WO2019193932A1

WO2019193932A1 - 電動弁

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Publication number: WO2019193932A1
Application number: PCT/JP2019/009620
Authority: WO
Inventors: 良太荒井; 力樹小城; 原田　貴雄; 宏気相原
Original assignee: 株式会社不二工機
Priority date: 2018-04-05
Filing date: 2019-03-11
Publication date: 2019-10-10

Abstract

使用環境による摺動抵抗の変動を防止しつつ、簡便な構成でもって、十分なシール性を確保することのできる電動弁を提供する。弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間に介装されるシール組立体３５が、フッ素樹脂からなるリング状部材で作製され、その中腹部が両端部より薄肉に形成されるとともに、その両端面に円環状の収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）が設けられたシール部材３２と、金属からなるリング状部材で作製され、前記収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）の各々に径方向に弾性的に圧縮された状態で収納された一対の弾性部材（上部弾性部材３３、下部弾性部材３４）と、を有する。

Description

電動弁

　本発明は、電動弁に係り、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等に使用するのに好適な電動弁に関する。

　この種の電動弁の従来例を図３に示す。図示従来例の電動弁１００は、内部に弁室７が画成されるとともに側部及び底部に第１開口１１ａ及び第２開口１２ａが形成された弁本体５と、弁室７に開口する弁座８ａ付きの弁口９を有して弁本体５の第２開口１２ａに固着された弁座部材８と、弁室７に昇降可能に配置された弁体２０と、弁体２０を弁座８ａに対して昇降させる昇降駆動部としてのステッピングモータ５０と、を備える。

　詳しくは、前記従来例の電動弁１００は、板金製の底部付きの筒状基体６を有する弁本体５と、弁本体５に固着されたキャン５８と、弁本体５及びキャン５８によって画成された内部空間で弁本体５に固定配置された支持部材１９と、支持部材１９により支持されて前記内部空間に昇降可能に配置された弁体２０と、弁体２０を昇降させるべく弁本体５の上方に取り付けられたステッピングモータ（昇降駆動部）５０と、を備えている。

　弁本体５の筒状基体６は、その内部に弁室７が画成されるとともに、その側部に弁室７に開口する横向きの第１開口１１ａが形成され、その底部に弁室７に開口する縦向きの第２開口１２ａが形成されている。弁本体５の筒状基体６の底部に形成された第２開口１２ａには、弁室７に開口する縦向きの弁口９付きの弁座８ａを有する段付きの弁座部材８が固着されている。筒状基体６の側部に形成された第１開口１１ａには、導管継手としての横パイプ部材１１が横向きに取り付けられている。弁座部材８の底部８ｃ側に形成された弁口９よりも大径の接続口１２ｂには、弁座部材８の弁口９に連通する導管継手としての下パイプ部材１２が縦向きに取り付けられている。

　前記弁座部材８は、その底部８ｃが第２開口１２ａに嵌合されて筒状基体６の底部に固着され、その底部８ｃ側に形成された前記接続口１２ｂに下パイプ部材１２が嵌挿されて取り付けられている。また、弁座部材８の上端部に、弁座８ａに連接する傾斜面８ｂが形成され、この傾斜面８ｂの上端部８ｄが第１開口１１ａに取り付けられた横パイプ部材１１の中央よりも下方に位置するように、弁座部材８と横パイプ部材１１とが配設されている。

　弁本体５の筒状基体６の上方開口部には、上方に向かって縮径する段付きの筒状基台１３が取り付けられている。筒状基台１３の上端部には、天井部を有する円筒状のキャン５８の下端部が溶接等により接合されている。また、支持部材１９は、隔壁１４ｃ付き筒状保持部材１４及び雌ねじ１５ｉ付き軸受部材１５を有している。筒状基台１３の内側に、前記筒状保持部材１４が圧入等により固定され、筒状保持部材１４の上部に、内周面下方に雌ねじ１５ｉが螺設された筒状の軸受部材１５がかしめ等により固定されている。なお、軸受部材１５の下面の中心側には突設部１５ａが形成され、該突設部１５ａにも雌ねじ１５ｉが螺設されている。また、筒状保持部材１４の隔壁１４ｃと軸受部材１５との間にばね室１４ａが画成され、該ばね室１４ａに弁体２０を開弁方向に付勢する開弁ばね２５が収納されている。

　弁体２０は、その中心部に該弁体２０の昇降方向（上下方向）に沿う均圧通路３１が形成された筒状体からなる。該弁体２０の上部が前記筒状保持部材１４における隔壁１４ｃよりも下側の弁体ガイド穴１４ｂに摺動自在に内嵌され、該弁体２０の下部は前記筒状保持部材１４（の弁体ガイド穴１４ｂ）から前記弁座部材８（の弁口９）に向けて突出している。弁体２０は、内径（すなわち、中心穴２０ｂ）が段付きで形成され、その中心穴２０ｂの上部は、推力伝達部材２３の小径下部２３ｃが嵌合固定される嵌合穴２０ｃとされている。弁体２０の下端部は、弁座部材８の弁座８ａに接離して弁口９を開閉する略円錐台状の弁体部２０ａとされている。

　一方、ステッピングモータ５０は、ヨーク５１、ボビン５２、コイル５３、樹脂モールドカバー５４等からなるステータ５５と、キャン５８の内部に該キャン５８に対して回転自在に配置され、ロータ支持部材５６がその上部内側に固着されたロータ５７と、を有している。ステータ５５は、キャン５８に外嵌固定されている。また、ロータ５７の内周側には、ロータ支持部材５６に一体に形成された太陽歯車４１、筒状保持部材１４の上部に固着された筒状体４３の上端に固定された固定リング歯車４７、太陽歯車４１と固定リング歯車４７との間に配置されてそれぞれに歯合する遊星歯車４２、遊星歯車４２を回転自在に支持するキャリア４４、遊星歯車４２に外側から歯合する有底リング状の出力歯車４５、出力歯車４５の底部に形成された孔にその上部が圧入等によって固着された出力軸４６等からなる不思議遊星歯車式減速機構４０が設けられている。ここで、固定リング歯車４７の歯数は、出力歯車４５の歯数とは異なるように設定されている。

　出力軸４６の上部の中心部には孔が形成され、該孔には太陽歯車４１（ロータ支持部材５６）とキャリア４４の中心部を挿通した支持軸４９の下部が挿通されている。この支持軸４９の上部は、キャン５８の内径と略同一の外径を有し、ロータ支持部材５６の上側でキャン５８に内接して配置される支持部材４８の中心部に形成された孔に挿通されている。ロータ５７自体は、支持部材４８等によってキャン５８の内部で上下動しないようになっており、キャン５８に外嵌固定されたステータ５５との位置関係が常に一定に維持されている。

　減速機構４０の出力軸４６の下部は、該出力軸４６等を支持する支持部材１９を構成する筒状の軸受部材１５の上部に回転自在に嵌挿されている。出力軸４６の下部には、その中心を通るように横方向に延びるスリット状の嵌合部４６ａが形成されている。軸受部材１５の内周面下方に螺設された雌ねじ１５ｉと螺合する雄ねじ１７ａが螺設された回転昇降軸１７の上端には板状部１７ｃが突設され、板状部１７ｃがスリット状の嵌合部４６ａに摺動自在に嵌合されている。出力軸４６がロータ５７の回転に応じて回転すると、出力軸４６の回転が回転昇降軸１７に伝達され、軸受部材１５の雌ねじ１５ｉと回転昇降軸１７の雄ねじ１７ａのねじ送りによって回転昇降軸１７が回転しながら昇降する。

　回転昇降軸１７の下方には、該回転昇降軸１７の下方への推力がボール１８、ボール受座１６を介して伝達される段付き筒状の推力伝達部材２３が配置されている。なお、回転昇降軸１７と推力伝達部材２３との間にボール１８を介在させることにより、例えば回転昇降軸１７が回転しながら下降しても、回転昇降軸１７から推力伝達部材２３へ下方への推力のみが伝達され、回転力は伝達されない。

　推力伝達部材２３は、上方から、内周に前記ボール受座１６が嵌め込まれる大径上部２３ａ、前記筒状保持部材１４の隔壁１４ｃに形成された孔に摺動自在に挿通される中間胴部２３ｂ、該中間胴部２３ｂよりも小径の小径下部２３ｃから構成され、その内部には、弁体２０内に形成された均圧通路３１の上部を構成する縦向きの貫通孔２３ｄ及び後述する背圧室３０に開口する複数個の横孔２３ｅが形成されている。なお、貫通孔２３ｄの上端開口はボール受座１６によって閉塞されている。

　推力伝達部材２３の小径下部２３ｃは、上記したように、弁体２０の（中心穴２０ｂの）嵌合穴２０ｃに圧入等により嵌合固定されており、弁体２０と推力伝達部材２３は一体に昇降される。なお、弁体２０の上端面と推力伝達部材２３の中間胴部２３ｂの下端段差部との間には、小径下部２３ｃの圧入時において押さえ部材２４が挟み込まれて固定され、この押さえ部材２４と弁体２０の上端部外周に形成された環状溝と弁体ガイド穴１４ｂとの間にＯリング３７とＰＴＦＥ（ポリテトラフルオロエチレン）等のフッ素樹脂製のリップシール３８からなるシール部材３９が装着されている。

　また、筒状保持部材１４の隔壁１４ｃよりも上側のばね室１４ａには、圧縮コイルばねからなる開弁ばね２５がその下端を隔壁１４ｃに当接させた状態で配置されるとともに、この開弁ばね２５の付勢力（引き上げ力）を推力伝達部材２３を介して弁体２０に伝達すべく、上下に鍔状の引っ掛け部２８ａ、２８ｂを有する引き上げばね受け体２８が配在されている。引き上げばね受け体２８の上側の引っ掛け部２８ａは開弁ばね２５の上部に載置され、下側の引っ掛け部２８ｂは推力伝達部材２３の大径上部２３ａの下端段差部に掛止される。また、筒状保持部材１４には、前記ばね室１４ａとキャン５８の内部を連通する連通孔１４ｄが形成されている。

　したがって、モータ５０のロータ５７を一方向に回転駆動させると、減速機構４０の出力軸４６を介してロータ５７の回転が回転昇降軸１７に減速されて伝達され、軸受部材１５の雌ねじ１５ｉと回転昇降軸１７の雄ねじ１７ａによるねじ送りによって回転昇降軸１７が回転しながら例えば下降され、回転昇降軸１７の推力により推力伝達部材２３及び弁体２０が開弁ばね２５の付勢力に抗して押し下げられ、最終的には弁体２０の下端部からなる弁体部２０ａが弁座８ａに着座して弁口９が閉じられる。それに対し、モータ５０のロータ５７を他方向に回転駆動させると、減速機構４０の出力軸４６を介してロータ５７の回転が回転昇降軸１７に減速されて伝達され、前記雌ねじ１５ｉと雄ねじ１７ａによるねじ送りによって回転昇降軸１７が回転しながら例えば上昇され、それに伴い推力伝達部材２３及び弁体２０が開弁ばね２５の付勢力によって引き上げられ、弁体部２０ａが弁座８ａから離れて弁口９が開かれる（図３に示される状態）。

　また、前記弁体２０の上方で押さえ部材２４と筒状保持部材１４の隔壁１４ｃとの間に背圧室３０が画成されている。弁体２０内には、該弁体２０の下端部と前記背圧室３０とを連通させるべく、前記段付きの中心穴２０ｂを含む均圧通路３１が形成されており、その中心穴２０ｂが推力伝達部材２３の貫通孔２３ｄ及び横孔２３ｅを介して背圧室３０に連通している。ここでは、閉弁状態において弁体２０に作用する押し下げ力（閉弁方向に働く力）と弁体２０に作用する押し上げ力（開弁方向に働く力）とをバランス（差圧をキャンセル）させるべく、背圧室３０の室径と弁口９の口径とは略同一に設定されている。

　また、前記従来例の電動弁１００では、モータ５０のロータ５７を他方向に回転させて弁口９を開弁した際、流体（冷媒）が第１流れ方向（第１開口１１ａに接続された横パイプ部材１１から第２開口１２ａの弁座部材８に接続された下パイプ部材１２へ向かう流れ方向）とその逆の第２流れ方向の双方向に流されるようになっている（下記特許文献１参照）。

特開２０１３－１３０２７１号公報特開平１０－２４５０号公報

　ところで、上記特許文献１等に所載の従来の電動弁では、昇降動作をする弁体の弁室と背圧室の間、並びに背圧室と弁体の先端部の間を同時にシールするシール部材として、ＰＴＦＥ（ポリテトラフルオロエチレン）等のフッ素樹脂製のリップシールとＯリングとが使用されている。しかし、Ｏリングは、ゴム材であるため、温度、冷媒、冷凍機油などの使用環境の影響によって、硬度が変化してしまい、シール性を確保できなくなるおそれがある。また、Ｏリングが膨潤してＯリング線径が拡大し、弁体が昇降動作をする際の摺動抵抗が大きくなるなどの問題もある。

　また、例えば上記特許文献２に所載の従来の電動弁では、前記したＯリングの代わりに、ＰＴＦＥ（ポリテトラフルオロエチレン）等のフッ素樹脂製のシートからなるシール材を椀状にして上下に配置し、金属スプリングからなるシール押さえで内径方向から押さえることで、シール性を確保する手法が提案されている。しかし、この手法では、上下のシール材（フッ素樹脂製のシート）の間にシール押さえ（金属スプリング）を挟み込む必要があり、挟み込みの荷重が弱いと漏れが発生したり、経年劣化に伴うシール材（フッ素樹脂製のシート）の痩せや摩耗によって、十分なシール性が得られなくなるなどの問題がある。

　本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、使用環境による摺動抵抗の変動を防止しつつ、簡便な構成でもって、十分なシール性を確保することのできる電動弁を提供することにある。

　上記する課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、基本的に、弁室及び該弁室に開口する弁座付きの弁口を有する弁本体と、前記弁室に昇降可能に配置された弁体と、前記弁体が摺動自在に内嵌される弁体ガイド穴を有する筒状保持部材と、前記弁体と前記弁体ガイド穴との間に介装されるシール組立体と、前記弁体を前記弁座に対して昇降させるための昇降駆動部と、を備え、前記シール組立体は、フッ素樹脂からなるリング状部材で作製され、昇降方向中腹部が昇降方向両端部より薄肉に形成されるとともに、昇降方向両端面に環状の収納溝が設けられたシール部材と、金属からなるリング状部材で作製され、前記収納溝の各々に径方向に弾性的に圧縮された状態で収納された一対の弾性部材と、を有していることを特徴としている。

　好ましい態様では、前記シール組立体は、前記弁体と前記弁体ガイド穴との間に画成されたシール装着溝に装着されるとともに、前記シール装着溝から取り外された自然状態において、前記シール組立体の昇降方向中腹部の厚さが前記シール装着溝の幅より小さく、前記シール組立体の昇降方向両端部の厚さが前記シール装着溝の幅より大きくされる。

　更に好ましい態様では、前記収納溝の各々は、前記シール組立体が前記シール装着溝から取り外された自然状態において、昇降方向外側に行くに従って幅広となるとともに、前記シール組立体が前記シール装着溝に装着されたときに、昇降方向で一定幅となるようにされる。

　他の好ましい態様では、前記シール部材における各収納溝の内周側のみに、前記弾性部材を抜け止め係止するための外鍔状係止部が突設される。

　別の好ましい態様では、前記一対の弾性部材の各々は、昇降方向両端面側が開いた縦断面形状がＶ形又は逆立Ｖ形の板材で作製される。

　別の好ましい態様では、前記シール組立体は、昇降方向中腹部に対して対称に形成されており、昇降方向で反転可能とされる。

　別の好ましい態様では、前記弁本体に筒状のキャンが固定されるとともに、前記昇降駆動部は、前記キャンに外嵌固定されたステータと前記キャンの内側に回転自在に配置されたロータとを含んで構成される。

　本発明によれば、弁体と弁体ガイド穴との間に介装されるシール組立体が、フッ素樹脂からなるリング状部材で作製され、昇降方向中腹部が昇降方向両端部より薄肉に形成されるとともに、昇降方向両端面に環状の収納溝が設けられたシール部材と、金属からなるリング状部材で作製され、前記収納溝の各々に径方向に弾性的に圧縮された状態で収納された一対の弾性部材と、を有するので、例えばフッ素樹脂製のリップシールとＯリングを使用した従来のものやフッ素樹脂製のシートと金属スプリングを使用した従来のものと比べて、簡便な構成でもって、十分なシール性を確保することができる。

　また、シール組立体を構成するシール部材の昇降方向両端面に設けられた収納溝の各々に金属からなるリング状部材で作製された一対の弾性部材が収納されるので、弁体ガイド穴内で昇降する弁体の揺動（首振りともいう）を効果的に防止できるという効果もある。

本発明に係る電動弁の一実施形態を示す縦断面図。図１の要部拡大縦断面図。従来構造の電動弁を示す縦断面図。

　以下、本発明に係る電動弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。

　図１は、本発明に係る電動弁の一実施形態を示す縦断面図、図２は、図１の要部拡大縦断面図である。

　図示実施形態の電動弁１は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において膨張弁として使用され、流体（冷媒）が双方向（第１流れ方向とその逆の第２流れ方向）に流動し、かつ、少なくとも一方向には大流量が流動する流路に対応した双方向流通型の電動弁である。

　本実施形態の電動弁１は、図３に示す従来例の電動弁１００と同様、板金製の底部付きの筒状基体６を有する弁本体５と、弁本体５に固着されたキャン５８と、弁本体５及びキャン５８によって画成された内部空間で弁本体５に固定配置された支持部材１９と、支持部材１９により支持されて前記内部空間に昇降可能に配置された弁体２０と、弁体２０を昇降させるべく弁本体５の上方に取り付けられたステッピングモータ（昇降駆動部）５０と、を備えている。

　ここで、本実施形態の電動弁１において、弁本体５、弁本体５に固定された天井部付き円筒状のキャン５８、支持部材１９（隔壁１４ｃ付き筒状保持部材１４及び雌ねじ１５ｉ付き軸受部材１５）、弁本体５に固定された筒状保持部材１４の弁体ガイド穴１４ｂに摺動自在に内嵌され、弁本体５の弁室７内に昇降可能に配置された弁体２０、弁体２０を弁座部材８の弁座８ａに対して昇降させるためのステッピングモータ５０（不思議遊星歯車式減速機構４０を含む）、弁体２０とステッピングモータ５０との間に介装される回転昇降軸１７及び推力伝達部材２３等の基本構成は、図３に示す従来例の電動弁１００とほぼ同じである。したがって、図３に示す従来例の電動弁１００と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略し、以下では、前記従来例の電動弁１００との相違点であって本発明の特徴部分である、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間に介装されたシール組立体３５の構成について詳述する。

　本実施形態の電動弁１においては、推力伝達部材２３の小径下部２３ｃに外装された押さえ部材２４と弁体２０の上端部外周に形成された環状溝と弁体ガイド穴１４ｂとによって、上下方向に比較的長い円筒状のシール装着溝３６が画成されるとともに、そのシール装着溝３６に、シール部材３２と一対の同一形状を有する弾性部材（上部弾性部材３３、下部弾性部材３４）とからなるシール組立体３５が装着されている。

　前記シール組立体３５（のシール部材３２及び一対の弾性部材）は、本例では、組立性（誤組み防止等）を考慮して、上下方向（昇降方向もしくは軸線Ｏ方向）中腹部に対して（詳しくは、上下方向中腹部を通る軸線Ｏに対して垂直な平面に対して）対称に形成されており、前記シール装着溝３６において上下反転可能（昇降方向で反転可能）となっている。

　詳細には、前記シール組立体３５を構成するシール部材３２は、ＰＴＦＥ（ポリテトラフルオロエチレン）等のフッ素樹脂からなるリング状部材で作製されており、その縦断面形状（軸線Ｏを含む断面形状）が概略Ｘ形に形成されている。より詳しくは、前記シール部材３２は、その（上下方向の）中腹部が上端部及び下端部（言い換えれば、上下方向両端部）より薄肉に形成される（つまり、上下方向中腹部がくびれた形状を有する）とともに、その上面及び下面（言い換えれば、上下方向両端面）の各々に、縦断面形状がＵ形ないしＶ形に形成された円環状の収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）が（周状に）設けられている。

　また、シール部材３２の上端部及び下端部の内周部分、換言すれば、シール部材３２における上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの（径方向で）内周側には、当該上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂに内装される上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４を抜け止め係止するための円環状の上部外鍔状係止部３２ｃ及び下部外鍔状係止部３２ｄが（外向きに）突設されている。

　一方、上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４はそれぞれ、ＳＵＳ等の金属からなるリング状の板ばね（板材）で作製されており、例えばプレス加工等によってその縦断面形状がＶ形及び逆立Ｖ形に形成されている。

　上部弾性部材３３は、上端面側が開いた姿勢で上部収納溝３２ａに内装されるととともに、径方向（軸線Ｏ方向に対して垂直な方向）に弾性的に若干圧縮され、かつ、前記シール部材３２の上部外鍔状係止部３２ｃによって上下方向で抜け止め係止された状態で、上部収納溝３２ａに収納されている。同様に、下部弾性部材３４は、下端面側が開いた姿勢で下部収納溝３２ｂに内装されるとともに、径方向（軸線Ｏ方向に対して垂直な方向）に弾性的に若干圧縮され、かつ、前記シール部材３２の下部外鍔状係止部３２ｄによって上下方向で抜け止め係止された状態で、下部収納溝３２ｂに収納されている。

　前記シール組立体３５は、前記シール装着溝３６から取り外された自然状態（無負荷状態ないし無荷重状態）において、その中腹部の（径方向の）厚さ（幅）Ｄｍが前記シール装着溝３６の（径方向の）幅ｄより小さく、その上端部及び下端部の（径方向の）厚さ（幅）Ｄｅが前記シール装着溝３６の（径方向の）幅ｄより僅かに大きく設定されている（図２の一点破線を併せて参照）。

　そのため、前記シール組立体３５は、上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂに上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４を内装した後、上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの内部空間を利用して、当該シール組立体３５の上端部及び下端部を（当該シール組立体３５のシール部材３２の径方向中央側に向けて）若干圧縮変形させながら（言い換えれば、上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４を径方向で押し縮めながら）、前記シール装着溝３６に装着される。これにより、シール組立体３５を構成するシール部材３２自身の弾性反発力と上部収納溝３２ａに収納された上部弾性部材３３の弾性反発力によって、シール組立体３５（のシール部材３２）の上端部内周部分が、弁体２０（の外周）に押し付けられ（圧接され）、シール組立体３５（のシール部材３２）の上端部外周部分が、弁体ガイド穴１４ｂに押し付けられる（圧接される）。それとともに、シール組立体３５を構成するシール部材３２自身の弾性反発力と下部収納溝３２ｂに収納された下部弾性部材３４の弾性反発力によって、シール組立体３５（のシール部材３２）の下端部内周部分が、弁体２０（の外周）に押し付けられ（圧接され）、シール組立体３５（のシール部材３２）の下端部外周部分が、弁体ガイド穴１４ｂに押し付けられる（圧接される）。また、前記シール組立体３５（のシール部材３２）の中腹部は、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間に隙間を持って配置される。これにより、前記シール組立体３５によって、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの摺動抵抗を抑えつつ、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間の摺動面隙間（詳細には、弁室７と弁体ガイド穴１４ｂにおける弁体２０の上側に画成される背圧室３０の間、並びに背圧室３０と弁体２０の先端部の間）を確実にシールすることができる。

　また、使用時には、流体（冷媒）がシール組立体３５（のシール部材３２）の上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂにも流入するため、その流体圧によって、シール組立体３５（のシール部材３２）の上端部及び下端部の内周部分が、弁体２０（の外周）により強く押し付けられ（圧接され）、シール組立体３５（のシール部材３２）の上端部及び下端部の外周部分が、弁体ガイド穴１４ｂにより強く押し付けられる（圧接される）ようになる。そのため、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間の摺動面隙間をより確実にシールすることができる。

　また、本例では、上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの各々は、前記シール組立体３５が前記シール装着溝３６から取り外された自然状態において、上下方向外側に行くに従って幅広となるとともに、当該シール組立体３５がシール装着溝３６に装着されたときに、上下方向で略一定幅Ｗとなるように、各部の寸法形状が設定されている（図２参照）。これにより、上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの各々に対して上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４を組み付けやすくなるとともに、シール部材３２の上部外鍔状係止部３２ｃ及び下部外鍔状係止部３２ｄによって、上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４を確実に抜け止め係止することができる。

　なお、本例では、組立性（上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂに対する上部弾性部材３３及び下部弾性部材３４の嵌め込みやすさ）等を考慮して、シール部材３２における上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの（径方向で）内周側のみに上部外鍔状係止部３２ｃ及び下部外鍔状係止部３２ｄが設けられているが、前記上部外鍔状係止部３２ｃ及び下部外鍔状係止部３２ｄと同様の抜け止め防止用の鍔状係止部を、シール部材３２における上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの（径方向で）外周側のみに設けてもよいし、内周側及び外周側の両方に設けてもよいことは勿論である。また、本例では、上部外鍔状係止部３２ｃ及び下部外鍔状係止部３２ｄが、シール部材３２における上部収納溝３２ａ及び下部収納溝３２ｂの内周側の全周にわたって設けられているが、周方向に一部のみに設けてもよいことは勿論である。

　かかる構成とされた本実施形態の電動弁１においても、モータ５０のロータ５７を一方向に回転駆動させると、減速機構４０の出力軸４６を介してロータ５７の回転が回転昇降軸１７に減速されて伝達され、軸受部材１５の雌ねじ１５ｉと回転昇降軸１７の雄ねじ１７ａによるねじ送りによって回転昇降軸１７が回転しながら例えば下降され、回転昇降軸１７の推力により推力伝達部材２３及び弁体２０が開弁ばね２５の付勢力に抗して押し下げられ、最終的には弁体２０の下端部からなる弁体部２０ａが弁座８ａに着座して弁口９が閉じられる。それに対し、モータ５０のロータ５７を他方向に回転駆動させると、減速機構４０の出力軸４６を介してロータ５７の回転が回転昇降軸１７に減速されて伝達され、前記雌ねじ１５ｉと雄ねじ１７ａによるねじ送りによって回転昇降軸１７が回転しながら例えば上昇され、それに伴い推力伝達部材２３及び弁体２０が開弁ばね２５の付勢力によって引き上げられ、弁体部２０ａが弁座８ａから離れて弁口９が開かれる（図１に示される状態）。

　このように、本実施形態の電動弁１においては、弁体２０と弁体ガイド穴１４ｂとの間に介装されるシール組立体３５が、フッ素樹脂からなるリング状部材で作製され、その中腹部が両端部より薄肉に形成されるとともに、その両端面に円環状の収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）が設けられたシール部材３２と、金属からなるリング状部材で作製され、前記収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）の各々に径方向に弾性的に圧縮された状態で収納された一対の弾性部材（上部弾性部材３３、下部弾性部材３４）と、を有するので、例えばフッ素樹脂製のリップシールとＯリングを使用した従来のものやフッ素樹脂製のシートと金属スプリングを使用した従来のものと比べて、簡便な構成でもって、十分なシール性を確保することができる。

　また、シール組立体３５を構成するシール部材３２の両端面に設けられた収納溝（上部収納溝３２ａ、下部収納溝３２ｂ）の各々に金属からなるリング状部材で作製された一対の弾性部材（上部弾性部材３３、下部弾性部材３４）が収納されるので、弁体ガイド穴１４ｂ内で昇降する弁体２０の揺動（首振りともいう）を効果的に防止できるという効果もある。

　なお、前述の説明において本実施形態の電動弁１は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において膨張弁として使用され、流体が双方向に流動する双方向流通型の電動弁としたが、本発明の電動弁は、ヒートポンプ式冷暖房システム以外の他のシステムにも適用し得ることは言うまでもなく、また流体が一方向のみに流動する電動弁に適用されるものであってもよいことは当然である。

１　　　電動弁
５　　　弁本体
６　　　筒状基体
７　　　弁室
８　　　弁座部材
８ａ　　弁座
９　　　弁口
１３　　筒状基台
１４　　筒状保持部材
１４ｂ　弁体ガイド穴
１４ｃ　隔壁
１５　　軸受部材
１５ｉ　雌ねじ
１７　　回転昇降軸
１７ａ　雄ねじ
１９　　支持部材
２０　　弁体
２０ａ　弁体部
２０ｂ　中心穴
２３　　推力伝達部材
２４　　押さえ部材
３０　　背圧室
３１　　均圧通路
３２　　シール部材
３２ａ　上部収納溝
３２ｂ　下部収納溝
３２ｃ　上部外鍔状係止部
３２ｄ　下部外鍔状係止部
３３　　上部弾性部材
３４　　下部弾性部材
３５　　シール組立体
３６　　シール装着溝
４０　　不思議遊星歯車式減速機構
５０　　ステッピングモータ（昇降駆動部）
５５　　ステータ
５７　　ロータ
５８　　キャン

Claims

　弁室及び該弁室に開口する弁座付きの弁口を有する弁本体と、
　前記弁室に昇降可能に配置された弁体と、
　前記弁体が摺動自在に内嵌される弁体ガイド穴を有する筒状保持部材と、
　前記弁体と前記弁体ガイド穴との間に介装されるシール組立体と、
　前記弁体を前記弁座に対して昇降させるための昇降駆動部と、を備え、
　前記シール組立体は、フッ素樹脂からなるリング状部材で作製され、昇降方向中腹部が昇降方向両端部より薄肉に形成されるとともに、昇降方向両端面に環状の収納溝が設けられたシール部材と、金属からなるリング状部材で作製され、前記収納溝の各々に径方向に弾性的に圧縮された状態で収納された一対の弾性部材と、を有していることを特徴とする電動弁。
　前記シール組立体は、前記弁体と前記弁体ガイド穴との間に画成されたシール装着溝に装着されるとともに、前記シール装着溝から取り外された自然状態において、前記シール組立体の昇降方向中腹部の厚さが前記シール装着溝の幅より小さく、前記シール組立体の昇降方向両端部の厚さが前記シール装着溝の幅より大きくされていることを特徴とする請求項１に記載の電動弁。
　前記収納溝の各々は、前記シール組立体が前記シール装着溝から取り外された自然状態において、昇降方向外側に行くに従って幅広となるとともに、前記シール組立体が前記シール装着溝に装着されたときに、昇降方向で一定幅となるようにされていることを特徴とする請求項２に記載の電動弁。
　前記シール部材における各収納溝の内周側のみに、前記弾性部材を抜け止め係止するための外鍔状係止部が突設されていることを特徴とする請求項１から３のいずれか一項に記載の電動弁。
　前記一対の弾性部材の各々は、昇降方向両端面側が開いた縦断面形状がＶ形又は逆立Ｖ形の板材で作製されていることを特徴とする請求項１から４のいずれか一項に記載の電動弁。
　前記シール組立体は、昇降方向中腹部に対して対称に形成されており、昇降方向で反転可能とされていることを特徴とする請求項１から５のいずれか一項に記載の電動弁。
　前記弁本体に筒状のキャンが固定されるとともに、前記昇降駆動部は、前記キャンに外嵌固定されたステータと前記キャンの内側に回転自在に配置されたロータとを含んで構成されていることを特徴とする請求項１から６のいずれか一項に記載の電動弁。