WO2021014936A1

WO2021014936A1 - 冷感衣服

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Publication number: WO2021014936A1
Application number: PCT/JP2020/026177
Authority: WO
Inventors: 佐藤貴大; 勝田大士; 鹿野秀和
Original assignee: 東レ株式会社
Priority date: 2019-07-25
Filing date: 2020-07-03
Publication date: 2021-01-28
Also published as: JPWO2021014936A1; CN113993406A; TW202114550A; EP4005425A1; EP4005425A4; TWI841761B; US20220273053A1

Abstract

【課題】接触冷感性に優れており、また持続的な接触冷感を感じ、さらに暑熱感を抑制することができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても好適に着用することができる。【解決手段】衣服と身体の間に外気を取り込むための１個乃至は複数個のファンが具備された衣服であって、上記衣服の生地における接触冷温感値Ｑ－ｍａｘが０．３０Ｗ／ｃｍ^２以上、目付が２５０ｇ／ｍ^２以下である衣服。

Description

冷感衣服

　本発明は、接触冷感性に優れており、また持続的な接触冷感を感じ、さらに暑熱感を抑制することができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても好適に着用することができる冷感衣服に関するものである。

　近年、環境保護を目的に大気への二酸化炭素の排出量の抑制、ひいては省エネルギーが求められており、一般家庭やオフィスでは、主に冷暖房機器の設定温度を適切にすることで空調負荷を低減し、省エネルギーを図ることが取り組まれている。一方で、冷暖房機器の設定温度の単なる変更では、人間が快適と感じる温湿度領域を逸脱してしまう。特に夏場においては、衣服内温度の上昇による暑熱感といった不快を感じることが問題となる。そこで、寝具や肌着等の皮膚に直接触れる繊維製品において、接触冷感素材が用いられている。それらの素材では、熱伝導性の良い繊維を用いることで皮膚からの熱伝導性を高めたり、繊維の吸水性を向上させたり、繊維表面の凹凸を減らして接触面積を高める工夫がされている。

　例えば、特許文献１には、直径が５０ｎｍ以上２．５μｍ未満の繊維からなるポリウレタンやエラストマー系ポリマーからなるナノファイバー不織布を用いることで冷感が得られ、編生地と積層されることで複合ファブリックの強度、通気度を保つことができる冷感素材用複合ファブリックが提案されている。

　また、特許文献２には、皮膚との接触による熱移動を高めて繊維製品内の温度上昇を抑制し、また不感蒸泄した湿気を効果的に吸湿して湿度上昇を抑制するとともに、液相の汗をかいたときにもベタツキがなく、快適と感じられる時間を可能な限り長く保つ快適性に優れた織編物として、高い熱伝導係数を有するフィラメントとセルロース短繊維からなる複合糸を用いたパイル織編物が提案されている。

　上記の技術以外には、夏場における暑熱感といった不快感に対して、衣服にファンを取り付けることにより衣服内に外気を送り込む衣服が用いられている。該衣服では、ファンからの送風により身体からの汗を蒸発させ、汗の蒸発時に周囲から気化熱を奪う作用を利用して身体を冷却する、または、空気の流通により身体の表面近傍の温度勾配を大きくすることで身体を冷却することが提案されている。
例えば、特許文献３には、裏地を取り付けることで表地と裏地の間に空気の流れを強制的に生じさせることが可能となり、ファンにより取り込んだ外気を衣服の表地と裏地の間に送風することで、身体を冷却する衣服が提案されている。

　また、特許文献４には、衣服内部のスペーサにより形成された流通路に空気を流して身体を冷却する衣服が提案されている。

特開２０１１－６８０１１号公報特許第６４５４４３７号公報特開２０１８－１６８４８５号公報国際公開第２００３／１０３４２４号

　特許文献１および特許文献２で開示されている技術からなる生地を用いた衣服を着用すると、着用した瞬間には、優れた接触冷感性を得ることができるが、例えば、該衣服を長時間にわたって着用し続けると生地と身体の間で熱平衡状態となり、身体から生地への熱伝導がなくなる、もしくは熱伝導が軽微なものとなるため、冷感を感じることができなくなり、暑熱感を覚えることが問題であった。

　また、特許文献３で開示されている技術によると、衣服に表地と裏地を有することで、表地と裏地の間の空間に強制的に空気の流れを発生させ身体を冷却することが可能であるが、衣服内空間を作り出すために生地を表地と裏地の二重構造とすることが必須であり、ファンを通じて衣服内に取り込まれた外気によって衣服が膨らみ、裏地が肌に触れ続けるため、冷感が失われる問題があった。また、ファン停止時には、表地と裏地の二重構造であることから暑熱感が高いことも問題であった。

　同様に、特許文献４で開示されている技術によると、衣服内部の空気流通路に空気を流通させることで汗を気化させ身体を冷却することが可能であるが、ファンを通じて衣服内に取り込まれた外気によって衣服が膨らんで生地の冷感を感じることができず、また、空気の流路を確保するためのスペーサを設けており、ファン停止時でも生地が体に触れないため冷感を感じることができないことが問題であった。また、高密度の布を用いているため、暑熱感が高いことも問題であった。

　そこで、本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、接触冷感性に優れており、また持続的な接触冷感を感じ、さらに暑熱感を抑制することができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても好適に着用することができる冷感衣服を提供することを課題とする。

　本発明の冷感衣服は、上記課題を解決するため、下記の構成を有する。すなわち、
衣服と身体の間に外気を取り込むための１個乃至は複数個のファンが具備された衣服であって、上記衣服の生地が、目付２５０ｇ／ｍ^２以下であり、接触冷温感値Ｑ－ｍａｘが０．３０Ｗ／ｃｍ^２以上である衣服、である。

　本発明の冷感衣服は、上記衣服の生地を構成する繊維の総繊度が１００ｄｔｅｘ以下であることが好ましい。

　本発明の冷感衣服は、上記衣服の生地における吸放湿パラメーターΔＭＲが３．０％以上であることが好ましい。

　本発明の冷感衣服は、上記衣服の生地を構成する繊維の少なくとも一部にポリアミド成分を含むことが好ましい。

　本発明の冷感衣服は、上記ファンが、送風羽根と、モーターと、バッテリーからなり、ファンの総重量が２００ｇ以下であることが好ましい。

　本発明によれば、接触冷感性に優れており、また持続的な接触冷感を感じ、さらに暑熱感を抑制することができる冷感衣服となる。特に、本発明の冷感衣服は、オフィスや家庭などの着用シーンにおいて好適に用いることができる。

　本発明の冷感衣服は、衣服と身体の間に外気を取り込む構造であり、衣服と身体の間に外気を取り込むための１個乃至は複数個のファンが具備されていることが重要である。ファンを通じて外気を取り込むことにより、衣服と身体の間に強制的に空気の流れを生じさせて、衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすると、身体から衣服への熱伝導を抑制でき、衣服がはためく等して身体に触れた際に繰り返して接触冷感を感じることができる。また、外気を衣服内へ取り込むことにより、衣服内部で空気の循環を生じさせ、換気が可能となり、暑熱感を低減することができる。衣服に具備されるファンの数は特に制限されないが、ファンの総重量を抑えられることや着用快適性の点から、好ましくは５個以下である。

　本発明の冷感衣服に用いられる生地は、目付２５０ｇ／ｍ^２以下であることが必要である。目付が２５０ｇ／ｍ^２を超える場合には、生地が剛く、動き難くなり、ファンから取り込まれた外気によっても衣服内に空間を形成し難くなるため、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができない。また、衣服内で効率よく空気を流通させることができない。生地の目付は、好ましくは２３０ｇ／ｍ^２以下、より好ましくは２００ｇ／ｍ^２以下である。目付の下限について特に制限はないが、生地の取扱性、着用性および耐久性を向上させるためにも５０ｇ／ｍ^２以上であることが好ましい。

　本発明の冷感衣服に用いられる生地は、実施例中にて後述する方法で測定できる接触冷温感値Ｑ－ｍａｘが０．３０Ｗ／ｃｍ^２以上であることが必要である。接触冷温感値Ｑ－ｍａｘの値は、生地からの瞬間的な熱移動時の最大熱吸収速度であり、Ｑ－ｍａｘの大きい生地に人が触れると冷感を感じ、Ｑ－ｍａｘの小さい生地に触れると温感を感じやすい。Ｑ－ｍａｘが０．３０Ｗ／ｃｍ^２未満の生地を衣服に用いると、着用した際に接触冷感を感じることができない。好ましく０．３５Ｗ／ｃｍ^２以上、より好ましくは０．４０Ｗ／ｃｍ^２以上である。

　本発明の冷感衣服に用いられる生地は、吸放湿パラメーターΔＭＲが３．０％以上であることが好ましい。ΔＭＲは、３０℃×９０％ＲＨに代表される高温高湿度時と２０℃×６５％ＲＨに代表される標準状態の温湿度における生地の吸湿率の差であり、すなわち、温湿度変化が生じた際に、水を吸着および／または脱着させる生地の調湿能力の高さを示しており、ΔＭＲが高ければ高いほど、発汗時の蒸れ感、べたつき感が軽減され、衣服の着用快適性が向上する。ΔＭＲが３．０％以上あれば、生地の調湿能力が高く、適度な快適性を得られる。より好ましいΔＭＲの範囲は３．５％以上、さらに好ましい範囲は４．０％以上である。ΔＭＲの範囲に特に上限はないが、通常の技術で達成できるレベルは１７％程度であり、これが実質的な上限となる。

　本発明の冷感衣服に用いられる生地は、通気度が１０ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃ以上であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、汗の蒸散性に優れ、発汗時の蒸れ感、べたつき感、暑熱感を軽減できるだけでなく、ファンから取り込まれた外気で衣服が膨らみすぎることがなく、適度な衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。より好ましくは５０ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃ以上、さらに好ましくは１００ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃ以上、特に好ましくは１５０ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃ以上である。また、通気度の上限は特に制限されるものではないが、良好な生地の機械的特性が得られ、生地や衣服の製造時の工程通過性や取り扱い性が向上し、生地が薄地となり過ぎず、着用時の違和感がなく耐久性に優れた衣服とするためにも２５０ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃ以下であることが実用上好ましい。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維素材は、合成繊維、半合成繊維、天然繊維などいずれの素材でもよく、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、レーヨン系繊維、アセテート系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、綿、麻、絹、ウールなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、１種類の繊維素材で生地を構成しても良いし、複数の繊維を合わせて複合糸として生地を構成しても良い。特に、機械的特性や耐久性に優れ、繊維の吸放湿性能に優れることから、ポリアミド系繊維を生地の一部に用いていることが好ましい。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維の形態は、長繊維（フィラメント）、短繊維（ステープル）などいかなる形態でもよい。長繊維の場合、単繊維１本からなるモノフィラメントでも、複数の単繊維からなるマルチフィラメントであってもよい。短繊維の場合、カット長、捲縮数にも限定はない。また、仮撚や撚糸などの後加工が施されていても良い。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維は、フィラメント形態であるときの総繊度に特に制限はなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは１００ｄｔｅｘ以下である。かかる範囲とすることで、衣服の柔軟性を損なうことがなく、ファンから取り込まれた外気で適度な衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。より好ましくは９０ｄｔｅｘ以下、さらに好ましくは８０ｄｔｅｘ以下である。総繊度の下限についても特に限定されるものではないが、通常の技術で達成できるレベルは４ｄｔｅｘ程度であり、これが実質的な下限となる。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維は、単繊維繊度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、５．０ｄｔｅｘ以下であることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、生地に用いられる繊維の総繊度を、繊維を構成する単繊維の数で除した値を示す。かかる範囲とすることで、衣服の柔軟性を損なうことがなく、ファンから取り込まれた外気で適度な衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。より好ましくは２．５ｄｔｅｘ以下、さらに好ましくは１．５ｄｔｅｘ以下である。単繊維繊度の下限は、繊維、生地や衣服の製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる冷感衣服となることから、０．３ｄｔｅｘ以上であることが好ましい。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維は、強度が１．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上であることが好ましいが、生地を作製する際に他の繊維と合わせて使用するなどの対応を取ることにより、１．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以下でも問題なく使用できる。伸度は、用途に応じて適宜設定すれば良いが、生地に加工する際の加工性の点から、好ましくは２５％以上６０％以下である。

　本発明の冷感衣服の生地に用いられる繊維の断面形状は、丸断面だけでなく、扁平、Ｙ型、Ｔ型、中空型、田型、井型など多種多様な断面形状を採用することができる。

　本発明の冷感衣服の生地の組織は、織物、編物、パイル布帛、不織布などにすることができ、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織、二重織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。

　本発明の冷感衣服の形態は、特に制限がなく、上衣、下衣のいずれであってもよく、上衣は長袖、短袖のいずれであってもよく、下衣は長裾、短裾のいずれであってもよい。本発明において、上衣とは上半身に着用する衣服であり、下衣とは下半身に着用する衣服を意味する。本発明における上衣の具体例として、インナーシャツ、タンクトップ、キャミソールなどの下着や、Ｔシャツ、ポロシャツ、カットソー、パジャマ、ブラウス、ブルゾン、作業着などの一般衣料、スポーツ用インナーシャツ、スポーツ用シャツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明における下衣の具体例として、インナーパンツのような下着や、スラックス、パンツ、スカート、パジャマ、作業着などの一般衣料、スポーツ用パンツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。

　本発明の冷感衣服に用いるファンは、送風羽根と、モーターと、バッテリーからなり、ファンの総重量が２００ｇ以下であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、送風羽根とモーターとバッテリーの重さにより衣服が垂れ下がりにくくなり、ファンから取り込まれた外気により衣服内に空間を形成しやすくなるため、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができ、また、衣服内で効率よく空気を流通させることが可能となる。より好ましいファンの総重量は１５０ｇ以下であり、さらに好ましくは１００ｇ以下である。

　本発明の冷感衣服に用いるファンは、ファンを構成する送風羽根の外径が１０～６０ｍｍであることが好ましい。送風羽根の外径をかかる範囲とすることで、外気を衣服内に送り込むのに十分な風量を得ることができ、ファン駆動時の騒音が小さくなるとともに、ファンによる着用時の違和感を小さくすることができるため、着用快適性に優れる衣服となる。より好ましくは１５～５０ｍｍ、さらに好ましくは２０～４０ｍｍである。

　本発明の冷感衣服に用いるファンは、衣服に具備されている全てのファンから取り込む外気の総流量が５Ｌ／秒以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、ファン駆動時の騒音が小さくなるとともに、ファンから取り込まれた外気で衣服が膨らみすぎることがなく、適度な衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。より好ましくは３Ｌ／秒以下、さらに好ましくは１Ｌ／秒以下である。

　本発明の冷感衣服に用いるファンは、遠心ファンもしくは横断流ファンであることが好ましい。遠心ファンもしくは横断流ファンはいずれもファンの回転軸に対して略垂直方向に送風することができるため、遠心ファンもしくは横断流ファンを用いることにより、身体に対して略平行方向に指向性を有した外気を送風することが容易となる。身体に対して略平行方向に送風することにより、身体に対して略垂直方向に送風した場合と比較して衣服が膨らみにくくなるため、適度な衣服のはためきが生じ、身体と衣服の接触回数を好適な頻度とすることができる。
本発明の冷感衣服に用いるファンのモーターは、ＤＣモーターであることが好ましい。モーターをＤＣモーターとすることにより、低電圧であっても安定した動作が可能となる。

　本発明の冷感衣服に用いるファンのモーターに電力を供給するためのバッテリーに限定はなく、例としては、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が挙げられる。特に、小型化かつ大容量化が可能である点から、リチウムイオン電池を用いることが好ましい。

　本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法を用いて測定した。

　Ａ．総繊度
　ＪＩＳ　Ｌ１０９６：２０１０「織物及び編物の生地試験方法」に記載の方法に従い、生地試料を構成している繊維についての総繊度を測定した。

　Ｂ．目付
生地の目付（ｇ／ｍ^２）は１０ｃｍ四方に切断した生地の重量を測定し、生地の面積（１００ｃｍ^２）で割ることで算出した。

　Ｃ．Ｑ－ｍａｘ（Ｗ／ｃｍ^２）
　温度２０℃、相対湿度６０％に調整した室内に、測定生地と装置（ＫＥＳ－Ｆ７　ＴＨＥＲＭＯ　ＬＡＢＯ　ＩＩ　ＴＹＰＥ（カトーテック（株）製））を１２時間以上放置した。測定生地に接触させて熱の移動量を測定するＴ－ＢＯＸを室温より１０℃高くするため、蓄熱する熱板ＢＴを３０℃に設定し、熱板ＢＴを暖めるために熱板ＢＴの周りをガードしている熱板Ｇ－ＢＴを２０．３℃に設定し、安定させた。測定生地の裏面（着用時に肌側になる）を上に向けて置き、Ｔ－ＢＯＸを測定生地の上に素早くのせてＱ－ｍａｘを測定した。測定生地の目付は前記Ｂ項の方法で測定した値を用いた。
Ｄ．ΔＭＲ
　生地試料を秤量瓶に１～２ｇ程度量り取り、１１０℃で２時間乾燥させた後に質量を測定し、この質量をｗ_０とした。次に乾燥後の繊維試料を温度２０℃、相対湿度６５％にて２４時間保持させた後に質量を測定し、この質量をｗ_６５％とした。続いて、温度３０℃、相対湿度９０％に調整し、繊維試料を２４時間保持させた後に質量を測定し、この質量をｗ_９０％とした。以下の式でΔＭＲを算出した。

　ＭＲ_１＝[（ｗ_６５％－ｗ_０）／ｗ_０]×１００
　ＭＲ_２＝[（ｗ_９０％－ｗ_０）／ｗ_０]×１００
　ΔＭＲ＝ＭＲ_２－ＭＲ_１　。

　Ｅ．通気度
　ＪＩＳ　Ｌ１０９６（２０１０）８．２６．１通気性Ａ法（フラジール形法）に従って測定した。

　Ｆ．接触冷感の持続性
　被験者２０名に対し、冷房の効いている夏の屋内環境を想定した温度２８℃、相対湿度６５％の室内において、椅子に座って安静にしてもらい、実施例によって作製した冷感衣服を着用させた。着用した瞬間の生地の接触冷感性の評価基準は、「冷感を強く感じる」を５点、「冷感を感じる」を４点、「冷感をわずかに感じる」を３点、「冷感をほとんど感じない」を２点、「冷感を全く感じない」を１点とし、被験者２０名の各々の評価点数の平均値を算出した。その後、１時間経過するまで１０分毎に合計６回、生地の接触冷感性について、同様に評価してもらい、被験者２０名の各々の評価点数の各経過時間毎の平均値を算出し、着用した瞬間とその後１０分毎の合計７回の評価で平均値がいずれも３．０点以上の場合は合格、いずれも４．０点以上の場合は優良とした。
Ｇ．暑熱感
　被験者２０名に対し、実施例によって作製した冷感衣服を着用させた。続いて、冷房の効いていない夏の屋内環境を想定した温度３０℃、相対湿度６０％の室内において、椅子に１時間座って安静に過ごした後の衣服内部の暑熱感の評価基準は、「暑熱感を全く感じない」を５点、「暑熱感をほとんど感じない」を４点、「暑熱感をわずかに感じる」を３点、「暑熱感を感じる」を２点、「暑熱感を強く感じる」を１点とし、被験者２０名の各々の評価点数の平均値を算出し、平均値が３．０点以上の場合は合格、いずれも４．０点以上の場合は優良とした。

　Ｈ．着用感
　被験者２０名に対し、実施例によって作製した冷感衣服を着用させ、着用感の評価基準は、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれも全く無い」を５点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれもほぼ無い」を４点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかがわずかにある」を３点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかがある」を２点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかが強くある」を１点とし、被験者２０名の各々の評価点数の平均値を算出し、平均値が３．０点以上の場合は合格、いずれも４．０点以上の場合は優良とした。

　Ｉ．ファンのＡ特性音圧レベル
　環境騒音４０ｄＢ以下とした室内において、実施例によって作製した冷感衣服をマネキンに着用させ、風量１ｍ^３／ｍｉｎとなるようファンを回転させた。続いて、衣服のファン取り付け口からファン回転軸方向に５０ｃｍ離れた位置に配置した騒音計（Ｕｍａｒｅｘ社製ＳｏｕｎｄＴｅｓｔ－Ｍａｓｔｅｒ）にてＡ特性音圧レベルを測定し、５秒間の平均値を求めた。
（実施例１）
　ポリビニルピロリドン添加率５．０重量％のポリカプロラクタムからなる５６ｄｔｅｘ‐３６フィラメントのポリアミド長繊維からなる仮撚り加工糸を用い、公知の方法にて鹿の子組織からなる編地を作製し、得られた編地を縫製することでポロシャツ状の衣服を作製した。該編地のＱ－ｍａｘは０．３５Ｗ／ｃｍ^２、目付は１８５ｇ／ｍ^２、ΔＭＲは４．０％であり、通気度が１５４ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃであった。該ポロシャツの背面の衣服下部から２０ｃｍ上方の位置に２つの開口部を設け、ファンとモーターとバッテリーの総重量が９８ｇである外径３０ｍｍの遠心ファンをそれぞれの開口部に取り付け、ファンから取り込む外気の総流量を０．７Ｌ／秒として、身体に対して略平行方向で上向きに送風する冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例２）
　編地のＱ－ｍａｘを０．３７Ｗ／ｃｍ^２、目付を２３５ｇ／ｍ^２としたこと以外は実施例１と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例３）
　添加物を含まないポリカプロラクタムからなる５６ｄｔｅｘ－３６フィラメントのポリアミド長繊維からなる仮撚り加工糸を用いて、衣服のＱ－ｍａｘを０．３０Ｗ／ｃｍ^２、ΔＭＲを３．０％としたこと以外は実施例１と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例４）
　ファンとモーターとバッテリーの総重量が１７２ｇである外径５０ｍｍの遠心ファンを用いたこと以外は実施例１と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例５）
　ファンから取り込む外気の総流量を３．５Ｌ／秒とした以外は実施例１と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例６）
　ポリビニルピロリドン添加率５．０重量％のポリカプロラクタムからなる８４ｄｔｅｘ‐３６フィラメントのポリアミド長繊維からなる仮撚り加工糸を用い、通気度を７０ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃとした以外は実施例２と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（実施例７）
　実施例１と同様にしてポロシャツ状の衣服を作製し、該ポロシャツの背面の衣服下部から３０ｃｍ上方の位置に１つの開口部を設け、衣服の内側にポロシャツを形成する編地からなるポケット状の収納部を１つ設けた。ファンとモーターとバッテリーの総重量が９８ｇである外径３０ｍｍの遠心ファンを、該ポケットに収納し、ファンから取り込む外気の総流量を０．７Ｌ／秒として、身体に対して略平行方向で上向きに送風する冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示す。
（比較例１）
　実施例１で作製したポロシャツに遠心ファンを取り付けずに着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示したとおり、ファンからの送風がないために衣服のはためきが生じず、接触冷感の持続性に乏しかった。
（比較例２）
　ポリビニルピロリドン添加率５．０重量％のポリカプロラクタムからなる５６ｄｔｅｘ‐１４４フィラメントのポリアミド長繊維からなる仮撚り加工糸を用い、目付を２５５ｇ／ｍ^２とした以外は実施例１と同様の方法で冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示したとおり、生地の目付が大きく、衣服のはためきが生じず、接触冷感の持続性に乏しい結果となった。
（比較例３）
　実施例１で作製した冷感衣服の裏地に通気性のない透湿膜を取り付け、目付を３００ｇ／ｍ^２、通気度を８ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃとした冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示したとおり、生地の目付が大きく、かつ生地の通気度が低いため、衣服のはためきが生じず、接触冷感の持続性に乏しく、被験者は暑熱感を覚え、着用感も違和感を覚える結果となった。
（比較例４）
　添加物を含まないポリエチレンテレフタレートからなる８４ｄｔｅｘ‐３６フィラメントのポリエステル長繊維からなる仮撚り加工糸を用い、公知の方法にて鹿の子組織からなる編地を作製し、得られた編地を縫製することでポロシャツ状の衣服を作製した。該衣服のＱ－ｍａｘは０．２３Ｗ／ｃｍ^２、目付は１８５ｇ／ｍ^２、ΔＭＲは０．０％であり、通気量が１５４ｃｃ／ｃｍ^２／ｓｅｃであった。該ポロシャツの背面の衣服下部から２０ｃｍ上方の位置に２つの開口部を設け、ファンとモーターとバッテリーの総重量が９８ｇである外径３０ｍｍの遠心ファンをそれぞれの開口部に取り付け、ファンから取り込む外気の総流量を０．７Ｌ／秒として、身体に対して略平行方向で上向きに送風する冷感衣服を作製し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表１に示したとおり、生地のＱ－ｍａｘが低く、着用時から接触冷感に乏しく、暑熱感を覚える結果であった。

　本発明の冷感衣服は、接触冷感性に優れており、また持続的な接触冷感を感じ、さらに暑熱感を抑制することができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても好適に着用することができる。

Claims

　衣服と身体の間に外気を取り込むための１個乃至は複数個のファンが具備された衣服であって、上記衣服の生地が、目付２５０ｇ／ｍ^２以下であり、接触冷温感値Ｑ－ｍａｘが０．３０Ｗ／ｃｍ^２以上である衣服。
　上記衣服の生地を構成する繊維の総繊度が１００ｄｔｅｘ以下である請求項１記載の衣服。
上記衣服の生地における吸放湿パラメーターΔＭＲが３．０％以上である請求項１もしくは２記載の衣服。
　上記衣服の生地を構成する繊維の少なくとも一部にポリアミド成分を含む請求項１から３のいずれか１項に記載の衣服。
　上記ファンが、送風羽根と、モーターと、バッテリーからなり、ファンの総重量が２００ｇ以下である請求項１から４のいずれか１項に記載の衣服。