に覆い部2が縦方向に伸長する本来の伸長量よりも少ない伸長量に抑制する。本実施形態では、左右一対の伸長抑制ライン9は、覆い部2の左右の側縁22,23のそれぞれ内側位置において、覆い部2の上側縁20と下側縁21との間を、そのほぼ全長にわたって縦方向(両側縁22,23と平行)に延びることで、プリーツ5と交差している。左右一対の伸長抑制ライン9は、プリーツ5と交差することで、交差した部分のプリーツ5の拡開を規制する。なお、左右一対の伸長抑制ライン9は、必ずしも全てのプリーツ5と交差している必要はなく、プリーツ5を少なくとも1つ通り過ぎるように延びる長さであればよい。また、左右一対の伸長抑制ライン9は、縦方向に沿って延びていれば、延びる方向は縦方向に完全に一致している必要はなく、縦方向に対して斜めに傾いていてもよい。
伸長抑制ライン9によって覆い部2の左右の側縁22,23の内側位置でプリーツ5の拡開が規制されることにより、プリーツ5の拡開する部分の長さが小さくなる。その結果、覆い部2は、プリーツ5の拡開により縦方向に伸長し、立体感を有して顔の口との間に空間を形成しながらも、覆い部2の縦方向の本来の伸長が抑制され、覆い部2が縦方向に過大に伸長して、着用者の顔の大きさに合わなくなることを防止することができる。すなわち、覆い部2の横方向の長さが大きいと、プリーツ5の横方向の長さが大きくなる分、覆い部2は縦方向に大きく伸長するが、覆い部2の縦方向は、着用者の顔の目の下から下顎までを覆うことができる程度に伸長できればよいので、本実施形態では、伸長抑制ライン9によりプリーツ5の横方向の長さを制限することで、覆い部2を縦方向に過度にはならずに適度に伸長させることができる。
伸長抑制ライン9は、覆い部2の横方向中央からの距離Lが長すぎると、覆い部2の縦方向の伸長抑制効果が弱くなり、前記距離Lが短すぎると、プリーツ5の拡開が過度に抑えられて、覆い部2の立体感が得られ難くなる。そのため、上述した効果を良好に発揮するためには、伸長抑制ライン9は、覆い部2の横方向中央からの距離Lで60mm以上120mm以下離れた位置に設けられているのが好ましい。また、伸長抑制ライン9の縦方向の大きさHは、プリーツ5を少なくとも1つ縦断する大きさであればよいが、覆い部2に設けられた全てのプリーツ5を縦断する大きさであることが好ましい。伸長抑制ライン9の縦方向の大きさHとしては、50mm以上100mm以下であることが好ましい。
伸長抑制ライン9は、覆い部2の各層のシート材を、例えば縫製、超音波溶着、熱融着などの公知の方法により接合することで覆い部2に形成することができる。
次に、収容体3は、表裏面をなす第1層及び第2層を有し、第1層の外周縁の上側縁を除く部分が第2層に接合されることで、第1層及び第2層の間に発熱体4を挿入することができる袋状に形成されている。収容体3は、上部に発熱体4を挿入可能な大きさの開口を有しており、内部に発熱体4を保持可能である。収容体3は、第2層が縫製、超音波溶着、熱融着などの公知の方法で覆い部2に取り付けられている。本実施形態では、収容体3は、第2層の上側縁が覆い部2の肌側の面(背面)の上側縁に取り付けられている。収容体3の第2層の上側縁のみが覆い部2に取り付けられていることにより、プリーツ5を拡開することで覆い部2を縦方向に伸長させる際に収容体3が妨げにならないうえ、収容体3が覆い部2に拘束されておらず発熱体4の重みにより着用者の顔に接しやすくなっているため、発熱体4を顔に良好に当てることができる。
収容体3のサイズとしては、発熱体4の入る大きさを考慮して、例えば横方向の長さは80mm以上200mm以下とすることができ、縦方向の長さは70mm以上170mm以下とすることができるが、横方向の長さは100mm以上180mm以下とすることが好ましく、縦方向の長さは70mm以上150mm以下とすることが好ましい。
本実施形態では、収容体3は、下側縁が覆い部2の下側縁よりも下方に突き出ている。本実施形態の覆い部2は、プリーツ5により縦方向に伸長可能であるため、着用時には覆い部2の下側縁は収容体3の下側縁を覆い、収容体3は露出せずにその全体が覆い部2内で着用者の顔に接する。
収容体3は、織布や不織布などの通気性を有するシート材を用いて構成することができる。その中でも、通気性の観点からスパンボンド法、サーマルボンド法又はスパンレース法による不織布を好ましく用いることができ、肌触りの観点からサーマルボンド法及びスパンレース法による不織布をより好ましく用いることができ、スパンレース法による不織布を特に好ましく用いることができる。収容体3を構成する織布及び不織布の繊維素材としては、公知のものを用いることができ、例えば紙、コットンなどの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維を用いることができる。その中でも、通気性、柔軟性、生産性の観点からポリプロピレン・ポリエチレンを好ましく用いることができる。なお、収容体3は、2枚のシート材を重ね合わせることで構成することもできるし、1枚のシート材を折り重ねることで構成することもできる。
次に、発熱体4は、図3に示すように、発熱材料40と、発熱材料40を封入した袋体41とを含む。この発熱体4としては、例えば使い捨てカイロを好適に用いることができる。なお、従来の使い捨てカイロは、平面視で長方形状のものが一般的であるが、本実施形態の発熱体4は、従来の使い捨てカイロとは形状が異なる。
発熱材料40は、本実施形態では、空気との接触により発熱する発熱組成物が用いられる。発熱組成物は、空気との接触により発熱するものであればよく、例えば、被酸化性金属、活性炭、保水剤(木粉、バーミキュライト、けい藻土、パーライト、シリカゲル、アルミナ、吸水性樹脂など)、金属塩(食塩など)及び水をそれぞれ適宜の含有量含んでいる、従来から使い捨てカイロに用いられている公知の組成物を使用することができる。被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。なかでも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なお、発熱材料40は、空気との接触により発熱する材料以外を用いてもよく、例えば、電子レン等でマイクロ波の照射を受けることで発熱する材料(例えばフェライト等のセラミック粉末)を用いてもよい。
袋体41は、外周縁が全周にわたって接合された表面層及び裏面層を備え、表面層と裏面層との間に発熱材料40の封入空間を有する。本実施形態では、表面層及び裏面層を構成する同形状の表裏2枚の第1シート材42及び第2シート材43からなり、2枚のシート材42,43を重ね合わせ、外周縁を全周にわたって公知の接着剤を用いて接合する、あるいは熱融着により接合することによって、発熱材料40を封入可能な袋状に形成されている。
袋体41の2枚のシート材42,43の素材は、特に限定されるものではないが、強度や発熱材料40の発熱に対する耐久性などを考慮すると樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムに使用される樹脂は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを例示することができるが、その中でもポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体を好ましく例示することができる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、袋体41の2枚のシート材42,43は、樹脂フィルムに通気性を有する織布又は不織布を積層させた積層体により構成されていてもよい。この場合には、発熱材料40側となる内側に樹脂フィルムが、外側に織布又は不織布が配置される。
織布又は不織布の繊維素材としては、コットン、麻、絹、紙などの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートなどの合成繊維;これらの繊維の混合繊維などを例示することができる。その中でも、肌触りを良好とする観点から、繊維素材としてはナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなど、より好ましくはナイロン、ポリエステルを例示することができる。これらの繊維素材は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。織布又は不織布の目付は、発熱材料40の袋体3外部への漏出を防止できる程度の目付であれば特に制限されないが、20g/m2以上70g/m2以下程度であることが好ましい。
袋体41の2枚のシート材42,43の厚みは、特に制限されるものではないが、厚みが小さいほど袋体41を柔らかくすることができる一方で、厚みが小さすぎると袋体41の強度が低下するため、0.1mm以上2.0mm以下程度であることが好ましい。
袋体41の2枚のシート材42,43のうち一方の第1シート材42(表面層)は通気性を有しており、他方の第2シート材43(裏面層)は非通気性である。通気性を有する第1シート材42に用いる樹脂フィルムには、通気性を確保するために、複数の穿孔(図示せず)が形成されており、複数の穿孔を介して空気が袋体41の内外を連通して発熱材料40に触れることで発熱材料40が発熱する。穿孔は、樹脂フィルムの全域に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。また、穿孔の大きさは、発熱材料40の袋体41外部への漏出を防止できる程度の大きさであれは特に制限されないが、0.1mm以上0.3mm以下程度であることが好ましい。穿孔の外形及び数も特に制限されず、穿孔の大きさ、形状、数は、袋体41の通気度に応じた使用時の発熱体4の体感温度を考慮して、適宜設定される。樹脂フィルムに穿孔を形成する方法は、従来公知の方法を用いることができる。
発熱体4は、非通気性の第2シート材43を肌側にして、通気性を有する第1シート材42を覆い部2側にして、収容体3に収容される。
なお、本発明における非通気性とは、袋体41を構成するシート材が空気を通すための孔(例えば樹脂フィルムに形成される上述した穿孔や素材自体にもともと形成されている細孔)を有していないことを意味し、例えば樹脂フィルム自体がわずかながら通気していたとしても、非通気性に含まれる。
袋体41は、平面視において、着用者の鼻に対応する領域が切り欠かれた形状とすることができる。具体的には、袋体41の上側縁の横方向中央に着用者の鼻が嵌まる大きさの凹状の切り欠き44が形成されている。これにより、切り欠き44に鼻が嵌まると、鼻が発熱体4に覆われないようにすることができるため、着用時に鼻による呼吸が楽になるとともに、発熱体4が鼻によって位置決めされ、着用時に発熱体4が移動するのを防止することができる。袋体41の外形は、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状など、特には限定されないが、着用者の顔の目の下の領域、具体的には、頬、口、下顎が覆われるような外形、大きさを有していることが好ましい。これにより、着用者の顔の広範囲に温熱を与えることができる。袋体41の下側の左右の隅はそれぞれ丸く面取りされて丸みが附されている。これにより、袋体41の下側の左右の隅が着用者の顔に沿いやすくなっている。
なお、袋体41は、必ずしも2枚のシート材42,43を重ね合わせることで構成する必要はなく、1枚のシート材を折り重ねることで構成することもできる。
上述した本実施形態の温熱具1は、図4に示すように、覆い部2の着用時に発熱体4を収容した収容体3が着用者の顔に接するので発熱体4を顔に良好に当てることができる。これにより、発熱体4からの熱が着用者の顔に直接伝わるので、顔に温熱を効果的に与えることができる。
加えて本実施形態の温熱具1は、発熱体4が非通気性の第2シート材43を肌側にして収容体3に収容されるので、発熱材料40(発熱性組成物)の発熱の際に蒸発により生じる水蒸気が発熱材料40から放出されても、非通気性の第2シート材43がバリアとなって水蒸気が着用者の顔に付着するのが防止されている。これにより、着用者の顔が水蒸気で濡れることを防止することができるので、着用時に着用者に不快さを感じさせることがなく良好な使用感を得ることができる。また、着用時に着用者の顔が濡れると、顔に付着した水分が気化することにより顔の肌温度が下がるので、着用時の温熱効果が低減するとともに、着用を終えて温熱具を取り外した後、着用者の顔が濡れていると、急激な温度低下を招くので、着用後の顔の肌温度が濡れていない場合よりも大きく低下するが、本実施形態の温熱具1では、着用者の顔が水蒸気で濡れることを防止できるので、上記問題を解消することができる。
加えて、本実施形態の温熱具1は、屈曲用ライン8により、着用者の顔との間に特に隙間が生じやすい覆い部2の下側の左右の隅の部分を内側に折り曲げて顔にフィットさせることができるので、隙間から発熱体4からの熱が覆い部2の外側に逃げたり、花粉やウイルスなどが覆い部2の内側に侵入することを防止することができる。また、屈曲用ライン8により、覆い部2の下側の左右の隅の部分が内側に折れ曲がった際に、収容体3の下側の部分に当たって当該下側の部分を着用者の顔に押し当てるので、収容体3が着用者の顔に良好に接し、発熱体4を顔により密着させることができる。
加えて、本実施形態の温熱具1は、伸長抑制ライン9により、覆い部2の横方向の長さが大きくても、覆い部2がプリーツ5の拡開に伴い縦方向に過大に伸長することを防止して、覆い部2を、縦方向に適度に伸長させることができる。よって、覆い部2を着用者の顔に合わせた適切なサイズにすることができる。
加えて、本実施形態の温熱具1は、袋体41が着用者の鼻に対応する領域が切り欠かれた形状であるので、着用時に鼻が発熱体4に覆われず、着用者の鼻による呼吸を楽にすることができるとともに、発熱体4が移動するのを防止することができる。
以上、本発明の温熱具の一実施形態について説明したが、本発明の温熱具の具体的な態様は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、発熱体4の袋体41は、着用者の鼻に対応する領域に切り欠き44が設けられているが、切り欠き44は必ずしも設けられている必要はない。
また、上記実施形態では、発熱体4の袋体41の裏面層(第2シート材43)は非通気性であるが、通気性を有していてもよい。
また、上記実施形態では、覆い部2にプリーツ5、屈曲用ライン8、伸長抑制ライン9が設けられているが、プリーツ5、屈曲用ライン8、伸長抑制ライン9は必ずしも設けられている必要はない。
また、上記実施形態では、覆い部2の上側縁20、下側縁21及び左右の側縁22,23は直線状に形成されているが、例えば上側縁20は上側に向けて凸の屈曲線又は湾曲線状に形成されていてもよく、及び/又は下側縁21は下側に向けて凸の屈曲線又は湾曲線状に形成されていてもよく、及び/又は左右の側縁22,23は内側に向けて凸の屈曲線又は湾曲線状に形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、覆い部2は平面視長方形状を呈しているが、三角形状、正方形状、その他多角形状、円形状、楕円形状など、種々の形状を呈していてもよい。
また、上記実施形態では、覆い部2はプリーツ5により縦方向に伸長可能な構造になっているが、覆い部2を縦方向に伸長可能とする手段は、プリーツ5に限られるものではなくその他の種々の手段を用いることができ、例えば覆い部2にギャザーを形成することで覆い部2を縦方向に伸長可能な構造としてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例の温熱具は、図1及び図2に示す形状のものであり、覆い部は3層構造であり、内側(着用者の顔側)から、ポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混合体)からなるスパンボンド不織布、ポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混合体)からなるメルトブロー不織布、及びポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混合体)からなるスパンボンド不織布を重ねて形成した(縦100mm×横150mm)。収容体は、ポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混合体)からなるスパンボンド不織布で構成した(縦100mm×横150mm)。発熱体の袋体は、上側縁に切り欠き(縦40mm×横40mm)を有する略矩形状(縦80mm×横120mm)を呈し、ナイロン不織布に穿孔されたポリエチレンフィルムが積層された通気性の第1シート材、及びナイロン不織布にポリエチレンフィルムが積層された非通気性の第2シート材を重ねて形成した。発熱材料は、空気との接触により発熱する発熱組成物を用いた。発熱組成物として以下の成分を使用した。
<発熱組成物>
・鉄粉(平均粒径約50μm)
・活性炭(平均粒経約100μm)
・水
・バーミキュライト(平均粒径約500μm)
・吸水性ポリマー(アクリル酸重合体部分塩架橋物、平均粒径250μm)
・食塩
前記発熱組成物の各成分の配合割合は、それぞれ、鉄粉:45重量%、活性炭:16重量%、水:31重量%、バーミキュライト:3重量%、吸水性樹脂:3重量%、食塩2:重量%である。発熱組成物の各成分を混合した混合物を袋体に収納して封をすることで発熱体を形成した。
発熱体を非通気性の第2シート材が着用者の顔側となるように収容体に収容した温熱具を実施例1とし、発熱体を通気性の第1シート材が着用者の顔側となるように収容体に収容した温熱具を実施例2とした。実施例1,2の温熱具をそれぞれ被験者に着用してもらい、着用時の顔の頬部の温度を測定した。また、着用して8分後に温熱具を外してもらった後の顔の頬部の温度も測定した。その結果を図5に示す。
図5によれば、非通気性の第2シート材が着用者の顔側に位置する実施例1の温熱具の方が、通気性の第1シート材が着用者の顔側に位置する実施例2の温熱具よりも、着用時の顔の肌温度が高いことが確認された。よって、実施例1の温熱具は、実施例2の温熱具よりも着用時に効果的な温熱効果を顔に与えられることが分かる。また、着用後の顔の肌温度についても、実施例1の温熱具の方が実施例2の温熱具よりも高いことが確認された。よって、実施例1の温熱具は、実施例2の温熱具よりも着用後の顔の肌温度の低下を抑えられることが分かる。