WO2019189234A1 - グリース組成物、機構部品、及びグリース組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

セルロースナノファイバーを増ちょう剤として用いたグリース組成物の特長である滴点の高さが維持されつつも、油分離しにくいグリース組成物を提供することを課題とし、基油(A)と、太さ(d)1~500nmのナノファイバー(B)と、結晶性ポリマー(C)とを含有し、ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物とした。

Description

グリース組成物、機構部品、及びグリース組成物の製造方法
 本発明は、グリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法に関する。
 グリース組成物は、主に基油及び増ちょう剤から構成される。増ちょう剤としては、例えば、リチウム石けん等の脂肪族金属塩やジウレア化合物等が広く用いられている。
 近年では、環境負荷の低いグリース組成物を提供すべく、生分解性を有する増ちょう剤を用いたグリース組成物も提案されている。例えば、特許文献1では、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)を増ちょう剤として用いたグリース組成物が提案されている。
特開2017-210612号公報
 しかしながら、セルロースナノファイバーを増ちょう剤として用いたグリース組成物は、高い滴点を有する一方で、油分離しやすい。
 本発明は、セルロースナノファイバーを増ちょう剤として用いたグリース組成物の特長である滴点の高さが維持されつつも、油分離しにくいグリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上のナノファイバーと、結晶性ポリマーとを含有するグリース組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は、下記[1]~[9]に関する。
 [1] 基油(A)と、太さ(d)1~500nmのナノファイバー(B)と、結晶性ポリマー(C)とを含有し、ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物。
 [2] 成分(B)と成分(C)との含有量比[(B)/(C)]が、質量比で0.1~10である、上記[1]に記載のグリース組成物。
 [3] 成分(B)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%である、上記[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
 [4] 成分(C)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~15質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のグリース組成物。
 [5] 成分(B)のアスペクト比が5以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のグリース組成物。
 [6] 成分(C)が、結晶性ポリプロピレン及び結晶性ポリエチレンから選択される1種以上である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のグリース組成物。
 [7] 上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のグリース組成物が充填された、機構部品。
 [8] 下記工程(S1a)~(S4a)を有し、
・工程(S1a):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程
・工程(S2a):前記混合液に結晶性ポリマー(C)を配合する工程
・工程(S3a):前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4a):前記混合液を撹拌しながら冷却する工程
 ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物の製造方法。
 [9] 下記工程(S1b)~(S5b)を有し、
・工程(S1b):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された第一混合液を調製する工程
・工程(S2b):基油(A)に結晶性ポリマー(C)を配合して第二混合液を調製する工程
・工程(S3b):前記第二混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4b):前記第二混合液を撹拌しながら冷却する工程
・工程(S5b):前記第一混合液と前記第二混合液とを混合する工程
 ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物の製造方法。
 本発明によれば、セルロースナノファイバーを増ちょう剤として用いたグリース組成物の特長である滴点の高さが維持されつつも、油分離しにくいグリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法を提供することが可能となる。
[本発明のグリース組成物の態様]
 本発明のグリース組成物は、基油(A)と、太さ(d)1~500nmのナノファイバー(B)と、結晶性ポリマー(C)とを含有する、グリース組成物(第1のグリース組成物)である。
 本発明の別態様のグリース組成物は、本発明の一態様のグリース組成物の製造方法により得られる、グリース組成物(第2のグリース組成物)である。本発明の一態様のグリース組成物の製造方法は、下記工程(S1a)~(S4a)を有する。
・工程(S1a):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程
・工程(S2a):前記混合液に結晶性ポリマー(C)を配合する工程
・工程(S3a):前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4a):前記混合液を撹拌しながら冷却する工程
 本発明のさらに別態様のグリース組成物は、本発明の他の態様のグリース組成物の製造方法により得られる、グリース組成物(第3のグリース組成物)である。本発明の他の態様のグリース組成物の製造方法は、下記工程(S1b)~(S5b)を有する。
・工程(S1b):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された第一混合液を調製する工程
・工程(S2b):基油(A)に結晶性ポリマー(C)を配合して第二混合液を調製する工程
・工程(S3b):前記第二混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4b):前記第二混合液を撹拌しながら冷却する工程
・工程(S5b):前記第一混合液と前記第二混合液とを混合する工程
 第1のグリース組成物、第2のグリース組成物、及び第3のグリース組成物において、ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である。
 なお、本明細書において、「第1のグリース組成物」、「第2のグリース組成物」、及び「第3のグリース組成物」をまとめて、「本発明のグリース組成物」又は「本発明の一態様のグリース組成物」ともいう。
 第1のグリース組成物では、当該グリース組成物に含有しているナノファイバー(B)の太さ(d)を規定している。つまり、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の太さ(d)を規定している。
 また、第2のグリース組成物及び第3のグリース組成物では、基油(A)と混合する前のナノファイバー(B)の太さ(d’)を規定している。
 当該規定を満たすことにより、基油(A)中において、ナノファイバー(B)が高次構造を形成しやすい。また、ナノファイバー(B)を基油(A)中に均一に分散させ易い。
 さらに、第1のグリース組成物、第2のグリース組成物、及び第3のグリース組成物は、結晶性ポリマー(C)を含有している。結晶性ポリマー(C)は、基油(A)中で結晶性ポリマー(C)の融点以上の温度で加熱して溶解させた後、撹拌しながら冷却することによって、基油(A)中に容易に均一分散させることができる。
 そのため、ナノファイバー(B)の含有量が少量であり、かつ結晶性ポリマー(C)の含有量が少量であっても、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
 ここで、「ナノファイバー(B)の含有量が少量」とは、当該ナノファイバーの含有量が、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、20質量%以下であることを意味しており、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
 また、「結晶性ポリマー(C)の含有量が少量」とは、当該結晶性ポリマー(C)の含有量が、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、15質量%以下であることを意味しており、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
 本発明の一態様のグリース組成物は、基油(A)、ナノファイバー(B)、及び結晶性ポリマー(C)と共に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含有してもよい。例えば、一般的なグリース組成物に配合される各種添加剤を含有してもよい。
 本発明の一態様のグリース組成物は、基油(A)、ナノファイバー(B)、及び結晶性ポリマー(C)の合計含有量が、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上である。
 本発明の一態様のグリース組成物は、より高い滴点を有し、より油分離しにくいグリース組成物とする観点から、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)の含有量比[(B)/(C)]が、質量比で、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~6.0、更に好ましくは1.0~5.0、より更に好ましくは2.0~5.0、更になお好ましくは3.0~5.0である。
 また、本発明の一態様のグリース組成物は、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)の含有量比[(B)/(C)]を上記範囲内に調整することによって、混和ちょう度を適切な値に調整しやすい。
 以下、本発明のグリース組成物に含まれる各成分について説明する。
 なお、本発明の第1のグリース組成物、第2のグリース組成物、及び第3のグリース組成物における、基油(A)の詳細、ナノファイバー(B)の詳細、及び結晶性ポリマー(C)の詳細は、互いに同じである。
<基油(A)>
 本発明のグリース組成物に含まれる基油(A)は、用途に応じて適宜選択される。例えば、鉱油、合成油、動物性油、植物性油、及び流動パラフィン等が挙げられる。
 基油(A)は、1種のみからなる基油であってもよく、2種以上を組み合わせた混合基油であってもよい。
(鉱油)
 鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油を常圧蒸留もしくは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油;これらの留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、及び水素化精製等の精製処理、並びに溶剤脱ろう及び接触脱ろう等の精製処理から選択される一つ以上の精製処理を施した精製油(具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等);フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油;等が挙げられる。
 これらの鉱油の中でも、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油が好ましい。
(合成油)
 合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油、及び脂肪酸エステル等が挙げられる。
 炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ-α-オレフィン(PAO)及びこれらの水素化物等が挙げられる。
 芳香族系油としては、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;等が挙げられる。
 エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル系油;トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル系油;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル系油;多価アルコールと二塩基酸及び一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステル等のコンプレックスエステル系油;等が挙げられる。
 エーテル系油としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール;モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル系油;等が挙げられる。
 脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数が8~22の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
 具体的な脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
 グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンジオレエート、グリセリンジステアレート、グリセリンジカプリレート等が挙げられる。
 ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンジオレエート、ジグリセリントリオレエート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ジグリセリントリイソステアレート、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンジカプリレート、ジグリセリントリカプリレート、トリグリセリンモノオレエート、トリグリセリンジオレエート、トリグリセリントリオレエート、トリグリセリンテトラオレエート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンテトラステアレート、トリグリセリンモノカプリレート、トリグリセリンジカプリレート、トリグリセリントリカプリレート、トリグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸ジステアリン酸エステル、ジグリセリンモノカプリル酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸ジステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸モノカプリル酸エステル、ジグリセリンモノラウリレート、ジグリセリンジラウリレート、トリグリセリンモノラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、ジグリセリンモノミリスチレート、ジグリセリンジミリスチレート、トリグリセリンモノミリスチレート、トリグリセリンジミリスチレート、トリグリセリントリミリスチレート、ジグリセリンモノリノレート、ジグリセリンジリノレート、トリグリセリンモノリノレート、トリグリセリンジリノレート、トリグリセリントリリノレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノカプリル酸モノオレイン酸エステル等が挙げられる。
 プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールモノオレエート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウリレート等が挙げられる。
(植物性油)
 植物性油としては、植物に由来する油類であって、具体的には、菜種油、ピーナッツ油、コーン油、綿実油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、やし油、ベニバナ油、ツバキ油、オリーブ油、落花生油等が挙げられる。
(動物性油)
 動物性油としては、動物に由来する油類であって、具体的には、ラード、牛脚油、サナギ油、イワシ油、ニシン油等が挙げられる。
(流動パラフィン)
 流動パラフィンとしては、C(mは炭素数であり、n<2m+2である)で示される分岐構造、環構造を有する脂環式炭化水素化合物又はそれらの混合物が挙げられる。
 上記基油の中でも、ナノファイバー(B)及び結晶性ポリマー(C)と基油(A)との親和性の観点から、本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油(A)としては、API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油、合成油、植物性油、動物性油、脂肪酸エステル、及び流動パラフィンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(基油(A)の動粘度及び粘度指数)
 本発明の一態様で用いる基油(A)は、40℃における動粘度が、好ましくは10~500mm/s、より好ましくは15~300mm/s、更に好ましくは20~200mm/s、より更に好ましくは50~180mm/sである。
 当該動粘度が10mm/s以上であれば、グリース組成物からの油分離が起こりにくい。
 当該動粘度が500mm/s以下であれば、摺動部分へ油が供給され易い。
 なお、本発明の一態様で用いる基油(A)は、高粘度の基油と、低粘度の基油とを組み合わせて、動粘度を上記範囲に調整した混合基油としてもよい。
 また、本発明の一態様で用いる基油(A)は、粘度指数が、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。
 なお、本発明において、40℃における動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した値を意味する。
(基油(A)の含有量)
 本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油(A)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上である。
<ナノファイバー(B)>
 ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である。
(セルロースナノファイバー)
 セルロースナノファイバーとは、植物繊維をナノレベルに解繊することにより製造される、太さが500nm以下の繊維状物を意味し、フレーク状物、パウダー状物、及び粒子状物とは区別される。
 なお、セルロースナノファイバーの原料としてリグノセルロースも用いることができる。リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロースと芳香族高分子であるリグニンから構成されていることが知られている。セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、リグノセルロース及びアセチル化リグノセルロースから選択される1種以上でもよい。また、セルロースナノファイバーは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上を含んでいてもよい。さらに、セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上と化学的に結合していてもよい。
 セルロースナノファイバーを構成するセルロースの重合度は、好ましくは50~3000、より好ましくは100~1500、更に好ましくは150~1000、より更に好ましくは200~800である。
 なお、本明細書において、セルロースの重合度は、粘度法により測定された値を意味する。
(変性セルロースナノファイバー)
 変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーに対して改質処理が施されたものである。
 改質処理の具体例としては、アセチル化等のエステル化、リン酸化、ウレタン化、カルバミド化、エーテル化、カルボキシメチル化、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化、及び過ヨウ素酸酸化等が挙げられる。
 本発明で用いる変性セルロースナノファイバーは、これらの改質処理のうち1種のみが施されたものであってもよいし、2種以上が施されたものであってもよい。
 また、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーと熱可塑性樹脂とを含む繊維強化樹脂(樹脂補強繊維ともいう)が知られている。このような繊維強化樹脂も、変性セルロースナノファイバーに包含される。
 セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーと熱可塑性樹脂とは、混合又は混練されていてもよく、互いに分散されていてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸とポリエステル共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えばトリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース)等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
 前記熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ナノファイバー(B)の「太さ」)
 ナノファイバー(B)の「太さ」の定義は、一般的な繊維状物の太さに関する定義と同様である。
 具体的には、ナノファイバー(B)の側面上の任意の点における接線方向に対して垂直に切断したときの切断面において、当該切断面が円又は楕円であれば、直径又は長径がナノファイバー(B)の「太さ」である。当該切断面が多角形であれば、当該多角形の外接円の直径がナノファイバー(B)の「太さ」である。
 なお、増ちょう剤として、数μm以上のサイズを有するフレーク状物、パウダー状物、又は粒子状物(以下、「ミクロサイズ粒子」ともいう)を基油に配合した場合、基油中において、ミクロサイズ粒子が凝集し、いわゆる「ダマ」となり易い。その結果、得られるグリース組成物の表面上には、ミクロサイズ粒子の凝集物が析出し、分散状態が不均一となり易い。この場合、得られるグリース組成物の混和ちょう度を上げるためには、ミクロサイズ粒子を多量に添加することが必要になる。しかし、油膜厚さよりも大きな粒子を含むため、耐摩耗性が劣るグリース組成物となる。
 一方で、本発明のグリース組成物は、太さ(d)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油に配合されるため、基油中において、当該ナノファイバー(B)が凝集することなく、ナノファイバー(B)を均一に分散させながらも、ナノファイバー(B)による高次構造が形成される。その結果、ナノファイバー(B)の含有量が少量であるにも関わらず、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
(ナノファイバー(B)の太さ(d)及びアスペクト比)
 本発明において、「ナノファイバー(B)の太さ(d)」は、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の太さを示し、後述の基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは区別される。
 但し、基油(A)中に分散している「ナノファイバー(B)の太さ(d)」と、基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは、ほとんど差がない。したがって、基油(A)中に分散している「ナノファイバー(B)の太さ(d)」と、基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは、実質的には同一とみなすこともできる。
 基油(A)中に分散しているナノファイバーの太さ(d)は、1~500nmであるが、基油(A)中において、ナノファイバー(B)による高次構造を形成する観点、及びナノファイバー(B)をより均一に分散させる観点から、好ましくは1~300nm、より好ましくは1~200nm、更に好ましくは2~100nmである。
 なお、本発明のグリース組成物に含まれるナノファイバー(B)については、少なくとも太さ(d)が上記範囲のナノファイバー(B)の分散が確認されればよく、太さ(d)が上記範囲から外れたナノファイバー(B)が分散していてもよい。
 ただし、本発明の一態様のグリース組成物において、基油(A)中において、ナノファイバー(B)による高次構造を形成する観点、及びナノファイバー(B)をより均一に分散させる観点から、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)から任意に選択した10本のナノファイバー(B)の太さ(d)の平均値が、1~500nmより好ましくは1~300nm、更に好ましくは1~200nm、より更に好ましくは2~100nmであることが好ましい。
 また、上記観点から、本発明のグリース組成物中に含まれるナノファイバー(B)のうち、任意に選択した10本中、太さ(d)が上記範囲のナノファイバー(B)の本数が、1本以上より好ましくは5本以上、更に好ましくは7本以上存在することが好ましく、選択した10本のナノファイバー(B)の太さ(d)のいずれもが、上記範囲のナノファイバー(B)であることがより好ましい。
 本発明の一態様のグリース組成物において、ナノファイバー(B)のアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
 本明細書において、「アスペクト比」とは、観察対象であるナノファイバー(B)の太さに対する長さの割合(長さ/太さ)であり、ナノファイバー(B)の「長さ」とは、ナノファイバー(B)の最も離れた2点間の距離を指す。
 また、観察対象となるナノファイバー(B)の一部分が、他のナノファイバー(B)と接触して「長さ」の認定が難しい場合には、観察対象のナノファイバー(B)のうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
 さらに、本発明のグリース組成物に含まれるナノファイバー(B)のうち、任意に選択した10本のナノファイバー(B)のアスペクト比の平均値(以下、「平均アスペクト比」ともいう)が5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
(ナノファイバー(B)の太さ(d’)及びアスペクト比)
基油(A)と混合する前の原料としてのナノファイバー(B)の太さ(d’)としては、好ましくは1~500nm、より好ましくは1~300nm、更に好ましくは1~200nm、より更に好ましくは2~100nmである。
 また、基油(A)と混合する前の原料としてのナノファイバー(B)の平均アスペクト比としては、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
 なお、本明細書において、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の「太さ(d)」及び基油(A)中に配合される前の原料としてのナノファイバー(B)の「太さ(d’)」、並びに、これらのナノファイバー(B)のアスペクト比は、電子顕微鏡等を用いて測定した値である。
(ナノファイバー(B)の含有量)
 本発明のグリース組成物において、ナノファイバー(B)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~17質量%、更に好ましくは0.7~15質量%、より更に好ましくは1.0~10質量%である。
 ナノファイバー(B)の含有量が0.1質量%以上であれば、高い滴点を有するグリース組成物を調製しやすい。
 一方、ナノファイバー(B)の含有量が20質量%以下であれば、耐摩耗性に優れたグリース組成物を調製しやすい。
 また、ナノファイバー(B)の含有量を上記範囲内に調整することによって、グリース組成物の混和ちょう度も適切な範囲に調整しやすい。
<結晶性ポリマー(C)>
 結晶性ポリマー(C)は、固体状態で結晶になる性質をもった高分子化合物であって、融点(Tm)を示すポリマーであればよい。
 結晶性ポリマー(C)は、融点(Tm)を示さない非晶性ポリマーとは明確に区別される。
 結晶性ポリマー(C)が融点(Tm)を示すか否かは、示差走査熱量分析(DSC)において、融点(Tm)を示すピークが生じるか否かにより判定することができる。
 換言すれば、示差走査熱量分析(DSC)において、融点(Tm)を示すピークが生じたポリマーは結晶性ポリマーであると判定され、融点(Tm)を示すピークが生じないポリマーは非晶性ポリマーであると判定される。
 本発明の一態様のグリース組成物において、より高い滴点を有すると共に、より油分離しにくいグリース組成物を調製する観点から、結晶性ポリマー(C)は、結晶性ポリプロピレン、結晶性ポリエチレン、及び結晶性ポリアミドから選択される1種以上であることが好ましく、結晶性ポリプロピレン及び結晶性ポリエチレンから選択される1種以上であることがより好ましい。
 また、本発明の一態様のグリース組成物において、さらに高い滴点を有すると共に、さらに油分離しにくいグリース組成物を調製する観点から、結晶性ポリマー(C)は、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、及びホモポリアミドから選択される1種以上のホモポリマーであることが好ましく、ホモポリプロピレン及びホモポリエチレンから選択される1種以上のホモポリマーであることがより好ましい。
(結晶性ポリマー(C)の含有量)
 本発明のグリース組成物において、結晶性ポリマー(C)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~12質量%、更に好ましくは0.7~10質量%、より更に好ましくは1.0~10質量%である。
 結晶性ポリマー(C)の含有量が0.1質量%以上であれば、より油分離しにくいグリース組成物を調製しやすい。
 一方、結晶性ポリマー(C)の含有量が15質量%以下であれば、高い滴点を有するグリース組成物を調製しやすい。
<各種添加剤>
 本発明の一態様のグリース組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに一般的なグリース組成物に配合される各種添加剤を含有してもよい。
 当該各種添加剤としては、例えば、防錆剤、酸化防止剤、潤滑性向上剤、増粘剤、改質剤、分散補助剤、清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、極圧剤、金属不活性剤等が挙げられる。
 なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 また、本発明の一態様のグリース組成物において、グリース状態を維持できる範囲で、グリース組成物を製造する際に用いられることのある分散剤及び水を含有してもよい。
 本発明の一態様のグリース組成物において、分散剤及び水の合計含有量としては、当該グリースの全量(100質量%)基準で、好ましくは0~60質量%、より好ましくは0~30質量%、更に好ましくは0~10質量%、より更に好ましくは0~5質量%である。
(防錆剤)
 防錆剤としては、例えば、カルボン酸系防錆剤、アミン系防錆剤、カルボン酸塩系防錆剤等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、防錆剤を含有する場合において、防錆剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.3~8.0質量%、更に好ましくは1.0~5.0質量%である。
(酸化防止剤)
 酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、酸化防止剤を含有する場合において、酸化防止剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
(潤滑性向上剤)
 潤滑性向上剤としては、例えば、硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、トリフェニルホスホロチオエート等のチオリン酸類、チオカルバミン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、潤滑性向上剤を含有する場合において、潤滑性向上剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
(増粘剤)
 増粘剤は、前記基油の粘度を必要に応じて高めるものであり、増粘剤を含む基油を適正な動粘度に調整するために配合するものである。
 増粘剤としては、例えば、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリアルキルスチレン(PAS)、スチレン-ジエン共重合体(SCP)等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、増粘剤を含有する場合において、増粘剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
(改質剤)
 改質剤としては、静電相互作用を利用したものが知られており、例えば、アルキルケテンダイマー、脂肪酸ビスアミド、ロジンエマルションと硫酸アンモニウムとの混合物等のカチオン型界面活性剤や、ポリメタクリレート等が挙げられる。
 これらの改質剤の中でも、ポリメタクリレートが好ましい。
 本発明の一態様のグリースが、改質剤を含有する場合において、改質剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
(分散補助剤)
 分散補助剤としては、例えば、コハク酸ハーフエステル、尿素、各種界面活性剤等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、分散補助剤を含有する場合において、分散補助剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
(清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、極圧剤、金属不活性剤)
 清浄分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等が挙げられる。
 腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物等が挙げられる。
 消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素化シリコーン系化合物等が挙げられる。
 極圧剤としては、例えば、リン系化合物、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等が挙げられる。
 金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
 本発明の一態様のグリース組成物が、これらの添加剤を含有する場合において、これらの添加剤の各含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
[本発明のグリース組成物の特性]
 本発明のグリース組成物は、ナノファイバー(B)と、結晶性ポリマー(C)とを含有することにより、高い滴点を有し、かつ、油分離しにくい。
 加えて、本発明のグリース組成物は、ナノファイバー(B)が基油(A)中に均一に分散している。また、結晶性ポリマー(C)も基油(A)中に均一に分散している。そのため、本発明のグリース組成物は、ナノファイバー(B)及び結晶性ポリマー(C)の含有量が少量であっても、適度な混和ちょう度を有する。
(滴点)
 本発明の一態様のグリース組成物の滴点は、グリース組成物の耐熱性をより良好なものとする観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、更に好ましくは250℃以上、より更に好ましくは260℃以上、更になお好ましくは290℃以上である。
 なお、本明細書において、グリース組成物の滴点は、JIS K2220 8:2013に準拠して測定した値である。
(離油度)
 本発明の一態様のグリース組成物の離油度は、より長寿命のグリース組成物とする観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは7.0質量%以下、更になお好ましくは6.0質量%以下である。
 なお、本明細書において、グリース組成物の離油度は、 JIS K2220:2013の離油度試験方法に準拠して、グリース組成物から分離した油の質量割合を測定した値である。
(混和ちょう度)
 本発明の一態様のグリースの25℃における混和ちょう度としては、グリース組成物の硬さを適度な範囲とし、低温トルク特性及び耐摩耗を良好とする観点から、好ましくは130~475、より好ましくは160~445、更に好ましくは175~430、より更に好ましくは200~350であり、更になお好ましくは200~300である。
 なお、本明細書において、グリースの混和ちょう度は、JIS K2220 7:2013に準拠して測定された値である。
[本発明のグリース組成物の製造方法の一態様]
 本発明の一態様のグリース組成物の製造方法は、下記工程(S1a)~(S4a)を有する。
・工程(S1a):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程
・工程(S2a):前記混合液に結晶性ポリマー(C)を配合する工程
・工程(S3a):前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4a):前記混合液を撹拌しながら冷却する工程
 ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である。
 このような工程を経て得られるグリース組成物は、基油(A)中において、ナノファイバー(B)同士の凝集が抑制され、繊維形状を維持した状態で、太さ(d)が1~500nmのナノファイバーを分散させることができる。その結果、基油中において、ナノファイバー(B)による高次構造が形成され、ナノファイバー(B)を基油(A)中に均一に分散させることができる。
 また、基油(A)を含む混合液中で結晶性ポリマー(C)を溶解させた後、当該混合液を撹拌しながら冷却することで、基油(A)中に結晶性ポリマー(C)を均一に分散させることができる。したがって、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)を少量添加することで、高い滴点を有しながらも、油分離しにくく、しかも適度な混和ちょう度を有するグリース組成物が調製される。
 以下、工程(S1a)~(S4a)について説明する。
<工程(S1a)>
 工程(S1a)は、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程である。
 工程(S1a)で用いるナノファイバー(B)及び基油(A)の詳細は、上述のとおりである。
 なお、ここでいう「太さ(d’)」は、上述のとおり、基油(A)中に配合される前の原料としてのナノファイバー(B)の太さを示すものであり、「太さ(d’)」の好適範囲は、上記と同じである。
 本発明の一態様において、ナノファイバー(B)は、水、有機溶媒、又は基油(A)に分散可能な粉末化セルロースナノファイバーを用いても良いし、水、有機溶媒、又は基油(A)に分散された分散液を用いても良い。あるいは、基油(A)の中でせん断を与えて、ナノファイバー化しても良い。ナノファイバー(B)が水に分散された水分散液やナノファイバー(B)が有機溶媒に分散された有機溶媒分散液を用いる場合、ナノファイバー(B)を配合してなるこれらの分散液の固形分濃度としては、当該分散液の全量(100質量%)基準で、通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~65質量%、より好ましくは0.1~60質量%、更に好ましくは0.5~55質量%、より更に好ましくは1.0~50質量%である。
 当該分散液は、水又は有機溶媒中にナノファイバー(B)を配合すると共に、前記水分散液を用いる場合には必要に応じて分散剤等を配合し、手動もしくは撹拌機により、十分に撹拌をして、調製することができる。
 分散剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、及びN-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びヘキシレングリコール等のアルコール類;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、及びソルビタン酸エステル等の界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
 前記水分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液における、分散剤の配合量は、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~40質量%、更に好ましくは1.0~30質量%、より更に好ましくは1.0~20質量%、更になお好ましくは1.0~10質量%である。
 前記水分散液や前記有機溶媒分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液における、水又は有機溶媒の配合量は、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~60質量%、より好ましくは3~50質量%、更に好ましくは5~40質量%である。
 前記水分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液中における、水と分散剤との配合量比(水/分散剤)としては、質量比で、好ましくは0.01~600、より好ましくは0.05~400、更に好ましくは0.1~300、より更に好ましくは0.2~200である。
 混合液には、ナノファイバー(B)を配合してなる水分散液又は有機溶媒分散液、基油(A)及び分散剤と共に、一般的なグリース組成物に配合される上述の各種添加剤を添加してもよい。これらの成分を混合し、手動もしくは撹拌機により、十分に撹拌をすることにより、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製することができる。
 なお、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液は、ナノファイバー(B)を直接基油(A)に分散させること、基油(A)の中でナノファイバー原料にせん断を与えてナノファイバー化することでも調製され得る。
<工程(S2a)>
 工程(S2a)は、工程(S1a)で調製された混合液に、結晶性ポリマー(C)を配合する工程である。
 具体的には、工程(S1a)で調製された混合液に、例えば、上述した所定量の結晶性ポリマー(C)を配合する。
 工程(S2a)により、結晶性ポリマー(C)が配合された混合液が調製される。
<工程(S3a)>
 工程(S3a)は、工程(S2a)で調製された、結晶性ポリマー(C)が配合された混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程である。
 具体的には、工程(S2a)で調製された、結晶性ポリマー(C)が配合された混合液を、結晶性ポリマー(C)の融点よりも高温で加熱し、一定時間保持することにより、結晶性ポリマー(C)を溶解させる。
 工程(S3a)により、結晶性ポリマー(C)が溶解した混合液が調製される。
 なお、工程(S1a)において、前記水分散液や前記有機溶媒分散液を用いた場合、工程(S3a)により、水や有機溶媒を蒸発・揮発させることができる。
<工程(S4a)>
 工程(S4a)は、工程(S3a)で調製された、結晶性ポリマー(C)が溶解した混合液を撹拌しながら冷却する工程である。
 具体的には、工程(S3a)で調製された、結晶性ポリマー(C)が溶解した混合液を撹拌しながら、室温(25℃)まで冷却する。
 工程(S4a)により、結晶性ポリマー(C)が混合液に均一に分散し、本発明の一態様のグリース組成物が調製される。
 なお、工程(S4a)終了後、ロールミル等を用いて均一化等の処理を行うようにしてもよい。
[本発明のグリース組成物の製造方法の他の態様]
 本発明の他の態様のグリース組成物の製造方法は、下記工程(S1b)~(S5b)を有する。
・工程(S1b):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された第一混合液を調製する工程
・工程(S2b):基油(A)に結晶性ポリマー(C)を配合して第二混合液を調製する工程
・工程(S3b):前記第二混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S4b):前記第二混合液を撹拌しながら冷却する工程
・工程(S5b):前記第一混合液と前記第二混合液とを混合する工程
 ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である。
 このような工程を経て得られるグリース組成物もまた、上述した本発明の一態様のグリース組成物の製造方法を経て得られるグリース組成物と同様、基油(A)中において、ナノファイバー(B)同士の凝集が抑制され、繊維形状を維持した状態で、太さ(d)が1~500nmのナノファイバーを分散させることができる。その結果、基油中において、ナノファイバー(B)による高次構造が形成され、ナノファイバー(B)を基油(A)中に均一に分散させることができる。
 また、基油(A)を含む混合液中で結晶性ポリマー(C)を溶解させた後、当該混合液を撹拌しながら冷却することで、基油(A)中に結晶性ポリマー(C)を均一に分散させることができる。したがって、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)を少量添加することで、高い滴点を有しながらも、油分離しにくく、しかも適度な混和ちょう度を有するグリース組成物が調製される。
 以下、工程(S1b)~(S5b)について説明する。
<工程(S1b)>
 工程(S1b)は、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された第一混合液を調製する工程である。
 工程(S1b)は、上記工程(S1a)と同一であり、説明は省略する。
<工程(S2b)~工程(S4b)>
 工程(S2b)~工程(S4b)では、結晶性ポリマー(C)が基油(A)に均一に分散した第二混合液が調製される。
 工程(S2b)では、基油(A)に結晶性ポリマー(C)を配合して第二混合液を調製する。
 そして、工程(S3b)では、第二混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる。
 具体的には、工程(S2b)で調製された、結晶性ポリマー(C)を配合した第二混合液を、結晶性ポリマー(C)の融点よりも高温に加熱して一定時間保持し、結晶性ポリマー(C)を第二混合液に溶解させる。
 工程(S4b)では、第二混合液を撹拌しながら冷却する。
 具体的には、工程(S3b)で調製された、結晶性ポリマー(C)が溶解した第二混合液を撹拌しながら、室温(25℃)まで冷却する。
 工程(S4b)により、結晶性ポリマー(C)が均一に分散した第二混合液が調製される。
<工程(S5b)>
 工程(S5b)では、第一混合液と第二混合液とを混合する。
 具体的には、例えば、第一混合液と第二混合液とを混合し、ロールミル等を用いて均一化等の処理を行い、本発明の一態様のグリース組成物が調製される。
[本発明のグリース組成物の製造方法の更に他の態様]
 本発明の更に他の態様のグリース組成物の製造方法は、下記工程(S1c)~(S3c)を有する。
・工程(S1c):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とを含む原料が基油(A)に配合された混合液を調製する工程
・工程(S2c):前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
・工程(S3c):前記混合液を撹拌しながら冷却する工程
 工程(S1c)で用いられる原料は、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とを含む。
 ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である。
 このような工程を経て得られるグリース組成物もまた、上述した本発明の一態様のグリース組成物の製造方法を経て得られるグリース組成物と同様、基油(A)中において、ナノファイバー(B)同士の凝集が抑制され、繊維形状を維持した状態で、太さ(d)が1~500nmのナノファイバーを分散させることができる。その結果、基油中において、ナノファイバー(B)による高次構造が形成され、ナノファイバー(B)を基油(A)中に均一に分散させることができる。
 また、基油(A)を含む混合液中で結晶性ポリマー(C)を溶解させた後、当該混合液を撹拌しながら冷却することで、基油(A)中に結晶性ポリマー(C)を均一に分散させることができる。したがって、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)を少量添加することで、高い滴点を有しながらも、油分離しにくく、しかも適度な混和ちょう度を有するグリース組成物が調製される。
 以下、工程(S1c)~(S3c)について説明する。
<工程(S1c)>
 工程(S1c)は、太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とを含む原料が基油(A)に配合された混合液を調製する工程である。
 工程(S1c)において、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とは、基油(A)に同時に配合してもよいし、異なるタイミングで配合してもよい。また、工程(S1c)では、原料として、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)との混合物又は混錬物の状態で配合してもよいし、ナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とを含む繊維強化樹脂を配合してもよい。このような原料を用いた場合にも、工程(S2c)において基油(A)を含む混合液中で結晶性ポリマー(C)を溶解させた後、工程(S3c)において当該混合液を撹拌しながら冷却することで、基油(A)中にナノファイバー(B)と結晶性ポリマー(C)とを均一に分散させることができる。
<工程(S2c)>
 工程(S2c)は、前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程である。工程(S2c)は、上述した工程(S3a)と同様にして実施される。
<工程(S3c)>
 工程(S3c)は、前記混合液を撹拌しながら冷却する工程である。工程(S3c)は、上述した工程(S3a)と同様にして実施される。
 以上の工程により、本発明の一態様のグリース組成物が調製される。
[本発明のグリース組成物が充填された機構部品]
 本発明のグリース組成物は、高い滴点を有し、油分離しにくい。また、適度な混和ちょう度を有する。
 また、本発明のグリース組成物は、増ちょう剤であるナノファイバー(B)及び結晶性ポリマー(C)の含有量が少量であっても適度な混和ちょう度を有するため、耐摩耗性も向上し得る。
 本発明のグリース組成物を充填した機構部品としては、軸受や歯車等が挙げられ、より具体的には、すべり軸受、ころがり軸受等の各種軸受、歯車、内燃機関、ブレーキ、トルク伝達装置用部品、流体継ぎ手、圧縮装置用部品、チェーン、油圧装置用部品、真空ポンプ装置用部品、時計部品、ハードディスク用部品、冷凍機用部品、切削機用部品、圧延機用部品、絞り抽伸機用部品、転造機用部品、鍛造機用部品、熱処理装置用部品、熱交換器用部品、洗浄機用部品、ショックアブソーバ用部品、密封装置用部品等が挙げられる。
 以上の事項から、本発明は、以下の機構部品及びグリース組成物の使用方法も提供する。
(1)本発明のグリース組成物が充填された、機構部品。
(2)本発明のグリース組成物を機構部品の潤滑に使用する、グリース組成物の使用方法。
 また、上記(1)及び(2)で用いる「グリース組成物」は、本発明のグリース組成物であって、詳しくは上述のとおりである。
 本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[原料の物性値]
 原料の物性値は、以下に示す方法で求めた。
<ナノファイバーの太さ、アスペクト比>
 透過性電子顕微鏡(TEM)を用いて、任意に選択した10本のナノファイバーの太さ及び長さをそれぞれ測定し、「長さ」/「太さ」から算出される値を、対象となるナノファイバーの「アスペクト比」とした。
<40℃動粘度、粘度指数>
 JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
[実施例1~5、比較例1~3]
 実施例1~5、比較例1~3では、以下に示す基油、ナノファイバー、結晶性ポリマー、及び分散剤を用いた。
<基油>
・鉱油:40℃動粘度=150mm/s、粘度指数=105。
<ナノファイバー>
 セルロースナノファイバーが水に分散された以下のナノファイバー分散液を用いた。
・スギノマシン(株)製、製品名「BiNFi-s」(重合度600のセルロースナノファイバー(CNF)(太さ(d’)=20~50nm(平均値35nm)、アスペクト比=100以上(平均値100以上))を含む水分散液)。
<結晶性ポリマー>
・結晶性ポリプロピレン:プライムポリマー製、製品名「プライムポリプロ J137G」
・結晶性ポリエチレン:Aldrich製、製品名「ポリエチレン High  density」
<分散剤>
・ソルビタン酸エステル
<実施例1>
 ナノファイバー分散液182g(そのうちCNF量:18.2g)と、基油177.2gと、分散剤4.0gとを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。
 次いで、当該混合液に、結晶性ポリプロピレン4.6gを添加し、当該混合液を190℃まで加熱して1時間保持し、結晶性ポリプロピレンを当該混合液に溶解させると共に当該混合液の水分を蒸発除去した後、撹拌しながら室温(25℃)まで冷却した。
 次いで、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物A1を得た。
<実施例2>
 ナノファイバー分散液と、基油と、結晶性ポリプロピレンの配合量を以下のように変更し、実施例1と同様の方法で、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物A2を得た。
・ナノファイバー分散液140g(そのうちCNF量:14g)
・基油176g
・結晶性ポリプロピレン6.0g
<実施例3>
 ナノファイバー分散液と、基油と、結晶性ポリプロピレンの配合量を以下のように変更し、実施例1と同様の方法で、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物A3を得た。
・ナノファイバー分散液120g(そのうちCNF量:12.0g)
・基油172g
・結晶性ポリプロピレン12.0g
<実施例4>
 ナノファイバー分散液と、基油と、結晶性ポリプロピレンの配合量を以下のように変更し、実施例1と同様の方法で、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物A4を得た。
・ナノファイバー分散液48g(そのうちCNF量:4.8g)
・基油172g
・結晶性ポリプロピレン19.2g
<実施例5>
 実施例1の結晶性ポリプロピレン6.0gを結晶性エチレン6.0gとし、加熱する温度を160℃に変更し、実施例1と同様の方法で、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物A5を得た。
<比較例1>
 ナノファイバー分散液200g(そのうちCNF量:20.0g)と、基油176gと、分散剤4.0gとを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。
 そして、当該混合液を、0.02MPaの環境下で90℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物B1を調製した。なお、グリース組成物B1は、結晶性ポリプロピレンを含有しておらず、セルロースナノファイバーを増ちょう剤として用いた従来のグリース組成物に該当する。以下、グリース組成物B1を「従来のCNFグリース組成物」ともいう。
<比較例2>
 結晶性ポリプロピレン24.0gと、基油176gとを混合し、190℃まで加熱して0.5時間保持し、結晶性ポリプロピレンを基油に溶解させた後、撹拌しながら室温(25℃)まで冷却した。
 次いで、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物B2を得た。なお、グリース組成物B2は、セルロースナノファイバーを含有していない。
<比較例3>
 結晶性ポリエチレン22.0gと、基油178gとを混合し、160℃まで加熱して0.5時間保持し、結晶性ポリエチレンを基油に溶解させた後、撹拌しながら室温(25℃)まで冷却した。
 次いで、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1に示す増ちょう剤濃度のグリース組成物B3を得た。なお、グリース組成物B3は、セルロースナノファイバーを含有していない。
[評価]
 実施例1~5で調製したグリース組成物A1~A5、比較例1~3で調製したグリース組成物B1~B3について、以下に説明する方法で、混和ちょう度、滴点、離油度、及び油分離の評価を行った。
<混和ちょう度>
 JIS K2220 7:2013に準拠して、25℃にて測定した。
<滴点>
 JIS K2220 8:2013に準拠して測定した。
<離油度>
 JIS K2220:2013の離油度試験方法に準拠して、グリース組成物から分離した油の質量割合を測定した。
<油分離>
 グリース組成物を30日間室温(25℃)で保管し、油分の遊離を評価した。
 評価基準は以下のとおりとした。
A:油分が遊離しなかった。
B:油分が遊離した。
 結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001

 
 表1から、以下のことがわかる。
 まず、従来のCNFグリース組成物に該当する比較例で得られたグリース組成物B1は、高い滴点を有する一方で、油分離しやすいことがわかる。
 これに対し、実施例1~5で得られたグリース組成物A1~A5は、従来のCNFグリース組成物の特長である高い滴点を維持しながらも、油分離が抑制されていることがわかる。
 特に、実施例1で得られたグリース組成物A1は、比較例1で得られたグリース組成物B1よりも高い滴点を有しており、従来のCNFグリース組成物よりも高い滴点を有し、しかも油分離が抑制されたグリース組成物であることがわかる。
 なお、セルロースナノファイバーを含有していない、比較例2及び3で得られたグリース組成物B2及びB3は、油分離は抑制されているものの、滴点が大きく低下していることがわかる。
 さらに、実施例1~5で得られたグリース組成物A1~A5は、適度な混和ちょう度を有しており、また、ナノファイバーと結晶性ポリマーの配合割合によって、混和ちょう度を所望の値に調整し得ることもわかる。
 なお、実施例1において、グリース組成物A1の調製前後で、セルロースナノファイバーの太さに変化が生じるか否か確認した結果、製造前後で太さが殆ど変化しないことが確認された。このことから、基油中に分散している「ナノファイバー(B)の太さ(d)」と、基油中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは、ほとんど差がなく、これらは実質的には同一とみなすことができる。
 

Claims (9)

  1.  基油(A)と、太さ(d)1~500nmのナノファイバー(B)と、結晶性ポリマー(C)とを含有し、
     前記ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物。
  2.  成分(B)と成分(C)との含有量比[(B)/(C)]が、質量比で0.1~10である、請求項1に記載のグリース組成物。
  3.  成分(B)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
  4.  成分(C)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~15質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリース組成物。
  5.  成分(B)のアスペクト比が5以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のグリース組成物。
  6.  成分(C)が、結晶性ポリプロピレン及び結晶性ポリエチレンから選択される1種以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のグリース組成物。
  7.  請求項1~6のいずれか一項に記載のグリース組成物が充填された、機構部品。
  8.  下記工程(S1a)~(S4a)を有し、
    ・工程(S1a):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程
    ・工程(S2a):前記混合液に結晶性ポリマー(C)を配合する工程
    ・工程(S3a):前記混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
    ・工程(S4a):前記混合液を撹拌しながら冷却する工程
     ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物の製造方法。
  9.  下記工程(S1b)~(S5b)を有し、
    ・工程(S1b):太さ(d’)が1~500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された第一混合液を調製する工程
    ・工程(S2b):基油(A)に結晶性ポリマー(C)を配合して第二混合液を調製する工程
    ・工程(S3b):前記第二混合液を加熱して結晶性ポリマー(C)を溶解させる工程
    ・工程(S4b):前記第二混合液を撹拌しながら冷却する工程
    ・工程(S5b):前記第一混合液と前記第二混合液とを混合する工程
     ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上である、グリース組成物の製造方法。
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